説明

撮像装置

【課題】異物除去部材を光学部材の表面に接触させながら移動させる方式を採用することにより高い除去能力を発揮させるとともに、異物除去部材の交換作業を容易なものとする。
【解決手段】撮像装置は、被写体像を光電変換する撮像素子101と、撮像素子101の前方に配置されたローパスフィルタ(LPF)104と、LPF104の前方に配置されたシャッタユニット20と、レンズユニットが着脱可能に固定されるレンズマウント2と、LPF104とシャッタユニット20との間に設けられ、異物除去部材120をLPF104の表面に接触させながら移動させる異物除去機構とを備える。異物除去部材120よりもレンズマウント2側には、異物除去部材120の長さLよりも広い幅の開口部のみが存在するようにして、レンズユニットを取り外した状態で、レンズマウント2のマウント開口から異物除去部材120の交換作業を行えるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の表面に付着した異物を除去する異物除去機構を備えたデジタルカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子を備えたデジタルカメラ等の撮像装置が普及しているが、特にレンズ交換が可能なデジタルカメラにおいては、光学部材(撮像素子のカバーガラスや光学フィルタ)の表面に異物が付着することがあった。この異物は、外部から塵埃が進入したり、クイックリターンミラーやフォーカルプレンシャッタ等の機構部品の動作により摩耗紛が発生したりしたものである。このようにして発生した異物が光学部材の表面に付着すると、その異物の像が撮影画像に写り込んでしまうという問題が生じていた。
【0003】
光学部材の表面にエアを吹きかけることにより、異物をある程度除去できる場合もあるが、完全に除去することは難しく、そのような場合には、光学部材の表面を拭いて異物を除去する作業が必要となる。しかしながら、手作業では拭きむらが生じたり、光学部材の表面を疵つけたりするおそれもある。
【0004】
そこで、光学部材の表面に付着した異物を簡便に除去する方式がいくつか提案されている。例えば光学部材に振動を与え、その表面に付着した異物を落下させる方式が提案され、実際にカメラにも搭載されるようになってきている。しかしながら、必要以上に振動を与えると、振動させている光学部材が割れてしまうおそれがあり、与える振動には限界がある。そのため、付着力の大きい異物や粘着性のある異物については振動式の異物除去方式では完全に除去できないという問題があった。
【0005】
他の方式としては、例えば特許文献1に、モータ駆動により撮像素子面上を接触させて走査するワイパ部材を、カメラに内蔵することが開示されている。
【0006】
また、特許文献2に、清掃作業を効率良く行うことができるようにするために、受光面上のゴミ等を除去する清掃作業を行う場合には、メインミラーが撮影光路から退避した後、撮像ユニットが開口部へ近づくように移動する電子カメラが開示されている。
【0007】
また、特許文献3に、撮像ユニットへのゴミの付着を阻止するために、光透過性の防塵部材を該撮像ユニットの光入射面の直前に挿抜できるようにした電子カメラが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−298640号公報
【特許文献2】特開2004−40652号公報
【特許文献3】特開2006−80979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示されている方式では、ワイパ部材で異物を直接除去できるので、光学部材を振動させる方式に比べて除去能力は高い。しかしながら、ワイパ部が汚れたり、ワイパ部に異物が付着したままとなった場合、カメラを分解した上で、ワイパ部を掃除したり、新品に交換したりする必要があった。
【0010】
また、撮像素子面に液体や粘着性のある異物が付着していた場合には、逆に撮像素子面に粘着物を擦りつける結果となりかねず、付着面積を広げてしまう可能性があった。このような場合には、手作業で異物を除去しなければならず、清掃作業が煩雑になってしまうという問題があった。
【0011】
また、上記特許文献2に開示されている方式では、撮像ユニットを光軸方向に移動させる必要があり、カメラの大型化を招き、更にはピント精度を悪化させてしまう懸念が生じる。
【0012】
また、上記特許文献3に開示されている方式では、防塵部材を交換可能にするための穴部をカメラボディの側面等に設ける必要があり、部品の配置に制約を生じてしまい、カメラの大型化を招くという問題があった。
【0013】
更に、上記特許文献2、3に開示されている方式では、清掃作業中は直ぐに撮影状態に復帰させることが難しく、撮影チャンスを逃してしまうおそれがある。更に、異物が付着するたびに手作業での清掃作業が必要であるので、拭きむらが生じたり、疵つけたりするという問題があった。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、異物除去部材を光学部材の表面に接触させながら移動させる方式を採用することにより高い除去能力を発揮させるとともに、異物除去部材の交換作業を容易なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の撮像装置は、被写体像を光電変換する撮像素子と、前記撮像素子の前方に配置された光学部材と、前記光学部材の前方に配置されたシャッタユニットと、レンズユニットが着脱可能に固定されるレンズマウントと、前記光学部材と前記シャッタユニットとの間に設けられ、異物除去部材を前記光学部材の表面に接触させながら移動させる異物除去機構とを備え、前記レンズユニットを取り外した状態で、前記レンズマウントのマウント開口から前記異物除去部材の交換作業を行えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異物除去部材を光学部材の表面に接触させながら移動させる方式を採用することにより高い除去能力を発揮させることができる。しかも、レンズマウントのマウント開口から異物除去部材の交換作業を行えるようにしたので、カメラを分解する必要がなく、異物除去部材の交換作業を容易なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る撮像装置であるデジタル一眼レフカメラの構成を示す図である。なお、本明細書において上下とは、カメラの通常構えた状態での上下、すなわち図1の上下をいうものとする。カメラボディ1のレンズマウント2には、被写体像を結像させる不図示のレンズユニットが着脱可能に固定される。
【0018】
カメラボディ1に内装されたミラーボックス10には、クイックリターンミラー3及びサブミラー4が設けられる。撮影準備状態において、クイックリターンミラー3及びサブミラー4は光軸上に位置する(図1の状態)。この状態で、被写体像はミラーボックス10の撮影開口部を通過し、クイックリターンミラー3により上方に反射して、ペンタプリズム6によりファインダレンズ7に導かれる。また、被写体像の一部はクイックリターンミラー3の裏側のサブミラー4により下方に導かれ、測距ユニット5により被写体までの距離情報を得ることができるようになっている。
【0019】
撮影の際には、クイックリターンミラー3及びサブミラー4が光軸上から退避するように上方に移動する。そして、シャッタユニット20のシャッタ羽根が走行して、被写体像がローパスフィルタ(以下、LPFと称する)104を介して撮像素子101に結像されて、光電変換される。
【0020】
カメラボディ1の背面側には表示モニタ8が備えられており、撮影画像を表示したり、操作情報を表示したりする。
【0021】
このようなデジタル一眼レフカメラでは、レンズユニットの交換時に外部から異物が進入したり、シャッタ羽根の走行等により異物が発生したりすることがある。そして、その異物がLPF104の表面に付着すると、異物の像が撮影画像に写り込んでしまう。そこで、LPF104とシャッタユニット20との間に異物除去機構を設け、異物除去部材120をLPF104の表面に接触させながら移動させることにより異物を除去するようにしている。
【0022】
本実施形態のカメラでは、以下に詳述するが、レンズユニットを取り外した状態で、レンズマウント2のマウント開口から異物除去部材120の交換作業が行えるようになっている。図2は、被写体側から見たカメラの一部正面図であり(図1の矢印IIを参照)、各部のサイズの関係を示す。図2に示すように、ミラーボックス10の撮影開口部が最も大きく、次いでその奥に配置されたシャッタユニット20の撮影開口部、更に奥に配置された撮像素子101の撮像エリアの順で小さくなる。そして、撮像素子101の前方に配置されたLPF104の表面を走査する異物除去部材120は、その移動方向S(カメラの上下方向)と垂直な長辺の長さLが、撮像素子101の撮像エリアの幅よりも長く、且つ、シャッタユニット20の開口部の幅より短い関係を有する。要するに、異物除去部材120よりも前方(レンズマウント2側)には、異物除去部材120の長さLよりも広い幅の開口部のみが存在するように設計されている。このような各部のサイズの関係により、レンズマウント2のマウント開口から異物除去部材120を交換することが可能となる。
【0023】
なお、図1、図2ではカメラの上下方向に異物除去部材120を走査する例を示したが、横方向に走査する構成とした場合も上述したサイズの関係を有するようにする。
【0024】
図3は、カメラ内部のユニット構成を示す分解斜視図であり、(a)は前方側(被写体側)から見た斜視図、(b)が背面側から見た斜視図である。ミラーボックス10は、シャッタユニット20が固定された状態でメインフレーム50に前方側から固定される。ミラーボックス10には、レンズマウント2、クイックリターンミラー3、測距ユニット5等が組み付けられている。
【0025】
また、撮像素子101、LPF104、異物除去機構がユニット化されており(撮像ユニット100)、その撮像ユニット100がメインフレーム50に背面側から固定される。
【0026】
図4を参照して、撮像ユニット100について説明する。図4(a)、(b)は撮像ユニット100の斜視図であり、異物除去部材120が装着された支持板(スライダ)108を移動させている状態を示す。
【0027】
ベース板102には、撮像素子101が背面側から取り付けられ(図3(b)を参照)、LPF104や異物除去機構が被写体側となる表面に順に組み付けられる。
【0028】
LPF104は、ベース板102の表面に設けられたLPF枠103に嵌め込まれる。そして、LPF104の左右に画枠端面の反射防止マスク105が位置決めされた後、LPF固定枠106がLPF枠103に固定されて、LPF104が固定される。
【0029】
矩形状のLPF104を挟んで両側には異物除去機構の駆動部及びガイド部が配置され、その間に架設された支持板108を走査方向Sに往復移動させる構成となっている。具体的に、駆動部は、LPF104の一方の側方において上下に延伸するモータアングル109を備える。モータアングル109には、駆動モータ110と、駆動モータ110の回転出力軸に固定されたリードスクリュ111と、支持板108の移動をガイドするガイドバー112とが組み付けられている。また、ガイド部は、LPF104の他方の側方において上下に延伸するガイドアングル113を備える。ガイドアングル113には、ガイドバー114が組み付けられている。
【0030】
支持板108の一端は駆動ガイド115にネジで固定され、駆動ガイド115がガイドバー112に沿って移動可能とされている。なお、ガイドバー112は、駆動ガイド115を挿通させた後、モータアングル109に固定される。更に、駆動ガイド115には駆動ラック116が固定され、駆動ラック116がリードスクリュ111に連結する。駆動ラック116は、リードスクリュ111と同じネジ山のピッチを有する。
【0031】
また、支持板108の他端には平面板部及びL字状の曲げ部が隣接して設けられており、ガイドバー114を挟み込むかたちでガイドバー114に係合する。
【0032】
駆動モータ110の回転力はリードスクリュ111から駆動ラック116に伝達され、駆動ガイド115がガイドバー112、114にガイドされながら移動し、支持板108を往復移動させることになる。
【0033】
ここで、支持板108の中央部にはLPF104側から離れる方向に凹む凹部が形成されている。本実施形態では、支持板108の中央部が一段下がるように曲げ加工された曲げ部が形成されており、そこに異物除去部材120が着脱可能に装着される。このように支持板108とLPF104との間にスペースを確保し、そのスペースに異物除去部材120を装着するようにしたので、異物除去部材120の構成に自由度が増し、最適な異物除去部材120に着脱可能に装着することができる。なお、異物除去部材120の詳細な構成、及び、支持板108との着脱方式については後述する。
【0034】
ところで、支持板108に曲げ部を形成する分、その曲げ部がシャッタユニット20側に凸部として突出する。そこで、図3(b)に示すように、シャッタユニット20のカバー板22の上部に撮影開口部につながる切り欠き部22aを形成し、組み立て時に、支持板108の凸部がシャッタユニット20と干渉しないように構成されている。
【0035】
また、図5に示すように、支持板108の凸部がシャッタユニット20のシャッタ羽根の走行面を移動する場合もある。そこで、異物除去動作時には、シャッタユニット20のシャッタ羽根を撮影開口部から退避させることで、支持板108の凸部がシャッタユニット20と干渉しないように動作シーケンスを工夫している。図5を参照して、異物除去機構による異物除去動作とシャッタユニット20によるシャッタ動作とについて説明する。図5は、異物除去機構及びシャッタユニット20の各動作状態での断面を模式的に示す図である。被写体側から、シャッタプレート21、後羽根群(後幕)24、先羽根群(先幕)23、カバー板22、支持板108及び異物除去部材120、LPF104、撮像素子101が位置する。
【0036】
図5(a)は撮影待機状態を示し、カバー板22の撮影開口部につながるように形成された切り欠き部22aが異物除去部(支持板108及び異物除去部材120)の退避スペースとなっている。すなわち、異物除去部はカバー板22に光軸方向に重複して収納されるように配置されている。更に、異物除去部は先幕23の走行面に重複して配置されても良い。
【0037】
先幕23の動作時の干渉を避けるために、異物除去部の退避位置をカバー板22の上方とし、先幕23の退避方向(下方向)とは逆にしている。そして、図5(b)に示すように、先幕23が撮影開口部から退避した後に、異物除去部を移動させる動作シーケンスとすることで、異物除去部が先幕23に干渉するのを避けている。
【0038】
後幕24は、不図示の中間板により先幕23と走行空間が仕切られた状態で被写体側に配置されているので、異物除去部が後幕24に干渉することはない。従って、後幕24が撮影開口部を閉鎖した状態でも異物除去動作は実行可能である。
【0039】
このような構成とすることで、異物除去部材120が内蔵されたカメラであっても、シャッタユニット20とLPF104との間隔を狭くすることができ、カメラが大型化する(厚くなる)のを防ぐことができる。なお、支持板108の凸形状やカバー板22の切り欠き部22aの形状、異物除去動作に先立つシャッタ羽根の退避動作についてはこれらに限定されるものではない。
【0040】
ここで、図6を参照して、支持板108及び異物除去部材120の構造について説明する。支持板108に装着される異物除去部材120は、板バネ121、ベース板122、ワイパ部材107を主要要素として構成される。
【0041】
具体的に、支持板108の曲げ部の底部(装着面)には、板バネ121が一対の板バネ取付軸124により装着される。板バネ121は、光軸方向に付勢力を付与するように左右に折り曲げ部を有し、中央部が板バネ取付軸124により固定される。その状態で光軸方向に圧縮力を受けると、左右の折り曲げ部が変形し、厚みが減る方向に変位する。
【0042】
板バネ121の両端部は取付軸123によりベース板122に固定される。この場合に、板バネ121に形成された取付軸123の挿通部は、板バネ121が変形する際に干渉しないように長溝形状となっている。
【0043】
板バネ取付軸124は、板バネ121の中央部の左右位置を貫通する。一方、支持板108には、板バネ取付軸124が挿入される一対の規制穴108cが形成されている。板バネ取付軸124が規制穴108cに挿入されて係合した状態では、異物除去部材120の光軸と直交する方向への移動が規制されることになる。なお、板バネ取付軸124が本発明でいう係合部に相当し、規制穴108cが本発明でいう規制部に相当する。
【0044】
また、支持板108には、各規制穴108cにつながるガイド溝108aが形成されており、これらガイド溝108aが支持板108の下辺で開口する。ガイド溝108aは、板バネ取付軸124の規制穴108cとの係合を解除した状態、すなわち板バネ取付軸124を規制穴108cから抜いた状態で、異物除去部材120を支持板108の外へとガイドする役割を果たす。なお、ガイド溝108aが本発明でいうガイド部に相当する。
【0045】
また、支持板108の中央部には左右のガイド溝108aの間に挿入穴108bが形成されており、支持板108の装着面とは裏側から棒等を挿入して板バネ121を押圧できるようになっている。
【0046】
ベース板122にはワイパ部材107が固定される。ワイパ部材107は板バネ121によりLPF104側に付勢されるので、LPF104の表面に略均一な圧力で接触し、拭きむらをなくすことができる。ここでは、ワイパ部材107として植毛ブラシを用い、更に植毛ブラシの上下両側に粘着部125を配置している。粘着部125は薄い両面テープであり、異物除去部材120の装着時や異物除去動作時にLPF104に接触することがなく、植毛ブラシにより弾き飛ばされたり、落下したりする異物を捕獲するようになっている。
【0047】
なお、図5(a)に示すように、退避位置においてワイパ部材107の先端は他の部材と接触しておらず、先端が塑性変形するのを防ぐことができる。
【0048】
次に、図7も参照して、異物除去部材120の着脱作業について説明する。図7(a)に示すように、異物除去部材120をLPF104の表面上に配し、板バネ121を押圧して光軸方向に圧縮した状態とする。そして、図7(b)に示すように、異物除去部材120の板バネ取付軸124を支持板108のガイド溝108aにスライド挿入する。なお、図6(b)に示すように、ガイド溝108aの開口部の幅を徐々に広くする形状にしておけば、板バネ取付軸124をスライド挿入しやすくすることができる。その後、板バネ121の圧縮を解除すれば、板バネ取付軸124が規制穴108cに挿入されるので、異物除去部材120は光軸と直交する方向への移動が規制され、板バネ121の付勢力により支持板108とLPF104との間に狭持される。
【0049】
逆に、異物除去部材120を支持板108から取り外すときは、支持板108の挿入穴108bに棒等を挿入し、板バネ121を押圧して光軸方向に圧縮した状態とする。これにより、板バネ取付軸124の規制穴108cとの係合を解除する、すなわち板バネ取付軸124を規制穴108cから抜くことができるので、板バネ取付軸124をガイド溝108aに沿わせて異物除去部材120を支持板108の外まで移動させる。
【0050】
上記構成では、本発明でいう弾性部材である板バネ121の付勢力を利用して支持板108とLPF104との間に異物除去部材120を狭持する例を示したが、これに限定されるものではない。板バネ121を利用せずに、例えばワイパ部材107自体の弾性を利用しても良い(本発明でいうワイパ部材と弾性部材とが一体化された例)。この場合、ベース板122の中央部に板バネ取付軸124を設けておき、支持板108の規制穴108cに挿入するようにすれば良い。この場合にも、ワイパ部材107自体の弾性を利用して支持板108とLPF104との間に異物除去部材120を狭持することができる。
【0051】
また、ワイパ部材107としては、上述した植毛ブラシやゴムワイパ等の弾性がある材料が適している。植毛ブラシの場合、毛の隙間で微少な異物を捕獲するので、数μm〜数十μmの異物を除去することができる。ゴムワイパの場合、LPF104の表面に付着した異物だけでなく、結露した際のクリーニング効果も期待できる。LPF104の表面に粘着物が付着してしまった場合には、ワイパ部材107を不織布等の繊維状材料とし、そこに洗浄液(アルコール等のクリーニング溶剤)を染み込ませたものを使用すれば除去することができる。このように複数種のワイパ部材107を準備しておき、適宜選択して交換できるので、確実かつ効率よく異物を除去することができる。
【0052】
以上述べたように、異物除去部材120を支持板108に着脱する際に、板バネ121やワイパ部材107を光軸方向に圧縮させるが、後述する専用の交換装置を用いても良いし、手作業でももちろん良い。レンズユニットを取り外した状態で、レンズマウント2のマウント開口から手指やピンセット等を差し入れて作業を行うことができる。
【0053】
次に、図5、図8を参照して、異物除去部材120の交換時のカメラ動作シーケンスについて説明する。通常の撮影待機状態(図5(a))から、ユーザの操作により異物除去部材120の交換モードに入った場合(ステップS100)、制御手段である不図示のコントローラは、レンズユニットがレンズマウント2から取り外されているかの否かを確認する(ステップS101)。レンズユニット装着の有無の確認は、レンズマウント2の電気接点等により行うことができる。レンズユニットが取り付けられたままであれば、例えば表示モニタ8にレンズユニットを取り外す旨のメッセージを表示する。
【0054】
レンズユニットが取り外されていることが確認されると、コントローラは、クイックリターンミラー3を退避させ(ステップS102)、続いて先幕23を撮影開口部から退避させる(ステップS103)。
【0055】
次に、コントローラは、異物除去部(支持板108及び異物除去部材120)をLPF104の表面上の所定の位置まで移動させる(図5(b)、ステップS104)。この状態で、既述したようにしてレンズマウント2のマウント開口から異物除去部材120を交換する(ステップS105)。すなわち、支持板108の挿入穴108bに棒等を挿入し、板バネ121を押圧して光軸方向に圧縮した状態とする。そして、板バネ取付軸124をガイド溝108aに沿わせて異物除去部材120を支持板108の外まで移動させる。異物除去部材120が完全に支持板108の下方にスライドすれば、異物除去部材120を光軸方向に取り出すことが可能となる(図5(d))。続いて、新たな異物除去部材120をLPF104の表面上で支持板108の下方に配し、板バネ121を押圧して光軸方向に圧縮した状態とする。そして、板バネ取付軸124を支持板108のガイド溝108aにスライド挿入することにより、異物除去部材120を装着することができる。
【0056】
次に、ユーザがカメラボタン等を操作することにより交換の完了が確認されると(ステップS106)、異物除去部(支持板108及び異物除去部材120)を退避位置に戻す(ステップS107)。
【0057】
次に、退避させていた先幕23を再び撮影待機状態にセットし(ステップS108)、クイックリターンミラー3も撮影待機状態にセットして(ステップS109)、撮影待機状態となる(ステップS110)。
【0058】
以上述べた交換作業中には、図8に示すように、例えば表示モニタ8に交換作業中である旨のメッセージを表示する。異物除去部材120の交換作業中に電源が絶たれると、クイックリターンミラー3やシャッタ羽根の係合が解かれ、交換作業部と干渉してしまう不具合が生じるおそれがあるからである。また、交換モードが選択された際には、AC電源で電源供給されているか充電池の残容量が一定以上である場合のみ交換作業を許可するようにしても良い。
【0059】
次に、図9、10を参照して、異物除去部材120の交換を専用の装置を用いて行う例について説明する。図9は、異物除去部材120の交換作業を容易化するための交換装置の構成例を示す斜視図である。
【0060】
交換装置200は、レンズマウント2に固定する円形のマウント取付座207を備え、台座204、アーム202、操作レバー206、交換レバー201がそれぞれ光軸を対称に左右に配置される。
【0061】
各台座204には内外側面を貫通する長穴部204aが形成されている。これら左右の台座204の長穴部204aには2本のガイドバー203が挿通し、ガイドバー203の端部が抜け止めされている。
【0062】
各台座204の内側にはマウント取付座207を貫通するアーム202が配置されており、ガイドバー203は左右のアーム202も挿通する。アーム202の長さは、後述するように、マウント取付座207をレンズマウント2にセットしたときに異物除去部材120に届くように設定されている。
【0063】
マウント取付座207にはアーム202まわりに矩形穴208が形成されており、アーム202はそれぞれ矩形穴208内で移動可能となっている。すなわち、アーム202は台座204の長穴部204aの長穴方向、及び、ガイドバー203に沿う方向に移動可能となっている。ガイドバー203の中央部には圧縮バネ205が配設され、アーム202はそれぞれ矩形穴208の外側にガタ寄せされている。
【0064】
各アーム202の先端には、交換レバー201が設けられる。交換レバー201には、異物除去部材120の板バネ取付軸124と係合するための半円状の切欠部201aが形成されている。また、各アーム202の上部には、アーム202を操作するための操作レバー206が設けられる。
【0065】
図10を参照して、交換装置200による異物除去部材120の交換作業を説明する。交換レバー201の半円状の切欠部201aを異物除去部材120の板バネ取付軸124に係合させて、圧縮バネ205の圧縮方向に左右の操作レバー206を操作し、異物除去部材120を予め把持しておく。また、支持板108を、退避位置から、LPF104の表面上の所定の位置に移動させておく。この状態で、把持した異物除去部材120をマウント開口内に挿入し、マウント取付座207をレンズマウント2にセットする(図10(a))。このとき、異物除去部材120を支持板108の移動方向の下方に配する。アーム202の長さは、ワイパ部材107がLPF104と接触し、板バネ121が適度に圧縮され、支持板108よりも交換レバー201の方がLPF104に接近する状態となるように設定されている。
【0066】
左右の操作レバー206を操作して、圧縮バネ205を圧縮したままアーム202を台座204の長穴部204aの長穴方向に移動させる。そして、板バネ取付軸124を支持板108のガイド溝108aにスライド挿入するように異物除去部材120を支持板108の下部から差し入れる(図10(b))。
【0067】
次に、左右の操作レバー206を外側に開くと、アーム202もそれぞれ外側に移動し、交換レバー201と異物除去部材120との係合が解かれ、板バネ取付軸124が支持板108の規制穴108cに挿入される。
【0068】
その後、左右の操作レバー206を操作して、アーム202を開いた状態のまま交換レバー201を支持板108の下部から退避させる(図10(c))。そして、マウント取付座207をレンズマウント2から取り外せば、異物除去部材120の交換作業が完了する。
【0069】
異物除去部材120を支持板108から取り外す際は、上述の装着動作と逆の手順を行えば良い。
【0070】
以上のように交換装置200を用いることにより、異物除去部材120の交換作業が容易かつ確実に行うことができる。なお、本例では手動操作を行う交換装置200を説明したが、モータ等のアクチュエータを用いて電動化しても良い。
【0071】
なお、本実施形態では、本発明でいう光学部材としてLPF104の表面に付着した異物を除去する構成を説明したが、他のフィルタ類や撮像素子101の表面(カバーガラスの表面)に付着した異物を除去する構成としてもよい。
【0072】
また、異物除去動作は、カメラの電源ON時やOFF時、若しくはユーザが設定した任意のタイミングで行われるようにすればよい。また、カメラに、異物除去動作の回数を記憶する記憶手段を備えておき、所定の動作回数を経過した際に、異物除去部材120の交換を促す通知を行う(例えば表示モニタ8にメッセージを表示する)ようにしても良い。これにより、異物除去部材120の異物除去能力が低下した状態で異物除去動作が行われることを防止することができる。
【0073】
また、光学部材の表面に付着している異物の種類を判定する判定手段を備えておき、通常の異物除去部では除去できないと判定されたときに、異物除去部材120の交換を促す通知を行うようにしても良い。例えば、通常は異物除去部材120のワイパ部材107として金属や樹脂の微粒子除去に適した植毛ブラシを装着しておき、判定手段により液体が付着していることが判定された場合に、洗浄液をつけた繊維状材料に交換を促すようにする。
【0074】
なお、本発明を適用する撮像装置は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えばシャッタ構成について、先幕及び後幕の羽根の配置や走行方向にも限定されることはない。撮影開始前状態で撮影開口を開放して被写体像をモニタ表示できるようにしたシャッタや、羽根が一組しかなく、撮像素子自体のシャッタ機能により露出制御し、露光完了時に撮影開口を遮蔽して不要光をカットするタイプのシャッタであっても良い。また、クイックリターンミラーが無いカメラや、シャッタが無いカメラ等にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの構成を示す図である。
【図2】被写体側から見たカメラの一部正面図であり、各部のサイズの関係を示す図である。
【図3】カメラ内部のユニット構成を示す分解斜視図である。
【図4】撮像ユニットの斜視図である。
【図5】異物除去機構及びシャッタユニットの各動作状態での断面を模式的に示す図である。
【図6】支持板及び異物除去部材の斜視図である。
【図7】異物除去部材の着脱作業を説明するための図である。
【図8】異物除去部材の交換時のカメラ動作シーケンスを示すフローチャートである。
【図9】異物除去部材の交換装置を示す斜視図である。
【図10】交換装置による異物除去部材の交換作業を説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
1 カメラボディ
2 レンズマウント
3 クイックリターンミラー
4 サブミラー
10 ミラーボックス
20 シャッタユニット
21 シャッタプレート
22 カバー板
23 先羽根群(先幕)
24 後羽根群(後幕)
50 メインフレーム
100 撮像ユニット
101 撮像素子
104 LPF(ローパスフィルタ)
107 ワイパ部
108 支持板
108a ガイド溝
108b 挿入穴
108c 規制穴
109 モータアングル
110 駆動モータ
111 リードスクリュ
112 ガイドバー
113 ガイドアングル
114 ガイドバー
115 駆動ガイド
116 駆動ラック
120 異物除去部材
121 板バネ
122 ベース板
123 取付軸
124 板バネ取付軸
125 粘着部
200 交換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を光電変換する撮像素子と、
前記撮像素子の前方に配置された光学部材と、
前記光学部材の前方に配置されたシャッタユニットと、
レンズユニットが着脱可能に固定されるレンズマウントと、
前記光学部材と前記シャッタユニットとの間に設けられ、異物除去部材を前記光学部材の表面に接触させながら移動させる異物除去機構とを備え、
前記レンズユニットを取り外した状態で、前記レンズマウントのマウント開口から前記異物除去部材の交換作業を行えるようにしたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記異物除去部材を交換する交換モードにおいて、
撮影準備状態において光軸上に位置するミラー及び撮影準備状態において光軸上に位置する前記シャッタユニットのシャッタ羽根を退避させる処理と、
前記異物除去部材を前記光学部材の表面上の所定の位置まで移動させる処理と、
前記異物除去部材の交換の完了後に前記異物除去部材を退避させる処理と、
前記ミラー及び前記シャッタユニットのシャッタ羽根を撮影準備状態にセットする処理とを行う制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記異物除去部材は支持板に着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記支持板には、前記異物除去部材の係合部と係合して前記異物除去部材の光軸と直交する方向への移動を規制する規制部と、前記係合部の前記規制部との係合を解除した状態で前記異物除去部材を前記支持板の外へとガイドするガイド部とを備え、
前記異物除去部材は、前記係合部を前記規制部に係合させるように付勢する弾性部材を備えたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記異物除去部材は、前記弾性部材により前記光学部材側に付勢されるワイパ部材を備えたことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記ワイパ部材は植毛ブラシ、ゴムワイパ、及び繊維状材料のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記支持板には挿入穴が形成されており、前記支持板の前記異物除去部材の装着面とは裏側から前記弾性部材を押圧して、前記係合部の前記規制部との係合を解除できるようにしたことを特徴とする請求項5又は6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記異物除去部材の少なくとも一部が前記シャッタユニットのシャッタ羽根の走行面を移動することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
異物除去動作の回数を記憶する記憶手段を備え、所定の動作回数を経過した際に、前記異物除去部材の交換を促す通知を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−188834(P2009−188834A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28016(P2008−28016)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】