説明

撮像装置

【課題】反射ミラーの駆動装置の機構を単純化できるようにした一眼レフカメラを提供する。
【解決手段】一眼レフカメラ1Aは、レンズ3から入射された光の像を撮像する撮像素子4と、レンズ3から入射された光の像をファインダ窓に導くペンタプリズム6と、レンズ3から入射された光の像を、ミラーダウン位置でペンタプリズム6へ反射すると共に、ミラーアップ位置で撮像素子4へ入射させる反射ミラー7と、反射ミラー7をミラーダウン位置とミラーアップ位置との間で駆動するミラー駆動装置70とを備え、ミラー駆動装置70は、反射ミラー7を駆動するボイスコイルモータ71を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一眼レフカメラと称される撮像装置に関する。詳しくは、反射ミラーの駆動装置をボイスコイルモータ(VCM)で構成することで、反射ミラーの駆動装置の機構を単純化できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一眼レフレックス(一眼レフ)カメラは、レンズから入射した光の像を、構図決定時にはファインダ窓で視認可能とし、撮影時には撮像素子やフィルムに結像させるため、光路を切り替える反射ミラーを備えている。
【0003】
一眼レフカメラは、撮影前の構図決定時には、反射ミラーがレンズから撮像素子への光路中に位置し、レンズから入射した光の像が反射ミラーで反射され、ファインダ光学系に導光される。これにより、レンズに入射した光の像をファインダ窓で視認可能となる。
【0004】
一方、レリーズボタンが押された撮影時には、ミラーアップ等と称される動作で反射ミラーが上昇すると共にシャッタが開閉して、レンズに入射した光の像が撮像素子等に結像して、撮像が行われる。そして、撮像が終了すると、反射ミラーは、ミラーダウン等と称される動作で復帰する。
【0005】
従来の一眼レフカメラは、バネの力で反射ミラーが駆動される。また、反射ミラーをバネの力で駆動するため、反射ミラーを駆動するバネの圧縮等を行うミラーチャージと称される動作が必要である。フィルムを使うカメラでは、手動によるフィルム巻上げレバーの回転動作を伝達する機構を有し、フィルム巻上げレバーの回転動作と連動してミラーチャージを行う機構を備えていた。また、オートフォーカス(AF)機能を有した一眼レフカメラ等では、フィルムの巻上げ動作がモータにより行われるようになった。そこで、モータによるフィルム巻上げの回転動作を伝達する機構を有し、モータの駆動力でミラーチャージを行う機構を備えていた(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
そして、フィルムを利用しないデジタルスチルカメラでは、ミラーチャージ用にモータを有し、モータによる回転動作をギアで減速して伝達する機構を有して、増力されたモータの駆動力でミラーチャージを行う機構を備えていた。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−201030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の一眼レフカメラでは、反射ミラーを駆動するバネと、ミラーチャージを行う機構と、ミラーアップの動作とミラーダウンの動作を切り替える機構等が必要で、反射ミラーの駆動装置が複雑な構成となっていた。また、高速連写を要求されるような使用環境では、高速応答性という観点でミラーチャージ時間がボトルネックになる。
【0009】
ミラーチャージ時間を短縮するには、モータを大型化すると共に減速比を小さくして対応する方法が考えられる。しかし、バネをチャージしてその開放エネルギーで反射ミラーを跳ね上げる機構の高速応答限界が、バネの力量とモータの動力で決まってしまう。
一方、反射ミラーを駆動するバネを強力にし、ミラーチャージ用のモータも大型化してミラーの高速応答性を高める方法も考えられる。しかし、ミラーアップ後にミラーダウン位置に戻すためのバネも強化しなければならず、駆動系には常に大きな応力が掛かり続けるため、部品には高い剛性と精度が同時に求められる。そのために駆動系の重量が増すこと、また体積も占有することで、二律背反的な選択を迫られると共に高速応答要求に対するボトルネックは解消出来ない。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、反射ミラーの駆動装置の機構を単純化できるようにした撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明は、撮影光学系から入射された光の像を撮像する撮像手段と、撮影光学系から入射された光の像をファインダ窓に導くファインダ光学系と、撮影光学系から入射された光の像を、第1の位置でファインダ光学系に反射すると共に、第2の位置で撮像手段へ入射させる反射ミラーと、反射ミラーを第1の位置と第2の位置との間で駆動するミラー駆動装置とを備え、ミラー駆動装置は、電流が流れるコイル部を有すると共に、コイル部を囲む磁気回路を構成するマグネット及び磁気ヨークを有して、コイル部に電流を流すことで生じる力で反射ミラーを駆動するボイスコイルモータを備えた撮像装置である。
【0012】
本発明の撮像装置では、レリーズボタンが押されると、ボイスコイルモータに所定の駆動電流が流れ、反射ミラーがミラーアップ動作で第1の位置から第2の位置に上昇し、撮像が行われる。撮像が終了すると、ボイスコイルモータに所定の駆動電流が流れ、反射ミラーがミラーダウン動作で第2の位置から第1の位置に復帰する。
【0013】
また、本発明は、撮影光学系から入射された光の像を撮像する撮像手段と、撮影光学系から入射された光の像をファインダ窓に導くファインダ光学系と、撮影光学系から入射された光の像を、第1の位置でファインダ光学系に反射すると共に、第2の位置で撮像手段へ入射させる反射ミラーと、反射ミラーを第1の位置と第2の位置との間で駆動するミラー駆動装置とを備え、ミラー駆動装置は、電流が流れるコイル部を有すると共に、コイル部を囲む磁気回路を構成するマグネット及び磁気ヨークを有して、コイル部に電流を流すことで生じる力で反射ミラーを駆動するボイスコイルモータと、反射ミラーと重量がつり合わせられて反射ミラーの重量を打ち消すカウンターウエイトを備えた撮像装置である。
【0014】
本発明の撮像装置では、レリーズボタンが押されると、ボイスコイルモータに所定の駆動電流が流れ、反射ミラーがミラーアップ動作で第1の位置から第2の位置に上昇し、撮像が行われる。撮像が終了すると、ボイスコイルモータに所定の駆動電流が流れ、反射ミラーがミラーダウン動作で第2の位置から第1の位置に復帰する。反射ミラーは、カウンターウエイトを備えることで重量が打ち消され、反射ミラーのミラーアップ動作及びミラーダウン動作での反動が最小に抑えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撮像装置によれば、ミラー駆動装置をシンプルな機構で実現できるので、低コスト化及び軽量化を図ることができる。また、シンプルな機構のミラー駆動装置で、高速応答性を実現するための反射ミラーの動作の高速化が可能である。
【0016】
また、本発明の撮像装置によれば、レリーズ時の反動を最小にすることができる。更に、カメラ本体部の姿勢に依存しないミラー動作が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の撮像装置の実施の形態としての一眼レフレックスカメラ(一眼レフカメラと称す)について説明する。
【0018】
<本実施の形態の一眼レフカメラの全体構成例>
図1は、本実施の形態の一眼レフカメラの一例を示す構成図である。本実施の形態の一眼レフカメラ1Aは、カメラ本体部2にレンズ3が着脱可能に取り付けられる。撮影光学系を構成するレンズ3は、焦点距離の異なる単焦点レンズ、異なる焦点距離をカバーするズームレンズ等が用意され、カメラ本体部2に対してレンズ3が交換可能となっている。
【0019】
本実施の形態の一眼レフカメラ1Aは、いわゆるデジタルスチルカメラであれば、レンズ3から入射された光の像を電気信号に変換する撮像素子4を撮像手段としてカメラ本体部2に備える。一方、フィルムを利用するカメラであれば、フィルムで撮像手段を構成し、フィルムを送る機構や、結像位置でフィルムを支持する機構等を備える。一眼レフカメラ1Aは、撮像素子4またはフィルムにおける露光時間を制御するシャッタ5をカメラ本体部2に備える。
【0020】
一眼レフカメラ1Aは、レンズ3から入射された光の像を視認可能とするため、レンズ3から入射された光の像を、ファインダ光学系を構成するペンタプリズム6に入射させる反射ミラー7をカメラ本体部2に備える。
【0021】
一眼レフカメラ1Aは、反射ミラー7を駆動するミラー駆動装置70をカメラ本体部2に備える。ミラー駆動装置70は、反射ミラー7を昇降させるボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil motor)71を備える。ミラー駆動装置70は、本例ではミラー軸72Aを中心として反射ミラー7を回転動作させ、図1に実線で示す第1の位置であるミラーダウン位置と、一点鎖線で示す第2の位置であるミラーアップ位置との間で昇降させる。
【0022】
反射ミラー7は、図1に実線で示すミラーダウン位置では、レンズ3から撮像素子4への光路で、ミラー面が光路に対して45度の向きに位置する。また、反射ミラー7は、図1に一点鎖線で示すミラーアップ位置では、レンズ3から撮像素子4への光路から退避する。
【0023】
これにより、一眼レフカメラ1Aは、反射ミラー7が図1に実線で示すミラーダウン位置にあると、レンズ3から入射された光の像が反射ミラー7で反射され、ペンタプリズム6に入射される。ペンタプリズム6に入射した光の像は正立像に変換され、ファインダ窓6aで視認可能となる。
【0024】
一方、一眼レフカメラ1Aは、反射ミラー7が図1に一点鎖線で示すミラーアップ位置にあると、レンズ3から入射された光の像がシャッタ5の開閉によって撮像素子4に入射される。
【0025】
なお、反射ミラー7は、ミラー面の一部がハーフミラーで構成され、ハーフミラーの形成部位の裏側にサブミラー7aを備える。反射ミラー7は、ハーフミラーの形成部位では、光の透過率に応じて、入射した光の所定量は反射し残部は透過する。
【0026】
ミラー駆動装置70は、反射ミラー7の昇降に連動してサブミラー7aを開閉する機構を備え、反射ミラー7が図1に実線で示すミラーダウン位置にあると、サブミラー7aが開く。一方、反射ミラー7が図1に一点鎖線で示すミラーアップ位置にあると、サブミラー7aが閉じる。
【0027】
一眼レフカメラ1Aは、AFモジュール8をカメラ本体部2に備え、反射ミラー7が図1に実線で示すミラーダウン位置にあると、レンズ3から入射された光の一部が反射ミラー7を透過してサブミラー7aで反射され、AFモジュール8に入射されることで、被写体に対する測距が行われる。
【0028】
一眼レフカメラ1Aは、撮影前の構図決める動作では、反射ミラー7はミラーダウン位置にあって、レンズ3から入射された光の像をペンタプリズム6に入射させ、正立像をファインダ窓6aで視認可能とする。
【0029】
一眼レフカメラ1Aは、図示しないレリーズボタンが押されると、ボイスコイルモータ71が駆動されて、反射ミラー7がミラーアップ位置に上昇する、また、所定のタイミングでシャッタ5が開き、レンズ3から入射した光の像が撮像素子4に結像される。通常、シャッタ5は先幕と後幕の間のスリットの幅でシャッタスピードが決定され、シャッタスピードに応じた露光が行われて撮像される。
【0030】
また、シャッタ5が閉じるタイミングに合わせてボイスコイルモータ71が駆動されて、反射ミラー7がミラーダウン位置に復帰する。これにより、レンズ3に入射した光の像が、反射ミラー7で反射してペンタプリズム6に入射し、ファインダ窓6aで視認可能な状態となる。
【0031】
<第1の実施の形態のミラー駆動装置の構成例>
図2は、第1の実施の形態のミラー駆動装置の構成の一例を示す斜視図である。なお、図2では、サブミラーに関する構成は図示していない。
【0032】
第1の実施の形態のミラー駆動装置70Aは、反射ミラー7にコイル部であるボイスコイル73Aが設けられ、このボイスコイル73Aをマグネット74と磁気ヨーク75で構成される磁気回路で囲い込む構成としたボイスコイルモータ71Aを備える。
【0033】
ミラー駆動装置70Aは、ミラー軸72Aの軸方向に沿った側面からみて、反射ミラー7がミラー軸72Aを中心に45度以上回転できるように構成される。ボイスコイル73Aは、反射ミラー7の枠体の側面に一体に形成され、ミラー軸72Aを中心として反射ミラー7と一体で回転できるように構成される。
【0034】
マグネット74と磁気ヨーク75は、ミラー軸72Aを中心としたボイスコイル73Aの回転軌跡に沿った円弧形状を有して、ボイスコイル73Aを囲む。磁気ヨーク75の内部にボイスコイル73Aと対向して設けられるマグネット74は、扇形の円弧形状の中央部を境にS極とN極に着磁される。
【0035】
ミラー駆動装置70Aは、反射ミラー7と一体に設けられたボイスコイル73Aに一定方向に電流を流すと、マグネット74と磁気ヨーク75で構成された磁気回路内でボイスコイル73Aに力が働く。ボイスコイル73Aは、反射ミラー7によってミラー軸72Aを中心に回転可能に支持され、マグネット74は、ボイスコイル73Aが動き得る軌跡に沿って配置されるので、ボイスコイル73Aに働く力でミラー軸72Aを中心とした回転力が得られる。
【0036】
これにより、ミラー駆動装置70Aは、ボイスコイル73Aに電流を流すことで、ボイスコイル73Aと一体で反射ミラー7がミラー軸72Aを中心に回転する。また、ミラー駆動装置70Aは、ボイスコイル73Aに流す電流の向きによって、反射ミラー7の回転する方向が切り替えられ、電流の有無で反射ミラー7の回転と停止が切り替えられる。更に、ミラー駆動装置70Aは、ボイスコイル73Aに流す電流の向きの切り替えと電流の有無で、回転する反射ミラー7に制動をかけて、所定の位置で停止させることが可能である。
【0037】
このように、ミラー駆動装置70Aは、ボイスコイル73Aに流す電流を制御することで、反射ミラー7のミラーダウン位置からミラーアップ位置までの回転動作と、ミラーアップ位置からミラーダウン位置までの回転動作が行われる。ここで、ミラー駆動装置70Aは、反射ミラー7をミラーダウン位置及びミラーアップ位置で静止状態に保持するために、ボイスコイル73Aに必要最低限のアイドリング電流を流すことで、メカニカルなロック機構によらず、反射ミラー7を静止状態に保持できる。
【0038】
なお、磁気ヨーク75はボイスコイル73Aを囲む形状であるが、磁気ヨーク75を分割構造とすることで、組み立て性に問題は生じない。また、磁気ヨーク75は、マグネット74が取り付けられている平面と、磁気回路を閉じるコの字型形状に分割するのが一般的であるが、本発明では分割位置は任意に決められる。そして、磁気ヨーク75はプレス加工等で容易に製作することが可能である。
【0039】
<第2の実施の形態のミラー駆動装置の構成例>
図3は、第2の実施の形態のミラー駆動装置の構成の一例を示す斜視図である。なお、図3では、サブミラーに関する構成は図示していない。
【0040】
第2の実施の形態のミラー駆動装置70Bは、コイル部としてコイルモータ軸72Bを中心に回転するボイスコイル73Bを有し、このボイスコイル73Bをマグネット74と磁気ヨーク75で構成される磁気回路で囲い込む構成としたボイスコイルモータ71Bを備える。
【0041】
ミラー駆動装置70Bは、ミラー軸72Aの軸方向に沿った側面からみて、反射ミラー7がミラー軸72Aを中心に45度以上回転できるように構成される。ミラー駆動装置70Bは、コイルモータ軸72Bに設けられたコイルモータギア76Aが、反射ミラー7のミラー軸72Aに設けられたミラーギア76Bとかみ合い、コイルモータ軸72Bを支点としたボイスコイル73Bの回転動作が反射ミラー7に伝達される。
【0042】
ミラー駆動装置70Bは、ボイスコイル73Bの回転方向と反射ミラー7の回転方向を反転させ、反射ミラー7とボイスコイル73Bの重量を一致させることで、ボイスコイル73Bがカウンターウエイトとなる。ミラー駆動装置70Bは、反射ミラー7の角度及び図1に示すカメラ本体部2の向きによらず、反射ミラー7とボイスコイル73Bがつり合う。
【0043】
マグネット74と磁気ヨーク75は、コイルモータ軸72Bを中心としたボイスコイル73Bの回転軌跡に沿った円弧形状を有して、ボイスコイル73Bを囲む。磁気ヨーク75の内部にボイスコイル73Bと対向して設けられるマグネット74は、扇形の円弧形状の中央部を境にS極とN極に着磁される。
【0044】
ミラー駆動装置70Bは、ボイスコイル73Bに一定方向に電流を流すと、マグネット74と磁気ヨーク75で構成された磁気回路内でボイスコイル73Bに力が働く。ボイスコイル73Bは、コイルモータ軸72Bを中心に回転可能に支持され、マグネット74は、ボイスコイル73Bが動き得る軌跡に沿って配置されるので、ボイスコイル73Bに働く力でコイルモータ軸72Bを中心とした回転力が得られる。
【0045】
ボイスコイル73Bは、コイルモータ軸72Bを中心に回転するコイルモータギア76Aが、反射ミラー7のミラーギア76Bとかみ合っており、ボイスコイル73Bの回転動作が反射ミラー7に伝達される。そして、コイルモータギア76Aとミラーギア76Bの回転方向は反転するので、反射ミラー7とボイスコイル73Bが反転動作(カウンター動作)を行う。
【0046】
これにより、ミラー駆動装置70Bは、ボイスコイル73Bに電流を流すことで、ボイスコイル73Bと反射ミラー7がカウンター動作で回転する。また、ミラー駆動装置70Bは、ボイスコイル73Bに流す電流の向きによって、反射ミラー7の回転する方向が切り替えられ、電流の有無で反射ミラー7の回転と停止が切り替えられる。更に、ミラー駆動装置70Bは、ボイスコイル73Bに流す電流の向きの切り替えと電流の有無で、回転する反射ミラー7に制動をかけて、所定の位置で停止させることが可能である。
【0047】
このように、ミラー駆動装置70Bは、ボイスコイル73Bに流す電流を制御することで、反射ミラー7のミラーダウン位置からミラーアップ位置までの回転動作と、ミラーアップ位置からミラーダウン位置までの回転動作が行われる。また、ミラー駆動装置70は、カウンター動作を行う反射ミラー7とボイスコイル73Bの重量を一致させることで、反射ミラー7が回転するときの反動を打ち消すことができる。更に、図1に示すカメラ本体部2の向きの影響を受けずに、反射ミラー7の回転動作を行うことができる。ここで、ミラー駆動装置70Bは、反射ミラー7をミラーダウン位置及びミラーアップ位置で静止状態に保持するために、ボイスコイル73Bに必要最低限のアイドリング電流を流すことで、メカニカルなロック機構によらず、反射ミラー7を静止状態に保持できる。
【0048】
<本実施の形態の一眼レフカメラの制御機能例>
図4は、本実施の形態の一眼レフカメラの制御機能の一例を示す機能ブロック図であり、第1の実施の形態のミラー駆動装置70Aと、第2の実施の形態のミラー駆動装置70Bに関連する制御機能について説明する。
【0049】
一眼レフカメラ1Aは、反射ミラー7にロータリーエンコーダ9を備える。ロータリーエンコーダ9は位置検出手段を構成し、円形または円弧状(扇形)の板材が、反射ミラー7のミラー軸72Aを中心として回転可能に取り付けられ、ミラー軸72Aを中心とした円周上に所定の間隔で並ぶスリット90が設けられる。なお、図3で説明した第2の実施の形態のミラー駆動装置70Bでは、コイルモータ軸72Bにロータリーエンコーダ9を備えても良い。
【0050】
一眼レフカメラ1Aは、ロータリーエンコーダ9のスリット90を検出するフォトインタラプタ等の位置検出センサ91を位置検出手段として備える。一眼レフカメラ1Aは、図2で説明したボイスコイル73Aまたは図3で説明したボイスコイル73Bに電流を流すことで、反射ミラー7が回転すると、ロータリーエンコーダ9のスリット90が位置検出センサ91で読み取られる。
【0051】
一眼レフカメラ1Aの制御部100は、位置検出センサ91の出力から、ボイスコイル73A,73Bを駆動するコイル駆動部101の出力波形が台形駆動となるような制御を行う。また、反射ミラー7のミラーダウン位置及びミラーアップ位置における位置検出を行う。これにより、制御部100は、位置検出センサ91の出力を読み取ることで、反射ミラー7の回転動作を、サーボループ内での非接触制御によって行うことが可能となる。ここで、反射ミラー7の回転速度は、ミラーダウン位置とミラーアップ位置の間の全域で一定となるように、ボイスコイル73,73Bに流す電流が制御される。なお、反射ミラー7の回転速度を、ミラーダウン位置とミラーアップ位置の間で変えても良い。
【0052】
一眼レフカメラ1Aは、反射ミラー7の位置を固定するロック機構92を備える。ロック機構92は、例えばスライド移動する係止爪部92aと、係止爪部92aを駆動するソレノイド92bを、図1に示すカメラ本体部2に備える。また、反射ミラー7に、係止爪部92aが形成される係止凹部92cを備える。
【0053】
ロック機構92は、一眼レフカメラ1Aの電源オン時には、電源の供給を受けてソレノイド92bが係止爪部92aを移動させ、反射ミラー7のミラーダウン位置でのロックを開放するロックオフ状態となる。また、一眼レフカメラ1Aの電源オフ時には、電源の供給が停止され、バネ等の力で係止爪部92aが移動して係止凹部92cに係止され、反射ミラーをミラーダウン位置でロックするロックオン状態となる。
【0054】
上述したように、一眼レフカメラ1Aでは、ミラー駆動装置70A,70Bで反射ミラー7をミラーダウン位置及びミラーアップ位置で静止状態に保持するために、制御部100は、ボイスコイル73A,73Bに必要最低限のアイドリング電流を流す制御を行う。これにより、メカニカルなロック機構によらず、反射ミラー7を静止状態に保持できる。
【0055】
一方、電源オフ時では、ボイスコイル73A,73Bに電流を流せないので、メカニカルなロック機構92が必要となる。このため、一眼レフカメラ1Aは、操作部102の操作で電源がオンとなると、反射ミラー7がミラーダウン位置にある状態では、ボイスコイル73A,73Bに必要最低限のアイドリング電流を流す制御を行い、反射ミラー7を静止状態で保持する。また、ロック機構92のソレノイド92bを駆動して、係止爪部92aを反射ミラー7の係止凹部92cから外す。これにより、ロック機構92による反射ミラー7のロックは解除される。
【0056】
一眼レフカメラ1Aは、操作部102の操作で電源がオフとなると、ロック機構92のソレノイド92bの駆動を停止して、図示しないバネの力等で係止爪部92aを反射ミラー7の係止凹部92cに係止する。これにより、ロック機構92により反射ミラー7がロックされ、ボイスコイル73A,73Bに電流が流れなくても、反射ミラー7はミラーダウン位置で静止状態を保つ。
【0057】
なお、一眼レフカメラ1Aは、バルブ撮影では、反射ミラー7をミラーアップ位置で保持する必要がある。通常、反射ミラー7をミラーアップ位置で静止状態に保持するために、制御部100は、ボイスコイル73A,73Bに必要最低限のアイドリング電流を流す制御を行う。但し、長時間にわたるバルブ撮影を考慮して、ミラーアップ位置でも反射ミラー7をメカニカルにロックできるロック機構を備えても良い。
【0058】
例えば、反射ミラー7のミラー軸72Aにディスクブレーキ93を備えても良い。ディスクブレーキ93は、駆動時には電源の供給を受けてブレーキを解放するロックオフ状態となり、非駆動時には電源の供給が停止され、バネの力等でブレーキをかけるロックオン状態となる構成とする。これにより、バルブ撮影では、反射ミラー7をミラーアップ位置として、ディスクブレーキ93を非駆動とすることで、ボイスコイル73A,73Bにアイドリング電流を流すことなく、反射ミラー7をミラーアップ位置で保持する。
【0059】
また、一眼レフカメラ1Aの電源オン時に反射ミラーをミラーダウン位置等で静止させる機能を、ボイスコイル73A,73Bにアイドリング電流を流すのではなく、例えばディスクブレーキ93の駆動,非駆動を切り替えて行っても良い。
【0060】
第1の実施の形態のミラー駆動装置70Aでは、一眼レフカメラ1Aを通常の横向きとして撮影するとき、縦向きとして撮影するとき、上向きで撮影するとき等で、カメラ本体部2の姿勢によって反射ミラー7に加わる静荷重の方向が異なる。これにより、カメラ本体部2の姿勢が反射ミラー7の動作に影響を及ぼす可能性がある。そこで、カメラ本体部2の姿勢を検知する姿勢検知手段としての姿勢検知センサ94を備える。
【0061】
制御部100は、姿勢検知センサ94で検知されたカメラ本体部2の姿勢に基づいて、ボイスコイル73Aに流す電流を制御し、反射ミラー7の速度を、カメラ本体部2の姿勢によらず例えば一定とする。
【0062】
<本実施の形態の一眼レフカメラの作用効果例>
本実施の形態の一眼レフカメラでは、ミラーアップ及びミラーダウンを行うミラー駆動装置に、ハードディスクドライブ装置(HDD)で利用されるようなボイスコイルモータを備えている。そして、バネの力を利用せずに、コイルに生じる力で反射ミラーを直接駆動している。これにより、従来必要であったミラーチャージ時間を必要とせず、高速連写のボトルネックを解消することができる。
【0063】
また、従来のバネで駆動する機構のように、ミラーアップ・ダウン直後のミラーバウンドによる振動を緩衝する機構が不要で、静位置に落ち着くまでのセトリングタイムを最小にする動作を、コイルに流す電流の制御で実現できる。
【0064】
更に、従来のバネで駆動する機構で必要であった、静位置を保持する戻りバネ機構が不要となり、機構系の剛性を落として軽量化できるため、より高速応答化を図ることができる。
【0065】
第1の実施の形態のミラー駆動装置70Aでは、ボイスコイル73Aを反射ミラー7と一体に形成することによって、組み立て時の組立制度管理が容易になる。第2の実施の形態のミラー駆動装置70Bでは、ボイスコイル73Bの重量を反射ミラー7と合わせ、かつ、ギアを介してカウンター動作させることで、レリーズ時の反動を最小にすることができる。また、カメラ本体部の姿勢に依存しないミラー動作が可能になる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態の一眼レフカメラは、第1の実施の形態のミラー駆動装置70Aまたは第2の実施の形態のミラー駆動装置70Bを備えることで、ミラーチャージ機構が不要であり、ミラー駆動装置の機構のシンプル化を図ることができる。また、機構がシンプルになることで、故障要因が削減され、低コスト化を図ることができる。更に、バネによりミラーを戻す機構も不要であり、バネの応力に耐えるための堅牢性が不要となるので、軽量化を図ることができる。そして、シンプルな機構で、高速応答性を実現するための反射ミラーの動作の高速化が可能である。
【0067】
第2の実施の形態のミラー駆動装置70Bでは、ボイスコイル73Bをカウンターウエイトとして、反射ミラー7の重量を打ち消しているので、カメラ本体部2の姿勢に反射ミラー7の動作が影響を受けない。
【0068】
なお、本実施の形態の一眼レフカメラは、コイルに流す電流の制御で、ミラー作動音やミラー動作衝撃を殆ど消すような動作が可能になる。一方、従来のミラー動作にあるような、作動音をある程度残しながら動作させることも可能であり、ユーザの好みに合わせた操作感を持たせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、一眼レフカメラに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施の形態の一眼レフカメラの一例を示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態のミラー駆動装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図3】第2の実施の形態のミラー駆動装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の一眼レフカメラの制御機能の一例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1A・・・一眼レフカメラ、2・・・カメラ本体部、3・・・レンズ、4・・・撮像素子、5・・・シャッタ、6・・・ペンタプリズム、6a・・・ファインダ窓、7・・・反射ミラー、70A,70B・・・ミラー駆動装置、71A,71B・・・ボイスコイルモータ、72A・・・ミラー軸、72B・・・コイルモータ軸、73A,73B・・・ボイスコイル、74・・・マグネット、75・・・磁気ヨーク、9・・・ロータリーエンコーダ、91・・・位置検出センサ、92・・・ロック機構、100・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系から入射された光の像を撮像する撮像手段と、
前記撮影光学系から入射された光の像をファインダ窓に導くファインダ光学系と、
前記撮影光学系から入射された光の像を、第1の位置で前記ファインダ光学系に反射すると共に、第2の位置で前記撮像手段へ入射させる反射ミラーと、
前記反射ミラーを第1の位置と第2の位置との間で駆動するミラー駆動装置とを備え、
前記ミラー駆動装置は、電流が流れるコイル部を有すると共に、前記コイル部を囲む磁気回路を構成するマグネット及び磁気ヨークを有して、前記コイル部に電流を流すことで生じる力で前記反射ミラーを駆動するボイスコイルモータを備えた
撮像装置。
【請求項2】
前記ミラー駆動装置は、前記ボイスコイルモータで駆動される前記反射ミラーの位置を検出する位置検出手段を備えた
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記反射ミラーを静止させる電流を前記ボイスコイルモータに流し、前記反射ミラーを第1の位置または第1の位置と第2の位置で静止させる
請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記反射ミラーを第1の位置または第1の位置と第2の位置で静止させるロック機構を備えた
請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記ミラー駆動装置は、前記コイル部の重量を前記反射ミラーとつり合わせ、前記反射ミラーの重量を打ち消す配置で前記コイル部を備えた
請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
カメラ本体部の姿勢を検知する姿勢検知手段を備え、
前記姿勢検知手段で検知されたカメラ本体部の姿勢に基づいて、前記ボイスコイルモータで駆動される前記反射ミラーの速度を制御する
請求項1記載の撮像装置。
【請求項7】
撮影光学系から入射された光の像を撮像する撮像手段と、
前記撮影光学系から入射された光の像をファインダ窓に導くファインダ光学系と、
前記撮影光学系から入射された光の像を、第1の位置で前記ファインダ光学系に反射すると共に、第2の位置で前記撮像手段へ入射させる反射ミラーと、
前記反射ミラーを第1の位置と第2の位置との間で駆動するミラー駆動装置とを備え、
前記ミラー駆動装置は、
電流が流れるコイル部を有すると共に、前記コイル部を囲む磁気回路を構成するマグネット及び磁気ヨークを有して、前記コイル部に電流を流すことで生じる力で前記反射ミラーを駆動するボイスコイルモータと、
前記反射ミラーと重量がつり合わせられて前記反射ミラーの重量を打ち消すカウンターウエイトを備えた
撮像装置。
【請求項8】
前記コイル部の重量を前記反射ミラーと合わせて前記カウンターウエイトが構成される
請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
前記ミラー駆動装置は、前記ボイスコイルモータで駆動される前記反射ミラーの位置を検出する位置検出手段を備えた
請求項7記載の撮像装置。
【請求項10】
前記反射ミラーを静止させる電流を前記ボイスコイルモータに流し、前記反射ミラーを第1の位置または第1の位置と第2の位置で静止させる
請求項9記載の撮像装置。
【請求項11】
前記反射ミラーを第1の位置または第1の位置と第2の位置で静止させるロック機構を備えた
請求項10記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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