説明

撮像装置

【課題】移動している被写体を構図内における所望の位置で精度よく撮影することが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】移動している被写体の移動速度とユーザーが被写体を認識してからシャッターボタンを押すまでの時間である反応時間とに基づいて、該反応時間内に被写体が移動する距離である反応移動距離を算出し(S13)、該算出された反応移動距離の縮尺を、レンズから被写体までの距離である被写体距離に基づいてファインダー及び表示画面のうちの少なくとも一方のスケールに合わせて調整し(S14)、該縮尺が調整された反応移動距離を示す目盛りである反応目盛りを生成し(S15)、該生成された反応目盛りをファインダー及び表示画面のうちの少なくとも一方に表示する(S16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタルスチルカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルスチルカメラ等の撮像装置は、オートフォーカス機能(自動合焦機能)を有している。そして、撮像時には、オートフォーカス動作開始から合焦するまでの経過時間に応じて表示モニタに表示される合焦マークを変化させることで、ユーザーに合焦までの時間を報知していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
こうした撮像装置では、静止している被写体のみならず、移動している被写体を撮影することがある。そして、通常、移動している被写体を撮影する場合には、撮像装置を静止させておき、ファインダー内に被写体が入ってきた瞬間を見計らってユーザーがシャッターボタンを押すようにしている。すなわち、ユーザーがファインダーで被写体の位置を認識してシャッターボタンを押すことで撮影が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−86799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした移動している被写体を撮影する場合、ユーザーがファインダーで被写体の位置を認識してからシャッターボタンを押すまでには、いくらか時間(人間の反応時間)がかかるため、その間に被写体が移動してしまい、構図内でユーザーが意図した位置から被写体がずれて撮影されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動している被写体を構図内における所望の位置で精度よく撮影することが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、移動している被写体の移動速度と、ユーザーが前記被写体を認識してから記憶媒体への記憶を伴う撮影を指示するまでの時間である反応時間とに基づいて、該反応時間内に前記被写体が移動する距離である反応移動距離を算出する算出手段と、該算出手段によって算出された前記反応移動距離の縮尺を、レンズから前記被写体までの距離である被写体距離に基づいてファインダー及び表示画面のうちの少なくとも一方のスケールに合わせて調整する縮尺調整手段と、該縮尺調整手段によって縮尺が調整された前記反応移動距離を示す目盛りである反応目盛りを生成する目盛り生成手段と、該目盛り生成手段によって生成された前記反応目盛りを前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方に表示する表示手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
また、本発明の撮像装置において、前記算出手段は、前記被写体の移動速度と前記撮影が指示されてから実際にシャッターが動作するまでの時間である遅延動作時間とに基づいて、該遅延動作時間内に前記被写体が移動する距離である遅延移動距離を算出し、前記縮尺調整手段は、前記算出手段によって算出された前記遅延移動距離の縮尺を、前記被写体距離に基づいて前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方のスケールに合わせて調整し、前記目盛り生成手段は、前記縮尺調整手段によって縮尺が調整された前記遅延移動距離を示す目盛りである遅延目盛りを生成し、前記表示手段は、前記目盛り生成手段によって生成された前記遅延目盛りを前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方に表示することを要旨とする。
【0009】
また、本発明の撮像装置において、前記算出手段は、前記被写体の移動速度と現在設定されているシャッター速度とに基づいて、該シャッター速度での前記被写体の移動距離であるシャッター移動距離を算出し、前記縮尺調整手段は、前記算出手段によって算出された前記シャッター移動距離の縮尺を、前記被写体距離に基づいて前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方のスケールに合わせて調整し、前記目盛り生成手段は、前記縮尺調整手段によって縮尺が調整された前記シャッター移動距離を示す目盛りであるシャッター目盛りを生成し、前記表示手段は、前記目盛り生成手段によって生成された前記シャッター目盛りを前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方に表示することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動している被写体を構図内における所望の位置で精度よく撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態のデジタルスチルカメラの概略構成を示すブロック図。
【図2】同カメラのコンピュータ内を示すブロック図。
【図3】同カメラのモニタに映し出された被写体画像の画面図。
【図4】実施形態において、(a)はレンズ部の対角線の画角を示す模式図、(b)はレンズ部の水平画角を示す模式図、(c)はモニタ内の被写体距離での水平長さを求める際の説明図。
【図5】反応目盛り表示処理ルーチンのフローチャート。
【図6】遅延目盛り表示処理ルーチンのフローチャート。
【図7】シャッター目盛り表示処理ルーチンのフローチャート。
【図8】変更例において、被写体の移動方向がカメラに対して角度をなしているときの状態を示す平面簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の撮像装置をデジタルスチルカメラ(以下、「カメラ」という。)に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、カメラ11は、ズームレンズなどの複数のレンズからなるレンズ部12(図1では図面の簡略化のため1つのレンズのみ図示)と、レンズ部12を通過した被写体光の光量を調整する絞り13と、その絞り13を通過した被写体光を撮像面となる入射側の受光面14aに結像させる撮像素子14とを有している。そして、撮像素子14の出力側には、AFE(Analog Front End)15と画像処理回路16とが接続されると共に、その画像処理回路16に対してMPU(Micro Processing Unit)17がデータバス18を介して接続されている。
【0013】
MPU17には、カメラ11の各種制御プログラムを記憶した不揮発性メモリ19、バッファメモリとして機能するRAM20、表示画面としての液晶表示のモニタ21がデータバス18を介して接続されている。さらに、MPU17には、記憶媒体であるメモリカード22を挿脱可能なカードI/F(Inter-Face)23、ファインダー24に各種の情報(後述する反応目盛り、遅延目盛り、シャッター目盛りなど)を表示させるための表示手段を構成するファインダー表示部25がデータバス18を介して接続されている。
【0014】
MPU17、不揮発性メモリ19、及びRAM20はコンピュータ27を構成している。そして、図2に示すように、MPU17が不揮発性メモリ19に記憶された目盛り表示プログラムを実行することで、算出手段としての算出部28、縮尺調整手段としての縮尺調整部29、目盛り生成手段としての目盛り生成部30、及び表示手段としての表示部31がコンピュータ27内に構築されるようになっている。
【0015】
図1に示すように、カメラ本体(図示略)には、そのカメラ11のユーザーにより操作されるモード切り替えボタン、シャッターボタン、十字ボタン等からなる操作部材26が、MPU17に対して各々の操作信号(モード切替信号や半押し操作信号など)をデータ通信可能に設けられている。
【0016】
撮像素子14は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサからなっている。撮像素子14は、電子シャッター機能を有すると共に、その受光面14aには多数の受光素子(図示略)が二次元的に配列されている。そして、撮像素子14は、その受光面14aに結像した被写体像に対応した信号電荷を蓄積するとともに、その蓄積した信号電荷を画像データの元となる画素信号と呼ばれるアナログ信号でAFE15に出力する。
【0017】
AFE15は、撮像素子14から入力したアナログ信号の画素信号を所定のタイミングでサンプリング(相関二重サンプリング)し、例えばISO感度に基づく所定信号レベルとなるように増幅する信号処理部(図示略)と、その増幅後の画素信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示略)とを有している。そして、AFE15は、アナログ信号の画素信号をA/D変換部でデジタル化することにより生成した画像データを画像処理回路16に出力する。
【0018】
画像処理回路16は、AFE15から入力した画像データに対して、MPU17からの制御信号に基づき各種の画像処理を施す。そして、画像処理回路16は、そのように画像処理を施した画像データを、RAM20に一旦記憶させると共に、モニタ21にスルー画像として表示させる。さらに、画像処理回路16は、シャッターボタンが全押し操作された場合に、そのときの画像データと対応する画像をモニタ21に確認用画像として表示させる一方、例えばJPEG圧縮のためのフォーマット処理等の所定の画像処理を施した後に、メモリカード22に画像ファイルとして記憶させる。
【0019】
不揮発性メモリ19には、カメラ11の各種制御プログラムの他、ユーザーが移動している被写体を認識してからシャッターボタンを押すまで(記憶媒体への記憶を伴う撮影を指示するまで)の時間である反応時間(本実施形態では0.1秒に設定)、シャッターボタンが押されて(撮影が指示されて)から実際にシャッターが動作するまでの時間である遅延動作時間(シャッタータイムラグ)などが記憶されている。さらに、不揮発性メモリ19には、現在設定されているシャッター速度、ユーザーによって入力された被写体の移動速度、モニタ21の大きさとファインダー24の大きさとの比などが記憶されている。
【0020】
MPU17は、不揮発性メモリ19に記憶された目盛り表示プログラムなどの制御プログラムに基づきカメラ11における各種の処理動作(例えば、目盛り表示処理等)を統括的に制御する。そして、データバス18は、そうしたMPU17の制御に伴う各種データの伝送路として機能する。
【0021】
また、コンピュータ27内に構築される算出部28は、被写体の移動速度と反応時間とに基づいて該反応時間内に被写体が移動する距離である反応移動距離と、被写体の移動速度と遅延動作時間とに基づいて該遅延動作時間内に被写体が移動する距離である遅延移動距離とを算出する。さらに、算出部28は、被写体の移動速度と現在設定されているシャッター速度とに基づいて該シャッター速度での被写体の移動距離であるシャッター移動距離(被写体ぶれ量)を算出する。
【0022】
縮尺調整部29は、算出部28によって算出された反応移動距離の縮尺、遅延移動距離の縮尺、及びシャッター移動距離の縮尺を、レンズ部12から被写体までの距離である被写体距離に基づいてファインダー24及びモニタ21のそれぞれのスケールに合わせてそれぞれ調整する。
【0023】
目盛り生成部30は、縮尺調整部29によって縮尺が調整された反応移動距離を示す目盛りである反応目盛りと、縮尺調整部29によって縮尺が調整された遅延移動距離を示す目盛りである遅延目盛りと、縮尺調整部29によって縮尺が調整されたシャッター移動距離を示す目盛りであるシャッター目盛りとを生成する。
【0024】
表示部31は、目盛り生成部30によって生成された反応目盛り、遅延目盛り、及びシャッター目盛りをモニタ21にそれぞれ表示させるとともに、該各目盛りをファインダー24にそれぞれ表示させる旨の信号をファインダー表示部25に送信する。そして、ファインダー表示部25は、表示部31から送信された信号を受信すると、目盛り生成部30によって生成された反応目盛り、遅延目盛り、及びシャッター目盛りをファインダー24に表示させる。
【0025】
図1に示すように、操作部材26におけるモード切り替えボタンは、カメラ11の動作モードを切り替える場合に操作されるボタンであって、例えば撮影モードを通常撮影モードと目盛り表示撮影モードとの間で切り替える場合に操作される。操作部材26における十字ボタンは、被写体の移動速度を入力する際などに操作されるボタンであって、例えばモニタ21に表示される複数の移動速度の候補の中から被写体の移動速度に最も近いものを選んで決定する場合に操作される。操作部材26におけるシャッターボタンは、カメラ11の動作モードが撮影モードである場合において被写体を撮影するときに押し下げ操作される。
【0026】
そして、このカメラ11では、通常撮影モードにおいて操作部材26のシャッターボタンが半押し操作された段階で被写体に対する焦点合わせのためのAF(Auto Focus)処理と露出調整のためのAE(Auto Exposure)処理が実行され、その後にシャッターボタンが全押し操作された段階で画像の生成処理が実行されるようになっている。一方、このカメラ11では、目盛り表示撮影モードにおいて操作部材26のシャッターボタンが半押し操作されたときには、ユーザーが移動している被写体を精度よく撮影するための目安となる反応目盛り、遅延目盛り、及びシャッター目盛りがモニタ21及びファインダー24に表示されるようになっている。
【0027】
すなわち、図3に示す画像32において移動している被写体である鉄道車両33を目盛り表示撮影モードで撮影する際には、画像32の右下部に反応目盛りA、遅延目盛りB、及びシャッター目盛りCが表示される。因みに、図3の画像32は、太陽34と山35とを背景に、カメラ11の前を鉄道車両33が線路36上を左側から右側へ向かって走る(横切る)状態のものである。
【0028】
そこで次に、このカメラ11を用いて移動している被写体を撮影する際にコンピュータ27が実行する目盛り表示処理ルーチンの概要について、図5〜図7のフローチャートを参照しながら以下説明する。なお、本実施形態における目盛り表示処理ルーチンは、反応目盛り表示処理ルーチン、遅延目盛り表示処理ルーチン、及びシャッター目盛り表示処理ルーチンの3つにより構成されている。そして、本実施形態では、反応目盛り表示処理ルーチン、遅延目盛り表示処理ルーチン、シャッター目盛り表示処理ルーチンの順で各表示処理ルーチンが順次実行される。
【0029】
さて、コンピュータ27は、カメラ11の動作モードが撮影モードである場合において、操作部材26のモード切り替えボタンが操作されることにより、撮影モードが通常撮影モードから目盛り表示撮影モードに切り替えられると、図5のフローチャートに示す反応目盛り表示処理ルーチンを開始する。
【0030】
そして先ず、ステップS11において、コンピュータ27は、操作部材26のシャッターボタンが半押しされたか否かを判定する。ステップS11の判定結果が否定判定(ステップS11=NO)である場合、コンピュータ27は、このステップS11の判定を周期的に繰り返す。そして、このステップS11の判定結果が肯定判定(ステップS11=YES)になると、コンピュータ27は、AF処理に伴って被写体距離を取得するとともに該取得した被写体距離をRAM20に記憶した後、その処理を次のステップS12に移行する。
【0031】
そして、次のステップS12において、コンピュータ27は、被写体の移動速度が入力済か否かを判定する。すなわち、コンピュータ27は、不揮発性メモリ19に被写体の移動速度が記憶されているか否かを判定する。ステップS12の判定結果が否定判定(ステップS12=NO)である場合、コンピュータ27は、反応目盛り表示処理ルーチンを終了する。一方、このステップS12の判定結果が肯定判定(ステップS12=YES)である場合、コンピュータ27は、その処理を次のステップS13に移行する。
【0032】
そして、次のステップS13において、コンピュータ27は、不揮発性メモリ19に記憶された反応時間(0.1秒)及び被写体の移動速度に基づいて反応移動距離を算出するとともに該算出した反応移動距離をRAM20に記憶した後、その処理を次のステップS14に移行する。具体的には、例えば、カメラ11のレンズ部12の前を左側から右側に向かって真っ直ぐに横切るように移動する被写体(鉄道車両33)の移動速度の入力値が時速70km(秒速19m)であったとすると、その反応移動距離(被写体が反応時間(0.1秒)内に移動する距離)は、1.9mとなる。
【0033】
そして、次のステップS14において、コンピュータ27は、先のステップS13で算出した反応移動距離の縮尺をモニタ21(撮像素子14)のスケール及びファインダー24のスケールに合わせて調整した後、その処理を次のステップS15に移行する。すなわち、コンピュータ27は、被写体距離とレンズ部12の水平画角からモニタ21内における被写体距離での水平の長さ(横幅の長さ)に反応移動距離の縮尺を合わせて調整する。
【0034】
具体的には、図4(a)に示すように、例えば、レンズ部12の画角が対角線で46°(レンズはその型名ごとに画角が決まっている)であるとともに、モニタ21(撮像素子14)のアスペクト比が3:2であるとすると、水平画角は、図4(b)に示すように、38°となる。そして、図4(c)に示すように、水平画角38°で底辺の中点に被写体が位置する二等辺三角形を考えた場合、頂角(38°)の垂直二等分線の長さが被写体距離となる。
【0035】
そして、例えば、この被写体距離が11mであった場合、上記二等辺三角形の底辺の半分の長さをxとすると、x/11=tan19°の式が成り立つため、xの値が求められる。この求めたxを2倍にすると、上記二等辺三角形の底辺の長さ(ここでは7.6m)が求められる。そして、この求めた7.6mが被写体距離(ここでは11m)におけるモニタ21(撮像素子14)上の画像における実際の横幅の長さ(以下、「モニタ21の横幅の長さ」という。)となる。このように、コンピュータ27は、先のステップS13で算出された反応移動距離(1.9m)の縮尺を被写体距離(11m)におけるモニタ21の横幅の長さ(7.6m)に合わせて調整する。
【0036】
なお、モニタ21とファインダー24とは相似形であるとともに、モニタ21の大きさとファインダー24の大きさとの比は不揮発性メモリ19に記憶されている。このため、ファインダー24の横幅の長さに対する反応移動距離の縮尺の調整は、モニタ21の横幅の長さに合わせて縮尺を調整した反応移動距離に基づいて行われる。すなわち、モニタ21の横幅の長さに合わせて縮尺を調整した反応移動距離と、モニタ21の大きさとファインダー24の大きさとの比とに基づいて、ファインダー24の横幅の長さに対する反応移動距離の縮尺の調整が行われる。
【0037】
そして、次のステップS15において、コンピュータ27は、先のステップS14で縮尺がモニタ21内及びファインダー24内における被写体距離での水平の長さ(横幅の長さ)に調整された反応移動距離を示す長さの反応目盛りAをそれぞれ生成した後、その処理を次のステップS16に移行する。具体的には、コンピュータ27は、被写体距離(11m)におけるモニタ21の横幅の長さ(7.6m)に合わせた反応移動距離(1.9m)の長さの反応目盛りAを生成する。この場合、反応目盛りAの長さは、(モニタ21の横幅の長さ)×1.9/7.6で表されるため、モニタ21の横幅の長さの4分の1の長さになる。一方、ファインダー24内に表示するための反応目盛りAは、モニタ21に表示するための反応目盛りAと、モニタ21の大きさとファインダー24の大きさとの比とに基づいて生成される。
【0038】
そして、次のステップS16において、コンピュータ27は、先のステップS15で生成した反応目盛りAをモニタ21内に表示するとともに、該反応目盛りAをファインダー24に表示する旨の信号をファインダー表示部25に送信した後、反応目盛り表示処理ルーチンを終了する。
【0039】
この反応目盛り表示処理ルーチンが終了すると、コンピュータ27は、引き続き図6のフローチャートに示す遅延目盛り表示処理ルーチンを開始する。
この遅延目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS21及びステップS22は、上述した反応目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS11及びステップS12とそれぞれ同じである。また、遅延目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS23〜ステップS26は、上述した反応目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS13〜ステップS16での反応時間、反応移動距離及び反応目盛りAを、それぞれ遅延動作時間、遅延移動距離及び遅延目盛りBに置き換えた以外は、同じものである。したがって、この遅延目盛り表示処理ルーチンについての説明は、上述した反応目盛り表示処理ルーチンについての説明におけるステップS13〜ステップS16での反応時間、反応移動距離及び反応目盛りAを、それぞれ遅延動作時間、遅延移動距離及び遅延目盛りBに読み替えるということにして、その重複説明を省略する。
【0040】
そして、この遅延目盛り表示処理ルーチンが終了すると、コンピュータ27は、引き続き図7のフローチャートに示すシャッター目盛り表示処理ルーチンを開始する。
このシャッター目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS31及びステップS32は、上述した反応目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS11及びステップS12とそれぞれ同じである。また、シャッター目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS33〜ステップS36は、上述した反応目盛り表示処理ルーチンにおけるステップS13〜ステップS16での反応時間、反応移動距離及び反応目盛りAを、それぞれ現在設定されているシャッター速度、シャッター移動距離及びシャッター目盛りCに置き換えた以外は同じものである。したがって、このシャッター目盛り表示処理ルーチンについての説明も、上述した反応目盛り表示処理ルーチンについての説明におけるステップS13〜ステップS16での反応時間、反応移動距離及び反応目盛りAを、それぞれ現在設定されているシャッター速度、シャッター移動距離及びシャッター目盛りCに読み替えるということにして、その重複説明を省略する。
【0041】
次に、以上のように構成された本実施形態のカメラ11の作用について、特に、移動している被写体を撮影する場合の撮像方法に着目して以下説明する。
なお、説明の前提として、この場合にカメラ11で撮影する画像は図3に示す風景の画像32であって、既述したように、その画像32内の被写体が左側から右側に向かって真っ直ぐに移動しているものとする。また、操作部材26におけるモード切り替えボタンが操作されたことにより撮影モードは、通常撮影モードから目盛り表示撮影モードに切り替えられているものとする。さらに、被写体となる鉄道車両33の移動速度の値は、予めユーザーによってカメラ11に入力されているものとする。
【0042】
さて、以上のような前提の下、カメラ11のレンズ部12を被写体となる鉄道車両33が走行予定の線路36の方向に向けると、山35の稜線の左側上方に太陽34が昇った状態にある風景がスルー画像としてモニタ21に表示される。そして、その状態で、ユーザーにより、カメラ11のシャッターボタンが半押しされると、AF処理が実行されると共に、モニタ21の右下部及びファインダー24の右下部に反応目盛りA、遅延目盛りB、及びシャッター目盛りCが表示される。このとき、反応目盛りA、遅延目盛りB、及びシャッター目盛りCは、右側から左側に向かって延びるように順に連続した状態で表示される。
【0043】
この各目盛りA〜Cの表示により、ユーザーには、鉄道車両33が所望の位置から反応目盛りAと遅延目盛りBとを加えた長さ分だけ右にずれて撮影されることと、現在設定されているシャッター速度ではシャッター目盛りCの分だけ鉄道車両33がぶれて撮影される(被写体ぶれを起こす)こととが撮影前に報知される。
【0044】
このため、ユーザーによって鉄道車両33が該ユーザーの所望の位置よりも反応目盛りAと遅延目盛りBとを加えた長さ分だけ早めにカメラ11のシャッターボタンが全押しされると、構図内において鉄道車両33が所望の位置にある被写体画像が撮影される。そして、この撮影により得られた画像がMPU17の制御に基づき画像処理回路16において生成されるとともに、その画像がメモリカード22に記憶保存される。
【0045】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ユーザーにより、カメラ11のシャッターボタンが半押しされると、モニタ21の右下部及びファインダー24の右下部に反応目盛りAが表示される。このため、その反応目盛りAの表示により、ユーザーは、自分が被写体を認識してからシャッターボタンを押すまでの時間である反応時間の存在に起因した鉄道車両33の所望の位置からのずれの程度(ユーザーがシャッターボタンを押したときの鉄道車両33の位置と実際に鉄道車両33が撮影される位置との差)を予め理解した上で鉄道車両33を撮影することができる。したがって、ユーザーは、移動している被写体である鉄道車両33を構図内の所望の位置で精度よく撮影することができるので、満足度の高い撮影を行うことができる。
【0046】
(2)また、上記した反応目盛りAの表示に加えて、遅延目盛りBが反応目盛りAに連続して延びるように表示される。このため、その遅延目盛りBの表示により、ユーザーは、シャッターボタンが押されてから実際にシャッターが動作するまでの時間である遅延動作時間の存在に起因した鉄道車両33の所望の位置からのずれの程度を予め理解した上で鉄道車両33を撮影することができる。したがって、ユーザーは、より一層、移動している被写体である鉄道車両33を構図内の所望の位置で精度よく撮影することができる。
【0047】
(3)さらに、上記した反応目盛りA及び遅延目盛りBの表示に加えて、シャッター目盛りCが反応目盛りA及び遅延目盛りBに連続して延びるように表示される。このため、そのシャッター目盛りCの表示により、ユーザーは、現在設定されているシャッター速度に起因した鉄道車両33のぶれの程度を予め理解した上で鉄道車両33を撮影することができる。したがって、ユーザーは、より一層、移動している被写体である鉄道車両33を構図内の所望の位置で精度よく撮影することができる。
【0048】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図8に示すように、例えば、被写体である自動車40の移動方向(図8の実線で示す方向)がカメラ11の前を真横の方向(図8の1点鎖線で示す方向)からではなく、該真横の方向に対して角度θをなしている場合には、ユーザーがカメラ11にcosθの値を入力できるようにするとともに、該入力されたcosθの値を考慮した反応目盛りA、遅延目盛りB、及びシャッター目盛りCを生成してモニタ21及びファインダー24に表示するようにしてもよい。この場合、角度θは、カメラ11にGPS(global positioning system)を搭載することで、GPSからの地図情報に基づく道路の角度(被写体が鉄道車両33の場合は線路の角度)から算出するようにしてもよい。また、この場合、さらなる数学的処理によって、ファインダー24内及びモニタ21内の位置で被写体との距離が変化することを考慮して各目盛りA〜Cを表示するようにしてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、シャッターボタンの全押しによって撮影処理が開始されるようにしたが、例えば、タッチパネルの操作によって撮影処理が開始されるようにしてもよい。
・目盛り表示処理ルーチンにおける反応目盛り表示処理ルーチン、遅延目盛り表示処理ルーチン、及びシャッター目盛り表示処理ルーチンの実行順は任意に変更してもよい。
【0050】
・目盛り表示処理ルーチンは、少なくとも反応目盛り表示処理ルーチンを実行すれば、遅延目盛り表示処理ルーチン及びシャッター目盛り表示処理ルーチンは必ずしも実行する必要はない。
【0051】
・各目盛りA〜Cは、それぞれ個別に独立してファインダー24内及びモニタ21内に表示するようにしてもよい。
・各目盛りA〜Cは、ファインダー24内及びモニタ21内のうちのいずれか一方に表示するようにしてもよい。
【0052】
・各目盛りA〜Cは、十字ボタンやタッチパネルなどの操作によりファインダー24内及びモニタ21内で移動させることで、自由にそれらの表示位置を変更できるようにしてもよい。
【0053】
・ファインダー24またはモニタ21にテスト画像を表示させた後、ユーザーが該テスト画像の変化を認識した場合にシャッターボタンを押すテストを行って反応時間を測定するようにしてもよい。この場合、反応移動距離の算出には、このテストで測定した反応時間を用いてもよいし、上記実施形態のように予め設定した反応時間(例えば、0.1秒や0.2秒など)を用いてもよいし、テストで測定した反応時間と予め設定した反応時間とのどちらを用いるかをユーザーが選択できるようにしてもよい。なお、テストで測定した反応時間を用いれば、ユーザーの反応時間に合わせて反応目盛りを表示することができるので、該反応目盛りの精度を向上することができる。
【0054】
・カメラ11に被写体の移動速度を測定できる機能を持たせるようにしてもよい。この場合、被写体の移動速度の測定は、モニタ21に表示された移動する被写体のスルー画像を解析して行ってもよいし、別の方法で行ってもよい。このようにすれば、ユーザーが被写体の移動速度を入力しなくても、カメラ11に正確な被写体の移動速度を取得させることができる。
【0055】
・上記実施形態では、算出部28、縮尺調整部29、目盛り生成部30、及び表示部31をMPU17がプログラムを実行して構築されるソフトウェアにより実現したが、これらをICなどのハードウェアにより構成してもよい。さらに、これらをソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される構成にしてもよい。
【0056】
・上記実施形態においては、撮像装置の一種であるデジタルスチルカメラに具体化したが、例えばデジタルビデオカメラやカメラ機能付き携帯電話などの他の撮像装置及びそれらを用いた撮像方法に具体化してもよい。
【0057】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記被写体の移動速度を測定する機能を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の撮像装置。
【0058】
この構成によれば、ユーザーが被写体の移動速度を入力しなくても、撮像装置に正確な被写体の移動速度を取得させることができる。
(ロ)前記反応時間を測定する機能を有することを特徴とする請求項1〜請求項3及び上記(イ)のうちいずれか一項に記載の撮像装置。
【0059】
この構成によれば、ユーザーの反応時間に合わせて反応目盛りを表示することができるので、該反応目盛りの精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0060】
11…カメラ(撮像装置)、12…レンズ部(レンズ)、21…モニタ(表示画面)、24…ファインダー、25…ファインダー表示部(表示手段)、28…算出部(算出手段)、29…縮尺調整部(縮尺調整手段)、30…目盛り生成部(目盛り生成手段)、31…表示部(表示手段)、33…鉄道車両(被写体)、40…自動車(被写体)、A…反応目盛り、B…遅延目盛り、C…シャッター目盛り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動している被写体の移動速度と、ユーザーが前記被写体を認識してから記憶媒体への記憶を伴う撮影を指示するまでの時間である反応時間とに基づいて、該反応時間内に前記被写体が移動する距離である反応移動距離を算出する算出手段と、
該算出手段によって算出された前記反応移動距離の縮尺を、レンズから前記被写体までの距離である被写体距離に基づいてファインダー及び表示画面のうちの少なくとも一方のスケールに合わせて調整する縮尺調整手段と、
該縮尺調整手段によって縮尺が調整された前記反応移動距離を示す目盛りである反応目盛りを生成する目盛り生成手段と、
該目盛り生成手段によって生成された前記反応目盛りを前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方に表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記被写体の移動速度と前記撮影が指示されてから実際にシャッターが動作するまでの時間である遅延動作時間とに基づいて、該遅延動作時間内に前記被写体が移動する距離である遅延移動距離を算出し、
前記縮尺調整手段は、前記算出手段によって算出された前記遅延移動距離の縮尺を、前記被写体距離に基づいて前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方のスケールに合わせて調整し、
前記目盛り生成手段は、前記縮尺調整手段によって縮尺が調整された前記遅延移動距離を示す目盛りである遅延目盛りを生成し、
前記表示手段は、前記目盛り生成手段によって生成された前記遅延目盛りを前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方に表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記被写体の移動速度と現在設定されているシャッター速度とに基づいて、該シャッター速度での前記被写体の移動距離であるシャッター移動距離を算出し、
前記縮尺調整手段は、前記算出手段によって算出された前記シャッター移動距離の縮尺を、前記被写体距離に基づいて前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方のスケールに合わせて調整し、
前記目盛り生成手段は、前記縮尺調整手段によって縮尺が調整された前記シャッター移動距離を示す目盛りであるシャッター目盛りを生成し、
前記表示手段は、前記目盛り生成手段によって生成された前記シャッター目盛りを前記ファインダー及び前記表示画面のうちの少なくとも一方に表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250271(P2011−250271A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122809(P2010−122809)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】