説明

撮像装置

【課題】 ファンやヒーターを設けることなく、ドームカバー内面の曇りによる撮影画像の画質の劣化を迅速に除去可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】 所定の撮影方向を撮影するカメラユニット10と、カメラユニット10を覆い、カメラユニット10の撮影視野を確保するための切り欠き部25aを有するドーム形状のインナーカバー25と、カメラユニット10を覆い、インナーカバー25の外側に沿うように設けられ、カメラユニット10及びインナーカバー25に対して独立に、パン方向に回転可能なドーム形状のドームカバー20と、インナーカバー25とドームカバー20との間に形成され、空気の対流が抑制された断熱空間部(P部)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム形状のカバーを有する撮像装置に関し、より詳細には、曇りによる撮影画像の画質の劣化を除去することができる撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からドームカバーを有する監視カメラ装置は様々な環境下に設置されている。例えば、寒冷地等の屋外に設置される場合、外気温の急激な低下によってドームカバーの内面に結露が生じ、監視カメラ装置内部が曇ってしまい、監視カメラ装置内のカメラユニットによって撮影される撮影画像の画質が著しく低下してしまうことがある。
【0003】
上記のような問題を解決するべく、特許文献1には、結露防止機構を備えた監視カメラ装置が提案されている。この監視カメラ装置は、ドームカバーの内面に空気を吹き付けるファンと、このファンと組み合わせて用いることによって迅速に結露や曇りを取るためのヒーターと、を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−135723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の結露防止機構を備えた監視カメラ装置は、ファンやヒーターを設ける必要があった。このため、コストアップを招き、その上、ファンやヒーターを駆動するために消費電力が大きくなってしまっていた。
【0006】
また、空気を吹き付けることでドームカバー内面の曇りを除去しようとしているので、ドームカバー内面の曇りを除去するまでに時間を要し、結果、曇りによる撮影画像の画質の劣化を除去するために時間を要してしまっていた。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、ファンやヒーターを設けることなく、ドームカバー内面の曇りによる撮影画像の画質の劣化を迅速に除去可能な撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、前記カメラユニットを覆い、前記カメラユニットの撮影視野を確保するための切り欠き部を有するドーム形状のインナーカバーと、前記カメラユニットを覆い、前記インナーカバーの外側に沿うように設けられ、前記カメラユニット及び前記インナーカバーに対して独立に、パン方向に回転可能なドーム形状のドームカバーと、前記インナーカバーと前記ドームカバーとの間に形成され、空気の対流が抑制された断熱空間部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファンやヒーターを設けることなく、ドームカバー内面の曇りによる撮影画像の画質の劣化を迅速に除去可能な撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施例に係るドーム型カメラ1の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るドーム型カメラ1の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係るドームカバー200の回転機構を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係るドーム型カメラ100の断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係るドーム型カメラ100の制御のための構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係るドームカバー回転制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施例に係る初期画像と曇りが発生した場合の撮影画像とを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係るインナーカバー25の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るドームカバー回転制御処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0012】
(第1の実施例)
図1は、本発明の第1の実施例に係る撮像装置、具体的にはドーム型カメラ1の透過斜視図である。なお、図1では、ドーム型カメラ1の内部については、レンズ11とカメラユニット10とインナーカバー25とを除き、省略して示している。また、本明細書で下側とは撮像装置の設置面側を意味し、本明細書で上側とは、撮像装置の設置面とは反対側を意味する。
【0013】
図1におけるドーム型カメラ1は、ドームカバー20と上ケース40と下ケース50とから構成される。ドームカバー20は、例えば、ドーム形状の透明なプラスチックで形成されており、後述のカメラユニット10及びインナーカバー25を含む内部構造を覆い、上ケース40に取り付けられる。
【0014】
上ケース40は下ケース50に取り付けられる。この下ケース50の下面には、天井などの設置場所に対する取り付け構造が備えられている。また、カメラユニット10は、レンズ11及び撮像素子(不図示)を含んで構成され、所定の撮影方向を撮影して映像信号(撮影画像データ)を生成する。なお、このカメラユニット10は、パン方向及びチルト方向に回転可能に構成されている。
【0015】
インナーカバー25は、ドームカバー20の内側に配置され、カメラユニット10を覆う。このインナーカバー25は、カメラユニット10の撮影視野を確保するために、カメラユニット10のチルト方向の回転に合わせて切り欠かれた切り欠き部25aを有する。すなわち、切り欠き部25aは、カメラユニット10がチルト方向に回転しても干渉しないように切り欠かれている。
【0016】
そして、このインナーカバー25の外面には、ドームカバー20の内面に向かって突出したリブ25bが切り欠き部25aを囲むように設けられている。また、このインナーカバー25の外面には、パン方向の回転軸を中心とする円弧形状のリブ25cが設けられている。このリブ25cは、リブ25bの側面であって切り欠き部25aとは反対側の側面と2箇所で交わっている。
【0017】
なお、このインナーカバー25は、例えば、ドーム形状の不透明材料から形成されているので、インナーカバー25の内部を切り欠き部25a以外からは視認できない。また、本実施例において、リブ25bは第1のリブに相当し、リブ25cは第2のリブに相当する。
【0018】
続いて、図2は、本発明の第1の実施例に係るドーム型カメラ1の断面図である。
【0019】
まず、図2における下ケース50は、ベースプレート60とメイン実装基板90とを支持し、上ケース40が取り付けられる。ここで、ベースプレート60は、パンベース61をパン方向に回転可能に支持する。
【0020】
なお、メイン実装基板90は、プリント回路基板で実装されており、カメラユニット10に含まれる撮像素子からの映像信号を伝送する不図示の伝送ケーブルと接続される。このメイン実装基板には、伝送ケーブルによって伝送された撮像素子からの映像信号を処理するための映像信号処理回路が搭載されており、処理された映像信号をドーム型カメラ1の外部に出力する。
【0021】
パンベース61は、ベースプレート60に対してパン軸Aを中心に回転可能に配置されている。また、このパンベース61は、インナーカバー25とチルトベース62とを支持する。このチルトベース62は、チルト軸Bを中心として回転可能にカメラユニット10を支持する。このような構成により、カメラユニット10は、パン方向に回転可能、かつ、チルト方向に回転可能となる。
【0022】
上ケース40は、不図示のネジなどにより、下ケース50に締結されて固定される。このとき、ケース用シールゴム41は、上ケース40と下ケース50との間に配置されており、上ケース40と下ケース50とが固定されるときの締結力によって圧接される。これにより、上ケース40と下ケース50との隙間から水や塵等が侵入することを防止できる。
【0023】
ドームカバー20は、カメラユニット10の可動領域の外周を覆うものであり、その下端部の外周にはフランジ20aが外側に向けて突出して設けられている。そして、ドームカバー20は、上ケース40に設けられた円形の中心穴40aに挿入され、カバーホルダ32により、回転摺動可能な状態で上ケース40に取り付けられる。すなわち、ドームカバー20は、カバーホルダ32及び上ケース40に対し、パン軸Aを中心に独立に回転可能に取り付けられている。
【0024】
ここで、カバーホルダ32は、上ケース40のフランジ40bとの間にドームカバー20のフランジ20aを挟み込んだ状態で、不図示のネジなどにより、上ケース40に締結される。このとき、カバー用シールゴム31は、ドームカバー20のフランジ20aの上面と上ケース40のフランジ40bとの間に配置され、カバーホルダ32が締結されるときの締結力によって圧接される。これにより、カバー用シールゴム31は、ドームカバー20と上ケース40との隙間から水や塵等が侵入することを防止できる。
【0025】
インナーカバー25は、ドームカバー20の内側に沿うように設けられ、パンベース61に配置される。また、このインナーカバー25に設けられたリブ25bは、図2に示すように、ドームカバー20の内側と非常に近接しているが、ドームカバー20と接触しないように形成されている。すなわち、このリブ25bは、後述する断熱空間部としてのP部と後述する非断熱空間部としてのQ部とを仕切る役割を果たすものである。なお、本実施例におけるドーム型カメラ1のリブ25bとドームカバー20の内側との間隔は略0.5mm以下とする。
【0026】
さらに、このインナーカバー25の外面にはリブ25cが設けられている。このリブ25cは、ドームカバー20の回転軸であるパン軸Aと直行する方向に沿って延びるように設けられている。また、リブ25cの上面は、ドームカバー20のフランジ20aの下面と平行に対向して設けられている。また、このリブ25cの上面は、図2に示すように、フランジ20aの下面と非常に近接しているが、フランジ20aと接触しないように形成されている。なお、本実施例におけるドーム型カメラ1のリブ25cとフランジ20aの下面との間隔は略0.5mm以下とする。
【0027】
以上のような構成により、断熱空間部としてのP部が、ドームカバー20とインナーカバー25との間に閉空間として形成される。(より詳細には、P部は、ドームカバー20の内面と、インナーカバー25の外面と、リブ25bの側面であって切り欠き部25aとは反対側の側面と、リブ25cの上面と、によって形成される。)このようにP部を形成すると、P部内の空気と外部の空気との対流は抑制されるため、P部は断熱効果を有することになり、結果、ドームカバー20の内面のうちP部に面する部分には、結露による曇りが発生しにくい。
【0028】
一方、ドームカバー20内側の空間であってP部とは異なる空間であるQ部は、ドーム型カメラ1内部に開放されており、Q部とドーム型カメラ1内部との間で空気の対流が発生する。この結果、Q部は非断熱空間となり、ドームカバー20の内面のうちQ部に面する部分には、結露による曇りが発生し易い。
【0029】
しかし、ドームカバー20の内面のうちQ部に面する部分に曇りが発生したとしても、ドームカバー20の内面のうちP部に面する部分がカメラユニット10の撮影方向に位置するように、手動でドームカバー20をパン方向に回転させることができる。そして、ドームカバー20の内面のうち曇りが発生していない部分をカメラユニット10の撮影方向に位置させることができる。この結果、ファンやヒーターを設けることなく、ドームカバー20内面の曇りによる撮影画像の画質の劣化を迅速に除去することが可能となる。
【0030】
(第2の実施例)
続いて、本発明の第2の実施例について説明する。なお、本実施例に係る撮像装置としてのドーム型カメラ100は、曇りを検出してドームカバー200を自動で回転させることを特徴とするものである。なお、第2の実施例では、第1の実施例に対応するものと同一の要素には同一符合を付し、その説明を省略する。
【0031】
図3は、本実施例におけるドームカバー200の回転機構を説明するための斜視図である。なお、図3では、リブ25cを省略して示している。
【0032】
図3におけるドームカバー200は、実施例1と同様、ドーム形状の透明なプラスチックで形成されており、カメラユニット10及びインナーカバー25を含む内部構造を覆い、上ケース40に取り付けられるものである。また、ドームカバー200の下端部の外周にはフランジ200aが外側に向けて突出して設けられている。
【0033】
このフランジ200aにはギアが形成されており、このギアとドーム駆動シャフト22に設けられたドーム駆動ウォームギア22aとが噛合う。また、ドーム駆動シャフト22には平歯ギア22bも設けられており、この平歯ギア22bとドームカバー駆動用モータ23のピニオンギア23aとが噛合って駆動連結されている。よって、ドームカバー駆動用モータ23が回転すると、ドームカバー200がパン軸Aを中心として回転する。
【0034】
続いて、図4は、本発明の第2の実施例に係るドーム型カメラ100の断面図である。図4におけるドームカバー200は、カメラユニット10の可動領域の外周を覆うものであり、上ケース40に設けられた円形の中心穴40aに挿入され、カバーホルダ32により、回転摺動可能な状態で上ケース40に取り付けられる。すなわち、ドームカバー200は、カバーホルダ32及び上ケース40に対し、パン軸Aを中心に独立に回転可能に取り付けられている。
【0035】
カバーホルダ32は、上ケース40のフランジ40bとの間にドームカバー200のフランジ200aを挟み込んだ状態で、不図示のネジなどにより、上ケース40に締結される。このとき、カバー用シールゴム31は、ドームカバー200のフランジ200aの上面と上ケース40のフランジ40bとの間に配置され、カバーホルダ32が締結されるときの締結力によって圧接される。これにより、カバー用シールゴム31は、ドームカバー200と上ケース40との隙間から水や塵等の侵入を防ぐことができる。
【0036】
インナーカバー25は、ドームカバー200の内側に沿うように設けられ、パンベース61に配置される。また、このインナーカバーに設けられたリブ25bは、図2に示すように、ドームカバー200の内側と非常に近接しているが、ドームカバー200と接触しないように形成されている。なお、本実施例では、リブ25bとドームカバー200の内面との間隔は略0.5mm以下とする。
【0037】
さらに、このインナーカバー25の外面にはリブ25cが設けられており、このリブ25cは、ドームカバー200の回転軸であるパン軸Aと直行する方向に沿って延びるように設けられている。また、このリブ25cの上面は、ドームカバー200のフランジ200aの下面と平行に対向して設けられている。そして、このリブ25cの上面は、図4に示すように、フランジ200aの下面と非常に近接しているが、フランジ200aと接触しないように形成されている。なお、本実施例におけるドーム型カメラ1のリブ25cとフランジ200aの下面との間隔は略0.5mm以下とする。
【0038】
以上のような構成により、断熱空間部としてのP部が、ドームカバー200とインナーカバー25との間に閉空間として形成される。(より詳細には、P部は、ドームカバー200の内面と、インナーカバー25の外面と、リブ25bの側面であって切り欠き部25aとは反対側の側面と、リブ25cの上面と、によって形成される。)このように、P部を形成すると、P部内の空気と外部の空気との対流は抑制されるため、P部は断熱効果を有することになり、結果、ドームカバー200の内面のうちP部に面する部分には、結露による曇りが発生しにくい。
【0039】
一方、カメラユニット10の撮影方向に位置するQ部は、カメラユニット10を含むドーム型カメラ100の内部構造に開放されており、Q部とドーム型カメラ100の内部構造との間で空気の対流が発生する。この結果、Q部は非断熱空間となり、ドームカバー200の内面のうちQ部に面する部分には、結露による曇りが発生し易い。
【0040】
続いて、図5は、ドームカバー200の曇りを検出してドームカバー200の回転を制御するための構成を示すブロック図である。
【0041】
ドームカバー駆動用モータ23は、制御部101の指示を受け、ドームカバー200を回転させる。なお、本実施例では、ドームカバー駆動用モータ23としてステッピングモータを用いているが、これに限るものではない。また、画像メモリ102は、制御部101から撮影画像データを入力され、入力された撮影画像データを初期画像データとして保持するフレームバッファである。
【0042】
制御部101は、CPUなどで構成されており、ドーム型カメラ100の各部を統括的に制御する。まず、制御部101は、カメラユニット10から不図示の伝送ケーブルを介して入力された撮影画像データを画像メモリ102に出力し、初期画像データとして保持させる。次に、制御部101は、カメラユニット10で撮影された最新の撮影画像データとそれより過去に撮影された初期画像データとを用い、ドームカバー200の内面に曇りが発生しているか否かを判定する。
【0043】
ここで、本実施例における最新の撮影画像データは、カメラユニット10によって初期画像データと同じ撮影方向で撮影されたものとする。換言すれば、本実施例における最新の撮影画像データは、カメラユニット10が初期画像データと同じ位置を撮影して生成するものとする。
【0044】
そして、制御部101は、ドームカバー200の内面に曇りが発生していると判定した場合には、ドームカバー200を所定角度回転させるようにドームカバー駆動用モータ23を制御する。このようなドームカバー回転制御処理については図6を用いて説明する。
【0045】
続いて、図6を参照しながら、ドームカバー200内面に曇りが発生しているか否かを判定してドームカバー200を回転させるためのドームカバー回転制御処理について説明する。このドームカバー回転制御処理は、制御部101によって実行される。
【0046】
なお、本実施例では、制御部101は、カメラユニット10のパン回転又はチルト回転中はドームカバー回転制御処理を実行しないものとする。また、制御部101は、ドームカバー回転制御処理の実行中にカメラユニット10がパン回転又はチルト回転した場合にはドームカバー回転制御処理を終了するものとする。そして、制御部101は、カメラユニット10のパン回転又はチルト回転が終了して所定時間経過後にドームカバー回転制御処理をステップS101から開始するものとする。
【0047】
図6におけるステップS101では、制御部101は、カメラユニット10から出力された撮影画像データを初期画像データとして画像メモリ102に格納する。なお、この段階では、ドームカバー200の内面には曇りが発生しておらず、初期画像データの画像は図7(a)に示すように鮮明なものとする。
【0048】
ステップS102では、制御部101は、ドームカバー200の内面に曇りが発生しているか否かを判定する。(なお、以下の説明では、このような判定処理を曇り判定処理と称する場合がある。)本実施例では、制御部101は、撮影画像の輝度変化量を示すエッジ強度を用いて撮影画像のぼけ具合を推定することにより、ドームカバー200の内面に曇りが発生しているか否かを判定する。これは、ドームカバー200の内面に曇りが発生した場合には、図7(b)に示すように撮影画像がぼけてしまうことが多いという点を考慮したものである。
【0049】
具体的には、まず、制御部101は、ステップS101で画像メモリ102に格納した初期画像データとカメラユニット10で撮影された最新の撮影画像データとについて、それぞれの画像のエッジ強度を算出する。なお、画像のエッジ強度は、例えば、画像のX方向(画像の左右方向)のエッジ強度と画像のY方向(画像の上下方向)のエッジ強度をそれぞれ算出し、算出された各エッジ強度の絶対値を加算することで算出できる。このように算出されたエッジ強度が小さいほど画像はぼけていることを意味する。(換言すれば、このように算出されたエッジ強度が大きいほど画像は鮮明であることを意味する。)
【0050】
そして、制御部101は、最新の撮影画像データについて算出されたエッジ強度が初期画像データについて算出されたエッジ強度を所定の閾値よりも下回っていた場合には、ドームカバー200の内面に曇りが発生していると判定する。また、制御部101は、最新の撮影画像データについて算出されたエッジ強度が初期画像データについて算出されたエッジ強度を所定の閾値よりも下回っていない場合には、ドームカバー200の内面に曇りが発生していないと判定する。
【0051】
そして、ドームカバー200の内面に曇りが発生していると制御部101が判定した場合にはステップS103に進み、ドームカバー200の内面に曇りが発生していないと制御部101が判定した場合にはステップS104に進む。
【0052】
ステップS103では、制御部101は、パン軸Aを中心としてドームカバー200を所定角度回転させるように、ドームカバー駆動用モータ23を制御する。ここで、所定角度の具体例としては、次に説明するインナーカバー25の切り欠き角度αが考えられる。
【0053】
図8は、インナーカバー25の断面図であり、パン軸方向と垂直方向の断面図である。なお、図8では、リブ25cを省略して示している。
【0054】
この図8に示すように、パン軸Aに垂直な面における切り欠き部25aの両端は、パン軸Aに垂直な面と2つの交点で交わる。これら2つの交点のうち一方を点X、他方を点Yとする。そして、パン軸Aに垂直な面とパン軸Aとの交点を点O、点Oと点Xとを結ぶ線分を線分OX、点Oと点Yとを結ぶ線を線分OYとする。ここで、線分OXと線分OYとがなす角度はパン軸Aに垂直な面の位置によって変化し得る。そこで、パン軸Aに垂直な面の位置を変化させ、線分OXと線分OYとがなす角度が最大になった場合の角度をインナーカバー25の切り欠き角度αとする。
【0055】
ステップS104では、制御部101は、ステップS101で初期画像データを画像メモリ102に格納してから所定時間経過したか否かを判定する。そして、所定時間経過したと制御部101が判定した場合にはステップS101に戻り、所定時間を経過していないと制御部101が判定した場合にはステップS102に戻る。
【0056】
以上、本実施例では、初期画像データと最新の撮影画像データとを比較し、カメラユニット10の撮影方向におけるドームカバー200内面に曇りが発生しているか否かを制御部101が判定する。その上、ドームカバー200の内面に曇りが発生していると制御部101が判定した場合には、制御部101は、ドームカバー200をパン方向に回転させるようにドームカバー駆動用モータ23を制御する。
【0057】
これにより、ドームカバー200の内面のうちQ部に面する部分に曇りが発生した場合、自動的にドームカバー200をパン方向に回転させ、ドームカバー200の内面のうちP部に面する部分をカメラユニット10の撮影方向に位置させることができる。そして、ドームカバー200の内面のうち曇りが発生していない部分をカメラユニット10の撮影方向に位置させることができる。この結果、ファンやヒーターを設けることなく、ドームカバー内面の曇りによる撮影画質の劣化を迅速且つ確実に除去することが可能となる。
【0058】
続いて、図6で示したドームカバー回転制御処理の変形例について図9を用いて説明する。本変形例は、ドームカバー200の内面に曇りが発生していると制御部101が判定してからドームカバー200の内面に曇りが発生していないと制御部101が判定するまでの間、ドームカバー200をパン方向に回転させ続けることを特徴とするものである。
【0059】
図9におけるステップS201は、図6におけるステップS101と同様であるので、その説明を省略する。
【0060】
ステップS202では、制御部101は、ステップS102における曇り判定処理と同様の処理を実行する。そして、ドームカバー200の内面に曇りが発生していると制御部101が判定した場合にはステップS203に進み、ドームカバー200の内面に曇りが発生していないと制御部101が判定した場合にはステップS206に進む。
【0061】
ステップS203では、制御部101は、ドームカバー200のパン方向への回転を開始させるようにドームカバー駆動用モータ23を制御する。
【0062】
ステップS204では、制御部101は、ステップS102における曇り判定処理と同様の処理をドームカバー200のパン方向への回転中に実行する。そして、ドームカバー200の内面に曇りが発生していないと制御部101が判定した場合にはステップS206に進み、ドームカバー200の内面に曇りが発生していると制御部101が判定した場合にはステップS204に戻る。
【0063】
ステップS205では、制御部101は、ドームカバー200のパン方向への回転を停止させるようにドームカバー駆動用モータ23を制御する。
【0064】
ステップS206は、図6におけるステップS104と同様であるので、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0065】
10 カメラユニット
25 インナーカバー
25a 切り欠き部
20、200 ドームカバー
P部 断熱空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮影方向を撮影するカメラユニットと、
前記カメラユニットを覆い、前記カメラユニットの撮影視野を確保するための切り欠き部を有するドーム形状のインナーカバーと、
前記カメラユニットを覆い、前記インナーカバーの外側に沿うように設けられ、前記カメラユニット及び前記インナーカバーに対して独立に、パン方向に回転可能なドーム形状のドームカバーと、
前記インナーカバーと前記ドームカバーとの間に形成され、空気の対流が抑制された断熱空間部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記切り欠き部を囲むように前記インナーカバーに設けられたリブであって、前記ドームカバーの内面に向かって突出して設けられた第1のリブと、
前記ドームカバーの回転軸を中心とする円弧形状のリブであって、前記回転軸に対して直行する方向に沿って延びるように前記インナーカバーの外面から突出して設けられ、前記第1のリブの側面であって前記切り欠き部とは反対側の側面と2箇所で交わるように設けられた第2のリブと、
を更に備え、
前記断熱空間部は、前記ドームカバーの内面と、前記インナーカバーの外面と、前記第1のリブの側面であって前記切り欠き部とは反対側の側面と、前記第2のリブの上面と、によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ドームカバーが、手動でパン方向に回転可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記ドームカバーを、パン方向に回転させるドームカバー駆動手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記カメラユニットで撮影された撮影画像データを画像メモリに格納する格納手段と、
前記格納された撮影画像データと、前記カメラユニットによって前記格納された後に前記撮影画像データと同じ撮影方向で撮影された撮影画像データとを比較し、前記撮影方向における前記ドームカバー内面に曇りが発生しているか否かを判定する曇り判定手段と、
前記曇り判定手段によって曇りが発生していると判定された場合に、前記ドームカバーをパン方向に回転させるように、前記ドームカバー駆動手段を制御する制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記曇り判定手段によって曇りが発生していると判定された場合に、前記ドームカバーをパン方向に所定角度回転させるように、前記ドームカバー駆動手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記曇り判定手段によって曇りが発生していると判定された場合には、前記ドームカバーのパン方向への回転を開始させるように前記ドームカバー駆動手段を制御し、前記回転中に前記曇り判定手段によって曇りが発生していないと判定された場合には、前記回転を停止させるように前記ドームカバー駆動手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−109687(P2012−109687A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255295(P2010−255295)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】