説明

撮影システムおよびレンズ装置

【課題】適切なフォーカス操作感度が自動的に設定される撮影システムを提供する。
【解決手段】撮影システムは、レンズ装置100と該レンズ装置を用いて撮影を行う撮影装置200とを含む。レンズ装置は、フォーカスレンズ101を有する。撮影システムは、フォーカスレンズの移動を指示するために操作される操作手段117と、フォーカスレンズを操作手段の操作量に応じた位置に移動させるフォーカス位置制御を行う制御手段121と、撮影範囲内の複数の測距エリアで被写体距離を検出する測距手段112,115と、複数の測距エリアで検出された複数の被写体距離が分布する距離範囲を判定する判定手段116と、判定手段による判定結果に応じて、フォーカス位置制御における操作手段の操作量とフォーカスレンズの位置との関係を変更する変更手段118とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距機能を有する撮影システムおよびレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影システムやレンズ装置には、被写体に対するピント合わせを、フォーカス操作部材のマニュアル操作に応じたフォーカスレンズの移動(すなわち、マニュアルフォーカス)によって行うものがある。このような撮影システムやレンズ装置において、フォーカス操作部材の操作量の変化に対するフォーカスレンズの移動量(以下、フォーカス操作感度という)を変更可能としたものがある。
例えば、特許文献1には、回転操作可能なフォーカス操作部材の回転角の変化をフォーカスレンズの位置制御信号に変換する際の変換特性を変化させることで、フォーカス操作感度の変更を可能としたフォーカス操作装置が開示されている。
また、特許文献2には、レンズ装置の種類(倍率)や焦点距離に応じてフォーカス操作感度を変更するフォーカス制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4072220号公報
【特許文献2】特開2002−281371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2にて開示されたフォーカス制御装置では、レンズの種類(倍率)や焦点距離が同じ場合においてフォーカス操作感度を変更するためには、ユーザがマニュアル操作でフォーカス操作感度の設定を変更する必要がある。このため、フォーカス操作感度の設定の煩わしさが生じだけでなく、設定変更の遅れ、忘れ、ミスによってフォーカス操作性が損なわれるおそれがある。
本発明は、適切なフォーカス操作感度が自動的に設定されるようにした撮影システムおよびレンズ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての撮影システムは、レンズ装置と該レンズ装置を用いて撮影を行う撮影装置とを含む。レンズ装置は、フォーカスレンズを有する。撮影システムは、フォーカスレンズの移動を指示するために操作される操作手段と、フォーカスレンズを操作手段の操作量に応じた位置に移動させるフォーカス位置制御を行う制御手段と、撮影範囲内の複数の測距エリアで被写体距離を検出する測距手段と、複数の測距エリアで検出された複数の被写体距離が分布する距離範囲を判定する判定手段と、判定手段による判定結果に応じて、フォーカス位置制御における操作手段の操作量とフォーカスレンズの位置との関係を変更する変更手段とを有することを特徴とする。
また、本発明の他の一側面としてのレンズ装置は、該レンズ装置を用いて撮影を行う撮影装置を含む撮影システムに用いられる。レンズ装置は、フォーカスレンズと、撮影範囲内の複数の測距エリアで被写体距離を検出する測距手段とを有する。撮影システムは、フォーカスレンズの移動を指示するために操作される操作手段と、フォーカスレンズを操作手段の操作量に応じた位置に移動させるフォーカス位置制御を行う制御手段と、複数の測距エリアで検出された複数の被写体距離が分布する距離範囲を判定する判定手段と、判定手段による判定結果に応じて、フォーカス位置制御における操作手段の操作量とフォーカスレンズの位置との関係を変更する変更手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被写体距離が分布する距離範囲の判定結果に応じて、フォーカス操作手段の操作量とフォーカスレンズの位置との関係が自動的に変更される。このため、ユーザによるフォーカス操作感度の変更操作を不要としつつ、被写体距離の分布に対して適切なフォーカス操作感度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1である撮影システムの構成を示すブロック図および実施例1における測距エリアの配置例を示す図。
【図2】実施例1における駆動制御ユニットでの処理の流れを示すフローチャート。
【図3】実施例1における被写体距離の分布例を示す図。
【図4】実施例1におけるフォーカスデマンドでの処理の流れを示すフローチャート。
【図5】実施例1において設定されるフォーカス操作感度を示す図。
【図6】本発明の実施例2における駆動制御ユニットでの処理の流れを示すフローチャート。
【図7】実施例2における被写体距離の分布例を示す図。
【図8】実施例2におけるフォーカスデマンドでの処理の流れを示すフローチャート。
【図9】実施例2において設定されるフォーカス操作感度を示す図。
【図10】本発明の実施例3である撮影システムの構成を示すブロック図および実施例3における測距エリアの配置例を示す図。
【図11】実施例3における駆動制御ユニットでの処理の流れを示すフローチャート。
【図12】実施例3における被写体距離の分布例を示す図。
【図13】本発明の実施例4における駆動制御ユニットでの処理の流れを示すフローチャート。
【図14】実施例4における被写体距離の分布例を示す図。
【図15】実施例4におけるフォーカスデマンドでの処理の流れを示すフローチャート。
【図16】実施例4において設定されるフォーカス操作感度を示す図。
【図17】本発明の実施例5における駆動制御ユニットでの処理の流れを示すフローチャート。
【図18】実施例5におけるフォーカスデマンドでの処理の流れを示すフローチャート。
【図19】実施例5において設定されるフォーカス操作感度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
図1(a)には、本発明の実施例1である撮影システムの構成を示す。同図において、100はレンズ装置であり、200は該レンズ装置100が取り外し可能に装着され、該レンズ装置100を用いて撮影を行う撮影装置としてのカメラである。また、117はフォーカスデマンドであり、122はズームデマンドである。
レンズ装置100において、101はフォーカスレンズであり、102はフォーカスレンズ101を光軸方向に移動させて焦点調節を行わせるアクチュエータとしてのフォーカスモータである。フォーカスレンズ101は、至近端位置と無限遠端位置との間で移動することができる。103はエンコーダやポテンショメータ等により構成され、フォーカスレンズ101の位置を検出するフォーカス位置検出器である。
104はズームレンズであり、105はズームレンズ104を光軸方向に移動させて変倍を行わせるアクチュエータとしてのズームモータである。ズームレンズ104は、広角端位置と望遠端位置との間で移動することができる。106はポテンショメータやエンコーダ等により構成され、ズームレンズ104の位置を検出するズーム位置検出器である。
107は光量を調節するアイリスであり、108はアイリス107を動作させるアクチュエータとしてのアイリスモータである。109はポテンショメータやエンコーダ等により構成され、アイリス107の状態(開閉方向の位置)を検出するアイリス位置検出器である。フォーカスレンズ101、ズームレンズ104、アイリス107および不図示のレンズによって、撮影光学系が構成される。
110は撮影光学系から入射した光束を、透過する光束と反射する光束とに分離する光束分離素子である。111は光束分離素子110にて反射された光束を複数対の光束に分離する二次結像レンズを含むセンサ光学系である。
112は位相差センサであり、複数対のラインセンサ(光電変換素子列:図示せず)を有する。各対のラインセンサ上には、センサ光学系111から射出された各対の光束によって一対の被写体像(以下、2像という)が形成される。各対のラインセンサは、該2像を光電変換して一対の像信号を出力する。該一対の像信号は、後述する駆動制御ユニット114に出力される。
位相差センサ112に設けられた複数対のラインセンサ上には、撮影範囲内(撮影画面内)における互いに異なる複数の測距エリアに含まれる被写体の2像が形成される。
図1(b)には、撮影画面IF内に設定された複数の測距エリアRAを示している。ここでは、撮影画面IF内に、縦横に複数ずつの測距エリアRAがマトリクス状に配置された例を示している。
113は位相差センサ112の駆動を制御する位相差センサ制御部である。114はフォーカスレンズ101、ズームレンズ104、アイリス107および位相差センサ112等の制御を司る駆動制御ユニットである。
駆動制御ユニット114において、115は距離算出部であり、位相差センサ112における各対のラインセンサから出力された一対の像信号に対して相関演算を行うことで、該対のラインセンサ上に形成された2像の間隔(位相差)を算出する。そして、距離算出部115は、該位相差と該対のラインセンサ間の基線長等の情報に基づいて、対応する測距エリアに含まれる被写体までの距離(以下、被写体距離)を算出する。このようにして、位相差センサ112および距離算出部115により構成される測距手段は、撮影画面内に設けられた複数の測距エリアのそれぞれにおいて被写体距離を算出することができる。
ここにいう「被写体距離」とは、レンズ装置100(例えば、撮影光学系のうち最も被写体側のレンズ面)から被写体までの距離であってもよいし、カメラ200(例えば、後述する撮像素子201の撮像面)から被写体までの距離であってもよい。
116は距離データ分布判定部(判定手段)であり、距離算出部115により複数の測距エリアのそれぞれにおいて算出(検出)された被写体距離(以下、複数の被写体距離という)が分布する距離範囲を判定する。ここでの判定結果は、フォーカスデマンド117に送信される。
フォーカスデマンド(フォーカス操作手段)117は、ユーザによりフォーカスレンズ101の移動を指示するために回転操作されるフォーカス操作部材(以下、フォーカス操作ノブという:図示せず)を備えている。操作角検出部120は、エンコーダやポテンショメータ等により構成され、フォーカス操作ノブの操作量(以下、操作角という)を検出する。
118はカーブモード自動設定処理部(変更手段)であり、距離データ分布判定部116からの判定結果に応じてフォーカスレンズ101の操作感度(以下、フォーカス操作感度という)を決めるカーブモードを変更する。カーブモードは、フォーカス操作ノブの操作角に対するフォーカスレンズ101の位置の関係を意味する。フォーカス操作感度は、フォーカス操作ノブの操作角の変化量に対するフォーカスレンズ101の位置の変化量(移動量)を意味する。
121はフォーカスコントロール算出部である。フォーカスコントロール算出部121は、操作角検出部120により検出された操作角とカーブモード自動設定処理部118にて設定されたカーブモードとに基づいてフォーカスコントロール信号を生成し、出力する。フォーカスコントロール信号は、レンズ装置100の駆動制御ユニット114に送信される。駆動制御ユニット114は、フォーカスコントロール信号に応じた位置(つまりはフォーカス操作ノブの操作角に応じた位置)にフォーカスレンズ101を移動させるようにフォーカス位置制御(フォーカスモータ102の制御)を行う。
119はカーブモード設定状態表示部であり、カーブモード自動設定処理部118で設定されたカーブモードを示す情報をLEDやディスプレイデバイス等の表示素子に表示する。
ズームデマンド(ズーム操作手段)122は、ユーザにより操作されるズーム操作部材を備えており、該ズーム操作部材の操作量に応じたズームコントロール信号を出力する。ズームコントロール信号は、レンズ装置100の駆動制御ユニット114に送信される。駆動制御ユニット114は、ズームコントロール信号に応じた速度(つまりはズーム操作部材の操作量に応じた速度)でズームレンズ104を移動させるようにズーム速度制御(ズームモータ105の制御)を行う。
カメラ200において、201はCCDセンサやCMOSセンサ等により構成される撮像素子であり、レンズ装置100(撮影光学系)により形成された、撮影画面内の被写体像を光電変換する。202は画像処理回路であり、撮像素子201からの出力信号に対して各種画像処理を施して画像(映像)を生成する。生成された映像は、該カメラ200の外部に出力されて、モニタに表示されたり、ビデオテープ、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録されたり、テレビ放送されたりする。
図2のフローチャートには、駆動制御ユニット114(距離算出部115および距離データ分布判定部116)で行われる距離データ分布判定処理の流れを示している。
Step001で撮影システムの電源が投入され、各種初期化処理が行われると、駆動制御ユニット114は、以下に説明する距離データ分布判定処理を開始する。
Step002では、距離算出部115は、位相差センサ112から入力された測距エリアごとの像信号を用いて、測距エリアごとの被写体距離(距離データ)を算出する。これにより、測距エリアごとの被写体距離、つまりは複数の被写体距離が同時に得られる。
Step003およびStep004では、距離データ分布判定部116は、算出(検出)した複数の被写体距離が分布する距離範囲を判定する。具体的には、複数の被写体距離が至近側(Near側)と無限遠側(Far側)の距離範囲のうちどちらに多く分布しているかを判定する。以下の説明では、複数の被写体距離がより多く分布している距離範囲を第1の距離範囲ともいい、該第1の距離範囲と異なる距離範囲を第2の距離範囲ともいう。また、Near側とFar側の全距離範囲にわたって被写体距離が偏りなく分布している場合には、距離データ分布判定部116は、被写体距離が分布する距離範囲を全距離範囲と判定する。
Step003では、距離データ分布判定部116は、複数の被写体距離がFar側の距離範囲に多く分布しているか(第1の距離範囲がFar側か)否かを判定する。Far側であると判定した場合はStep004へ移行し、Far側ではないと判定した場合はStep006へ移行する。
Step004では、距離データ分布判定部116は判定結果を“Far”に設定する。そして、Step005へ移行する。
また、Step006では、距離データ分布判定部116は、複数の被写体距離がNear側の距離範囲に多く分布しているか(第1の距離範囲がNear側か)否かを判定する。Near側であると判定した場合はStep007へ移行し、Near側ではないと判定した場合はStep008へ移行する。
Step007では、距離データ分布判定部116は、判定結果を“Near”に設定する。そして、Step005へ移行する。また、Step008では判定結果を“Standard”に設定する。そして、Step005へ移行する。
Step005では、距離データ分布判定部116は、設定した判定結果をフォーカスデマンド117に送信する。そして、Step009で距離データ分布判定処理を終了する。
図3には、Step002で算出された測距エリアごとの被写体距離の分布例を示す。横軸は位相差センサ112における対のラインセンサの個数であり、測距エリアの個数に対応する。また、縦軸は測距距離(被写体距離)Lの範囲を示している。Near側の距離範囲とFar側の距離範囲は、任意の距離を閾値として設定すればよい。例えば、距離10m以下をNear側の距離範囲とし、10mより遠い距離をFar側の距離範囲としてもよい。
同図に示されるように、測距距離がNear側に比べてFar側に多く分布する(第1の距離範囲がFar側である)場合には、Step004にて判定結果が“Far”に設定される。また、測距距離がFar側に比べてNear側に多く分布する場合(第1の距離範囲がNear側である)には、Step007にて判定結果が“Near”に設定される。また、測距距離が全体にばらついて分布している場合は、Step008にて判定結果が“Standard”に設定される。
図4のフローチャートには、フォーカスデマンド117(カーブモード自動設定処理部118、操作角検出部120、フォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119)で行われるカーブモード切替え処理の流れを示している。
Step101で撮影システムの電源が投入され、各種初期化処理が行われると、フォーカスデマンド117は、以下に説明するカーブモード切替え処理を開始する。
Step102では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から送信された距離データ分布判定処理での判定結果を受信する。そして、Step103へ移行する。
Step103では、カーブモード自動設定処理部118は、受信した判定結果が現在設定されているカーブモード(Far、Near、Standard)と同じであるか否かを判定する。同じである場合はStep111へ移行し、異なる場合はStep104へ移行する。
Step104では、カーブモード自動設定処理部118は、現在のフォーカスコントロール(FC)の値であるFCm-1を取得する。そして、Step105へ移行する。
Step105では、カーブモード自動設定処理部118は、受信した判定結果が“Far”であるか否かを判定する。“Far”である場合はStep106へ移行し、“Far”でない場合はStep107へ移行する。
Step106では、カーブモード自動設定処理部118は、カーブモードをFarモードに設定して、Farモードの設定をフォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119に通知する。フォーカスコントロール算出部121は、FarモードにおいてフォーカスコントロールがFCm-1となるフォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、該算出結果を、Farモードへの切替え後にFCm-1が出力されるフォーカス操作ノブの基準操作角として初期設定する。そして、Step110へ移行する。
基準操作角θmは、Farモードでのフォーカス操作ノブの操作角θとフォーカスコントロールFCとの関係式FC=FFar(θ)の逆関数であるθm=FFar-1(FCm-1)により導出される。
Step107では、カーブモード自動設定処理部118は、受信した判定結果が“Near”であるか否かを判定する。“Near”である場合はStep108へ移行し、“Near”でない場合はStep109へ移行する。
Step108では、カーブモード自動設定処理部118は、カーブモードをNearモードに設定して、Nearモードの設定をフォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119に通知する。フォーカスコントロール算出部121は、NearモードにおいてフォーカスコントロールがFCm-1となるフォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、該算出結果をNearモードへの切替え後にFCm-1が出力されるフォーカス操作ノブの基準操作角として初期設定する。そして、Step110へ移行する。
基準操作角θmは、Nearモードでのフォーカス操作ノブの操作角θとフォーカスコントロールFCとの関係式FC=FNear(θ)の逆関数であるθm=FNear-1(FCm-1)により導出される。
Step109では、カーブモード自動設定処理部118は、カーブモードをStandardモードに設定して、Standardモードの設定をフォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119に通知する。フォーカスコントロール算出部121は、StandardモードにおいてフォーカスコントロールがFCm-1となるフォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、該算出結果をStandardモードへの切替え後にFCm-1が出力されるフォーカス操作ノブの基準操作角として初期設定する。そして、Step110へ移行する。
基準操作角θmは、Standardモードでのフォーカス操作ノブの操作角θとフォーカスコントロールFCとの関係式FC=FStd(θ)の逆関数であるθm=FStd-1(FCm-1)により導出される。
Step110では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCmをFCm-1に設定する。そして、Step117へ移行する。
また、Step111では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、Step112へ移行する。
Step112では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から受信した判定結果が“ Far”であるか否かを判定する。“Far”である場合はStep113へ移行し、“Far”でない場合はStep114へ移行する。
Step113では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCm=FFar(θm)を算出する。そして、Step117へ移行する。
Step114では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から受信した判定結果が“ Near”であるか否かを判定し、“Near”である場合はStep115へ移行し、“Near”でない場合はStep116へ移行する。
Step115では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCm=FNear(θm)を算出する。そして、Step117へ移行する。
Step116では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCm=FStd(θm)を算出する。そして、Step117へ移行する。
Step117では、カーブモード設定状態表示部119は、Step106,108,109で通知されたカーブモードを表示する。そして、Step118へ移行する。
Step118では、フォーカスコントロール算出部121は、算出したフォーカスコントロールFCmをレンズ装置100へ送信する。そして、Step119にてカーブモード切替え処理を終了する。
【0010】
図5には、各カーブモードにおけるフォーカスデマンド117(フォーカス操作ノブ)の操作角に対するフォーカスコントロールFC(つまりは、フォーカスレンズ101の位置)の関係を決定するためのデータであるフォーカスカーブを示している。図5中の横軸はフォーカスデマンド117の操作角θを示し、縦軸はフォーカスコントロールFCを示す。Far、NearおよびStandardモードのフォーカスカーブはそれぞれ、FC=FFar(θ)、FC=FNear(θ)およびFC=FStd(θ)により表される。
Standardモードのフォーカスカーブは、フォーカスデマンド117の操作角θに対してフォーカスコントロールFCが至近端から無限遠端までリニアに変化するように設定されている。
一方、Farモードのフォーカスカーブは、フォーカスデマンド117の操作角θの変化量に対するフォーカスコントロールFCの変化量(フォーカスレンズ101の位置変化量)が、至近側よりも無限遠側において小さくなるように設定されている。また、Nearモードのフォーカスカーブは、フォーカスデマンド117の操作角θの変化量に対するフォーカスコントロールFCの変化量が、無限遠側よりも至近側において小さくなるように設定されている。
このように、FarモードとNearモードでは、被写体距離が多く分布する第1の距離範囲に対するフォーカス操作感度が、該第1の距離範囲とは異なる第2の距離範囲に対するフォーカス操作感度よりも低くなるようにフォーカス位置制御の特性が設定される。これにより、フォーカスデマンド117を小さく操作するだけでフォーカスレンズ101を第2の距離範囲に対応する移動領域から第1の距離範囲に対応する移動領域に大きく移動させることができる。しかも、第1の距離範囲においては、フォーカスレンズ101を微小量ずつ移動させて焦点調節を細かく行うことができる。
図5中における3つのフォーカスカーブの交点(θm-1,FCm-1)は、図4のStep103にて現在のカーブモードとレンズ装置100から受信した判定結果に対応するカーブモードとが異なると判定されてStep104に移行するポイントを示している。このポイントでカーブモードを切り替えることにより、カーブモードの切替え前後でフォーカスコントロールは変化しない。これにより、フォーカスレンズ101の急な動きを防ぐことができる。
以上のようにして、本実施例では、被写体距離が分布する距離範囲に応じた適切なフォーカス操作感度が自動的に設定される。
【実施例2】
【0011】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例における撮影システムの構成は、実施例1(図1A)と同じである。
図6のフローチャートには、本実施例における駆動制御ユニット114(距離算出部115および距離データ分布判定部116)で行われる距離データ分布判定処理の流れを示している。
Step201で撮影システムの電源が投入され、各種初期化処理が行われると、駆動制御ユニット114は、以下に説明する距離データ分布判定処理を開始する。
Step202では、距離算出部115は、位相差センサ112から入力された測距エリアごとの像信号を用いて、測距エリアごとの被写体距離(距離データ)を算出する。これにより、測距エリアごとの被写体距離、つまりは複数の被写体距離が同時に得られる。
Step203では、距離データ分布判定部116は、複数の被写体距離が至近端から無限遠端までの全距離範囲のうち中間距離範囲に多く分布しているか(第1の距離範囲がCenterか)否かを判定する。中間距離範囲は、Far側の距離範囲とNear側の距離範囲との間の距離範囲を意味する。この場合、各距離範囲は任意の距離を閾値として設定すればよい。例えば、距離6m以下をNear側の距離範囲とし、14mより遠い距離をFar側の距離範囲とし、距離6〜14mを中間距離範囲としてもよい。複数の被写体距離が中間距離範囲に多く分布していると判定した場合はStep204へ移行し、そうでないと判定した場合はStep205へ移行する。
Step204では、距離データ分布判定部116は、判定結果を“Center”に設定する。そして、Step206へ移行する。
Step205では、距離データ分布判定部116は、判定結果を“Standard”に設定する。そして、Step206へ移行する。
Step206では、距離データ分布判定部116は、設定した判定結果をフォーカスデマンド117に送信し、Step207で距離データ分布判定処理を終了する。
図7には、Step202で算出された測距エリアごとの被写体距離の分布例を示す。横軸は位相差センサ112における対のラインセンサの個数であり、測距エリアの個数に対応する。
同図に示されるように、測距距離が中間距離範囲に多く分布する(第1の距離範囲がCenterである)場合には、Step204にて判定結果が“Center”に設定される。また、測距距離が全体にばらついて分布している場合は、Step205にて判定結果が“Standard”に設定される。
図8のフローチャートには、フォーカスデマンド117(カーブモード自動設定処理部118、操作角検出部120、フォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119)で行われるカーブモード切替え処理の流れを示している。
Step301で撮影システムの電源が投入され、各種初期化処理が行われると、フォーカスデマンド117は、以下に説明するカーブモード切替え処理を開始する。
Step302では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から送信された距離データ分布判定処理での判定結果を受信し、Step303へ移行する。
Step303では、カーブモード自動設定処理部118は、受信した判定結果が現在設定されているカーブモード(Center、Standard)と同じであるか否かを判定する。同じである場合はStep309へ移行し、異なる場合はStep304へ移行する。
Step304では、カーブモード自動設定処理部118は、現在のフォーカスコントロール(FC)の値であるFCm-1を取得する。そして、Step305へ移行する。
Step305では、カーブモード自動設定処理部118は、受信した判定結果が“Center”であるか否かを判定する。“Center”である場合はStep306へ移行し、“Center”でない場合はStep307へ移行する。
Step306では、カーブモード自動設定処理部118は、カーブモードをCenterモードに設定して、Centerモードの設定をフォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119に通知する。フォーカスコントロール算出部121は、CenterモードにおいてフォーカスコントロールがFCm-1となるフォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、該算出結果を、Centerモードへの切替え後にFCm-1が出力されるフォーカス操作ノブの基準操作角として初期設定する。そして、Step308へ移行する。
基準操作角θmは、Centerモードでのフォーカス操作ノブの操作角θとフォーカスコントロールFCとの関係式FC=FCt(θ)の逆関数であるθm=FCt-1(FCm-1)により導出される。
Step307では、カーブモード自動設定処理部118は、カーブモードをStandardモードに設定して、Standardモードの設定をフォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119に通知する。フォーカスコントロール算出部121は、StandardモードにおいてフォーカスコントロールがFCm-1となるフォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、該算出結果をStandardモードへの切替え後にFCm-1が出力されるフォーカス操作ノブの基準操作角として初期設定する。そして、Step308へ移行する。
基準操作角θmは、Standardモードでのフォーカス操作ノブの操作角θとフォーカスコントロールFCとの関係式FC=FStd(θ)の逆関数であるθm=FStd-1(FCm-1)により導出される。
Step308では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCmをFCm-1に設定する。そして、Step314へ移行する。
また、Step309では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、Step310へ移行する。
Step310では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から受信した判定結果が“Center”であるか否かを判定する。“Center”である場合はStep311へ移行し、“Center”でない場合はStep312へ移行する。
Step311では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCm=FCt(θm)を算出する。そして、Step313へ移行する。
Step312では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCm=FStd(θm)を算出する。そして、Step313へ移行する。
Step313では、カーブモード設定状態表示部119は、Step306,307で通知されたカーブモードを表示する。そして、Step314へ移行する。
Step314では、フォーカスコントロール算出部121は、算出したフォーカスコントロールFCmをレンズ装置100へ送信する。そして、Step315にてカーブモード切替え処理を終了する。
図9には、各カーブモードにおけるフォーカスデマンド117(フォーカス操作ノブ)の操作角に対するフォーカスコントロールFC(つまりは、フォーカスレンズ101の位置)の関係を決定するためのデータであるフォーカスカーブを示している。図9中の横軸はフォーカスデマンド117の操作角θを示し、縦軸はフォーカスコントロールFCを示す。CenterおよびStandardモードのフォーカスカーブはそれぞれ、FC=FCt(θ)およびFC=FStd(θ)により表される。
Standardモードのフォーカスカーブは、フォーカスデマンド117の操作角θに対してフォーカスコントロールFCが至近端から無限遠端までリニアに変化するように設定されている。
一方、Centerモードのフォーカスカーブは、フォーカスデマンド117の操作角θの変化に対するフォーカスコントロールFCの変化が、至近端と無限遠端に近いほど大きくなり、中間距離においては小さくなるように設定されている。
このように、Centerモードでは、被写体距離が多く分布する第1の距離範囲に対するフォーカス操作感度が、該第1の距離範囲とは異なる第2の距離範囲に対するフォーカス操作感度よりも低くなるようにフォーカス位置制御の特性が設定される。これにより、フォーカスデマンド117を小さく操作するだけでフォーカスレンズ101を第2の距離範囲に対応する移動領域から第1の距離範囲に対応する移動領域に大きく移動させることができる。しかも、第1の距離範囲においてはフォーカスレンズ101を微小量ずつ移動させて焦点調節を細かく行うことができる。
図9中における2つのフォーカスカーブの交点(θm-1,FCm-1)は、図8のStep303にて現在のカーブモードとレンズ装置100から受信した判定結果に対応するカーブモードとが異なると判定されてStep304に移行するポイントを示している。このポイントでカーブモードを切り替えることにより、カーブモードの切替え前後でフォーカスコントロールは変化しない。これにより、フォーカスレンズ101の急な動きを防ぐことができる。
以上のようにして、本実施例でも、被写体距離が分布する距離範囲に応じた適切なフォーカス操作感度が自動的に設定される。
【実施例3】
【0012】
図10(a)には、本発明の実施例3である撮影システムの構成を示す。同図において、実施例1(図1(a))に示した構成要素と同じ構成要素には実施例1と同符号を付して説明に代える。なお、図10(a)では、図1(a)に示したカメラ200を省略している。
図10(a)において、123はAFエリア設定部(焦点検出エリア設定部)である。AFエリア設定部123は、ユーザの操作又は自動的に、撮影画面内においてAF(オートフォーカス)によりレンズ装置100の焦点状態の検出および焦点調節制御を行うAFエリア(焦点検出エリア)の大きさや位置を設定する。
図10(b)には、撮影画面IF内に設定されたAFエリアAA内に、全測距エリアRAのうち一部の測距エリア(複数の測距エリア)RAが含まれている様子を示している。
図11のフローチャートには、駆動制御ユニット114(距離算出部115および距離データ分布判定部116)で行われる距離データ分布判定処理の流れを示している。
Step401およびStep403〜407での処理は、実施例2(図6)におけるStep201およびStep203〜207での処理と同じである。
Step402では、距離算出部115は、AFエリア設定部123によって設定されたAFエリア内に含まれる測距エリアごとの像信号を用いて、測距エリアごとの被写体距離(距離データ)を算出する。これにより、AFエリア内に含まれる測距エリアごとの被写体距離、つまりは複数の被写体距離が同時に得られる。そして、Step403へ移行する。
図12には、Step402で算出された測距エリアごとの被写体距離の分布例を示す。横軸は位相差センサ112における対のラインセンサの個数であり、測距エリアの個数に対応する。また、縦軸は測距距離(被写体距離)Lの範囲を示している。
図12に示すように撮影画面内の全測距エリアで得られる被写体距離は、全距離範囲にばらついて分布しているが、AFエリア内の測距エリアで得られた被写体距離は、中間距離範囲に分布している。この場合、Step403にて判定結果が“Center”に設定される。
本実施例においてフォーカスデマンド117で行われるカーブモード切替え処理は、実施例2(図8)と同じである。また、本実施例におけるフォーカスカーブについても、実施例2(図9)と同じである。
以上のようにして、本実施例では、AFエリア内で算出された被写体距離が分布する距離範囲に応じた適切なフォーカス操作感度が自動的に設定される。AFエリアは、ユーザが撮影したい被写体が存在する領域である。このため、本実施例によれば、ユーザが撮影を意図しない領域での被写体距離の変化によってフォーカス操作感度が切り替わってしまうことを回避することができる。
なお、本実施例では、被写体距離の分布判定の対象となる測距エリアをAFエリアに含まれる測距エリアとする場合について説明したが、AFエリアとは関係なく全測距エリアのうち一部の測距エリアをユーザが任意に選択できるようにしてもよい。
さらに、AFエリアに含まれる測距エリア又はユーザが選択した測距エリアにて算出された被写体距離に対して大きな重み付けをし、他の測距エリアにて算出された被写体距離に対して小さな重み付けをして分布判定を行ってもよい。
また、本実施例では、カーブモードをCenterモードとStandardモードとの間で切り替える場合について説明したが、実施例1のようにFar,NearおよびStandardモード間で切り替えられるようにしてもよい。
【実施例4】
【0013】
次に、本発明の実施例4について説明する。本実施例における撮影システムの構成は、実施例1(図1)と同じである。
実施例1〜3では、距離データ分布判定部116は、単に距離算出部115により算出された複数の被写体距離が分布する距離範囲を判定した。しかし、本実施例では、算出された複数の被写体距離のうち少なくとも一部が分布し、かつ密集している距離範囲(以下、密集距離範囲という)を判定する。
図13のフローチャートには、本実施例における駆動制御ユニット114(距離算出部115および距離データ分布判定部116)で行われる距離データ分布判定処理の流れを示している。
Step501、Step502、Step506およびStep508での処理は、実施例1(図2)におけるStep001、Step002、Step008およびStep009での処理と同じである。
Step503では、距離データ分布判定部116は、Step502で算出された複数の被写体距離のうち少なくとも一部が密集した密集距離範囲が存在するか否かを判定する。密集距離範囲が存在する場合はStep504へ移行し、存在しない場合はStep506へ移行する。
Step504では、距離データ分布判定部116は、判定結果を“密集距離範囲あり”に設定する。そして、Step505へ移行する。
Step505では、距離データ分布判定部116は、密集距離範囲情報(L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)を算出する。L1minは密集距離範囲1での距離の最小値であり、L1maxは密集距離範囲1で距離の最大値である。同様に、L2minは密集距離範囲2での距離の最小値、L2maxは密集距離範囲2で距離の最大値、L3minは密集距離範囲3での距離の最小値、L3maxは密集距離範囲3での距離の最大値である。そして、Step507へ移行する。
Step507では、距離データ分布判定部116は、設定した判定結果と密集距離範囲情報とをフォーカスデマンド117に送信する。そして、Step508に移行する。
【0014】
図14には、Step502で算出された測距エリアごとの被写体距離の分布例を示す。横軸は位相差センサ112における対のラインセンサの個数であり、測距エリアの個数に対応する。また、縦軸は測距距離(被写体距離)Lの範囲を示している。図14では、3つの距離範囲にて測距距離が分布かつ密集している。このように密集距離範囲が存在する場合は、Step504にて判定結果が“密集距離範囲あり”に設定される。
また、図14に示す場合は、密集距離範囲情報(L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)は、(5,6,10,11,15,16)となる。
なお、測距距離が全体にばらついて分布している場合は、Step506にて判定結果が“Standard”に設定される。
図15のフローチャートには、フォーカスデマンド117(カーブモード自動設定処理部118、操作角検出部120、フォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119)で行われるカーブモード切替え処理の流れを示している。図15のうちStep601〜604、Step608〜610およびStep613〜616での処理は、実施例1(図2)におけるStep001〜004、Step009〜011およびStep016〜019での処理と同じである。
Step605では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から受信した判定結果が“密集距離範囲あり”であるか否かを判定する。“密集距離範囲あり”である場合はStep606へ移行し、“Standard”である場合はStep608へ移行する。
Step606では、カーブモード自動設定処理部118は、カーブモードを密集距離範囲ありモードに設定し、密集距離範囲ありモードの設定をフォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119に通知する。さらに、カーブモード自動設定処理部118は、密集領域情報(L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)に基づいて、
密集距離範囲ありモードのフォーカスカーブとして、
FC=FMs(θ,L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)
を算出する。その後、Step607へ移行する。
Step607では、カーブモード自動設定処理部118は、密集距離範囲ありモードにおいてフォーカスコントロールがFCm-1となるフォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、該算出結果を密集距離範囲ありモードへの切替え後にFCm-1が出力されるフォーカス操作ノブの基準操作量として初期設定する。その後、Step609へ移行する。
基準操作角θmは、密集距離範囲ありモードでのフォーカスカーブであるFC=FMs(θ,L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)の逆関数である、
θm=FMs-1(FCm-1,L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)
により導出される。
また、Step611では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から受信した判定結果が“密集距離範囲あり”であるか否かを判定する。“密集距離範囲あり”である場合はStep612へ移行し、“Standard”である場合はStep613へ移行する。
Step612では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCm=FMs(θm,L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)を算出する。そして、Step614へ移行する。
図16には、各カーブモードにおけるフォーカスデマンド117(フォーカス操作ノブ)の操作角に対するフォーカスコントロールFC(つまりは、フォーカスレンズ101の位置)の関係を決定するためのデータであるフォーカスカーブを示している。図16中の横軸はフォーカスデマンド117の操作角θを示し、縦軸はフォーカスコントロールFCを示す。密集距離範囲ありモードおよびStandardモードのフォーカスカーブはそれぞれ、FC=FMs(θ,L1min,L1max,L2min,L2max,L3min,L3max)およびFC=FStd(θ)により表される。
Standardモードのフォーカスカーブは、フォーカスデマンド117の操作角θに対してフォーカスコントロールFCが至近端から無限遠端までリニアに変化するように設定されている。
密集距離範囲ありモードのフォーカスカーブは、操作角θの変化に対するフォーカスコントロールFCの変化が、各密集距離範囲の最小距離側(至近側)と最大距離側(無限遠側)に近いほど大きくなり、中間距離においては小さくなるように設定されている。
このように、密集距離範囲ありモードでは、被写体距離が密集する第1の距離範囲に対するフォーカス操作感度が、該第1の距離範囲とは異なる第2の距離範囲に対するフォーカス操作感度よりも低くなるようにフォーカス位置制御の特性が設定される。これにより、フォーカスデマンド117を小さく操作するだけでフォーカスレンズ101を第2の距離範囲に対応する移動領域から第1の距離範囲に対応する移動領域に大きく移動させることができる。しかも、第1の距離範囲においてはフォーカスレンズ101を微小量ずつ移動させて焦点調節を細かく行うことができる。
図16における2つのフォーカスカーブの交点(θm-1,FCm-1)は、図15のStep603にて現在のカーブモードとレンズ装置100から受信した判定結果に対応するカーブモードとが異なると判定されてStep604に移行するポイントを示している。このポイントでカーブモードを切り替えることにより、カーブモードの切替え前後でフォーカスコントロールは変化しない。これにより、フォーカスレンズ101の急な動きを防ぐことができる。
以上のようにして、本実施例でも、被写体距離が分布(密集)する距離範囲に応じた適切なフォーカス操作感度が自動的に設定される。
【0015】
なお、本実施例では、密集距離範囲の数が3つである場合について説明したが、これは例に過ぎず、密集距離範囲の数はいくつであってもよい。
【0016】
また、本実施例において、密集距離範囲の判定対象となる測距エリアを実施例3のようにAFエリアに含まれる測距エリアに限定してもよい。
【実施例5】
【0017】
次に、本発明の実施例5について説明する。本実施例では、Standardモード以外のカーブモード(例えば、Centerモード)におけるフォーカスデマンド117の有効操作角(つまりはフォーカスレンズ101の移動領域)を、検出された被写体距離の最大値と最小値に応じて制限する。本実施例における撮影システムの構成は、実施例1(図1)と同じである。
図17のフローチャートには、本実施例における駆動制御ユニット114(距離算出部115および距離データ分布判定部116)で行われる距離データ分布判定処理の流れを示している。図中、Step701、Step702、Step705〜707およびStep709での処理は、実施例2(図6)におけるStep201〜205およびStep207での処理と同じである。
Step703では、距離データ分布判定部116は、Step702で算出された複数の被写体距離のうち最大値Lmaxを取得する。そして、Step704へ移行する。
Step704では、距離データ分布判定部116は、Step702で算出された複数の被写体距離のうち最小値Lminを取得する。そして、Step705へ移行する。
Step708では、距離データ分布判定部116は、取得したLmin、Lmaxと、被写体距離が分布する距離範囲の判定結果をフォーカスデマンド117に送信する。そして、Step709へ移行する。
本実施例において、Step702で算出された測距エリアごとの被写体距離の分布が実施例2(図7)と同じである場合、Step703ではLmax=11が取得され、Step704ではLmin=7が取得される。また、Step706にて判定結果が“Center”に設定される。
また、図7に示すように被写体距離が全体にばらついて分布している場合は、Step703ではLmax=19が取得され、Step704ではLmin=3が取得される。そして、Step707で判定結果が“Standard”に設定される。
図18のフローチャートには、フォーカスデマンド117(カーブモード自動設定処理部118、操作角検出部120、フォーカスコントロール算出部121およびカーブモード設定状態表示部119)で行われるカーブモード切替え処理の流れを示している。
Step801〜804、Step806、Step808〜811およびStep813〜816での処理は、実施例2(図8)におけるStep301〜304、Step305、Step307〜310およびStep312〜315での処理と同じである。
Step805では、カーブモード自動設定処理部118は、Lmin≦FCm-1≦Lminが成り立つか否かを判定する。成り立つ場合はStep806へ移行し、成り立たない場合はStep810へ移行する。
Step806では、カーブモード自動設定処理部118は、レンズ装置100から受信した判定結果が“Center”であるか否かを判定する。“Center”である場合はStep807へ移行し、“Center”でない場合はStep808へ移行する。
Step807では、カーブモード自動設定処理部118は、CenterモードにおいてフォーカスコントロールFCがFCm-1となるフォーカス操作ノブの操作角θmを算出する。そして、該算出結果をCenterモードへの切替え後にFCm-1が出力されるフォーカス操作ノブの基準操作角として初期設定する。そして、Step809へ移行する。
基準操作角θmは、Centerモードでのフォーカス操作ノブの操作角θとフォーカスコントロールFCとの関係式FC=FCt(θ,Lmax,Lmin)の逆関数である、
θm=FCt-1(FCm-1,Lmax,Lmin)
により導出される。
Step812では、フォーカスコントロール算出部121は、フォーカスコントロールFCm=FCt(θm,Lmax,Lmin)を算出する。そして、Step814へ移行する。
図19には、各カーブモードにおけるフォーカスデマンド117(フォーカス操作ノブ)の操作角に対するフォーカスコントロールFCの出力特性(つまりは、フォーカスレンズ101の位置制御の特性)を決定するフォーカスカーブを示している。図19中の横軸はフォーカスデマンド117の操作角θを示し、縦軸はフォーカスコントロールFCを示す。CenterおよびStandardモードのフォーカスカーブはそれぞれ、FC=FCt(θ,Lmax,Lmin)およびFC=FStd(θ)により表される。
Centerモードでは、FC=FCt(θ)で表されるフォーカスカーブが、LmaxとLminとの間の範囲に制限されている。これにより、フォーカスレンズ101がLmaxやLminに対応する位置を超えて無限遠側や至近側に移動して、大きくぼけた被写体像が撮影されることを回避できる。
本実施例でも、図19における2つのフォーカスカーブの交点(θm-1,FCm-1)は、S803にて現在のカーブモードとレンズ装置100から受信した判定結果に対応するカーブモードとが異なると判定されてStep804に移行するポイントを示している。このポイントでカーブモードを切り替えることにより、カーブモードの切替え前後でフォーカスコントロールは変化しない。これにより、フォーカスレンズ101の急な動きを防ぐことができる。
【0018】
以上のようにして、本実施例でも、被写体距離が分布する距離範囲に応じた適切なフォーカス操作感度が自動的に設定される。しかも、大きくぼけた被写体像が撮影されることを防止することができる。
なお、本実施例では、カーブモードをCenterモードとStandardモードとの間で切り替える場合について説明したが、実施例1のようにFar,NearおよびStandardモード間で切り替えられるようにしてもよい。
以上説明したように、上記各実施例によれば、被写体距離の分布に応じて自動的にフォーカス操作感度が切り替えられる。これにより、ユーザによるフォーカス操作感度の変更操作を不要としつつ、被写体距離の分布に対して適切なフォーカス操作感度を得ることができ、操作性が良好な撮影システムを実現することができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記各実施例では、被写体距離が多く分布する距離範囲に対するフォーカス操作感度が、他の距離範囲に対するフォーカス操作感度よりも低くなるようにフォーカス制御特性を設定する場合について説明した。しかし、このようなフォーカス制御特性と、被写体距離が多く分布する距離範囲に対するフォーカス操作感度が他の距離範囲に対するフォーカス操作感度よりも高くなるフォーカス制御特性とを選択可能としてもよい。これにより、ユーザの好みや撮影状況に応じたフォーカス制御特性の設定が可能となる。
【0019】
また、上記各実施例では、被写体距離の分布判定結果が変化することに応じてフォーカス操作感度(カーブモード)が切り替えられる場合について説明した。しかし、フォーカスレンズ又はズームレンズが移動している間は切り替えを行わず、該移動が停止してから切り替えを行うようにしてもよい。これにより、必要以上にフォーカス操作感度が切り替わることを防止できる。
【0020】
また、上述した距離データ分布判定処理およびカーブモード切替え処理は所定の周期で繰り返し行ってもよいし、ユーザが任意に設定した周期又はタイミングで行ってもよい。これにより、ユーザの好みや撮影条件に適した切替え応答性を得ることが可能となり、操作性をより向上させることができる。
【0021】
また、上記各実施例では、距離算出部115と距離データ分布判定部116をレンズ装置100に設けた場合について説明したが、これらをフォーカスデマンド117に設けてもよい。また、本実施例では、カーブモード自動設定処理部118とカーブモード設定状態表示部119をフォーカスデマンド117に設けた場合について説明したが、これらをレンズ装置100に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
被写体距離の分布に応じて自動的にフォーカス操作感度が切り替えられる撮影システムを実現することができる。
【符号の説明】
【0023】
100 レンズ装置
101 フォーカスレンズ
110 光束分離素子
111 センサ光学系
112 位相差センサ
114 駆動制御ユニット
117 フォーカスデマンド
200 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ装置と該レンズ装置を用いて撮影を行う撮影装置とを含む撮影システムであって、
前記レンズ装置は、フォーカスレンズを有し、
前記撮影システムは、
前記フォーカスレンズの移動を指示するために操作される操作手段と、
前記フォーカスレンズを前記操作手段の操作量に応じた位置に移動させるフォーカス位置制御を行う制御手段と、
撮影範囲内の複数の測距エリアで被写体距離を検出する測距手段と、
前記複数の測距エリアで検出された複数の前記被写体距離が分布する距離範囲を判定する判定手段と、
該判定手段による判定結果に応じて、前記フォーカス位置制御における前記操作手段の操作量と前記フォーカスレンズの位置との関係を変更する変更手段とを有することを特徴とする撮影システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記複数の被写体距離の少なくとも一部が密集している距離範囲を判定することを特徴とする請求項1に記載の撮影システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記複数の被写体距離に対して重み付けをして前記距離範囲の判定を行うことを特徴とする請求項1又2に記載の撮影システム。
【請求項4】
前記撮影範囲内において前記レンズ装置の焦点状態を検出する焦点検出エリアを設定する焦点検出エリア設定手段を有し、
前記判定手段は、前記焦点検出エリアに含まれる前記複数の測距エリアで検出された前記複数の被写体距離が分布する距離範囲を判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の撮影システム。
【請求項5】
前記複数の被写体距離が分布する距離範囲を第1の距離範囲とし、該第1の距離範囲とは異なる距離範囲を第2の距離範囲とするとき、
前記変更手段は、前記第1の距離範囲に対応する前記フォーカスレンズの移動領域における前記操作手段の操作量の変化に対する前記フォーカスレンズの位置の変化量が、前記第2の距離範囲に対応する前記フォーカスレンズの移動領域における前記操作手段の操作量の変化に対する前記フォーカスレンズの位置の変化量よりも小さくなるように、前記操作手段の操作量と前記フォーカスレンズの位置との関係を変更することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の撮影システム。
【請求項6】
レンズ装置と該レンズ装置を用いて撮影を行う撮影装置とを含む撮影システムに用いられるレンズ装置であって、
該レンズ装置は、
フォーカスレンズと、
撮影範囲内の複数の測距エリアで被写体距離を検出する測距手段とを有し、
前記撮影システムは、
前記フォーカスレンズの移動を指示するために操作される操作手段と、
前記フォーカスレンズを前記操作手段の操作量に応じた位置に移動させるフォーカス位置制御を行う制御手段と、
前記複数の測距エリアで検出された複数の前記被写体距離が分布する距離範囲を判定する判定手段と、
該判定手段による判定結果に応じて、前記フォーカス位置制御における前記操作手段の操作量と前記フォーカスレンズの位置との関係を変更する変更手段とを有することを特徴とするレンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−39213(P2011−39213A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185460(P2009−185460)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】