説明

撮影システム

【課題】 遠隔操作装置のプリセット機能でパンチルト回動中、回動完了後も被写体に対してボケを生じさせず、正確な合焦を可能にした、雲台装置を提供すること。
【解決手段】 フォーカス群を含む撮像光学系と、被写体を測距する測距手段と、を有する撮像装置と、該撮像装置が固定され、パン駆動及びチルト駆動する雲台装置と、少なくとも該雲台装置の駆動を制御する制御手段であって、少なくとも該雲台装置のパン位置及びチルト位置をプリセット状態として記憶し、該プリセット状態への駆動を制御するプリセット制御部を有する制御手段と、を有する撮影システムであって、該制御手段は、該プリセット制御部に、該プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、該雲台装置を該プリセット状態へ駆動する前に、該プリセット状態における該撮像光学系の光軸方向を該測距手段で測距した測距値に基づいて該撮像光学系のフォーカス群を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雲台装置を含む撮影システムに関し、特に、雲台装置のパンチルト位置を記憶するとともに記憶したパンチルト位置に雲台装置を駆動する機能を有する撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オートフォーカス手段を備えた撮影システムにおいて、遠隔操作装置から遠隔操作しパンチルトする雲台装置が知られている。
【0003】
雲台装置のオートフォーカスは、撮影画面の任意の範囲をオートフォーカスの対象領域とし、その領域の被写体の距離に応じて、ピントを合わせるための撮影レンズの駆動をする。そして、雲台装置をパンチルトすると、撮像している被写体が変化することで、合焦状態が変化し、これよりオートフォーカス手段はフォーカス値を設定し直す。
【0004】
ここで言うオートフォーカスとは、コントラストAFや位相差AFである。コントラストAFは、撮像素子から得られる出力信号の高周波数成分の大きさをもとに撮影光学系を制御して合焦させる方式である。位相差AFは2個のセンサを用いて三角測距の原理によって被写体までの距離を測定する方式である。
【0005】
また遠隔操作装置には、プリセット機能が備えられている。プリセット機能とは、オペレータが所望するパンチルトの目標位置およびフォーカス値の目標位置等を記憶部に登録する。そして、オペレータがプリセット機能の再生を入力することで、パンチルトとフォーカス値とが目標位置まで駆動する。以降、プリセット機能の再生を入力し、目標位置まで駆動し、目標位置まで到達することをショット動作と呼ぶ。
【0006】
例えば、特許文献1では、カメラレンズを備えた雲台装置において、パンチルト動作させる際のオートフォーカスの制御方法について記載されている。
【0007】
特許文献1は、遠隔操作装置のプリセット機能で、プリセットの再生を入力した直後に、フォーカス群を目標位置に瞬時に駆動し、ならびに目標位置へパンチルト動作させる。そして、目標位置に到達したら、オートフォーカス機能を起動し、真の撮影位置にピントを合わせる。
【0008】
これは、パンチルト動作中は、被写体が次々と変化するため、フォーカス群の合焦位置が不安定になる。よって、パンチルト回動中はオートフォーカスせず、フォーカス群が目標位置へ瞬時に駆動し、パンチルト動作中の合焦動作が不安定になることを防止している。また目標位置に到達した後に、オートフォーカス機能を起動するのは、プリセット機能で登録した被写体とショット動作後の被写体が異なる可能性があり、ピントのずれた映像を提供しないためにおこなう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−205573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、次のような問題が挙げられる。まず、パンチルト位置及びフォーカス及びズーム等の光学系の状態がプリセットされた状態に強制的に移動させるショット機能において、プリセット機能で登録した被写体距離と、ショット動作後の実際の被写体距離が異なる場合、ショット動作後にオートフォーカス状態に復帰してオートフォーカスで合焦するまでの間、被写体に対して非合焦となりボケてしまう。また、ショット機能で目標パンチルト位置までパンチルト駆動している間は、オートフォーカスが機能していないため、回動中の撮影された映像はボケている可能性が高い。この様に、ショット動作後とショット動作中はボケた映像となり、違和感のある映像を与えてしまう可能性が高い。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ショット動作時に目標位置方向の被写体に対してボケの少ない合焦を可能とし、違和感の少ない鮮明な映像を提供することができる撮影システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の撮影システムは、フォーカス群を含む撮像光学系と、被写体を測距する測距手段と、を有する撮像装置と、該撮像装置が固定され、パン駆動及びチルト駆動する雲台装置と、少なくとも該雲台装置の駆動を制御する制御手段であって、少なくとも該雲台装置のパン位置及びチルト位置をプリセット状態として記憶し、該プリセット状態への駆動を制御するプリセット制御部を有する制御手段と、を有する撮影システムであって、該制御手段は、該プリセット制御部に、該プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、該雲台装置を該プリセット状態へ駆動する前に、該プリセット状態における該撮像光学系の光軸方向を該測距手段で測距した測距値に基づいて該撮像光学系のフォーカス群を駆動する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、雲台装置は、プリセット制御部に記憶された目標位置において予め測距し、フォーカス群を予め駆動する。よって、本発明の撮影システムは、ショット動作時に目標位置方向の被写体に対してボケの少ない合焦を可能とし、違和感の少ない鮮明な映像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1における、雲台装置のシステム構成図。
【図2】本発明の実施例1における、雲台装置の外観図。
【図3】本発明の実施例1における、実施例1の制御部の処理フロー。
【図4】本発明の実施例1における、撮影画面上の多点測距点を示す図。
【図5】本発明の実施例2における、実施例2の制御部の処理フロー。
【図6】本発明の実施例2における、雲台装置と被写体との位置関係。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施例1]
以下、図1と図2を参照して本発明の第1の実施例について説明する。まず図1における撮影システムの構成図を説明する。
【0016】
本実施例の撮影システムは、撮像倍率を変化させるためのズーム群1や焦点調整するためのフォーカス群3を含む撮像光学部(撮像光学系)5と撮像光学部5による被写体像を画像信号に光電変換するCCD等の撮像素子6(以下、CCD6と呼ぶ)を含む撮像部9と、撮像部9をパン駆動するパン駆動部10と、撮像部9をチルト駆動するチルト駆動部11と、撮影システム全体の駆動を制御する制御部15と、制御部15に接続され撮像部9、パン駆動部10、チルト駆動部11を遠隔で操作する遠隔操作装置14を有する。
【0017】
撮像部9は、制御部15からの指令信号を受けズーム群1を駆動するズーム駆動部2と、制御部15からの指令信号を受けフォーカス群3を駆動するフォーカス駆動部4を有する。ズーム駆動部2は、エンコーダやポテンショメータを備え、ズーム位置情報を制御部15に送信する。フォーカス駆動部4は、エンコーダやポテンショメータを備え、フォーカス位置情報を制御部15に送信する。
【0018】
撮像光学部5は、不図示のアイリスとフィルタ切替機構等を更に有する。撮像部9は、CCD6によって光電変換されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換回路7、及び、A/D変換回路7からのデジタル画像信号の色や階調等を整える画像処理部8を含む。また画像処理部8は、CCD6から得られる出力信号の高周波数成分の大きさをもとに評価値を算出して制御部15へ出力し、制御部15は入力された評価値よりフォーカス群3を制御するための指令信号をフォーカス駆動部4に出力する。これにより、山登り方式のコントラストAF機能を構成する。
以降、撮像部9の構成により撮影される画面の画角範囲内を撮影画面内と呼び、撮像部9の構成により撮影される画面の画角範囲外を撮影画面外と呼ぶ。
【0019】
パン駆動部10は、パン速度情報とパン位置情報とを検出し、制御部15に送信する。図2に示すよう、パン駆動部10がパン回動をすると、撮像部9と制御部15と、チルト駆動部11と後述する測距部12と測距駆動部13と、が回動する。
【0020】
チルト駆動部11は、チルト速度情報とチルト位置情報とを検出し、制御部15に送信する。図2に示すよう、チルト駆動部11がチルト回動をすると、撮像部9と、測距部12と測距部駆動13と、が回動する。
【0021】
撮像部9には、被写体までの距離を測定する位相差AF機能を有する測距部12をパンチルト回動する測距駆動部13が固定されている。測距部12は、撮影用のCCD6とは別に、デフォーカス量を測定・演算するための少なくとも1対以上のラインセンサを有する。演算結果は制御部15へ送信され、制御部15はデフォーカス量に従ってフォーカス群3を駆動することにより、合焦させる。測距駆動部13は、パン駆動部10とチルト駆動部11とは独立して回動することができる。測距駆動部13は、制御部15の指令信号により回動する。測距駆動部13は、エンコーダやポテンショメータを備え、測距部12のパン位置情報とチルト位置情報とを制御部15に送信する。
【0022】
遠隔操作装置14をオペレータが操作することで、ズーム群1、フォーカス群3、パン駆動部10、チルト駆動部11等を駆動操作するための指令信号が制御部15に送信され、それらを遠隔操作することができる。遠隔操作装置14から制御部15に送信される指令信号は、速度指令信号と位置指令信号の2つに分類される。速度指令信号は、遠隔操作装置14に設けられたジョイスティックやズームレバー等の操作量による、パンチルトの回動速度やズーム等の駆動速度に対応する速度を指令値とする指令信号である。位置指令信号は、オペレータが遠隔操作装置14に備えたプリセット機能部によって、予め制御部15の記憶部であるRAMにプリセット状態として記憶されたズーム位置やフォーカス位置やパン位置やチルト位置等の位置へ駆動することを指令する信号(プリセット状態への駆動を指示する指令)である。以降、遠隔操作装置14のプリセット機能部の操作によって制御部15のRAMに記憶されたフォーカス位置情報をフォーカス目標位置、記憶されたパン位置情報とチルト位置情報とを含めてパンチルト目標位置、と呼ぶ。
【0023】
制御部15は、CPU、ROM、RAMの機能を備え、RAMには、遠隔操作装置14のプリセット機能部の操作によって、フォーカス目標位置とパンチルト目標位置等、が記憶される。制御部15は、プリセット制御部を含む。プリセット制御部は、遠隔操作装置14から位置指令信号が入力されると、記憶されたROMのプログラム処理を実行させて、RAMに記憶されたフォーカス目標位置及びパンチルト目標位置まで駆動するように、パン駆動部10、チルト駆動部11、フォーカス駆動部4、ズーム駆動部2等を駆動制御する。
【0024】
遠隔操作装置14から制御部15に、位置指令信号が入力されていない時について説明する。この時、測距駆動部13はパンチルト回動していない。位置指令信号が入力されていない時、制御部15より測距駆動部13に指令信号を送信し、測距部12の光軸方向が、撮像部9の光軸方向と一致するよう駆動制御する。測距部12には、1対のラインセンサが設けられ、一定時間毎に被写体を測距して測距値を制御部15に出力し、制御部15は測距値をもとに撮像部9のオートフォーカスの制御をする。
【0025】
次に図3を参照して、制御部15の処理フローについて説明する。
ステップS001では、遠隔操作装置14のプリセット機能部より、プリセット状態への駆動を指示する指令、即ち、パンチルト目標位置とフォーカス目標位置についての位置指令信号が制御部15に入力される。制御部15は位置指令信号に基づき、パン駆動部10とチルト駆動部11とに、制御部15のRAMに記憶されていたパンチルト目標位置まで駆動するよう、パン駆動部10及びチルト駆動部11に対して指令信号を送信する。
【0026】
なお、撮像部9の光軸方向がパンチルト目標位置に到達する前に、測距部12の光軸方向がパンチルト目標位置に到達する。測距部12の光軸方向が、パンチルト目標位置における撮像部9の光軸方向と一致したら、測距駆動部13は、測距部12の光軸方向が、パンチルト目標位置の撮像部9の光軸方向を向き続けるよう駆動制御する。ステップS002へ移行する。
【0027】
ステップS002では、測距部12で測距し、測距値を制御部15に送信する。制御部15は測距値をフォーカス指令位置に変換する。以降、測距部12によるフォーカス指令位置をフォーカス測距位置と呼ぶ。ステップS003へ移行する。
【0028】
ステップS003では、制御部15により、フォーカス目標位置の値とフォーカス測距位置の値との差(フォーカス差分値)を算出する。フォーカス差分値が閾値以上の時、ステップS004へ進み、フォーカス差分値が閾値未満の時、ステップS006へ進む。
【0029】
ステップS003では、プリセット機能部の操作で記憶した被写体の距離とショット動作後の被写体の距離とが、大きく異なるかどうかを判断している。フォーカス差分値が閾値以上であるならば、オペレータが意図した被写体映像が変化しているため、フォーカス目標位置にフォーカスすると被写体映像が大きくボケてしまう可能性が高い。よって、オペレータが予めプリセット機能部を操作して記憶したフォーカス目標位置の値ではなく、測距部12によるフォーカス測距位置の値を優先してオートフォーカスする。
【0030】
ステップS004では、制御部15よりフォーカス駆動部4へ指令信号を送信し、フォーカス群3がフォーカス測距位置へ駆動するよう駆動制御し、ステップS005へ移行する。
【0031】
ステップS005では、制御部15に記憶されたフォーカス目標位置の値をフォーカス測距位置の値に書換えする。書換えすることによって、オペレータがプリセット機能の再登録をする必要がなくなる。
【0032】
ステップS006では、制御部15よりフォーカス駆動部4へ指令信号を送信し、フォーカス群3がフォーカス目標位置へ駆動するよう駆動制御する。
【0033】
以上、ステップS001〜S006が実施例1における制御部15の処理フローである。この処理フローにより、撮像部9の光軸方向がパンチルト目標位置に到達する前に、測距部12がパンチルト目標位置を測距し、プリセットされたフォーカス位置と測距値に基づくフォーカス位置を比較して、被写体映像が大きくぼけてしまうことを未然に防止することが可能となる。
【0034】
なお前述の説明では、1対のラインセンサに基づいて測距し、オートフォーカスしていたが、複数個のラインセンサより多点測距をしてもよい。そして、焦点距離の値によって、複数の測距点の値を平均化し、平均化された測距値よりオートフォーカスしてもよい。例えば、焦点距離の値がワイド側の時は、測距部12における、複数の測距点の測距値を平均化し、オートフォーカスしてもよい。焦点距離の値がテレ側の時は、測距部12の光軸位置にある1つの測距点の測距値をもとにオートフォーカスしてもよい。
【0035】
なお測距駆動部13によって回動する測距部12は、雲台装置のパン駆動部10とチルト駆動部11とは独立して回動するため、撮影画面内と撮影画面外とを測距し、オートフォーカスすることができた。別の制御方法として、パンチルト目標位置が撮影画面内にある時は、撮像部9に設けられた図示しない多点測距部によって測距し、オートフォーカスしてもよい。多点測距部とは、図4に示すよう、撮影画面上を複数個に分割したそれぞれの範囲を測距することが可能な測距部である。図4では、撮影画面上を35個の領域に分割した例を示した。例えば、パンチルト目標位置の撮像部9の光軸方向が、図4において、No2の光軸方向であった時、多点測距部がNo2近傍を測距し、以降はステップS003の処理フローへ移行する。
【0036】
なお前述の説明では、位相差AFの測距部12よりオートフォーカスする場合を例示したが、画像処理部8のコントラストAFでオートフォーカスしてもよい。コントラストAFの時は、撮影画面上に目標位置が表示されたら、目標位置近傍をコントラストAF範囲と設定し、コントラストAFをおこなう。例えば、図4のNo35が目標位置である場合、長方形の実線枠を、コントラストAF範囲と設定し、オートフォーカスする。
【0037】
なお遠隔操作装置14に、測距部12が、現在の撮像部9の光軸方向と異なる方向を測距して、その測距値に対してオートフォーカスする制御を、ON又はOFFを選択できる設定部を設けても良い。つまり、当該設定部がON状態ならば、プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、測距部12で測距した測距値に基づくフォーカス位置に基づき撮像光学系のフォーカス群を駆動する。当該設定部がOFF状態ならば、プリセット状態として記憶されたフォーカス位置に基づき撮像光学系のフォーカス群を駆動する。
【0038】
実施例1の撮影システムの効果として、プリセット機能部を備えた雲台装置において、予め記憶されたパンチルト方向の被写体に対し、プリセット機能によりパンチルト移動した直後でも、ボケの少ない鮮明な映像を提供することができる。
【0039】
[実施例2]
以下、図1、5、6を参照して本発明の第2の実施例について説明する。
実施例2の撮影システムの構成は、実施例1の構成と同様であるので、図1を参照されたい。
【0040】
遠隔操作装置14から制御部15に、位置指令信号が入力されていない時について説明する。この時、測距駆動部13はパンチルト回動していない。位置指令信号が入力されていない時、制御部15より測距駆動部13に指令信号を送信し、測距部12の光軸方向が、撮像部9の光軸方向と一致するよう駆動制御する。測距部12には、1対のラインセンサが設けられ、一定時間毎に被写体を測距して測距値を制御部15に出力し、制御部15は測距値をもとに撮像部9のオートフォーカスの制御をする。
【0041】
次に図5を参照して、制御部15の処理フローについて説明する。制御部15の処理フローを補足するために図6を用いる。図6中の点Oは、雲台装置のパン駆動部10とチルト駆動部11との回動中心であり、パン回動の回動軸をY軸、Y軸に直交する互いに垂直なX軸及びZ軸を含むXZ平面を示す。なお、ここでは説明を簡単にするために、プリセットされたパンチルト状態へパンチルト駆動する間、撮像光学部5の光軸方向はXZ平面上で変化するものとする。点OからAへの矢印は、現時点の撮像部9の光軸方向OA、点OからCへの矢印は、パンチルト目標位置における撮像部9の光軸方向OCである。点OからBへの矢印は、光軸方向が方向OAから方向OCに変化する途上(軌跡上)での測距ポイントへの撮像部9の光軸方向OBである。軌跡上の測距ポイントに関しては、後述する。
【0042】
以降、現時点の撮像部9の光軸方向OAを光軸方向Aと呼び、軌跡上の測距ポイントへの撮像部9の光軸方向OBを光軸方向Bと呼び、パンチルト目標位置における撮像部9の光軸方向OCを光軸方向Cと呼ぶ。
【0043】
ステップS101は、撮像部9は光軸方向Aを向き、測距部12も光軸方向Aを向いている。遠隔操作装置14のプリセット機能部より、パンチルト目標位置とフォーカス目標位置についての位置指令信号が制御部15に入力される。制御部15は、光軸方向Aから、光軸方向Cまでの、撮像部9の光軸方向が描く軌跡を演算する。すなわち、時間に対するパン角度及びチルト角度の軌跡を演算する。制御部15は、光軸方向Aと光軸方向Bの間の軌跡上に、測距部12が測距する測距ポイントを少なくとも1つ以上設定する。測距ポイントは、パン速度情報、パン位置情報、チルト速度情報、チルト位置情報に基づいて演算される。例えば、撮像部9の光軸方向(パン角度及びチルト角度)が描く軌跡の長さが長いほど、パン駆動部10及び/又はチルト駆動部11の回動速度が遅いほど、測距ポイントを多く設定する方が好ましい。一方、撮像部9の光軸方向が描く軌跡の長さが短いほど、パンチルト回動速度が速いほど、測距ポイントを少なく設定する方が好ましい。
【0044】
実施例2で例示した図6での例示では測距ポイントを1つ設け、その測距ポイントを光軸方向Bとする。ステップS102では、制御部15は位置指令信号に基づき、パン駆動部10とチルト駆動部11とに、撮像部9の光軸方向がAからCに変わるようにパン駆動部10及びチルト駆動部11に対して指令信号を送信する。また、制御部15は測距駆動部13に、測距部12の光軸方向が、光軸方向Aから光軸方向Bに変わるよう、指令信号を送信する。この時、撮像部9の光軸は光軸方向Aを向き、測距部12も光軸方向Aを向いている。ステップS103へ移行する。
【0045】
ステップS103では、撮像部9の光軸方向は、光軸方向AからCに向けて変化しているが、光軸方向Bには到達しておらず、測距部12の光軸方向は光軸方向Bと一致している。測距部12は、光軸方向Bにおいて測距し、測距値を制御部15に送信し、ステップS104に進む。ステップS104では、撮像部9の光軸方向は光軸方向Bには到達しておらず、測距部12の光軸方向は光軸方向Bと一致している。制御部15よりフォーカス駆動部4へ指令信号を送信し、フォーカス群3がフォーカス測距位置へ駆動するよう駆動制御する。ステップS105へ進む。
【0046】
ステップS105では、撮像部9の光軸方向は光軸方向Bには到達しておらず、測距部12の光軸方向は光軸方向Bと一致している。制御部15が測距駆動部13に、測距部12の光軸方向が、光軸方向Cと一致するよう、指令信号を送信する。
【0047】
ステップS106では、撮像部9の光軸方向は光軸方向Cには到達しておらず、測距部12の光軸方向は、光軸方向Cと一致している。測距部12は、光軸方向Cにおいて測距し、測距値を制御部15に送信する。
【0048】
ステップS107では、撮像部9の光軸方向は光軸方向Cには到達しておらず、測距部12の光軸方向は、光軸方向Cと一致している。実施例2では、フォーカス差分値が閾値未満とすると、制御部15よりフォーカス駆動部4へ指令信号を送信し、フォーカス群3がフォーカス目標位置へ駆動するよう駆動制御する。
【0049】
上記の説明において、プリセットされたパンチルト状態へのパンチルト駆動が、図6で示したXZ平面内での光軸方向が変化する場合を例示して説明したが本発明はこれに限定されることはない。どのようなパンチルト角度から、予めプリセットされたどのようなパンチルト角度へのパンチルト駆動に対しても同様に本発明が適用できることに留意されたい。
【0050】
上記構成とフローにより、プリセットされたパンチルト位置への駆動中における撮像部9の光軸軌跡上の被写体を測距部12にて先読みして測距し、フォーカス駆動することで、被写体に対してボケの発生を低減した正確な合焦を可能とし、違和感のない鮮明な映像を提供することができる。また、光軸方向の変化の軌跡上での測距ポイントは、パン速度情報、パン位置情報、チルト速度情報、チルト位置情報に基づいて演算されるので、撮像部9のフォーカス群3の駆動に過剰な負荷をかけることなく、プリセットされたパンチルト位置への駆動中の撮影映像を、観察者に対してより自然なフォーカス状態の映像として提供することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
3 フォーカス群
4 フォーカス駆動部
5 撮像光学部
9 撮像部
10 パン駆動部
11 チルト駆動部
12 測距部
13 測距駆動部
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカス群を含む撮像光学系と、被写体を測距する測距手段と、を有する撮像装置と、
該撮像装置が固定され、パン駆動及びチルト駆動する雲台装置と、
該雲台装置の駆動を制御する制御手段であって、該雲台装置のパン位置及びチルト位置をプリセット状態として記憶し、該プリセット状態への駆動を制御するプリセット制御部を有する制御手段と、
を有する撮影システムであって、
該制御手段は、該プリセット制御部に、該プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、該雲台装置が該プリセット状態のパン位置及びチルト位置に到達する前に、該プリセット状態における該撮像光学系の光軸方向を該測距手段で測距した測距値に基づいて該撮像光学系のフォーカス群を駆動する、
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項2】
前記プリセット状態は、前記撮像装置のフォーカス位置を含み、
前記制御手段は、前記プリセット制御部に、前記プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、該プリセット状態における前記撮像光学系の光軸方向を前記測距手段で測距した測距値に基づくフォーカス位置と、該プリセット状態として記憶された前記撮像装置のフォーカス位置との差を算出し、該差が閾値以上の時は、該雲台装置が該プリセット状態のパン位置及びチルト位置に到達する前に、該プリセット状態における該撮像光学系の光軸方向を該測距手段で測距した測距値に基づいて前記撮像光学系のフォーカス群を駆動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮影システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記プリセット制御部に、前記プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、該プリセット状態における前記撮像光学系の光軸方向を前記測距手段で測距した測距値に基づくフォーカス位置と、該プリセット状態として記憶された前記撮像装置のフォーカス位置との差を算出し、該差が閾値以上の時は、該プリセット状態として記憶された該フォーカス位置を、該プリセット状態における該撮像光学系の光軸方向を該測距手段で測距した測距値に基づくフォーカス位置に書換える、
ことを特徴とする請求項2に記載の撮影システム。
【請求項4】
前記測距手段は、前記雲台装置の駆動と独立して駆動することが可能な測距駆動手段に固定されている、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮影システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記プリセット制御部に、前記プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、該指令が入力された時の前記雲台装置のパン位置及びチルト位置から、プリセット状態として記憶された前記雲台装置のパン位置及びチルト位置までの軌跡を演算し、該軌跡上に、前記撮像光学系の光軸方向を前記測距手段で測距する前記雲台装置のパン位置及びチルト位置を少なくとも1つ以上設定し、該設定した測距する前記雲台装置のパン位置及びチルト位置における前記撮像光学系の光軸方向を該測距手段で測距し、測距された測距値に基づいて前記撮像光学系のフォーカス群を駆動する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮影システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記測距手段で測距した測距値に基づくフォーカス位置、前記プリセット状態として記憶されたフォーカス位置のいずれかを選択する手段を有し、前記プリセット制御部に前記プリセット状態への駆動を指示する指令が入力された時、該選択する手段により選択されたフォーカス位置に基づき前記撮像光学系のフォーカス群を駆動する、ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の撮影システム。
【請求項7】
前記雲台装置のパン位置及びチルト位置をプリセット状態として記憶する指令、及び、該プリセット状態への駆動を指示する指令を前記制御手段に出力する遠隔操作装置を更に有する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25094(P2013−25094A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159871(P2011−159871)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】