説明

撮影装置、撮影方法、および撮影プログラム

【課題】撮影範囲を選択されたエリアごとに照明光を照射して当該エリアの撮影画像を所定の順に表示することで、照明光を照射するために要する消費電力の低減を図るとともに、鮮明な撮影画像を表示することができる撮影装置を提供する。
【解決手段】画像処理部114は、制御部111の制御により、イメージセンサ103に結像された画像を複数のエリアに分割し、分割された一つのエリアを所定の順に表示部115に表示する。LEDドライバ116は、制御部111の制御により、表示部115へのエリア表示切り替えに同期させて近赤外LED102の点灯位置の切り替え処理を実行することができる。このようにすることにより、表示部115に表示されるエリアに対応する撮影対象位置に効率的に照明光を照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮影範囲内の任意のエリアを選択的に照明して撮影する撮影装置、撮影方法、および撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、照度が不足する被写体に向けて光を照射して明るい被写体像を撮影する技術が提案されている(たとえば、特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−220147号公報
【特許文献2】特開2007−235416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の監視カメラでは、あらかじめ投光機の出力を大きくして十分な光束密度を確保して、広範囲を照明できるようにしている。しかし、この監視カメラでは、明るい画像を得ようとする場合、撮影可能範囲全体に常に十分な明るさの光を照射しなければならない。このため必要な光束密度を確保するために消費電力の増大が避けられない。また、この監視カメラでは、投光機の投光角が固定されているため、被写体の位置によっては照射光量が不足するという問題もある。
【0005】
また、特許文献2に記載のセンサカメラでは、撮影画角と同じ範囲を照明できるように照明光の照射範囲を可変設定できるようにしている。しかし、このセンサカメラでは、検出された移動する被写体に対してスポット的に光を照射するので、撮影可能な範囲に比べ照明範囲が狭くなり、撮影した画像全体を明るく鮮明に表示することができないという問題がある。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、撮影範囲を選択されたエリアごとに照明光を照射して当該エリアの撮影画像を所定の順に表示することで、照明光を照射するために要する消費電力の低減を図るとともに、鮮明な撮影画像を表示することができる撮影装置、撮影方法、および撮影プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる撮影装置は、装置全体の処理、動作を制御する制御手段と、所定の領域を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像を表示する表示手段と、前記所定の領域に照明光を照射する照明手段と、前記制御手段の制御により、前記撮影手段により撮影された画像を複数のエリアに分割し、分割された複数のエリアから所定のエリアを抽出して前記表示手段に表示する画像処理手段と、前記制御手段の制御により、前記画像処理手段により前記表示手段に表示される所定のエリアに対応する撮影対象位置に向けて照明光を照射すべく前記照明手段を制御する照明制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明にかかる撮影装置は、前記発明において、前記撮影手段が、前記所定の領域全体を同時に撮影可能な光学系を備えていることを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明にかかる撮影装置は、前記発明において、前記照明手段は、複数の近赤外LEDを備え、該複数の近赤外LEDは照明光を同時に発したときに前記所定の領域すべてを一定以上の照度で照明できるように配置されており、前記照明制御手段は、前記制御手段の制御により、前記表示手段に表示される所定のエリアに対応する撮影対象位置を照明するのに十分な光量を照射可能な、前記複数の近赤外LEDのうちの一部の近赤外LEDを点灯させることを特徴とする。
【0010】
さらに、この発明にかかる撮影装置は、前記発明において、前記画像処理手段は、前記制御手段の制御により、前記表示手段に、前記複数のエリアのうちいずれか一つまたは複数を所定の順序、時間で表示させ、前記照明制御手段は、前記制御手段の制御により、前記表示手段に表示されるエリアの順序、時間に同期させて、前記表示手段に表示されるエリアに対応する撮影対象位置に向けて照明光を照射するために点灯される前記一部の近赤外LEDを切り替えることを特徴とする。
【0011】
さらに、この発明にかかる撮影装置は、前記発明において、前記制御手段は、前記表示手段に表示されるエリアの適切な照度を、前記撮影手段による画像に対してあらかじめ設定された最大照度と最低照度を規定する閾値を適用することで判定し、前記照度が前記閾値の範囲内から逸脱した場合に、前記照明制御手段を制御して前記近赤外LEDの光量を調整することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる撮影方法は、装置全体の処理、動作を制御する制御手段と、所定の領域を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像を表示する表示手段と、前記所定の領域に照明光を照射する複数の近赤外LEDと、前記制御手段の制御により、前記撮影手段により撮影された画像に対して所定の画像処理を施す画像処理手段と、前記制御手段の制御により、前記複数の近赤外LEDの点灯を制御する照明制御手段と、を備えた撮影装置において実行される撮影方法であって、前記制御手段の制御により、前記画像処理手段が前記撮影手段により撮影された画像を複数のエリアに分割し、分割されたエリアを所定の順序、時間で前記表示手段に表示する分割エリア表示工程と、前記制御手段の制御により、前記照明制御手段が、前記分割エリア表示工程において表示される分割エリアの順序、時間に同期させて、当該分割エリアに対応する撮影対象位置に向けて照明光を照射するために点灯される前記一部の近赤外LEDを切り替える分割エリア照明工程と、前記制御手段が、前記分割エリア表示工程により表示された画像の照度の適不適を判定する画像照度判定工程と、前記画像照度判定工程において画像の照度が不適切であると判定された場合に、前記制御手段の制御により、前記画像の照度が適切になるように、前記分割エリア照明工程で点灯された近赤外LEDの光量を調整する光量調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
さらに、この発明にかかる撮影方法は、前記発明において、前記画像照度判定工程は、鮮明な画像を得るために必要な最大照度と最低照度の閾値を定めておき、前記制御手段が、前記分割エリア表示工程において各分割エリアの画像が表示された際に、前記撮影手段により撮影された画像における前記各分割エリアの照度が当該閾値の範囲から逸脱しているか否かを判定することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる撮影プログラムは、前記撮影方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、撮影範囲を選択されたエリアごとに照明光を照射して当該エリアの撮影画像を所定の順に表示することで、照明光を照射するために要する消費電力の低減を図るとともに、鮮明な撮影画像を表示することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1−1】実施の形態1にかかる撮影装置の正面図である。
【図1−2】実施の形態1にかかる撮影装置の側面図である。
【図2】実施の形態1にかかる撮影装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】画像処理部114の処理を説明するための図である。
【図4】撮影装置100における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【図5】撮影装置100における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【図6】撮影装置100における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【図7】撮影装置100における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【図8】撮影装置100における撮影処理の手順を示すフローチャートである。
【図9−1】実施の形態2にかかる撮影システムの正面図である。
【図9−2】実施の形態2にかかる撮影システムの側面図である。
【図10】実施の形態2にかかる撮影システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図11】撮影システム900における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【図12】撮影システム900における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【図13】撮影システム900における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【図14】撮影システム900における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、この発明にかかる撮影装置、撮影方法、および撮影プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1−1は、実施の形態1にかかる撮影装置の正面図である。また、図1−2は、実施の形態1にかかる撮影装置の側面図である。この撮影装置100の正面100aの中央部には、カメラレンズ101が備えられている。また、撮影装置100の正面100aのカメラレンズ101周辺には複数の近赤外LED102が配置されている。さらに、撮影装置100の上側面100bの正面100a側、下側面100cの正面100a側、左側面100dの正面100a側、右側面100eの正面100a側にも、それぞれ近赤外LED102が配置されている。この撮影装置100は180°程度の画角を有している。また、複数の近赤外LED102をすべて点灯させると、撮影装置100の画角よりもやや広い範囲を一定以上の照度で照明できるようになっている。
【0019】
図2は、実施の形態1にかかる撮影装置の機能的構成を示すブロック図である。この撮影装置100は、制御部111と、記憶部112と、撮影部113と、画像処理部114と、表示部115と、LEDドライバ116と、複数の近赤外LED102と、を備えている。
【0020】
撮影装置100の各機能部の処理、動作は、制御部111の制御により実行される。制御部111は、記憶部112から所定のプログラム、データ等を随時読み出して、各機能部の処理を実行させる。また、処理の過程で発生したデータ等を記憶部112に記憶させる。特に、画像処理部114やLEDドライバ116の処理は、制御部111が記憶部112から所定の画像処理プログラムを読み出して、当該プログラムに規定された処理を画像処理部114やLEDドライバ116に実行させることにより可能になる。制御部111や、画像処理部114、LEDドライバ116は、CPUに所定のプログラムを実行させることにより、それらの機能を実現できる。また、記憶部112は、プログラム、データ等の随時読み出し、書き込みが可能なメモリなどにより、その機能を実現できる。
【0021】
撮影部113は、カメラレンズ101とイメージセンサ103とにより構成され、被写体の撮影を行う。イメージセンサ103は、カメラレンズ101によって結像された被写体像を映像信号に変換する。
【0022】
画像処理部114は、制御部111の制御により、イメージセンサ103から送られた映像信号に対して所定の画像処理を施す(詳細は後述)。表示部115は、画像処理部114から送られた映像信号を画像として表示する。LEDドライバ116は、制御部111の制御により、近赤外LED102を点灯、または消灯させる。
【0023】
ここで、画像処理部114の処理について詳細に説明する。画像処理部114は、制御部111の制御により、イメージセンサ103に結像された画像を複数のエリアに分割し、分割された一つのエリアを所定の順に表示部115に表示する。
【0024】
図3は、画像処理部114の処理を説明するための図である。図3には、画像処理部114がまず行う第一の処理である、イメージセンサ103に結像される撮影部113の最大撮影範囲300を複数のエリアに分割する例を示している。図中に示された、「1」〜「9」の番号は、分割された各エリアを指し示すために便宜的に付されたものである。
【0025】
次に、画像処理部114は、分割された各エリアを所定の順に表示部115に表示する。たとえば、エリア「1」からエリア「9」まで番号順に繰り返し表示してもよいし、分割された各エリアをすべて表示するのではなく、エリア「1」→エリア「3」→エリア「9」→エリア「7」の順に一部のエリアのみを繰り返し表示するようにしてもよい。
【0026】
また、あたかもパンニングを行うように、最大撮影範囲300の所定の横一列方向、たとえばエリア「4」→エリア「5」→エリア「6」の順に繰り返し表示してもよいし、ティルティングを行うように、最大撮影範囲300の所定の縦一列方向、たとえばエリア「2」→エリア「5」→エリア「8」の順に繰り返し表示するようにしてもよい。
【0027】
さらに、最大撮影範囲300の所定の斜め方向、たとえばエリア「1」→エリア「5」→エリア「9」の順に表示することも可能である。複数のエリアを同時に表示することも可能であるし、特定のエリアを一つのみ表示することもできる。
【0028】
また、表示部115に各エリアを表示する際に、すべて等倍率で表示してもよいし、所定のエリアのみ異なる倍率で拡大または縮小表示してもよい。さらに、表示部115に各エリアを表示する際に、各エリアを同時間表示することもできるし、所定のエリアだけ表示時間を変えることもできる。表示するエリアの選択順序や、エリアの表示倍率、表示時間は、撮影装置100の用途ごとに設定すればよい。
【0029】
この実施の形態では、撮影装置100の用途に最適な画像処理の内容をあらかじめ画像処理プログラムに組み込んでおくことにより、上述した内容を含むプリセット機能が実現できる。なお、図3では9つのエリアに分割する例を示したが、分割されるエリア数は特に限定されるものではなく、撮影装置100の用途にしたがって任意に設定してよい。
【0030】
次に、LEDドライバ116の処理について説明する。近赤外LED102の点灯位置の切り替えは、制御部111の制御によりLEDドライバ116が実行する。前述のように、画像処理プログラムには表示するエリアの順序や、当該エリアの表示倍率、表示時間が組み込まれている。したがって、制御部111が当該画像処理プログラムを実行する過程で、表示するエリアの選択順序や当該エリアの表示時間に対応させてLEDドライバ116による近赤外LED102の点灯位置の切り替え処理を制御することにより、表示部115へのエリアの表示切り替えに同期させて近赤外LED102の点灯位置の切り替え処理を実行することができる。このようにすることにより、表示部115に表示されるエリアに対応する撮影対象位置に照明光を照射することができる。
【0031】
以下、具体例を示しながら、近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を説明する。
【0032】
図4〜図7は、撮影装置100における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。なお、図中の照射エリアは、イメージセンサ103上に結像される画像を被写体側から見た状態を示している。
【0033】
まず、図4に示すように、撮影装置100の正面100aの左上部、上側面100bの左部、左側面100dの上部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「1」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。また、特に図示しないが、エリア「3」に対応する撮影対象位置への照射は、撮影装置100の正面100aの右上部、上側面100bの右部、右側面100eの上部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。
【0034】
エリア「9」に対応する撮影対象位置への照射は、撮影装置100の正面100aの右下部、下側面100cの右部、右側面100eの下部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。エリア「7」に対応する撮影対象位置への照射は、撮影装置100の正面100aの左下部、下側面100cの左部、左側面100dの下部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。
【0035】
図5に示すように、撮影装置100の正面100aの上側中央部および上側面100bの正面100a近傍中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「2」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。また、図示しないが、エリア「8」に対応する撮影対象位置への照射は、撮影装置100の正面100aの下側中央部および下側面100cの正面100a近傍中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。
【0036】
図6に示すように、撮影装置100の正面100aの左側中央部および左側面100dの正面100a近傍中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「4」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。また、図示しないが、エリア「6」に対応する撮影対象位置への照射は、撮影装置100の正面100aの右側中央部および右側面100eの正面100a近傍中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。
【0037】
図7に示すように、撮影装置100の正面100aに配置されているすべての近赤外LED102を点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「5」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。
【0038】
前述したように、各エリアに対応する撮影対象位置への照射は、制御部111が、画像処理プログラムを実行する過程で、表示するエリアの選択順序や当該エリアの表示時間に対応させてLEDドライバ116による近赤外LED102の点灯位置の切り替え処理を制御することにより、表示部115へのエリアの表示切り替えに同期させて行うことが可能になる。このとき、鮮明な画像を得るためには、各エリアに対応する撮影対象位置への照射光量の過不足が生じないように、近赤外LED102からの照射光量の適切化を図る必要がある。また、被写体の周囲の環境により、特定のエリアに対して近赤外LED102からの照射光以外の光が当たってしまう場合もあり、各エリアに対応する撮影対象位置ごとに明るさが異なることもありうる。
【0039】
そこで、この実施の形態では、各エリアの像を表示部115に表示させる度に、制御部111が、イメージセンサ103に結像された当該エリアの像の照度を検出し、適切な照度が得られるようにLEDドライバ116を制御して、近赤外LED102の光量(明るさ)を調整する。
【0040】
具体的には、鮮明な画像を得るために必要な最大照度と最低照度の閾値を定めておき、各エリアの像を表示部115に表示させる際に、制御部111が、イメージセンサ103に結像された当該エリアの画像の照度が当該閾値の範囲から外れているか否かを判定する。そして、照度が当該閾値の範囲から外れている場合には、制御部111は、良好な照度が得られるように(イメージセンサ103に結像された当該エリアの画像の照度が当該閾値の範囲内に収まるように)、LEDドライバ116を制御して近赤外LED102の光量(明るさ)を調整する。
【0041】
次に、実施の形態1の撮影装置における撮影処理の手順を説明する。図8は、撮影装置100における撮影処理の手順を示すフローチャートである。
【0042】
図8に示すフローチャートにおいて、まず、装置の電源が投入されると、撮影待機状態に入る(ステップS801)。このとき、制御部111が、記憶部112から画像処理プログラムを読み込み、分割されるエリア、表示部115に表示するエリアの順序、表示時間等を把握する。これにより、各エリアに対応する撮影対象位置への照明順序、時間も把握する。同時に、制御部111の制御により、LEDドライバ116が近赤外LED102の試験点灯を行う。
【0043】
次に、近赤外LED102の点灯が安定したか否かを判定する(ステップS802)。この判定は、制御部111が行う。ここで、近赤外LED102の点灯が安定した場合(ステップS802:Yes)は、ステップS803へ移行する。一方、近赤外LED102の点灯が不安定の場合(ステップS802:No)は、再度ステップS802の処理を実行する。
【0044】
ステップS802において近赤外LED102の点灯が安定した場合(ステップS802:Yes)、最大撮影範囲内の各分割エリアを所定の順序、時間で表示する(ステップS803)。具体的には、制御部111が画像処理部114を制御して、イメージセンサ103に結像された最大撮影範囲の画像を複数のエリアに分割し、各分割エリアを画像処理プログラムに規定された所定の順序、時間で表示部115に表示する。なお、分割エリアを表示する際に、表示される時間や表示画像の倍率等を分割エリアごとに異なるように設定することも可能である。
【0045】
続いて、最大撮影範囲内の各分割エリアに対応する撮影対象位置を所定の順序、時間で照明する(ステップS804)。具体的には、制御部111がLEDドライバ116を制御して、ステップS803の処理で表示部115に表示される分割エリアに対応する撮影対象位置を照明する近赤外LED102を点灯する。この処理は、ステップS803の処理に同期させて行う。近赤外LED102の点灯のさせ方は、図4〜図7を参照しながら説明したとおりである。なお、各エリアに対応する撮影対象位置への照明順序、時間は、画像処理プログラムに組み込まれた各エリアの表示順序、時間に従う。
【0046】
続いて、表示部115に表示される画像の照度は適切か否かを判定する(ステップS805)。具体的には、鮮明な画像を得るために必要な最大照度と最低照度の閾値を定めておき、各エリアの像を表示部115に表示させる際に、制御部111が、イメージセンサ103に結像された当該エリアの像の照度が当該閾値の範囲から逸脱しているか否かを判定する。ここで、画像の照度が適切な場合(ステップS805:Yes)は、ステップS807へ移行する。
【0047】
一方、ステップS805において画像の照度が適切でない場合(ステップS805:No)は、近赤外LED102の光量(明るさ)を調整する(ステップS806)。具体的には、制御部111が、良好な照度が得られるように(イメージセンサ103に結像された当該エリアの画像の照度が当該閾値の範囲内に収まるように)、LEDドライバ116を制御して近赤外LED102の光量(明るさ)を変化させる。
【0048】
続いて、撮影処理がすべて終了したか否か判定する(ステップS807)。具体的には、制御部111が、画像プログラムに規定されたすべての処理が終了したか(またはユーザから終了指示を受けたか)否かを判定する。ここで、撮影処理がすべて終了していない場合(ステップS807:No)は、再度ステップS803へ戻る。一方、撮影処理がすべて終了した場合(ステップS807:Yes)は、すべての処理を終了する。なお、ユーザからの終了指示とは、装置の電源が切られた場合や、装置にあらかじめ設けられている処理を終了させるための手段が行使された場合を意味する。
【0049】
なお、上記各工程(撮影方法)は、ネットワークまたは各種記憶媒体を介して取得したソフトウェア(プログラム)をCPU、プロセッサ等で実行することで実現できる。
【0050】
以上説明したような処理を行うことにより、実施の形態1にかかる撮影装置100は、最大撮影範囲を複数のエリアに分割し各エリアごとの画像を表示する際に、装置に備えられた近赤外LED102の一部を当該エリアに対応する撮影対象位置へ照射することで、近赤外LED102の点灯に必要な消費電力を低減させることができる。実施の形態1に示したように、最大撮影範囲を9つのエリアに分割してそれぞれのエリアの画像を順に表示する場合には、常時近赤外LED102を点灯させておく場合に比べて消費電力をおよそ1/9にすることができる。さらに、実施の形態1の撮影装置100では、表示されるエリアごとに適切な照射光量を設定できるため、低消費電力で鮮明な画像を表示することができる。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態1では、カメラと投光機とを一体化して構成した撮影装置の一例を示した。実施の形態2では、カメラと投光機とを分離して構成した撮影システムの一例を示す。
【0052】
図9−1は、実施の形態2にかかる撮影システムの正面図である。また、図9−2は、実施の形態2にかかる撮影システムの側面図である。この撮影システム900は、カメラ910と、投光機920とにより構成される。カメラ910の正面910aのほぼ中央部にはカメラレンズ101が配置されている。また、投光機920の正面920aの周辺部には複数の近赤外LED102が配置されている。
【0053】
そして、カメラ910は投光機920の前側に配置され、この状態でカメラ910の周囲に複数の近赤外LED102が二重に位置するようになっている。カメラ910は180°程度の画角を有している。また、複数の近赤外LED102をすべて点灯させると、カメラ910の画角よりもやや広い範囲を照明できるようになっている。
【0054】
図10は、実施の形態2にかかる撮影システムの機能的構成を示すブロック図である。この撮影システム900は、カメラ910と、投光機920とにより構成される。カメラ910は、カメラ制御部911と、記憶部112と、撮影部113と、画像処理部114と、表示部115と、を備えている。投光機920は、投光機制御部921と、LEDドライバ116と、複数の近赤外LED102と、を備えている。
【0055】
カメラ910の各機能部の処理、動作は、カメラ制御部911の制御により実行される。カメラ制御部911は、記憶部112から所定のプログラム、データ等を随時読み出して、各機能部の処理を実行させる。また、処理の過程で発生したデータ等を記憶部112に記憶させる。特に、画像処理部114の処理は、カメラ制御部911が記憶部112から所定の画像処理プログラムを読み出して、当該プログラムに規定された処理を画像処理部114に実行させることにより可能になる。
【0056】
カメラ制御部911や、画像処理部114は、CPUに所定のプログラムを実行させることにより、それらの機能を実現できる。記憶部112、撮影部113、画像処理部114、表示部115の機能は、実施の形態1と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0057】
また、投光機920の各機能部の処理、動作は、投光機制御部921の制御により実行される。投光機制御部921は、カメラ制御部911の動作に同期して、LEDドライバ116を制御し、近赤外LED102を点灯、または消灯させる。投光機制御部921やLEDドライバ116は、CPUに所定のプログラムを実行させることにより、それらの機能を実現できる。LEDドライバ116の機能は、実施の形態1と同様である。
【0058】
実施の形態2の撮影システム900は、複数の制御部を備えている。しかし、実施の形態1と同様の画像処理プログラムをカメラ制御部911で実行し、投光機制御部921はカメラ制御部911の動作に同期するようにLEDドライバ116を制御することにより、実施の形態1に示した撮影装置100と同じ処理手順を実現して同様の効果を得ることができる。このため、実施の形態2の撮影システム900の具体的処理の説明は省略する。以下では、配置状態が異なる近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係のみを説明する。
【0059】
図11〜図14は、撮影システム900における近赤外LED102の点灯位置の切り替えとこれにより照射されるエリアの位置との関係を示す図である。なお、図中の照射エリアは、イメージセンサ103上に結像される画像を被写体側から見た状態を示している。
【0060】
まず、図11に示すように、投光機920の正面920aの左上部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「1」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。また、特に図示しないが、エリア「3」に対応する撮影対象位置への照射は、投光機920の正面920aの右上部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。エリア「9」に対応する撮影対象位置への照射は、投光機920の正面920aの右下部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。エリア「7」に対応する撮影対象位置への照射は、投光機920の正面920aの左下部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。
【0061】
図12に示すように、投光機920の正面920aの上側略中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「2」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。また、図示しないが、エリア「8」に対応する撮影対象位置への照射は、投光機920の正面920aの下側略中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。
【0062】
図13に示すように、投光機920の正面920aの左側略中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「4」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。また、図示しないが、エリア「6」に対応する撮影対象位置への照射は、投光機920の正面920aの右側略中央部に配置されている近赤外LED102を点灯することにより可能になる。
【0063】
図14に示すように、投光機920の正面920aの内側の近赤外LED102をすべて点灯することにより、最大撮影範囲300におけるエリア「5」に対応する撮影対象位置全体を照射することができる。
【0064】
以上説明したように、カメラ910と投光機920とを別体で構成した場合でも、最大撮影範囲300を複数のエリアに分割し各エリアごとの画像を表示する処理と、各エリアに対応する撮影対象位置へ照射する処理とを同期させることにより、実施の形態1の場合と同様の処理を実行することができる。すなわち、最大撮影範囲内の選択された一部のエリアに対応する撮影対象位置に対して、一部のLEDを点灯させて集中投光することで、当該エリアの鮮明な画像が得られるとともに、LED点灯のための消費電力を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、この発明にかかる撮影装置、撮影方法、および撮影プログラムは、照明光を必要とする被写体の撮影に有用であり、当該技術を監視カメラに採用すると特に好ましい効果を期待できる。
【符号の説明】
【0066】
100 撮影装置
100a,910a,920a 正面
100b 上側面
100c 下側面
100d 左側面
100e 右側面
101 カメラレンズ
102 近赤外LED(照明手段)
103 イメージセンサ
111 制御部
112 記憶部
113 撮影部
114 画像処理部
115 表示部
116 LEDドライバ(照明制御手段)
300 最大撮影範囲
900 撮影システム
910 カメラ
911 カメラ制御部
920 投光機
921 投光機制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置全体の処理、動作を制御する制御手段と、
所定の領域を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像を表示する表示手段と、
前記所定の領域に照明光を照射する照明手段と、
前記制御手段の制御により、前記撮影手段により撮影された画像を複数のエリアに分割し、分割された複数のエリアから所定のエリアを抽出して前記表示手段に表示する画像処理手段と、
前記制御手段の制御により、前記画像処理手段により前記表示手段に表示される所定のエリアに対応する撮影対象位置に向けて照明光を照射すべく前記照明手段を制御する照明制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記撮影手段は、前記所定の領域全体を同時に撮影可能な光学系を備えていることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記照明手段は、複数の近赤外LEDを備え、該複数の近赤外LEDは照明光を同時に発したときに前記所定の領域すべてを一定以上の照度で照明できるように配置されており、
前記照明制御手段は、前記制御手段の制御により、前記表示手段に表示される所定のエリアに対応する撮影対象位置を照明するのに十分な光量を照射可能な、前記複数の近赤外LEDのうちの一部の近赤外LEDを点灯させることを特徴とする請求項1または2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記制御手段の制御により、前記表示手段に、前記複数のエリアのうちいずれか一つまたは複数を所定の順序、時間で表示させ、
前記照明制御手段は、前記制御手段の制御により、前記表示手段に表示されるエリアの順序、時間に同期させて、前記表示手段に表示されるエリアに対応する撮影対象位置に向けて照明光を照射するために点灯される前記一部の近赤外LEDを切り替えることを特徴とする請求項3に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記表示手段に表示されるエリアの適切な照度を、前記撮影手段による画像に対してあらかじめ設定された最大照度と最低照度を規定する閾値を適用することで判定し、前記照度が前記閾値の範囲内から逸脱した場合に、前記照明制御手段を制御して前記近赤外LEDの光量を調整することを特徴とする請求項4に記載の撮影装置。
【請求項6】
装置全体の処理、動作を制御する制御手段と、
所定の領域を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像を表示する表示手段と、
前記所定の領域に照明光を照射する複数の近赤外LEDと、
前記制御手段の制御により、前記撮影手段により撮影された画像に対して所定の画像処理を施す画像処理手段と、
前記制御手段の制御により、前記複数の近赤外LEDの点灯を制御する照明制御手段と、
を備えた撮影装置において実行される撮影方法であって、
前記制御手段の制御により、前記画像処理手段が前記撮影手段により撮影された画像を複数のエリアに分割し、分割されたエリアを所定の順序、時間で前記表示手段に表示する分割エリア表示工程と、
前記制御手段の制御により、前記照明制御手段が、前記分割エリア表示工程において表示される分割エリアの順序、時間に同期させて、当該分割エリアに対応する撮影対象位置に向けて照明光を照射するために点灯される一部の近赤外LEDを切り替える分割エリア照明工程と、
前記制御手段が、前記分割エリア表示工程により表示された画像の照度の適不適を判定する画像照度判定工程と、
前記画像照度判定工程において画像の照度が不適切であると判定された場合に、前記制御手段の制御により、前記画像の照度が適切になるように、前記分割エリア照明工程で点灯された近赤外LEDの光量を調整する光量調整工程と、
を含むことを特徴とする撮影方法。
【請求項7】
前記画像照度判定工程は、
鮮明な画像を得るために必要な最大照度と最低照度の閾値を定めておき、
前記制御手段が、前記分割エリア表示工程において各分割エリアの画像が表示された際に、前記撮影手段により撮影された画像における前記各分割エリアの照度が当該閾値の範囲から逸脱しているか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の撮影方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の撮影方法をコンピュータに実行させることを特徴とする撮影プログラム。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−26656(P2013−26656A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156469(P2011−156469)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】