説明

撹拌装置

【課題】公転と共に自転する遊星運動のできる簡素で安価な撹拌装置を提供する。
【解決手段】公転軸4を介して回転保持器5を回転させることにより、回転保持器5は公転軸4を中心として公転し、遠心力により外側に傾斜すると共に、容器保持具6に取り付けた容器ホルダ8のフランジ部8aが蓋部10と接触することにより、容器ホルダ8が自転する。容器ホルダ8は公転と共に自転する遊星運動を行うことにより、混練容器9の内部の材料には公転による遠心力と自転による遠心力とが作用し、材料の撹拌による混練が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に液体状、粉体状、ゲル状等の工業材料や培養液を収容し、機械的に撹拌を行う撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の撹拌装置としては、特許文献1のように公転用と自転用の複数個の電動機を用いて、容器は公転と共に自転をする遊星運動を行うものが知られている。
【0003】
また特許文献2、3では、1個の電動機を用いて公転力を利用して自転を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−43567号公報
【特許文献2】特開平8−332367号公報
【特許文献3】特開昭61−290946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては公転用の電動機以外に、容器ごとに自転用の電動機を必要とするため、装置が大掛かりとなり、自転用の電動機への給電も難しい。
【0006】
また特許文献2、3では、1個の電動機を用いて公転及び自転を行っているが、公転軸から自転軸への回転力の伝達機構が複雑となり、耐久性に問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、公転と共に自転する遊星運動がなされ、混練容器中の材料の撹拌を可能とする簡素で安価な撹拌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る撹拌装置の技術的特徴は、駆動モータにより鉛直軸方向の公転軸を中心に回転駆動する回転保持器と、該回転保持器に対し水平軸を中心に回動自在に取り付けた容器保持具と、該容器保持具に対し直接又は容器ホルダを介してその軸方向に回転自在に取り付け可能な円筒状の混練容器と、前記容器保持具の上方に配置した板体とから成り、前記回転保持具を電気駆動モータによって回転することにより公転運動する前記混練容器又は容器ホルダの一部を前記板体に接触させて、前記混練容器に自転による回転運動を加えることにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明による撹拌装置によれば、1個の駆動モータにより公転と共に自転をする遊星運動を行うことができ、簡易な構造で撹拌を効果的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の撹拌装置の側面図を示している。筐体1内の下部には上下に昇降可能な昇降装置2が設置され、この昇降装置2上に駆動モータ3が載置されている。更に、この駆動モータ3の駆動軸3aに連結された鉛直方向を向く公転軸4の上部には、図2に示すように断面コ字型形状の回転保持器5が取り付けられている。この回転保持器5の両側には孔部5aが設けられ、孔部5aに2つの環状の容器保持具6がそれぞれ一対のピン6aを介して回動自在に取り付けられている。
【0011】
図3は容器保持具6及びこの容器保持具6に取り付ける混練容器等の分解斜視図を示し、容器保持具6にはベアリング7を介して円筒状の容器ホルダ8が回転自在に取り付けられており、容器保持具6にはベアリング7を保持するためにフランジ6bが設けられている。容器ホルダ8の上端の開口部周縁には、ベアリング7上に係止するためのフランジ部8aが設けられている。なお、このフランジ部8aの周囲に滑り止め用のゴム材等の弾性部材を付設してもよい。そして、容器ホルダ8内には開閉自在なキャップ9aを備えた混練容器9を装着するようにされている。混練容器9は有底の円筒体であり、上部にキャップ9aが例えば螺合により取り付けられている。なお、この容器ホルダ8の重心はピン6aよりも十分に下方にあるため、静止時には図1に示すように容器ホルダ8はピン6aにより吊り下げられている。
【0012】
また、筐体1の上部には蓋部10が開閉自在に設けられ、蓋部10の裏面には耐摩耗性を有する板材が張り付けられている。
【0013】
この撹拌装置を使用する際には、2つの混練容器9内にそれぞれ撹拌すべき材料を入れてキャップ9aにより密封し、容器ホルダ8内にそれぞれ固定する。その後に、必要に応じて昇降装置2により回転保持器5の高さを位置決めをした後に、筐体1に対して蓋部10を閉止し固定する。
【0014】
ここで、回転モータ3を駆動すると、公転軸4を介して回転保持器5が回転する。これにより、容器ホルダ8は公転軸4を中心として公転すると共に、容器ホルダ8に加わる遠心力により、図4に示すように、容器ホルダ8は混練容器9と共にピン6aを中心に下方が持ち上がるように傾斜し、容器ホルダ8のフランジ部8aの角部が蓋部10の裏側と接触する。これにより、容器ホルダ8は蓋部10に対する摩擦抵抗により回転を始め、容器保持具6に対し自転する。なお、フランジ部8aの蓋部10の裏側と接触する角部は、十分な滑り抵抗が得られるように、予め丸く面取りをしておくことが好適である。
【0015】
容器ホルダ8が公転と共に自転する遊星運動をすることにより、混練容器9の内部の材料には、公転による遠心力と自転による遠心力とが作用し、材料の撹拌による混練がなされると共に、材料に内在する気泡の混練容器9の空間内への放出が促進される。
【0016】
なお、昇降装置2より回転保持器5の高さを調整すると、図5に示すように容器ホルダ8と蓋部10との接触位置が変化するので、その接触半径が変化し、たとえ駆動モータ3の回転数が同じでも、容器ホルダ8の自転速度が変わることになる。
【0017】
本実施例においては、昇降装置2を介して容器ホルダ8と蓋部10の間隔を調整したが、昇降装置2を用いずに蓋部10の高さ位置を調整することもできる。また、回転保持器5の公転中に、昇降装置2を連続的に上昇下降させると、容器ホルダ8、混練容器9の傾斜角が変化し、蓋部10との接触位置が変り、自転速度を変動させることができる。
【0018】
また、容器ホルダ8には混練容器9内の材料を加温するための加熱装置或いは冷却するための冷却装置を取り付けたり、筐体1内に加熱装置、冷却装置を設けることもできる。更に、混練容器9に弁を取り付けて内圧を調整することにより、内部を減圧して材料の発泡を促進したり、加圧した状態で混練容器9を攪拌することも可能である。
【0019】
撹拌装置の停止に際しては、駆動モータ3への電源を断にすると、公転速度が小さくなるにつれ、容器ホルダ8に加わる遠心力もなくなり、容器ホルダ8の傾斜が戻り、容器ホルダ8は図1に示すように、ピン6aにより吊り下げられた状態に復帰する。そこで、蓋部10を開けて、容器ホルダ8から混練容器9を取り出せばよい。
【0020】
なお、実施例では、混練容器9を容器ホルダ8を介して容器保持具6に取り付けたが、容器ホルダ8を使用せずに、混練容器9は直接、容器保持具6に回転自在に取り付けてもよい。この場合には、混練容器9の上部に容器ホルダ8のフランジ部8aと同様の機能を有するフランジ部を設けることが好ましい。
【0021】
また、筐体1を用いて蓋部10を混練容器9に接触させたが、必ずしも筐体1を用いる必要はなく、別体の板体を蓋部10の代りにしてもよい。
【0022】
更には、実施例では2個の混練容器9について説明したが、混練容器9の数は2個に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】蓋部を開けた状態の撹拌装置の側面図である。
【図2】回転保持器の斜視図である。
【図3】容器保持具、容器ホルダ等の分解斜視図である。
【図4】回転中の撹拌装置の側面図である。
【図5】容器ホルダの高さを変えた状態の撹拌装置の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 筐体
2 昇降装置
3 駆動モータ
4 公転軸
5 回転保持器
5a 孔部
6 容器保持具
6a ピン
7 ベアリング
8 容器ホルダ
8a フランジ部
9 混練容器
9a キャップ
10 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータにより鉛直軸方向の公転軸を中心に回転駆動する回転保持器と、該回転保持器に対し水平軸を中心に回動自在に取り付けた容器保持具と、該容器保持具に対し直接又は容器ホルダを介してその軸方向に回転自在に取り付け可能な円筒状の混練容器と、前記容器保持具の上方に配置した板体とから成り、前記回転保持具を電気駆動モータによって回転することにより公転運動する前記混練容器又は容器ホルダの一部を前記板体に接触させて、前記混練容器に自転による回転運動を加えることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記板体を前記混練容器又は前記容器ホルダに対する相対的な高さ位置を変えることにより、前記混練容器の前記回転保持具に対する傾斜角を変えると共に、前記混練容器又は前記容器ホルダの前記板体との接触位置を変化させ、前記混練容器の自転による回転速度を可変とすることを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記駆動モータ、回転保持器、混練容器を筐体内に収容し、前記板体は前記筐体の蓋部としたことを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記板体に対する前記混練容器又は前記容器ホルダの相対的な高さ位置は昇降装置により調節することを特徴とする請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記昇降装置は前記駆動モータの回転駆動中に上下に昇降可能としたことを特徴とする請求項4に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記混練容器を加温する加熱手段又は冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記混練容器は弁を有し、減圧状態又は加圧状態とすることを可能としたことを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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