説明

擁壁における鳥類営巣構造

【課題】本発明は擁壁に形成した鳥出入用開口から内奥へ向け営巣トンネルを掘削する営巣行為を有効に誘起し、カワセミ、ヤマセミ、ショウドウツバメ等、崖に自力で営巣トンネルを掘削して営巣する鳥類に適した営巣環境を提供し、又擁壁における鳥類営巣構造を短い工期に且つ安価に形成できるようにした擁壁における鳥類営巣構造を提供する。
【解決手段】擁壁を形成する覆工板1に鳥の出入用開口4を貫設し、他方営巣適性土を締め固めして営巣用土柱5を形成し、該営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその周面(5c,5d,5e)及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出させた擁壁における鳥類営巣構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は擁壁の背面の被覆工土中に鳥類が営巣トンネルを適切に掘削できるようにした擁壁における鳥類営巣構造に関する。
【背景技術】
【0002】
覆工板又は覆工ブロック又はコンクリート打設によって形成する擁壁は、カワセミ、ヤマセミ、ショウドウツバメ等、崖に自力で営巣トンネルを掘削して営巣する鳥類の営巣環境を奪い、これら鳥の繁殖を阻害する問題が指摘され、その改善が求められている。
【0003】
特許文献1は従来の技術として木製の巣箱内にプラスチック管を配し、該プラスチック管の一端を覆工板に設けた鳥出入用開口と連通せしめ、他端を巣箱の後部空間内に開口せしめて、該後部空間を産室とする鳥類営巣構造を開示している。
【0004】
他方上記特許文献1は上記従来技術に代わる鳥類営巣構造として、擁壁の背面に営巣用土砂層を設けると共に、該擁壁を形成する覆工板に該営巣用土砂層に面する鳥出入用開口を設け、鳥が該鳥出入用開口を通じて営巣用土砂層に営巣トンネルを自力で掘削できるようにした鳥類営巣構造を提供している。
【0005】
又特許文献2はプラスチック製の容器内に営巣土を締め固めして内填したものを用意し、該容器の開口端を覆工板に設けた鳥出入用開口と連通せしめ、鳥がプラスチック製容器内の土中に営巣トンネルを自力で掘削せしめることを意図した鳥類営巣構造を提供している。
【特許文献1】特公平7−24526号公報
【特許文献2】特開2001−152428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然るに特許文献1に開示する巣箱とプラスチック管によって構成する鳥類営巣構造においては、プラスチック管であるが故に土中に自力で営巣トンネルを掘削する習性を有する前記鳥類が営巣を忌避し、営巣効果が期待できない問題を有する。
【0007】
又特許文献1にて提供する覆工板の背面に営巣用土砂層を設ける方法においては、その[0015]に「予め用意したカワセミの習性・生態に合った粘土質の土を適度に締め固めて営巣用の土砂層19を形成した。」と述べる通り、営巣に適した土を事前に用意し、該土を擁壁の間口方向に一定の厚さに敷き込み、層全体を締め固めする繁雑な作業が必要であり、工費が高くつく問題点を有している。
【0008】
加えて営巣用土砂層全体がその上面を覆う被覆工土の荷重により過度に沈降して崩壊し、亀裂を発生する等して営巣用土砂層としての機能を損なう問題点を有している。
【0009】
又特許文献2の営巣構造は、プラスチック製容器であるが故に土中に自力で巣穴を掘削する習性を有する前記鳥類が営巣を忌避する問題を有する。
【0010】
加えてプラスチック製容器内の営巣土にカビ、極度の乾燥等を発生し営巣環境を損なう問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記特許文献1,2で開示する営巣構造の問題点を有効に解消する擁壁における鳥類営巣構造を提供する。
【0012】
要述すると本発明は、擁壁を形成する覆工板に鳥の出入用開口を貫設し、他方営巣適性土を締め固めして営巣用土柱を形成し、該営巣用土柱を上記覆工板の背面の被覆工土中にその周面及び後端面が被覆工土と接するように埋設し、該営巣用土柱の覆工板と対向する前端面を上記鳥出入用開口の背面側開口面に面して露出させた構造を有する鳥類営巣構造を提供する。
【0013】
又本発明は、上記営巣用土柱を上記覆工板の背面の被覆工土中にその上面を除く周面及び後端面が被覆工土と接するように埋設し、営巣用土柱の上面を止水板又は止水層で覆い、該営巣用土柱の覆工板と対向する前端面を上記鳥出入用開口の背面側開口面に面して露出させた構造を有する擁壁における鳥類営巣構造を提供する。
【0014】
テールアルメ工法においては被覆工土を覆工する任意の覆工板に上記鳥出入用開口を単数又は複数貫設する。
【0015】
又はジオテキスタイル工法においては被覆工土を覆う覆工メッシュと覆工配筋マットから成る擁壁の適所に覆工板を配設し、該覆工板に鳥出入用開口を単数又は複数貫設する。
【0016】
上記鳥類営巣構造における実施態様例として、上記営巣用土柱の上面はアーチ形面又は斜面から成る流れ屋根面形状とする。
【0017】
又上記鳥類営巣構造における実施態様例として、上記営巣用土柱の外部は強締め固め土で形成し、同内部は弱締め固め土で形成する。
【発明の効果】
【0018】
上記擁壁における鳥類営巣構造は、擁壁を形成する覆工板に貫設した鳥出入用開口に対応した局部に土を締め固めして形成した営巣用土柱を裸で埋設する。
【0019】
従って特許文献1における営巣用土砂層全体が上層土の荷重により沈降崩壊する問題点を可及的に防止する。又営巣構造の設置作業を容易にし、工費を削減する。
【0020】
又特許文献2におけるプラスチック製容器の内径に制限されずに、営巣用土柱を所要の太さや長さに成形し、営巣トンネルの掘削に適した環境を提供でき、プラスチック管やプラスチック容器による営巣忌避の問題を解消できる。
【0021】
又営巣用土柱上面の流れ斜面により、上記雨水を同土柱の周辺に案内し、営巣トンネルへの雨水滲入を有効に防止し、営巣環境を健全に保つ。
【0022】
又営巣用土柱の上面を止水板又は止水層で覆うことにより、雨水と樹木の根の侵入を遮蔽し、上記営巣環境を健全に保つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図10に基づき説明する。
【0024】
<営巣用土柱5の実施形態・・・図8乃至図10参照>
図8乃至図10に示すように、上記営巣用土柱5は営巣に適した土を締め固めして成形した土柱であり、該土柱は角柱形又は円柱形又は蒲鉾形等に成形する。
【0025】
上記角柱形又は円柱形又は蒲鉾形等の営巣用土柱5は、型を用い、該型内に営巣適性土を充填し全体を均一に締め固めし成形する。
【0026】
又は図9A,Bに示すように、角柱形又は円柱形又は蒲鉾形等の営巣用土柱5は、その外部を強締め固め土5′で形成し、同内部は鳥の自力掘削に適した圧縮力で締め固めした弱締め固め土5″で形成する。即ち強締め固め土5′で形成した中空柱体内に弱締め固め土5″を内填し、強締め固め土5′と弱締め固め土5″の複合構造柱とする。
【0027】
上記営巣用土柱5は図8A,Bに示すように、その上面5cをアーチ形面から成る流れ屋根面にして蒲鉾形にするか、又はその上面5cを片流れ斜面又は両流れ斜面から成る流れ屋根面にする。又は営巣用土柱5は図2に示すように角柱形にし、その上面5cを平面にする。上記各営巣用土柱5の前端面5aと後端面5bは平面から成る。
【0028】
上記営巣用土柱5は全外周面を容器や巣箱で覆わずに、換言すると容器内に収容せずに、裸にして被覆工土2中に埋設する。即ち覆工板1と対向する前端面5aを除く周面(上面5cと側面5dと底面5e)と後端面5bとが被覆工土2と接するように埋設し横設する。
【0029】
又は図10A,Bに示すように、上記営巣用土柱5の上面5cを同上面5cに接する止水板又は止水層7で覆い被覆工土2中に埋設する。即ち営巣用土柱5の上面5cをアーチ形面にした蒲鉾形にするか、又は円柱形にし、同上面5cを止水板又は止水層7で覆う。
【0030】
上記止水板又は止水層7は以下に述べる第一乃至第四実施形態において、営巣用土柱5の大部分が被覆工土2と接する環境を生成しながら、雨水の営巣トンネル12内への滲入を有効に防止すると共に、植物の根が営巣用土柱5内、即ち営巣トンネル12内へ根張りするのを有効に防止する。
【0031】
上記営巣用土柱5は角柱形にし、その平面から成る上面5cを止水板又は止水層7で覆うことができる。
【0032】
上記止水板7は営巣用土柱5の上面5cがアーチ形面である場合には、アーチ形金属板又はアーチ形合成樹脂板にし、該アーチ形面に接して被せる。
【0033】
又上記止水板7は営巣用土柱5の上面5cが平面である場合には、平面金属板又は平面合成樹脂板にし、該平面に接して被せる。
【0034】
又上記複合構造の営巣用土柱5の上面5cを片流れ斜面又は両流れ斜面にした場合には、止水板7は両斜面と同調する形状の金属板又は合成樹脂板にする。
【0035】
これら止水板7は接着剤を介して土柱5の上面に一体に接着するか、又は単に置き敷きする。
【0036】
又止水板7に代え上記営巣用土柱5の上面5cに止水材を塗布して止水層7を設けることができる。
【0037】
<第一実施形態・・・図1乃至図3参照>
図1乃至図3に示すように、被覆工面を多数のコンクリートパネル1aに代表される覆工板1で覆い略垂直の擁壁を形成する。各覆工板1は厚み面において互いに係合する構造にすると共に、各覆工板1を被覆工土2中に埋設した覆工板1の後方に延びる牽引材3にて牽引する構造を有する。この工法はテールアルメ工法と呼称される。
【0038】
上記擁壁を形成する覆工板1に鳥の出入用開口4を貫設し、該覆工板1の背面の被覆工土2中、即ち覆工板1にて覆工される被覆工土2(裏込材2aを含む)中に上記営巣適性土を締め固めして形成した営巣用土柱5を裸で埋設し、即ち該営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその周面5c,5d,5e及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出せしめる。
【0039】
又は上記営巣用土柱5の上面5cを前記止水板又は止水層7で覆い、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出せしめる。
【0040】
上記鳥出入用開口4は最大径の営巣トンネル12を掘削する鳥(ヤマセミ)を基準にし、該最大径の営巣トンネル12より大径の開口径に設定する。
【0041】
他方上記営巣用土柱5の太さを上記鳥出入口用開口4の大きさより大きくし、営巣用土柱5の前端面5aの周面を鳥出入用開口4の背面側開口部の周面(開口部周りの覆工板1の表面)に当接せしめる。
【0042】
換言すると、上記営巣用土柱5を全長において同じ太さにすると同時に、上下左右幅を上記鳥出入口用開口4の背面側開口部の直径よりも大きくし、営巣用土柱5の前端面5aの周面を鳥出入用開口4の背面側開口部の周面(開口部周りの覆工板1の表面)に当接せしめる。
【0043】
よって最小径の営巣トンネルを掘削する鳥(カワセミ)も営巣トンネル12を掘削でき、共用化が図れる。
【0044】
以上述べた鳥出入口用開口4に関する構成は以下に述べる第二乃至第四実施例においても実施可能である。
【0045】
本発明は上記覆工板1の背面に現場で発生した土砂又は採石等の砂利を裏込めすることができ、この裏込材2aも被覆工土2と称し、この裏込材2a中に上記営巣用土柱5を埋設し横設する場合を含む。
【0046】
図2は角柱形の営巣用土柱5を埋設した例、図3は蒲鉾形の営巣用土柱5を埋設した例を示す。
【0047】
<第二実施形態・・・図4,図5参照>
被覆工土2の前面を覆工ネット8で覆い、更に該前面覆工ネット8の前面を格子組みした前面配筋マット9で覆い、該前面配筋マット9から被覆工土2中に延びる格子組みした埋設配筋マット10で前面配筋マット9及び前面覆工ネット8を引き留めし、上記前面覆工ネット8の背面には植生マット11を配し、前面配筋マット9の前面から植物が繁茂できるようにした擁壁を形成し、又は上記前面配筋マット9と埋設配筋マット10を用いずに、前面覆工ネット8の上下端から埋設ネットを被覆工土2中に延ばし、被覆工土2をネットで囲い込みネット背面に植生マット11を配し、前面から植物が繁茂できるようにした擁壁を形成する。所謂ジオテキスタイル工法によって擁壁を形成し、該擁壁に本発明に係る鳥類営巣構造を形成する。
【0048】
詳述すると、上記ジオテキスタイル工法によって形成した擁壁の前面の適所にネットや配筋マットで覆工しない窓を形成し、該窓内に図4,図5に示したコンクリートパネル1aに代表される覆工板1を配設し、該擁壁を形成する覆工板1に鳥の出入用開口4を貫設し、上記営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその周面5c,5d,5e及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出させる。
【0049】
又は上記営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその上面5cを除く周面5d,5e及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、営巣用土柱5の上面5cを前記止水板又は止水層7で覆い、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出せしめる。
【0050】
図4は広面積の単一の覆工板1を上記ジオテキスタイル工法によって形成した擁壁の前面の適所に配設し、上記営巣構造を形成した場合を示す。
【0051】
図5は複数のコンクリートパネル1aを上記ジオテキスタイル工法によって形成した擁壁の前面の適所に配設して覆工板1を形成し、上記営巣構造を形成した場合を示す。上記複数のコンクリートパネル1aは一面の覆工板1を形成する。例えば覆工板1を形成する各コンクリートパネル1aの下辺が前方に張り出す武者返し構造にし、ヘビ等の外敵の侵入を防止する構造にする。
【0052】
この武者返し構造のコンクリートパネル1aの何れかに上記鳥出入用開口4を設け、営巣用土柱5を埋設する。
【0053】
本発明は上記覆工ネット8の背面に現場で発生した土砂又は採石等の砂利を裏込めすることができ、この裏込材2aをも被覆工土2と称し、この裏込材2a中に上記営巣用土柱5を埋設し横設する場合を含む。
【0054】
<第三実施形態・・・図6参照>
図6に示すように、被覆工面に多数の裏込め室6を有するコンクリートブロック1bを上下に積み上げ一定の仰角勾配を有する擁壁を形成する。本発明においては該コンクリートブロック1bの前壁を覆工板1と称する。上記裏込め室6内には現場で発生した土砂、砕石等の砂利を充填する。即ち裏込材2aを裏込めする。
【0055】
上記擁壁を形成する覆工板1、即ちコンクリートブロック1bの前壁に鳥の出入用開口4を貫設し、該覆工板1の背面の被覆工土2中、即ち覆工板1にて覆工される被覆工土2(裏込材2aを含む)中に上記営巣適性土を締め固めして形成した営巣用土柱5を裸で埋設し、即ち上記営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその周面5c,5d,5e及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出させる。
【0056】
又は上記営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその上面5cを除く周面5d,5e及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、営巣用土柱5の上面5cを前記止水板又は止水層7で覆い、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出せしめる。
【0057】
上記営巣用土柱5は裏込め室6内に充填した裏込材2a中に埋設し、且つその後端部を本来の地盤を形成する被覆工土2中に埋設する。この裏込材2aと本来の地盤を被覆工土2と称することは前記の通りである。
【0058】
<第四実施形態・・・図7参照>
図7に示すように比較的低背の擁壁においては、大形のL形コンクリートブロック1bを基礎コンクリート上に設置し被覆工面を覆工する擁壁を形成することが行われている。
【0059】
本発明においては上記L形コンクリートブロック1bの前壁を覆工板1と称する。上記覆工板1の背面には現場で発生した土砂、砕石等の砂利を充填する。即ち裏込材2aを裏込めする。
【0060】
上記擁壁を形成する覆工板1、即ちコンクリートブロック1bの前壁に鳥の出入用開口4を貫設し、該覆工板1の背面の被覆工土2中、即ち覆工板1にて覆工される被覆工土2(裏込材2aを含む)中に上記営巣適性土を締め固めして形成した営巣用土柱5を裸で埋設し、即ち上記営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその周面5c,5d,5e及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出させる。
【0061】
又は上記営巣用土柱5を上記覆工板1の背面の被覆工土2中にその上面5cを除く周面5d,5e及び後端面5bが被覆工土2と接するように埋設し、営巣用土柱5の上面5cを前記止水板又は止水層7で覆い、該営巣用土柱5の覆工板1と対向する前端面5aの周面を覆工板1の背面に略当接状態にして同前端面5aを上記鳥出入用開口4の背面側開口面に面して露出せしめる。
【0062】
上記営巣用土柱5はその前端部を裏込材2a中に埋設し、且つその後端部を本来の地盤を形成する被覆工土2中に埋設する。この裏込材2aと本来の地盤を被覆工土2と称することは前記の通りである。
【0063】
上記の如くして埋設した営巣用土柱5は、その全周面又は上面を除く全周面において被覆工土2と接する環境にし、鳥出入用開口4において露出する営巣用土柱5の前端面5aから内奥に向け営巣トンネル12を掘削する営巣行為を有効に誘起することができる。
【0064】
即ち上記各営巣用土柱5を使用した擁壁における鳥類営巣構造においては、カワセミ、ヤマセミ、ショウドウツバメ等、崖に自力で営巣トンネルを掘削して営巣する鳥類に適した営巣環境を提供でき、これら鳥の繁殖を阻害する巣箱やプラスチック管又はプラスチック製容器による営巣忌避の問題を有効に解決できる。
【0065】
又擁壁における鳥類営巣構造を短い工期に且つ安価に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る擁壁における鳥類営巣構造を、テールアルメ工法により形成された擁壁に実施した場合の断面図。
【図2】上記図1の擁壁において角柱形の営巣用土柱を埋設した実施形態を示す断面図。
【図3】上記図1の擁壁において蒲鉾形の営巣用土柱を埋設した実施形態を示す断面図。
【図4】Aは本発明に係る擁壁における鳥類営巣構造を、ジオテキスタイル工法により形成された擁壁に実施した場合の断面図、Bは同正面図。
【図5】本発明に係る擁壁における鳥類営巣構造を、ジオテキスタイル工法により形成された擁壁に実施した場合の他例を示す断面図。
【図6】本発明に係る擁壁における鳥類営巣構造を、裏込め室を有するコンクリートブロックにより形成した擁壁に実施した場合を示す断面図。
【図7】本発明に係る擁壁における鳥類営巣構造を、L形コンクリートブロックにより形成した擁壁に実施した場合を示す断面図。
【図8】Aは営巣用土柱の一例を示す横断面図、Bは同縦断面図。
【図9】Aは営巣用土柱の他例を示す横断面図、Bは同縦断面図。
【図10】Aは営巣用土柱の更に他例を示す横断面図、Bは同縦断面図。
【符号の説明】
【0067】
1…覆工板、1a…コンクリートパネル、1b…コンクリートブロック、2…被覆工土、2a…裏込材、3…牽引材、4…鳥出入用開口、5…営巣用土柱、5′…強締め固め土、5″…弱締め固め土、5a…前端面、5b…後端面、5c…上面、5d…側面、5e…底面、6…裏込め室、7…止水板又は止水層、8…前面覆工ネット、9…前面配筋マット、10…埋設配筋マット、11…植生マット、12…営巣トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
擁壁を形成する覆工板に鳥の出入用開口を貫設し、他方営巣適性土を締め固めして営巣用土柱を形成し、該営巣用土柱を上記覆工板の背面の被覆工土中にその周面及び後端面が被覆工土と接するように埋設し、該営巣用土柱の覆工板と対向する前端面を上記鳥出入用開口の背面側開口面に面して露出させたことを特徴とする擁壁における鳥類営巣構造。
【請求項2】
擁壁を形成する覆工板に鳥の出入用開口を貫設し、他方営巣適性土を締め固めして営巣用土柱を形成し、該営巣用土柱を上記覆工板の背面の被覆工土中にその上面を除く周面及び後端面が被覆工土と接するように埋設し、営巣用土柱の上面を止水板又は止水層で覆い、該営巣用土柱の覆工板と対向する前端面を上記鳥出入用開口の背面側開口面に面して露出させたことを特徴とする擁壁における鳥類営巣構造。
【請求項3】
上記営巣用土柱の上面をアーチ形面又は斜面から成る流れ屋根面形状としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の擁壁における鳥類営巣構造。
【請求項4】
上記営巣用土柱の外部は強締め固め土で形成し、同内部は弱締め固め土で形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の擁壁における鳥類営巣構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−109809(P2006−109809A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303517(P2004−303517)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(395015722)株式会社カンケン (7)
【出願人】(303065728)有限会社インパクト (16)
【Fターム(参考)】