説明

操作された微小胞を用いた真核細胞のリプログラミング

本発明は、少なくとも一つのリプログラミング転写因子を担持する、操作された微小胞を使用することによって、真核細胞をリプログラミングするための、特に人工多能性幹細胞(iPS)を得るための非遺伝的で界面活性剤不含の無細菌法に関し、ここで、該操作された微小胞は、ウイルスフリーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、真核細胞をリプログラミングするための、特に人工多能性幹細胞(iPS細胞)を得るための方法に関する。
【0002】
発明の背景
哺乳動物細胞は、診断応用および医学応用におけるin vitroモデルに広く使用される。例えば、哺乳動物細胞は、薬物をスクリーニングするため、分子経路を研究するため、または治療薬の製造に使用されることがある。哺乳動物細胞は、また、細胞療法のために使用することができる。
【0003】
哺乳動物幹細胞は、全ての哺乳類生物から見出される始原細胞(primal cell)であり、有糸細胞分裂により自己を再生する能力を保持し、多様な範囲の専門化された細胞種類に分化することができる。胚性幹細胞(ES細胞)は、胚盤胞の内部細胞集塊の胚盤葉上層組織由来細胞の培養物である。
【0004】
無制限のエクスパンションおよび多能性というそれらの二つの基礎的特質が原因で、幹細胞、特にヒト胚性幹(hES)細胞は、細胞代償療法および創薬に使用するためにかなりの関心を集めている。
【0005】
しかしながら、ES細胞を得るために胚を使用することは議論の余地があり、倫理問題を提起する。したがって、多能性細胞の代替的な供給源が検討されている。
【0006】
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、非多能性の、典型的には成体の体細胞からある種の遺伝子の「強制」発現を誘導することによって人工的に得られた多能性幹細胞の一種である。
【0007】
iPS細胞は、2006年にマウス細胞から(Takahashi et al Cell 2006 126: 663-76)、そして2007年にヒト細胞から(Takahashi et al. Cell 2007 131-861-72, Yu et al. Science 2007 318 :1917)最初に作出された。これらの著者は、ウイルス発現系を使用してリプログラミング転写因子を体細胞に導入することによって、該体細胞を脱分化することが可能であることを実証した。
【0008】
しかしながら、ウイルストランスダクションの使用は、治療に使用するためにそのような方法を開発することを妨げるいくつかの問題を提起する。実際に、ターゲット細胞のゲノム変化およびガン遺伝子発現のリスクが存在する。
【0009】
他の著者は、ウイルスフリーのiPS細胞を作出するための非組み込み型エピソームベクターの使用を示唆した(Yu et al. Science 2009, vol 324, p 797-801)。しかしながら、リプログラミング効率は低いままである。さらに、結果として生じたiPSクローンの一つにおける核型異常が、後にこれらの著者によって観察された。
【0010】
最近、Zhouらは、iPS細胞を得るための非遺伝的方法を報告した(Zhou et al. Cell Stem Cell 2009, vol 4, p 381-384)。これらの著者は、ターゲット細胞にリプログラミング因子を導入するためにポリアルギニンリコンビナントタンパク質を使用した。しかしながら、この方法は時間を浪費し、大規模生産があまり容易ではない。それは、ターゲット細胞に導入する前に各リコンビナントタンパク質を発現および精製しなけらばならないからである。
【0011】
したがって、依然として、当技術分野においてターゲット細胞をリプログラミングするための、例えば人工多能性幹細胞を得るための迅速、安全かつ効率的な方法の必要性がある。
【0012】
発明の概要
本発明は、ウイルス膜融合タンパク質およびリプログラミング転写因子を過剰発現している真核細胞に関する。
【0013】
本発明は、また、本発明による真核細胞によって分泌された微小胞に関し、ここで、該微小胞は、該ウイルス膜融合タンパク質および該リプログラミング転写因子を含む。
【0014】
本発明は、また:
− ウイルス膜融合タンパク質およびEcoRエコトロピックウイルスレセプターを含む微小胞によって、ターゲット細胞に該EcoRエコトロピックウイルスレセプターを送達するステップ;
− リプログラミング因子をコードする少なくとも一つの遺伝子を含むエコトロピックウイルスによって、該ターゲット細胞に少なくとも一つのリプログラミング因子を送達するステップ
を含む、人工多能性幹細胞を得るための方法に関する。
【0015】
本発明は、また、リプログラミング転写因子を含む本発明の微小胞とターゲット細胞を接触させることによって、該ターゲット細胞に該リプログラミング転写因子を送達するためのin vitro方法に関する。
【0016】
本発明は、また、上記微小胞によってターゲット細胞に少なくとも一つのリプログラミング因子を送達するステップを含む、人工多能性幹細胞を得るための方法に関する。
【0017】
本発明は、また、上記方法によって入手可能な人工多能性幹細胞に関する。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明者らは、関心が持たれるタンパク質を発現している真核細胞でのウイルス膜融合タンパク質の過剰発現が、該膜融合タンパク質および関心が持たれる該タンパク質を含む微小胞の分泌に繋がりうることを発見した。さらに本発明者らは、ターゲット細胞に関心が持たれる該タンパク質を効率的に送達するために該微小胞を使用することができることを実証した。
【0019】
特に本発明者らは、ターゲット細胞にエコトロピックレセプターを送達することによって、該ターゲット細胞を、リプログラミング転写因子を含有するエコトロピックウイルスに許容性にするために、微小胞を使用することができることを実証した。
【0020】
本発明者らは、また、リプログラミング転写因子の機能を変化させずにターゲット細胞に該リプログラミング転写因子を直接送達するために、およびそれによって該ターゲット細胞をリプログラミングするために、例えば人工多能性幹細胞を得るために、該微小胞を使用することができることを実証した。
【0021】
したがって本発明は、ウイルス膜融合タンパク質と、エコトロピックレセプターまたはリプログラミング転写因子とを過剰発現している真核細胞に関する。該真核細胞は、ウイルス膜融合と、エコトロピックレセプターまたは該リプログラミング転写因子とを含む微小胞を分泌可能である。
【0022】
一態様では、本発明による真核細胞は、ウイルス構造タンパク質を発現せず、そのような真核細胞によって分泌される微小胞は、ウイルス構造タンパク質を含まない。したがって本発明による微小胞は、その局面においてHIV1 Gagなどのウイルス構造タンパク質を含む、当技術分野、例えば国際公開公報第2006/059141号に記載されたウイルス様粒子(VLP)とは異なる。
【0023】
本明細書に使用される「ウイルス構造タンパク質」という用語は、ウイルスのキャプシドタンパク質またはタンパク質コアの全体構造に寄与するウイルスタンパク質を表す。「ウイルス構造タンパク質」という用語には、さらに、ウイルスのキャプシドタンパク質またはタンパク質コアの構造に寄与するそのようなウイルスタンパク質の機能的フラグメントまたは誘導体が含まれる。ウイルス構造タンパク質の一例は、HIV1 Gagである。ウイルス膜融合タンパク質は、ウイルス構造タンパク質として見なされない。典型的には、該ウイルス構造タンパク質は、微小胞内に局在する。
【0024】
本発明者らは、実際に、ウイルス構造タンパク質を発現しないがVSV−Gまたは他の融合誘発タンパク質などの膜融合タンパク質および該リプログラミング転写因子を過剰発現する真核細胞において、関心が持たれるタンパク質を含む微小胞が産生できることを示した。
【0025】
そのうえ本発明による微小胞は、リプログラミング転写因子をコードする核酸を含有しなくてもよい。もちろん、微量の核酸、特にプロデューサー細胞からの微量のmRNAまたは以前のトランスフェクションに起因するDNAであっても該微小胞中に含有されることを除外することはできない。しかしながら本発明者らは、そのような微量の核酸(存在する場合)が、微小胞によるタンパク質機能の移行の90%以上の原因になることができないことを実証した。
【0026】
典型的には真核細胞は、ヒト細胞または昆虫細胞などの哺乳動物細胞である。
【0027】
適切な哺乳動物細胞の例は、非限定的にHEK−293T細胞、COS7細胞、Hela細胞およびHEK−293細胞である。
【0028】
「過剰発現すること」によって、所与の細胞によって発現されるタンパク質の量を高めるための、当技術分野において公知の任意の手段が意味される。事実上、ウイルス膜融合タンパク質およびリプログラミング転写因子は、真核細胞がウイルス構造タンパク質を発現する必要なしに、該ウイルス膜融合タンパク質および該リプログラミング転写因子を含む微小胞を分泌可能であるようなレベルまで発現される。
【0029】
典型的には、ウイルス膜融合タンパク質およびリプログラミング転写因子の過剰発現は、ウイルス膜融合タンパク質をコードする発現ベクターおよびリプログラミング転写因子をコードする発現ベクターを真核細胞にトランスフェクションすることによって達成することができる。
【0030】
別の態様では、本発明による該真核細胞は、ウイルス膜融合タンパク質としてとしてのVSV−Gおよびリプログラミング転写因子を過剰発現しているが、他のウイルスタンパク質、特にウイルス構造タンパク質を過剰発現しない。該態様により分泌される微小胞は、VSV−Gおよび該リプログラミング転写因子を含むが、ウイルス構造タンパク質を含まない。
【0031】
別の特定の態様では、真核細胞は、ウイルス膜融合タンパク質および該リプログラミング転写因子だけを過剰発現する。この態様では、ウイルス膜融合タンパク質、例えばVSV−Gの発現は、細胞中の過剰発現タンパク質の少なくとも30%、例えば少なくとも50%に相当することがある。
【0032】
一態様では、該ウイルス膜融合タンパク質および該リプログラミング転写因子は、二つの異なるベクターによってコードされることがある。
【0033】
一態様では、該ウイルス膜融合タンパク質および関心が持たれる該タンパク質は、2シストロン性発現カセットを含有する単一ベクターによって担持されることがある。関連する態様では、該ウイルス膜融合タンパク質および該リプログラミング転写因子は、一緒に共有結合していない。
【0034】
一態様では、発現ベクターには、エピソーム複製プラスミドおよび例えばSV40 ORIまたはEBV ORI配列などのウイルス性起点配列を含むプラスミドが含まれることがある。
【0035】
発現ベクターによる過剰発現は、分子生物学の技術分野で公知の任意の遺伝子導入法を含むことがある。
【0036】
好ましい態様では、過剰発現は、外来DNAのトランスフェクションによって得られる。適切なトランスフェクション法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソームを使用するトランスフェクション(リポフェクションとしても知られている)またはエレクトロポレーションなどの、技術者に公知の古典的方法である。所与の細胞に適切なトランスフェクション法を選択することは、技術者の能力の範囲内である。
【0037】
好ましい態様では、過剰発現は、ウイルストランスダクションによって得られない。
【0038】
過剰発現は、一過性過剰発現または安定過剰発現でありうる。
【0039】
一過性過剰発現を用いる場合、細胞は、典型的にはトランスフェクションの48から72時間後の間に最適量のウイルス膜融合タンパク質および/またはリプログラミング転写因子を過剰発現する。
【0040】
「過剰発現」という用語は、また、内因性タンパク質、すなわち真核細胞によって自然に発現されるタンパク質の過剰発現を包含する。過剰発現は、該タンパク質をコードする遺伝子の追加的なコピーの導入または内因性タンパク質の発現刺激のいずれかにありうる。一例として、真核細胞は、該内因性タンパク質の発現を高めることが知られている培養条件下に置くことができる。
【0041】
典型的には、該ウイルス膜融合タンパク質は、インフルエンザウイルスヘマグルチニンなどのクラスIウイルス膜融合タンパク質、クラスIIウイルス膜融合タンパク質またはクラスIIIウイルス膜融合タンパク質である(クラスIIIウイルス膜融合タンパク質に関する総説についてはBackovic et al, Curr Opin Struct Biol 2009, 19(2):189-96またはCourtney et al, Virology Journal 2008, 5:28を参照されたい)。
【0042】
好ましい態様では、該ウイルス膜融合タンパク質は、クラスIウイルス膜融合タンパク質である。
【0043】
クラスIウイルス膜融合タンパク質の例は、バキュロウイルスFタンパク質、特にSpodoptera exigua MNPV(SeMNPV)Fタンパク質およびLymantria dispar MNPV(LdMNPV)Fタンパク質などの、核多角体病ウイルス(NPV)属のFタンパク質である。
【0044】
好ましい態様では、該ウイルス膜融合タンパク質は、クラスIIIウイルス膜融合タンパク質である。
【0045】
クラスIIIウイルス膜融合タンパク質の例は、ラブドウイルスG(水疱性口内炎ウイルスの融合誘発タンパク質G(VSV−G)など)、ヘルペスウイルスgB(単純ヘルペスウイルス1型の糖タンパク質B(HSV−1 gB)など)、EBV gB、トゴトウイルスG、バキュロウイルスgp64(Autographa CaliforniaマルチプルNPV(AcMNPV)gp64など)、およびボルナ病ウイルス(BDV)糖タンパク質(BDV G)である。
【0046】
より好ましい態様では、該ウイルス膜融合タンパク質は、VSV−Gまたはバキュロウイルスgp64である。一態様では、該ウイルス膜融合タンパク質は、GenBank AN:M35219.1に定義されているようなVSV−Gポリペプチドまたは融合誘発性を保持する任意の機能的フラグメントもしくはそれらの機能的誘導体である。
【0047】
本明細書に使用される「融合誘発」という用語は、タンパク質がターゲット細胞の膜への微小胞原形質膜の融合を誘導する能力を表す。
【0048】
本発明の一態様では、本発明による真核細胞は、さらに、膜出芽を誘導するタンパク質を過剰発現する。この態様では、微小胞の産生が高まる。
【0049】
本明細書に使用される「膜出芽を誘導するタンパク質」という表現は、脂質二重層の変形を促進して小胞形成を仲介することができる任意のタンパク質を表す。
【0050】
所与の被験タンパク質が膜出芽を誘導する能力は、以下のin vitro試験「A」に従って評価することができる:
【0051】
HEK293T細胞に被験タンパク質をトランスフェクションするか、または空のベクターを模擬トランスフェクションする。トランスフェクションの20時間後に、細胞培地をR18含有培地(20μg/ml)に取り替える。R18、すなわちオクタデシルローダミンBクロリドは、膜と結合し、560nmで励起すると590nmで蛍光を発する親油性化合物である。6時間インキュベーションして細胞膜にR18を組み入れた後に、R18を有さない新鮮培地から培地を交換する。トランスフェクションの72時間後に、トランスフェクションされた細胞からの培地および模擬トランスフェクションされた細胞からの培地を収集し、透明にし、蛍光光度計によって分析する。レザズリン(rezazurin)ベースのアッセイによって計数された生細胞数に対して基準化されたR18関連蛍光の量は、各条件で細胞によって放出された膜の量を反映する。
【0052】
上記試験「A」によって測定されたとき、被験タンパク質が細胞1個あたりのR18関連蛍光の量を増加させる場合、そのタンパク質は、膜出芽を誘導すると見なされる。
【0053】
様々な細胞タンパク質およびウイルスタンパク質が、膜出芽を誘導することが知られている。
【0054】
膜出芽を誘導する細胞タンパク質の例は、プロテオリピドタンパク質PLP1(Trajkovic et al. 2008 Science, vol 319, p 1244-1247)、クラスリンアダプター複合体AP1(Camus et al., 2007. Mol Biol Cell vol 18, p3193-3203)、フロッパーゼ、スクランブラーゼなどの脂質の性質を改変するタンパク質、TSAP6(Yu et al. 2006 Cancer Res vol 66, p4795-4801)およびCHMP4C(Yu et al. 2009, FEBS J. vol 276, p2201-2212)などの非古典的経路を介した分泌を促進するタンパク質である。
【0055】
膜出芽を誘導するウイルスタンパク質の例は、HIVのVpuタンパク質などのテザリン(tetherin)/CD317アンタゴニスト(Neil et al. 2008. Nature vol451, p425-4431)、ならびにレトロウイルスGAG(Camus et al., 2007. Mol Biol Cell vol 18, p3193-3203)およびエボラVP40(Timmins et al., Virology 2001)などの様々なウイルス構造タンパク質である。
【0056】
膜出芽は、また、温度、Ca2+濃度などの、ウイルス膜融合タンパク質およびリプログラミング因子を過剰発現している真核細胞の細胞培養条件を改変することによって誘導してもよい。
【0057】
本発明の一態様では、真核細胞は、2〜5種の異なるリプログラミング因子を過剰発現する。
【0058】
本明細書に使用される「リプログラミング因子」、「リプログラミング核因子」および「リプログラミング転写因子」という表現は、互換的に使用される。それらは、所与のターゲット細胞に独立してまたは組み合わせで発現された場合に、細胞運命を変更するために、すなわち細胞をリプログラミングするために使用することができる核タンパク質を表す。
【0059】
人工多能性幹細胞(iPS)を得るためのリプログラミング因子は、先行技術に記載されている。
【0060】
例えば、リプログラミング因子は、国際公開公報第2007/069666号という文書において同定された。リプログラミング因子は、Takahashi et al Cell 2006 126: 663-76; Takahashi et al. Cell 2007 131-861-72およびYu et al. Science 2007 318: 1917に記載されている。
【0061】
リプログラミング転写因子は、任意の哺乳動物起源のことがある。典型的には、それらはマウス起源またはヒト起源のことがある。好ましくは、リプログラミング転写因子は、リプログラミングされるべきターゲット細胞と同じ種に属する。
【0062】
リプログラミング因子の例には、非限定的に以下が挙げられる:
− Oct−3/4(Pou5f1):Oct−3/4は、オクタマー(「Oct」)転写因子ファミリーの1種であり、多能性の維持に重大な役割を果たす。割球および胚性幹細胞などのOct−3/4+細胞にOct−3/4が不在になると、栄養芽層の自然分化に繋がることから、Oct−3/4の存在は、胚性幹細胞の多能性および分化能の元となる。例示的なOct3/4タンパク質は、マウスOct3/4遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_013633)およびヒトOct3/4遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_002701)によってコードされるタンパク質である。
− Soxファミリーの因子:Soxファミリー遺伝子は、Oct−3/4に類似して多能性の維持に関連するが、もっとも、多能性幹細胞にのみ発現されるOct−3/4とは対照的に、多能性および単能性幹細胞に関連する。Sox2は、誘導のために使用される最初の遺伝子であったが(Takahashi et al Cell 2006 126: 663-76; Takahashi et al. Cell 2007 131-861-72; Yu et al. Science 2007 318 :1917)、Soxファミリーの他の遺伝子も同様に誘導過程において作用することが見出されている。Sox1は、Sox2と類似の効率でiPS細胞をもたらし、Sox3、Sox15、およびSox18遺伝子もiPS細胞を生成する。
例示的なsox−2タンパク質は、マウスSox2遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_011443)およびヒトSox2遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_003106)によってコードされるタンパク質である。
− Klfファミリーの因子:Klfファミリー遺伝子のKlf4は、当初、マウスiPS細胞を生成するための因子として同定され、また、ヒトiPS細胞を生成するための因子としても実証された。
例示的なKlf4タンパク質は、マウスklf4遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_010637)およびヒトklf4遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_004235)によってコードされるタンパク質である。
− Mycファミリーの因子:Mycファミリー遺伝子は、ガンに意味づけられるガン原遺伝子を含有する。c−mycは、マウスiPS細胞およびヒトiPS細胞の生成に意味づけられる因子であることが示された。
例示的なc−mycタンパク質は、マウスc−myc遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_010849)およびヒトc−myc遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_002467)によってコードされるタンパク質である。
− Nanogファミリー:胚性幹細胞では、Oct−3/4およびSox2に加えてNanogが多能性の促進に必要である。
− LIN28:LIN28は、胚性幹細胞および胚性ガン細胞に発現される、分化および増殖に関連するmRNA結合タンパク質である。Yuらは、それが、必須ではないものの、iPS生成における因子であることを実証した(Yu et al. Science 2007, vol318:1917-20)。
【0063】
好都合には、本発明者らは、リプログラミング転写因子がターゲット細胞中に移行した後、その機能性を保持することを示した。
【0064】
一態様では、ウイルス膜融合タンパク質は、真核細胞から放出された微小胞の精製を可能にするタグを含有することがある。該タグは、例えばウイルス膜融合タンパク質のエクトドメインに局在することがある。
【0065】
適切なタグには、非限定的に、Flagタグ、HAタグ、GSTタグ、His6タグが挙げられる。適切なタグおよび該タグの適切な精製方法を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0066】
適切な精製方法には、非限定的に、免疫沈降、アフィニティークロマトグラフィー、および抗タグ特異抗体で被覆された磁気ビーズが挙げられる。
【0067】
好ましい態様では、本発明による真核細胞は、ウイルスフリーである。
【0068】
本発明は、また、本発明による真核細胞によって分泌された微小胞であって、該ウイルス膜融合タンパク質および該リプログラミング転写因子を含む微小胞に関する。
【0069】
理論に縛られることを望むわけではないが、該微小胞は、エキソソーム様であり、40から150nmの間、例えば40から100nmの間のサイズ、例えば約100nmの平均サイズを有すると見なされる。典型的には本発明による微小胞は、1.08g/mlから1.12g/mlの間の密度を有する。
【0070】
好ましくは、本発明による微小胞は、1.09g/mlから1.11g/mlの間の密度を有する。典型的には、該密度は、実施例1に定義されるように連続イオジキサノール勾配での沈降によって測定することができる。
【0071】
ウイルス膜融合タンパク質および/またはリプログラミング転写因子の一過性過剰発現が用いられる場合、微小胞は、典型的にはトランスフェクションの48〜72時間後に細胞上清から回収される。
【0072】
典型的には、本発明による微小胞は、本発明による真核細胞の細胞上清の(例えば孔径0.45μmのフィルターを用いた)濾過および超遠心分離、例えば110,000gで1.5時間の超遠心分離によって単離されることがある。
【0073】
好都合には、本発明による微小胞は、それらがターゲット細胞に物質を移行させる能力を失わずに凍結および−80℃で保存することができる。
【0074】
別の態様では、本発明による該微小胞は、該リプログラミング転写因子をコードする核酸を含まない。
【0075】
好ましい態様では、本発明による微小胞はウイルスフリーである。
【0076】
最初に免疫系細胞について記載されたが、細胞から放出された微小胞は、in vivoで多数の体液から見出される(Simpson et al. Proteomics 8, 4083-4099 (2008))。多数の研究が、免疫反応および細胞間コミュニケーションのモデュレーションに果たすこれらの微小胞の役割を強調した。
【0077】
理論に縛られることを望むわけではないが、本発明の微小胞がエキソソーム様小胞であって、ウイルス膜融合タンパク質の存在によって、該微小胞が微小胞中に含有される物質をターゲット細胞に効率的に送達できるようになると考えられている。
【0078】
本発明は、また、以下のステップ:
− ウイルス膜融合タンパク質およびEcoRエコトロピックウイルスレセプターを含む微小胞によって、ターゲット細胞に該EcoRエコトロピックウイルスレセプターを送達するステップ;
− リプログラミング因子をコードする少なくとも一つの遺伝子を含むエコトロピックウイルスによって、該ターゲット細胞に少なくとも一つのリプログラミング因子を送達するステップ
を含む人工多能性幹細胞を得るための方法に関する。
【0079】
本明細書に使用される「エコトロピック」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有する。エコトロピックウイルスは、それが由来する種のホスト中でのみ複製することができるレトロウイルスである。より具体的には、本明細書に使用される「エコトロピックウイルス」という用語は、そのコグネイトレセプターであるエコトロピックレセプターEcoRを発現している細胞中でのみ複製することができるげっ歯類ウイルスを表す。
【0080】
好都合には、該エコトロピックウイルスは、エコトロピックウイルスレセプターを発現している微小胞によってターゲティングされている細胞以外のヒト細胞に感染することができないので、操作者および環境にとって安全である。この向上したバイオセーフティーは、汚染のリスクなしにそれを操作することができることを意味する。
【0081】
典型的には、該エコトロピックウイルスは、モロニーベースのレトロウイルスであって、該エコトロピックレセプターはm−CAT1である。m−CAT1をコードする遺伝子の一例は、GenbankアクセッションナンバーNCBI参照配列NM_007513.3に示される。
【0082】
本発明は、また、リプログラミング転写因子を含む本発明の微小胞とターゲット細胞を接触させることによって、該ターゲット細胞に該リプログラミング転写因子を送達するためのin vitro方法に関する。
【0083】
したがって本発明は、上記微小胞によってターゲット細胞に少なくとも一つのリプログラミング因子を送達するステップを含む、人工多能性幹細胞を得るための方法に関する。
【0084】
ターゲット細胞の例は、初代培養物から得られた体細胞である。典型的には、該ターゲット細胞は、体内の任意の起源の線維芽細胞、または培養条件でin vitroで植えた後に増殖可能な任意の他の細胞である。
【0085】
本発明の微小胞の向性は、使用されるウイルス膜融合タンパク質の向性に依存する。
【0086】
例えば、VSV−Gはパントロピックであることから、VSV−Gを含む本発明による微小胞は、ほぼあらゆる細胞をターゲティングする。呼吸器細胞に向性を有するウイルス膜融合タンパク質を含む微小胞は、好ましくは呼吸器細胞をターゲティングするために使用される。
【0087】
一態様では、ターゲット細胞は患者特異的である。
【0088】
この態様では、本発明の方法は、患者特異的iPS細胞を生成するために使用することができる。
【0089】
例えばiPS細胞は、ファンコーニ貧血(Raya et al. Nature 2009, 460: 53-59);アデノシンデアミナーゼ免疫不全(ADA−SCID)、ゴーシェ病、筋ジストロフィー、パーキンソン病、ハンチントン病などを患う患者から得ることができる。
【0090】
患者特異的iPS細胞は、疾患を研究するための貴重なモデルとなる。
【0091】
さらにそれらは、エクスパンションして任意の所与の組織にさらに再分化できる自律性細胞の潜在的に無限の供給源となることから、再生療法における大きな関心対象である。
【0092】
好ましい態様では、本発明による微小胞は、ターゲット細胞と微小胞産生細胞との共培養によってin situで産生される。特定の一態様では、ターゲット細胞および微小胞産生細胞は、真核細胞の直径よりも小さいが、関心が持たれる微小胞の直径よりも大きい直径の孔を有する有孔壁によって分離された二つの異なる区画中に物理的に局在する。好都合には、本発明による真核細胞によって産生される微小胞は、一方の区画から他方の区画に拡散してターゲット細胞に到達することができ、そこで微小胞はリプログラミング因子を送達することができるが、微小胞産生細胞はターゲット細胞から分離されたままである。
【0093】
この技法は、単離するステップの必要なしにタンパク質をターゲット細胞に送達可能にする。
【0094】
典型的にはいくつか(例えば、2、3、4、5、6種など)の異なるリプログラミング転写因子は、非限定的にOct−4、KLF4、sox2、Lin28およびc−mycなどの該いくつかの異なるリプログラミング転写因子を含む、本発明のいくつかの異なる微小胞とターゲット細胞を接触させることによって、該ターゲット細胞に送達されることがある。
【0095】
一態様では、本発明は、Oct−4、KLF4、sox2、Lin28およびc−mycから成る群より選択される少なくとも一つのリプログラミング転写因子を含む微小胞とターゲット細胞を接触させるステップを含む、該ターゲット細胞からiPSを得るための方法に関する。
【0096】
好都合には、各微小胞は、2種類以下のリプログラミング転写因子、例えば1種類だけのリプログラミング転写因子を含む。
【0097】
好ましい態様では、本発明は、Oct−4を含む微小胞、KLF4を含む微小胞、sox2を含む微小胞、Lin28を含む微小胞および/またはc−mycを含む微小胞とターゲット細胞を接触させるステップを含む、該ターゲット細胞からiPSを得るための方法に関する。
【0098】
典型的には、該いくつかの異なる微小胞を接触させることは、同時または連続的であってもよい。
【0099】
本発明による微小胞によって送達される少量の物質およびそれらの非遺伝的性質により、微小胞は、リプログラミング転写因子の場合のように、タンパク質の低度で一過性の存在が著しい生物学的作用に繋がりうる応用に有用である。
【0100】
好都合には、本発明によるiPS細胞を得るための方法は、ウイルスベクターの使用を必要としないことから安全である。さらに、本発明の微小胞の非遺伝的性質のせいで、ゲノム改変のリスクがない。リコンビナントタンパク質を使用した方法に比べ、発現系(多くの場合に細菌発現系)、または該リコンビナントタンパク質の精製(リプログラミング因子の機能喪失、洗剤の使用など)に結びつくリスクはない。
【0101】
好都合には、本発明の方法によって入手可能なiPS細胞は、ウイルスフリー、細菌フリー、および界面活性剤フリーである。
【0102】
したがって本発明は、上記方法によって入手可能な人工多能性幹(iPS)細胞に関する。
【0103】
本発明は、また、毒性作用について薬物を試験するための、または医薬品工業および化粧品工業用の創薬工程で任意の高/中/低いスループット/含量のスクリーニングを行うための上記iPS細胞の使用に関する。本発明は、また、任意の形態の再生医療での同種移植用治療に使用するための上記iPS細胞に関する。
【0104】
続いて、以下の実施例および図面により本発明を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】VSV−G担持微小胞へのYFP組み入れを示す図である。(A)pVSV−G(レーン1)、pVSV−G V72(レーン2)、SwFlagEcoR(レーン3)、SwFlagEcoRおよびpVSV−G(レーン4)をトランスフェクションされた293T−YFPならびに模擬トランスフェクション(レーン5)された293T−YFPによって産生された濃縮微小胞のウエスタンブロット分析。VSV−Gに対するMab(P5D4)、タグ付き版のEcoRを明らかにする、Sigma flagに対するMab(M2)、およびYFPに対するMab(GSN24)を用いて免疫染色を行った。
【図1B】VSV−G担持微小胞へのYFP組み入れを示す図である。(B)YFP単独を発現している細胞由来の微小胞に曝露された細胞に比べた、VSV−GおよびYFPを発現している細胞由来の微小胞に曝露された細胞のFACS分析。
【図1C】VSV−G担持微小胞へのYFP組み入れを示す図である。(C)野生型VSV−Gタンパク質(wt)または融合欠損突然変異体W72V(2種のDNAクローンを試験した)のいずれかをコードするプラスミドをHEK細胞にトランスフェクションした。エクトドメインを欠失する切断形態のVSV−Gもまた実験に組み込んだ。トランスフェクションの48時間後に、上清を回収し、細胞を溶解してウエスタンブロット分析に供した。プロデューサー細胞では全てのタンパク質が高度に発現されていた。しかしながら、融合欠損突然変異体ではなく、wtのVSV−Gだけが上清中に検出された。
【図1D】VSV−G担持微小胞へのYFP組み入れを示す図である。(D)上記のようにHEK細胞にトランスフェクションし、トランスフェクションの20時間後に0.2μg/mlのR18(膜に結合する蛍光親油性化合物)を含有する培地中で6時間インキュベーションした。トランスフェクションの72時間後に、異なる種類の細胞からの培地を収集し、透明にし、蛍光光度計によって分析して、上清中に放出された膜の量を反映するR18関連蛍光の量を定量した。結果を、生細胞数によって基準化されたR18値として示す。
【図2A】CD81/VSV−Gでコーティングされた微小胞の生化学的および機能的分析を示す図である。(A)293Tプロデューサー細胞上でのCD81発現。マウスIgGアイソタイプ対照を使用した(網がけした領域)。
【図2B】CD81/VSV−Gでコーティングされた微小胞の生化学的および機能的分析を示す図である。(B)濃縮された微小胞に曝露されたHepG2細胞上の処理1時間後のCD81発現。未処理HepG2も同様にラベリングした(灰色に網がけした対照)。
【図2C】CD81/VSV−Gでコーティングされた微小胞の生化学的および機能的分析を示す図である。(C)様々な用量の微小胞で処理されたHepG2細胞におけるHCVppトランスダクションの増強。YFOをコードするHCVppを293細胞において産生させ、HUH7.2細胞に対して8×10e4トランスダクションユニット(TU)/mlで予備力価検定した。図にHepG2における力価を示すが、その力価は、HepG2が曝露された微小胞の量と共に増加する。
【図2D】CD81/VSV−Gでコーティングされた微小胞の生化学的および機能的分析を示す図である。(D)CD81担持微小胞の密度分析。膜脂質をラベリングする蛍光体であるオクタデシルローダミンBクロリド(R18)と共に培養された293T細胞において微小胞を産生させた。濃縮された微小胞をイオジキサノール連続勾配上に重ね入れ、SW41ローターを用いてそれを41000rpmで12時間遠心分離した。次に、0.5mlの画分20個を収集し、各画分の1/20をウエスタンブロットによって半ネイティブ条件下で分析した。画分13〜20についてのVSV−GおよびCD81の免疫ラベルを示すが、他の画分では免疫ラベルが存在しなかった(図示せず)。
【図3A】ゲシクル(gesicle)の特徴づけを示す図である。(A)イオジキサノール密度勾配で収集された画分における膜関連蛍光。濃縮されたVSV−Gゲシクルをイオジキサノール連続勾配上に重ね入れ、3時間遠心分離した。チューブの底から500μlの画分20個を収集した。表示のように画分1は密度1.46に、画分20は密度1.07に対応する。各画分の1/5(100μl)を秤量し、96ウェルプレートに移行させてから蛍光光度計で分析した。図に、560nmでR18を励起させたときの590nmでの発光値を示す。
【図3B】ゲシクル(gesicle)の特徴づけを示す図である。(B)YFPおよびCD81担持ゲシクルの特徴づけ。上欄:密度勾配で収集された画分におけるYFP関連蛍光の分析。YFP陽性細胞で産生された濃縮VSV−Gゲシクルをイオジキサノール連続勾配上に重ね入れ、3時間遠心分離した。チューブの底から500μlの画分20個を収集したが、表示のように画分1は密度1.3に、画分20は密度1.09に対応する。各画分の1/5(100μl)を秤量し、96ウェルプレートに移行させてから蛍光光度計で分析した。図に、495nmでYFPを励起させたときの533nmでの発光値を示す。下欄:ヒト細胞におけるYFPの偽トランスダクション(pseudotransduction)の分析。12ウェルプレート中で培養された1×10e5個のHEK細胞上に各画分の1/10を重ね入れた。24時間後に細胞をFACSによって分析した。図に、異なる画分に曝露された各細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【図4A】EcoR担持ゲシクルによるヒト細胞へのEcoR送達を示す図である。(A)mCAT−1をコードするプラスミドの図示(図中、pCMVはヒトサイトメガロウイルス初期プロモーターを、USiTはユニバーサルsiRNAによってターゲティングされる三つの繰り返し配列のコンカテマーを、PAはSIVポリアデニル化シグナルを表す)。下に表示されるmRNAはUSiT配列を備えるが、その配列は、ユニバーサルsiRNAによって仲介される分解にmRNAを高度に感受性にする。
【図4B】EcoR担持ゲシクルによるヒト細胞へのEcoR送達を示す図である。(B)mCAT−1ゲシクルで処理された293T細胞に対する、MLVエコトロピックエンベロープでシュードタイピングされた、GFPをコードするレンチウイルスベクターの力価。HEK293T細胞を2μg(レーン1)または4μg(レーン2)の濃縮ゲシクルで37℃にて1時間処理した。PBSで2回洗浄後に、MLVエコトロピックエンベロープ(レーン1、2および3)またはVSV−Gエンベロープ(レーン4)でシュードタイピングされたGFPレンチベクター調製物100μlを細胞にトランスダクションした。トランスダクションの3日後に、FACSによって細胞を分析し、ベクター調製物の力価を計算し、3回の異なるトランスダクションアッセイの平均として示す。
【図5】mCAT−1担持ゲシクルの生化学的および機能的分析を示す図である。VSV−Gおよびマウス白血病ウイルスエコトロピック株についてのレセプターであるタグ付き版mCAT−1をHEK293T細胞に共トランスフェクションしてゲシクルを調製した。細胞培地を24時間後に交換し、その翌日に収集した。上清を透明化してから、SW−41ローターを用いて35000rpmで1時間30分超遠心分離した。ペレットをPBS中に再懸濁し、凍結してから密度精製工程を行った。イオジキサノール連続勾配による速度ゾーン遠心分離:粗濃縮小胞をOptiprep連続勾配(215mMスクロース、2mM EDTA、10mMトリスHCL(pH8)中の6%イオジキサノール/5mMスクロース、2mM EDTA、10mMトリスHCL(pH8)中の56.4%イオジキサノール)上に重層し、SW41ローターを用いて41000rpmで12時間遠心分離した。勾配の底から画分(0.5ml)を順次収集し、4℃で保存してからウエスタンブロット分析および機能アッセイを行った。各画分の100μlを慎重に秤量することによって画分の密度を測定した。MOPS緩衝液中での4〜12%ビストリスNuPageゲル(Invitrogen)泳動を用いて、画分12〜20のタンパク質をSDS−PAGEにより分離した。各画分5μlを分析した。ニトロセルロース膜上に電気ブロット後に、1/1000に希釈された、VSV−Gに対するペルオキシダーゼコンジュゲーション型抗体(P5D4、Sigma)または1/1000のペルオキシダーゼコンジュゲーション型抗Flag(Sigma)(両方とも室温で1時間インキュベーション)によってタンパク質を明らかにした。画分の生物学的活性を評価するために、24ウェルプレートのウェル1個あたり1×10e5個蒔かれた293T細胞に各試料30μlを添加した。1時間後に、培地を、エコトロピックエンベロープでシュードタイピングされた、GFPをコードするレンチベクターを含有する上清200μlを補充された新鮮培地200μlに取り替えた。トランスダクションの48時間後に、細胞をトリプシン処理し、FACSによって蛍光値(MFI)を分析した。
【図6】ゲシクル処理されたヒト細胞に移行したmCAT−1の消失を示す図である。HEK293T細胞を未飽和用量のEcoR−ゲシクルに37°で1時間曝露した。2回洗浄後に、ゲシクル曝露の5分、12時間、24時間または45時間後に、エコトロピックエンベロープでシュードタイピングされたGFPレンチベクターを細胞にトランスダクションした。EcoRを安定発現している293T細胞に同じトランスダクションアッセイを行い、ターゲット細胞の分裂によるレンチベクター力価の漸減を測定した。5分の時点で得られたトランスダクション値(100%)に対するトランスダクション効率のパーセンテージとして結果を示す。全ての値を細胞分裂速度に関して補正した。
【図7A】EcoR mRNAの特異的分解はゲシクルによって導入されたEcoRの機能に影響しないことを示す図である。si−mCATの機能検証。mCAT−1に対して設計された合成siRNAを、flag付きmCAT−1をコードするプラスミドと共にヒト細胞にトランスフェクションした。次に、si−mCAT細胞およびsi−CTL細胞のmCAT発現ならびにエコトロピックレンチウイルスベクター(EcoLV)(黒棒線)およびパントロピック対照レンチウイルスベクター(gLV)(灰色棒線)のトランスダクションに対するそれらの細胞の許容性についてそれらの細胞を調べた。(A)si−CTL細胞およびsi−mCAT細胞におけるmCAT−1の免疫染色。
【図7B】EcoR mRNAの特異的分解はゲシクルによって導入されたEcoRの機能に影響しないことを示す図である。si−mCATの機能検証。mCAT−1に対して設計された合成siRNAを、flag付きmCAT−1をコードするプラスミドと共にヒト細胞にトランスフェクションした。次に、si−mCAT細胞およびsi−CTL細胞のmCAT発現ならびにエコトロピックレンチウイルスベクター(EcoLV)(黒棒線)およびパントロピック対照レンチウイルスベクター(gLV)(灰色棒線)のトランスダクションに対するそれらの細胞の許容性についてそれらの細胞を調べた。(B)mCAT−1をトランスフェクションされたターゲット細胞でのGFPレンチベクターを用いたトランスダクションアッセイ。トランスダクションの72時間後にFACSによってトランスダクション値を分析したが、si−CTL細胞についてのトランスダクション値を効率100%に設定した。si−mCATで処理された細胞ではEcoLVトランスダクションの70%が阻害され、一方でgLV介在性トランスダクションはほとんど影響されない(8%の阻害)。ターゲット細胞におけるmCAT mRNAの特異的分解は、ゲシクルによって移行したEcoR機能にほとんど影響しない。
【図7C】EcoR mRNAの特異的分解はゲシクルによって導入されたEcoRの機能に影響しないことを示す図である。si−mCATの機能検証。mCAT−1に対して設計された合成siRNAを、flag付きmCAT−1をコードするプラスミドと共にヒト細胞にトランスフェクションした。次に、si−mCAT細胞およびsi−CTL細胞のmCAT発現ならびにエコトロピックレンチウイルスベクター(EcoLV)(黒棒線)およびパントロピック対照レンチウイルスベクター(gLV)(灰色棒線)のトランスダクションに対するそれらの細胞の許容性についてそれらの細胞を調べた。(C)mCATゲシクルで処理されたヒト細胞におけるGFPエコトロピックレンチベクターを用いたトランスダクションアッセイ。mCAT小胞によって処理され、si−mCATを担持する細胞は、EcoLVトランスダクションに高度に許容性のままである(対照の87%)。これは、EcoRの機能が、汚染mRNAでもプラスミドDNAでもなく、微小胞中に含有されるmCATタンパク質によって主に提供されることを示す。
【図8】EcoR−ゲシクルによって改変された細胞におけるエコトロピックレンチウイルスのトランスダクションに及ぼすクロロキンの作用を示す図である。エンドソームpHを上昇させる薬物であるクロロキン(CQ)の存在下または不在下でEcoRゲシクル(EcoR−Ges)によってmCAT−1タンパク質が送達されたトランスデューサーHEK293T細胞に対して、エコトロピックエンベロープ(Eco)でシュードタイピングされた、YFPをコードするレンチウイルスベクターを使用した(レーン3)。対照として、EcoRが安定発現されているトランスデューサー293T細胞に対してエコトロピックシュードタイプを使用した(安定EcoR、レーン2)。エンドソーム酸性化に及ぼすCQの作用を調べるために、VSV−Gレンチベクターを使用してその薬物で処理されたか、または処理されていないターゲット細胞にトランスダクションを行い、VSV−Gシュードタイプの高いpH依存性を説明した(レーン1)が、エコトロピックシュードタイプは薬物処理されても効率的なままである。トランスダクションの72時間後にFACSによって測定されたときの、異なる細胞種類における相対YFPトランスダクション効率として結果を示す。
【図9】ゲシクルによるtTaの送達を示す図である。TETトランス活性化タンパク質(tTAoff)の転写機能を検出するために、本発明者らは、TETオペレーターのコントロール下でeGFPを安定発現しているレポーター細胞系を作出した。tTAのトランスフェクションは、模擬トランスフェクションされた細胞に比べてレポーター細胞系でのeGFP発現を活性化した(tTAレーン)。tTAとVSV−G(wt)またはその融合非コンピテント突然変異体V72とを過剰発現している細胞で産生されたゲシクルを濃縮し、異なる用量でレポーター細胞系上に重ね入れた。wt VSV−Gを収容しているtTAゲシクルの用量増加は、GFPの発現増強を招いた。このシグナルは、培地中にドキシサイクリンを導入することによって打ち消すことができた。ゲシクルの24時間後のFACSによって分析されたMFIとして結果を示す。
【図10】時間の関数としてのゲシクル介在性tTA移行効率を示す図である。HEKレポーター細胞系Teo−GFPを12ウェルプレートに植え(ウェル1個あたり細胞1×10e5個)、tTAゲシクル(総タンパク質50μg)で処理した。曝露時間は5分から4時間の範囲であった。曝露後に、小胞含有培地を捨て、細胞をPBSで洗浄し、24時間後のGFP分析のために培養状態を維持した。tTA移行効率は、3時間まで曝露時間と共に徐々に増加し、3時間が最適曝露時間である。
【図11】VSV−Gタンパク質が293T細胞からの小胞の放出および関心が持たれるタンパク質の放出を強化することを示す図である。膜タンパク質の放出:VSV−Gの存在下または不在下で産生された小胞に組み入れられたマルチスパン膜タンパク質であるmCAT−1のWB分析。小胞ペレット中のmCAT−1の免疫ラベリングから、VSV−Gがプロデューサー細胞に導入された場合mCAT−1の放出が劇的に増加していることが示される。細胞質タンパク質の放出:細胞質タンパク質アクチンの放出を検討して、異なるバッチの小胞調製物に対して類似の生化学分析を行った。本発明者らは、模擬小胞に比べてVSV−Gがアクチンの放出を著しく強化することを確認する。
【図12】共培養実験において孔径3μmのインサートを通過するゲシクル介在性タンパク質の移行を示す図である。本発明者らは、様々な組み合わせのプラスミドをトランスフェクションされたHEK細胞をレポーターTeo−GFPレポーター細胞系と共に同じ培地中で培養した。図示したように、プロデューサー細胞を下部の6ウェル皿の中に、レポーター細胞系を上部インサート中に入れるように、細胞を孔径3μmのフィルターによって分離した。担体DNA、VSV−Gコードプラスミドまたは融合欠損VSV−Gと共にtTA発現プラスミドをプロデューサー細胞に共トランスフェクションした。48時間共培養後に、インサートを取り外し、レポーター細胞系をトリプシン処理し、FACSによって分析してtTAの送達を評価した。結果をTeo−GFP細胞系でのMFIとして示す。
【図13A】昆虫細胞由来微小胞の特徴づけを示す図である。Sf9細胞にリコンビナントバキュロウイルスを72時間感染させることによってGFP微小胞を産生させた。濃縮後に、それらをイオジキサノール勾配上に重ね入れ、215000gで10時間遠心分離し、小胞をその密度に応じて沈降させた。チューブの底から画分を順次収集し、秤量によってその密度を測定した。密度勾配は、グラフAからd=1.3〜d=1.05の範囲で認識することができる。全ての画分を蛍光光度計によって分析してGFP(Exc485、Em515)を検出し、GFPは本質的に画分21から検出された(A、白色棒線)。画分の希釈物も使用してsf9細胞に感染させ、バキュロウイルスがどこで沈降したかを確認した。感染の3日後に、FACSによってsf9細胞を分析し、バキュロウイルスを力価検定した。A(黒色棒線)に示される結果は、ウイルスが沈降したことを示した。各画分のGFP移行能を分析した。GFPは画分14〜19中に含有され、これは部分的にウイルス含有画分と重複している。
【図13B】昆虫細胞由来微小胞の特徴づけを示す図である。Sf9細胞にリコンビナントバキュロウイルスを72時間感染させることによってGFP微小胞を産生させた。濃縮後に、それらをイオジキサノール勾配上に重ね入れ、215000gで10時間遠心分離し、小胞をその密度に応じて沈降させた。チューブの底から画分を順次収集し、秤量によってその密度を測定した。密度勾配は、グラフAからd=1.3〜d=1.05の範囲で認識することができる。全ての画分を蛍光光度計によって分析してGFP(Exc485、Em515)を検出し、GFPは本質的に画分21から検出された(A、白色棒線)。画分の希釈物も使用してsf9細胞に感染させ、バキュロウイルスがどこで沈降したかを確認した。感染の3日後に、FACSによってsf9細胞を分析し、バキュロウイルスを力価検定した。A(黒色棒線)に示される結果は、ウイルスが沈降したことを示した。各画分のGFP移行能を分析した。GFPは画分14〜19中に含有され、これは部分的にウイルス含有画分と重複している。
【図14】tTa昆虫微小胞の中和アッセイ(NA)を示す図である。tTA−バキュロウイルスに感染させたHigh5細胞でtTA微小胞を産生させた。小胞を濃縮し、PBS中に再懸濁し、10倍希釈し、100μlのPBS中で行われるアッセイに供した。0.5当量のリン脂質(Phospholip)tTAを、抗gp64抗体(クローンAcV1)または対照抗体(GST)の系列希釈物と共に37℃で2時間インキュベーションした。次に、小胞をHEK tTAレポーター細胞(tTAが細胞に導入された後にGFPを発現)上に重ね入れた。24時間後に、小胞に曝露された細胞をFACS分析し、GFPの発現を定量した。結果を全体集団(global population)MFIとして示す。
【図15】tTA微小胞を用いた用量反応を示す図である。tTA昆虫小胞を濃縮し、前記のように精製し、−80°で保存した。漸増する用量の小胞を使用してHEK tTAレポーター細胞系にtTAを送達し、小胞の24時間後にターゲット細胞から検出されたGFPシグナルの増加をもたらした。ドキシサイクリン処理細胞は、TET系の予想された誘導性を反映するバックグラウンド蛍光を示した。
【図16A】ヒト細胞でのtTAの移行が、バキュロウイルスにコードさせることによってではなく、昆虫細胞由来微小胞によって達成されることを示す図である。(A)バキュロウイルス構築物。
【図16B】ヒト細胞でのtTAの移行が、バキュロウイルスにコードさせることによってではなく、昆虫細胞由来微小胞によって達成されることを示す図である。(B)tTAレポーター細胞系でのプロモーターによって推進されるtTAのGFP発現。
【図16C】ヒト細胞でのtTAの移行が、バキュロウイルスにコードさせることによってではなく、昆虫細胞由来微小胞によって達成されることを示す図である。(C)ゲシクル中へのGP64およびtTAの放出。
【図16D】ヒト細胞でのtTAの移行が、バキュロウイルスにコードさせることによってではなく、昆虫細胞由来微小胞によって達成されることを示す図である。(D)pHまたはCMV精製微小胞を用いた処理に対するtTAレポーター細胞系でのGFP発現。
【図17】iPS因子含有微小胞のウエスタンブロット分析を示す図である。記載したようにHEK細胞でヒト微小胞を調製し、溶解させ、SDS pageによって分析した。各試料の2用量をロードした(Bradfordによって測定するとき4μgおよび20μgの総タンパク質量に対応する2μlおよび10μlの100×調製物)。abcam抗体を使用して免疫染色を行った(参照を含む)。
【図18A】EcoRゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。A:アンホトロピックおよびエコトロピックなリプログラミングプロトコールの図示。エコトロピックなプロトコールでは、感染の1.5時間前にEcoRレセプターを含有するゲシクルを添加した。両方のプロトコールで、細胞をゼラチン上に再度植えた日を0日目(d0)と定義する。1日目に培地をhESC培地+VPAに切り替える。VPA処理を10日間維持し、次にiPSクローンが出現するまで細胞を古典的hESC培地中で培養する。
【図18B】EcoRゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。B:1日目の感染線維芽細胞(倍率×4)。
【図18C】EcoRゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。C:21日目に出現中のiPSクローン(倍率×10)。
【図18D】EcoRゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。D:最初の釣り上げから継代3回目の樹立iPSクローン(倍率×10)。
【図18E】EcoRゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。E:アンホトロピックトランスダクションによって得られたクローンのSSEA−4免疫染色(多能性マーカー)。
【図18F】EcoRゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。F:エコトロピックトランスダクションによって得られたクローンのSSEA−4免疫染色(多能性)。
【図19A】c−Mycゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。A:リプログラミングプロトコールの図示。c−Mycタンパク質を含有するゲシクルを、三つの他のリプログラミング因子(Oct−4、SOX2およびKLF4)を発現しているウイルスによるトランスダクションの6および36時間後に添加した。細胞をゼラチン上に再度植えた日を0日目(d0)と定義する。1日目に培地をhESC培地+VPAに切り替えた。VPA処理を10日間維持し、次にiPSクローンが出現するまで細胞を古典的hESC培地中で培養した。トランスダクションの4週間後に1個のクローンを釣り上げた。
【図19B】c−Mycゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。B:最初の釣り上げから継代5回目の樹立iPSクローン(倍率×4)。
【図19C】c−Mycゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。C:最初の釣り上げから継代5回目の樹立iPSクローン(倍率×10)。
【図19D】c−Mycゲシクルを使用した線維芽細胞のiPSへのリプログラミングを示す図である。D:未分化マーカーSSEA−4およびTRA−1−81の発現を示す、継代5回目のiPSクローンのフローサイトメトリー分析。
【0106】
実施例
実施例1
要約
本実施例は、水疱性口内炎ウイルスのG糖タンパク質(VSV−G)で被覆され、外因性タンパク質をヒトターゲット細胞に送達するために使用されたエキソソーム様小胞の操作について記載する。これらの粒子は、密度1.1g/mlで沈降し、細胞質タンパク質、膜タンパク質および転写因子を効率的にパッケージングすることができる。膜mCAT−1タンパク質およびtetトランス活性化因子を含むモデル分子は、微小胞処理された場合のヒトターゲット細胞に効率的に送達された。小胞介在性の偽トランスダクションは、一過性タンパク質発現に繋がり、mRNAまたはDNAの移行を原因としなかった。本発明者らは、エンドソームpHを上昇させる薬物であるクロロキンがタンパク質の移行を無効にしたことを示したが、これは、VSV−Gによって誘導される融合が送達メカニズムに関与したことを示している。
【0107】
VSV−G融合誘発エンベロープは偽トランスダクションの主要な決定因子である
本発明者らは、VSV−Gの発現が偽トランスダクション可能な粒子の産生に繋がることができるかどうかを試験した。YFPを安定発現しているHEK−293T細胞(293T−Y)に真核生物発現ベクターであるpVSV−Gをトランスフェクションした。2日後に上清を収集し、濾過し、超遠心分離によって濃縮した。対照として、模擬トランスフェクションされた293T−Y細胞の上清に同じ工程を適用した。二つの濃縮調製物をナイーブな293T細胞に添加し、1時間曝露後にそれを洗浄した。24時間後に、細胞をトリプシン処理し、FACSによって分析して、2集団での蛍光を測定した。本発明者らは、対照調製物に曝露された細胞ではなく、VSV−G調製物に曝露された細胞でのYFPの偽トランスダクションを観察することができた(図1−B)。二つの試料の生化学分析から、VSV−G調製物では大量のYFPが沈降したが(図1−Aレーン1)、一方で模擬トランスフェクションされた調製物ではYFPがほぼ検出不能であった(レーン5)ことが明らかとなった。これらのデータは、VSV−Gがプロデューサー細胞の細胞質成分を含有する沈降可能な粒子の激しい放出の原因であることを示している。そのうえ、これらの粒子は、ターゲット細胞にこの物質を送達する能力があるように思われた。細胞が、粒子で処理されたすぐ後に洗浄され、24時間の成長の後にトリプシン処理および分析されたことから、本発明者らは、YFPシグナルが細胞内にあって、細胞表面に吸着した蛍光粒子が原因ではないと仮定した。これらのVSV−G微小胞を、実施例1全体を通じてゲシクルと呼ぶ。
【0108】
追加的な観察:融合をトリガーできないVSVG単一アミノ酸突然変異体(VSVG V72)14をこの系で試験したが、その突然変異体は、沈降したペレット中に組み入れられていなかった(図1レーン2)。別のウエスタンブロット実験は、wt−VSV−Gが細胞および上清の両方で検出可能であったのとは対照的に、この突然変異体がプロデューサー細胞では発現されたが、上清中からは検出不可能であったことを示した(図1C)。これは、VSV−G微小胞の産生がプロデューサー細胞における融合コンピテント形態のVSV−Gを必要とすることを実証している。
【0109】
CD81テトラスパニンタンパク質の偽トランスダクション
濃縮調製物によるYFPなどの細胞質タンパク質の細胞間移行は、293T−Y細胞が、脂質層によって囲まれ、可能性があることには膜タンパク質のような293T細胞の他のタンパク質で被覆されたYFP担持小胞を産生したという考えを支持している。この仮説を検証するために、本発明者らは、293T細胞にVSV−Gをトランスフェクションすることによって新しいバッチのゲシクルを調製し、この濃縮調製物を使用して、エキソソームに特徴的で、293T細胞上に豊富に発現されるテトラスパニンタンパク質であるCD81タンパク質の移行について検討した(図2A)。結果として生じた物質を、CD81を欠如したヒト肝細胞系であるHepG2細胞に適用した。本発明者らは、ゲシクルに1時間曝露されたHepG2細胞がCD81免疫ラベリングで陽性染色されたことを示したが、これは、そのタンパク質がプロデューサーからターゲット細胞に移行したことを示している(図2.B)。
【0110】
HepG2での外因性CD81の導入は、HCVエンベロープでシュードタイピングされたレトロウイルスベクター(HCVpp)をこの細胞系にトランスダクションさせることが知られている(Zhang. et al. Journal of virology 78、1448-1455 (2004))。実際にCD81は、E2糖タンパク質によって認識されるHCVレセプターの一つとして記載されている。したがって、CD81の移行をさらに検証するために、本発明者らは、HepG2細胞を様々な用量のゲシクルに曝露し、HCVpp介在性トランスダクションに対するそれらの許容性をナイーブなHepG2細胞と比較して調べた。本発明者らは、HCVppトランスダクションに対するHepG2の許容性が細胞に導入されたゲシクルの量と共に増加し(図2.C)、この実験でHCVppの力価を最大5倍に増加させることを示した。これは、移行したCD81タンパク質が、ゲシクルを介した輸送および移行後であってもそのHCV結合能を保持することを示している。
【0111】
YFPおよびCD81担持ゲシクルの特徴づけ
タンパク質移行の原因となる物質をよりうまく特徴づけるために、膜をラベルする親油性蛍光体であるオクタデシルローダミンBクロリド(R18)と共に培養されたヒト細胞にVSV−Gのトランスフェクションを行ってゲシクルを産生させた。最初の濃縮ステップの後に、R18−ゲシクルをイオジキサノールの連続勾配上に重ね入れ、3時間遠心分離して、画分のその密度に応じた分離を可能にした。収集された全ての画分1〜20がR18についての励起および発光値である560nmで励起後に590nmで蛍光を発光する能力について、それらの画分を分析した。図3Aに示すように、画分13〜20からR18蛍光が検出され、密度1.11g/mlに対応する画分17でピークであった。
【0112】
別の実験では、293T−Yで産生されたゲシクルを類似の方法で加工し、勾配上に重ね入れてから、収集された種々の画分中のYFP関連蛍光を分析した。図3Bは、YFPが主に密度1.10〜1.11に対応する画分17および18から検出されたことを示す。次に本発明者らは、どの画分が偽トランスダクションによってYFPを送達することができたかを調べた。各試料の1/10を293T細胞に適用し、24時間後に蛍光の移行をFACSで分析した。図3に示すように、偽トランスダクション決定因子は、画分17(d=1.11)で本質的に沈降した。別の実験では、ゲシクルを分離し、ウエスタンブロットによって分析した。密度画分の分析により、VSV−GおよびCD81が、密度1.10および1.11g/mlに対応する画分17および18中に明白に豊富に存在したことが明らかになった(図2D)。CD81分子はエキソソームに対するマーカーとして説明されていることから(Lamparski et al. Journal of immunological methods 270、211-226 (2002))、本発明者らは、VSV−G担持ゲシクルが特定の種類のエキソソーム様小胞であると結論することができる。
【0113】
総合して、本発明者らの結果は、VSV−Gをトランスフェクションされると、HEK293T細胞が、密度1.10〜1.11g/mlで沈降可能な、膜で囲まれたゲシクルを産生したこと、およびこれらのエキソソーム様微小胞がプロデューサー細胞からターゲット細胞に送達可能なCD81などのタンパク質を含有することを示している。
【0114】
ヒト細胞でのmCAT−1のゲシクル介在性移行
YFPまたは高発現されたCD81が293T−Y/293T細胞によって産生されたゲシクル中にパッケージングされるのと同じ方法で、本発明者らは、プロデューサー細胞中で過剰発現された任意のタンパク質を新生ゲシクルに受動的に組み入れることができるかどうか、および少量のこのパッケージングされた物質をヒトターゲット細胞に送達することができるかどうかを試験した。マウス白血病ウイルス(MLV)エコトロピックエンベロープに対するレセプターEcoRとしても知られているマウス陽イオン性アミノ酸輸送体であるmCAT−1タンパク質をモデルとして使用してこの概念を検証した。flag化版のmCAT−1をコードしているプラスミドを構築し(図4に示すSwFlag EcoR)、293T−Y細胞にVSV−Gと一緒に共トランスフェクションし、EcoR担持濃縮ゲシクルを産生させ、それを続いてヒト細胞に導入した。1時間後に、曝露された細胞を洗浄し、抗Flag−FITC抗体を使用したFACS分析によって明らかになったようにEcoRの発現について陽性染色した(図示せず)。mCAT−1の移行をさらに検証するために、本発明者らは、YFPをコードするレンチベクターをMLV−エコトロピックエンベロープでシュードタイピングしたものに基づくトランスダクションアッセイを開発した。この糖タンパク質の特定の向性が原因で、これらのレンチベクターは、トランスフェクションによってmCAT−1が発現しているマウス/ラット細胞またはヒト細胞だけにトランスダクションすることができる。EcoR−ゲシクルがヒト細胞にEcoRを効率的に送達するならば、これらは、エコトロピックYFPレンチトランスダクションに許容性になるはずである。
【0115】
図4に示される結果に、EcoRゲシクルで処理されたか、またはされていないヒト細胞で力価検定を行った場合のエコトロピックレンチベクター調製物の力価を与える。ナイーブな細胞はエコトロピックレンチベクターのトランスダクションに限定的であるが(レーン3)、2μg(レーン1)または4μg(レーン2)の濃縮ゲシクルで処理された細胞は、エコトロピックトランスダクションに高度に許容性になる。トランスダクション培地中のエコトロピックレンチベクター上のゲシクル−Gタンパク質の組み入れを避けるために、ゲシクル処理細胞を2回洗浄してからトランスダクションした。
【0116】
EcoR−ゲシクル調製物を前記密度勾配上に重ね入れ、mCAT−1の移行を担う画分を同定した。収集された画分をウエスタンブロットによって、それがEcoRの移行を仲介する能力について分析した(図5)。この実験で本発明者らは、密度1.10に対応する画分17にVSV−GおよびmCAT−1が著しく豊富に存在し、トランスダクションアッセイによって明らかにされたEcoRの移行を担う主画分であることを示す。これらのデータは、密度1.10で沈降性のEcoR−ゲシクルがmCAT−1タンパク質をターゲット細胞の膜に移行させたが、そこでそのタンパク質がエコトロピックエンベロープに対する結合性を保持することを示す。
【0117】
そのうえ、本発明者らは、本明細書でゲシクル含量および特にゲシクルの膜によって担持されるタンパク質の性質を、プロデューサー細胞のトランスフェクションによって容易にコントロールできることを示す。
【0118】
ゲシクルによるEcoR送達のメカニズム
移行したmCAT−1の寿命
次に本発明者らは、ゲシクル曝露とトランスダクションアッセイの間の遅れを変動させることによって、ヒト細胞に移行したmCAT−1の寿命を調べた。図6に示す結果は、Ecoレセプターの機能がそのゲシクル介在性移行の約50時間後に293T細胞表面から消失したことを示している。この実験は、Hela、HUH.7(図示せず)を含めた、異なるヒト細胞種類で再現され、移行したmCAT−1の半減期は24時間近くで不変であった。この一時性は、ゲシクルがタンパク質を送達するが、ゲシクル調製物を汚染するおそれのあるプラスミドDNAを送達しないという考えを支援するものである。実際にプラスミドDNAによるmCAT−1のコードは、ターゲット細胞での転写および翻訳ステップを必要とするであろうから、トランスフェクション実験について一般に観察されるように、導入の48時間後に発現ピークに至るであろう。
【0119】
EcoRの機能は、ゲシクルに組み入れられた既製のタンパク質によって提供される。
mCAT−1小胞と共に移行した物質の性質を検討するために、本発明者らは、ヒトターゲット細胞をmCAT−1 mRNAに対するsiRNAで処理した。小胞がそれをコードするmRNAまたはDNAを送達するならば、それは、si−mCAT処理細胞で急速に分解するであろう。
【0120】
mCAT−1の免疫染色によって明らかとなったように(図7A)、HEK細胞で共トランスフェクション実験を行うと、mCAT−1 siRNAはmCATの発現を抑制した。そのうえ、mCAT−1プラスミドをトランスフェクションされた細胞にこの特異的siRNAを導入することで、細胞がエコトロピックレンチベクターをトランスダクションされる能力が大きく減少した(図7B)。VSV−Gでシュードタイピングされたレンチベクター(gLV)は、si−CTL細胞およびsi−mCAT細胞の両方に効率的にトランスダクションされたが、エコトロピックレンチベクター(EcoLV)で達成されたトランスダクション効率は、si−mCAT細胞では阻害された(70%阻害)。これらのデータは、mCAT−1がプラスミドによってコードされる場合、si−mCATがこのレセプター機能に特異的に影響することを示している。
【0121】
次に、本発明者らは、mCAT−siRNAがmCAT−1微小胞によって送達されたレセプター機能に影響したかどうかを調べた。mCAT siRNAおよび対照siRNAを細胞にトランスフェクションし、48時間後にその細胞をmCAT−1小胞で処理した。次に、EcoLVを用いてトランスダクションアッセイを行い、レセプター機能を調べた(図7C)。si−CTL細胞およびsi−mCAT細胞の両方にEcoLVが効率的にトランスダクションされたことは、si−mCATが小胞によって送達されたレセプター機能をほとんど抑制しないことを示している。これは、微小胞がmRNAでも汚染プラスミドDNAでもなく、既製のタンパク質を移行させることによって本質的にレセプター機能を送達したことを示している。
【0122】
ゲシクル介在性EcoR送達はpH依存的である
移行したEcoRタンパク質がウイルスレセプターとして機能的であるので、これは、ターゲット細胞表面にそれが存在することを意味する。しかしながら、VSV−Gエンベロープの性質のせいで、ゲシクルと細胞膜の間の融合は、内部の酸性区画中で起こり、EcoRタンパク質が機能する細胞表面ではなく、内部にそれを遊離すると予想される。
【0123】
EcoRの移行メカニズムを洞察するために、本発明者らは、エンドソームpHを上昇させ、VSV−Gによってトリガーされる膜融合を妨害することが知られている薬物であるクロロキン(CQ)で239Tターゲット細胞を処理してからゲシクルで処理した。図8に示されるように、VSV−Gでシュードタイピングされたレンチベクターは、CQ処理細胞をトランスダクションできず(レーン1)、一方でエコトロピックレンチベクターは、mCAT−1を構成性発現している薬物処理293Tに対して使用された場合に依然として有効である(レーン2)。これらのデータは、pH依存性を表している。興味深いことに、本発明者らは、CQがゲシクルによるEcoR送達を強く阻害することを示している(レーン3)。エコトロピックレポーターレンチベクターによるトランスダクションがCQによって減少しないことから、この結果は、表面にEcoRを送達している細胞メカニズムにおけるCQ介在性の不全を反映している。
【0124】
これらのデータを考慮して、本発明者らは、ゲシクルがターゲット細胞にインターナリゼーションされた後に、EcoR放出のために膜融合が必要となるエンドソーム区画中に輸送されるモデルを提案する。それらのタンパク質は、多数の内因性レセプターの運命に従い、続いて細胞膜に向けてリサイクリングされるであろう。
【0125】
TETトランス活性化因子のゲシクル介在性送達
細胞質タンパク質および膜タンパク質の送達に加えて、本発明者らは、ゲシクルが古典的には核に発現されるタンパク質である転写因子をパッケージングおよび送達する能力を調査した。このために、コグネイトプロモーターであるTetオペレーター(TEO)の転写を活性化する合成転写因子であって、細胞培養培地へのテトラサイクリン/ドキシサイクリンの導入によってスイッチオフすることのできるTEToffトランス活性化因子(tTA)をコードするプラスミドを共トランスフェクションされた293T細胞でゲシクルを産生させた(Gossen et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 89, 5547-5551 (1992))。次に、tTAをロードされたゲシクルの漸増する用量を、Tetオペレーターのコントロール下のeGFP遺伝子から構成される発現カセットを収容するレポーター細胞上に重ね入れた。図9に示される結果は、レポーター細胞系の蛍光が処理の24時間後にtTAゲシクルによって活性化されることを示している。蛍光シグナルはゲシクルの用量と共に増加し、最高用量では、tTA構築物をトランスフェクションされたレポーター細胞で得られたシグナルの約50%に達する。本発明者らは、処理された細胞での転写活性化が依然としてドキシサイクリン処理を感知可能であることに留意する。これは、tetトランス活性化因子タンパク質がゲシクル中にうまくパッケージングされ、レポーター細胞系に移行したことを示す。
【0126】
曝露時間の関数としてのゲシクル介在性tTAの移行効率
HEKレポーター細胞系Teo−GFPを12ウェルプレート(細胞10個)に植え、tTAゲシクルで処理した(ウェル1個あたり50μgの総タンパク質)。曝露時間は5分から4時間の範囲であった。曝露後に、小胞含有培地を捨て、細胞をPBSで洗浄し、培養を維持して24時間後にGFP分析に供した。tTA移行効率は、曝露時間と共に3時間まで徐々に増加し、3時間が最適曝露時間である(図10参照)。
【0127】
ゲシクルの産生およびアッセイ(dosage)方法
ヒトEcoR−ゲシクルの産生およびアッセイ
リン酸カルシウム法を用いたHEK293T細胞のトランスフェクションによってヒトゲシクルを産生させた。細胞を10cm皿に3×10個蒔き、皿1枚あたり12μgのVSV−Gコードプラスミドおよび12μgのmCAT−1コードプラスミドを共トランスフェクションした。24時間後にトランスフェクション培地を交換し、トランスフェクションの48時間後および72時間後に小胞含有上清を収集し、プールし、0.45umフィルターを通過させて濾過し、SW41ローターを用いて25000rpm(110000g)で1時間30分間超遠心分離した。ペレット化した物質を最終的に冷PBS中に再懸濁し、200倍濃度とした。6枚の10cm皿を使用して大規模調製を行い、200×小胞約400ulを生成させた。
【0128】
YFP/CD81担持小胞は、YFPを発現しているレンチベクターを予めトランスダクションされたHEK−293T細胞に15μgのVSV−Gプラスミドをトランスフェクションすることによって産生させた。
【0129】
沈降した微小胞中のタンパク質の量を定量するために、本発明者らは、flag化mCAT−1タンパク質を検出するELISAアッセイを開発した。簡潔には、系列希釈した小胞をPBS/2%トリトンX100中で溶解させ、炭酸塩被覆緩衝液(pH9.6)に入れて96ウェルプレート(NUNC.Maxisorp)の中を一晩被覆した。flag−ペプチド(Sigma)の系列希釈物を並行して無トリトン緩衝液に入れて被覆した。洗浄されたプレートを、1/1000希釈された抗Flag−HRP抗体(M2 Sigma)と共に1時間インキュベーションし、TMB基質で最終的に顕色させることでタンパク質およびペプチドを明らかにした。これらのアッセイは、本発明者らが小胞調製物中のflag化タンパク質の量を設定できるようにした。
【0130】
または、本発明者らは、VSV−Gペプチドの系列希釈物で被覆することにより、VSV−G Elisaアッセイを計画した。そのペプチドを、HRPとカップリングした抗VSVG抗体(P5D4、Sigma)によって認識した。したがって、全てのVSV−G小胞を、小胞調製物1μlあたりのVSV−Gペプチド当量質量として表現することができる。
【0131】
考察
本実施例において本発明者らは、操作されたエキソソーム様小胞の使用によってヒト細胞に細胞質タンパク質および膜タンパク質を移行させる独特で簡単な方法を開発した。このゲシクル介在性タンパク質送達技法をさらに使用して、ヒト細胞に機能的転写因子を導入した。これらの微小胞の産生を、VSV−Gを共トランスフェクションされた293Tプロデューサー細胞での関心が持たれるタンパク質の過剰発現によって達成した。膜タンパク質ならびに膜脂質およびアクチンが豊富に存在するという上清の分析によって明らかとなったように、VSV−Gは、293T細胞からの小胞産生を高めると思われる(図11)。さらに、微小胞の膜で被覆することによって、融合誘発Gタンパク質は、それらがターゲット細胞と接触する能力を高め、粒子と細胞膜の間で非常に効率的に融合させる。これは、ターゲット細胞中に微小胞内容物を放出する必要条件である。
【0132】
実施例2
共培養実験での孔径3μmのインサートを介する小胞介在性タンパク質の移行
本発明者らは、様々な組み合わせのプラスミドをトランスフェクションされたHEK細胞をTeo−GFPレポーター細胞系と一緒に同じ培地中で培養した。図示したように、産生細胞を下部の6ウェル皿の中に、レポーター細胞系を上部インサート中に入れるように、細胞を孔径3μmのフィルターによって分離した。担体DNA、VSV−Gコードプラスミドまたは融合欠損VSV−Gと共にtTA発現プラスミドを産生細胞に共トランスフェクションした。48時間共培養後に、インサートを取り外し、レポーター細胞系をトリプシン処理し、FACSによって分析してtTAの送達を評価した。結果をTeo−GFP細胞系でのMFIとして示す(図12)。
【0133】
この技法は、濃縮ステップの必要なしにターゲット細胞へのタンパク質の送達を可能にする。濃縮された小胞は、ターゲット細胞の種類に応じて有毒な場合がある。ターゲット細胞を、上部または下部チャンバー中で培養して、一定のタンパク質送達のために小胞産生細胞と共に数日間注入を行うことができる。いくつかの因子を逐次導入しなければならない場合、小胞を含有する別の浴中にインサートを簡単に移すことによって、逐次注入を行うことさえできる。
【0134】
実施例3
昆虫細胞の微小胞産生およびアッセイ(dosage)
Bac−to−Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って使用してバキュロウイルスの産生を行った。簡潔には、関心が持たれるcDNAをspFAST−1シャトルにクローニングしてから、DH10−BAC細菌に組み換えした。次に、バキュロウイルスDNAを使用してSF−9細胞にトランスフェクションして最初のバキュロ原液を生成させ、それを72時間後に収集した(継代1回目)。このポリクローナル原液を力価1×10pfu/mlに達するまでさらに増幅させ(継代2回目)、それを4℃で保存し、小胞産生のために使用した。
【0135】
グルタミン(20mM)およびペニシリン−ストレプトマイシン(ペニシリン25U、ストレプトマイシン25μg/ml)を補充された100mlのExpress-five SFM培地中で撹拌しながら30℃で懸濁培養された200×10個のHIGH5細胞にバキュロウイルスを感染させて(0.5〜1のMOI)、昆虫細胞微小胞を産生させた。接種の48時間後に培地を回収し、透明にし、孔径0.45mmのフィルターを2回通過させて濾過してから、SW−32ローターを用いて24000rpm(100.000g)で超遠心分離した。次に、沈降した物質を冷PBS中に再懸濁し(100×濃縮)、−80℃で保存した。
【0136】
よりよく精製するために、この濁った調製物を不連続なイオジキサノール勾配上に重ね、異なる密度画分を分離させた。画分の生物学的分析は、活性な小胞が密度1.09〜1.11の間で沈降される収容タンパク質を移行可能であることを明らかとした。これらの画分をプールし、冷PBSを補充した最終濃縮ステップのプール後に(SW41で30000rpm、1時間)、高度に精製された小胞が調製された。
【0137】
昆虫細胞由来小胞をリン脂質−酵素PAP50検出キット(Biomerieux)および上記VSV−G ELISAを用いて定量した。
【0138】
昆虫細胞由来微小胞の特徴づけ
記載したようにsf9細胞にリコンビナントバキュロウイルスを72時間感染させてGFP微小胞を産生させた。濃縮後に小胞をイオジキサノール勾配上に重ね入れ、215000gで10時間遠心分離して小胞をその密度に応じて沈降させた。次に、チューブの底から画分を順次収集し、秤量によってその密度を測定した。図13Aのグラフからd=1.3から1.05の範囲の密度勾配を認識することができる。全ての画分を蛍光光度計によって分析してGFP(Exc485、Em515)を検出し、GFPは本質的に画分21から検出された(図13A、白色棒線)。画分の希釈物も使用してsf9細胞に感染させ、GFPバキュロウイルスがどこで沈降したかを同定した。感染の3日後にFACSによってsf9を分析し、バキュロウイルスの力価を計算した。Aに示される結果(黒色棒線)は、ウイルスが画分13から画分20の間で沈降し、ピークが画分16であったことを示した。本発明者らは、また、ヒト細胞にGFPを送達するためにその画分を使用し、24時間後に蛍光の移行を分析した(図13B)。興味深いことに、本発明者らは、GFPの移行能が画分14〜19に含有され、部分的にウイルス含有画分と重複することを見出した。
【0139】
tTA昆虫微小胞の中和アッセイ(NA)
tTA−バキュロウイルスに感染したHigh5細胞でtTA微小胞を産生させた。小胞を濃縮し、PBS中に再懸濁し、10倍希釈して、100μlのPBS中で行われるアッセイに供した。0.5当量のリン脂質tTAを、抗gp64抗体(クローンAcV1)の系列希釈物または対照抗体と共に37℃で2時間インキュベーションした。次に、小胞をHEK tTAレポーター細胞(tTAが細胞に導入されるとGFPを発現)上に重ね入れた。24時間後に、小胞に曝露された細胞をFACS分析し、GFPの発現を定量した。結果を全般集団MFIとして示す(図14参照)。
【0140】
tTA昆虫微小胞を使用した用量反応
tTA昆虫微小胞を濃縮し、前記のように精製し、−80℃で保存した。漸増する用量の小胞を使用して、HEK tTAレポーター細胞系にtTAを送達し、漸増するGFPシグナルをもたらし、そのシグナルを小胞の24時間後にターゲット細胞から検出した。ドキシサイクリン処理細胞は、TET系の予想された誘導性を反映するバックグラウンド蛍光を示した(図15参照)。
【0141】
考察
本発明者らは、ヒト細胞由来小胞の産生が、VSV−Gをコードするプラスミドおよび関心が持たれるタンパク質(YFP、mCAT−1、tTAなど)をコードする別のプラスミドをプロデューサー細胞に共トランスフェクションすることで達成されたことを示した。産生系の性能を高めるために、本発明者らは、VSV−GおよびtTAをコードするリコンビナントバキュロウイルスを構築し、バキュロウイルス感染に高度に許容性の昆虫細胞に感染させた。そのうえHigh5細胞およびSF9細胞は、血清なしに、または動物産物を欠如する合成培地であっても最大2×10/mlまで容易に懸濁培養することができる。顕著にはバキュロウイルスはヒト細胞では複製せず、導入遺伝子の発現を推進するポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞特異的であって、ヒト細胞において活性でない。
【0142】
本発明者らは、tTAおよびVSVGに同時感染すると、昆虫細胞がヒト細胞にtTAを移行させることができる微小胞を産生することを見出した。本発明者らは、また、VSV−Gは有用であるが、この工程になくてもかまわないことを見出したが、これは、別の融合タンパク質がそれと置き替わることができるであろうことを示唆している。全ての感染細胞で発現されるバキュロウイルスのエンベロープ糖タンパク質であるgp64は、この役割を演じることができよう。中和アッセイを行うことによって、本発明者らは、昆虫微小胞によって仲介されるタンパク質送達をgp64抗体で中和できることを示した。
【0143】
さらに昆虫細胞の小胞を特徴づけるために、本発明者らは、GFP昆虫小胞をイオジキサノール勾配上に重ね入れてそれらの密度を測定した。この工程は、混合物中に存在する異なる物質をそれらのそれぞれの密度にしたがって分離させる。この実験は、小胞含有画分がバキュロウイルス含有画分と重複することを示した。バキュロウイルスはヒト細胞中で複製することができないことが一般に認められているが、本発明者らは、tTAをコードするバキュロウイルスのわずかな発現が、レポーターターゲット細胞でのGFP発現を活性化するために十分なtTAを産生することができると推測することができる。これを調べるために、本発明者らは、Bacリコンビナントを構築するために使用されたシャトルプラスミド(pFAST)中の昆虫特異的ポリヘドリンプロモーター(pH)をCMVまたはEFIaプロモーターによって置き換えた(図16Aに示す構築物)。pHとは対照的に、HEK−Teo GFPレポーター細胞系でのトランスフェクション実験によって明らかにされたように、それらのプロモーターはヒト細胞で高度に活性である(図16B)。次に本発明者らは、CMVプロモーターを選択して二つのリコンビナントバキュロウイルス(CMV1およびCMV2)を生成させ、そのウイルスを続いて増幅させ、sf9細胞に感染させるために使用した。両方のCMVリコンビナントは、pHリコンビナントと同じように効率的にsf9細胞に感染した。これは、プロデューサー細胞溶解物で行われたウエスタンブロット分析によって明らかとなった(図16C)。バキュロウイルスタンパク質gp64は、使用されたプロモーターの性質に関わらず明らかに細胞溶解物から検出された。微小胞を調製したとき、本発明者らは、微小胞溶解物に同じ染色を行い、gp64が三つの試料から高度に検出されることを立証したが、これは、CMVの取り替えがsf9へのバキュロウイルス感染にもウイルス放出にもあまり影響しなかったことを示している。本発明者らは、予想通りpHリコンビナントがsf9細胞で二つのCMVリコンビナントよりも高いレベルのtTAを発現することを見出した。これは、微小胞から検出されたtTAの量がpH溶解物よりもかなり高いことに論理的に影響した。漸増する用量のpH−tTAおよびCMV−tTA微小胞を最終的にHEK−TeoGFP細胞系上に重ね入れた。24時間後にtTA送達の効率を反映しているMFIをFACSによって分析したが、それは、pHリコンビナントを用いて産生された小胞が、CMVリコンビナントを用いて産生された小胞よりも10倍効率的であることを明らかにした(図16D)。これは、効率的なtTAの移行がプロデューサー細胞での高レベルのタンパク質発現と相関することを示している。これは、タンパク質自体がバキュロウイルス関連微小胞によって送出されるという仮説を支持している。そのうえ、プロモータースワップによりヒト細胞でのtTAバキュロウイルスの転写性能を増加させても、ターゲットにおけるtTA入手性は増加せず、これは、バキュロウイルスによって推進される転写が、送達されたtTAの機能の原因とはならない(またはほとんど関与しない)ことを示している。まとめるとこれらのデータは、ヒト細胞へのtTA移行が昆虫細胞由来gp64微小胞によって達成され、コードするバキュロウイルスによっては達成されないことを示している。
【0144】
実施例4:ゲシクルは細胞のリプログラミングおよび人工多能性幹細胞(iPS)の産生のために使用することができる
実施例4A. EcoR含有ゲシクルを使用したリプログラミング
細胞培養
ヒト正常成体線維芽細胞(Coriell細胞保管所から取り寄せた)は、10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウムおよび2mM GlutaMAX(商標)を補充されたDMEM高グルコース中で維持した。ヒトiPS細胞は、ヒトES細胞培地、すなわち20%ノックアウト血清代替物、10ng/ml bFGF、0.1mM可欠アミノ酸、50mM β−メルカプトエタノール、2mM GlutaMAX(商標)および0.1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたノックアウトDMEMに入れたマイトマイシンC成長停止MEFフィーダー細胞上で維持した。
【0145】
レトロウイルスの産生
c−Myc、Oct4、Sox2およびKlf4のヒト相補的DNA(cDNA)を含有するモロニーベースのレトロウイルスベクター(pMIG)をAddgeneから得た。これらのプラスミドを、FuGeneを使用してPLAT−A(アンホトロピックウイルス産生用)またはPLAT−E(エコトロピックウイルス産生用)パッケージング細胞に個別にトランスフェクションした。PLAT細胞培地をトランスフェクションの24時間後に取り替えた。トランスフェクションの48時間後にウイルス上清を収集し、0.45μフィルターを通過させて濾過し、次に1:1:1:1の比で混合した。
【0146】
エコトロピックレセプター(EcoR)を含有するゲシクルの産生
上記のようにVSV−Gを安定発現している293T細胞からゲシクルを産生させた。
【0147】
多能性幹細胞の誘導
アンホトロピック誘導されたiPS細胞の生成のために、ウイルス混合物をヒト線維芽細胞に24時間感染させ、次に、その細胞をゼラチンコートされた6ウェルプレート中のウェル1個あたり細胞3.10e4個となるように線維芽細胞培地中に再度植え、それを0日目と定義する。
【0148】
エコトロピック誘導されたiPS細胞を生成するために、EcoRレセプターを含有するゲシクルを感染の1.5時間前に細胞に添加したことを除き、同じプロトコールに従った。
【0149】
感染後1日目から開始して、0.5mM VPAを補充されたヒトES細胞培地中で細胞を10日間培養し、次にiPSコロニーが出現するまで非補充hES細胞培地中で培養した。
【0150】
iPS細胞系を樹立するために、感染の約3〜5週間後にES細胞様コロニーの形態に基づいてiPSコロニーを釣り上げた。釣り上げられたコロニーを続いてエクスパンションさせ、VPAを有さないヒトES細胞培地中のマイトマイシンC成長停止MEFフィーダー層上で維持した。解離されたヒトES単細胞およびiPS細胞の生存を高めるROCK阻害物質であるY−27632を10μMで使用して、釣り上げ後の最初のコロニーエクスパンションおよび各継代後の初日についてのiPS細胞の接種効率を高めた。
【0151】
アンホトロピックまたはエコトロピックなトランスダクションプロトコールのいずれかを使用して等しい数のクローンを得た。
【0152】
いずれかのプロトコールで得られたiPSクローンをhESC培養条件で20回よりも多く継代してエクスパンションさせたが、形態に変化はなかった。多能性マーカーの免疫細胞化学分析から、両方の種類のクローンでSSEA−4についての等しい染色が示されたが(図18)、これは、多能性幹細胞の特徴と適合した。
【0153】
したがって、ターゲット細胞をエコトロピックウイルスに許容性にするために、エコトロピックレセプターを含有するゲシクルを使用することができる。そのうえ、ターゲット細胞にリプログラミング転写因子を送達するために、エコトロピックウイルスは、アンホトロピックベクターに効率的に取って代わることができる。それらは、体細胞を人工多能性幹細胞(iPS)に効率的にリプログラミングするために使用することができ、より安全な代替物に相当する。
【0154】
実施例4B. c−mycを含有するゲシクルを使用したリプログラミング
リプログラミング因子c−mycを含有するゲシクルの産生
ヒト微小胞を、リン酸カルシウム法を用いたHEK293T細胞のトランスフェクションによって産生させた。細胞を10cm皿に3×10e6個となるように蒔き、その細胞に皿1枚あたり15μgのVSV−Gコードプラスミドおよび15μgのc−MYCコードプラスミドを共トランスフェクションした。トランスフェクション培地を24時間後に取り替え、トランスフェクションの48時間後および72時間後に小胞を含有する上清を収集し、プールし、0,45umフィルターを通過させて濾過し、SW41ローターを用いて25000rpm(110000g)で1時間30分超遠心分離した。ペレット化した物質を最終的に冷PBS中で一晩再懸濁し、200倍濃縮(上清体積/終体積)とした。6枚の10cm皿で調製を行い、約400μlの200×小胞を生成させた。
【0155】
細胞培養
IMR−90ヒト正常線維芽細胞は、10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウムおよび2mM GlutaMAX(商標)を補充されたDMEM高グルコース中で維持した。ヒトiPS細胞は、ヒトES細胞培地、すなわち20%ノックアウト血清代替物、10ng/ml bFGF、0,1mM可欠アミノ酸、50mM β−メルカプトエタノール、2mM GlutaMAX(商標)および0,1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたノックアウトDMEM中のマイトマイシンC成長停止MEFフィーダー細胞上で維持した。
【0156】
レトロウイルスの産生
Oct4、Sox2およびKlf4のヒト相補的DNA(cDNA)を含有するモロニーベースのレトロウイルスベクター(pMIG)をAddgeneから得た。これらのプラスミドを、FuGeneを使用してPLAT−A(アンホトロピックウイルス産生用)パッケージング細胞に個別にトランスフェクションした。PLAT−A細胞培地をトランスフェクションの24時間後に取り替えた。トランスフェクションの48時間後にウイルス上清を収集し、0.45μmフィルターを通過させて濾過し、次に1:1:1の比で混合した。ヘペスおよびポリブレン(4μg/mL)をそのウイルス混合物に添加した。
【0157】
多能性幹細胞の誘導
IMR−90線維芽細胞をウイルス混合物によって感染させ、次にトランスダクションの開始から6時間後に10μLのc−Myc含有ゲシクルをトランスダクション培地に添加した。トランスダクションの24時間後に細胞をゼラチン被覆6ウェルプレートのウェル1個あたり3.5×10e4個となるように線維芽細胞培地中に再度植え、その時点を0日目と定義する。1日目に10μLのc−Myc含有ゲシクルを用いた2回目の処理を行った。
【0158】
感染1日後から開始して、0.5mM VPAを補充されたヒトES細胞培地中で細胞を10日間培養し、次にiPSコロニーが出現するまで非補充hES細胞培地中で培養した。
【0159】
感染の約4週間後にES細胞様コロニーの形態に基づいて1個のiPSコロニーを釣り上げた。続いて、釣り上げられたコロニーをエクスパンションさせ、VPAを有さないヒトES細胞培地中のマイトマイシンC成長停止MEFフィーダー層上で維持した。解離したヒトES単細胞およびiPS細胞の生存を高めるROCK阻害物質であるY−27632を10μMで使用して、釣り上げ後の最初のコロニーエクスパンションおよび各継代後の初日についてのiPS細胞の接種効率を高めた。
【0160】
c−Myc含有ゲシクルを用いて得られたiPSクローンをhESC培養条件で8回よりも多く継代してエクスパンションさせたが、形態に変化はなかった。多能性マーカーのフローサイトメトリー分析から、細胞数の90%超にSSEA−4およびTRA−1−81についての二重染色が示されたが(図19)、これは多能性幹細胞の特徴と一致した。
【0161】
したがって、リプログラミング転写因子を含有するゲシクルは、ターゲット細胞にリプログラミング転写因子を送達するためにレンチウイルスベクターに効率的に取って代わることができる。それらは、体細胞を人工多能性幹細胞(iPS)に効率的にリプログラミングするために使用することができる。
【0162】
参考文献
本出願にわたり、様々な参考文献が、本発明が属する技術の現状を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示の参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス膜融合タンパク質およびリプログラミング転写因子を過剰発現している真核細胞によって分泌される微小胞とターゲット細胞を接触させることによる、該ターゲット細胞にリプログラミング転写因子を送達するための方法。
【請求項2】
前記微小胞が、前記リプログラミング転写因子をコードする核酸を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記微小胞が、ウイルス構造タンパク質を含有しない、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルス膜融合タンパク質がVSV−Gである、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記リプログラミング転写因子が、Oct−4、KLF4、sox2、Lin28およびc−mycから成る群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
Oct−4を含む微小胞、KLF4を含む微小胞、sox2を含む微小胞、および/またはc−mycを含む微小胞と前記ターゲット細胞を接触させるステップを含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記微小胞が、ターゲット細胞と微小胞産生細胞との共培養によってin situで産生される、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の方法に使用するための、ウイルス膜融合タンパク質およびリプログラミング転写因子を過剰発現している真核細胞。
【請求項9】
前記ウイルス膜融合タンパク質および前記リプログラミング転写因子を含む、請求項8記載の真核細胞によって分泌される微小胞。
【請求項10】
ウイルス構造タンパク質を含有しない、請求項9記載の微小胞。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項記載の方法によってターゲット細胞に少なくとも一つのリプログラミング因子を送達するステップを含む、人工多能性幹細胞を得るための方法。
【請求項12】
− ウイルス膜融合タンパク質およびEcoRエコトロピックウイルスレセプターを含む微小胞によってターゲット細胞に該EcoRエコトロピックウイルスレセプターを送達するステップ;ならびに
− リプログラミング因子をコードする少なくとも一つの遺伝子を含むエコトロピックウイルスによって該ターゲット細胞に少なくとも一つのリプログラミング因子を送達するステップ
を含む、人工多能性幹細胞を得るための方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の方法によって入手可能な人工多能性幹(iPS)細胞。
【請求項14】
患者特異的である、請求項13記載の人工多能性幹(iPS)細胞。

【図4A】
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【図16A】
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【図17】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図18A】
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【図19A】
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【公表番号】特表2013−510563(P2013−510563A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538326(P2012−538326)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067225
【国際公開番号】WO2011/058064
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】