説明

操作スイッチ

【課題】同時に複合操作することができる操作性のよい操作スイッチを提供する。
【解決手段】操作スイッチ1,2は、両端が開口した筒状の筐体10,20と、筐体10,20内に設けられ、その軸方向へ変位操作される移動体30,40と、移動体30,40の両端に操作部とともに設けられ、その操作信号を出力するスライドスイッチ50,60,70,80と、移動体30,40の筐体10,20に対する変位量を検出し、その検出信号を出力する移動体変位検出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作スイッチに係り、複数の操作対象に対して複合操作を行うことができる操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のステアリングホイールの表面には、ステアリングホイールから近いことによる操作性の良さや運転時の安全確保を目的として、エアーコンディショナやオーディオ等の車載機器の操作を行う複数の操作スイッチが設けられている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1のステアリングホイールでは、複数の操作スイッチがスポークに設けられ、表示器に操作状態を表示させることにより複数の操作スイッチの位置及び状態を把握し、ブラインド操作ができるようになっている。
【特許文献1】特開2003‐175783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えばエアーコンディショナ一つをとっても、温度調節、風量調節及び風向調節等の複数の機能を有し、各機能に対応して複数の操作スイッチを設ける必要があった。オーディオ及びナビゲーション等も同様に各々複数の機能を有しているため、エアーコンディショナ、オーディオ及びナビゲーション等の操作対象の操作を行うための操作スイッチの数は多大なものとなっていた。このため、ステアリングホイール上で全ての操作対象又は機能を操作しようとすると、操作スイッチがステアリングホイール上に溢れることとなる。また、ステアリングホイール上の設置スペースには限りがある。そのため、必要最低限の操作対象又は機能に対応する操作スイッチのみステアリングホイール上に設け、その他の操作対象又は機能の操作は各操作対象の近傍に設けられた操作スイッチによって行うようになっているのが現状である。
【0004】
また、ナビゲーションの表示画面において、地図の表示方向を変更させるスクロール、地図の鳥瞰角度を変更するアングル、及び表示範囲を縮小、拡大するズームイン、ズームアウト等の表示切り替えでは、表示画面は操作スイッチが押圧操作等される毎に段階的に切り替えられる。しかし、近年ではこのような表示切り替え操作の際には、より連続的で滑らかな調節又は微小な調節が望まれる場合も多く、操作スイッチにはこのような連続又は微小な調節操作に対応することが求められつつある。また、各切り替えを行うには、それぞれに対応した別の操作スイッチを操作する必要があった。そのため、前述した複数の表示切り換え機能の同時操作は困難であった。
【0005】
したがって、複数の操作対象及び機能を同時に複合操作することができる操作性のよい操作スイッチが望まれていた。なお、同時に複合操作することができる操作性のよい操作スイッチは、車両のステアリングホイールに設けられる操作スイッチに関わらず、ゲーム機のコントローラや電化製品のリモートコントローラ等のその他の操作スイッチでも望まれている。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、同時に複合操作することができる操作性のよい操作スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、操作対象を操作する操作スイッチであって、両端が開口した筒状の筐体と、同筐体内に設けられ、その軸方向へ変位操作される移動体と、同移動体の両端の少なくとも一方に操作部とともに設けられ、その操作信号を出力する入力スイッチと、同移動体の同筐体に対する変位量を検出し、その検出信号を出力する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
同構成によれば、入力スイッチの操作部を変位操作しながら移動体の変位操作を行うこと、すなわち同時複合操作が可能になる。そして、入力スイッチからの検出信号、及び移動体の変位量に応じて出力される検出手段からの検出信号に基づき、定められた操作対象は動作する。また、前述したように、移動体の操作は筐体に対してその軸方向へ連続的に変位させる構成であることから、移動体の筐体に対する微小な変位量の調節も簡単に行うことができ、操作性がよい。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の操作スイッチにおいて、前記入力スイッチは、前記移動体の変位方向と異なる方向に操作部が変位操作されることによって操作入力が行われるスライドスイッチであることを特徴とする。
【0010】
同構成によれば、同移動体の変位方向と異なる方向に操作部が変位操作されることによって入力操作が行われるスライドスイッチとしたことにより、入力スイッチであるスライドスイッチを操作する際に移動体を変位させてしまうことを抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の操作スイッチにおいて、前記入力スイッチが前記移動体の両端に各々設けられ、同各々の入力スイッチは同軸上に設けられることを特徴とする。
【0012】
同構成によれば、入力スイッチを移動体の両端に各々設けるとともに、各々の入力スイッチを同軸上に設けたため、両端の入力スイッチを操作する際に、両方の入力スイッチに触れることにより互いの操作位置を把握することができ、操作が容易となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、ステアリングホイールにおいて、請求項1〜3のいずれか一項に記載の操作スイッチがリング又はスポークに設けられることを特徴とする。
同構成によれば、ステアリングホイールを握りながら、操作対象を操作することができるとともに、操作対象に対して複合操作することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同時に複合操作することができる操作性のよい操作スイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる操作スイッチを車両のステアリングホイールに設け、車両のナビゲーション、エアーコンディショナ、及びオーディオ等の車載機器の操作装置として具体化した一実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
【0016】
図1に示されるように、ステアリングホイール90には、ステアリングシャフト(図示略)が接続される中央部93と、リング92と、中央部93とリング92とを繋ぐ三本の中スポーク91a、右スポーク91b、左スポーク91cとが設けられている。中スポーク91aは中央部93から下方へ、右スポーク91bは中央部93から右方へ、左スポーク91cは中央部93から左方へ延び、リング92に繋がっている。右スポーク91bの中央には右側操作スイッチ1が表面と裏面とを貫通して配設され、左スポーク91cの中央には左側操作スイッチ2が表面と裏面とを貫通して配設されている。
【0017】
図2に示されるように、右側操作スイッチ1は、その中心軸が車両の略前後方向に対して延びるように右スポーク91bに配設されている。同様に、左側操作スイッチ2は、その中心軸が車両の略前後方向に対して延びるように左スポーク91cに配設されている。右側操作スイッチ1は、筐体10と、筐体10の内部にその軸方向へ変位可能に嵌装される移動体30と、移動体30の両端に設けられる入力スイッチとしての表側スライドスイッチ50及び裏側スライドスイッチ70とを備えている。表側スライドスイッチ50及び裏側スライドスイッチ70は、筐体10の軸方向に対して垂直に上下左右の四方向へスライド操作可能である。同様に、左側操作スイッチ2は、筐体20と、筐体20の内部にその軸方向へ変位可能に嵌装される移動体40と、移動体40の両端に設けられる入力スイッチとしての表側スライドスイッチ60及び裏側スライドスイッチ80とを備えている。表側スライドスイッチ60及び裏側スライドスイッチ80は、筐体20の軸方向に対して垂直に上下左右の四方向へスライド操作可能である。
【0018】
すなわち、移動体30,40の操作方向(変位方向)と表側及び裏側スライドスイッチ50,60,70,80(正確には、後述する操作部)の操作方向とが異なるので、表側及び裏側スライドスイッチ50,60,70,80を操作する際に移動体30,40を変位させてしまうことを抑制することができる。また、移動体30,40を操作する際における表側及び裏側スライドスイッチ50,60,70,80のスライドが抑制される。
【0019】
次に、右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2の構造について図3(a)〜(c)、図4、及び図5を参照して説明する。なお、右側操作スイッチ1と左側操作スイッチ2とは構造が同じであるため、右側操作スイッチ1についてのみ説明する。また、図3(b)では、左側操作スイッチ2に対応する部材番号を括弧書きで示す。
【0020】
図3(b)に示されるように、右側操作スイッチ1には、両端が開口した円筒状の筐体10と、筐体10の内部にその軸方向に変位可能に嵌装される移動体30とが備えられている。筐体10と移動体30との間には、移動体30を筐体10の軸方向へ案内するガイド機構が備えられている。
【0021】
ガイド機構は、筐体10の内周面に設けられた突部10aと、同突部10aに形成された筐体10の軸方向へ延びるガイド孔16に挿通されるガイド軸32とからなる。詳述すると、移動体30の外周面には突部10aを収容可能とした凹部30aが形成されている。同凹部30aの内部には、筐体10の軸方向へ延びるガイド軸32が固定されている。ガイド軸32は、凹部30a内に収容された突部10aのガイド孔16に挿通されている。したがって、移動体30に軸方向の操作力が加えられた場合には、ガイド軸32がガイド孔16に案内されることにより、移動体30は筐体10に対して軸方向へ安定して変位する。
【0022】
移動体30の内部において、同移動体30の軸線上には収容部30bが形成されている。収容部30bの内部には中心軸31が移動体30と同軸となるように固定されている。収容部30bの内部において、中心軸31の外周面には環状の2つの係合部材31a,31bが軸方向に間隔をおいて設けられている。中心軸31において2つの係合部材31a,31bの間にはばね15が巻装されている。ばね15の両端は2つの係合部材31a,31bに係合している。
【0023】
また、収容部30bの内部には、ばね15を収容する円筒状のばね収容部材11が中心軸31を貫通して設けられている。中心軸31を挿通するべくばね収容部材11の頂壁及び底壁に形成された貫通孔の内径は前述した係合部材31a,31bの外径よりも大きく、且つばね15の外径よりも小さく設定されている。すなわち、係合部材31a,31bはばね収容部材11の前記貫通孔を通過可能に、またばね15は前記貫通孔を通過不能になっている。そして、ばね収容部材11は筐体10に固定されるとともに、その軸方向において中心軸31に対して相対的に摺動可能となっている。
【0024】
ばね収容部材11の両端面と収容部30bの内頂面及び内底面との間にはそれぞれ隙間が形成されている。これら隙間の分だけ移動体30は軸方向へ変位可能となっている。すなわち、移動体30は、ばね収容部材11の上端面が同移動体30の収容部30bの内頂面に係合する図3(c)に示される位置と、ばね収容部材11の下端面が同移動体30の収容部30bの内底面に係合する図3(a)に示される位置との間を変位する。
【0025】
したがって、図3(a)に示されるように、移動体30に車両前方(同図における上方)へ向けた操作力が加えられた場合には、ばね収容部材11は移動体30の収容部30bに対し相対的に下方へ移動する。同時に、車両前側の係合部材31aはばね収容部材11の貫通孔を通過して同ばね収容部材11と移動体30の収容部30bとの隙間に進入するとともに、車両後側の係合部材30bはばね収容部材11に対し相対的に上方へ移動する。前述したように、ばね15の外径はばね収容部材11の貫通孔の内径よりも大きいことから、ばね15は貫通孔を通過することはない。このため、ばね15は、ばね収容部材11に対して相対的に車両前側へ移動する係合部材31bにより縮められる。そして、同操作力が解除されたときには、同ばね15の付勢力によって移動体30は図3(b)に示される元の位置(通常位置)に戻る。
【0026】
図3(c)に示されるように、移動体30に車両前方(同図における下方)へ向けた操作力が加えられた場合についても同様に、ばね15は、ばね収容部材11に対して相対的に車両後側へ移動する係合部材31bにより縮められ、同操作力が解除されたときには、同ばね15の付勢力によって移動体30は図3(b)に示される元の位置に戻る。
【0027】
また、筐体10と移動体30との間において、前述したガイド機構が設けられた位置の反対側には、移動体30の変位量を検出する検出手段としての移動体変位検出部12が設けられている。移動体変位検出部12は、筐体10の内側面に固定される固定部13と、同固定部13に対して移動体30の軸方向へスライド移動可能に設けられた移動部14とからなる。
【0028】
固定部13は移動体30に対して相対的に摺動可能に設けられている。また、移動部14は、固定部13に対するスライド移動が許容される態様で移動体30に固定されている。そして、固定部13は、移動部14の変位量に応じた検出信号を図示しない制御装置に出力するように構成されている。移動体30と移動体変位検出部12の移動部14とは一体的に移動することにより、それらの変位量は常に同じになる。このため、移動体30の変位に伴う移動部14の変位量に応じて固定部13から出力される検出信号は、移動体30の変位量に応じて出力される検出信号として扱うことができる。
【0029】
したがって、移動体30が筐体10に対して車両前方へ変位操作されると、図3(a)に示されるように、筐体10のガイド孔16に移動体30のガイド軸32が案内されることにより同移動体30は筐体10の軸方向へ安定して変位する。また、移動体変位検出部12の移動部14は、固定部13に対して車両前方寄りに位置する。固定部13は移動部14、すなわち移動体30の車両前方への変位量に応じた検出信号を出力する。また、中心軸31の車両後側の係合部材31bが車両前側へ変位することにより、ばね15は、同係合部材31bとばね収容部材11の車両前方の内壁との間で圧縮され、同ばね15には車両後方への付勢力が蓄えられる。車両前方への変位操作が解除されると、ばね15の付勢力により移動体30は図3(b)に示される通常位置に復帰する。
【0030】
一方、移動体30が筐体10に対して車両後方へ変位操作されると、図3(c)に示されるように、筐体10のガイド孔16に移動体30のガイド軸32が案内されることにより同移動体30は筐体10の軸方向へ変位する。また、移動体変位検出部12の移動部14は、固定部13に対して車両後方寄りに位置する。固定部13は移動部14、すなわち移動体30の車両後方への変位量に応じた検出信号を出力する。また、中心軸31の車両前側の係合部材31aが車両後側へ変位することにより、ばね15は、同係合部材31aとばね収容部材11の車両後方の内壁との間で圧縮され、車両前方への付勢力が蓄えられる。車両後方への変位操作が解除されると、ばね15の付勢力により移動体30は図3(b)に示される通常位置に復帰する。
【0031】
図3(b)に示されるように、移動体30の表側(車両後側)の端部には表側スライドスイッチ50が設けられ、移動体30の裏側(車両前側)の端部には裏側スライドスイッチ70が設けられている。表側スライドスイッチ50と裏側スライドスイッチ70とは構造が同じであるため、表側スライドスイッチ50についてのみ説明する。なお、図3(b)では、裏側スライドスイッチ70に対応する部材番号を括弧書きで示す。
【0032】
図5(b)に示されるように、表側スライドスイッチ50には、移動体30の内部側から順に、表側スライドスイッチ変位検出部51と、ガイド部材54と、スライド操作される操作部55とが設けられている。
【0033】
表側スライドスイッチ変位検出部51は、移動体30の端部に固定される固定部52と、同固定部52に対してスライド可能とされた移動部53とからなる。移動部53は移動体30の軸に対して直交する四方向(図4に示される上下左右方向)へ操作可能とされている。固定部52は、移動部53の変位を検出し、その検出信号を前記制御装置に出力する。
【0034】
ガイド部材54は、移動体30に形成されたガイド溝33内に摺動可能に配設されている。ガイド部材54の下部には前述した移動部53が固定され、同じく上部には操作部55が固定されている。操作部55は移動体30の外部に露出している。そして、操作部55は、図4に示されるように、上下左右の四方向へ変位操作可能である。
【0035】
したがって、操作部55、ガイド部材54及び移動部53は一体に変位する。この際、移動体30に形成されたガイド溝33にガイド部材54が案内されることにより、安定した変位が得られる。スライドスイッチ変位検出部51は、操作部55の変位、正確には同変位に伴う移動部53の変位量を検出し、その検出信号を前記制御装置に出力する。
【0036】
すなわち、操作部55が移動体30に対して例えば右側へスライド操作されると、図5(a)に示されるように、ガイド溝33にガイド部材54が案内され、操作部55とガイド部材54と移動部53とが一体に移動する。移動部53は、固定部52に対して右側寄りに位置する。固定部52は、移動部53が右側に位置する旨示す位置信号を前記検出信号として前記制御装置に出力する。
【0037】
一方、操作部55が移動体30に対して例えば左側へスライド操作されると、図5(c)に示されるように、ガイド溝33にガイド部材54が案内され、操作部55とガイド部材54と移動部53とが一体に移動する。移動部53は、固定部52に対して左側寄りに位置する。固定部52は、移動部53が左側に位置する旨示す位置信号を前記検出信号として前記制御装置に出力する。なお、操作部55が図4に示される上下方向へ操作された際も前述した左右方向への操作時と同様に動作する。
【0038】
右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2は、ステアリングホイール90を運転者が把持した状態で、親指とその他のいずれかの指(例えば、人差し指)とによって操作される。詳しくは、表側スライドスイッチ50,60は親指によって上下左右方向へ操作され、裏側スライドスイッチ70,80は親指以外の指によって上下左右方向へ操作される。また、移動体30,40は、車両後方側から親指と、車両前方側から親指以外の指とによって表側スライドスイッチ50,60及び裏側スライドスイッチ70,80を介して挟持され、筐体10,20の軸方向へスライド操作される。移動体30,40は、それらの両端を挟持した状態で操作されるため、移動体30,40の微小な変位操作すなわち、微小な変位量の調節が可能である。
【0039】
次に、操作装置の電気的な構成について図6を参照して説明する。
図6に示されるように、右側操作スイッチ1の移動体変位検出部12は移動体30の変位を検出するとその変位量に基づく検出信号S12を、右側操作スイッチ1の表側スライドスイッチ変位検出部51は操作部55の変位を検出するとその検出信号S51を、右側操作スイッチ1の裏側スライドスイッチ変位検出部71は操作部75の変位を検出するとその検出信号S71を制御装置95に出力する。また、右側操作スイッチ1の移動体変位検出部22は移動体40の変位を検出するとその変位量に基づく検出信号S22を、左側操作スイッチ2の表側スライドスイッチ変位検出部61は操作部65の変位を検出するとその検出信号S61を、左側操作スイッチ2の裏側スライドスイッチ変位検出部81は操作部85の変位を検出するとその検出信号S81を制御装置95に出力する。制御装置95は、入力された検出信号に基づいて操作対象であるナビゲーション96、エアーコンディショナ97、及びオーディオ98等の車載機器のうち、右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2に割り当てられた機器をそれぞれ制御する。
【0040】
次に、前述のように構成された操作装置の操作スイッチ1,2の操作と操作対象との組み合わせについて図7を参照して、例えば、右側操作スイッチ1にナビゲーション96の操作を、左側操作スイッチ2にオーディオ98の操作を割り当てた場合について説明する。
【0041】
右側操作スイッチ1に設けられる表側スライドスイッチ50の操作部55の上下左右方向への変位操作は、ナビゲーション96の地図の表示方向を変更させるスクロール操作と対応する。右側操作スイッチ1に設けられる裏側スライドスイッチ70の操作部75の上下方向への変位操作は、ナビゲーション96の地図の鳥瞰角度を変更するアングル操作と対応する。右側操作スイッチ1の移動体30の変位操作は、ナビゲーション96の地図の表示範囲を拡大するズームイン操作及び同じく縮小するズームアウト操作と対応する。
【0042】
左側操作スイッチ2に設けられる表側スライドスイッチ60の操作部65の上下方向への操作は、オーディオ98の高音調節を行う操作と対応する。左側操作スイッチ2に設けられる表側スライドスイッチ60の操作部65の左右方向への操作は、オーディオ98の前席側の左右音量バランスの調節操作と対応する。左側操作スイッチ2に設けられる裏側スライドスイッチ80の操作部85の上下方向への操作は、オーディオ98の低音調節を行う操作と対応する。左側操作スイッチ2に設けられる裏側スライドスイッチ80の操作部85の左右方向への操作は、オーディオ98の後席側の左右音量バランスの調節操作と対応する。左側操作スイッチ2の移動体40の変位操作は、オーディオ98の音量調節を行う操作と対応する。
【0043】
すなわち、右側操作スイッチ1に設けられる表側スライドスイッチ50の操作部55を上下左右のいずれかに変位操作しながら、移動体30を筐体10に対してその軸方向へ変位操作することにより、ナビゲーション96の地図は表示方位を変化させながら、表示範囲を縮小又は拡大させることができる。同様に、左側操作スイッチ2に設けられる表側スライドスイッチ60の操作部65を左右方向のいずれかへ変位操作しながら、移動体40を筐体20に対してその軸方向へ変位操作することにより、オーディオ98の前席側の左右音量バランスを変化させながら、音量を調節させることができる。このように、同操作スイッチ1,2は、前述したように、複数の操作形態を有することから、ナビゲーション96及びオーディオ98を同時に複合的に操作することができる。また、複数の操作形態を有することから、操作対象となる車載機器等に応じて、操作者の方向感覚になるべく近い操作方向を割り当てることも可能となり、この場合には、車載機器の操作性がいっそう高められる。
【0044】
なお、ナビゲーション96又はオーディオ98に替えて、エアーコンディショナ97を操作できるようにしてもよい。ここでは、例えば、左側操作スイッチ2にオーディオ98に替えてエアーコンディショナ97の操作を割り当てた場合について説明する。すなわち、図7に示されるように、左側操作スイッチ2に設けられる表側スライドスイッチ60の操作部65の上下方向への操作は、エアーコンディショナ97の温度調節を行う操作と対応する。左側操作スイッチ2に設けられる裏側スライドスイッチ80の操作部85の上下方向への操作は、エアーコンディショナ97の吹出口の選択を行う操作と対応する。左側操作スイッチ2に設けられる裏側スライドスイッチ80の操作部85の左右方向への操作は、エアーコンディショナ97の吹出口の調節操作と対応する。左側操作スイッチ2の移動体40の変位操作は、エアーコンディショナ97の風量調節を行う操作と対応する。
【0045】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2は、筐体10,20内にその軸線方向へ変位可能に設けられた移動体30,40と、同移動体30,40の両端部に設けられた入力スイッチとしてのスライドスイッチ50,60,70,80とを備えてなる。このため、スライドスイッチ50,60,70,80の操作部55,65,75,85を変位操作しながら、移動体30,40の変位操作を行うこと、すなわち同時複合操作が可能である。そして、スライドスイッチ50,60,70,80からの検出信号、及び移動体30,40の変位量に応じて出力される移動体変位検出部12からの検出信号に基づき、定められた操作対象であるナビゲーション96及びオーディオ98等の車載機器は動作する。
【0046】
このため、操作対象及びその機能毎に対応する多数の操作スイッチを個別に操作する場合と異なり、操作性が確保される。また、操作対象及びその機能に対応する多数の操作スイッチをステアリングホイール上に並べて設ける場合に比べて、操作スイッチの設置スペースが節約される。また、ステアリングホイール上に操作スイッチが溢れることが抑制されるので、ステアリングホイールの意匠性も確保される。さらに、前述したように、移動体30,40の操作は筐体10,20に対してその軸方向へ連続的に変位させる構成であることから、移動体30,40の筐体10,20に対する微小な変位量の調節も簡単に行うことができ、操作性がよい。近年では例えばナビゲーション96のアングルの変更操作等の際には、より連続的で滑らかな調節又は微小な調節が望まれる場合も多い。このような要求に対し好適に応えられる操作性が得られる。
【0047】
(2)スライドスイッチ50,60,70,80の操作部55,65,75,85が移動体30,40の変位方向であるその軸方向と異なる方向である垂直方向へ変位操作されることによって入力操作が行われる。このため、スライドスイッチ50,60,70,80を操作する際に移動体30,40を変位させてしまったり、逆に移動体30,40を操作する際にスライドスイッチ50,60,70,80を変位させてしまったりすることが抑制される。
【0048】
(3)入力スイッチとしてのスライドスイッチ50,60,70,80を移動体30,40の両端に各々設けるとともに、表側スライドスイッチ50と裏側スライドスイッチ70と、表側スライドスイッチ60と裏側スライドスイッチ80とを同軸上に設けたため、両端のスライドスイッチ50,60,70,80を操作する際に、両方の表側スライドスイッチ50と裏側スライドスイッチ70と、表側スライドスイッチ60と裏側スライドスイッチ80とに触れることにより互いの操作位置を把握することができ、操作が容易となる。
【0049】
(4)右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2を右スポーク91b及び左スポーク91cの中央に設けた。このため、ステアリングホイール90を把持しながら、操作対象であるナビゲーション96、エアーコンディショナ97、オーディオ98を操作することができるとともに、ナビゲーション96、エアーコンディショナ97、オーディオ98に対して複合操作することができる。
【0050】
(5)移動体30,40を図3(b)に示される通常位置に保持するためのばね15を、移動体30,40と同軸上に設けた。このため、移動体30,40のスライド操作時において、同移動体30,40は円滑に且つ安定してスライド移動する。また、移動体30,40に対する操作力が解除さればね15の付勢力により通常位置に復帰する際においても、円滑な且つ安定した復帰動作が得られる。
【0051】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・移動体30,40の変位量の検出手段として、例えば磁気センサを採用することも可能である。このようにしても、連続して変化する移動体30,40の変位量を検出可能である。
【0052】
・表側スライドスイッチ50,60及び裏側スライドスイッチ70,80として、四方向への操作を可能とした多方向操作スイッチを採用したが、操作方向の数は四つに限らない。例えば、八方向への操作を可能とした八方向操作スイッチを採用することも可能である。
【0053】
・右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2のステアリングホイール90に対する設置部位は、適宜変更することも可能である。例えば、図9に示されるように、右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2を右スポーク91b及び左スポーク91cの上部に片寄らせて配設するようにしてもよい。また、図示はしないものの、両操作スイッチ1,2は右スポーク91b及び左スポーク91cの下部に片寄らせて配設することも可能である。また、両操作スイッチ1,2は、中スポーク91aの中央、左側の側部又は右側の側部に配設することもできる。また、両操作スイッチ1,2は中央部93に配設するようにしてもよい。さらに、図10に示されるように、両操作スイッチ1,2はリング92に設けることも可能である。例えば、リング92において、右スポーク91b及び左スポーク91cよりも上側の部位に、両操作スイッチ1,2を内側にはみ出すようにして設ける。なお、リング92の下側の部位に両操作スイッチ1,2を設けることも可能である。
【0054】
・右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2の一方を省略した構成を採用することも可能である。
・また、本実施形態では、右側操作スイッチ1及び左側操作スイッチ2において、移動体30,40の両端に表側スライドスイッチ50,60及び裏側スライドスイッチ70,80を設けたが、表側スライドスイッチ50,60及び裏側スライドスイッチ70,80のいずれか一方を省略する構成も採用可能である。
【0055】
・さらに、表側スライドスイッチ50,60及び裏側スライドスイッチ70,80に代えて、例えばプッシュスイッチ及びロータリスイッチ等を採用することも可能である。この場合であれ、プッシュ操作と移動体30,40のスライド操作との同時複合操作が可能となる。
【0056】
・本実施形態では、各操作スイッチ1,2に操作対象をそれぞれ対応させたが、図8に示されるように、一つの操作スイッチに複数の操作対象を対応させるようにしてもよい。例えば、右側操作スイッチ1に操作対象を割り当てた場合には、右側操作スイッチ1に設けられる表側スライドスイッチ50の操作部55の上下方向への変位操作は、エアーコンディショナ97の温度調節と対応する。右側操作スイッチ1に設けられる表側スライドスイッチ50の操作部55の左右方向への変位操作は、エアーコンディショナ97の吹出口選択と対応する。右側操作スイッチ1に設けられる裏側スライドスイッチ70の操作部75の上下方向への変位操作は、オーディオ98の音量調節と対応する。右側操作スイッチ1に設けられる裏側スライドスイッチ70の操作部75の左右方向への変位操作は、オーディオ98の左右音量バランスと対応する。右側操作スイッチ1の移動体30の変位操作は、ナビゲーション96の地図の表示範囲を拡大するズームイン操作及び同じく縮小するズームアウト操作と対応する。
【0057】
・本実施形態では、両操作スイッチ1,2の操作対象となる車載機器としてナビゲーション96、オーディオ98及びエアーコンディショナ97を挙げて説明したが、これら以外の車載機器の操作を行うことも可能である。
【0058】
・別途設けられた切替スイッチの切り替え操作を通じて、両操作スイッチ1,2に割り当てられる操作対象を変更するようにしてもよい。
・本実施形態では、両操作スイッチ1,2の操作を通じて車載機器を操作するようにしたが、ゲーム機のコントローラ及び電化製品のリモートコントローラ等のその他の機器の操作装置としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】操作スイッチを備えたステアリングホイールの斜視図。
【図2】ステアリングホイールのA‐A断面図。
【図3】(a)(b)(c)操作スイッチの断面図。
【図4】操作スイッチの正面図。
【図5】(a)(b)(c)操作スイッチのB‐B部分断面図。
【図6】操作装置の電気的構成を示すブロック図。
【図7】操作スイッチに対する操作と制御対象との組み合わせを示す図。
【図8】操作スイッチに対する操作と制御対象との組み合わせを示す図。
【図9】ステアリングホイールの正面図。
【図10】ステアリングホイールの正面図。
【符号の説明】
【0060】
1…右側操作スイッチ、2…左側操作スイッチ、10,20…筐体、11,21…ばね収容部材、12,22…移動体変位検出部、13,23…固定部、14,24…移動部、15,25…ばね、16,26…ガイド孔、30,40…移動体、30a,40a…凹部、30b,40b…収容部、31,41…中心軸、31a,31b,41a,41b…係合部材、32,42…ガイド軸、33,34,43,44…ガイド溝、50,60…表側スライドスイッチ、51,61…表側スライドスイッチ検出部、52,62,72,82…固定部、53,63,73,83…移動部、54,64,74,84…ガイド部材、55,65,75,85…操作部、70,80…裏側スライドスイッチ、71,81…裏側スライドスイッチ変位検出部、90…ステアリングホイール、91a…中スポーク、91b…右スポーク、91c…左スポーク、92…リング、93…中央部、S12,S22,S51,S61,S71,S81…検出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象を操作する操作スイッチであって、
両端が開口した筒状の筐体と、同筐体内に設けられ、その軸方向へ変位操作される移動体と、同移動体の両端の少なくとも一方に操作部とともに設けられ、その操作信号を出力する入力スイッチと、同移動体の同筐体に対する変位量を検出し、その検出信号を出力する検出手段とを備える
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の操作スイッチにおいて、
前記入力スイッチは、前記移動体の変位方向と異なる方向に操作部が変位操作されることによって操作入力が行われるスライドスイッチである
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の操作スイッチにおいて、
前記入力スイッチが前記移動体の両端に各々設けられ、同各々の入力スイッチは同軸上に設けられる
ことを特徴とする操作スイッチ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の操作スイッチがリング又はスポークに設けられることを特徴とするステアリングホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−258115(P2008−258115A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102056(P2007−102056)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】