説明

操作デバイス

【課題】複数個の圧力センサによって操作ノブの押圧操作位置を検出できるものにあって、操作ノブの指間隔拡大縮小操作の認識を可能とする。
【解決手段】上ケース3の円形開口部3a内に、上面を操作面5とした操作ノブ4を設ける。操作ノブ4の裏面に、120度間隔で3個の押圧部6を設ける。配線基板8上に、押圧部6に対応した3個の圧力センサ9を設ける。押圧部6と圧力センサ9との間に、第2のばね14等を有する伝達部7を設ける。操作面5のうち、特定の1個の圧力センサ9(A)の真上に、凸部19を設ける。コンピュータは、3個の圧力センサ9に作用した荷重バランスから、操作面5の押圧操作位置を検出する。コンピュータは、3個の圧力センサ9の出力信号の変動状態から、ユーザが1本の指で凸部19を押圧しながら、別の1本の指で操作面5を押したまま離間或いは接近方向に移動させるピンチ操作を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサを利用して操作ノブの操作位置の検出を行う操作デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に設けられるステアリングスイッチやナビ用の遠隔操作装置等に用いられる操作デバイスとして、操作用部材の押圧操作位置(傾動操作方向)を、圧力センサを用いて検出するようにした信号入力装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、正方形板状の操作用部材を、前後左右の4方向(対角線方向)に傾動操作可能に設け、その操作用部材の裏面側に、前後左右(4つの頂角の近傍)に位置して4個の圧力センサを設け、それら圧力センサから出力される圧力検出信号をもって、移動量を含む方向性信号を入力できるようにしている。
【0003】
また、同様に圧力センサを用いた操作デバイスとして、矩形の面板上の裏面側に、3つの支点に生ずる分力を検出する3個の力検出器を設け、それらの検出(荷重バランス)に基づいて押圧力を印加した点の座標を求めるようにした荷重検知型座標入力装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−104913号公報
【特許文献2】特開昭56−29777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、例えばスマートフォン等の情報機器のタッチパネルにおいて、画面の拡大、縮小を指示する場合の操作手法として、手指を2本使って拡げたり狭めたりする指間隔拡大縮小操作が採用されている。尚、このような指間隔拡大縮小操作を、「ピンチ操作」と呼ぶ呼び方も一般化されてきている。また、そのうち指の間隔を拡大する操作は、「ピンチアウト(ピンチオープン)」、指の間隔を縮小する操作が、「ピンチイン(ピンチクローズ)」と呼ばれている。
【0006】
上記した複数の圧力センサを用いて操作ノブの押圧操作位置を検出するようにした操作デバイスにおいては、従来では、操作ノブのいずれかの位置を押圧(傾動)操作して単純に4方向(或いは8方向)を選択するといった操作に止まり、タッチパネルにおける上記ピンチ操作のような操作を認識できるものは考えられていなかった。この種の操作デバイスにおいても、押圧操作に加えて、上記のようなピンチ操作を可能とすることができれば、1つの操作デバイスでできる操作の種類(数)が増え、有用性や便宜性をより高めることが可能となる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数個の圧力センサによって操作ノブの押圧操作位置を検出できる構成のものにあって、操作ノブの指間隔拡大縮小操作の認識をも行うことを可能とした操作デバイスを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の操作デバイスは、ベースと、このベースに支持されユーザが手指にて任意の位置を押圧操作可能な操作面を有する操作ノブと、前記ベース内に前記操作ノブの裏面側に前記操作面の仮想中心に対して円周方向に並んで設けられ該操作ノブの押圧操作力に応じた信号を出力する複数個の圧力センサと、前記操作面に前記複数個の圧力センサのうち特定の1個の圧力センサに対応した押圧部の表面側に位置して設けられた起点位置と、前記操作ノブの操作面に対するユーザの押圧操作位置を、前記複数個の圧力センサの出力信号から判定する第1の判定手段と、ユーザが1本の指で前記操作面の起点位置を押圧した状態で、別の指で該操作面を押したまま該起点位置に対して離間或いは接近方向に移動させる指間隔拡大縮小操作を判定する第2の判定手段とを備え、前記第2の判定手段は、前記特定の圧力センサから信号が出力されると共に、別の圧力センサの出力信号に時間経過に伴う変動があったときに、その出力信号の変化率から指間隔拡大縮小操作を判定するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の操作デバイスによれば、操作ノブの操作面のいずれかの位置がユーザによって押圧操作されると、操作ノブが、複数個の圧力センサに対し、ユーザの押圧位置に応じたバランスで荷重を作用させる。これにより、各圧力センサは、ユーザの押圧位置からの距離に応じた荷重を受けるので、第1の判定手段により、複数個の圧力センサの出力信号のバランスによって、操作ノブの押圧操作位置を検出することができる。
【0010】
ここで、ユーザが、操作ノブの操作面に対する指間隔拡大縮小操作を行う場合、1本の指(例えば親指)で操作面の起点位置を押圧し、その状態で、別の1本の指(例えば人差し指)で、操作面を押しながら押圧位置を起点位置から離間或いは接近する方向に移動させる。このとき、起点位置に対応した位置にある特定の圧力センサからは、1本の指で押された力(荷重)に応じた操作信号が出力され、これと共に、別の指によって押される位置に応じて、別のどちらかの圧力センサから、押圧操作位置及びその力に応じた操作信号が出力される。
【0011】
この場合、指間隔拡大縮小操作中にあって、起点位置に対応した特定の圧力センサの出力信号はさほど変動はないのに対し、別の指の移動に伴いつまり時間経過に伴って別の圧力センサの出力信号が変化するようになる。これにより、第2の判定手段は、特定の圧力センサから信号が出力されると共に、別の圧力センサの出力信号に時間経過に伴う変動があったときに、その出力信号の変化率から指間隔拡大縮小操作を判定することができる。従って、複数個の圧力センサによって操作ノブの押圧操作位置を検出できる構成のものにあって、操作ノブの指間隔拡大縮小操作の認識をも行うことを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、図3のI−I線に沿う操作デバイスの縦断右側面図
【図2】操作デバイスの分解斜視図
【図3】操作デバイスの平面図
【図4】圧力センサの内部構成を概略的に示す斜視図
【図5】電気的構成を概略的に示す図
【図6】ピンチ操作における指の動きを説明するための図
【図7】ピンチアウト操作が行われた場合(a)、及び、ピンチイン操作が行われた場合(b)の各圧力センサの出力信号の変化の様子を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図面を参照しながら説明する。本実施例では、操作デバイス1は、例えば、自動車のセンタコンソールやステアリングホイール部分に組込まれ、車載機器例えばカーナビゲーション装置の操作用として設けられている。まず、図1〜図3を参照して、本実施例に係る操作デバイス1の構成について述べる。尚、図面においては、便宜上、操作デバイス1を、操作ノブを上方に向けた状態で示しており、以下の説明で上下や前後左右といった方向をいう場合には、図1の状態を右側面とし、操作ノブの操作面が上方から押圧されるものとして説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、操作デバイス1は、合成樹脂製の矩形箱状をなすベースとしての下ケース2を備え、その下ケース2の上面部に蓋状の上ケース3を有している。これら下ケース2と上ケース3とが突合せられてケースが構成される。図3にも示すように、上ケース3には、円形開口部3aが形成されている。この上ケース3の円形開口部3a部分に、合成樹脂製の操作ノブ4が配置される。この操作ノブ4は、やや厚みのある円板状をなしていると共に、その下端部には、外周方向に水平に広がる薄板状の鍔状部4aを一体的に有している。この操作ノブ4の図で上面の円形領域が、ユーザが手指にて任意の位置を押圧操作可能な操作面5とされる。
【0015】
この操作ノブ4は、前記操作面5を円形開口部3aから上方に若干高さだけ突出させると共に、鍔状部4aによる上方への抜止めがなされた状態で、後述する伝達部等により、上ケース3内に弾性的に支持されている。このとき、操作ノブ4は、上下方向(押圧部6の押圧操作方向)に変位可能に設けられ、操作ノブ4は、通常時つまり操作ノブ4に対しユーザによる操作力が作用していない非操作状態で、図1に示すように、円形開口部3a内の中立位置、即ち後述する圧力センサに荷重を作用させない状態に位置される。
【0016】
そして、この操作ノブ4の裏面側(下面側)には、前記操作面5の外周寄り部分に対応した位置に、下方に突出するようにして、3個の押圧部6が一体的に設けられている。これら押圧部6は、下面が開口した径小な円筒状をなしており、後述する伝達部7を介して圧力センサに荷重を作用させるようになっている。これら押圧部6は、図3に示すように、操作ノブ4の操作面5の仮想中心(中心軸O)に対して、中心軸Oから同じ距離Rだけ離れた、つまり半径Rの円周上を円周方向に角度120度間隔で並んで、ここでは操作ノブ4の前部中央、右後寄り、左後寄りの3箇所に配置されている。
【0017】
一方、図1及び図2に示すように、下ケース2内の底部には、前記操作ノブ4の下方に位置して、配線基板8が設けられ、この配線基板8上に、複数個この場合3個の圧力センサ9が実装されている。図3にも示すように、これら3個の圧力センサ9は、前記3個の押圧部6に夫々対向して(真下に位置して)配設されており、従って、操作ノブ4の仮想中心軸Oから同等の距離Rにあって、円周方向に沿って3個が120度間隔(下ケース2の前部中央、右後寄り、左後寄りの3箇所)で並ぶように配置されている。
【0018】
これら圧力センサ9は、図4に一部示すように、半導体圧力センサチップ10と、その上面に配置されたスチールボール11と、それらを収容するパッケージとを備えて構成される。前記半導体圧力センサチップ10は、例えば単結晶シリコン基板の中央部裏面側をエッチングして薄肉なダイヤフラム部10aを形成すると共に、そのダイヤフラム部10aの表面部に検知回路等を形成して構成されている。
【0019】
周知のように、前記検知回路は、4個のピエゾ抵抗素子10b(3個のみ図示)をブリッジ接続して構成され、2個の入力端子間に一定の直流電圧が印加される。そして、ダイヤフラム部10aに作用する圧力によって該ダイヤフラム10aが歪み変形し、ピエゾ抵抗素子10bの抵抗値が変化することに応じて、2個の出力端子間の電圧が変動するように構成されている。前記スチールボール11は、ダイヤフラム部10a上に載置された状態とされ、このとき、スチールボール11の上端の一部が、図示しないパッケージの上面の円形孔から上方に露出(突出)している。
【0020】
これにより、圧力センサ9は、スチールボール11に上方から荷重(圧力)が作用すると、その荷重に応じた(比例した)電圧値の検出信号を出力するようになっている。尚、3個の圧力センサ9を区別する必要がある場合には、図3に示すように、操作ノブ4の前部中央に対応して配設されたものを圧力センサ9(A)、右後寄りに配設されたものを圧力センサ9(B)、左後寄りに配設されたものを圧力センサ9(C)と称して区別することとする。
【0021】
そして、図1、図2に示すように、前記操作ノブ4の押圧部6と圧力センサ9との間には、各押圧部6からの押圧力を各圧力センサ9に伝達するため伝達部7が夫々設けられる。また、上ケース3の内部(ケース内)には、それら伝達部7(次に述べる円筒部13の下半部)を保持するホルダ12が設けられている。このホルダ12は、3個の伝達部7(円筒部13)を夫々上下動可能(且つ上方への抜止め状態)に収容する3個の貫通孔部12aを、120度間隔で有する円板状をなし、前記下ケース2と上ケース3との間に挟まれるように設けられている。
【0022】
前記伝達部7は、底壁部13aが矩形板状とされた円筒状をなし上面が開口した比較的径大な円筒部13を有する。これと共に、円筒部13内には、前記底壁部13aの中心から上方に延びる突起部13bの周囲に遊嵌された動力伝達用の第2のばね(圧縮コイルばね)14が配置されている。更に、この第2のばね14の上部に被さるようにして、円筒状のキャップ部15が円筒部13内に上下方向に移動可能に配置されている。
【0023】
このとき、キャップ部15の上面中心部には、上方に延びる突起部15aが一体に設けられており、前記操作ノブ4の各押圧部6が、キャップ部15の上面からやや浮き上がった状態で、各突起部15aに被さるように配置されている。そして、突起部15aの周囲に遊嵌するようにして、押圧部6の内周面との間に、予圧用の第1のばね(圧縮コイルばね)16が配設されている。この第1のばね16は、前記第2のばね14に比べて、比較的小型(径小)でばね力が小さいものとなっている。前記各円筒部13の底壁部13aの下面が、各圧力センサ9のスチールボール11上に載置されている。
【0024】
これにて、通常時(ユーザによる押圧操作が無い状態)では、操作ノブ4は、第2のばね14及び第1のばね16のばね力により中立位置に保持され、その位置から、軸方向即ち図1で下方に押圧操作可能に設けられている。また、ユーザによる操作ノブ4(操作面5)の押圧操作力が解除されると、第2のばね14及び第1のばね16のばね力により、操作ノブ4は中立位置に戻される。尚、この場合、3個の第1のばね16により、各圧力センサ9に均一に予圧をかけることができる。
【0025】
前記操作ノブ4(操作面5のいずれかの位置)が押圧操作されると、その押圧力が押圧部6及び伝達部7を介して3個の圧力センサ9に伝達される。この際、まず、ばね力の小さい方の第1のばね16が圧縮され、押圧部6の下面がキャップ部15の上面に接触した後、キャップ部15を介してばね力の大きい第2のばね14に力が加わって圧縮されることにより、円筒部13の底壁部13aを介して圧力センサ9に荷重が作用するようになる。このとき、3個の各圧力センサ9には、操作ノブ4のうちの押圧操作位置(中心軸Oからの距離)に応じたバランスで(近いものほど大きく、遠いものほど小さく)荷重が作用するようになる。
【0026】
尚、この場合、圧力センサ9のスチールボール11については、ほとんど上下動のストロークはないが、伝達部7に第2のばね14(及び第1のばね16)を有していることにより、押圧部6の下方への変位量(ストローク)がある程度大きくなっても、第2のばね14(及び第1のばね16)を圧縮させながら、荷重を圧力センサ9に伝達することができる。そのため、操作ノブ4の一定の操作ストロークを確保することができ、ユーザにとっての操作感を高めることができる。
【0027】
さて、図5に示すように、上記操作デバイス1の3個の圧力センサ9の検出信号は、A/D変換回路17を介して、車載機器(例えばカーナビゲーションシステム)の制御用のコンピュータ(CPU)18に入力される。前記コンピュータ18は、上記のように、各圧力センサ9のからの入力信号に基づき、それら3個の圧力センサ9に作用した荷重バランスから、操作ノブ4の操作面5の押圧操作位置(例えば前後左右及び斜めの8方向或いはそれに中央を加えた9方向)を検出(算出)する。従って、コンピュータ18が、操作面5に対する押圧操作位置を判定する第1の判定手段としての機能を有する。
【0028】
そして、本実施例では、コンピュータ18は、そのソフトウエア構成により、上記した押圧操作位置の判定に加えて、ユーザによる、操作面5に対して手指を2本載せてそれらを拡げる或いは狭めるようにした指間隔拡大縮小操作(以下「ピンチ操作」という)を判定するようになっており、第2の判定手段としても機能する。このとき、前記操作面5に対するピンチ操作の検出(判定)を実現するために、図1、図3に示すように、操作ノブ4の操作面5のうち、特定の1つの圧力センサ9、この場合前部中央に位置する圧力センサ9(A)に対応した押圧部6の表面側に位置して、起点位置としての凸部19が設けられている。
【0029】
図6に示すように、本実施例では、ピンチ操作として、1本の指(例えば親指)で前記凸部19を押圧しながら、別の1本の指(例えば人差し指)を凸部19の近くに載せ(図6(a)の状態)、図6(b)に矢印Dで示すように、この後に別の1本の指を凸部19から離間する方向(後方)にスライド移動させるようにする操作即ち指間隔拡大操作(以下「ピンチアウト操作」という)、及び、1本の指(例えば親指)で前記凸部19を押圧しながら、別の1本の指(例えば人差し指)を凸部19から後方に離れた位置に載せた(図6(b)の状態)後に、図6(a)に矢印Eで示すように、接近する方向(前方)にスライド移動させる操作即ち指間隔縮小操作(以下「ピンチイン操作」という)が可能となっている。
【0030】
コンピュータ18は、前記特定の圧力センサ9(A)から所定の基準電圧(しきい値S)以上の信号が出力され、その出力信号が維持されたままで、別の圧力センサ9(B)、9(C)の一方又は双方からの出力信号に、時間経過に伴う変動があったときに、その出力信号の変化率からピンチ操作を判定するようになっている。ここで、図7は、操作ノブ4の操作面5に対するピンチアウト操作を行なった場合(a)、及び、ピンチイン操作を行った場合(b)における、圧力センサ9(A)と、圧力センサ9(B)、9(C)との時間経過に伴う出力信号の変化の様子を示している。
【0031】
即ち、図7(a)に示すように、ユーザによりピンチアウト操作が行なわれると、まず、2本の指(親指及び人差し指)によって、凸部19及びその後側近傍が押圧されるので、時刻t0において、圧力センサ9(A)から比較的大きな信号が出力され、圧力センサ9(B)、9(C)からは、比較的小さな、但ししきい値S以上の信号が出力される。これらの信号はユーザが人差し指のスライド移動を開始する時刻t1まで維持され、時刻t1における、圧力センサ9(A)の出力値をa1、圧力センサ9(B)の出力値(圧力センサ9(C)についてもほぼ同じ)をb1とする。
【0032】
時刻t1からユーザが人差し指の後方(矢印D方向)へのスライド移動操作を行うと、操作面5の押圧操作位置が後方に次第に移動し圧力センサ9(B)、9(C)に接近していくので、一定時間後の時刻t2まで、圧力センサ9(B)、9(C)の信号が次第に上昇する。この間は、親指は、凸部19上にあるので、圧力センサ9(A)の出力はほぼ一定を維持する或いは僅かに減少する。時刻t2における、圧力センサ9(A)の出力値をa2、圧力センサ9(B)の出力値(圧力センサ9(C)についてもほぼ同じ)をb2とする。
【0033】
一方、図7(b)に示すように、ユーザによりピンチイン操作が行なわれると、まず、親指により凸部19が押圧されると共に、人差し指にて操作面5の後方寄り部分つまり圧力センサ9(B)、9(C)に比較的近い部分が押圧されるので、時刻t0において、圧力センサ9(A)から比較的大きな信号が出力され、圧力センサ9(B)、9(C)からそれよりやや小さい信号が出力される。これらの信号はユーザが人差し指のスライド移動を開始する時刻t1まで維持され(出力値a1、b1)、時刻t1からユーザが人差し指の前方(矢印E方向)へのスライド移動操作を行うと、操作面5の押圧操作位置が前方に次第に移動し圧力センサ9(B)、9(C)から離間していくので、一定時間後の時刻t2まで、圧力センサ9(B)、9(C)の信号が次第に減少する。この間は、親指は、凸部19上にあるので、圧力センサ9(A)の出力はほぼ一定を維持する或いは僅かに減少する(出力値a2、b2)。
【0034】
コンピュータ18は、時刻t1から時刻t2までの所定時間(Δt)における、各圧力センサ9の出力の変化度合い((a2−a1)/Δt、(b2−b1)/Δt)に基づいて、ピンチ操作の判定を行う。即ち、時刻t1から時刻t2まで、特定の圧力センサ9(A)の出力(a1、a2)が一定である或いは緩やかに減少しており、且つ、別の圧力センサ9(B)、9(C)の出力(b1、b2)が、所定の変化率以上で増加しているときに、ピンチアウト操作があったと判定する。これに対し、時刻t1から時刻t2まで、特定の圧力センサ9(A)の出力(a1、a2)が一定である或いは緩やかに減少しており、且つ、別の圧力センサ9(B)、9(C)の出力(b1、b2)が、しきい値S以上であって所定の変化率以上で減少しているときに、ピンチイン操作があったと判定する。
【0035】
尚、時刻t2の時点において、圧力センサ9(A)、9(B)、9(C)の出力(a2,b2)が、しきい値Sよりも低下していた場合には、コンピュータ18は、操作ノブ4の操作面5の1箇所に対する単純な押圧操作(ピンチ操作でない操作)が行われたと判断する。また、コンピュータ18は、操作面5に対するピンチ操作があったと判断した場合に、そのピンチ操作に応じて、車載機器の制御、例えばカーナビゲーションの表示画面における地図縮尺の変更を行うようになっている。
【0036】
次に、上記構成の作用について述べる。上記のように構成された操作デバイス1においては、ユーザにより操作ノブ4の操作面5のいずれかの位置が押圧操作されると、その際の押圧力が、操作ノブ4の裏面の押圧部6から伝達部7を介して3個の圧力センサ9に対して荷重として伝達される。この場合、3個の圧力センサ9は、ユーザの操作ノブ4の操作面5の押圧操作位置(押圧操作位置からの距離)に応じた荷重バランスで荷重(圧力)を受け、夫々検出信号を出力する。
【0037】
それら3個の圧力センサ9からの検出信号は、A/D変換回路17を介してコンピュータ18に入力され、コンピュータ18は、3個の圧力センサ9の検出した荷重(出力信号)のバランスに基づいて、操作ノブ4の押圧操作位置を検出(計算)することができる(第1の判定手段)。このとき、通常のユーザの指による押圧操作では、圧力センサ9の出力信号は短時間で(時刻t2に至る前に)低下して0(しきい値S未満)になる。或いは、ユーザが操作ノブ4の一箇所を押し続けた場合には、信号出力が続くことも考えられるが、その際の信号の変化率は小さいので、後述するピンチ操作との区別ができる。
【0038】
コンピュータ18は、検出した操作ノブ4の操作面5の押圧操作位置に応じて、車載機器例えばカーナビゲーションシステム等を制御する。この場合、操作ノブ4の操作面5の操作位置を、例えば前後左右の4方向(中央を含めた5箇所)、或いはそれらに斜めを加えた8方向(更に中央を含めた9箇所)について検出(判定)する構成とすることができる。尚、本実施例の押圧部6及び伝達部7の構成では、第1のばね16によって各圧力センサ9に均等に予圧をかけることができる。また、第2のばね14によって操作ノブ4の操作ストロークを確保することができ、ユーザにとっての操作感を良好とすることができる。
【0039】
一方、ユーザにより、操作ノブ4の操作面5に対するピンチ操作、つまり、1本の指(例えば親指)で凸部19を押圧しながら、別の1本の指(例えば人差し指)で操作面5を押したまま前記凸部19に対して離間(ピンチアウト)或いは接近(ピンチイン)方向に移動させる操作があった場合には、上述したように、3個の圧力センサ9(A)、9(B)、9(C)からの出力信号は、ピンチアウト操作(図7(a)参照)、及び、ピンチイン操作(図7(b)参照)の夫々について、その操作に応じた挙動となる。
【0040】
コンピュータ18は、それら3個の圧力センサ9(A)、9(B)、9(C)からの出力信号の挙動、即ち、時刻t1から時刻t2までの間で、起点位置(凸部19)に対応した特定の圧力センサ9(A)からの出力信号(a1、a2)についてはさほど変動はないのに対し、別の圧力センサ9(B)、9(C)の出力信号(b1、b2)が変動することに基づいて、ピンチ操作を判定する(第2の判定手段)。
【0041】
このとき、コンピュータ18は、時刻t1から時刻t2までの間で、別の圧力センサ9(B)、9(C)の出力(b1、b2)が、所定の変化率以上で増加しているときに、ピンチアウト操作があったと判定し(図7(a)参照)、別の圧力センサ9(B)、9(C)の出力(b1、b2)が、しきい値S以上であって所定の変化率以上で減少しているときに、ピンチイン操作があったと判定することができる(図7(b)参照)。
【0042】
このように本実施例によれば、3個の圧力センサ9に作用する荷重バランスによって操作ノブ4の操作面5の押圧操作位置を検出できる構成の操作デバイス1にあって、操作面5におけるピンチ操作の認識(判断)をも行うことを可能とすることができる。この場合、操作ノブ4に対するピンチ操作と1箇所の押圧操作と区別を確実に行うことができることは勿論、ピンチアウト操作、ピンチイン操作の判定も行なうことができ、ひいては、1つの操作デバイス1でできる操作の種類(数)が増え、有用性や便宜性をより高めることができる。
【0043】
また、本実施例では、圧力センサ9(並びに押圧部6及び伝達部7)を円周方向に沿って120度間隔で3個設けるようにしたので、圧力センサ9の個数が少なく(最小で)済み、操作デバイス1全体として簡単で安価な構成で済ませることができる。更に、特に本実施例では、伝達部7を設け、押圧部6からの操作力を第1のばね16及び第2のばね14を介して圧力センサ9に伝達する構成としたので、ユーザにおける操作感を良好とすることができるといった利点も得ることができる。
【0044】
尚、上記実施例では、押圧部6の押圧操作力を圧力センサ9に伝達する伝達部7を設けるようにしたが、伝達部7を省略して、押圧部6の力が圧力センサ9(スチールボール11)に直接的に作用するような構成としても良い。伝達部7を省略する場合、操作ノブ4を、上ケース3に対して複数のコイルばねにより弾性的に支持する構成とすることができる。また、伝達部を設ける場合においても、コイルばね14,16に代えて板ばねを採用するといった変更が可能である。さらに、押圧部を省略して、操作ノブ4の押圧操作力を直接的に圧力センサ9に作用させる構成とすることもできる。
【0045】
そして、上記実施例では、操作ノブ4の操作面5の起点位置に凸部19を設けるようにしたが、凸部に代えて起点位置に凹部を設けても良く、更には、起点位置を示すマークを印刷等により表示する構成であっても良い。圧力センサは、3個に限らず、4個以上設けるようにしても良い。その他、上下のケース(ベース)やホルダ、操作ノブ、操作面の形状、操作ノブの支持構造、圧力センサの構造などの具体的構造についても、様々な変形が可能である。また、上記実施例では、本発明の操作デバイスを自動車のナビゲーションシステム等の車載機器の操作用に適用したが、それ以外にも各種の用途に適用することが可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1は操作デバイス、2は下ケース(ベース)、4は操作ノブ、5は操作面、6は押圧部、7は伝達部、9は圧力センサ、14は第2のばね、16は第1のばね、18はコンピュータ(第1の判定手段、第2の判定手段)、19は凸部(起点位置)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
このベースに支持されユーザが手指にて任意の位置を押圧操作可能な操作面を有する操作ノブと、
前記ベース内に前記操作ノブの裏面側に前記操作面の仮想中心に対して円周方向に並んで設けられ該操作ノブの押圧操作力に応じた信号を出力する複数個の圧力センサと、
前記操作面に、前記複数個の圧力センサのうち特定の1個の圧力センサに対応した押圧部の表面側に位置して設けられた起点位置と、
前記操作ノブの操作面に対するユーザの押圧操作位置を、前記複数個の圧力センサの出力信号から判定する第1の判定手段と、
ユーザが1本の指で前記操作面の起点位置を押圧した状態で、別の指で該操作面を押したまま該起点位置に対して離間或いは接近方向に移動させる指間隔拡大縮小操作を判定する第2の判定手段とを備え、
前記第2の判定手段は、前記特定の圧力センサから信号が出力されると共に、別の圧力センサの出力信号に時間経過に伴う変動があったときに、その出力信号の変化率から指間隔拡大縮小操作を判定することを特徴とする操作デバイス。
【請求項2】
前記第2の判定手段は、前記別の圧力センサからの出力信号が、所定の変化率以上で増加したときに指間隔拡大操作があったと判定し、所定の変化率以上で減少したときに指間隔縮小操作があったと判定することを特徴とする請求項1記載の操作デバイス。
【請求項3】
前記圧力センサは、前記操作面の仮想中心に対して円周方向に120度間隔で並んで3個が設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の操作デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate