説明

操作レバーのグリップ

【課題】硬質のインナーグリップの外周側に軟質のアウターグリップが設けられる構成のグリップを、製造誤差に拘らず操作レバー本体に対して適切に嵌合できるとともに、がたつきを生じることなく適切に装着できるようにする。
【解決手段】硬質のインナーグリップ22が半円筒形状の一対の半割体26、28にて構成されており、その半割体26、28が円筒形状に組み合わされた状態で軟質のアウターグリップ24が成形されることにより、アウターグリップ24の内側にインナーグリップ22が一体的に保持されるとともに、アウターグリップ24が弾性変形させられることにより半割体26、28が拡径方向へ変位することが許容される。これにより、製造誤差に拘らず操作レバー本体12にグリップ10を適切に嵌合できるとともに、装着状態においては先端部18の外周面にインナーグリップ22や密着部44、46が確実に密着させられるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操作レバーのグリップに係り、特に、筒形状のインナーグリップの外周側に軟質のアウターグリップが設けられ、操作レバー本体の先端部に嵌合されて一体的に装着されるグリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーキングブレーキ用操作レバー等の操作レバーの先端部に装着されるグリップの一種に、比較的硬質の筒形状のインナーグリップの外周側にそのインナーグリップよりも軟質の合成樹脂材料から成るアウターグリップが設けられ、操作レバー本体の先端部の外周側に嵌合されて一体的に装着されるものが知られている。特許文献1に記載のグリップはその一例で、インナーグリップ(芯材)は硬質樹脂や金属等によって構成され、アウターグリップは軟質樹脂等によって構成されており、溶着やインサート成形等により互いに一体的に固着されて、インナーグリップがビスにより操作レバー本体に一体的に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−7564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の操作レバーのグリップは、比較的硬質のインナーグリップ(芯材)が一体に構成されていて拡径できないため、製造誤差などで操作レバー本体に嵌合できなくなる恐れがある。製造誤差を考慮してインナーグリップの内径寸法を大き目に設定すると、操作レバー本体との間に隙間ができて、グリップががたついて操作フィーリングが悪くなる可能性がある。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、硬質のインナーグリップの外周側に軟質のアウターグリップが設けられる構成のグリップを、製造誤差に拘らず操作レバー本体に対して適切に嵌合できるとともに、操作レバー本体に対してがたつきを生じることなく適切に装着できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、筒形状のインナーグリップの外周側にそのインナーグリップよりも軟質の合成樹脂材料から成るアウターグリップが設けられ、操作レバー本体の先端部の外周側に嵌合されて一体的に装着されるグリップにおいて、(a) 前記インナーグリップは、前記筒形状の軸方向に定められた複数の分割線に沿って分割された複数の分割体にて構成されており、(b) その複数の分割体を前記筒形状に組み合わせた状態で、その外周側を覆蓋するように前記アウターグリップが成形されることにより、そのアウターグリップの弾性変形でその分割体が拡径方向への変位可能にそのアウターグリップの内側にその分割体が保持されていることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の操作レバーのグリップにおいて、(a) 前記複数の分割体の少なくとも一部には、前記筒形状の内側へ突き出す係止部が設けられ、前記操作レバー本体に設けられた係止穴に係止されることにより、その操作レバー本体から抜け出すことが防止される一方、(b) 前記操作レバー本体に嵌合される際には、前記アウターグリップが弾性変形させられることにより、前記分割体が拡径方向へ変位して前記係止部がその操作レバー本体の外周面に乗り上げることが許容されることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明または第2発明の操作レバーのグリップにおいて、前記複数の分割体の周方向の両側部には、それぞれその周方向に突き出す薄肉部が設けられており、その複数の分割体が前記筒形状に組み合わされる際にその薄肉部が互いに重ね合わされることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの操作レバーのグリップにおいて、前記複数の分割体の少なくとも一部には前記筒形状の内外に貫通する貫通穴が設けられ、前記アウターグリップが成形される際に前記合成樹脂材料がその貫通穴内に充填されることにより、その分割体の内周面よりも内側へ突き出す密着部がそのアウターグリップに一体に設けられており、前記操作レバー本体に嵌合されて装着されることによりその密着部がその操作レバー本体の外周面に密着させられることを特徴とする。
【0010】
第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの操作レバーのグリップにおいて、前記インナーグリップの外周面には外周側へ突き出す多数の凸部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような操作レバーのグリップにおいては、比較的硬質のインナーグリップが軸方向に定められた複数の分割線に沿って分割された複数の分割体にて構成されており、その複数の分割体が筒形状に組み合わされた状態で軟質のアウターグリップが成形されることにより、そのアウターグリップの内側にインナーグリップが保持されるとともに、軟質のアウターグリップが弾性変形させられることにより複数の分割体が拡径方向へ変位することが許容される。これにより、製造誤差に拘らずインナーグリップの拡径で操作レバー本体に対してグリップを適切に嵌合できるとともに、装着状態においては操作レバー本体の外周面にインナーグリップが密着させられるようにすることが可能で、グリップのがたつきを抑制して操作フィーリングを向上させることができる。
【0012】
第2発明のグリップは、複数の分割体の少なくとも一部に内側へ突き出す係止部が設けられ、操作レバー本体に設けられた係止穴に係止されることによりその操作レバー本体からの抜出しが防止されるため、ビス等の別体の固定部材が不要となり、組付作業が容易になるとともに安価に構成される。特に、グリップを操作レバー本体に嵌合する際には、アウターグリップが弾性変形させられることにより分割体が拡径方向へ変位して係止部が操作レバー本体の外周面に乗り上げることが許容されるため、係止部の存在に拘らずグリップを操作レバー本体に対して容易に嵌合して組み付けることができる。
【0013】
また、筒形状のインナーグリップの内周面に係止部を設ける場合、比較的硬質の合成樹脂材料で成形するとアンダーカットになるが、本発明ではインナーグリップが軸方向の分割線に沿って複数に分割されているため、その複数の分割体を硬質の合成樹脂材料にて構成する場合でも、係止部の存在に拘らずアンダーカットを生じることなく容易に成形できる。
【0014】
第3発明では、複数の分割体の周方向の両側部にそれぞれ薄肉部が設けられ、複数の分割体が筒形状に組み合わされる際にその薄肉部が互いに重ね合わされるようになっているため、アウターグリップを成形する際の分割体の位置決めが容易である。また、操作レバー本体に嵌合する際にアウターグリップの弾性変形で分割体が拡径方向へ変位する場合でも、薄肉部の係合で複数の分割体の位置ずれが抑制されるため、第2発明のように係止部が係止穴に達してグリップが縮径する場合を含めてグリップ形状が良好に維持されるとともに、組付作業が容易になる。
【0015】
第4発明では、複数の分割体の少なくとも一部に貫通穴が設けられ、アウターグリップが成形される際に合成樹脂材料がその貫通穴内に充填されることにより、分割体の内周面よりも内側へ突き出す密着部がそのアウターグリップに一体に設けられ、操作レバー本体への装着状態においてその操作レバー本体の外周面に密着させられるため、操作フィーリングが一層向上する。すなわち、比較的軟質の合成樹脂材料にて構成されている密着部が操作レバー本体に密着させられるため、硬質のインナーグリップ(分割体)のみが操作レバー本体に接触している場合に比較してグリップが弾性的に操作レバーに装着されるようになり、がたつき等が一層確実に抑制されるのである。
【0016】
第5発明では、インナーグリップの外周面に多数の凸部が設けられているため、グリップを把持した場合に、軟質のアウターグリップを介して多数の凸部により手のひらや指に刺激が加えられ、マッサージ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例であるグリップが装着されたパーキングブレーキ用の操作レバーの先端部分を示す図で、(a) は車両の右側から見た側面断面図、(b) は(a) におけるIB−IB断面の拡大図、(c) は(a) におけるIC−IC断面の拡大図、(d) は(a) におけるID−ID断面の拡大図である。
【図2】図1の実施例において操作レバー本体に装着される前のグリップを単独で示す図で、(a) は側面断面図、(b) は(a) における IIB−IIB 断面の拡大図、(c) は(a) における IIC−IIC 断面の拡大図、(d) は(a) における IID−IID 断面の拡大図である。
【図3】図1の実施例におけるインナーグリップを説明する図で、(a) はインナーグリップを構成している半割体の斜視図、(b) は一対の半割体を円筒形状に組み合わせた状態の斜視図である。
【図4】図2のグリップを操作レバー本体に嵌合する際に係止爪が操作レバー本体の外周面に乗り上げた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施例を説明する図で、(a) は車両の右側から見た側面断面図、(b) は(a) におけるVB−VB断面の拡大図であり、それぞれ図1の(a) 、(c) に対応する。
【図6】図5の実施例において操作レバー本体に装着される前のグリップを単独で示す図で、(a) は側面断面図、(b) は(a) における VIB−VIB 断面の拡大図であり、それぞれ図2の(a) 、(c) に対応する。
【図7】図5の実施例においてインナーグリップを構成している半割体の斜視図である。
【図8】本発明の更に別の実施例を説明する図で、図1の(b) に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、例えば運転席横のセンターコンソール部分に配設されてパーキングブレーキの非作動時に先端把持部が略水平な姿勢とされるパーキングブレーキ用の操作レバーに好適に適用されるが、運転席前方のインストルメントパネル下部等に把持部が上向きとなる姿勢で略垂直に配設されるパーキングブレーキ用の操作レバーや、シフトレバー等の車両用の他の操作レバー、或いは車両用以外の操作レバーにも適用され得る。操作レバー本体の先端部(グリップが装着される部分)は、例えば金属の筒体等によって構成されるが、中実の厚板材などであっても良い。グリップは、操作レバー本体の先端を塞ぐように有底筒形状とすることもできるが、軸方向の両端が開口している筒形状で操作レバーの先端側が開口していても良い。
【0019】
インナーグリップを構成する複数の分割体は、アウターグリップよりも硬質で、ポリプロピレンや硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂材料が好適に用いられるが、金属等の他の材料製であっても良い。アウターグリップとしては、軟質ポリ塩化ビニルや熱可塑性エラストマー等の合成樹脂材料が用いられる。インナーグリップを構成する複数の分割体としては、軸心と平行に略二分割した半円筒形状等の半割体が適当であるが、3分割以上に分割することも可能である。また、必ずしも軸心と平行に分割する必要はなく、軸心まわりに捩じれた分割線や櫛歯状或いは波形状等の分割線に沿って分割することも可能である。複数の分割体は、例えば第2発明の係止部や第3発明の薄肉部、第4発明の貫通穴、第5発明の多数の凸部を含めて、完全に同一形状とすることも可能であるが、係止部や貫通穴の有無、薄肉部の位置など部分的に形状が相違している場合でも良い。
【0020】
アウターグリップは、成形と同時に複数の分割体に溶着等により一体的に固着されるようにすることもできるが、逆に分割体に固着されることなく単に複数の分割体が筒形状に維持されるように保持するだけでも良い。或いは複数の分割体に設けられた切欠等にアウターグリップの合成樹脂材料が回り込んで硬化することにより、固着されることなく分割体に離脱不能に結合されるようにすることもできる。アウターグリップが分割体に固着されない場合、アウターグリップの弾性変形による分割体の拡径方向の変位が一層容易になるとともに、アウターグリップを切断することにより両者を容易に分離できてリサイクルが容易になる。
【0021】
インナーグリップの筒形状は、操作レバー本体の先端部形状に応じて設定され、例えば断面が円形或いは楕円形等の円筒形状が一般的であるが、断面四角形等の角筒形状とすることも可能である。インナーグリップすなわち複数の分割体は、例えば内周面が操作レバー本体の外周面に接触するようにその操作レバー本体の先端部に嵌合されるが、第4発明のようにアウターグリップに密着部が設けられる場合には、操作レバー本体とインナーグリップとの間に所定の隙間があっても差し支えない。密着部は、インナーグリップに設けられた貫通穴部分に設けられるだけでなく、筒形状のインナーグリップの長手方向の両端部の外側に設けたり、その外側からインナーグリップと操作レバー本体との間の隙間に侵入するように設けたりすることも可能である。インナーグリップに設けられる貫通穴は、一定の大きさで設けることもできるが、内周面に開口する側に連続して溝状や座ぐり穴状等の切欠が設けられ、合成樹脂材料がその切欠内に回り込んで硬化することにより、インナーグリップとアウターグリップとが一体的に結合されるようにすることもできる。
【0022】
第2発明では分割体に内側へ突き出す係止部が設けられ、操作レバー本体の係止穴に係止されるようになっているが、この係止部としては、グリップを操作レバー本体に嵌合する際に係止部が容易に操作レバー本体の外周面に乗り上げることができるように、嵌合方向の前側に傾斜部を有する鋸歯のような係止爪が適当である。第1発明の実施に際しては、例えば金属製の操作レバー本体の筒形状の先端部の一部を切り欠いて外側へ曲げ起こすなどして外側へ突き出す係止部を設け、分割体に設けられた係止穴に係止されることにより、グリップを抜け止めする係止構造を採用することもできる。すなわち、(a) 前記複数の分割体の少なくとも一部および操作レバー本体の何れか一方に係止部が設けられ、該分割体および該操作レバー本体の他方に設けられた係止穴に係止されることにより、グリップが操作レバー本体から抜け出すことが防止される一方、(b) 該グリップが該操作レバー本体に嵌合される際には、前記アウターグリップが弾性変形させられることにより前記分割体が拡径方向へ変位し、該分割体に設けられた係止部が該操作レバー本体の外周面に乗り上げ、或いは該操作レバー本体に設けられた係止部に該分割体が乗り上げることが許容されるように構成することもできる。
【0023】
第2発明では、インナーグリップを構成する分割体に係止部が設けられるが、第1発明の実施に際しては、分割体に筒形状の内外に貫通する開口部を設けるとともに、その開口部を介して分割体の内周面よりも内側へ突き出す係止部をアウターグリップに一体に設け、操作レバー本体の係止穴に係止されるようにしても良い。なお、操作レバーの使用態様によっては、このような係止部や係止穴を設けることなく、単にグリップを操作レバー本体に対して圧入して組み付けるだけでも良いし、接着剤で固着したりビス等の固定部材で固定したりすることも可能で、それ等を併用することもできる。
【0024】
第3発明では、複数の分割体の周方向の両側部に薄肉部が設けられ、筒形状に組み合わされる際にその薄肉部が互いに重ね合わされるようになっているが、他の発明の実施に際しては薄肉部を設けることなく単に両側部を突き合わせるだけでも良い。薄肉部は、筒形状に組み合わされる際に重ね合わされることにより、分割体の他の部分(本体部分)の肉厚と同じ厚さになるように、その肉厚を設定することが望ましく、例えば本体部分の肉厚の1/2が適当である。この薄肉部は、例えば分割体の軸方向の全長に亘って設けられるが、櫛歯状など軸方向の一部に設けるだけでも良い。薄肉部の高さ寸法(周方向の突出寸法)は、例えば第2発明の係止部が操作レバー本体の外周面に乗り上げて分割体が拡径方向へ変位したり、或いは各部の寸法誤差等により分割体が拡径方向へ変位したりした場合に、互いに重ね合わされた薄肉部同士の係合が維持されるように定めることが望ましい。薄肉部が互いに重ね合わされる接触面(摺動面)は、例えばインナーグリップが円筒形状の場合にその円弧に沿って湾曲していても良いが、分割体が2分割した半割体などでは、拡径方向(一対の半割体が互いに離間する方向)への変位を容易にするために拡径方向(離間方向)と平行な平坦面とすることも可能である。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるグリップ10が操作レバー本体12に装着されたパーキングブレーキ用の操作レバー14を説明する図で、(a) は操作レバー14の先端部分を車両右側から見た側面断面図、(b) は(a) におけるIB−IB断面の拡大図、(c) は(a) におけるIC−IC断面の拡大図、(d) は(a) におけるID−ID断面の拡大図である。また、図2は、図1の実施例において操作レバー本体12に装着される前のグリップ10を単独で示す図で、(a) は側面断面図、(b) は(a) における IIB−IIB 断面の拡大図、(c) は(a) における IIC−IIC 断面の拡大図、(d) は(a) における IID−IID 断面の拡大図である。
【0026】
この操作レバー14は運転席横のセンターコンソール部分に配設されるもので、操作レバー本体12は、図1(a) における左側に位置する図示しない基端部が支持部材(セクタなど)によって略水平な支持軸心まわりに回動可能に支持されているとともに、円筒形状の先端部18にグリップ10が一体的に装着されることにより、運転者によって把持される把持部20が構成されている。そして、パーキングブレーキの非作動時には、図1の(a) に示すように把持部20が車両の前方側(図の右方向)へ略水平に突き出す原位置に保持される一方、運転者により把持部20が把持されて白抜き矢印Aで示すように上方へ引き起こされ、支持軸心の左まわりに回動操作されることにより、図示しないブレーキケーブルを引張してパーキングブレーキを作動させる。操作レバー本体12は、金属板材を丸めたり金属パイプを用いたりして構成されている。なお、図示は省略するが、操作レバー本体12の先端には、パーキングブレーキを解除する際に押込み操作されるレリーズノブが円筒形状のグリップ10の先端から突き出すように配設されるとともに、操作レバー本体12の内部にはポールやラチェット、レリーズロッド等が配設される。
【0027】
グリップ10は、円筒形状のインナーグリップ22の外周側に、そのインナーグリップ22よりも軟質の合成樹脂材料から成るアウターグリップ24が一体的に設けられたもので、操作レバー本体12の先端部18の外周側に嵌合されて一体的に装着されている。アウターグリップ24は例えば軟質のポリ塩化ビニルや熱可塑性エラストマー等によって構成されており、インナーグリップ22は、アウターグリップ24よりも硬質の合成樹脂材料、例えば硬質のポリ塩化ビニルやポリプロピレン等によって構成されている。
【0028】
インナーグリップ22は、円筒形状の軸心に対して対称的な2位置に軸心と平行に定められた一対の分割線に沿って半分ずつに分割した半円筒形状の一対の半割体26、28によって構成されている。図3の(a) は、それ等の半割体26、28を示す斜視図で、完全に同一形状であり、半円筒形状の周方向の両側の側端縁には、それぞれ周方向に突き出す薄肉部30、32が軸方向の全長に亘って設けられている。薄肉部30、32は、半割体26、28の本体部分の肉厚の約1/2の厚さで、一方の薄肉部30は外周面に連続して設けられている一方、他方の薄肉部32は内周面に連続して設けられており、図3の(b) に示すように一対の半割体26、28が円筒形状に組み合わされることにより、それ等の薄肉部30、32が互いに重ね合わされるようになっている。そして、図3の(b) に示すように一対の半割体26、28を円筒形状に組み合わせた状態で、その外周側を覆蓋するようにアウターグリップ24が成形されることにより、そのアウターグリップ24の内側にインナーグリップ22が一体的に保持されたグリップ10が構成されている。このようにインナーグリップ22が一対の半割体26、28によって構成されることにより、アウターグリップ24の弾性変形で一対の半割体26、28が図4に白抜き矢印Bで示す拡径方向、すなわち一対の半割体26、28が互いに離間する図4の上下方向へ変位することが許容される。一対の半割体26、28は複数の分割体に相当するが、本実施例では両者が同一形状であるため、製造コストが低減されるとともに保管や管理が容易になる。
【0029】
上記アウターグリップ24は、成形と同時に一対の半割体26、28の外周面等に溶着などで一体的に固着されるようにすることもできるが、逆に半割体26、28に固着されることなく単にそれ等の分割体26、28が円筒形状に維持されるように保持するだけでも良い。アウターグリップ24が半割体26、28に固着されない場合、アウターグリップ24の弾性変形による半割体26、28の拡径方向の変位が一層容易になるとともに、廃車時等にはアウターグリップ24を切断することにより両者を容易に分離できてリサイクルが容易になる。また、このように一対の半割体26、28から成るインナーグリップ22とアウターグリップ24とでグリップ10が構成されることにより、グリップ10の厚肉設計が回避されるとともに、インナーグリップ22については複数の車種に共通で用いる一方、アウターグリップ24については車種毎に意匠形状を変更することにより、部品の共通化によるコストダウンを図ることができる。
【0030】
上記一対の半割体26、28には、半円筒形状の内外に貫通するようにU字形(実施例では回曲部分が角張ったコの字形)の切欠34が設けられ、その内側に軸方向と平行に係止爪36が片持ち状に残されている。係止爪36の先端には、半円筒形状の内周面よりも内側へ突き出すとともに、操作レバー本体12の先端部18に嵌合される際の嵌合方向の前側に傾斜部を有する鋸歯状の爪部38が設けられており、操作レバー本体12の先端部18に設けられた係止穴40に係止されるようになっている。これにより、グリップ10が操作レバー本体12の先端部18から先端側(図1(a) における右方向)へ抜け出すことが防止される。
【0031】
前記図4は、グリップ10を図1(a) における右方向すなわち操作レバー14の先端側から操作レバー本体12の先端部18に嵌合する際に、上記爪部38が係止穴40に達する前で、爪部38が先端部18の外周面上に乗り上げて、インナーグリップ22がアウターグリップ24を弾性変形させつつ上下方向へ拡径させられた状態である。本実施例では片持ち状の係止爪36の先端に爪部38が設けられているため、係止爪36の撓み変形によっても爪部38が外周側へ変位し、一対の半割体26、28の拡径方向の変位と相まって爪部38が先端部18の外周面に乗り上げる。薄肉部30、32の高さ寸法(周方向の突出寸法)は、このように爪部38が先端部18の外周面に乗り上げて一対の半割体26、28が拡径方向(図4では上下方向)へ変位させられた場合に、薄肉部30、32の係合が維持されるように定められる。また、薄肉部30、32が互いに重ね合わされる接触面(摺動面)は、半割体26、28の半円筒形状の円弧に沿って湾曲していても良いが、拡径方向(一対の半割体26、28が互いに離間する方向)への変位を容易にするために拡径方向と平行な平坦面としても良い。係止爪36や爪部38は、半円弧形状の半割体26、28の周方向の中央部分に設けられている。
【0032】
一対の半割体26、28にはまた、上記切欠34とは別に半円筒形状の内外に貫通する貫通穴42が設けられており、アウターグリップ24が成形される際に合成樹脂材料がその貫通穴42内に充填されることにより、図2の(a) 、(d) に示されるように、半割体26、28の内周面よりも内側へ突き出す密着部44がアウターグリップ24に一体に設けられている。アウターグリップ24が成形される際には、前記U字形状の切欠34内にも合成樹脂材料が充填され、部分的に半割体26、28の内周面よりも内側へ突き出す密着部46がアウターグリップ24に一体に設けられる。そして、これ等の密着部44、46は、グリップ10が操作レバー本体12の先端部18に嵌合されて、爪部38が係止穴40に係止される所定の組付位置に装着されることにより、その先端部18の外周面に密着させられる。これにより、グリップ10が弾性的に先端部18に取り付けられ、がたつきが抑制されるとともに操作フィーリングが向上する。切欠34は、密着部46を設けるための貫通穴としても機能している。
【0033】
半割体26、28の内周面であって上記切欠34や貫通穴42が設けられた部分、および軸方向の両端縁には、切欠34や貫通穴42、或いは軸方向の端縁に連続して溝状や座ぐり穴状の切欠48が設けられており、アウターグリップ24の合成樹脂材料はそれ等の切欠48内まで回り込んで充填され、硬化する。これにより、アウターグリップ24がインナーグリップ22の一対の半割体26、28に固着されない場合でも、それ等の半割体26、28に対して離脱不能に一体的に結合される。
【0034】
そして、このようなグリップ10は、例えば図2の(a) における爪部38の係止部分をパーティングライン(PL)として成形型を構成することにより、アンダーカットが生じないようにアウターグリップ24を成形することができる。密着部44や46の突出部分はアンダーカットになるが、アウターグリップ24は比較的軟質であるため、それ等を弾性変形させつつ成形型を離型することができる。また、図3の(a) に示す半割体26、28についても、例えば図3(a) の上下方向へ離型するように一対の成形型を構成することにより、アンダーカットが生じないように成形することが可能である。
【0035】
このように、本実施例のグリップ10においては、硬質のインナーグリップ22が軸方向と平行に分割された半円筒形状の一対の半割体26、28にて構成されており、その一対の半割体26、28が円筒形状に組み合わされた状態で軟質のアウターグリップ24が成形されることにより、そのアウターグリップ24の内側にインナーグリップ22が一体的に保持されるとともに、軟質のアウターグリップ24が弾性変形させられることにより一対の半割体26、28が拡径方向へ変位することが許容される。これにより、製造誤差に拘らずインナーグリップ22の拡径で操作レバー本体12の先端部18に対してグリップ10を適切に嵌合できるとともに、装着状態においては先端部18の外周面にインナーグリップ22や密着部44、46が確実に密着させられるようにすることが可能で、グリップ10のがたつきを抑制して操作フィーリングを向上させることができる。
【0036】
また、本実施例では、一対の半割体26、28に、それ等の内周面よりも内側へ突き出す爪部38が設けられ、操作レバー本体12の先端部18に設けられた係止穴40に係止されることによりその先端部18からの抜出しが防止されるため、ビス等の別体の固定部材が不要となり、組付作業が容易になるとともに安価に構成される。特に、グリップ10を先端部18に嵌合する際には、アウターグリップ24が弾性変形させられることにより半割体26、28が拡径方向へ変位させられ、係止爪36の撓み変形と相まって爪部38が先端部18の外周面に乗り上げることが許容されるため、爪部38の存在に拘らずグリップ10を先端部18に対して容易に嵌合して組み付けることができる。
【0037】
また、円筒形状のインナーグリップ22の内周面に爪部38を設ける場合、硬質の合成樹脂材料で成形するとアンダーカットになるが、本実施例ではインナーグリップ22が軸方向の分割線に沿って一対の半割体26、28に分割されているため、それ等の半割体26、28を硬質の合成樹脂材料にて構成する場合でも、爪部38の存在に拘らずアンダーカットを生じることなく容易に成形できる。
【0038】
また、本実施例では、一対の半割体26、28の周方向の両側部にそれぞれ薄肉部30、32が設けられ、一対の半割体26、28が円筒形状に組み合わされる際にその薄肉部30、32が互いに重ね合わされるようになっているため、アウターグリップ24を成形する際の半割体26、28の位置決めが容易である。また、操作レバー本体12の先端部18にグリップ10を嵌合する際には、爪部38が先端部18の外周面に乗り上げる際にアウターグリップ24の弾性変形で半割体26、28が拡径方向へ変位するが、薄肉部30、32の係合で一対の半割体26、28の位置ずれが抑制されるため、爪部38が係止穴40に達してグリップ10が縮径する時を含めてグリップ10の形状が良好に維持されるとともに、グリップ10の組付作業が容易になる。
【0039】
また、本実施例では、一対の半割体26、28にそれぞれ切欠34および貫通穴42が設けられ、アウターグリップ24が成形される際に合成樹脂材料がそれ等の切欠34、貫通穴42内に充填されることにより、半割体26、28の内周面よりも内側へ突き出す密着部44、46がアウターグリップ24に一体に設けられ、操作レバー本体12への装着状態において先端部18の外周面に密着させられるため、操作フィーリングが一層向上する。すなわち、比較的軟質の合成樹脂材料にて構成されている密着部44、46が操作レバー本体12に密着させられるため、硬質のインナーグリップ22のみが操作レバー本体12に接触している場合に比較してグリップ10が弾性的に操作レバー本体12に装着されるようになり、がたつき等が一層確実に抑制されるのである。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0041】
図5の操作レバー50は、前記実施例の操作レバー14と同様にパーキングブレーキ用のものであるが、操作レバー14に比較してグリップ52が相違している。図5の(a) は操作レバー50の先端部分を車両の右側から見た側面断面図で、(b) は(a) におけるVB−VB断面の拡大図であり、それぞれ図1の(a) 、(c) に対応する。また、図6は、操作レバー本体12に装着される前のグリップ52を単独で示す図で、(a) は側面断面図、(b) は(a) における VIB−VIB 断面の拡大図であり、それぞれ図2の(a) 、(c) に対応する。
【0042】
グリップ52は、円筒形状のインナーグリップ54およびアウターグリップ56によって構成されているとともに、インナーグリップ54は一対の半割体58および60によって構成されているが、アウターグリップ56の内周面には前記爪部38と同様な一対の係止爪62が軸心を挟んで対称位置に設けられており、前記操作レバー本体12に設けられた係止穴40に係止されることによりグリップ52が先端部18から抜け出すことが防止される。すなわち、一対の半割体58、60には、半円筒形状の内外に貫通する開口部64がそれぞれ設けられており、アウターグリップ56に設けられた一対の係止爪62は、それ等の開口部64を介して半割体58、60の内周面よりも内側へ突き出し、操作レバー本体12の先端部18に設けられた前記係止穴40に係止されるようになっている。アウターグリップ56は比較的軟質の合成樹脂材料にて構成されているため、グリップ52を先端部18に嵌合して装着する際には、アウターグリップ56の弾性変形で一対の半割体58、60が拡径方向へ変位することが許容されるのに加えて、係止爪62そのものも弾性変形するため、その係止爪62の存在に拘らずグリップ52を容易に先端部18に嵌合することができる。
【0043】
図7は、上記インナーグリップ54を構成している半割体58、60の斜視図で、それ等の半割体58、60には、半円筒形状の軸方向において開口部64を挟んで前記貫通穴42と反対側にも貫通穴42と同様の貫通穴66が設けられており、アウターグリップ56が成形される際に密着部44と同様の密着部68がアウターグリップ56と一体に設けられるようになっている。
【0044】
本実施例においても、インナーグリップ54が軸方向と平行に分割された半円筒形状の一対の半割体58、60にて構成されており、その一対の半割体58、60が円筒形状に組み合わされた状態でアウターグリップ56が成形されることにより、そのアウターグリップ56の内側にインナーグリップ54が一体的に保持されるとともに、軟質のアウターグリップ56が弾性変形させられることにより一対の半割体58、60が拡径方向へ変位することが許容される。これにより、製造誤差に拘らず操作レバー本体12の先端部18に対してグリップ52を適切に嵌合できるとともに、装着状態において先端部18の外周面にインナーグリップ54や密着部44、68が確実に密着させられるようにすることが可能で、グリップ52のがたつきを抑制して操作フィーリングを向上させることができる。
【0045】
また、アウターグリップ56に一対の半割体58、60の内周面よりも内側へ突き出す係止爪62が設けられ、操作レバー本体12の先端部18に設けられた係止穴40に係止されることによりその先端部18からの抜出しが防止されるため、ビス等の別体の固定部材が不要となり、組付作業が容易になるとともに安価に構成される。グリップ52を先端部18に嵌合する際には、アウターグリップ56の弾性変形で一対の半割体58、60が拡径方向へ変位することが許容されるのに加えて、係止爪62そのものも弾性変形するため、その係止爪62の存在に拘らずグリップ52を容易に先端部18に嵌合することができる。
【0046】
また、一対の半割体58、60にそれぞれ貫通穴42、66が設けられ、アウターグリップ56が成形される際に合成樹脂材料がそれ等の貫通穴42、66内に充填されることにより、半割体58、60の内周面よりも内側へ突き出す密着部44、68がアウターグリップ56に一体に設けられ、操作レバー本体12への装着状態において先端部18の外周面に密着させられるため、操作フィーリングが一層向上する。
【0047】
また、一対の半割体58、60の周方向の両側部にそれぞれ薄肉部30、32が設けられているため、アウターグリップ56を成形する際の半割体58、60の位置決めが容易である点や、操作レバー本体12の先端部18にグリップ52を嵌合する際に、アウターグリップ56の弾性変形で半割体58、60が拡径方向へ変位しても、薄肉部30、32の係合で一対の半割体58、60の位置ずれが抑制される点は、前記実施例と同様である。
【実施例3】
【0048】
図8は、前記図1の(b) に対応する断面図で、このグリップ70の一対の半割体26、28の外周面には、外周側へ滑らかに突き出す多数の凸部72が設けられている。凸部72は、球体の一部を切り取った部分球面状を成しており、切欠34や貫通穴42が設けられた部分を除いて半割体26、28の軸方向の略全長に亘って半円筒形状の外周面の略全域に設けられている。このようにすれば、グリップ70を把持した場合に、軟質のアウターグリップ24を介して多数の凸部72によって手のひらや指に刺激が加えられ、マッサージ効果が得られる。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
10、52、70:グリップ 12:操作レバー本体 14、50:操作レバー 18:先端部 22、54:インナーグリップ 24、56:アウターグリップ 26、28、58、60:半割体(分割体) 30、32:薄肉部 34:切欠(貫通穴) 38:爪部(係止部) 40:係止穴 42、66:貫通穴 44、46、68:密着部 72:凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状のインナーグリップの外周側に該インナーグリップよりも軟質の合成樹脂材料から成るアウターグリップが設けられ、操作レバー本体の先端部の外周側に嵌合されて一体的に装着されるグリップにおいて、
前記インナーグリップは、前記筒形状の軸方向に定められた複数の分割線に沿って分割された複数の分割体にて構成されており、
該複数の分割体を前記筒形状に組み合わせた状態で、その外周側を覆蓋するように前記アウターグリップが成形されることにより、該アウターグリップの弾性変形で該分割体が拡径方向への変位可能に該アウターグリップの内側に該分割体が保持されている
ことを特徴とする操作レバーのグリップ。
【請求項2】
前記複数の分割体の少なくとも一部には、前記筒形状の内側へ突き出す係止部が設けられ、前記操作レバー本体に設けられた係止穴に係止されることにより、該操作レバー本体から抜け出すことが防止される一方、
前記操作レバー本体に嵌合される際には、前記アウターグリップが弾性変形させられることにより、前記分割体が拡径方向へ変位して前記係止部が該操作レバー本体の外周面に乗り上げることが許容される
ことを特徴とする請求項1に記載の操作レバーのグリップ。
【請求項3】
前記複数の分割体の周方向の両側部には、それぞれ該周方向に突き出す薄肉部が設けられており、該複数の分割体が前記筒形状に組み合わされる際に該薄肉部が互いに重ね合わされる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の操作レバーのグリップ。
【請求項4】
前記複数の分割体の少なくとも一部には前記筒形状の内外に貫通する貫通穴が設けられ、前記アウターグリップが成形される際に前記合成樹脂材料が該貫通穴内に充填されることにより、該分割体の内周面よりも内側へ突き出す密着部が該アウターグリップに一体に設けられており、前記操作レバー本体に嵌合されて装着されることにより該密着部が該操作レバー本体の外周面に密着させられる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の操作レバーのグリップ。
【請求項5】
前記インナーグリップの外周面には外周側へ突き出す多数の凸部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の操作レバーのグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240438(P2012−240438A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109244(P2011−109244)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】