説明

操作入力装置

【課題】操作目標を立体表示する操作入力装置であって、良好な操作感を実現可能な優れた操作性の操作入力装置を提供すること。
【解決手段】非接触で操作可能な操作スイッチ15が操作面10側に設けられた操作スイッチパネル1は、操作面10側に空間的に設けられた検出領域において指先等の人体を検知することで非接触操作を検出する操作検出手段と、操作スイッチ15の検出領域の位置を立体的に示すスイッチ表示200を表示する立体表示手段と、操作スイッチ15の機能を表す機能表示155を平面的に表示する平面表示部155Sと、を備え、操作面10側では、立体表示手段によるスイッチ表示200と、平面表示部155Sによる機能表示155と、が操作スイッチ15に対応して表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で操作可能な操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象機器を動作させるための各種操作を入力する操作入力装置として、浮かび上がって立体的に目視される虚像を操作目標として立体表示すると共に、その操作目標に対する非接触操作を実現した入力装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような非接触操作を可能とした操作入力装置は、濡れ手による操作が必要なキッチンや洗面台、タッチ操作が敬遠されることもある多機能便器等への適用に好適である。
【0003】
しかしながら、前記従来の操作目標を立体表示する操作入力装置では、次のような問題がある。すなわち、操作目標を立体表示すれば、非接触操作の操作位置を使用者に直感的に提示できる一方、見込まれる方向によって虚像である操作目標の見え方が変動したり像がぶれて見えたりする等、視認上の弊害が生じて操作感が損なわれるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−223102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、操作目標を立体表示する操作入力装置であって、良好な操作感を実現した優れた操作性の操作入力装置を提供するための発明である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非接触で操作可能な操作スイッチが操作面側に設けられた操作入力装置であって、
前記操作面側の空間に設けられた検出領域において指先等の人体を検知することで非接触操作を検出する操作検出手段と、
この操作検出手段の検出領域の位置を示すスイッチ表示を立体的に表示する立体表示手段と、
前記操作スイッチの機能を表す機能表示を平面的に表示する平面表示部と、を備え、
前記操作面側では、前記立体表示手段によるスイッチ表示と、前記平面表示部による機能表示と、が前記操作スイッチに対応して表示される操作入力装置にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の操作入力装置では、前記操作スイッチに対応して前記スイッチ表示と前記機能表示とが表示されている。前記スイッチ表示は、対応する操作スイッチの検出領域の位置を示す立体的な表示である。前記機能表示は、対応する操作スイッチの機能を表示する平面的な表示、すなわち立体視効果を生じない表示である。
【0008】
前記操作面から浮かび上がって目視される立体的な前記スイッチ表示によれば、前記検出領域の空間的な位置を使用者に直感的に把握させることができる。一方、前記操作スイッチの機能を示す前記機能表示については、立体的にではなく平面的に表示されている。この機能表示は、立体表示される虚像とは異なり、見込まれる方向によって見え方が変動したりぶれたりといった像の揺らぎを生じるおそれがない。それ故、操作者は、前記機能表示を一見するのみで、対応する操作スイッチの機能を迅速、かつ、正確に把握できる。
【0009】
このように本発明の操作入力装置では、平面的に表示された前記機能表示により前記操作スイッチの機能を明確、かつ、速やかに把握できると共に、立体的に表示された前記スイッチ表示を操作目標として操作することで確実な非接触操作が可能であり、良好な操作感が実現されている。
【0010】
本発明におけるスイッチ表示の表示形状としては、例えば、円形状や、球形状や、三角形状、四角形状等の多角形状等、さまざまな形状を採用できる。また、前記機能表示としては、前記操作スイッチの機能を表す図形や文字等を採用できる。
本発明の好適な一態様の操作入力装置においては、前記機能表示の周囲に、奥まって見えるように立体表示された背景画像を配置することも良い。この場合には、平面的に表示された前記機能表示を、奥まって見える周囲から相対的に浮かび上がるように見せて際立たせることができる。つまり、平面的に表示された前記機能表示について、相対的な立体表示効果を生じさせることができる。
【0011】
本発明の好適な一態様の操作入力装置においては、前記立体表示手段は、左目に観察させる前記スイッチ表示の左像が所定方向に分割された分割左像と、右目に観察させる前記スイッチ表示の右像が所定方向に分割された分割右像と、が視差方向に交互に配置された3D元画像に対して、前記分割左像を見込む左目の視線方向と、前記分割右像を見込む右目の視線方向と、を区分する視差シートが積層された表示シートを含み、
前記機能表示を表示する平面表示部は、前記3D元画像の外周領域のうち、前記視差方向において前記3D元画像と重なる領域を避けて配置されていることが好ましい。
【0012】
立体的に表示された前記スイッチ表示は、見込まれる方向に応じて前記視差方向に位置ずれやぶれ等を生じるおそれがある。上記のように、前記視差方向において前記3D元画像と重なる領域を避けて前記平面表示部を配置すれば、位置ずれ等を生じた前記スイッチ表示により、前記機能表示が隠蔽されてしまうおそれを未然に回避できる。
【0013】
本発明の好適な一態様の操作入力装置においては、前記表示シートは、前記3D元画像が設けられていると共に、この3D元画像に対して前記視差方向に重なる領域を避けて前記平面表示部が設けられた画像シートを有していると共に、この画像シートの表面に前記視差シートを積層して形成されており、
前記表示シートのうち、前記平面表示部に対応する機能表示領域では、前記左目の視線方向と前記右目の視線方向とが区分される度合いが、少なくとも前記3D元画像に対応する領域に比べて抑制されていることが好ましい。
【0014】
前記視差シートを介して前記平面表示部が見込まれた場合、立体表示効果がゼロに設定されていても前記視差シートの作用によって前記機能表示の視認性が損なわれるおそれがある。そこで、前記平面表示部に対応する前記機能表示領域において、前記視差シートによる両目の視線方向の区分の度合いを抑制しておけば、前記機能表示の視認性を一層向上できる。
【0015】
本発明の好適な一態様の操作入力装置においては、前記表示シートは、断面凸状のレンズが畝状に並列配置されたレンチキュラーレンズシートを前記視差シートとして有していると共に、このレンチキュラーレンズシートの表面に積層されて前記操作面を形成する透明シートを有しており、
前記機能表示領域では、前記レンチキュラーレンズシートと前記透明シートとのシート間の隙間に充填材料が満たされて光の屈折が抑制され、これにより、前記左目の視線方向と前記右目の視線方向とが区分される度合いが、少なくとも前記3D元画像に対応する領域に比べて抑制されていることが好ましい。
【0016】
この場合には、平滑な操作面を実現でき、美観を向上できる。さらに、前記レンチキュラーレンズシートの作用が抑制された前記機能表示領域の境目を目立たなくできる。例えば、前記平面表示部に対応する部分に予め前記充填材料を塗布した前記透明シートを準備しておき、前記表示シートの表面に貼付すれば、上記のような積層状態を比較的簡単に実現できる。
【0017】
なお、前記レンチキュラーレンズシートの作用を抑制する方法としては、レンチキュラーレンズシートの畝状の表面形状を削り取って平滑にする方法や、畝状の表面に他の材料を盛って表面を平滑にする方法や、貫通孔を設ける方法等が考えられる。なお、レンチキュラーレンズシートの表面に他の材料を盛る場合については、レンチキュラーレンズシートの形成材料と同じ材料を選択したり、屈折率が似通った材料を選択すると一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例における、操作スイッチパネルを示す斜視図。
【図2】実施例における、操作スイッチパネルが取り付けられた洗面台を示す正面図。
【図3】実施例における、操作スイッチパネルの断面構造を示す断面図。
【図4】実施例における、操作スイッチパネルの組立て構造を示す説明図。
【図5】実施例における、表示シートの積層構造を示す説明図。
【図6】実施例における、透明シートの裏面、及びその断面構造を示す図。
【図7】実施例における、表示シートの断面構造を示す断面図。
【図8】実施例における、操作スイッチパネルのシステム構成を示すブロック図。
【図9】実施例における、非接触操作を検出する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例)
本例は、非接触操作を光学的に検出する操作スイッチパネル(操作入力装置)1に関する例である。この内容について、図1〜図9を用いて説明する。
本例の操作スイッチパネル1は、図1及び図2のごとく、洗面台7の照明ランプ71、鏡72の曇り止めヒータ(図示略)をオンオフ操作するための操作入力装置である。この操作スイッチパネル1は、鏡72の下縁に沿って設けられた庇状のカウンタ73の前面に取り付けられる。
【0020】
操作スイッチパネル1の凸凹のない平滑な操作面10には、図1〜図3のごとく、2箇所の操作スイッチ15が設けられている。操作スイッチ15としては、左側の照明スイッチ15A、右側の曇り止めスイッチ15Bがある。各操作スイッチ15は、非接触操作を検出する検出領域300(図3)に対応して操作マーク200が立体表示された非接触スイッチである。
【0021】
操作マーク200の浮かび上がり量は、検出領域300の高さに略一致するように設定されている。この操作スイッチパネル1では、何れかの操作マーク200を指先等で触れるように操作することで、対応する操作スイッチ15を非接触で操作可能である。
操作面10においては、各操作スイッチ15の上側の隣り合う位置にスイッチ機能を平面的(非立体的)に表示する機能表示155が表示されている。さらに、各操作スイッチ15の下側に当たる操作面10の下部には、LED光を透過する帯状の窓12が幅方向全域に渡って形成されている。
【0022】
操作スイッチパネル1は、図3及び図4のごとく、底の浅い箱状の筐体11を利用して形成されている。操作面10側の表面には、操作マーク200を立体的に表示するための表示シート(立体表示手段)2が貼り付けられている。筐体11の内部には、制御基板3や、光学要素をなす反射板14等が収容されている。帯状の窓12を介して見込まれる位置には、操作面10に対して傾けた状態で長細い矩形板状の反射板14が配設されている。
【0023】
表示シート2は、図4及び図5のごとく、裏面側から順番に、3D画像シート25、レンチキュラーレンズシート(視差シート)23、及び透明シート21が積層された3層構造を有している。表示シート2には、前記窓12を構成する透過窓20が形成されている。
【0024】
3D画像シート25は、図1及び図5のごとく、操作マーク200の元絵となる3D元画像200S等が透明基材シートの表面に印刷されたシートである。3D画像シート25では、左目に観察される左像を縦方向に分割した分割左像が印刷された短冊状の左像エリア251と、右目に観察される右像を縦方向に分割した分割右像が印刷された短冊状の右像エリア253と、が視差方向に当たる左右方向に交互に配置されている。3D元画像200Sは、左像と右像との間に所定の視差が設けられた立体画像の元絵である。本例では、3D元画像200Sとして、照明スイッチ15Aの操作マーク200に対応する元絵と、曇り止めスイッチ15Bの操作マーク200に対応する元絵と、が設けられている。いずれも単色円形状の操作マーク200を立体表示するための元絵であり、その表示色のみが異なっている。
【0025】
本例の3D画像シート25では、各3D元画像200Sの上側に当たる位置に、スイッチ機能を表示する機能表示155(図1参照。)に対応する平面表示部155Sが配置されている。照明スイッチ15Aに対応する平面表示部155Sには、点灯中の電球をシンボリックに表す図形が印刷されている。曇り止めスイッチ15Bに対応する平面表示部155Sには、電熱ヒータのシンボル図形が印刷されている。これらの平面表示部155Sでは、立体表示効果が生じないように左像と右像との視差がゼロに設定されている。
また、3D元画像200Sの下側には、何も印刷されていない帯状の透明領域250が幅方向全域に渡って設けられている。この透明領域250は、表示シート2の透過窓20を構成している。
【0026】
レンチキュラーレンズシート23は、塩化ビニル樹脂製の透明シートである。その表面には、1組の左像エリア251及び右像エリア252を覆う畝状の凸部231が、左像エリア251・右像エリア253の組毎に複数設けられている。畝状の凸部231の1本1本は、左目の視線方向と右目の視線方向とを区分するというレンズ効果を発揮する。このようなレンズ効果により、3D画像シート25の左像が観者の左目の網膜に結像され、右像が右目の網膜に結像される。なお、畝状の凸部231の突出高さは、約0.1〜0.3mmである。
【0027】
透明シート21は、図5及び図6のごとく、無色透明の平滑フィルムシートである。この透明シート21によれば、平滑な操作面10を実現でき、操作スイッチパネル1の美観を向上できる。さらに、操作面10への汚れの付着を抑制できると共にそのふき取り作業を容易にできる。透明シート21の貼付面(裏面)には、平面表示部155Sに対応する領域を除く全面に、透明接着剤が塗布されたドット211が散点状に配置されている。一方、平面表示部155Sに対応する機能表示領域210には、酢酸ビニル樹脂系接着材料がスクリーン印刷され、高さ約0.2〜1.0mmの印刷層212が形成されている。この接着材料は、いわゆる木工ボンドとほぼ同様の成分であり、硬化に応じて無色透明になる。なお、酢酸ビニル樹脂の光の屈折率1.54は、レンチキュラーレンズシート23を構成する塩化ビニル樹脂の1.46と同程度である。
【0028】
レンチキュラーレンズシート23に対して透明シート21を低圧着すれば、レンチキュラーレンズシート23の裏面の散点状のドット211を介して両者を確実性高く接着接合できる。このとき、散点状の透明接着材料のドット211のうち、レンチキュラーレンズシート23の凸部231の頂上部に当たるドットが接着剤として有効に機能し、その他のドットについては接着に寄与せずにそのまま硬化する。
【0029】
一方、印刷層212の酢酸ビニル樹脂系接着材料は、図7のごとく、透明シート21とレンチキュラーレンズシート23とを低圧着する際、シート間の隙間に流れ込む。具体的には、印刷層212の接着材料のうち、透明シート21に押し当たる凸部231の当接箇所辺りの接着材料は、当接に応じて周辺に押し出される。その結果、機能表示領域210においては、凸部231間の溝部分に接着材料が流れ込み、これにより、透明シート21とレンチキュラーレンズシート23との間の隙間が接着材料により満たされる。この接着材料は、その後、硬化して無色透明となり、透明シート21とレンチキュラーレンズシート23との間の充填材料212Sとして保持される。
【0030】
制御基板3は、図8のごとく、LED素子を利用した発光部31、PSD(Position Sensitive Device:位置検出素子)を利用した受光部33、発光部31・受光部33を制御する検出制御部301、操作を検出する操作検出部302、操作に応じてスイッチ動作(オンオフ動作)を実行する切換制御部303を有している。制御基板3の基板上には、検出制御部301、操作検出部302及び切換制御部303の機能を備える1チップマイコン30のほか、発光部31をなす発光ユニット310、受光部33をなす受光ユニット330等が配置されている(図3、図4参照。)。なお、本例では、発光部31、受光部33、検出制御部301、操作検出部302の組み合わせにより操作検出手段が構成されている。
【0031】
本例の制御基板3では、発光ユニット310及び受光ユニット330が2組配置されている。一方の組は、照明スイッチ15A(図1参照。)に対応しており、他方の組は、曇り止めスイッチ15B(図1参照。)に対応している。制御基板3では、反射板14を見込むように発光ユニット310及び受光ユニット330が配置されている。
【0032】
検出制御部301は、受発光動作が同期して実行されるように発光ユニット310及び受光ユニット330を制御すると共に、受光ユニット330を構成するPSDが出力するセンサ信号を取り込んで操作検出部302に入力する。
操作検出部302は、検出制御部301から取り込んだセンサ信号に基づいてPSDに対する反射光の入射位置を特定し、三角測量の原理により被検出対象までの距離を計測する。操作検出部302は、検出領域300(図3参照。)に対応する距離が計測されたときに操作有りと判断して操作検出信号を出力する。なお、操作検出信号としては、照明スイッチ15Aに対応する信号と、曇り止めスイッチ15Bに対応する信号と、がある。
【0033】
切換制御部303は、操作検出部302から操作検出信号を取り込んだとき、所定のスイッチ動作を実行する。照明スイッチ15Aに対応する操作検出信号を取り込んだときには、照明ランプ71のオンオフを切り換える。曇り止めスイッチ15Bに対応する操作検出信号を取り込んだときには、曇り止めヒータ(図示略)のオンオフを切り換える。
【0034】
以上のように構成された操作スイッチパネル1は、図9のごとく、発光ユニット310による光の投射に応じた(被検出対象からの)反射光がPSD(受光ユニット330)に入射する位置を特定し、いわゆる三角測量の原理により被検出対象までの距離を計測する。そして、計測距離に応じて非接触操作の有無を検出し、検出に応じて対応する操作スイッチ15のオンオフを切り換える。この操作スイッチパネル1によれば、立体表示された操作マーク200に対する非接触操作により照明ランプ71等のオンオフ操作を実行可能である。
【0035】
表示シート2が配設された操作面10を見込むと、観者の右目で右像が視認され、左目で左像が視認される。本例の3D画像シート25では、操作マーク200(図1参照。)の元絵である3D元画像200Sについて、左像と右像の視差が設定されている。そのため、操作マーク200は、操作面10から立体的に浮かび上がって目視される。一方、左像と右像の視差がゼロに設定された各平面表示部155Sの機能表示155については、操作面10から浮かび上がって見えることなく平面的に目視される。
【0036】
一般に、立体表示では、周囲から像を飛び出させて目立たせるという顕著な視覚的な効果を実現できる一方、見込まれる方向に応じて像が歪んだりぶれたりといった像の揺らぎが生じるおそれがある。特に、立体表示された文字や細かい図形等を観察する際には、像の揺らぎ等に起因して船酔いのような不快感が生じることもある。
【0037】
本例の操作スイッチパネル1では、各操作スイッチ15の位置を示す操作マーク200を立体的に表示する一方、スイッチ機能を表す機能表示155については平面的に表示している。平面表示される機能表示155であれば、像の揺らぎ等による不快感を与えることなく、操作者にスイッチ機能を確実性高く速やかに認識させることができる。一方、立体表示される操作マーク200については、円形状や球形状や多角形状などの単純形状によって、操作位置を直感的に提示するという目的を十分に達成可能である。本例では、円形状を立体表示しているが、単純形状であれば見込まれる方向が変動しても見え方の変動が文字等に比べて少なく、視認性が大きく低下することがない。また、像の揺らぎ等が生じても操作者が不快感を感じるおそれが少ない。
【0038】
さらに、本例の表示シート2は、平面表示部155Sに対応する機能表示領域210の断面構造(図7参照。)に特徴を有し、その構造により有効な作用効果を実現している。すなわち、本例の表示シート2の機能表示領域210では、透明シート21とレンチキュラーレンズシート23との間の隙間が無色透明な充填材料212Sで満たされている。上記のごとく、この充填材料212Sは酢酸ビニル樹脂であり、レンチキュラーレンズシート23をなす塩化ビニル樹脂と光の屈折率が似通っている。それ故、機能表示領域210では、レンチキュラーレンズシート23によるレンズ効果がゼロ近くまで抑制されている。この機能表示領域210を介して見込まれる平面表示部155Sでは、透明シート21のみを介した場合と同様、機能表示155がはっきりくっきりと視認される。畝状の凸部231による縦縞模様によって機能表示155の視認性が損なわれるおそれも少ない。
【0039】
このように本例の操作スイッチパネル1によれば、平面表示される機能表示155によりスイッチ機能を確実性高く提示できると共に、単純形状の操作マーク200を立体表示することにより非接触操作位置を操作者に直感的に認識させることができる。この操作スイッチパネル1の操作者は、機能表示155によって目的の操作スイッチ15を速やかに選択でき、対応する操作マーク200を指先等で触れることで確実性高くスイッチ操作を実行できる。この操作スイッチパネル1は、立体表示による弊害を抑制しつつその長所を活用することで、非接触操作に際して良好な操作感を実現している。
【0040】
なお、本例では、操作マーク200の上側に平面表示部155Sが配置されている。機能表示155に対応する平面表示部155Sは、操作者側から見て操作マーク200に対応すると認識され得る位置であればどのような位置であっても良い。ただし、視差方向(左右方向)において、3D元画像200Sと重複する領域(図5中の符合200Mで示す領域。)を避けて平面表示部155Sを配置することが好ましい。立体表示される操作マーク200は、見込まれる方向に応じて視差方向に位置が変動したりぶれたりする可能性があり、平面表示部155Sを遮蔽し機能表示155の表示を妨げるおそれがあるからである。
【0041】
なお、本例では、表示シート2の表面側に透明シート21を貼付している。この透明シート21については、必須ではなく省略可能である。また、機能表示領域210について、レンチキュラーレンズシート23のレンズ効果を抑制することも必須ではない。
また、本例では、この機能表示領域210について、透明シート21とレンチキュラーレンズシート23との間に充填材料212Sを満たすことでレンズ効果を抑制している。機能表示領域210において、レンチキュラーレンズシート23の表面を平滑面に形成したり、レンチキュラーレンズシート23に貫通孔を設ければ、本例と同様、レンズ効果を抑制可能である。
【0042】
本例の操作スイッチパネル1では、操作面10の裏面側に発光ユニット310、受光ユニット330を配置する一方、反射板14を利用して光学的経路を構成している。表示シート2の外周側のスペースに、検出領域300を見込むように発光ユニット310及び受光ユニット330を配置することも良い。
【0043】
本例は、レンチキュラーレンズシート23を利用した立体表示手段を採用した例である。立体表示の方法としては、本例のレンチキュラー方式に代えて、スリットや液晶等を利用して左右の目に異なる像を結像させて立体表示を実現するパララックスバリア(視差バリア)方式や、ホログラムによる立体表示を可能とするホログラフィー方式や、マイクロレンズアレイ等、他の立体表示方法を採用することもできる。
【0044】
本例では、LED素子とPSDとの組合せにより非接触操作を光学的に検出している。PSDに代えて受光の有無を検知する受光ユニットを採用することもできる。この構成によれば、反射光の有無によって検出領域に差し入れられた指等を検知可能である。さらに、PSDに代えて受光量を計測可能な受光ユニットを採用することもできる。この構成によれば、投射光に対する反射光の減衰割合に応じて距離を計測でき、非接触操作を検出できる。
【0045】
本例は、洗面台の操作スイッチパネル1に関する例であるが、操作対象としては、シャワー機能付きの便器や、給湯装置や、空調設備や、給水装置や、キッチン水栓や、キッチンコンロ等であっても良い。給湯装置が操作対象の場合、本例の操作スイッチパネル1と似通った操作パネルを浴室等の壁面に設定することも良い。さらに、本例の操作入力装置を対象機器に組み込むことも可能である。
【0046】
本例では、操作スイッチとしてオンオフスイッチを例示している。操作スイッチとしては、操作面に沿って指先を横に移動させるスライド操作や、操作面に沿って指先で円弧を描くように移動させるダイアル操作を入力するスイッチであっても良い。さらには、操作面の法線方向に沿って指先を近づけたり遠ざけたりする3次元的な操作を入力するスイッチであっても良い。
また、本例では、操作スイッチパネル1として、平面的な操作面10を備えた装置を例示している。操作面は、平面に限定されず、曲面であっても良い。
【0047】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0048】
1…操作スイッチパネル(操作入力装置)、10…操作面、12…窓、14…反射板、15…操作スイッチ、155…機能表示、155S…平面表示部、2…表示シート(立体表示手段)、20…透過窓、200…操作マーク(スイッチ表示)、200S…3D元画像、21…透明シート、210…機能表示領域、212…印刷層、212S…充填材料、23…レンチキュラーレンズシート(視差シート)、25…3D画像シート、3…制御基盤、30…1チップマイコン、300…検出領域、302…操作検出部、31…発光部、310…発光ユニット、33…受光部、330…受光ユニット、7…洗面台、71…照明ランプ、72…鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で操作可能な操作スイッチが操作面側に設けられた操作入力装置であって、
前記操作面側の空間に設けられた検出領域において指先等の人体を検知することで非接触操作を検出する操作検出手段と、
この操作検出手段の検出領域の位置を示すスイッチ表示を立体的に表示する立体表示手段と、
前記操作スイッチの機能を表す機能表示を平面的に表示する平面表示部と、を備え、
前記操作面側では、前記立体表示手段によるスイッチ表示と、前記平面表示部による機能表示と、が前記操作スイッチに対応して表示される操作入力装置。
【請求項2】
請求項1において、前記立体表示手段は、左目に観察させる前記スイッチ表示の左像が所定方向に分割された分割左像と、右目に観察させる前記スイッチ表示の右像が所定方向に分割された分割右像と、が視差方向に交互に配置された3D元画像に対して、前記分割左像を見込む左目の視線方向と、前記分割右像を見込む右目の視線方向と、を区分する視差シートが積層された表示シートを含み、
前記機能表示を表示する平面表示部は、前記3D元画像の外周領域のうち、前記視差方向において前記3D元画像と重なる領域を避けて配置されている操作入力装置。
【請求項3】
請求項2において、前記表示シートは、前記3D元画像が設けられていると共に、この3D元画像に対して前記視差方向に重なる領域を避けて前記平面表示部が設けられた画像シートを有していると共に、この画像シートの表面に前記視差シートを積層して形成されており、
前記表示シートのうち、前記平面表示部に対応する機能表示領域では、前記左目の視線方向と前記右目の視線方向とが区分される度合いが、少なくとも前記3D元画像に対応する領域に比べて抑制されている操作入力装置。
【請求項4】
請求項3において、前記表示シートは、断面凸状のレンズが畝状に並列配置されたレンチキュラーレンズシートを前記視差シートとして有していると共に、このレンチキュラーレンズシートの表面に積層されて前記操作面を形成する透明シートを有しており、
前記機能表示領域では、前記レンチキュラーレンズシートと前記透明シートとのシート間の隙間に充填材料が満たされて光の屈折が抑制され、これにより、前記左目の視線方向と前記右目の視線方向とが区分される度合いが、少なくとも前記3D元画像に対応する領域に比べて抑制されている操作入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−8087(P2013−8087A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138569(P2011−138569)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】