説明

操作装置及びこれを具えた電子機器

【課題】操作子を付勢するクリック体の取付確認を容易に行なうことのできるダイヤル装置等の操作装置及びこれを具えた電子機器を提供する。
【解決手段】1又は複数の凹溝48,48を有し、回動又はスライド操作可能な操作子40と、該操作子が嵌まる取付部21と、該取付部に形成され、操作子の凹溝の軌道上に向けて開口した支持穴23と、該支持穴に挿入される付勢手段70と、前記支持穴に保持され、前記付勢手段により凹溝の軌道上に向けて付勢されるクリック体72と、を有する操作装置であって、前記操作子は、少なくとも1つの凹溝にクリック体の外径よりも小径の孔49が貫通開設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる操作装置に関するものであり、より具体的には、操作子を付勢するクリック体の取付確認を容易に行なうことのできる操作装置及びこれを具えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回動操作可能なダイヤル操作子を具えたダイヤル装置を具え、ダイヤル操作子を操作することで、撮影モードやシャッタスピード、再生モードへの切替え等の各種選択操作を行なうようにしたデジタルカメラ等の電子機器が知られている。
【0003】
ダイヤル装置は、電子機器の筺体から上向きに突設された筒状の取付部にダイヤル操作子を回動自在に嵌めて構成される。前記取付部の内側に、ダイヤル操作子の方向に一対の支持穴を形成し、該支持穴にボールの如きクリック体をダイヤル操作子に向けてバネ付勢すると共に、クリック体と対向するダイヤル操作子の内面に複数の溝を形成して、ダイヤル操作子を回動したときにクリック感を得ることができるようにしたものも提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−66147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイヤル装置の組立てに際し、バネ付勢されたクリック体が、支持穴に正しく取り付けられているかどうかを確認する必要がある。
そこで、ダイヤル操作子を回転させて、クリック感があるかどうかで判別する方法がある。しかしながら、この場合では、複数のクリック体を配備したダイヤル装置において、そのうちの1つのクリック体が脱落や欠落していたり、正しく取り付けられていないときに確認が非常に困難であった。
【0006】
本発明の目的は、操作子を付勢するクリック体の取付確認を容易に行なうことのできるダイヤル装置等の操作装置及びこれを具えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の操作装置は、
1又は複数の凹溝を有し、回動又はスライド操作可能な操作子と、
該操作子が嵌まる取付部と、
取付部に形成され、操作子の凹溝の軌道上に向けて開口した支持穴と、
該支持穴に挿入される付勢手段と、
前記支持穴に保持され、前記付勢手段により凹溝の軌道上に向けて付勢されるクリック体と、
を有する操作装置であって、
前記操作子は、少なくとも1つの凹溝にクリック体の外径よりも小径の孔が貫通開設されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の操作装置によれば、操作装置を組み立てた後、孔を通してクリック体を目視若しくは画像認識することによって、クリック体の有無や取付状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施例である操作装置を具えるデジタルカメラを斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1の上キャビネットの平面図である。
【図3】図3は、図2の線3−3に沿う矢視断面図である。
【図4】図4は、上キャビネットの要部分解斜視図である。
【図5】図5は、化粧板取付前のダイヤル装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の電子機器の一実施形態であるデジタルカメラ(10)は、図1に示すように、筺体(12)の前面に撮影レンズ(14)を具えると共に、筺体(12)の上面壁を形成する上キャビネット(20)に操作装置が配備されている。以下では、操作装置として、回転式のダイヤル装置(30)を例に挙げて説明する。
【0011】
デジタルカメラ(10)の場合、詳細な説明及び/又は図示を適宜省略するが、ダイヤル装置(30)の近傍にシャッタボタン(16)やズーム用レバー等を有し、その他、筺体(12)の適所にフラッシュ機構、背面に液晶パネル等が配備される。
【0012】
ダイヤル装置(30)は、図2乃至図4に示すように、上キャビネット(20)に形成された円形の取付部(21)に回転可能に配備される円筒状のダイヤル操作子(40)と、上キャビネット(20)から上向きに開口するよう設けられた1又は複数の支持穴(23)(23)に収容された付勢手段となるバネ(70)(70)によりダイヤル操作子(40)に向けて付勢されたクリック体(72)(72)と、上キャビネット(20)の裏面側でダイヤル操作子(40)と嵌合してダイヤル操作子(40)を支持する保持部材(50)と、ダイヤル操作子(40)と保持部材(50)を固定する固定用ネジ(60)を主要構成としている。
【0013】
より具体的には、ダイヤル操作子(40)は、外周に滑り止めのための凹凸が多数設けられた円筒部(41)と、該円筒部(41)と同心に配備された支持部(43)を環状の円盤部(47)にて連繋して構成され、保持部材(50)に対して360度以上回転可能に支持されている。勿論、ダイヤル操作子(40)は、所定角度の範囲内で回動可能とすることもできる。
【0014】
円筒部(41)は、上側が円盤部(47)よりも若干突出しており、ダイヤル操作子(40)により操作される機能を記した化粧板(32)が両面テープ(33)等の接着手段により取付可能となっている。なお、円筒部(41)の内側には、化粧板(32)の位置決め用の突起(42)が内向きに形成されている。
【0015】
また、円筒部(41)は、円盤部(47)の下方に向けて伸びており、その内面は、上キャビネット(20)の取付部(21)に上向きに突設された環状のリング部(22)にスライド可能に嵌まっている。
【0016】
円盤部(47)の中央から下向きに突設された支持部(43)は、上キャビネット(20)の取付部(21)に貫通開設された円形の取付孔(24)に回転可能に嵌まる。
【0017】
支持部(43)の上面側には、中央に凹み(44)が形成されている。該凹み(44)は、ダイヤル操作子(40)を保持部材(50)と固定する固定用ネジ(60)の嵌まるネジ用プレート(65)が収容されるプレート用凹み(44a)と、該プレート用凹み(44a)の開口側でネジ用プレート(65)の脱落を防止する抑え板(35)が嵌まる略矩形の抑え板用凹み(44c)からなる。
【0018】
プレート用凹み(44a)には、内向きに爪片(44b)(44b)が突設されており、固定用ネジ(60)が螺合されるネジ孔(66)の貫通開設されたネジ用プレート(65)は、側面に形成された係合凹部(67)(67)により前記爪片(44b)(44b)と係合し、プレート用凹み(44a)内にて回転不能となっている。
【0019】
支持部(43)の下面中央には、固定用ネジ(60)が貫通するネジ挿通孔(45)が形成されると共に、該ネジ挿通孔(45)の外周には、保持部材(50)に回転不能に嵌まる係合部(46)が下向きに形成されている。
係合部(46)は、図示のように、一部に直線状の部分を有する凹状形状とすることで、保持部材(50)と回転不能に係合することができる。
【0020】
円盤部(47)の裏面には、前記円筒部(41)と支持部(43)との間に、複数の凹溝(48)(48)が所定間隔で形成されている。凹溝(48)(48)は、後述するバネ付勢されたクリック体(72)(72)の軌道上に設けられており、ダイヤル操作子(40)を回転させたときに、クリック体(72)が凹溝(48)に嵌まることで、ダイヤル操作子(40)の位置決めを行なうと共に、クリック体(72)が嵌まったときにクリック感を得ることで操作性を向上させることができる。
【0021】
本実施例では、凹溝(48)(48)は、ダイヤル操作子(40)の化粧板(32)に記された機能数と一致した個数形成される。例えば、化粧板(32)に8つの機能が記されている場合、凹溝(48)(48)の数も8つとしている。
なお、化粧板(32)に記載された機能がダイヤル操作子(40)の180度以内にのみ存在する場合は、凹溝(48)の数は機能数の2倍の個数形成してもよい。
【0022】
また、凹溝(48)(48)の少なくとも1つには、円盤部(47)を貫通する確認用の孔(49)(以下「確認孔」と称する)が設けられている。確認孔(49)は、凹溝(48)(48)よりも小径に形成され、化粧板(32)を円盤部(47)に取り付けた状態では外部からは視認不能となっている。
【0023】
上キャビネット(20)の取付部(21)には、前記ダイヤル操作子(40)の支持部(43)が貫通する取付孔(24)が貫通開設されており、該取付孔(24)の外周には、取付孔(24)と同心に環状のリング部(22)が突設されている。リング部(22)は、ダイヤル操作子(40)の円筒部(41)の下方内面と摺接している。
【0024】
さらに、取付部(21)には、取付孔(24)とリング部(22)との間に1又は複数の支持穴(23)(23)が上方に向けて開口するよう形成されている。支持穴(23)(23)は、前記ダイヤル操作子(40)の凹溝(48)の軌道と対向する位置に設けられている。支持孔(23)(23)は、図示の実施例では2つであるが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0025】
支持穴(23)(23)には、夫々バネ(70)が嵌装される共に、バネ(70)の先端側にクリック体(72)が収容される。クリック体(72)として、支持穴(23)よりも小径のボールを例示できる。クリック体(72)は、ボールや鋼球等の球体に限らず、例えば、ラグビーボールのような楕円形を有するものや、多面体又は棒状のものであってもよい。また、クリック体(72)の材質は、金属に限らず樹脂等であってもよい。
クリック体(72)を付勢するバネ(70)は、無負荷の状態で、クリック体(72)が支持穴(23)の開口から突出する長さに調整されている。
【0026】
ダイヤル操作子(40)の裏面側には、上キャビネット(20)を挟んで、保持部材(50)が配備されている。保持部材(50)は、ダイヤル操作子(40)の支持部(43)下端に当接しており、支持部(43)の先端に設けられた係合部(46)が嵌まる係合受部(51)が突設されている。係合受部(51)は、係合部(46)の形状に合わせて一部直線状に形成されており、係合受部(51)を回転不能に取付可能となっている。
また、係合受部(51)の中央には、固定用ネジ(60)が挿通するネジ挿通孔(52)が貫通開設されている。
【0027】
係合受部(51)の下面は円盤状に拡径しており、下面側にダイヤル装置(30)による操作命令を伝達する基板(図示せず)と摺接する電気接点となるブラシ(55)が係合受部(51)と一体に固定用ネジ(60)により固定される。
【0028】
上記構成のダイヤル装置(30)は、以下の要領で組立てすることができる。
まず、図4に示すように、上キャビネット(20)の各支持穴(23)(23)にバネ(70)(70)とクリック体(72)(72)を一対ずつ収容し、ダイヤル操作子(40)の支持部(43)を上キャビネット(20)の取付孔(24)に嵌める。
この状態で、上キャビネット(20)の裏面側に係合受部(51)及びブラシ(55)を配置して、ブラシ(55)の側から固定用ネジ(60)を挿入し、ダイヤル操作子(40)のプレート用凹み(44a)に配備されたネジ用プレート(65)にネジ止めすることにより、ダイヤル操作子(40)が上キャビネット(20)に回転可能に取り付けられる(図5参照)。
【0029】
上記組み付けに際し、クリック体(72)が支持穴(23)内でバネ(70)により付勢された状態で、凹溝(48)(48)の軌道上に位置するよう正しく取り付けられているかどうかを確認する。
より具体的には、図5に示すように、ダイヤル操作子(40)に設けられた確認孔(49)を目視若しくは画像認識等することで、確認孔(49)を通して、所定の位置にクリック体(72)が目視や画像認識されることにより、クリック体(72)が正しく取り付けられていることを確認することができる。なお、目視や画像認識等の際に、確認用孔(49)が支持穴(23)に対向しておらず、クリック体(72)が確認できない場合には、ダイヤル操作子(40)を回転や回動させればよい。
【0030】
このとき、クリック体(72)が目視若しくは画像認識できなければ、ダイヤル操作子(40)の組み付けの際に、クリック体(72)やバネ(70)の取付忘れや脱落していることが確認できるから、正しく取付けをやり直すことができる。
【0031】
確認孔(49)の目視や画像認識等によるクリック体(72)の確認に加えて、ダイヤル操作子(40)を回転又は回動させる際のクリック感を確認することで、確認作業の精度をより高めることができる。
【0032】
本発明によれば、クリック感等によりクリック体(72)が正しく取り付けられているかどうかを判別するよりも確実に確認を行なうことができる。また、複数のクリック体(72)を有する操作装置においては、クリック感ではすべてのクリック体(72)が正しく取り付けられているかどうかの判別が困難であるが、本発明では、目視若しくは画像認識等により各クリック体(72)の有無や取付状態を確認することができるから、確認作業を簡略化できる利点がある。
【0033】
上記によりクリック体(72)が正しく取り付けられていることを確認した後、図4に示すように、抑え板(35)を抑え板用凹み(44c)に配備し、化粧板(32)を両面テープ(33)等でダイヤル操作子(40)の上面に取り付けることで、ダイヤル装置(30)が組み立てられる。
【0034】
ダイヤル装置(30)が取り付けられた上キャビネット(20)は、シャッタボタン(16)等を組み付けた後、デジタルカメラ(10)の筺体(12)に装着され、ダイヤル操作子(40)を回転又は回動させることにより、所望の機能を選択することができる。
【0035】
なお、上記では、2個のクリック体(72)(72)を有する回転式のダイヤル装置(30)に本発明を適用しているが、クリック体(72)は2個に限定されず、1個又は3個以上であってもよく、また、クリック体(72)を付勢することで位置決めやクリック感を高める機構であれば、回転式には限定されず、スライド式の装置にも本発明を適用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、操作子を付勢するクリック体の取付確認を容易に行なうことのできる操作装置及びこれを具えた電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0037】
(10) デジタルカメラ
(12) 筺体
(20) 上キャビネット
(21) 取付部
(23) 支持孔
(30) ダイヤル装置
(40) ダイヤル操作子
(48) 凹溝
(49) 孔
(70) バネ
(72) クリック体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の凹溝を有し、回動又はスライド操作可能な操作子と、
該操作子が嵌まる取付部と、
取付部に形成され、操作子の凹溝の軌道上に向けて開口した支持穴と、
該支持穴に挿入される付勢手段と、
前記支持穴に保持され、前記付勢手段により凹溝の軌道上に向けて付勢されるクリック体と、
を有する操作装置であって、
前記操作子は、少なくとも1つの凹溝にクリック体の外径よりも小径の孔が貫通開設されていることを特徴とする電子機器の操作装置。
【請求項2】
操作子は、回動操作されるダイヤル操作子である請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の操作装置を具える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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