説明

操作装置

【課題】操作子を、中間部材を要さず、操作子支持体だけで、4点での押し込み操作可能に支持することができて、使用部品点数の削減、コストの低減ができるようにする。
【解決手段】軸部8,9の突出方向と直交する方向の2点においては、操作子3を押し込み操作したときに、操作子3が両側の軸部8,9周りと長孔40,41の内周部とを摺接させて該軸部8,9を中心に回動し、軸部8,9の突出方向の2点においては、操作子3を押し込み操作したときに、操作子3が押し込み側とは反対側における軸部9と長孔41との接触部Sを支点に、押し込み側の軸部8に対する長孔40の余裕長で押し込まれて回動する。かくして、操作子3を操作子支持体7だけで4点での押し込み操作可能に支持できるものであり、従来のもののような中間部材を必要としないので、使用部品点数の削減、コストの低減ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子を4点での押し込み操作可能に支持する構造を改良した操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両のステアリングホイールでオーディオやテレフォン機能の操作に用いられる操作装置として、操作子を例えば上下左右の4点での押し込み操作可能に設けたものが供されている。
このものにおいては、操作子が操作子支持体に中間部材を介して上記4点での押し込み操作可能に支持されている。詳細には、操作子が中間部材に例えば上下の2方向での押し込み操作可能に支持され、そして、中間部材が操作子支持体に残る左右の2方向での押し込み操作可能に支持されており、その組み合わせで操作子が上記4点での押し込み操作可能に支持されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3153371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のものによると、操作子を4点での押し込み操作可能に支持するのに、操作子支持体だけでなく、中間部材が必要であり、その分、使用部品点数が多くて、コスト高となる欠点を有していた。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、操作子を、中間部材を要さず、操作子支持体だけで、4点での押し込み操作可能に支持することができて、使用部品点数の削減、コストの低減ができる操作装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の操作装置は、操作子と、操作子支持体とを具備し、それら操作子と操作子支持体とのうちの一方の部材に、操作子の一方向又はそれと直交する他方向の両側に位置してそれぞれ突出する軸部を設け、前記操作子と操作子支持体とのうちの他方の部材に、前記操作子の一方向又は他方向の両側に位置してそれぞれ前記軸部の直径より操作子の押し込み方向に長い長孔を設け、それら軸部と長孔とを嵌合し、前記操作子を前記押し込み方向とは逆の方向に付勢する付勢手段を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によれば、軸部の突出方向と直交する方向の2点においては、操作子を押し込み操作したときに、操作子が両側の軸部周りと長孔の内周部とを摺接させて該軸部を中心に回動し、軸部の突出方向の2点においては、操作子を押し込み操作したときに、操作子が押し込み側とは反対側における軸部と長孔との接触部を支点に、押し込み側の軸部に対する長孔の余裕長で押し込まれて回動する。かくして、操作子を操作子支持体だけで4点での押し込み操作可能に支持することができるものであり、従来のもののような中間部材を必要としないので、使用部品点数の削減、コストの低減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例を1つの操作状態で示す図8相当図
【図2】他の操作状態で示す図8相当図
【図3】異なる操作状態で示す図7相当図
【図4】更に異なる操作状態で示す図7相当図
【図5】正面図
【図6】分解斜視図
【図7】図5のVII−VII線に沿う拡大断面図
【図8】図5のVIII−VIII線に沿う拡大断面図
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例(一実施形態)につき、図面を参照して説明する。
まず、図5には、操作装置の全容を正視して示しており、カバー1に開口部2が形成され、この開口部2から第1の操作子3が臨んでいる。又、第1の操作子3の中央部にも開口部4が形成されており、この開口部4から第2の操作子5が臨んでいる。この場合、開口部2、第1の操作子3、開口部4、及び第2の操作子5は、いずれも正面形が四角形を成している。
【0010】
カバー1の後側には、図6、図7及び図8に示すボディ6が存在している。このボディ6は、上記第2の操作子5の後側部分に四角筒状の操作子支持体7を一体に形成して有しており、この操作子支持体7の一方向である、この場合、左右方向の両側の面には軸部8,9を突設している。軸部8,9は、基本的にはともに短円柱状を成すもので、それを各突出端側の前側で斜状に切除した形状に形成している。
【0011】
又、上記ボディ6における操作子支持体7の上下方向の両側方位置と、左右方向の両側方位置には、それぞれ段付き円筒状のプッシャガイド部10,11,12,13を形成しており、このプッシャガイド部10〜13にはそれぞれプッシャ14,15,16,17を挿入している。プッシャ14〜17は、後端部につば部14a〜17aを有する円柱状を成すもので、前端部がそれぞれプッシャガイド部10〜13から前方に突出している。
【0012】
更に、ボディ6の後側には、ボディ6側にラバーシート18を接合した回路基板19を組み付けている。ラバーシート18は、上記ボディ6のプッシャガイド部10〜13のそれぞれ後側に位置する部分と、それらの中央部とに、隆起部20,21,22,23,24を有している。この隆起部20〜24は、それぞれ頭部20a〜24aが厚肉であり、裾部20b〜24bが薄肉で、可撓性を有しており、頭部20a〜24aのそれぞれ後面部に可動側の接点25,26,27,28,29を有している。
【0013】
これに対して、回路基板19は、上記ラバーシート18の隆起部20〜24の頭部20a〜24aのそれぞれ後側に位置する部分に、固定側のそれぞれ一対の接点30,31,32,33,34を有しており、これらの固定側の接点30〜34は上記可動側の接点25〜29と対向している。なお、図6では、固定側の接点30〜34を省略して回路基板19を図示している。
【0014】
そして、前記第1の操作子3の裏面には、被支持部35と押圧部36,37,38,39を一体に形成しており、そのうちの被支持部35は、第1の操作子3の前記開口部4周りの部分から後方へ突出させて前記操作子支持体7より一回り大きな四角筒状に形成したもので、これの左右方向(一方向)の両側部に、長孔40,41と、それらのそれぞれ両側に位置する切り込み部42(図9参照)とを形成し、更に、該被支持部35の後端側内面部には全周にわたって斜面43を形成している。
【0015】
長孔40,41は、前記軸部8,9の直径より第1の操作子3の押し込み方向である前後方向に長いものであり、この長孔40〜41を、上記斜面43から切り込み部42による可撓性を利用して前記軸部8,9に嵌合し、第1の操作子3を前記カバー1の開口部2中に位置させている。
【0016】
押圧部36〜39は、上記被支持部35の上下方向の両側方位置と左右方向の両側方位置とにそれぞれボス状に突設したものであり、そのうちの押圧部36の後端を前記プッシャ14の前端に、押圧部37の後端を前記プッシャ15の前端に、押圧部38の後端を前記プッシャ16の前端に、押圧部39の後端を前記プッシャ17の前端に、それぞれ当接させている。
【0017】
ここで、前記ラバーシート18の隆起部20〜23は、上記プッシャ14〜17への押圧部36〜39の当接に対して、プッシャ14〜17の沈み込みを阻止するものであり、すなわち、第1の操作子3を前記押し込み方向とは逆の方向に付勢する付勢手段として機能するものであり、それによって第1の操作子3の前面を常時は前記カバー1の前面より若干突出する状態に保持するようになっている。
【0018】
このほか、前記操作子支持体7の内面部に1か所には、図7に示すように突部44を形成しており、それに対し、前記第2の操作子5には周側壁の対応個所に孔45を形成していて、第2の操作子5を第1の操作子3の前記開口部4から操作子支持体7の内部に挿入することに併せ、上記突部44に孔45を係合させて抜け止めしている。
【0019】
又、第2の操作子5は内部から後方へ押圧部46をボス状に突設していて、この押圧部46の後端を前記ラバーシート18の隆起部24の前端に当接させている。ここで又、上記隆起部24は、押圧部46の当接に対して、第2の操作子5の沈み込みを阻止するものであり、すなわち、第2の操作子5を押し込み方向(前後方向)とは逆の方向に付勢する付勢手段としても機能するものであり、それによって第2の操作子5の前面を常時は第1の操作子3の前面と面一な状態に保持するようになっている。
【0020】
なお、第1の操作子3の前面には、図5及び図6に示すように、これの操作部を示す標示47,48,49,50を上下左右の4か所に設けている。
【0021】
次に、上記構成のものの作用を述べる。
まず、第1の操作子3の軸部8,9の突出方向と直交する方向である上下方向の2点のうち、上部(標示47の部分)を図3に矢印Aで示すように前方から後方へ押し込み操作すると、第1の操作子3は両側の軸部8,9周り(後側)と長孔40,41の内周部(後側)とを摺接させて該軸部8,9を中心に図3で時計回り(矢印A′)に回動し、それにより、押圧部36でプッシャ14を押し込み、ラバーシート18の隆起部20を押し込んで、可動側の接点25を固定側の接点30に接触させ、該固定側の接点30間を可動側の接点25で橋絡して導通させる。
【0022】
それに対して、第1の操作子3の下部(標示48の部分)を図4に矢印Bで示すように前方から後方へ押し込み操作すると、第1の操作子3は両側の軸部8,9周り(後側)と長孔40,41の内周部(後側)とを摺接させて該軸部8,9を中心に図4で反時計回り(矢印B′)に回動し、それにより、押圧部37でプッシャ15を押し込み、ラバーシート18の隆起部21を押し込んで、可動側の接点26を固定側の接点31に接触させ、該固定側の接点31間を可動側の接点26で橋絡して導通させる。
【0023】
一方、第1の操作子3の軸部8,9の突出方向である左右方向の2点のうち、左部(標示49の部分)を図1に矢印Cで示すように前方から後方へ押し込み操作すると、第1の操作子3は押し込み側とは反対側の右部側における軸部9と長孔41との接触部Sを支点に、押し込み側(左部側)の軸部8に対する長孔40の余裕長で押し込まれて、図1で反時計回り(矢印C′)に回動し、それにより、押圧部38でプッシャ16を押し込み、ラバーシート18の隆起部22を押し込んで、可動側の接点27を固定側の接点32に接触させ、該固定側の接点32間を可動側の接点27で橋絡して導通させる。
【0024】
それに対して、第1の操作子3の軸部8,9の右部(標示50の部分)を図2に矢印Dで示すように前方から後方へ押し込み操作すると、第1の操作子3は押し込み側とは反対側の左部側における軸部8と長孔40との接触部Tを支点に、押し込み側(右部側)の軸部9に対する長孔41の余裕長で押し込まれて、図2で時計回り(矢印D′)に回動し、それにより、押圧部39でプッシャ17を押し込み、ラバーシート18の隆起部23を押し込んで、可動側の接点28を固定側の接点33に接触させ、該固定側の接点33間を可動側の接点28で橋絡して導通させる。
【0025】
なお、上記いずれの状態においても、操作を解除すれば、各部品はラバーシート18の隆起部20〜23が圧縮された状態から復元することによる付勢力で復帰する。
【0026】
このように上記構成のものでは、第1の操作子3を操作子支持体7だけで4点での押し込み操作可能に支持することができるものであり、従来のもののような中間部材を必要としないので、使用部品点数の削減、コストの低減ができる。
【0027】
なお、以上に加えて、第2の操作子5を前方から後方へ押し込み操作すると、押圧部46がラバーシート18の隆起部24を押し込んで、可動側の接点29を固定側の接点34に接触させ、該固定側の接点34間を可動側の接点29で橋絡して導通させるが、この第2の操作子5とそれに関連する構成は具えていなくても良い。
【0028】
又、軸部8,9は操作子支持体7に設け、長孔40,41を第1の操作子3に設けるようにしても良い。更に、軸部8,9と長孔40,41は、第1の操作子3又は操作子支持体7に、第1の操作子3の上下方向の両側に位置して設けるようにしても良い。加えて、軸部8,9と長孔40,41は、第1の操作子3の斜め方向の両側に位置して設けるようにしても良く、第1の操作子3は上向きに設けるようにしても良い。
【0029】
そして、第1の操作子3の操作対象は、固定側の接点30〜33に対する可動側の接点25〜28以外のものであっても良い。
そのほか、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0030】
図面中、3は第1の操作子(操作子)、7は操作子支持体、8,9は軸部、20〜23は隆起部(付勢手段)、40,41は長孔を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作子と、操作子支持体とを具備し、
それら操作子と操作子支持体とのうちの一方の部材に、操作子の一方向又はそれと直交する他方向の両側に位置してそれぞれ突出する軸部を設け、
前記操作子と操作子支持体とのうちの他方の部材に、前記操作子の一方向又は他方向の両側に位置して前記軸部の直径より操作子の押し込み方向に長い長孔を設け、
それら軸部と長孔とを嵌合し、
前記操作子を前記押し込み方向とは逆の方向に付勢する付勢手段を具えたことを特徴とする操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79656(P2012−79656A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226518(P2010−226518)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】