説明

操作部構造及び携帯機器

【課題】 操作部の位置や姿勢の自由度を従来よりも高めることのできる操作部構造を提供する。
【解決手段】 本発明の操作部構造20は、外側駆動部21と内側従動部22とが変形可能な可撓性伝達材23を介して接続され、外側駆動部21が駆動方向に動作可能に保持されるとともに、内側従動部22が前記駆動方向とは異なる従動方向に動作可能に保持され、外側駆動部21が前記駆動方向に動作することにより可撓性伝達材23が変形しながら内側従動部22を前記従動方向に駆動するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操作部構造及び携帯機器に係り、特に、各種機器の内部に装備され、押しボタンとして構成される場合に好適な操作部の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、腕時計などの携帯機器には、リュウズや押しボタンなどの各種の外部操作部材が設けられている。例えば、腕時計に装備された押しボタンでは、時計ケースに対して、パッキンなどを介してボタン本体が軸方向に移動可能に、しかも、ボタン頭部が時計ケースから僅かに突出するように取り付けられる。ボタン本体は必要に応じ伝達軸を介して内部構造体に接続される。このようにボタン本体の動作により内部構造体を制御するようにした操作部構造としては、例えば、ボタン本体に接続固定された伝達軸の内端が内部構造体に作用する内側作用部として設けられ、ボタン本体が外部から押圧されると、伝達軸が軸線方向に移動して上記内側作用部により内部構造体に設けられた接点ばねが駆動され、電気接点が開閉するように構成されたものがある。
【0003】
また、従来の操作部構造としては、時計ケースに取り付けた内側ボタンと、この内側ボタンの頭部に作用する外側ボタンを内側ボタンに対して傾斜した姿勢でサイドカバーに取り付けることにより、外部に露出する外側ボタンの位置及び姿勢の自由度を或る程度高めることができ、外観デザインのバリエーションを広げることを可能にした方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平4−325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、腕時計の内部構造体であるムーブメントの一般的なものでは、上記の操作部構造に対応する接点ばねなどが中心に向かう半径方向に移動可能に構成されているため、上記ボタン本体を備えた操作部構造の軸線もまた半径方向に伸びるように設けられる必要がある。このため、時計ケースから突出するボタン頭部の位置設定に自由度が無く、内部構造や外観デザインの設計に制約が生じ、また、外部操作部の操作性を十分に高めることができないといった問題点がある。
【0005】
例えば、図12(a)に示すように、ケース1の中にムーブメント2が収容されている場合、通常はムーブメント2の中心に向く姿勢で押しボタン3を設けるが、特に図示の角型のケース1を用いる場合には、押しボタン3の姿勢がケース1の外観に適合せず、外観デザインのバランスが悪い。これを改善する方法としては、例えば、図12(b)に示すように、ケース1の形状に合わせて左右方向に向かう姿勢で押しボタン4を設置することが考えられるが、この場合には、押しボタン4の外部操作部の位置が上方位置から大きく中央寄りに移動してしまうため、外観デザインのバランスが取れない場合がある。さらに、これを防止するためには、図12(c)に示すように、押しボタン5の頭部をボタン軸に対して偏芯させる方法が考えられるが、この場合には、押しボタン5の偏芯形状によって入力操作が不安定になりやすく、十分な操作性を確保するには、押しボタン5を復帰させるための戻しばねを複数用いるなど、部品点数を増加させたり構造を複雑化させたりする必要がある。
【0006】
一方、前述の二つのボタンを備えた操作部構造では、内側ボタンと外側ボタンの軸線間の角度が90度に近くなると操作が困難になることにより、実用的な角度範囲が限られるため、外部操作部の位置や姿勢について依然として制約が多く、斬新な構造やデザインを実現することが難しいという問題点がある。
【0007】
また、両ボタンの軸線間に角度がついていることにより、外側ボタンのストロークを内側ボタンのストロークよりも大きくする必要があるため、操作ストロークが大きくなり操作性が悪化するとともに、操作ストロークの増大により外側ボタンの突出量を大きくする必要があるので外観デザインも悪くなるという問題点がある。
【0008】
さらに、二つのボタンを収容する必要があることにより、サイドカバーが大きく張り出すことになり、時計ケース全体が大型化するという問題点もある。
【0009】
その上、二つのボタンを付き合わせた構造であることにより、部品のばらつきなどの影響で両ボタン間にガタが生じやすく、外側ボタンから内側ボタンへの操作力の伝達効率も低くなるため、操作性が悪いという問題点もある。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、操作部の位置や姿勢の自由度を従来よりも高めることのできる操作部構造を提供することにある。また、他の目的は、機器の内部構造や外観デザインの設計上の制約を従来よりも低減することのできる操作部構造を提供することにある。さらに、別の目的は、内部構造や外観デザインの自由度を確保しつつ、小型化を図ることのできる操作部構造を提供することにある。また、さらに別の目的は、内部構造や外観デザインの自由度を確保しつつ、操作性の悪化を抑制することのできる操作部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
斯かる実情に鑑み、本発明の操作部構造は、各種機器の内部に装備され、外部操作により直接若しくは間接的に生じた外側駆動部の動作が伝達されて前記機器の内部構造体に作用する内側従動部が駆動されるように構成された操作部構造において、前記外側駆動部と前記内側従動部とが変形可能な可撓性伝達材を介して接続され、前記外側駆動部が駆動方向に動作可能に保持されるとともに、前記内側従動部が前記駆動方向とは異なる従動方向に動作可能に保持され、前記外側駆動部が前記駆動方向に動作することにより前記可撓性伝達材が変形しながら前記内側従動部を前記従動方向に駆動するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、可撓性伝達材が変形しながら外側駆動部の動作を内側従動部に伝達することにより、外側駆動部の駆動方向と内側従動部の従動方向との関係を任意に設定することが可能になるため、外側駆動部の位置や姿勢の自由度を大幅に高めることができるとともに、各種機器の内部構造や外観デザインの設計上の制約をほとんど無くすことが可能になる。また、可撓性伝達材の変形により操作力を伝達するため、任意の経路に沿って操作力を伝達できることから、操作部構造をコンパクトに構成することが可能になるため、小型化も可能である。さらに、可撓性伝達材の変形により操作力を伝達するため、外側駆動部の操作ストロークを大きくしなくても内側従動部を駆動することが可能になり、可撓性伝達材の変形特性によって伝達効率も高めることが可能であることから、操作性の悪化を抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記可撓性伝達材は、軸線方向に変形しにくく、軸線の撓み方向に変形し易く構成された軸状部材であることが好ましい。これによれば、可撓性伝達材として軸線方向には変形しにくく軸線の撓み方向に変形しやすい軸状部材を用いることで、外側駆動部の駆動方向と内側従動部の従動方向とが大きく異なっていても、可撓性伝達材の軸線方向の伝達効率を高めることができるため、外側駆動部の動作をより確実に内側従動部に伝達できる。また、上記軸状部材を用いることにより、操作部構造の組立を容易に行うことができ、さらに、操作部の周囲構造を簡易に構成することが可能になる。
【0014】
本発明において、前記外側駆動部と前記内側従動部の間の少なくとも一部に前記可撓性伝達材を案内する案内構造が設けられていることが好ましい。案内構造を設けることで、可撓性伝達材の少なくとも一部が案内されるため、可撓性伝達材の変形態様を規制することができることから、外側駆動部の動作をより確実且つ効率的に内側従動部に伝達することが可能になる。
【0015】
本発明において、前記案内構造は、前記外側駆動部と前記内側従動部の間の既定の位置範囲において前記可撓性伝達材を既定の湾曲状態に維持するように構成されていることが好ましい。これによれば、可撓性伝達材を既定の位置範囲において既定の湾曲状態に維持することで、可撓性伝達材の変形方向を、外側駆動部の駆動方向とは異なる内側従動部の従動方向へと、無理なく確実に向けることができ、また、可撓性伝達材における伝達損失を低減することができる。
【0016】
本発明において、前記案内構造は、前記外側駆動部から前記内側従動部に至る全範囲において既定の案内経路を構成することが好ましい。外側駆動部から内側従動部に至る全範囲において既定の案内経路を構成することにより、全範囲に亘って可撓性伝達材を案内し、その変形態様を規制することが可能になるので、より確実かつ効率的に内側従動部を駆動することが可能になる。
【0017】
本発明において、前記案内構造は、前記外側駆動部と前記内側従動部の間に配置され、前記可撓性伝達材を挿通させる筒状部材により構成されていることが好ましい。これによれば、可撓性伝達材を挿通させる筒状部材によって案内構造を構成することにより、可撓性伝達材の少なくとも一部を全周に亘って規制できるため、より確実かつ効率的に内側従動部を駆動することが可能になる。
【0018】
本発明において、前記案内構造は、前記外側駆動部から前記内側従動部に向けて伸び、前記可撓性伝達材を挿通させるように構成された外装材の案内孔により構成されていることが好ましい。これによれば、外装材の案内孔によって案内構造が構成されるため、案内構造を構成するために別部材を設ける必要がなくなることから、部品点数の増加を抑制できる。ここで、外装材とは、腕時計であれば時計ケース、バンド、裏蓋などといったものであり、各種機器において外部に露出する態様で用いられる部品を言う。
【0019】
本発明においては、前記外側駆動部の少なくとも一部が外部に露出して操作可能に構成された外部操作部を構成するようにしてもよく、また、外側駆動部を駆動する別の外部操作部材を設けてもよい。後者の外部操作部材の例としては、前記駆動方向と交差する回転軸を備え、その回転方向に見て凹凸状に構成された作用部を備えてなる回転操作部材が挙げられる。この場合、前記作用部は、前記回転操作部材の回転に応じて前記外側駆動部を前記駆動方向に押圧するように構成されていることが好ましい。このような回転操作部材としては、腕時計の回転ベゼル、各種機器の操作ダイヤルなどが挙げられる。
【0020】
本発明の操作部構造は各種の機器に設けることができる。特に、腕時計・懐中時計などの携帯時計、腕時計・ストップウォッチ・ダイバーズコンピュータなどのリスト装着機器、携帯電話、携帯型情報端末などの携帯機器に本発明の操作部構造を設けることにより、操作性を犠牲にすることなく、内部構造や外観デザインのバリエーションを大幅に広げることができ、また、操作部構造を設けることによる機器の大型化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態の操作部構造は、機器(電子機器或いは携帯機器など)として腕時計その他の携帯時計に適用する場合について例示するものであるが、本発明はこれに限らず、携帯時計以外の任意の機器の操作部構造として広く適用できるものである。
【0022】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る第1実施形態の操作部構造を適用する腕時計の全体構造を示す概略平面図、図2は、同腕時計の操作部構造が設けられた部分の断面構造を示す部分縦断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の腕時計10は、時計本体11と、この時計本体11に接続されたバンド12とを有する。時計本体11においては、ケース(時計ケース或いは胴)13の内側に内部構造体(ムーブメント)14が収容され、この内部構造体14の表側に配置された文字板及び指針からなる表示部15が設けられている。表示部15は液晶表示体(LCD)や有機ルミネッセンス表示体などの各種表示体で構成してもよい。表示部15の表面には表示窓15aが設けられている。また、ケース13の側部にはリュウズや押しボタンなどの外部操作部16,17が設けられている。
【0024】
本実施形態では、ケース13の前面側周辺部、すなわち、ケース13の前面のうち上記表示部15の周囲部分に、押しボタン式の外部操作部21sが露出している。そして、この外部操作部21sを含む操作部構造20がケース13の内部に設けられている。
【0025】
この操作部構造20には、図2に示すように、ケース13に設けられた貫通孔13a内に、外側駆動部21、内側従動部22、可撓性伝達材23及び案内部材24が配置されている。本実施形態の場合、貫通孔13aはケース13の表面から下方に伸び、その後、ケース13の内側に屈折して、内部構造体14に向かう方向に開口し、全体としてL字状に構成されている。
【0026】
外側駆動部21は、ケース13の貫通孔13aの外側開口部近傍に出没可能となるように保持されている。具体的には、外側駆動部21は貫通孔13a内に固定された保持部材25の内部でパッキン26を介して図示上下方向(駆動方向)に動作可能に保持されている。また、外側駆動部21と保持部材25との間にはコイルバネなどの弾性部材27が介在し、この弾性部材27は、外側駆動部21をケース13から突出する方向(図示上方)に付勢し、復帰ばねとして機能するようになっている。外側駆動部21の外端は上記の外部操作部21sを構成している。
【0027】
内側従動部22は、ケース13の貫通孔13aの内側開口部近傍に出没可能となるように保持されている。具体的には、内側従動部22は貫通孔13a内に固定された保持部材28の内部で内部構造体14に向けて図示左右方向(従動方向)に動作可能に保持されている。内側従動部22の先端は内部構造体14の接点ばね14aに当接する内側作用部22fを構成している。
【0028】
可撓性伝達材23は上記外側駆動部21と内側従動部22とを連結している。すなわち、可撓性伝達材23の一端は外側駆動部21に接続固定され、他端が内側従動部22に接続固定されている。可撓性伝達材23は基本的に軸状部材、図示例では円筒部材で構成されている。この可撓性伝達材23は、例えば、合成樹脂、螺旋状の線材や帯材などで構成されたフレキシブルチューブ、コイルバネ、ワイヤ、ウレタン樹脂などの軟質樹脂やゴムなどの弾性素材を用いた軸材などで構成できる。なお、図示例とは異なり、可撓性素材で構成された中実の軸状部材であってもよい。いずれにしても、可撓性伝達材23は、変形可能な構造や素材で構成されていることが必要であり、特に柔軟な素材を用いることが望ましい。ただし、案内部材24の案内・規制作用が不十分な状況下でも、外側駆動部21の動作を効率的に内側従動部22へ伝達するには、可撓性伝達材23は、軸線方向には変形しにくく、軸線が撓む方向には容易に変形するように構成されていることが望ましい。
【0029】
この可撓性伝達材23は、本実施形態の場合、外側駆動部21に対する接続端から内側従動部22に対する接続端に向けて湾曲した姿勢で貫通孔13a内に配置されている。これによって、外側駆動部21の駆動方向と、内側従動部22の従動方向とが異なる方向に設定される。特に、可撓性伝達材23が湾曲状態となっていて、後述するように可撓性伝達材23が移動してもその湾曲状態が或る程度維持されることで、操作力の伝達効率を高めることができる。
【0030】
案内部材24は、上記可撓性伝達材23が挿通する筒状部材で構成され、可撓性伝達材23の上記湾曲姿勢を保持するように構成されている。案内部材24の一端は上記保持部材25に固定され、他端は上記保持部材28に固定されている。これにより、案内部材24は可撓性伝達材23をその全長に亘って覆うように構成されている。案内部材24は、合成樹脂、金属、セラミックスなどの各種素材で構成することができるが、可撓性伝達材23よりも撓み変形しにくく構成されていることが好ましい。これによって案内部材24は可撓性伝達材23の撓み変形の態様を十分に規制することが可能になる。
【0031】
案内部材24が可撓性伝達材23に較べて十分に変形しにくく構成されている場合には、外部駆動部21の動作に伴って可撓性伝達材23が移動しても案内部材24は実質的に変形せず、案内部材24によって可撓性伝達材23は案内部材24の内面形状に沿った姿勢に規制されながら変形していく。すなわち、可撓性伝達材23は、案内部材24の内面形状に沿った湾曲形状部分が外側駆動部21寄りに移動していく態様で変形しながら内側従動部22側へ移動していく。したがって、案内部材24は、既定の位置範囲において既定の湾曲形状に維持する態様で可撓性伝達材23を案内・規制していることになる。
【0032】
本実施形態の場合、筒状に構成された可撓性伝達材23を筒状に設けられた案内部材24が全長に亘って包みこんでいるので、可撓性伝達材23は自身の内側へは座屈しにくく、しかも、可撓性伝達材23の外面は全周及び全長に亘って案内部材24の内面に規制された状態となっていることから、可撓性伝達材23が撓み変形可能な素材で構成されていさえすれば、外側駆動部21の移動量を減ずることなく内側従動部22へと伝えることができる。
【0033】
なお、ケース13の貫通孔13aは、ケース13の外側面から内側面に向けて形成された貫通孔と、この貫通孔の途中部分に連通するようにケース13の前面から穿設された凹穴とを形成した後、ケース13の外側面の開口部を閉鎖部材13pで閉塞することによって容易に構成される。ただし、上記貫通孔13aと同様の屈折孔構造は、ケース13を複数部品の組合せ構造で構成することによっても容易に実現できる。なお、裏蓋19は嵌め込みなどの適宜の方法でケース13に接続固定されている。
【0034】
以上説明した本実施形態によれば、外部操作部21sを指などで押圧すると、外側駆動部21が弾性部材27の弾性力に抗して下方(駆動方向)に移動し、これによって可撓性伝達材23が下方に移動しながら変形し、内側従動部22をケース13の内側方向(従動方向)に移動させるので、内側従動部22の内側作用部22fが内側へ突出する。これにより、接点ばね14aが押圧され、内部構造体14内の図示しない電気接点などが開閉動作する。
【0035】
本実施形態では、外側駆動部21と内側従動部22との間に可撓性伝達材23が介在し、外側駆動部21の動作を可撓性伝達材23の変形によって伝達して内側従動部22を駆動するようにしていることにより、外側駆動部21の駆動方向と内側従動部22の従動方向を任意に設定することができるため、外部操作部21sの位置や方向の自由度を高めることができる。また、同様の理由により腕時計10の時計本体11の内部構造や外観デザインの制約を大幅に低減することができる。
【0036】
また、上記構成により、外側駆動部の駆動ストロークと内側従動部の従動ストロークとをほとんど同一になるように設定できるとともに、ガタなどによる操作力の損失も低減できるため、操作の確実性及び正確性を確保でき、操作性及び操作感を高めることができる。特に、高い操作性や確実性が要求されるスタート操作、ストップ操作、リセット操作などに用いる場合に効果的である。
【0037】
なお、上記実施形態では、軸状若しくはチューブ状の固形部材で構成された可撓性伝達材23を用いているが、可撓性伝達材23としてゲル状物質を用いても良く、さらには、粒状体、粉体、液体などの流動体を用いてもよい。ただし、後者の場合には、案内部材24や貫通孔13aなどの内部に流動体を密封する必要がある。また、上記実施形態では筒状の案内部材24を設けているが、案内部材24の代わりに、ケース13の貫通孔13aの内面自体を案内構造として用いることも可能である。また、案内構造としては、可撓性伝達材23の全体を案内する必要はなく、外側駆動部21から内側従動部22までの間の一部においてのみ可撓性伝達材23を案内するように構成されたものでもよい。例えば、上記の案内部材24やケース13の貫通孔13aの一部(上記可撓性伝達材23の湾曲部分が配置される位置範囲に相当する部分)のみが可撓性伝達材23を案内する案内構造として構成されていてもよい。
【0038】
[第2実施形態]
次に、図3乃至図5を参照して本発明に係る第2実施形態の操作部構造20′について説明する。図3は第2実施形態の操作部構造を適用した腕時計10′の時計本体11′を示す平面図、図4は同実施形態の操作部構造20′を示す腕時計の部分縦断面図である。この実施形態において、操作部構造20′を適用する腕時計10′は、上記第1実施形態と同様の内部構造体14、接点ばね14a、表示部15、表示窓15a、外部操作部16,17を有するとともに、操作部構造20′における外側駆動部21、内側従動部22、可撓性伝達材23、案内部材24、保持部材25,28、パッキン26及び弾性部材27は基本的に第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
【0039】
本実施形態では、図3に示すように、ケース13′の表面上に回転ベゼル18が回転可能に取り付けられている。この回転ベゼル18は、表示部15を包囲するリング状に構成され、ケース13′により表示部15の周りを回転可能となるように軸支されている。
【0040】
一方、操作部構造20′では、図4に示すように、外側駆動部21がケース13′から回転ベゼル18に向けて突出した状態となるように構成され、その外端面21aが上記回転ベゼル18の内面18aに対向配置されている。外端面21aは、回転ベゼル18からの駆動力をスムーズに受けることができるように図示のように凸曲面状に構成されることが好ましい。回転ベゼル18の内面18aには、回転ベゼル18の回転方向に見て凹凸構造が設けられている。この凹凸構造は、図5(a)に示す回転方向に沿った回転ベゼル18の断面図を見ればわかるように、内面18a上において回転方向に設けられた複数の突部18bによって構成されている。この突部18bは、上記外側駆動部21の外端面21aに当接し、外側駆動部21を図示下方へ押圧する作用部である。突部18bは、回転ベゼル18を図3において時計周りに回転させたときに上記外側駆動部21に当接する側に傾斜面を有し、回転ベゼル18を上記時計回りに回転させたとき、外側駆動部21の上記外端面21aが上記傾斜面に当接し、この傾斜面によって外側駆動部21が徐々に下方に押し下げられていくようになっている。
【0041】
上記のように構成することにより、回転ベゼル18を時計周りに回転させることで、突部18bにより外側駆動部21を押圧して駆動方向に動作させることができるので、上記第1実施形態と同様に、可撓性伝達材23を介して内側従動部22を従動方向に駆動し、所望の操作を行うことが可能になる。この場合、通常の外部操作部16,17,21sよりも大きな回転ベゼル18を回転操作するだけでよいので、操作性がきわめて高くなり、例えば、既定時間内(1秒以内)に二度押しする操作(例えばリセット操作など)が設定されている機器においてもきわめて容易に当該操作を行うことができ、高齢者でも苦労なく操作をすることができる。また、このように回転ベゼル18を介して外側駆動部21を操作することで、外側駆動部21の所要の動作ストロークが回転ベゼル18の突部18bの寸法(高さ)によって確実に得られるので、使用者が操作量(押し込み量)を考慮する必要もなくなる。
【0042】
図5(b)は回転ベゼル18の異なる構造を示すものであり、回転ベゼル18の内面18a上に突部18c(作用部)が設けられているが、この突部18cは、上記の突部18bとは異なり、回転方向両側に共に傾斜面を備えたものとなっている。このようにすると、回転ベゼル18を時計周りと反時計周りのいずれに回転させた場合でも、突部18cの傾斜面によりスムーズに外側駆動部21を押し下げできる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、図6を参照して、本発明に係る第3実施形態の操作部構造について説明する。この実施形態は、図12に示したものと同様の形状を有する時計本体31を備えた腕時計30に関するものである。本実施形態の操作部構造40では、ケース33に取り付けられた外側駆動部41と、ケース33の内部に配置され、内部構造体34を位置決めするための中間部材(中枠)38に取り付けられた内側従動部42と、上記外側駆動部41と内側従動部42とを連結する可撓性伝達材43と、この可撓性伝達材43を案内する案内部材44とを備えている。また、外側駆動部41を駆動方向(図示左右方向)に動作可能に保持する保持部材45、パッキン46、弾性部材47、並びに、内側従動部42を従動方向(図示斜め方向)に動作可能に保持する保持部材48は、いずれも上記第1実施形態と実質的に同様であるので、これらの説明は省略する。
【0044】
この実施形態では、外側駆動部41がケース33に保持されているとともに、可撓性伝達材43がケース33の内側に入り、ケース33と内部構造体34の間、或いは、ケース33と中間部材(中枠)38との間を通過した後、内部構造体34の所定部位に臨む内側従動部42に接続固定されている。この場合、可撓性伝達材43や案内部材44の位置或いは姿勢をケース33の内面や中間部材(中枠)38によって位置決めするように構成することが好ましい。
【0045】
この実施形態によれば、上記操作部構造40を用いたことで、内部構造体34の構成に制約を受けずに、外部操作部を構成する外側駆動部41の位置や姿勢を自由に設定することができる。例えば、図示例の場合、外側駆動部41を左右方向に動作するように構成するなど、外側駆動部41の姿勢をケース33に適合した方向に設定することができ、かつ、外側駆動部41をリュウズなどの外部操作部36から十分に離反させるなど、外側駆動部41の位置及び姿勢を外観デザイン及び内部構造に合わせて任意に設定することができる。
【0046】
また、この実施形態のように、可撓性伝達材43をケース33の内部の任意の空間部を通過するように配置できるため、デッドスペースを有効利用するなどの方法により、ケース33の厚肉化や大型化を回避し、機器(腕時計)の小型化を図ることが可能である。特に、ケース33と内部構造体34の間にある空間に可撓性伝達材43を配置することが有効であり、この場合、中間部材(中枠)によって可撓性伝達材43や案内部材44を位置決めすることもできる。さらには、案内部材44の代わりに、ケース33の内面や中間部材(中枠)38を可撓性伝達材43の案内構造として用いることも可能である。
【0047】
[第4実施形態]
次に、図7乃至図9を参照して第4実施形態について説明する。この実施形態の操作部構造は、いずれも、通常は使用しない非常ボタン、或いは、操作しにくいように構成された沈頭ボタンを構成するものである。
【0048】
図7及び図8に示す例では、腕時計50の時計本体51におけるバンド52との接続部分の裏側に外側駆動部61が露出してなる操作部構造60を備えている。この操作部構造60においては、外側駆動部61がケース53の外面から突出しないように配置されている点を除き、外側駆動部61、内側従動部62、可撓性伝達材63、案内部材64、保持部材65、パッキン66、弾性部材67、保持部材66は上記第1実施形態と本質的に同様に構成できる。
【0049】
本実施形態の場合、内側従動体62と内部構造体54との位置関係は上記第3実施形態とほぼ同様であるが、ケース53におけるバンド52との接続部分の裏側に外側駆動部61を配置する関係上、内部構造体54の周囲を部分的に周回するように可撓性伝達材63をより広い範囲に亘って引き回して設置してある。この場合において、可撓性伝達材63及び案内部材64を中間部材(中枠)58によって位置決めするように構成することが好ましい。また、案内部材64を省略し、中間部材(中枠)58自体によって可撓性伝達材63を案内するように構成してもよい。
【0050】
図9に示す例では、ケース53′は裏面側において裏蓋59と嵌合しているが、この裏蓋59の周囲部分に張り出したケース53′の裏面側外面部に外側駆動部61′が露出している。この外側駆動部61′もまた、上記裏側外面部から突出しない状態で取り付けられている。この例では、保持部材65、パッキン66及び弾性部材67は図7及び図8に示す例と同様に構成され、また、ケース53′の内側に伸びる可撓性伝達材63や案内部材64の取り回し態様、並びに、図示しない内側従動部62及び保持部材58も上記図7及び図8に示す例と同様に構成することができる。
【0051】
図7乃至図9に示す構成においては、外部駆動部61がケース63,63′の外面から突出していないだけでなく、時計本体とバンドの間や裏面側などアクセスしにくい場所に配置されているので、誤操作の恐れはほとんどない。なお、この外部駆動部61を操作する場合には、先のとがった軸状部材で外部駆動部61を突くようにすればよい。このような操作部構造は、例えば、時刻表示の修正時に行うオールリセット操作(指針を基準位置に移動させるための操作)を行うためのものなどに適用できる。
【0052】
本実施形態では、上記のような構成において操作部構造60を用いることで、内部構造体54を変更しなくても、或いは、ケース構造を変更しなくても、外部駆動部61をアクセスしにくい場所に自由に配置することができるようになるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0053】
[第5実施形態]
次に、図10及び図11を参照して、本発明に係る第5実施形態について説明する。この実施形態の操作部構造80は、時計本体71とバンド72を備えた腕時計70に設けられたもので、ケース73、内部構造体74、表示部75、表示窓75a、外部操作部76は上記各実施形態と基本的に同様である。また、操作部構造80は、上記第1実施形態と同様の外側駆動部81、内側従動部82、可撓性伝達材83、案内部材84、保持部材85、パッキン86、弾性部材87及び保持部材88を備えている。
【0054】
この実施形態では、外側駆動部81が保持部材85を介してバンド72に保持され、可撓性伝達材83及び案内部材84がバンド72の内部を挿通してケース73の内部に導入され、ケース73に対して内側従動部82が保持部材88を介して内部構造体74に臨むように取り付けられている。なお、この実施形態では、内側従動部82と保持部材88との間にもパッキン82aが介在している。これは、ケース73の防水性を確保するためである。また、内側従動部82を初期位置に復帰させるためのコイルバネ等の弾性部材89が設けられている。これは、可撓性伝達材83が先の各実施形態よりも長くなるため、内側従動部82の動作位置をより正確に設定するためである。
【0055】
このように、本実施形態では、バンド72の内部からケース73の内部に亘り接続部構造80が配置され、外側駆動部81の外部操作部81sがバンド72の表面に配置されるので、設置場所の少ない時計本体71に外部操作部81sを無理に設ける必要がなくなることから、外観デザインや外部操作部81sの設計上の自由度をさらに高めることができ、デザインバリエーションを大幅に広げることができる。また、外部操作部81sがバンド72の表面に設けられることにより、手指を外部操作部81sに近づけ易くなることから、さらに操作性を向上させることができる。
【0056】
なお、この実施形態においても、上記案内部材84を省略し、バンド72及びケース73に設けられた貫通孔の内面によって上記可撓性伝達材83を案内するように構成してもよい。
【0057】
尚、本発明の操作部構造及び携帯機器は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態ではいずれも外側駆動部及び内側従動部を軸線方向に移動させる態様の操作部構造を示しているが、外側駆動部及び内側駆動部を軸線周りに回転させる態様の操作部構造としてもよく、さらに、軸線方向の押圧操作と、軸線周りの回転操作とを併用する操作部構造としても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態の腕時計を示す平面図。
【図2】第1実施形態の操作部構造を示す部分縦断面図。
【図3】第2実施形態の腕時計を示す平面図。
【図4】第2実施形態の操作部構造を示す部分縦断面図。
【図5】第2実施形態の回転ベゼルの回転方向に沿った断面を示す部分縦断面図。
【図6】第3実施形態の操作部構造を示す部分横断面図。
【図7】第4実施形態の操作部構造を示す部分縦断面図。
【図8】第4実施形態の操作部構造を示す部分横断面図。
【図9】第4実施形態の異なる操作部構造を示す部分縦断面図。
【図10】第5実施形態の操作部構造を示す部分縦断面図。
【図11】第5実施形態の腕時計を示す平面図。
【図12】従来の腕時計のボタン構造を示す横断面図(a)〜(c)。
【符号の説明】
【0059】
10…腕時計、11…時計本体、12…バンド、13…ケース、14…内部構造体、15…表示部、16,17,21s…外部操作部、20…操作部構造、21…外側駆動部、22…内側従動部、22f…内側作用部、23…可撓性伝達材、24…案内部材、25,28…保持部材、26…パッキン、27…弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種機器の内部に装備され、外部操作により直接若しくは間接的に生じた外側駆動部の動作が伝達されて前記機器の内部構造体に作用する内側従動部が動作するように構成された操作部構造において、
前記外側駆動部と前記内側従動部とが変形可能な可撓性伝達材を介して接続され、
前記外側駆動部が駆動方向に動作可能に保持されるとともに、前記内側従動部が前記駆動方向とは異なる従動方向に動作可能に保持され、
前記外側駆動部が前記駆動方向に動作することにより前記可撓性伝達材が変形しながら前記内側従動部を前記従動方向に駆動するように構成されていることを特徴とする操作部構造。
【請求項2】
前記可撓性伝達材は、軸線方向に変形しにくく、軸線の撓み方向に変形し易く構成された軸状部材であることを特徴とする請求項1に記載の操作部構造。
【請求項3】
前記外側駆動部と前記内側従動部の間の少なくとも一部に前記可撓性伝達材を案内する案内構造が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の操作部構造。
【請求項4】
前記案内構造は、前記外側駆動部と前記内側従動部の間の既定の位置範囲において前記可撓性伝達材を既定の湾曲状態に維持するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の操作部構造。
【請求項5】
前記案内構造は、前記外側駆動部から前記内側従動部に至る全範囲において既定の案内経路を構成することを特徴とする請求項3に記載の操作部構造。
【請求項6】
前記案内構造は、前記外側駆動部と前記内側従動部の間に配置され、前記可撓性伝達材を挿通させる筒状部材により構成されていることを特徴とする請求項3に記載の操作部構造。
【請求項7】
前記案内構造は、前記外側駆動部から前記内側従動部に向けて伸び、前記可撓性伝達材を挿通させるように構成された外装材の案内孔により構成されていることを特徴とする請求項3に記載の操作部構造。
【請求項8】
前記外側駆動部の少なくとも一部が外部に露出して操作可能に構成された外部操作部を構成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の操作部構造。
【請求項9】
前記駆動方向と交差する回転軸を備え、その回転方向に見て凹凸状に構成された作用部を備えてなる回転操作部材がさらに設けられ、
前記作用部は、前記回転操作部材の回転に応じて前記外側駆動部を前記駆動方向に押圧するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の操作部構造。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の操作部構造を有することを特徴とする携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−164591(P2006−164591A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350819(P2004−350819)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】