説明

操縦性能向上を図った船舶

【課題】操縦性能および針路安定性の向上を図った、ポッド推進器を装備した船舶を提供する。
【解決手段】船舶1と、この船舶を推進するポッド推進器10と、このポッド推進器の周囲の船体センターラインの左右もしくは船体センターライン上に対称に配置した制御フィン201〜206と、この制御フィンを駆動する駆動手段と、前記船舶の運転状態を設定する運転状態設定部と、この運転状態設定部の設定に従って前記制御フィンの旋回角を前記ポッド推進器の旋回角と組み合わせ前記の駆動手段を介して制御する制御手段とを備えて構成される。これにより、操舵時の船体運動に伴うオーバーシュートを減少させるとともに旋回性や減速性を含む操縦性能や減速時の針路安定性等を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば操縦性能向上を図った船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
最近脚光を浴びている船舶としてポッド推進器、たとえばタンデム配置のCRP(Contra Rotating Propeller)ポッド推進器を装備した船舶がある。タンデム配置のCRPポッド推進器は、前プロペラとその直後に置かれた後ろプロペラを組み合わせてCRPを構成しているが、前後のプロペラが同心上に配置されるところから、プロペラが1枚のシングルポッド推進器と同様に1軸ポッド推進器の範疇に入る。
【0003】
しかし、特に1軸ポッド推進器を装備した船舶は針路安定性が悪くなる傾向がある。これはポッドを装備するために船尾に大きな空間ができ、旋回抵抗が減少することが主な要因である。
ポッド推進器を備えた船舶の場合、舵を有していないところから、1軸ポッド推進器を装備した船舶に限らず針路安定性を含めた操縦性能を高めることが大きな課題となっている。
【0004】
たとえば、特許文献1では、内部に動力伝達手段などを収容した翼断面形状ストラットによって船体から垂下されたプロペラポッドが動力伝達手段などを含むプロペラ駆動機構を収容し、その紡錘形の一部をなすように前部に回転可能に組み込まれたハブを上記プロペラ駆動機構によって回転駆動するとともに、ハブの周囲に設けられた複数のプロペラブレードを回転駆動することで、プロペラブレードが岩礁や浅瀬に当って損傷を受けるおそれがなく、プロペラブレード後方の螺旋状回転水流中においてフィン付き紡錘形プロペラポッドがその後部表面の流れ剥離発生を防止し、プロペラポッドの推進抵抗を小さくし、推進効率を向上させる技術思想が開示される。しかし、この思想では、操縦性能は考慮されていないため、本願の問題とするところとは異なっている。
【0005】
特許文献2では、プロペラが第1の軸を中心として所定方向に回転することにより、第1のフィンにはプロペラ後流が当たるようにさせ、このとき、第3の軸と直交する第1のフィンの断面は、第3の軸に沿って見たとき、第1の縁部及び第2の縁部を通る第4の軸が第1の軸に対して所定角度で傾斜し、かつ第1の縁部から第2の縁部に至る第1及び第2の側面部上の距離がそれぞれ異なるような形状とすることで、航行時における推進性能の向上を図ることができるとする技術思想が開示される。しかし、この思想は、プロペラ後流のエネルギーの一部を推力に変換することで、推進性能の向上を図ることに考察が払われているものであり、本願の問題とする操縦性能について何らかの解決策を与えるものではない。
【0006】
特許文献3では、船尾部の後部から水中へ垂下するように設けられたポッドプロペラを備えるとともに、同ポッドプロペラよりも前方の船尾部分に船体中心線に沿うスケグを備え、航行時に船尾部よりも前方のほぼ水平な船底下面に沿う水の流れを上記船尾部の傾斜した船底下面へ沿わせるように導いて上記ポッドプロペラの後端におけるプロペラへ流入させるべく、上記船尾部の傾斜した船底下面の前端部付近に、同船底下面から離隔するようにして上記スケグから両側方へ突出したフィンを設けることで、船尾部船底下面の傾斜角をかなり大きく設定しても、航行時に同船底下面に沿う水の流れを円滑に導けるようにして、そのポッドプロペラへの流入に支障を来たさないようにした技術思想が開示される。しかし、この思想は、あくまで航行時に水の流れが剥離を起こさずにプロペラへ流入することで船舶の推進性を向上させることに主眼があり、本願の問題とする操縦性能について何らかの解決策を与えるものではない。
【0007】
特許文献4では、船体からストラットを介し水中へ垂下されたポッド推進器のポッド側部に、側方へ回動張り出し可能の舵板が設けられるとともに、同舵板の操舵制御機構が設けられる構成とすることで、船舶の針路安定を図れるようにした技術思想が開示される。しかし、この特許文献4においては、航行時の船首揺れや斜航を舵板により防ぎ針路安定性を高めているだけであり、本願の問題とする操縦性能に関する制御の具体的な方法についてなんら開示されていない。また、ポッド自身に舵板が取り付けられているため、旋回性の向上にも限りがあるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−196085
【特許文献2】特開2003−200892
【特許文献3】特開2005−280709
【特許文献4】特開2004−237778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、これまでにおいては、推進性能や針路安定性能の向上を図った船舶という思想はあったが、1軸ポッド推進器を装備した船舶の直進性を維持する対策にとどまり、ダイナミックな操縦性能の向上を図る思想はなかった。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決することを企図したものであるが、それに加えて幅広く操縦性能向上を図った船舶を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、操舵(方位変更あるいは変針とも言う)時のダイナミックな船体運動に伴うオーバーシュートを減少させるとともに旋回性、減速性、減速時の針路安定性等他の操縦性も向上させることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、本願の請求項1に係る操縦性能向上を図った船舶は、船舶と、この船舶を推進するポッド推進器と、このポッド推進器の周囲の船体センターラインの左右もしくは船体センターライン上に略対称に配置した制御フィンと、この制御フィンを駆動する駆動手段と、前記船舶の運転状態を設定する運転状態設定手段と、この運転状態設定手段の設定に従って前記制御フィンの旋回角を前記ポッド推進器の旋回角と組み合わせ前記駆動手段を介して制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
「船舶」とは、たとえば、一定の剛性、大きさを備え推進機構によって推進される船舶のうち、特に、操縦性能の向上を図ることで経済性、利便性の向上といった効果が期待されるものをいい、具体的には旅客船(遠洋定期船、外国航路船、大洋航路船、クルーザー等)、貨客船(フェリー、鉄道車輛渡船等)、貨物船(コンテナ船、RO−RO船、タンカー、バルクキャリア等)、軍艦、巡視船、漁船、レジャー船その他の用途に用いられるものを全て含む。なお、船長や最大積載量等に限定はない。
【0013】
「ポッド推進器」とは、船舶を推進する機能を各種動力によって実現するものをいい、たとえば、固定ピッチプロペラ、可変ピッチプロペラ(CPP)、二重反転プロペラ(CRP)を有し、ポッド1台のシングルポッド型、2台のツインポッド型等とすることができる。また、Zドライブ等の機械的推進器も含んでよい。
【0014】
「制御フィン」とは、たとえば、一定の形状と剛性を備えた構造物であって水流を受けてこれを船舶の推進の制御に利用できる機能をもったものをいい、ポッド推進器の周囲の船体センターラインの左右もしくは船体センターライン上に略対称に配置してもよい。たとえば、所定の電気系統を有し、所定の条件を検出してコンピュータ装置からの信号により駆動する自動制御にて駆動し、最大360度回転その他部分的に所定の角度に旋回する動作等を可能とすることができる。制御フィンの形状は、船舶の航行時の抵抗体とならない流線形状や翼形状等であることができ、その長さや幅等の寸法に限定はない。制御フィンの材質は、硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック、ゴム等であることができるがこれに限定されることはない。制御フィンの駆動軸への装着方法は、溶接を含む脱着不能な状態であっても、ネジを含む接合部材を用いて脱着可能な状態であってもよい。
【0015】
「駆動手段」とは、たとえば、制御フィンを駆動する機能を有するものをいい、詳細には、制御フィンと所定の電気系統で接続され、その旋回角を調整する機能を有する電動モータ、空気モータ、油圧回路等の機械・装置・制御回路等によって実現される。
【0016】
「運転状態設定手段」とは、たとえば、対水速度や運転のモード等、船舶の運転状態を設定する機能を有する設定手段によって実現される。船舶の向かうべき方位を設定する方位設定器、同様の機能を有する機械・装置・制御回路等、船舶を操船するための指示を入力するための操作盤等に設けられるものを含む。
【0017】
「制御手段」とは、たとえば、運転状態設定手段の設定に従って制御フィンの旋回角をポッド推進器の旋回角と組み合わせ駆動手段を介して制御する機能を実現するものをいい、所定の電気系統で接続した駆動手段及びポッド推進器に、運転状態設定手段で設定した設定値を信号として渡し、前記設定値に従って駆動手段の旋回角をポッド推進器の旋回角に応じて制御する機能を有する装置・制御回路・アルゴリズム等によって実現されるものを含む。前記制御は、フィードフォワード制御を含むオープンループ制御、または設定値と所定の検出値との差を偏差としてこの偏差をなくし設定値に追従させるフィードバック制御にて行うことができる。なお、設定値に対してオンオフ的に制御を行うバンバン制御を含めてもよい。
【0018】
こうした構成により、運転状態設定手段によって船舶の運転状態を設定し、この運転状態設定手段の設定に従って制御手段が制御フィンの旋回角を前記ポッド推進器の旋回角と組み合わせて制御することで、船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0019】
また、上記の構成において、請求項2に示すように、前記制御フィンを前記ポッド推進器の船体センターラインの左右に備えるように構成してもよい。
【0020】
こうした構成により、制御フィンをセンターラインの左右に付設したときは、ポッド推進器そのものに付設した場合は無論、センターラインの中心のみに付設した場合と比較して、船体の運動中心からの距離が取れ、制御フィンの効果が発揮し易くなり、更に船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0021】
また、上記の構成において、請求項3に示すように、前記船舶の操舵時に、前記制御手段はオーバーシュート角を小さくするよう前記制御フィンを前記ポッド推進器と同方向あるいは逆方向に制御するように構成してもよい。
【0022】
「オーバーシュート角」とは、たとえば、航行時に操舵を行った場合、船舶が惰性等により設定値を越えて動作することで、船首角が目標値以上となるオーバーシュートが発生し、船首角が最大となった値から、設定された方位(方位角)を差し引いた値の絶対値を示す。
【0023】
「オーバーシュート角を小さくするよう制御フィンをポッド推進器と同方向あるいは逆方向に制御する」とは、たとえば、ポッド推進器の推力等により船舶を旋回させている間は、ポッド推進器と逆方向に制御フィンを制御し、オーバーシュートが発生してからオーバーシュート角が最大になる間は、ポッド推進器と同方向に制御することを示す。
【0024】
こうした構成により、ポッド推進器により船舶が旋回している間は、オーバーシュートが発生しないように、及びオーバーシュート角が最小となるように制御フィンを制御することができる。また、船舶に関して惰性等によりオーバーシュートが発生した際は、オーバーシュート角がより小さくなるように制御フィンを制御することができるため、船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0025】
また、上記の構成において、請求項4に示すように、前記船舶の旋回時に、前記制御手段は前記制御フィンを前記ポッド推進器と同方向に制御するように構成してもよい。
【0026】
「制御フィンをポッド推進器と同方向に制御する」とは、たとえば、離着桟時における船舶の旋回時において、ポッド推進器の推力等により船舶を旋回させている間は、ポッド推進器と同方向に制御フィンを制御することを示す。
【0027】
こうした構成により、制御フィンがポッド推進器の推力による旋回作用を助けるように同方向に制御フィンを制御することができるため、船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0028】
また、上記の構成において、請求項5に示すように、前記制御フィンを前記船舶の減速時に、前記制御手段は前記船舶の抵抗が増すように前記制御フィンを船体センターラインに実質的に対称の方向に制御するように構成してもよい。
【0029】
「制御フィンを船体センターラインに実質的に対称の方向に制御する」とは、たとえばセンターラインの上、及び/もしくはセンターラインに関して略左右対称に付設した制御フィンを動作させ、船体の均衡を維持するように実質的に対称の方向に制御し抵抗を付けることを示す。
【0030】
こうした構成により、船舶の停止あるいは減速時において、制御フィンが船舶の抵抗体ともなるように制御することができるため、船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0031】
また、上記の構成において、請求項6に示すように、前記ポッド推進器を旋回させ前記船舶の速度を低下させる際に、前記制御手段はポッド推力による前記船舶の横移動および旋回角を減少するように前記制御フィンを制御するように構成してもよい。
【0032】
「ポッド推力による船舶の横移動および旋回角を減少するように制御フィンを制御する」とは、たとえば、ポッド推進器を逆転させて減速するときにポッド推進器の推力の影響により船舶が意に反して横方向にスライドしてしまったり、旋回してしまったりする船舶の動作を、制御フィンにて減少させるように制御することを示す。
【0033】
こうした構成により、ポッド推進器を旋回させ船舶の速度を低下させる際に、制御フィンが船舶の横移動及び旋回角を減少する抵抗体ともなるように制御することができるため、船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0034】
また、上記の構成において、請求項7に示すように、前記制御手段は前記運転状態設定手段の設定状態にしたがって異なるモードで前記ポッド推進器と前記制御フィンの旋回角を制御するように構成してもよい。
【0035】
「運転状態設定手段の設定状態」とは、たとえば、航行時、あるいは操縦性能試験時において、所望の方位に向かって曲がらずに真っ直ぐ直進させる保針状態、操舵(操舵輪の操作)等により、旋回、ジグザグ、針路変更、平行移動等の向きを変える運動を行うダイナミックな操縦状態、また減速を行う操縦状態等を設定することを示す。
【0036】
こうした構成により、たとえば上記種々の運転状態を異なるモードで記憶しておき、船舶の航行状況に応じた運転状態設定手段の設定に従って各モードを呼び出すことで、ポッド推進器及び制御フィンの旋回角を所定の制御アルゴリズムにより制御して船舶を所望の状態として航行させることができる。また、船舶が保針状態を維持するように自動操舵するオートパイロットモードとして記憶しておくこともできる。したがって、運転状態設定手段の設定状態に従って異なるモードを起動させることで、船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0037】
また、上記課題を解決するために、本願の請求項8に係る操縦性能向上を図った船舶は、船舶と、この船舶を推進するポッド推進器と、このポッド推進器の周囲の船体センターラインの左右もしくは船体センターライン上に対称に配置した制御フィンと、この制御フィンを駆動する駆動手段と、前記船舶の方位を設定する方位設定手段と、前記船舶の方位を検出する方位検出手段と、この方位検出手段の検出値と前記方位設定手段の設定値とを比較して前記駆動手段を制御する制御手段とを備えて構成される。
【0038】
「方位設定手段」とは、船舶の進むべき方位を設定するためのものである。たとえば船舶の舵やポッドの向きを操作しいわゆる操舵を行う操舵輪やオートパイロットモードにおける指示を入力するための操作盤等を指す。
【0039】
「方位検出手段」とは、たとえば、船舶の方位(針路)を検出するジャイロコンパスや磁気方位センサー、GPS利用の方位センサー等を含む。また、船舶の方位は船首角速度を積分することで算出することもできるため、前記方位検出手段には、角速度検出センサー等も含む。
【0040】
「制御手段」とは、たとえば、方位検出手段で都度検出した検出値と方位設定手段で予め設定した設定値とを比較し、その差分を偏差として駆動手段をフィードバック制御するもので、詳細には、所定の電気系統で接続した駆動手段に、前記偏差から導出した制御値を信号として渡し、前記制御値に従って駆動手段を制御する機能を有する装置・制御回路・アルゴリズム等によって実現される。すなわち、種々の外乱や過渡的状態に拘らず船舶の設定された方位を維持しもしくはその方位に近づけるべく、駆動手段を制御して制御フィンの旋回角を制御することで、船舶の操縦性能を向上するものである。
【0041】
こうした構成により、最適に制御フィンをフィードバック制御することで、偏差を無くし針路安定性を高めた上で、船舶のダイナミックな操縦性能の向上を図ることができる。
【0042】
また、上記の構成において、請求項9に示すように、前記方位検出手段は前記船舶の船首方位の角速度に基づいて方位を検出するような構成としてもよい。
【0043】
「船首方位の角速度に基づいて方位を検出する」とは、例えば、方位検出手段として角速度センサーを用いて、前記角速度センサーで検出した角速度を積分して方位を算出することを示す。
【0044】
こうした構成により、角速度センサーで検出した角速度に基づいて、角速度を積分して算出した方位を方位検出手段の検出値として駆動手段を制御することで、方位を検出する装置を特別に装備することを要せずに、的確に船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【0045】
また、上記の構成において、請求項10に示すように、前記制御手段は前記方位設定手段の設定状態に従って異なるモードで前記ポッド推進器と前記制御フィンの旋回角を制御するような構成としてもよい。
【0046】
こうした構成により、たとえば種々の運転状態を異なるモードで記憶しておき、運転状態設定手段の設定に従って各モードを呼び出し、そのモードに応じてポッド推進器及び制御フィンの旋回角をフィードバック制御し、より的確に船舶の操縦性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、ポッド推進器を備えた船舶の、操舵時のダイナミックな船体運動に伴うオーバーシュートを減少させることができる。また、旋回性、減速性、また減速時の針路安定性を向上させることができる。
【0048】
また、制御フィンをポッド推進器の船体センターラインの左右に備えることにより、制御フィンの効果が発揮し易くなり、操縦性能をより高めることができる。
【0049】
また、制御フィンとポッド推進器を船舶の状態に応じて同方向あるいは逆方向に適宜制御することにより、両者が協動して船体のオーバーシュートを大きく低減することができる。
【0050】
また、船舶の旋回時に、制御フィンをポッド推進器と同方向に制御することにより、旋回半径を小さくでき旋回性の向上を通じて操縦性能を向上することができる。
【0051】
また、船舶の減速時に、制御フィンを船体センターラインに実質的に対称の方向に制御することにより、船舶の抵抗が増し減速時における減速性能を向上することにより操縦性能が向上できる。
【0052】
また、ポッド推進器を旋回させ速度を低下させる際に、制御フィンを制御することにより船舶の横移動および旋回角を減少し針路安定性を高め、操縦性能を向上することができる。
【0053】
また、運転状態設定手段の設定状態に従った異なるモードでポッド推進器と制御フィンの旋回角を制御し、人的な操作を省いて的確に両者の旋回角を制御できる。
【0054】
また、ポッド推進器と制御フィンを方位設定手段及び方位検出手段に基づいてフィードバック制御することにより、偏差を無くし針路安定性を高めた上で、船舶の操縦性能を向上することができる。
【0055】
さらに、方位設定手段の設定状態に従って異なるモードでポッド推進器と制御フィンの旋回角をフィードバック制御することにより、そのモードに応じて、より的確に偏差を無くし針路安定性を高めた上で船舶の操縦性能の向上が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態(第一の実施形態)に係る船舶のポッド推進器及び制御フィンの状態を示す図である。
【図2】同制御ブロック図である。
【図3A】本発明の一実施形態(第二の実施形態)に係るポッド推進器及び制御フィンの動作を示すフローチャートである。
【図3B】同ポッド推進器及び制御フィンの図3Aに対応した動作を示す図である。
【図3C】同Z試験におけるポッド旋回角とフィン旋回角と船首角の関係を図3Aに対応させて示す図である。
【図4A】本発明の別の実施形態(第三の実施形態)に係るポッド推進器及び制御フィンの動作を示すフローチャートである。
【図4B】同ポッド推進器及び制御フィンの図4Aに対応した動作を示す図である。
【図5A】本発明のまた別の実施形態(第四の実施形態)に係るポッド推進器及び制御フィンの動作を示すフローチャートである。
【図5B】同ポッド推進器及び制御フィンの図5Aに対応した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0058】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る船舶の船尾におけるポッド推進器及び制御フィンの状態を示す図である。同図に示す(a)は、船舶1に係る船体2の船尾2aを横方向から見た側面図、(b)は船舶1の船尾2aを下方向(船尾船底面2bの方向)から見た下面図である。(a)及び(b)に示すとおり、船尾2aに係る船尾船底面2bは後方へ緩やかに上昇した形状を有する。また、船尾2aの後方にはポッド推進器10が設置され、その周辺には制御フィン201〜206が付設されている。なお、以下の図1及び図2では、PID制御を主に念頭において説明するが、本願の技術思想はPID制御以外の制御においても勿論適用可能である。
【0059】
船舶1は、たとえば旅客船(遠洋定期船、外国航路船、大洋航路船、クルーザー等)、貨客船(フェリー、鉄道車輛渡船等)、貨物船(コンテナ船、RO−RO船、タンカー、バルクキャリア等)、軍艦、巡視船、漁船、レジャー船その他の用途に用いられるものを全て含むものである。船長や最大積載量等にも限定はない。
【0060】
船舶の運動性能を評価する指標としては、まず針路安定性がある。これは直進的な航行時に外乱(潮流や風等)によって引き起こされた船首揺れや斜航を減衰させて、設定された方位のどの程度の幅内に揺れや斜航を抑えられるかという直進性により針路安定性の良し悪しが判断される。また、操舵を行いダイナミックに針路変更した場合は、変更後の針路のどの程度の幅内に整定後の針路が納まっているかによって針路安定性の良し悪しが判断される。このダイナミックな針路変更の場合は、また針路変更後の所定の幅内にいかに早く整定できるかの整定時間をもって「針路安定性が良い」という場合もある。
【0061】
また、船舶の運動性能を評価する指標に関して、ダイナミックな操縦性能として、旋回性、ジグザグ航走性、針路変更性、平行移動性等が挙げられる。これらのダイナミックな操縦性能の良し悪しは、旋回性であればいかに旋回半径が小さい状態で曲がれるかが一つの指標となる。たとえば、船舶の離着桟時においては、前後方向の速度が遅いので、その場で即応的に曲がることが重要である。旋回半径が小さければ、港等の狭い領域内でも、迅速に所望の状態(船舶の船首を出港方向に向けることや船舶を停泊させること等)にすることができるため、旋回性の良さが求められる。
【0062】
また、Z試験に代表されるジグザグ航走性は、操舵により連続的に変更される方位に対しいかにオーバーシュートを少なくして航走できるかにより、その性能の良し悪しが判断される。
【0063】
また、針路変更性も操舵により変更した方位に対しいかにオーバーシュートを少なくして航走できるかにより、その性能の良し悪しが判断される。
【0064】
さらに平行移動性も同様に、変更した平行方位に対していかにオーバーシュートを少なくして移動できるかにより、その性能の良し悪しが判断される。但し、これらジグザグ航走性、針路変更性、平行移動性においては、操舵により変更した方位の所定の幅内にいかに早く整定できるかの整定時間を持って操縦性能の良し悪しを言う場合もある。
【0065】
したがって、針路安定性とダイナミックな操縦性能とは同じ操縦性能のうちでも異なるものであり、Z試験は船舶のジグザグ航走におけるダイナミックな操縦性能を評価するものである。
【0066】
なお船舶は、上記した直進的な航行や操舵に伴う各種ダイナミックな航走以外にも、減速や停止に向けての減速を行ったり、それもポッド推進器を逆向きにして減速を行ったりする場合もある。
【0067】
本願では、これらの場合も広義での操縦性能の範疇に入るものとして扱う。
【0068】
ポッド推進器10は、360度回転しての横移動やその場での回転等の自由自在な操船を可能にすると共に、所定の旋回角(以下、「首振り角」ともいう。)を得るように制御することで操舵時に、所望の方向に変更(変針)して迅速に船体を設定方位に向けるように駆動されるものである。
【0069】
詳細には、プロペラを有した構成とした上で、前記プロペラは正回転及び逆回転を任意に可能とし、楕円体の中に電動モータやベベルギヤーを内蔵し、それを船尾2aの船内に納めた装置で回転させることができる推進装置として構成され、一種の船外機の形態として船舶1と独立して艤装される。たとえば、固定ピッチプロペラ、可変ピッチプロペラ(CPP)、二重反転プロペラ(CRP)を有し、ポッド1台のシングルポッド型、2台のツインポッド型等とすることができる。また、Zドライブ等機械式推進器と組み合わせたポッド推進器も含んでよい。(a)に示すように、ポッド推進器10は船尾2aのセンターライン上に設置するが、好適には大きなトルクを得るために船舶1の重心点から極力離れたところに設置するものとする。なお、図のようにポッド推進器10を単独で設置する1軸としても、並列させて設置する2軸としても、いずれの構成でもよい。
【0070】
制御フィン201〜206は、所定の旋回角に制御することで航行時の船舶1の操舵に伴う操縦性能や、停止、減速制御に伴う針路安定性の向上を目的として、(図示しない)駆動部によって駆動される。制御フィン201〜206の機能や駆動時における作用等は舵と同様であるが、複数配置することにより舵にはない作用も発揮できる。
【0071】
詳細には、船舶1は所定の電気系統を有し、所定の条件を検出して図示しないコンピュータ装置からの信号により、制御フィン201〜206を自動制御にて駆動し、最大360度旋回可能で、その他部分的に所定の角度旋回する動作等を可能とする。また、ポッド推進器10より前方から後方の船尾船底面2bに付設するものとするが、その数や位置に限定はない。たとえば、制御フィン20が1つのとき(たとえば図1で205のみが設置され、201〜204、206は設置されないとき)は船舶1のセンターライン上に設置したり、2つのとき(たとえば図1で201及び202のみが設置され、203〜206は設置されないとき)はセンターラインの左右、好適には左右対称に設置したり、3つ以上のとき(たとえば図1で201〜206或いは204〜206が設置されるとき)はそれらの組み合わせにより設置する。この際、ポッド推進器10の360度回転による動作及び回転するプロペラの障害にならないように付設すること、及び、浅い海域を航行するときの損傷等を防止するために船底よりも突出しないように付設することが好ましい。
【0072】
制御フィン201〜206の形状については特に限定はないが、船舶1の航行時の抵抗体とならない流線形状や翼形状等であることが好ましく、その長さや幅等の寸法についても特に限定はない。また、制御フィン201〜206の材質は、硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック、ゴム等であることが好ましいがこれに限定されることはない。さらに、制御フィン201〜206の駆動軸への装着方法は、溶接を含む脱着不能な状態であっても、ネジを含む接合部材を用いて脱着可能な状態であってもよい。電動モータ等で構成される駆動部は、これらの駆動軸を回転動作させて制御フィンを制御する。
【0073】
次に、制御フィン201〜206の数及び付設位置の差異による相違点及びポッド推進器10との関係について詳細に説明する。
【0074】
制御フィンをセンターライン上に1つ付設したとき(たとえば制御フィン203もしくは制御フィン205を付設したとき)は、センターラインに実質的に対称の範囲で制御する。すなわち、制御フィン203もしくは制御フィン205の旋回角を制御して、動作範囲として左右対称にする必要がある。これにより、ポッド推進器10に直接制御フィンを装着する場合と比較して、ポッド推進器10の旋回方向に左右されずに独立して制御ができるので、船舶1を制御しやすい。また、制御対象が1つであるため、機構上複雑にならず、メンテナンス等も容易になる。
【0075】
一方、制御フィンをセンターラインの左右に付設したとき(たとえば制御フィン201及び202を付設したとき及び/または制御フィン204及び206を付設したとき)は、第一の制御フィン201(もしくは204。以下同じ。)及び第二の制御フィン202(もしくは206。以下同じ。)を操舵状態に応じて左右対称の方向に制御、或いは第一の制御フィン201と第二の制御フィン202を非対称に制御する。すなわち、第一の制御フィン201及び第二の制御フィン202が同方向または逆方向になるように旋回角を左右対称に制御し、或いは第一の制御フィン201及び第二の制御フィン202が異なる方向になるように旋回角を制御して非対称に制御する。これにより、第一の制御フィン201及び制御フィン202を所定の旋回角に制御することができるため、外乱発生時にも船舶1を迅速に制御することができる。
【0076】
制御フィン201〜206をセンターラインの左右に付設することにより、センターライン上に付設した場合と比較して、船体2の重心からの距離が取れるため、制御フィン10の制御効果が発揮し易くなる。また、制御フィン201〜203をポッド推進器10の前方に付設することで、ポッド推進器10に流入する水の流れを整える整流の役割を兼ねることができる。すなわち、旋回時においてポッド推進器10に加わる抵抗を減らすように整流する。これにより、船舶1の推進効率を高めることができる。また、ポッド推進器10との位置関係等にもよるが、特に制御フィン201、202は、旋回時に抵抗を付けることにより旋回半径を小さくすることができる。
【0077】
一方、制御フィン204〜206をポッド推進器10の後方に付設することで、回転するプロペラの動力により流速が増加した水流が制御フィン204〜206に流入するため、揚力が増加する。すなわち、揚力を生み出す要素の一つである流速がポッド推進器10の影響により増加し得るため、制御フィン204〜206の制御効果を高めることができる。また、制御フィン201〜206は、ポッド推進器10自身に設置するのではなく異なる場所に設置しているため、ポッド推進機10の推進と船舶1の重心位置との関係で、たとえば制御フィン201〜206で抵抗を持たせ、ピボット的に作用させることができ、旋回性の向上やオーバーシュートの低減に一層寄与させることができる。
【0078】
図2は、本実施形態に係る船尾に設置したポッド推進器及び制御フィンの制御ブロック図である。同図に示すとおり、船舶1において、全体の制御ブロックは、ポッド推進器10、制御フィン20、運転状態設定部30(方位設定器301を含む)、船首方位検出部40、船体角速度検出センサー50、対水速度センサー60、モード記憶部80、ポッド・フィン配分設定部70、ポッド推進器10を制御する信号を出すポッド制御部110、前記制御において旋回角を調整するポッド旋回角調整器120、フィン制御部210、フィン旋回角調整器220を備えて構成される。
【0079】
より詳細には、ポッド推進器10の運転開始や停止、制御フィン20の運転開始や停止、船速、モード、制御条件等や方位を設定する運転状態設定部30(方位設定器301を含む)、運転状態設定部30の設定に従い船首方位や対水速度あるいはモードに応じてポッド・フィンの動作配分を設定するポッド・フィン配分設定部70、ポッド推進器を制御する信号を出すポッド制御部110及び前記制御において旋回角を調整するポッド旋回角調整器120、ポッド推進器10が制御的に接続されて船体2の運動に影響を及ぼしている。また、ポッド・フィン配分設定部70にフィン制御部210、フィン旋回角調整器220、制御フィン20が接続され船体2の運動に影響を及ぼしている。そして、船体2の船首方位の角速度を検出する船体角速度検出センサー50、この船体角速度検出センサー50の信号を処理して船舶1の方位を検出する船首方位検出部40、対水速度として船底を流れる水流から船舶1の対水船速を検出する対水速度センサー60が設置され、それぞれ得た航行状態に関するデータをポッド・フィン配分設定部70にフィードバックする。モード記憶部80は、航行状況に応じたポッド・フィンの動作の組合せをそれぞれ記憶しており、適宜運運転状態設定部30で設定されたモードに従って、各モードの条件を呼び出してポッド・フィン配分設定部70にそれを反映するようになっている。
【0080】
ポッド制御部110は、ポッド・フィン配分設定部70から動作配分の設定値を受け、ポッド推進器10の制御条件を導出し、ポッド旋回角調整器120に伝える。ポッド旋回角調整器120は、ポッド制御部110からの信号を受け取り、ポッド推進器10の旋回角を最大360度回転として、信号に従った首振り角で旋回するように調整する機能を有する。
【0081】
フィン制御部210は、ポッド・フィン配分設定部70から動作配分の設定値を受け、制御フィン20の制御条件を導出し、前記設定値に基づいてフィン旋回角調整器220に所定の角度で旋回する信号を出す機能を有する。
【0082】
フィン旋回角調整器220は、フィン制御部210からの信号を受け取り、制御フィン20の旋回角を最大360度回転、信号に従った所定の角度傾斜する動作を行うように調整する機能を有する。
【0083】
方位設定器301は、船舶1の向かうべき方向を設定するためのものであり、船舶を操舵するための指示を入力するために設けられているもので、船舶の方向を設定する操舵輪や、オートパイロットにおける方位設定部等が相当する。
【0084】
また、対水速度センサー60はLOG船速計ともいい、船底に設けたセンサが有するコイルに起電力が生じることで対水船速として船底と船底を流れる水流との相対速度を計測する電磁LOGを用いているが、超音波を発振し水中に存在する微小な浮遊物からの反射波の周波数の違いにより船底と船底を流れる水流との相対速度を計測するドップラーLOG等でもよい。
【0085】
ポッド・フィン配分設定部70は、方位制御に関して、方位設定器301で設定した設定値と船首方位検出部40、対水速度センサー60で検出した検出値を比較してポッド推進器10及び制御フィン201〜206の動作配分を設定し、ポッド制御部110及びフィン制御部210に渡す機能を有する。たとえば操舵に伴う変針時には、所望した方位への旋回を迅速にするために、ポッド推進器と制御フィンを、所定の制御アルゴリズムや定数等による制御条件に従ってそれぞれ自動制御し、かつ旋回後の惰性による所望の方位からのずれを少なくする為に、船体角速度検出センサー50も用いて、適切なタイミングで微調整を行う。
【0086】
また減速時・停止には船体2に及ぼす抵抗が大きくなるように、直進時には逆に抵抗が小さくなるようにするなど、状況に応じてポッド推進器と制御フィンの旋回方向の組み合わせは柔軟に変更することができる。
【0087】
モード記憶部80は、運転状態設定部30で設定されるモードに従ってポッド推進器10及び制御フィン201〜206を制御するべく、変針・直進モード、旋回モード、停止・減速モードその他の運転モードとして記憶する機能を有し、ポッドフィン配分設定部70を介してモードが呼び出される。具体的にはモード記憶部80は、こうした機能をコンピュータに果たさせるアルゴリズムを記憶させたメモリやハードディスクドライブ等の記憶装置を含む。
【0088】
以下に、上記により構成されるポッド推進器10及び制御フィン201〜206の動作について簡単に説明する。
【0089】
まず、操舵を行わない保針状態においては船舶の推進方向の抵抗を最小化し、かつ針路安定性を最大にするために、外乱等で船首方位にずれが生じ、方向修正の必要が生じたといった場合以外には、ポッド推進器10および制御フィン20は全く旋回させない状態を保つ。この場合、制御フィン20は船舶1の推進方向に沿う方向に向けられているため、外乱等があっても船首方位にずれを生じにくく作用される。
【0090】
一方、操舵時においては、可能な限り迅速に所望の方位へ船首を向けるために、船体2に生じるモーメントを制御し、かつ船首がその方向へ向いた後の惰性による方位のずれを迅速に補正するように制御する。その評価指標としては、たとえば、船舶の操舵時のダイナミックな操縦性能を測るものとして一般的なZ試験、旋回性試験などを用いる。
【0091】
また、減速時・停止には、水からの抵抗を大きくする為に制御フィン20を船体の中心軸に略対称となるように制御する。これは、減速・停止時にポッド推進器10を逆向きにした際、船首が意図しない方向にぶれを生じることの抑制にもつながり、針路安定性の向上にも貢献する。
【0092】
一方、ポッド減速時には、ポッド推進器10の推力の影響により船舶1が意に反して横方向にスライドしてしまったり、旋回してしまったりする動作を、制御フィン20の動作にて減少させるように、すなわち、制御フィン20が船舶1の横移動及び旋回角を減少する抵抗体ともなるように制御する。
【0093】
(第二の実施形態)
次に、本願の第二の実施形態について説明する。本実施形態では、主に、Z試験を念頭におき、上記記載のポッド推進器10及び制御フィン20の制御機構を用いて、船舶1の操縦性能、特にダイナミックな操縦性能の向上を実現する動作原理について詳細に説明する。
【0094】
Z試験を用いてジグザグ航走性を評価する場合、具体的には、図2において、ポッド旋回角調整器120が、ポッド制御部110からの信号を受け取り、ポッド推進器10の旋回角を10°(20°でもよい。)回転として、信号に従った首振り角で旋回するように調整する。船首方位検出部40によって検出される船首方位が10°になった時点で、ポッド旋回角調整器120が、ポッド制御部110からの信号を受け取り、ポッド推進器の旋回角を前回とは反対側である―10°(―20°でもよい。)回転として、信号に従った首振り角で旋回するように調整する。これらの操作を繰り返していく。こうした過程におけるジグザグ航走性を評価するものである。換言すると、これらの制御は、単純に10°と−10°とを切り換えてゆくオープンループ制御として理解することも可能である。最初の進行方向から見るとマクロではバンバン制御とも言える。
【0095】
図3Aは、本発明の一実施形態に係るポッド推進器10及び制御フィン201〜206の動作を示すフローチャートである。(以下において制御フィン201〜206は総称的に制御フィン20と称する場合もある。)図3Bは、本発明の一実施形態に係る図3Aのフローチャートに対応したポッド推進器及び制御フィンの状態を示す図である。この一実施形態は、ダイナミックな操縦性能としてのジグザグ航走性を代表するZ試験を例にしている。
【0096】
図3Cは、本発明の一実施形態に係るZ試験における船首角(方位)、ポッド推進器10のポッド旋回角(舵角)、制御フィン20のフィン旋回角の経時的な変化を図3Aのフローチャートに対応させて示す図である。図3Cにおいて、横軸を時間、縦軸を方位及び舵角とし、実線が船首角、点線がポッド推進器10の旋回角、破線が制御フィン20の旋回角を表す。以下、これらの図を都度対応させて説明をする。また、操舵に伴う変針の直前は、図3B(a)に示すようにポッド推進器10及び制御フィン20は旋回角を有していない直進状態であるものとする(ステップSP00−1)。
【0097】
Z試験をスタートすると、まず船舶1の向かうべき方位を0°の状態から、10°右(+10°)へ向けるように設定が変えられる。それまで0°に保たれていたポッド推進器10は左方向に旋回され、制御フィン20はポッド推進器10とは逆方向に右方向に旋回される(ステップSP10−1)。
【0098】
すなわち、図3B(b)のようにポッド推進器10の旋回角θ1を10°(左方向)、制御フィン20の旋回角をθ1とは逆方向にθ2を10°(右方向)となるように、ポッド旋回角調整器120とフィン旋回角調整器220によりそれぞれ調整が行われる。
【0099】
なお、特に制御フィン20の旋回角については、船舶1の運動特性に合わせ、他の値をとってもよい。
【0100】
これにより、ポッド推進器10は船体に右方向の回頭モーメントを生じさせ、制御フィン20も回頭モーメントを生じてこれを補助し、船首角が設定方位である10°右(+10°)に早く整定するように機能する。そして所定時間毎に、船首角が設定方位10°右(+10°)に達したかを、船首方位検出部40の信号を受けて確認する(ステップSP20−1)。
【0101】
設定方位10°右(+10°)に達したことが確認された時点で、船舶1の向かうべき方位を10°右(+10°)の状態から、この状態を基に10°左(−10°)に向かうように切り替えて設定する。具体的には、ポッド推進器10を逆方向に旋回させ旋回角θ1を10°(右方向)に切り替え、制御フィン20を現状(右方向)に維持し、ポッド推進器10と制御フィン20を同方向(右方向)に制御する(ステップSP30−1、図3B(c))。
【0102】
この切り替えは、運転状態設定部30でのモード設定に従い、船首方位検出部40で検出される船首角をポツド・フィン配分設定部70で比較し、モード記憶部80から制御条件が呼び出され自動的に制御が行われる。
【0103】
このとき船舶1は惰性により、設定方位変更(ポッド推進器10の逆方向への旋回)に直ぐには追従できず、船首角は増加を続けるが、制御フィン20が今までの向きに保たれているため抵抗となって、ポッド推進器10の逆方向への推進との相互関係から船首角の増加を抑えるように作用する。すなわち図3Cに表現される第一オーバーシュート角を小さくすることができる。
【0104】
図3Cにおける船首角が最大に達したかどうかは、船体角速度センサー50で検出される旋回角速度がゼロになったことと、船首方位検出部40で検出される方位としての行き過ぎ角(オーバーシュート角)が有ることを基に判断される(SP40−1)。なお船首方位検出部40で検出される方位は、船体角速度センサー50で検出される旋回角速度を積分して求めている。
【0105】
船首角が最大に達したことが判断された場合は、ポッド推進器10の旋回角10°(右方向)を現状に維持して、制御フィン20を逆方向(左方向)に旋回させる(SP50−1、図3B(d))。
【0106】
ここで制御フィン20は、ポッド推進器10の推進による回頭モーメントに加え、制御フィン20自身でも回頭モーメントを生じこれを補助し、設定方位10°左に早く整定させる役割を果たす。
【0107】
所定時間毎に、船首角が設定方位10°左(−10°)に達したかを船首方位検出部40の信号を見て確認し、設定方位10°左に達した段階で、ポッド推進器10の旋回角を逆方向(左方向)に旋回させ、制御フィン20は現状(右方向)に維持する。
【0108】
以上のような制御を繰り返し、船舶1をジグザグ航走させ、船舶1のオーバーシュートを評価する。
【0109】
規定された所定回数のジグザグ航走を行った後、Z試験を終了するには、旋回角速度がゼロで、行き過ぎ角が無いときに、ポッド推進器10及び制御フィン20の旋回角をゼロにして行う(ステップSP60−1、図3B(e))。
【0110】
次に、船舶1の旋回性の向上を実現する動作原理について詳細に説明する。
【0111】
(第三の実施形態)
図4Aは、本発明の別の一実施形態に係る旋回性の向上におけるポッド推進器及び制御フィンの動作を示すフローチャートである。図4Bは、本発明の別の一実施形態に係る図4Aのフローチャートに対応したポッド推進器及び制御フィンの状態を示す図である。以下、これらの図を対応させて説明する。また、当該船舶の旋回の直前は、図4B(a)のようにポッド推進器10及び制御フィン20は旋回していないものとする。
【0112】
旋回をスタートするとき、図4B(b)のように、同方向に、ポッド推進器10及び制御フィン20を同方向に旋回させ、ポッド推進器10を旋回角θ1に制御フィン20を旋回角θ2に制御する(ステップSP10−2、図4B(b))。
【0113】
これらのポッド推進器10の旋回角θ1及び制御フィン20の旋回角θ2は、船舶1の運動特性や設定旋回半径、対水速度等に応じて適宜設定される。
【0114】
この旋回制御は、運転状態設定部30でのモード設定に従い、船首方位検出部40で検出される船首角をポッド・フィン配分設定部70で比較し、モード記憶部80から制御条件が呼び出され自動的に制御が行われる。
【0115】
このように制御フィン20の動作を制御することで、制御フィンを持たないポッド付き船舶に比して、水流からの抵抗力を船舶にモーメントを生じさせる力として利用することができるため、旋回時の旋回角速度も大きくでき、旋回半径が小さくなる。このため、旋回性も向上する。
【0116】
次に、船舶1の停止及び減速の機能の向上を実現する動作原理について詳細に説明する。
【0117】
(第四の実施形態)
図5Aは、本発明のまた別の一実施形態に係る停止及び減速の機能の向上におけるポッド推進器及び制御フィンの動作を示すフローチャートである。図5Bは、本発明の前記実施形態に係る図5Aのフローチャートに対応したポッド推進器及び制御フィンの状態を示す図である。以下、これらの図を対応させて説明をする。また、停止及び減速の直前は、図5B(a)のようにポッド推進器10及び制御フィン20は旋回していないものとする。図5B(a)に表現される2つの制御フィン20は、上述と同様に、制御フィンの総称的な名称として使用されるものであるが、図1との対応関係でいえば、制御フィン20A、20Bは制御フィン204もしくは206、及び/または、制御フィン201もしくは202であってよい。
【0118】
停止及び減速をスタートするとき、ポッド推進器10のプロペラを逆に回転させ、第一の制御フィン20A及び第二の制御フィン20Bを、図5B(b)のように互いに逆方向に旋回するようにθ2をオープンループで制御する。すなわち、船舶1の抵抗が増すように制御フィン20A、20Bをセンターライン上に実質的に対称の方向に制御する(ステップSP10−3、図5B(b))。
【0119】
なお、制御フィン20A及び第二の制御フィン20Bの制御フィン旋回角θ2は、船舶1の対水速度や目標停止位置、目標停止時間などによって適宜設定される。
【0120】
このように制御フィン20A、20Bの動作を制御することで、ポッド推進器10のプロペラを逆回転させたとしても船尾2aを左右に振ることを防止し、及び外乱等の非対称の力の影響を受けないように柔軟に対応することができるため、迅速に減速して船舶1を停止することができる。
【0121】
(第五の実施形態)
【0122】
なお上記の第二と第三の実施形態の説明は、ジグザグ航走時や旋回時のポッド推進器10と制御フィン20の動きを分かり易く説明するための例であり、制御も単純な制御でも同様な動作はできるが実際の航走時には、波浪や風等の外乱、船舶1自身の操舵状態、対水速度で代表される航行状態等の過渡的な状態に対応できるPID制御により制御を行っている。
【0123】
PID制御とは、フィードバック制御としての比例制御(Proportional Control、または「P制御」ともいう。)、積分制御(IntegralControl、または「I制御」ともいう。)微分制御(Derivative Control、または「D制御」ともいう。)、の三つを組み合わせて設定値に収束させるための制御をいう。
【0124】
サンプリング方式におけるPID制御の制御式は、一般的には次のようになる。
操作量=Kp×偏差+Ki×偏差の累積値+Kd×前回偏差との差
※Kp(比例項)、Ki(積分項)、Kd(微分項)は係数
記号で示すと、
MV=MVn−1+ΔMV
ΔMV=Kp(e−en−1)+Kie+Kd((e−en−1)―(en−1−en−2))
※MV、MVn−1:今回、前回操作量
ΔMV:今回操作量差分
、en−1、en−2:今回、前回、前々回の偏差
【0125】
運転状態設定部30で設定された運転モードに従ってモード記憶部80から呼び出されたモードと、方位設定器301での設定された方位と、船首方位検出部40で検出された船首方位角と対水速度センサー40で検出された対水速度がポッド・フィン配分設定部70で比較される。基本は設定値としての設定方位と、検出値としての船首方位角であり、上記式に当てはめるならば、これらの差が偏差となる。船首方位の急な設定変更や外乱による急な船首方位角の変化に対しては、今回偏差と前回偏差、前回偏差と前々回偏差の差から、微分項でこの対策を取る。また、外乱による船首方位角の微妙なずれが重なり誤差が累積して行くことは、毎回の偏差の累積値から積分項でこの対策を取る。モード記憶部80から呼び出されたモードは、保針、旋回、ジグザグ、針路変更、平行移動、減速・停止等であり、このモードに応じてポッド推進器10と制御フィン20の動作パターンと、これら動作パターン毎の基本制御アルゴリズム、またこれら基本制御アルゴリズム毎の基本定数が設定される。ポッド・フィン配分設定部70においては、ポッド推進器10と制御フィン20の動作パターン、基本制御アルゴリズム、基本定数が別々に設定される。
【0126】
これらの基本制御アルゴリズムや基本定数は、対水速度センサー60で検出される対水速度や運転状態設定部30で設定されるオートパイロット等他の運転状態設定によって変更、補正される。これらの基本定数の補正された値が、上記式におけるKp(比例項)、Ki(積分項)、Kd(微分項)の係数となる。
【0127】
例えば、保針モードから針路変更モードに変更し、方位設定器301で船舶1の進むべき方位を0°の状態から、10°右(+10°)へ向けるように急に設定が変えられたとする。第二の実施形態においては、このときポッド推進器10は左方向に10°旋回され、制御フィン20は右方向10°に旋回されていたが、この場合急な設定変更を受けて、ポッド推進器10をたとえば左方向に15°旋回させ、制御フィン20は右方向15°に旋回させる。そして後は、船首方位検出部40で検出される船首角と設定方位との偏差に応じてポッド推進器10と制御フィン20の旋回角が調整され、設定方位に船首角が近付くとポッド推進器10と制御フィン20の旋回角をゼロに近づけることにより、オーバーシュート角を小さくできる。時間を多くかけると、このオーバーシュートは非常に小さくすることが可能であるが、実際は船舶1として機敏な動きも要求されるところから整定時間とオーバーシュートがバランスの取れた範囲に収まるように、上記PID制御の基本制御アルゴリズム、基本定数が決められている。
【0128】
また、旋回モードにおいても、第三の実施の形態においては、ポッド推進器10及び制御フィン20を同方向に旋回させ、ポッド推進器10を旋回角θ1に制御フィン20を旋回角θ2に固定的に制御していたが、設定された旋回半径(船首角)や対水速度に応じて適宜、ポッド推進器10の旋回角θ1や制御フィン20の旋回角θを変えることができる。例えば、旋回開始時の対水速度が速く、旋回半径が小さい(設定方位が大きい)場合は、まずポッド推進器10を旋回角θ1+αに制御フィン20を旋回角θ2+βに設定し、早く設定した船首角に近付け、偏差が小さくなるに従ってポッド推進器10を旋回角θ1に制御フィン20を旋回角θ2に近づけるPID制御により、迅速に所定の旋回半径が得られる。
【0129】
また、停止及び減速制御においても第四の実施形態においては、ポッド推進器10を逆回転させるとともに、制御フィン20A、20Bを対称に旋回角θ2に制御していたが、目標停止距離、減速距離(時間)や対水速度に応じてこれらを制御することができる。
【0130】
例えば、目標停止、減速距離が短く、現在の対水速度が速い場合は、ポッド推進器10をより高速で逆回転させ、制御フィン20A、20Bの旋回角をより大きくしθ2+γに制御する。目標停止距離、減速距離に近付く(対水速度も低下)に従って、ポッド推進器10の回転数を落とし、制御フィン20A、20Bの旋回角もθ2に近づけることにより、所定の距離で停止や減速が可能となるとともに、対水速度が小さくなると発生し易い針路安定性の低下も防ぐことができる。
【0131】
なお、これらの制御において船首角の設定方位とのずれをPID制御で積分し、その値に応じて、制御フィン20A、20Bの旋回角θ2を制御したり、左右で旋回角を変えることにより、針路安定性を維持することも可能である。
【0132】
本実施形態では、実際の操船における様々な(たとえば設定条件の変更や外乱等の)事象に遭遇しても、このようにPID制御を用いることで、針路安定性に優れ、オーバーシュートが少なく俊敏に対応が可能な操縦性に優れた船舶1の航行を実現することができる。
【0133】
なお、この第五の実施形態においては、PID制御を例にとったが、P制御、PI制御であってもよく、またバンバン制御や他のフィードバック制御、フィードフォワード制御を含むオープンループ制御等とも適宜組み合わせた制御としてもよい。
【0134】
こうした、針路安定性の向上、旋回性の向上、停止及び減速の機能の向上を行う際のポッド推進器10及び制御フィン20の制御アルゴリズムは、船舶1に搭載可能なコンピュータにおいて実行可能形式のプログラム化した上で、運転状態設定部30に従って異なるモードとして随時呼び出し可能なようにモード記憶部80に記憶しておいてもよい。
【0135】
これにより、操縦室等から所定のコンピュータ装置の情報処理機能により、ボタン操作等でモード記憶部80から各運転モードとして呼び出すことができ、オートパイロット装置に組み込んでもよく、状況に応じて適合するモードが読み込まれ、かかるモードに即したアルゴリズムをコンピュータが実行することで、自動的に最適な運行制御を実現することができる。
【0136】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、変針する際のオーバーシュート角の減少を通じて、針路安定性能を向上することができる。さらに、これを通じて、離着桟性能を含む旋回性能・停止性能を向上させることができる。
【0137】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0138】
また、上述した実施例は、本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によれば、変針する際のオーバーシュート角の減少を通じて、針路安定性能を向上させるとともに、離着桟性能を含む旋回性能・停止性能を向上させることができるため、主に造船業、海運業等の海事産業を中心に広く利用可能性が認められるのみならず、環境対策上もすぐれたものである。
【符号の説明】
【0140】
1…船舶、10…ポッド推進器、20、20A、20B…制御フィン、301…方位設定器(方位設定手段)、40…船首方位検出部(方位検出手段)、50…船体角速度検出センサー、60…対水速度センサー、70…ポッド・フィン配分設定部、110…ポッド制御部、201〜206…制御フィン、210…フィン制御部(制御手段)、220…フィン旋回角調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶と、この船舶を推進するポッド推進器と、このポッド推進器の周囲の船体センターラインの左右もしくは船体センターライン上に略対称に配置した制御フィンと、この制御フィンを駆動する駆動手段と、前記船舶の運転状態を設定する運転状態設定手段と、この運転状態設定手段の設定に従って前記制御フィンの旋回角を前記ポッド推進器の旋回角と組み合わせ前記駆動手段を介して制御する制御手段とを備えたことを特徴とする操縦性能向上を図った船舶。
【請求項2】
前記制御フィンを前記ポッド推進器の船体センターラインの左右に備えたことを特徴とする請求項1記載の操縦性能向上を図った船舶。
【請求項3】
前記船舶の操舵時に、前記制御手段はオーバーシュート角を小さくすべく、前記制御フィンと前記ポッド推進器とを前記船舶の状態に応じて同方向あるいは逆方向に適宜制御したことを特徴とする請求項1乃至2のうちの1項に記載の操縦性能向上を図った船舶。
【請求項4】
前記船舶の旋回時に、前記制御手段は前記制御フィンを前記ポッド推進器と同方向に制御したことを特徴とする請求項1乃至2のうちの1項に記載の操縦性能向上を図った船舶。
【請求項5】
前記制御フィンを前記船舶の減速時に、前記制御手段は前記船舶の抵抗が増すように前記制御フィンを船体センターラインに実質的に対称の方向に制御したことを特徴とする請求項1乃至2のうちの1項に記載の操縦性能向上を図った船舶。
【請求項6】
前記ポッド推進器を旋回させ前記船舶の速度を低下させる際に、前記制御手段はポッド推力による前記船舶の横移動および旋回角を減少するように前記制御フィンを制御したことを特徴とする請求項1乃至5のうちの1項に記載の操縦性能向上を図った船舶。
【請求項7】
前記制御手段は前記運転状態設定手段の設定状態に従って異なるモードで前記ポッド推進器と前記制御フィンの旋回角を制御したことを特徴とする請求項1乃至6のうちの1項記載の操縦性能向上を図った船舶。
【請求項8】
船舶と、この船舶を推進するポッド推進器と、このポッド推進器の周囲の船体センターラインの左右もしくは船体センターライン上に対称に配置した制御フィンと、この制御フィンを駆動する駆動手段と、前記船舶の方位を設定する方位設定手段と、前記船舶の方位を検出する方位検出手段と、この方位検出手段の検出値と前記方位設定手段の設定値を比較して前記駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする操縦性能向上を図った船舶。
【請求項9】
前記方位検出手段は前記船舶の船首方位の角速度に基づいて方位を検出したことを特徴とする請求項8記載の操縦性能向上を図った船舶。
【請求項10】
前記制御手段は前記方位設定手段の設定状態に従って異なるモードで前記ポッド推進器と前記制御フィンの旋回角を制御したことを特徴とする請求項8あるいは9記載の操縦性能向上を図った船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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