説明

擬似目標発生装置

【課題】効率よく飛しょう体を被追跡目標に向かう飛しょうコースからそれさせる擬似目標発生装置を提供する。
【解決手段】ジンバル機構102に支持されるドーム103の内部に、撮像装置であるカメラ104と、レーザー光を反射する反射鏡108と、カメラ104が出力した画像データを入力し、飛しょう体Mが被追跡目標に向かって来るかを判定し、飛しょう体の走査型探査機による反射光を解析する判定部105と、判定部105の指示に従って変調信号を生成する変調部106と、この変調信号に従ってレーザー光を発生させるレーザー光発生装置107と、を備える。擬似目標発生装置100は、走査周期と同じ周期の変調パルス周期、反射パルス幅と等しい変調パルス幅、任意に定めた遅延時間にて変調パルスのレーザー光を発生させ、反射鏡を介して飛しょう体Mの走査型探査機に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、走査型探査機に対する擬似目標発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体の誘導装置に走査型探査機を採用しているものがある。図5は、走査型探査機を模式的に表わした図である。
【0003】
図5に示すように、走査型探査機はドーム501の内部に、赤外線Bを反射する一次鏡502と、角度φ2だけ傾き、回転周波数f2により回転しながら一次鏡502によって反射された赤外線を反射する二次鏡503と、角度φ1だけ傾き、回転周波数f1により回転しながら屈折率Nにより二次鏡503によって反射された赤外線を透過するウェッジ板504と、ウェッジ板504を透過した赤外線を検知する検知器505と、を備える。
【0004】
走査型探査機は、視野に投影された赤外線像の検知時間tから、飛しょう体前方のどの方向に追跡目標があるかを次の(1)式によりX座標を、(2)式によりY座標を判定する。
【0005】
X=φ2×(−cos2πf1t−cos2πf2t) ・・・ (1)
Y=φ2×(sin2πf1t−sin2πf2t) ・・・ (2)
ただし、φ2={φ1×(N−1)×d2}/{2×(d1+d2)}
ここで、d1は二次鏡503とウェッジ板504との距離、d2はウェッジ板504と検知器505との距離である。
【0006】
飛しょう体は、このX座標とY座標を基に視野の中心に追跡目標が来るように操舵する。これに対し、追跡されている被追跡目標は擬似目標を発生して飛しょう体をそらすことを試みる。
【0007】
従来の擬似目標の発生装置は、走査型探査機に変調したレーザー光を照射し、走査型探査機から反射されたレーザー光を解析し、レーザー変調光周波数を求める。このレーザー変調光周波数によりレーザー光を走査型探査機に照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−166211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6は、走査型探査機がこのレーザー変調光周波数により照射されたレーザー光を検知した軌跡である。図6に示すように、軌跡601は走査パターンの多くの部分を占めているため、走査型探査機は追跡目標が進行方向にあると判定し、軌道を変更しない。
【0010】
走査1周期のうち、レーザー光を照射している期間の走査角度の平均値が走査型探査機の追跡点となる。従って例えば、デューティー比が走査1周期の50%である場合、走査角度のばらつきが大きくなり、平均値は0に近くなる。この場合、追跡点は視野の中心となる。従って、従来の擬似目標の発生装置により影響を受けた走査型探査機は視野の中心に追跡目標があると認識して飛翔し、軌道を変更しない。
【0011】
従って、従来の擬似目標の発生装置では効果が十分でなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態は飛しょう体を撮像する撮像装置と、レーザー光を飛しょう体に向けて反射する反射鏡と、撮像装置が受光した飛しょう体の走査型探査機によるレーザー光の反射光を解析し、走査型探査機の走査周期と同じ周期の変調パルス周期、走査型探査機の反射パルス幅と等しい変調パルス幅、任意に定めた遅延時間にて変調指示を行う判定部と、判定部の変調指示に従って変調信号を生成する変調部と、変調信号に従ってレーザー光を発生させるレーザー光発生装置と、を備える擬似目標発生装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】擬似目標発生装置の構成を表す図である。
【図2】擬似目標発生装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】走査パターンと変調パルスの関係を示すグラフである。
【図4】走査パターン上の変調パルスの検知位置を示す図である。
【図5】走査型探査機を模式的に表わした図である。
【図6】走査型探査機がこのレーザー変調光周波数により照射されたレーザー光を検知した軌跡である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による擬似目標発生装置の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
擬似目標発生装置は、飛しょう体を撮像する撮像装置と、レーザー光を前記飛しょう体に向けて反射する反射鏡と、撮像装置が受光した飛しょう体の走査型探査機によるレーザー光の反射光を解析し、走査型探査機の走査周期と同じ周期の変調パルス周期、走査型探査機の反射パルス幅と等しい変調パルス幅、任意に定めた遅延時間にて変調指示を行う判定部と、判定部の変調指示に従って変調信号を生成する変調部と、変調信号に従ってレーザー光を発生させるレーザー光発生装置と、を備える。
【0016】
すなわち擬似目標発生装置は、レーザー光の変調周波数を走査周波数とし、レーザー光の変調パルス幅を反射パルス幅と等しくなるように、レーザー光のデューティー比を決める。
【0017】
この諸元により影響された走査型探査機には無作為に定まる位置に擬似目標が発生し、この擬似目標の方向に飛しょう体は軌道を変更する。
【0018】
図1は、本実施形態の擬似目標発生装置100の構成を表す図である。図1に示すように、擬似目標発生装置100は、走査型探査機を搭載する飛しょう体Mに追跡される被追跡目標に搭載され、ジンバル機構102に支持されるドーム103の内部に、撮像装置であるカメラ104と、レーザー光を反射する反射鏡108と、を備える。
【0019】
さらに、擬似目標発生装置100は、カメラ104が出力した画像データを入力し、飛しょう体Mが被追跡目標に向かって来るかを判定し、飛しょう体Mの走査型探査機による反射光を解析する判定部105と、判定部105の指示に従って変調信号を生成する変調部106と、この変調信号に従ってレーザー光R1を発生させるレーザー光発生装置107と、を備える。
【0020】
判定部105は、演算装置であるCPUと、記憶装置であるROM、RAMと、D/Aコンバータ、A/Dコンバータ、を含む。
【0021】
レーザー光発生装置107は、増幅器を備え、変調部106が変調した変調信号を増幅してレーザー光を発生させ、飛しょう体Mに照射する。
【0022】
判定部105は、飛しょう体Mが被追跡目標に向かって来るかを次のように判定する。まず、判定部105は、カメラ104によって撮像した第1のフレームの画像から飛しょう体Mを識別し、L1とラベリングする。次に、判定部105はカメラ104によって撮像した第2のフレームから飛しょう体Mを識別し、L2とラベリングする。判定部105は、L1とL2の位置の変化を算出し、飛しょう体Mの進行方向を算出する。
【0023】
判定部105は、飛しょう体Mの走査型探査機によって反射されたレーザー光から、走査周波数と反射パルス幅を求める。判定部105は、反射されたレーザー光をサンプリングし、単位時間当たりの反射数から走査周波数を算出する。また、反射光のパルス幅の時間を測定することにより反射パルス幅を求める。
【0024】
図2は、擬似目標発生装置100の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、ステップ201において、擬似目標発生装置100はレーザー光を走査型探査機に照射する。このレーザー光は連続光であってもよいし、適宜変調されていてもよい。
【0025】
ステップ202において、擬似目標発生装置100は飛しょう体Mの走査型探査機によって反射された反射レーザー光を受光する。すなわち、カメラ104が反射レーザー光を受光し、電気信号に変換して判定部105に出力する。
【0026】
ステップ203において、擬似目標発生装置100は判定部105により反射レーザー光から走査周波数及び反射パルス幅を算出する。
【0027】
ステップ204において、擬似目標発生装置100は走査周波数を変調周波数とし、反射パルス幅を変調パルス幅として、変調部106に変調の指示を出力する。変調部106は、指示された変調周波数と変調パルス幅と任意に定めた遅延時間により変調信号を生成する。変調部106は、この変調信号をレーザー光発生装置107に出力する。
【0028】
変調パルス幅は、走査周波数から求めた走査の周期である走査周期の1周期の5%以下であることが望ましい。5%を超えると走査型探査機は飛しょう体Mが目標に向かって飛しょうしていると判定する確率が高くなるからである。反射パルス幅が、閾値である走査周期の1周期の5%を超える場合は、変調パルス幅を走査周期の1周期の5%以下としてレーザー光発生装置107に出力する。
【0029】
ステップ205において、擬似目標発生装置100はレーザー光発生装置107により変調信号を増幅して変調パルスのレーザー光を発生させ、反射鏡108を介して飛しょう体Mの走査型探査機に照射する。
【0030】
ステップ206において、擬似目標発生装置100は飛しょう体Mが被追跡目標に向かう飛しょうコースからそれたかを判定する。擬似目標発生装置100は飛しょう体Mが被追跡目標に向かう飛しょうコースからそれた場合処理を終了し、それていない場合ステップ207に進む。
【0031】
ステップ207において、擬似目標発生装置100は判定部105により、変調パルスの遅延時間を変更し、ステップ205に戻る。
【0032】
図3は、走査パターンと変調パルスの関係を示すグラフである。図3に示すように、グラフ301は走査パターンのX座標の変化を、グラフ302は走査パターンのY座標の変化を示す。走査パターンの1周期はW0である。
【0033】
擬似目標発生装置100は判定部105により反射レーザー光から反射周波数を求め、走査1周期の時間間隔を求める。また、擬似目標発生装置100は判定部105により変調パルス幅W1を算出する。
【0034】
擬似目標発生装置100は、走査周期W0と同じ周期の変調パルス周期W2、反射パルス幅と等しい変調パルス幅W1、遅延時間t1にて変調パルスのレーザー光をレーザー光発生装置107により発生させ、飛しょう体Mの走査型探査機に照射する。
【0035】
図4は、走査パターン上の変調パルスの検知位置を示す図である。図4に示すように、検知位置401に変調パルスを飛しょう体Mの走査型探査機が検知した場合、飛しょう体Mは変調パルスを視野の中心に移動させるために、飛しょうコースを変更する。従って、飛しょう体Mは被追跡目標に向かう飛しょうコースからそれることとなる。
【0036】
ここで、飛しょう体Mの走査型探査機がたまたま変調パルスを検知位置402において検知したとする。この場合、飛しょう体Mは飛しょうコースを変更しない。従って、擬似目標発生装置100は変調パルスの遅延時間t1を変更し、変調パルスの走査パターン上での検知位置をずらす。従って、飛しょう体Mは被追跡目標に向かう飛しょうコースからそれることとなる。
【0037】
以上述べたように、本実施形態の擬似目標発生装置100は、ジンバル機構102に支持されるドーム103の内部に、撮像装置であるカメラ104と、レーザー光を反射する反射鏡108と、カメラ104が出力した画像データを入力し、飛しょう体Mが被追跡目標に向かって来るかを判定し、飛しょう体Mの走査型探査機による反射光を解析する判定部105と、判定部105の指示に従って変調信号を生成する変調部106と、この変調信号に従ってレーザー光を発生させるレーザー光発生装置107と、を備える。擬似目標発生装置100は、走査周期W0と同じ周期の変調パルス周期W2、反射パルス幅と等しい変調パルス幅W1、遅延時間t1にて変調パルスのレーザー光を発生させ、反射鏡108を介して飛しょう体Mの走査型探査機に照射する。
【0038】
従って、擬似目標発生装置100は飛しょう体Mを効果的に被追跡目標に向かう飛しょうコースからそれさせることが可能となるという効果がある。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
102:ジンバル機構、
104:カメラ、
105:判定部、
106:変調部、
107:レーザー光発生装置、
108:反射鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体を撮像する撮像装置と、
レーザー光を前記飛しょう体に向けて反射する反射鏡と、
前記撮像装置が受光した前記飛しょう体の走査型探査機による前記レーザー光の反射光を解析し、前記走査型探査機の走査周期と同じ周期の変調パルス周期、前記走査型探査機の反射パルス幅と等しい変調パルス幅、任意に定めた遅延時間にて変調指示を行う判定部と、
前記判定部の前記変調指示に従って変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号に従ってレーザー光を発生させるレーザー光発生装置と、
を備える擬似目標発生装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記撮像装置が撮像した前記飛しょう体の画像から前記飛しょう体が被追跡目標の方向に向かっていると判定したとき、前記遅延時間を変更する請求項1記載の擬似目標発生装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記反射パルス幅の前記走査周期に対する割合が閾値を超える場合、前記変調パルス幅の前記走査周期に対する割合が前記閾値以下になるように前記反射パルス幅を変更して判定部に変調指示を行う請求項1記載の擬似目標発生装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記反射パルス幅が前記走査周期の5%を超える場合、前記変調パルス幅を前記走査周期の5%以下にして判定部に変調指示を行う請求項1記載の擬似目標発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−63110(P2012−63110A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209359(P2010−209359)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】