説明

攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造

【課題】 アジテータの回転により攪拌されて、含有する固形分が粉砕された被処理液を、アジテータの外側に設けたセパレータを通過させた場合に、固形分をセパレータのスクリーン用リングプレートの外周面に滞留させず目詰まりを防止した攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造を提供する。
【解決手段】 セパレータ5のスクリーン機能を果たす間隙Gを形成するスクリーン用リングプレート10の側面の一方または両方の外側部分に、外周側にかけて徐々に肉厚を小さくするよう傾斜面部12を形成する。被処理液はスクリーン用リングプレート10の傾斜面部12に沿って流出するから、スクリーン用リングプレート10の外周面への固形分の滞留が極力抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラリー中の固形物を攪拌しながら粉砕する攪拌型湿式粉砕機に装着されて、所望の大きさに粉砕された固形物を通過させて選別するスクリーンの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において製紙用填料及び、製紙用塗工顔料として有用な性能に寄与するものとしてアラゴナイト系炭酸カルシウムがある。特に、クラフトパルプ製造工程の蒸解薬品の回収・再生を行う苛性化工程で副生する炭酸カルシウムは、副産物であるために製造コストが低く、これを用いることにより紙製品の製造コストの低減につながる。
【0003】
苛性化工程で得られる前記炭酸カルシウムは、形状のコントロールが難しく、苛性化反応で得られたものは、サイコロ状や六角面体などの種々雑多な形状を有し、粒子径も大きく、何れも不定形あるいは塊状である。このため、これを填料として上質紙や塗工紙を製造した場合、紙の不透明度や白色度、嵩高性等において品質が不十分となるおそれがある。
【0004】
このため、炭酸カルシウムの粒径等を揃えるために、炭酸カルシウムを含有するスラリーを湿式粉砕機に供して、炭酸カルシウムを粉砕することが行われる。この種の粉砕機として、例えば、特許文献1に開示された攪拌型湿式粉砕機がある。
【0005】
この種の攪拌型湿式粉砕機1の概略構造を図9に示してある。ケーシング2に軸3で片持ちされて該軸3と共に回転するアジテータ4が設けられており、このアジテータ4の外側に環状のセパレータ5が設けられている。アジテータ4は、有底の筒状をしたローター部4aの内部に該ローター部4aと一体的に攪拌羽根4bを有する構造で、ローター部4aには該ローター部4aの内外部を連通させる適宜数の排出孔4cが形成されていると共に、外周面には凹凸状に歯部4dが形成されている。ローター部4aの開口側に臨んだケーシング2には、前記軸3の延長上に供給口2aが形成されている。また、ケーシング2の外周の一部には、軸3を中心とした円弧の接線方向と平行な方向の排出口2bが形成されている。
【0006】
前記セパレータ5は、図7に示すように、環状に形成された一対の保持プレート5a、5bに複数枚の環状をしたスクリーン用リングプレート6が平座金状のスペーサ7を介在させて挟持されている。すなわち、保持プレート5a、5bを連結ロッド8で連結し、この連結ロッド8に前記スペーサ7を遊嵌し、このスペーサ7を隣接するスクリーン用リングプレート6で挟む状態にすると共に、該スクリーン用リングプレート6を一対の保持プレート5a、5bで挟持させている。このため、隣接するスクリーン用リングプレート6同士の間にスペーサ7の肉厚に相当する間隙Gが形成され、この間隙Gがスクリーンとしての機能を果たすことになる。なお、前記スペーサ7を交換して異なる肉厚のものを用いることにより、間隙Gの大きさを変更することができ、被処理液の性質に応じて対応させることができる。
【0007】
スラリー等の被処理液が前記供給口2aから供給されると、アジテータ4のローター部4aの内側に導入され、攪拌羽根4bにより攪拌されながら含有している固形物が粉砕される。攪拌されながら前記排出孔4cからローター部4aの外部側に流出した被処理液は、該ローター部4aの外周に形成された歯部4dにより、さらに攪拌されながら粉砕される。固形分が粉砕されて前記スペーサ7により形成されたスクリーン用リングプレート6同士の間隙Gによるスクリーンを通過すると、前記排出口2bから攪拌型湿式粉砕機1の外部に排出されて、次工程へ供給されることになる。
【0008】
【特許文献1】特開平10−15411
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記スクリーン用リングプレート6は、図6に示すように、外周側のスペーサ7に接する角部が面取りされた断面形状に形成されている。間隙Gを通過する被処理液はアジテータ4の径方向の液流を生じるから、この被処理液の流れにより、スクリーン用リングプレート6の外周面付近にはよどみ点が生じるおそれがある。このため、前記間隙Gから排出された被処理液中の固形分がスクリーン用リングプレート6の面取りされていない外周面に滞留する。この滞留した固形分が堆積すると、その堆積の範囲が徐々に拡大されて生長して間隙Gに至り、図5に示すように、ついには間隙Gが固形分Sにより閉塞されてしまうことになる。すなわち、スクリーンに目詰まりが生じてしまい、被処理液を排出することができなくなってしまうおそれがある。
【0010】
そこで、この発明は、スクリーン用リングプレートの外周面に固形分を滞留することを極力防止して、該固形分の生長による目詰まりを生じることを極力防止した攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造は、内側にアジテータが、外側にセパレータが配設され、アジテータの回転により被処理液を攪拌すると共に、該被処理液に含有された固形分を粉砕し、粉砕された固形分が前記セパレータのスクリーンを通過することにより選別される攪拌型湿式粉砕機であって、前記セパレータのスクリーンを、複数枚のスクリーン用リングプレートでスペーサを挟持し、該スペーサの肉厚により形成される間隙により形成する攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造において、前記スクリーン用リングプレートの側面の一部であって、該スクリーン用リングプレートの内周側の部分に前記スペーサが密着する座部を形成し、前記スクリーン用リングプレートの側面の一部であって、前記座部の外周側端部からスクリーン用プレートの外周端にかけて徐々に肉厚を小さくすることによる傾斜面部を形成したことを特徴としている。
【0012】
前記座部をスペーサに密着させることにより、スペーサが挟持される。すなわち、スペーサは前記スクリーン用プレートの側面の内周側部分で挟持されることになる。被処理液がスクリーンを通過する際には、それぞれのスクリーン用プレートでは、該スクリーン用プレートの側面の外周側部分に形成されている前記傾斜面部に沿って流れることになる。このため、スクリーン用リングプレートの外周面付近によどみ点が生じることが防止される。
【0013】
また、請求項2の発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造は、前記傾斜面部を、前記スクリーン用リングプレートの一方または両方の側面に形成したことを特徴としている。
【0014】
スクリーン用リングプレートの側面の一方または両方に前記傾斜面部を形成したものである。傾斜面部によりよどみ点が生じることが防止されるが、被処理液の粘度等によっては固形分が傾斜面部に付着するおそれがあるから、被処理液が含有する固形分の性質に応じて、一方又は両方の側面に傾斜面部を形成することで固形分の付着を極力防止する。
【0015】
また、スクリーン用リングプレートの外周端は、断面形状で直線状に形成して、傾斜面部の端部をこの直線状の外周面に接続した形状とする。両方の側面に傾斜面部が形成されるものでは、これら傾斜面部が前記断面直線状の面で接続される。また、両方に傾斜面部を形成する場合、それぞれの傾斜面部の角度や長さを異ならせることもできる。一方の側面に傾斜面部が形成されるものでは、前記断面直線状の面は一方が傾斜面に、他方が側面にそれぞれ接続した形状となる。
【0016】
前記傾斜面部をスクリーン用リングプレートの側面の一方または両方に形成するかは、粉砕すべき固形分を含有する被処理液の性質に応じて変更すればよい。また、前記傾斜面部の角度や外周面の断面直線状の面の直線距離、すなわち幅員、あるいはスクリーン用リングプレート6自体の幅員も、被処理液の性質や処理量等に応じて変更すればよい。
【0017】
また、請求項3の発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造は、前記スクリーン用リングプレートの外周端に尖端部を形成したことを特徴としている。
【0018】
スクリーン用リングプレートの外周端は、断面形状で直線状に形成することでも構わないが、前記傾斜面部を形成することにより、尖端状に形成したものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造によれば、スクリーンを経由してスクリーン用リングプレートの内側から外側に被処理液が流出する際に、スクリーン用リングプレートの外周面によどみ点が生ぜず、固形物が外周面に滞留することが極力防止される。このため、堆積する固形分の生長を遅らせ、スクリーンの間隙に固形分が目詰まりすることが極力防止され、攪拌型湿式粉砕機の稼働時間を長くすることができる。
【0020】
また、請求項3の発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造によれば、スクリーン用リングプレートの外周端が尖端部となって、固形分が滞留する部分が存しないから、スクリーンの目詰まりを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造を具体的に説明する。なお、図5〜図9に示した部分と同一の部分については、これらの図で付した符号と同一の符号を付してある。
【0022】
図1はスクリーン構造を示す拡大断面図であり、連結ロッド8にスペーサ7を遊嵌させ、これらのスペーサ7の一部をスクリーン用リングプレート10で挟持した状態を示している。このスクリーン用リングプレート10の両側面の一部であって、該スクリーン用リングプレート10の内周側の部分には前記スペーサ7を挟持できるようスペーサ7を面接触する座部11が形成されている。この座部11よりも外周側には、外周端にかけて徐々に肉厚を小さくする傾斜面部12が形成されている。なお、この傾斜面部12はスクリーン用リングプレート10の側面の一方に形成されており、他方の側面は前記座部11が外周端まで形成されて、外周端面との接続する部分には面取り13が施されている。また、外周端には筒状に外周面14が形成されている。
【0023】
以上の構造のスクリーン用リングプレート10を備えたセパレータ5の内側から外側に被処理液が通過する場合には、前記スペーサ7の肉厚に相当する大きさで形成されたスクリーン用リングプレート10同士の間隙Gを通ることになる。このとき、被処理液は前記傾斜面部12に沿って流れるから、円滑に流れてよどみ点を生じることが極力防止される。このため、前記外周面に被処理液中の固形分が滞留することが抑制され、図2に示すように、傾斜面部12では固形分Sの生長が抑制されて間隙Gに目詰まりを生じることが防止される。
【0024】
前記スクリーン用リングプレートの断面形状は、図3または図4に示す形状とすることもできる。なお、図3及び図4はスクリーン用リングプレートの断面形状のみを示している。図3には外周面を尖端形状としたスクリーン用リングプレートを示している。図3(a)に示すスクリーン用リングプレート20は、両側の側面に傾斜面部21を座部22に連続して形成すると共に、外周端を尖端部23としたものである。また、図3(b)に示すスクリーン用リングプレート30は、一方の側面に傾斜面部31を座部32に連続して形成すると共に、外周端を尖端部33としたものである。
【0025】
これら図3に示す実施形態のように、スクリーン用リングプレート20、30の外周面に尖端部23、33が形成されている構造であれば、被処理液中の固形分が滞留するおそれのある部分がなく、より確実に固形分が間隙に詰まることがなく、スクリーンの目詰まりが防止される。
【0026】
また、図4は、外周面の断面形状が直線状となった形状のスクリーン用リングプレートの断面形状を示すものである。同図(a)は、スクリーン用リングプレート40の側面の一方に傾斜面部41を形成し、他方の側面42を外周面43まで伸張させ、外周面43を断面が直線状となる形状としたものである。傾斜面部41が形成された側面では、該傾斜面部41の端部からスクリーン用リングプレート40の内周側にかけて座部44が形成されており、他方では側面42自体で座部が形成されている。また、同図(b)に示すスクリーン用リングプレート50は、側面の両方に傾斜面部51を形成すると共に、傾斜面部51同士の端部を断面直線状の外周面52に接続させた形状としたものである。また、傾斜面部51からスクリーン用リングプレート50の内周側にかけて座部53、53が形成されている。
【0027】
これら図3または図4に示す実施形態にあっては、前記外周面43、52の断面直線状の部分の長さ、すなわち幅員は任意の大きさとすることができる。例えば、この攪拌型湿式粉砕機で処理すべき固形分を含有する被処理液の性質に応じて、堆積し難い固形分では幅員を大きくとり、あるいは傾斜面部41、51の角度や長さを被処理液に応じたものに調整して幅員を決定する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造によれば、被処理液中の固形分がスクリーンに滞留することが抑制されるから、スクリーンの目詰まりが極力防止されて、攪拌型湿式粉砕機の稼働時間の長時間化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造の要部を示す断面図である。
【図2】この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造が備えたスクリーン用リングプレートの断面図で、一の実施形態を示している。
【図3】この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造が備えたスクリーン用リングプレートの断面図で外周面に尖端部を形成した実施形態を示しており、(a)は一の実施形態を、(b)は他の実施形態を、それぞれ示している。
【図4】この発明に係る攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造が備えたスクリーン用リングプレートの断面図で外周面が断面直線状に形成された実施形態を示しており、(a)は一の実施形態を、(b)は他の実施形態を、それぞれ示している。
【図5】従来のスクリーン構造を備えたスクリーン用リングプレートが有する問題点を説明する該スクリーン用リングプレートの断面図である。
【図6】従来の構造を備えたスクリーンを示す断面図で、図1に相当する図である。
【図7】従来のスクリーン構造を備えたセパレータの正面図である。
【図8】図7に示すセパレータの側面図である。
【図9】従来のスクリーン構造を備えた攪拌型湿式粉砕機の構造を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 攪拌型湿式粉砕機
2 ケーシング
3 軸
4 アジテータ
4a ローター部
4b 攪拌羽根
4c 排出孔
4d 歯部
5 セパレータ
6 スクリーン用リングプレート
7 スペーサ
8 連結ロッド
10 スクリーン用リングプレート
11 座部
12 傾斜面部
13 面取り
14 外周面
20 スクリーン用リングプレート
21 傾斜面部
22 座部
23 尖端部
30 スクリーン用リングプレート
31 傾斜面部
32 座部
33 尖端部
40 スクリーン用リングプレート
41 傾斜面部
42 側面
43 外周面
44 座部
50 スクリーン用リングプレート
51 傾斜面部
52 外周面
53 座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にアジテータが、外側にセパレータが配設され、アジテータの回転により被処理液を攪拌すると共に、該被処理液に含有された固形分を粉砕し、粉砕された固形分が前記セパレータのスクリーンを通過することにより選別される攪拌型湿式粉砕機であって、前記セパレータのスクリーンを、複数枚のスクリーン用リングプレートでスペーサを挟持し、該スペーサの肉厚により形成される間隙により形成する攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造において、
前記スクリーン用リングプレートの側面の一部であって、該スクリーン用リングプレートの内周側の部分に前記スペーサが密着する座部を形成し、
前記スクリーン用リングプレートの側面の一部であって、前記座部の外周側端部からスクリーン用プレートの外周端にかけて徐々に肉厚を小さくすることによる傾斜面部を形成したことを特徴とする攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造。
【請求項2】
前記傾斜面部を、前記スクリーン用リングプレートの一方または両方の側面に形成したことを特徴とする請求項1に記載の攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造。
【請求項3】
前記スクリーン用リングプレートの外周端に尖端部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の攪拌型湿式粉砕機のスクリーン構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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