説明

攪拌溶解装置及びその使用方法

【課題】容器内の溶解液を攪拌しながら加熱して溶解混合する際に、溶解液中における気泡の発生を良好に防止して、溶解混合に必要な時間を短縮するとともに、溶解液の品質を向上できる攪拌溶解装置を提供する。
【解決手段】有底筒状の容器1と、容器1内に収容された粉体Pと液体Rとを含む溶解液Wを、容器1の軸芯X周りで回転する攪拌部材2により攪拌して溶解混合する攪拌手段3と、容器1内の溶解液Wを加熱する加熱手段とを備えた攪拌溶解装置において、容器1の上部開口1aを開放及び閉鎖自在な蓋体5を備え、溶解液Wの上側にある気体Qと溶解液Wとが接触する液面W1の接触面積が容器1の断面積より小さい気液接触面積減少状態で、溶解液Wを容器1内に収容可能に構成され、攪拌手段3及び加熱手段の何れか一方又は両方が運転された運転状態で、気液接触面積減少状態が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状の容器と、容器内に収容された粉体と液体とを含む溶解液を、容器の軸芯周りで回転する攪拌部材により攪拌して溶解混合する攪拌手段と、容器内の溶解液を加熱する加熱手段とを備えた攪拌溶解装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる攪拌溶解装置は、有底筒状の容器内に収容された粉体と液体とを含む溶解液を、加熱しながら攪拌して溶解混合するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。このような溶解液としては、例えば、水(液体の一例)にPVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性ポリマー(粉体の一例)を含む固液混合液等、比較的粘性が高い(攪拌や加熱に伴い粘性が高くなるものを含む)粘性材料が例示できる。
【0003】
かかる攪拌溶解装置として、例えば、特許文献1には、有底円筒形状に形成された容器内に、容器の中心軸周りの所定位置で回転する複数の攪拌羽根と、容器の内周面の所定位置に設けられた複数の邪魔板とを備える構成が開示されている。この攪拌溶解装置では、容器内に、水面に浮き上がり易いPVP(ポリビニルピロリドン)や水中でダマを形成して沈降し易いPVA等の複数種の粉体と水との溶解液を、加熱しながら攪拌して溶解混合する場合であっても、容器内における上方の溶解液には旋回流を発生させ、下方の溶解液には上下流を発生させて、各粉体と水との混合溶解を均一に行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−205230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に開示された攪拌溶解装置では、通常、有底円筒状の容器の上方開口から溶解液が溢れ出ない程度(例えば、容器容量の80%程度)にまで当該溶解液を投入した状態で、容器内の溶解液の加熱及び攪拌が行われる。
【0006】
しかしながら、かかる攪拌溶解装置では、容器内に収容された溶解液の上側には空間が形成され、当該空間には気体が存在することとなる。この状態で、攪拌手段により容器の中心軸周りで溶解液を攪拌すると、溶解液の種類によっては当該溶解液の流動により液面が波立ち、溶解液中に気体が取り込まれて気泡が発生する。特に、容器内において、気体と溶解液とが接触する接触面積は容器の断面積と同程度となっているため、当該接触面積は非常に大きく、溶解液中に発生する気泡が多数となる。
このように、溶解液中に気泡が存在すると、溶解液を加熱する際の加熱効率が低下して溶解混合に余計な時間が必要になるとともに、溶解液の品質が低下することとなり、また、発生した気泡を溶解混合の次工程で処理する必要が生じ手間が掛かる等、種々の問題が生じる虞がある。
【0007】
また、かかる攪拌溶解装置では、通常、粉体自体には気体が付着しているため、当該粉体に付着した気体は、容器内に収容された溶解液中において攪拌部材により攪拌されることで、溶解液中に気泡として析出(放出)される。さらに、攪拌溶解装置において加熱を行う場合には、加熱に伴う溶解液の沸騰等により当該溶解液中に気泡が発生する場合もある。これら場合においても、溶解液中に気泡が存在することとなり、上述と同様の問題が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容器内の溶解液を攪拌しながら加熱して溶解混合する際に、溶解液中における気泡の発生を良好に防止して、溶解混合に必要な時間を短縮するとともに、溶解液の品質を向上できる攪拌溶解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る、有底筒状の容器と、前記容器内に収容された粉体と液体とを含む溶解液を、前記容器の軸芯周りで回転する攪拌部材により攪拌して溶解混合する攪拌手段と、前記容器内の溶解液を加熱する加熱手段とを備えた攪拌溶解装置の特徴構成は、
前記容器の上部開口を開放及び閉鎖自在な蓋体を備え、
前記溶解液の上側にある気体と前記溶解液とが接触する液面の接触面積が前記容器の断面積より小さい気液接触面積減少状態で、前記溶解液を前記容器内に収容可能に構成されるとともに、
前記攪拌手段及び前記加熱手段の何れか一方又は両方が運転された運転状態で、前記気液接触面積減少状態が形成される点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、容器内に粉体と液体とを含む溶解液が容器内に収容されただけの状態、すなわち、攪拌手段や加熱手段が運転されているか否か問わない状態において、溶解液の上側にある気体と溶解液とが接触する液面の接触面積を容器の断面積より小さい気液接触面積減少状態とすることができる。これにより、容器内に収容された溶解液を攪拌部材により攪拌して溶解混合した場合でも、上記接触面積が容器の断面積と同等である場合と比較して、溶解液の上側に存在する気体が溶解液中に巻き込まれる量を確実に少なくして、溶解液中に発生する気泡を確実に少なくすることができる。
【0011】
一方、攪拌手段及び加熱手段の何れか一方又は両方が運転された運転状態において、溶解液の上側にある気体と溶解液とが接触する液面の接触面積が容器の断面積より小さい気液接触面積減少状態を形成することができるので、仮に、容器内に収容されただけの状態の溶解液が気液接触面積減少状態となっていない場合であっても、上記運転状態では確実に気液接触面積減少状態とすることができる。これにより、少なくとも攪拌手段及び加熱手段の何れかが運転状態となることで、溶解液を気液接触面積減少状態とした上で、溶解液の攪拌や加熱が行われることなる。従って、上述と同様に、容器内に収容された溶解液を攪拌部材により攪拌して溶解混合した場合でも、上記接触面積が容器の断面積と同等である場合と比較して、溶解液の上側に存在する気体が溶解液中に巻き込まれる量を確実に少なくして、溶解液中に発生する気泡を確実に少なくすることができる。
【0012】
よって、容器内の溶解液を攪拌しながら加熱して溶解混合する際に、溶解液中における気泡の発生を良好に防止して、溶解混合に必要な時間を短縮するとともに、溶解液の品質を向上できる。
【0013】
本発明に係る攪拌溶解装置の更なる特徴構成は、前記容器の断面積より小さい断面積の筒状管部を、前記蓋体の上側に前記容器の内部空間と連通接続して備え、前記溶解液の液面を前記筒状管部内に位置させて前記気液接触面積減少状態とする点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、容器の上部開口を閉鎖する蓋体の上側に、筒状管部を容器の内部空間と連通接続して備えているので、容器内に収容された溶解液の量を調整することで、容器内を溶解液で満たし、更に上側に連通接続する筒状管部にまで溶解液を収容させることができる。そして、筒状管部は、容器の断面積より小さい断面積で形成されているので、容器内を溶解液で満たし、更に溶解液の液面を筒状管部内に位置させることで、気体と溶解液とが接触する液面の接触面積は、容器の断面積よりも小さい断面積の気液接触面積減少状態となる。これにより、蓋体の上側に筒状管部を設けるという非常に簡便な構成でありながら、溶解液の上側に存在する気体と溶解液との接触面積を小さくすることができ、容器内に収容された溶解液を攪拌部材により攪拌して溶解混合した場合でも、気体が溶解液中に巻き込まれる量をより確実に少なくして、溶解液中に発生する気泡をより確実に少なくすることができる。
【0015】
本発明に係る攪拌溶解装置の更なる特徴構成は、前記容器及び前記筒状管部を密閉する密閉手段を備え、前記密閉手段は、前記筒状管部内が所定圧力以上になると、前記筒状管部内の気体を外部に放出する弁体で構成されている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、容器及び筒状管部を密閉する密閉手段は、筒状管部内が所定圧力以上になると、筒状管部内の気体を外部に放出する弁体で構成されているので、加熱手段による加熱等により容器内が加圧された場合において、容器及び筒状管部を密閉したある程度の加圧状態を維持しながら、容器及び筒状管部内の圧力が所定圧力以上に上昇することを防止できる。これにより、密閉して加圧状態にある容器内において、粉体を溶解液中に良好に溶解混合することができ、より短い時間で、しかも確実に溶解混合することができる。また、容器内が加圧状態に維持されているので、容器や筒状管部の溶解液中において気泡の発生を防止することができる。すなわち、粉体自体に付着した気体が攪拌により気泡として析出(放出)することを防止できるとともに、沸騰等による気泡の発生も抑制することができる。
【0017】
本発明に係る攪拌溶解装置の更なる特徴構成は、前記筒状管部の下部が、前記容器の上方開口から上方に行くに従って断面積が小さくなる縮径部として形成されている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、筒状管部の下部が、容器の上方開口から上方に行くに従って断面積が小さくなる縮径部として形成されているので、例えば、溶解液中に気泡が存在する場合には、当該気泡は攪拌手段の攪拌により溶解液とともに容器内を流動し、筒状管部の縮径部の下面に沿って筒状管部内に案内され、気泡を筒状管部内に導き、筒状管部内の気相に解放することができる。このように溶解液内に気泡が発生する場合としては、例えば、粉体自体に付着した気体が、容器内に収容された溶解液中において攪拌部材により攪拌されて溶解液中に気泡として析出(放出)された場合や、溶解液の加熱に伴う溶解液の沸騰等により当該溶解液中に気泡が発生した場合等が考えられるが、このような場合でも、ある程度の気泡を溶解液中から取り除くことができる。
【0019】
本発明に係る攪拌溶解装置の更なる特徴構成は、前記筒状管部が、前記蓋体の軸芯側よりも径方向外方側に位置する状態で、前記蓋体の上側に配設されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、筒状管部が、蓋体の軸芯側よりも径方向外方側に位置する状態で、蓋体の上側に配設されているので、例えば、溶解液中に気泡が存在する場合には、当該気泡は攪拌手段の攪拌により溶解液とともに容器内を流動し、容器内を上昇して筒状管部内に案内され、気泡を筒状管部内に導き、筒状管部内の気相に解放することができる。具体的には、攪拌部材が容器の軸芯周りで回転して溶解液を軸芯周りで渦状に流動させるとともに、当該軸芯近傍では底部に向かい、順次、底部では容器の内周面側(軸芯側よりも径方向外方側)に、内周面側では上部に、上部では軸芯側に向かうように循環流動させることで、筒状管部の下方近傍に上昇するように溶解液を流動させるような場合には、溶解液中に含まれる気泡を筒状管部内に案内することができ、当該気泡を筒状管部内の気相に解放することができる。これにより、上述のように、溶解液中に気泡が存在する場合であっても、当該気泡を筒状管部内に案内して筒状管部に存在する気相に解放することができ、溶解液中の気泡を少なくすることができる。
【0021】
本発明に係る攪拌溶解装置の更なる特徴構成は、前記加熱手段が、前記容器内に配設された対を成す電極を備え、当該対を成す電極間に電圧を印加して前記容器内の溶解液を通電加熱する構成である点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、加熱手段が、容器内に配設された対を成す電極に電圧を印加して、容器内の溶解液を直接通電加熱するので、熱媒体を介して間接的に溶解液を加熱する場合等と比較して、より短時間で溶解液を昇温することができる。
【0023】
本発明に係る攪拌溶解装置の更なる特徴構成は、前記溶解液は、前記液体としての水と、前記粉体としての水溶性ポリマーとの混合溶液である点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性ポリマーの粉体を水に混合溶解する場合において、攪拌しないと容器内に沈降し、攪拌すると気泡が発生し易く、また、攪拌しても水が高温である場合にはダマになり易い等の問題が生じるとしても、攪拌しながら加熱して溶解混合する際には、上述のとおり、気泡の発生を良好に防止できるとともに、短い時間で溶解混合を行うことができる。よって、水と水溶性ポリマーとの溶解混合を効率よく行うことができる。
【0025】
上記目的を達成するための本発明に係る、有底筒状の容器と、前記容器内に収容された粉体と液体とを含む溶解液を、前記容器の軸芯周りで回転する攪拌部材により攪拌して溶解混合する攪拌手段と、前記容器内の溶解液を加熱する加熱手段と、前記容器の上部開口を開放及び閉鎖自在な蓋体とを備えた攪拌溶解装置の使用方法の特徴構成は、
前記攪拌手段及び前記加熱手段の何れか一方又は両方を運転して攪拌又は溶解を行うに、前記溶解液の上側にある気体と前記溶解液とが接触する液面の接触面積が前記容器の断面積より小さい気液接触面積減少状態で、攪拌又は溶解を行う点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、攪拌手段及び加熱手段の何れか一方又は両方が運転された運転状態において、気液接触面積減少状態で攪拌又は溶解を行うので、容器内に収容された溶解液を攪拌部材により攪拌して溶解混合した場合でも、上記接触面積が容器の断面積と同等である場合と比較して、溶解液の上側に存在する気体が溶解液中に巻き込まれる量を確実に少なくして、溶解液中に発生する気泡を確実に少なくすることができる。
よって、容器内の溶解液を攪拌して溶解混合する際に、溶解液中における気泡の発生を良好に防止して、溶解混合に必要な時間を短縮するとともに、溶解液の品質を向上できる。
【0027】
本発明に係る攪拌溶解装置の使用方法の更なる特徴構成は、前記攪拌溶解装置が、前記容器の断面積より小さい断面積の筒状管部を、前記蓋体の上側に前記容器の内部空間と連通接続して備え、
前記溶解液の液面を前記筒状管部内に位置させるように前記溶解液を前記容器内に収容して、前記気液接触面積減少状態とする点にある。
【0028】
上記特徴構成によれば、容器の上部開口を閉鎖する蓋体の上側に、筒状管部を容器の内部空間と連通接続して備えているので、容器内に収容された溶解液の量を調整することで、容器内を溶解液で満たし、更に上側に連通接続する筒状管部にまで溶解液を収容させることができる。そして、筒状管部は、容器の断面積より小さい断面積で形成されているので、容器内を溶解液で満たし、更に溶解液の液面を筒状管部内に位置させることで、気体と溶解液とが接触する液面の接触面積は、容器の断面積よりも小さい断面積の気液接触面積減少状態となる。この状態で、容器内に収容された溶解液を攪拌部材により攪拌して溶解混合した場合には、気体が溶解液中に巻き込まれる量をより確実に少なくして、溶解液中に発生する気泡をより確実に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図4における攪拌溶解装置のI−I矢視図
【図2】図4における攪拌溶解装置のII−II矢視図
【図3】攪拌タンクの概略横断面視図
【図4】攪拌タンクの概略上面視図
【図5】図2における攪拌タンクの上部部分の概略縦断面視図
【図6】(a)粉体を投入する状態を示す概略概念図、(b)液体を供給する状態を示す概略概念図、(c)溶解液を攪拌タンク内に収容して気液接触面積減少状態とし、攪拌手段により攪拌する状態を示す概略概念図、(d)攪拌手段により攪拌し加熱手段により加熱した状態で、気液接触面積減少状態となっている状態を示す概略概念図
【図7】別実施形態に係る攪拌溶解装置の概略側面視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1〜図6に基づいて、本発明の攪拌溶解装置50の実施の形態を説明する。
【0031】
攪拌溶解装置50は、図1〜図6(特に、図1及び図2)に示すように、内部に粉体Pと液体Rとを含む溶解液Wを収容する有底筒状の攪拌タンク1(容器の一例)と、攪拌タンク1内に収容された溶解液Wを、攪拌タンク1の中心軸X(軸芯の一例)周りで回転する攪拌羽根2(攪拌部材の一例)により攪拌して溶解混合する攪拌手段3と、攪拌タンク1内の溶解液Wを加熱する加熱手段4と、攪拌タンク1の上部開口1aを開放及び閉鎖自在な蓋体5と、攪拌タンク1等を支持する支持基台Bとを備える。
すなわち、攪拌溶解装置50は、攪拌タンク1内に収容された溶解液Wを、加熱手段4により加熱しながら、攪拌羽根2により攪拌して溶解混合することができるように構成されている。
【0032】
なお、このような溶解液Wとしては、例えば、水(液体Rの一例)にPVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性ポリマー(粉体Pの一例)を含む固液混合液等、比較的粘性が高い(加熱に伴い粘性が高くなるものを含む)粘性材料が例示できるが、以下では、溶解液Wとして、水にPVA粉体を含む固液混合液を用いている。
以下、攪拌溶解装置50の各部の構成について説明する。
【0033】
支持基台Bは、図1及び図2に示すように、側面視で概略コ字形状に形成され、攪拌タンク1を載置して支持可能な下部基台30と、攪拌タンク1の上部に配設される蓋体5を上下方向に移動可能な移動機構(図示せず)が配設された上部基台31と、下部基台30に連接され上部基台31を支持する柱部32とを備えて構成される。
【0034】
攪拌タンク1は、有底円筒形状(有底筒状の一例)に形成され、電気絶縁性及び耐熱性を備えた樹脂で構成されている。攪拌タンク1の上部には、粉体Pを投入可能な上部開口1aが形成され、当該上部開口1aを開放及び閉鎖自在な円板状の蓋体5が配設されている。攪拌タンク1の底部の中心部には、攪拌混合された溶解液Wを排出する排出口1bが設けられ、開閉弁1cを介して外部へ排出可能に構成されている。なお、本実施例では、攪拌タンク1の内径は、約312mmとされている。
【0035】
蓋体5の中心部には、図1、図2、図5に示すように、上方側に突出する円筒状のボス部5aが形成され、当該ボス部5aの内径側には、後述する攪拌手段3の駆動軸10を挿通する貫通孔5bが設けられている。また、蓋体5の外周部には、後述する一方側電極4A及び他方側電極4Bを取付ける複数の取付部5c(例えば、8つ)が配設されている。各取付部5cには、蓋体5の上面と下面とを貫通する電極用貫通孔5dが設けられ、当該電極用貫通孔5dに一方側電極4A,他方側電極4Bにおいて縮径された上端部を挿入して、一方側電極4A及び他方側電極4Bを蓋体5に垂下状態で取付け固定可能に構成されている。なお、電極用貫通孔5dと一方側電極4A及び他方側電極4Bの上端部との接触部分には、電気絶縁性の絶縁ブッシュ(図示せず)が設けられ、蓋体5と一方側電極4A及び他方側電極4Bとの間での絶縁が図られている。
【0036】
また、蓋体5の外周部には、筒状管部6が上側に突出するように配設されているが、筒状管部6の詳細については後述する。
【0037】
さらに、図1に示すように、蓋体5においてボス部5aよりも外周側には、攪拌タンク1内の溶解液Wの温度を計測可能な管状の測熱抵抗体からなる温度センサ7が配設され、検出温度を制御部(図示せず)に出力可能に構成されている。
【0038】
攪拌手段3は、図1〜図4に示すように、駆動軸10を回転駆動させる駆動モータ11と、駆動軸10の下部に配設された平板状の攪拌羽根2とを備える。
駆動モータ11は、蓋体5の貫通孔5bに駆動軸10を挿通した状態で、固定ブラケット12を介して締結ボルト(図示せず)により蓋体5の上面に固定されている。駆動軸10は、攪拌タンク1の中心軸Xと同軸で回転可能に構成され、溶解液W(粉体P及び液体R)の種類、後述する加熱手段4により印加される電圧、一方側電極4A及び他方側電極4Bの配置等に応じて、適切な回転数で回転するように設定されている。例えば、本実施例では、駆動軸10の回転数は、一分間に60回転程度の回転数に設定されている。
【0039】
平板状に形成された攪拌羽根2は概略長方形状に形成され、その長手方向を駆動軸10に沿わせ、短手方向を駆動軸10の回転半径方向に沿わせた状態で、駆動軸10の下部(駆動軸10の略下半分の部分)に配設されている。短手方向における攪拌羽根2の下部両側部2aは、駆動軸10の下端よりも若干下方に延出するように配設されている。また、攪拌羽根2には、平板状に形成された厚み方向に貫通する長方形状の攪拌口2bが、短手方向において駆動軸10に対して対称となる位置に二対(合計、4つ)設けられている。
従って、攪拌羽根2は、駆動モータ11により攪拌タンク1の中心軸X周りで回転駆動されることで、図6(c)及び(d)に示すように、攪拌タンク1内において、溶解液Wを中心軸X周りで渦状に流動させるとともに、当該中心軸X近傍では底部に向かい、順次、底部では攪拌タンク1の内周面1d側(径方向外方側)に、内周面1dでは上部に、上部では中心軸X側に向かうように循環流動させることができる。
【0040】
加熱手段4は、図1〜図4(特に、図3)に示すように、攪拌タンク1内に対向配置される一方側電極4A及び他方側電極4B(対を成す電極)と、一方側電極4A及び他方側電極4B間に電圧を印加する電圧印加部4Cとを備え、一方側電極4A,他方側電極4B間に電圧を印加して、攪拌タンク1内に収容された溶解液Wを通電加熱するように構成されている。なお、電圧印加部4Cに電流を通電する電源Sとしては、商用電源や高周波電源等、特に制限されないが、本実施例では、商用電源の三相交流電源(200V)を用いた。
【0041】
一方側電極4Aは、複数本の円柱状(柱状の一例)の長尺部材で構成され、本実施例では、4本の長尺部材で構成され、同様に、他方側電極4Bも、複数本の円柱状(柱状の一例)の長尺部材で構成され、本実施例では、4本の長尺部材で構成されている。各一方側電極4A及び各他方側電極4Bの上端に配設される通電端子(図示せず)が、蓋体5に垂下状態で取付けられた状態において当該蓋体5の上面から突出した状態となり、電圧印加部4Cを介して電源Sに接続される。一方側電極4A及び他方側電極4Bは、上述のように電源Sとして三相交流電源を用いた場合に腐食を防止するため、チタン電極に導電性のアルミニウムが溶射されて形成されている。
【0042】
ここで、図1及び図5に示すように、長手部材で構成される一方側電極4A及び他方側電極4Bは、攪拌タンク1の縦断面視において、攪拌タンク1の上方から上部開口1aを介して挿入され、長手部材の軸芯が攪拌タンク1の中心軸Xと平行となるように配置されて、当該長手部材の下端が攪拌タンク1の内周面1dにおける鉛直部分の下端付近に位置するように配置される。また、攪拌タンク1の横断面視における、一方側電極4A及び他方側電極4Bの配設位置について説明を加える。当該配置位置は、図3に示すように、攪拌タンク1の横断面視において、一方側電極4Aと他方側電極4Bとが、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zを挟んだ両側に配設され、一方側電極4Aの外側と攪拌タンク1の内周面1dとの間に隙間を形成し、他方側電極4Bの外側と攪拌タンク1の内周面1dとの間に隙間をそれぞれ形成した状態で配置されている。
【0043】
そして、攪拌タンク1の横断面視において、各一方側電極4A,各他方側電極4Bは攪拌タンク1の中心軸X周りでそれぞれ複数に分割され、各一方側電極4A,各他方側電極4Bの隣接間に溶解液Wが移動可能な間隙を形成するように、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする同一円周上に湾曲配置されている。なお、本実施例では、図3に示すように、各一方側電極4Aは、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対して当該中心軸X周りで反時計回りに45度回転させた位置に一方側電極4Aが配置され、当該位置から中心軸X周りで反時計回りに30度ずつ角度を空けて、その他の一方側電極4Aがそれぞれ等間隔に配置されるように構成されている。同様に、各他方側電極4Bは、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対して当該中心軸X周りで時計回りに45度回転させた位置に他方側電極4Bが配置され、当該位置から中心軸X周りで時計回りに30度ずつ角度を空けて、その他の他方側電極4Bがそれぞれ等間隔に配置されるように構成されている。従って、各一方側電極4Aと各他方側電極4Bとは、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対してそれぞれ対称に配置され、各一方側電極4Aと各他方側電極4Bとが複数の電極対(図3では、4つ)を構成している。
【0044】
電圧印加部4Cは、図3に示すように、各電極対に対して電圧を印加可能に構成され、主として制御部(図示せず)を備えた電気回路により構成されている。本実施例では、全ての電極対に対して同一の電圧を印加している。なお、電圧印加部4Cを各電極対毎に異なる電圧を印加する構成としてもよい。また、制御部は、温度センサ7からの検出温度に基づいて、電源Sからの電流を遮断できるように構成されている。
【0045】
ここで、蓋体5の外周部において、上側に突出配設される筒状管部6の構成について説明する。
筒状管部6は、図2、図4、図5に示すように、円筒形状に形成され、円筒形状のうち、上部は断面積が同一の直管部6aが形成され、下部は上方に行くに従って断面積が小さくなる縮径部6bが形成されている。縮径部6bの下端が蓋体5の下面に連設した状態で、筒状管部6が蓋体5の上側に突出するように配設される。従って、筒状管部6は、蓋体5を貫通した状態で攪拌タンク1の内部空間と連通接続するように配設される。筒状管部6における直管部6aの断面積及び縮径部6bの下端の断面積は、攪拌タンク1の断面積よりも小さく設定されている。ここで、直管部6aの断面積及び縮径部6bの下端の断面積は、攪拌タンク1の断面積よりも小さく設定されていればよいが、直管部6aの内径及び縮径部6bの下端の内径は、下限が直管部6a及び縮径部6bを介して外部から攪拌タンク1の内部空間に液体R(例えば、水)を供給できる程度に設定され、上限が攪拌タンク1の内径の半分以下程度に設定される。なお、筒状管部6の中心軸は、攪拌タンク1の中心軸Xよりも内周面1d側、特に、中心軸Xと内周面1dとの中間位置よりも内周面1d側(径方向外方側)に配設されている。
【0046】
これにより、例えば、図6(c)及び(d)に示すように、攪拌タンク1に溶解液Wを収容した場合に、攪拌タンク1内を溶解液Wで満たし、更に上側に連通接続する筒状管部6内に溶解液Wの液面W1を位置させることができ、溶解液Wの上側にある気体Qと溶解液Wとが接触する液面W1の接触面積を攪拌タンク1の断面積より小さい気液接触面積減少状態とすることができる。従って、攪拌タンク1内は溶解液Wで満たされ、筒状管部6内に溶解液Wの液面W1が位置しているので、溶解液Wと気体Qとの接触面積が非常に小さくなり、攪拌タンク1内で攪拌羽根2が回転して溶解液Wを攪拌しても、当該気体Qが溶解液W中に取り込まれることを防止することができる。特に、筒状管部6内の液面W1が、攪拌タンク1の中心軸Xよりも径方向外方側に形成されるので、中心軸X周りで回転する攪拌羽根2が回転して溶解液Wを攪拌しても、溶解液W中への気体Qの巻き込みをより確実に防止できる。なお、直管部6aの長さは、後述するように、加熱手段4による加熱により攪拌タンク1内の圧力が上昇して溶解液Wの液面W1が上昇した場合、或いは、攪拌羽根2が回転して溶解液Wの液面W1が上昇した場合でも、当該液面W1が、後述する直管部6aの上端部に設けられるリリーフ弁8(弁体及び密閉手段の一例)よりも下方に位置するような長さ(換言すると、液面W1とリリーフ弁8との間に気体Qの層が形成される長さ)に設定され、溶解液Wのオーバーフローが防止されている。
【0047】
また、図2、図5、図6(c)及び(d)に示すように、筒状管部6の上端部には、筒状管部6及び攪拌タンク1の内部空間を密閉し、所定圧力以上になると筒状管部6内の気体Qを外部に放出するリリーフ弁8(弁体及び密閉手段の一例)が取付け及び取外し自在に配設されている。このリリーフ弁8により、加熱手段4による加熱等により攪拌タンク1内が加圧された場合において、攪拌タンク1及び筒状管部6を密閉して加圧状態を維持しながら、攪拌タンク1及び筒状容器6内の圧力が所定圧力以上に上昇することを防止できる。本実施例では、例えば、所定の圧力は、約0.2MPa程度に設定されている。
【0048】
次に、攪拌溶解装置50を用いて、粉体Pと液体Rとを含む溶解液Wを、加熱しながら溶解して溶解混合する運転動作について、図6(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図6(a)は、粉体Pを投入する状態を示す概略概念図、(b)は、液体Rを供給する状態を示す概略概念図、(c)は、溶解液Wを攪拌タンク1内に収容して気液接触面積減少状態とし、攪拌羽根2により攪拌する状態を示す概略概念図、(d)は、攪拌羽根2により攪拌し加熱手段4により加熱した状態で、気液接触面積減少状態となっている状態を示す概略概念図である。
【0049】
まず、図6(a)に示すように、下部基台30に載置された状態の攪拌タンク1内に、攪拌タンク1の上部開口1aを介して粉体P(本実施例では、PVA粉末)を所定量投入する。上部基台31に設けられた移動機構を作動させ、攪拌手段3並びに加熱手段4としての一方側電極4A及び他方側電極4Bが取付け固定された蓋体5を、攪拌タンク1の上部開口1aを閉塞するように載置してクランプ部材(図示せず)により固定する。蓋体5を固定した後、駆動軸10の回転駆動を開始することで、攪拌タンク1の中心軸X周りで回転可能に配設された攪拌羽根2の回転を開始する。具体的には、制御部が駆動モータ11に駆動開始指令を出力して、駆動軸10に設けられた攪拌羽根2を攪拌タンク1の中心軸X周りで一分間当たり60回転の回転数で回転させる。
【0050】
そして、図6(b)に示すように、蓋体5に設けられた筒状管部6を介して液体R(本実施例では、水)を所定量供給しながら、駆動軸10の回転駆動を継続する。
【0051】
図6(c)に示すように、筒状管部6を介して供給される液体Rと粉体Pとの溶解液Wが、攪拌タンク1内を満たし、かつ、筒状管部6の縮径部6b内を満たし、当該溶解液Wの液面W1が直管部6a内に位置する状態(図6(c)の矢印参照)となると、液体Rの供給を停止する。その後、筒状管部6の直管部6aの上端に、上記リリーフ弁8を取付け、攪拌タンク1内及び筒状管部6内を密閉する。また、制御部は、上記電気回路を介して電源Sから電流を通電させ、一方側電極4Aと他方側電極4Bとの間に所定の電圧の印加を開始させる。
【0052】
これにより、図6(c)に示すように、溶解液Wの液面W1と気体Qとの接触面積は、攪拌タンク1の断面積よりも小さな筒状管部6の直管部6aの断面積と同等になり、当該接触面積が非常に小さな気液接触面積減少状態となる。従って、蓋体5の上側に筒状管部6を設けるという非常に簡便な構成でありながら、攪拌タンク1内の気体Qと溶解液Wとの接触面積を小さくすることができ、攪拌タンク1内に収容された溶解液Wを攪拌羽根2により攪拌して溶解混合した場合でも、溶解液Wの液面W1が波立つことで気体Qが溶解液W中に巻き込まれる量をより確実に少なくして、溶解液W中に発生する気泡をより確実に少なくすることができる。なお、本実施例では、攪拌羽根2の攪拌や加熱手段4の加熱に関係なく、溶解液Wを攪拌タンク1内に収容することのみで、気体Qと溶解液Wの液面W1との接触面積が攪拌タンク1の断面積よりも小さい気液接触面減少状態となっている。
【0053】
また、図6(c)に示すように、攪拌羽根2の回転により、攪拌タンク1内の溶解液Wは、中心軸X周りで渦状に流動するとともに、中心軸X近傍では底部に向かい、順次、底部では攪拌タンク1の内周面1d(径方向外方側)に、内周面1dでは上部に、上部では中心軸X側に向かうように循環流動する。この溶解液Wの流動に伴い、当該溶解液Wは、蓋体5の外周部(中心軸Xよりも径方向外方側)に位置する状態で設けられた筒状管部6の縮径部6bの下方近傍に上昇するように溶解液Wを流動させることができる。これにより、例えば、粉体P自体に付着した気体Qが、攪拌タンク1内に収容された溶解液W中において攪拌羽根2により攪拌されて溶解液W中に気泡として析出(放出)された場合や、溶解液Wの加熱に伴う溶解液Wの沸騰等により当該溶解液W中に気泡が発生した場合等であっても、溶解液W中に含まれる気泡を筒状管部6の下方近傍を介して筒状管部6内に案内することができる。特に、筒状管部6の下部は、上方に行くに従って直管部6aの断面積と同等の断面積にまで縮径する縮径部6bで形成されているので、当該縮径部6bの下方近傍に案内された溶解液W中に含まれる気泡を、当該縮径部6bの下面に沿って直管部6a内に導いて、直管部6a内の気相(気体Qの層)に解放することができ、溶解液W中の気泡を、ある程度溶解液W中から取り除くことができる。
【0054】
次に、図6(d)に示すように、攪拌タンク1内の溶解液Wの攪拌及び加熱が進むと、当該加熱により溶解液Wの温度が上昇するとともに、攪拌タンク1内及び筒状管部6内の圧力が上昇するため、筒状管部6の直管部6a内の液面W1が上昇する(図6(d)の矢印参照)。この液面W1の上昇に伴って、筒状管部6内の気体Qの圧力も上昇するが、当該圧力が所定圧力以上となった場合には、気体Qはリリーフ弁8を介して外部に放出される。従って、上述した筒状管部6内に案内された気泡を、気体Qとともに外部に放出することができる。なお、溶解液Wの液面W1が上昇しても、当該溶解液Wが直管部6aからオーバーフローすることはない。また、攪拌タンク1内が加圧状態に維持されているので、攪拌タンク1や筒状管部6の溶解液W中において気泡の発生を防止することができる。すなわち、粉体P自体に付着した気体が攪拌により気泡として析出(放出)することを防止できるとともに、沸騰による気泡の発生も抑制することができる。
【0055】
そして、溶解液Wの攪拌及び加熱を継続し、温度センサ7から制御部に入力された検出温度が、溶解液Wの溶解混合が終了したと判断できる所定温度(例えば、90℃)となった場合には、当該所定温度を所定時間(例えば、5分)維持した後、制御部は、各電極対への電力の供給を停止する。そして、制御部は、開閉弁1cを開いて、溶解混合が完了した溶解液Wを外部に排出する。
【0056】
よって、本実施形態に係る攪拌溶解装置50では、攪拌手段3による溶解液Wの攪拌により攪拌タンク1内や筒状管部6内に存在する気体Qを当該溶解液W中に取り込んでしまい、気泡が発生してしまうことを良好に防止することができる。また、仮に、何らかの原因で攪拌タンク1内において気泡が発生したとしても、筒状管部6内に良好に案内して当該筒状管部6に配設されたリリーフ弁8を介して外部に放出することができる。さらに、攪拌タンク1内は密閉されているので加熱により加圧状態となり、溶解液Wの溶解混合が促進されるとともに、粉体P自体に付着した気体が攪拌により気泡として析出(放出)することを防止でき、沸騰等による気泡の発生も抑制することができる。
【0057】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、加熱手段4として対を成す一方側電極4A及び他方側電極4Bを攪拌タンク1内に設け、攪拌タンク1内の溶解液Wを直接に通電加熱する構成としたが、溶解液Wを確実に加熱することができる構成であれば、その他の構成の加熱手段4を採用することができる。例えば、図7に示すように、攪拌タンク1の外周面1eの全周に亘って温水ジャケット4Dを配設し、攪拌タンク1内の溶解液Wを、温水ジャケット4D内を通流する温水により間接的に加熱する構成とすることもできる。
【0058】
(2)上記実施形態では、筒状管部6の上部を直管部6aとし、下部を縮径部6bとしたが、溶解液Wの上側にある気体Qと溶解液Wとが接触する液面W1の接触面積が攪拌タンク1の断面積より小さい気液接触面積減少状態で、溶解液Wを攪拌タンク1内に収容可能な構成、或いは、攪拌手段3及び加熱手段4の何れか一方又は両方が運転された運転状態で、気液接触面積減少状態が形成される構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、筒状管部6を断面積が同一の直管部6aのみで構成することもできる。また、筒状管部6を断面積が上方に行くに従って断面積が小さくなる縮径部6bのみで構成することもできる。さらに、筒状管部6の配設位置も、蓋体5の上側の外周部に限定されるものではなく、蓋体5の上側に配設した状態で、攪拌タンク1の内部空間と連通する箇所であれば、配設箇所を適宜変更することもできる。
【0059】
(3)上記実施形態では、図6(c)に示すように、溶解液Wを攪拌タンク1内に収容するのみで、溶解液Wの液面W1を筒状管部6の直管部6a内に位置させ気液接触面減少状態としたが、少なくとも攪拌手段3及び加熱手段4の何れか一方又は両方が運転された運転状態で、気液接触面積減少状態が形成される構成であれば、その他の構成を採用することもできる。
例えば、溶解液Wを攪拌タンク1内に収容するのみで、溶解液Wの液面W1を筒状管部6の縮径部6b内に位置する状態とし、溶解液Wの液面W1と気体Qとの接触面積を、攪拌タンク1の断面積よりも小さくする気液接触面積減少状態としてもよい。この場合、少なくとも攪拌手段3及び加熱手段4の何れか一方又は両方が運転された運転状態となる前から、気液接触面積減少状態が形成されているので、当該運転状態でも気液接触面積減少状態となっている。
また、例えば、溶解液Wを攪拌タンク1内に収容するのみでは、溶解液Wの液面W1を攪拌タンク1内に位置させる状態であるが(未だ気液接触面積減少状態ではない)、攪拌手段3及び加熱手段4の何れか一方又は両方を運転状態とすることで、溶解液Wの液面W1の波立ちや液面W1の上昇により、当該液面W1の一部が蓋体5の下面に接触したり、当該液面W1が筒状管部6内に位置して、当該液面W1と気体Qとの接触面積を攪拌タンク1の断面積よりも小さくする気液接触面積減少状態としてもよい。
【0060】
(4)上記実施形態では、蓋体5を攪拌タンク1の上部に載置してクランプ部材により固定した状態で、攪拌タンク1内に収容された溶解液Wを気液接触面積減少状態とするように構成したが、当該気液接触面積減少状態を形成可能な構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。
例えば、蓋体5を攪拌タンク1の内径よりも若干小さな外形を有する円板状に形成し、当該蓋体5を攪拌タンク1の上部開口1aを介して攪拌タンク1内に設置する構成を採用することもできる。この場合、攪拌タンク1内に溶解液Wを収容した状態(液面の断面積は攪拌タンク1の断面積と同等の状態)で、移動機構により蓋体5を攪拌タンク1内の溶解液Wの液面に接触するまで移動させ、さらに、蓋体5を下方向に移動させて溶解液Wの液面を筒状管部6内に形成することにより、溶解液Wの液面と気体Qとの接触面積を、攪拌タンク1の断面積よりも小さくする気液接触面積減少状態を形成することができる。
【0061】
(5)また、気液接触面積減少状態を形成する際には、攪拌タンク1内に溶解液Wを収容した状態(液面の断面積は攪拌タンク1の断面積と同等の状態)で、攪拌タンク1の液面に板状、網状、球状等の浮き部材を浮遊させることにより、当該液面の上部には気体Qが存在するものの、液面と気体Qとの接触面積は、攪拌タンク1の断面積よりも小さな断面積となり、気液接触面積減少状態を形成する構成とすることもできる。同様に、蓋体5の下部に下方側へ突出する棒状部材を設け、蓋体5を攪拌タンク1に固定した状態で、棒状部材の先端部が攪拌タンク1内の溶解液Wの液面よりも下方に位置する構成とすることにより、液面と気体Qとの接触面積は、攪拌タンク1の断面積よりも小さな断面積となり、気液接触面積減少状態を形成する構成とすることもできる。なお、この場合、棒状部材の先端部は、攪拌羽根2の回転を阻害しないように、当該攪拌羽根2の上部に配設される。
【0062】
(6)上記実施形態では、各一方側電極4A及び各他方側電極4Bを、柱形状の一例として円柱状の長手部材で構成したが、特にこの構成に限定されるものではなく、例えば、多角柱状の長手部材で構成することができ、より具体的には、四角柱状の長手部材で構成することもできる。
また、上記実施形態では、4つの各一方側電極4Aを一方側電極4Aとし、4つの各他方側電極4Bを他方側電極4Bとした例を説明したが、複数の電極を一方側電極4Aとし、当該一方側電極4Bに対応する複数の電極を他方側電極4Bとする構成であれば、それら電極数の多少については特に制限されず、採用することができる。
【0063】
(7)上記実施形態では、各一方側電極4A及び各他方側電極4Bを、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対して両側に、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする同一円周上に湾曲配置したが、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、各一方側電極4A及び各他方側電極4Bが、攪拌タンク1の中心軸Xを含む平面Zに対して対称となるように、当該平面Zに対して平行な直線上に配置してもよい。
また、各一方側電極4Aや各他方側電極4Bを円周上に湾曲配置する際には、例えば、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とする円周上ではなく、別の箇所を中心とする円の円周上にそれぞれ湾曲配置してもよく、また、例えば、攪拌タンク1の中心軸Xを中心とするが、当該中心軸Xからの距離が互いに異なる(異なる半径)円周上にそれぞれ湾曲配設してもよい。
【0064】
(8)上記実施形態では、電源Sとして三相交流電源を用いたが、直流電源を採用してもよい。直流電源を用いた場合には、電圧の印加方向を所定時間毎に変更するように構成してもよい。
【0065】
(9)上記実施形態では、攪拌手段3の攪拌部材として攪拌口2b等を備えた平板状の攪拌羽根2を採用したが、特にこの構成に限定されるものではなく、攪拌タンク1内の溶解液Wを十分に攪拌できる構成であれば、その他の構成の攪拌羽根や攪拌部材を採用することができる。また、攪拌タンク1の底部付近でのみ回転する攪拌羽根を採用してもよい。
【0066】
(10)上記実施形態では、溶解液Wの排出口を、攪拌タンク1の底部に設けたが、特にこの構成に制限されるものではなく、例えば、蓋体5に導管を挿管して、当該導管を介して攪拌タンク1の上部から排出する構成としてもよい。また、上記実施形態では、図示しない移動機構により蓋体5を攪拌タンク1に対して上下方向に相対移動させたが、蓋体5に対して攪拌タンク1を上下方向に相対移動させる構成としてもよい。
【0067】
(11)上記実施形態では、加熱手段4による加熱により攪拌タンク1内を加圧する構成について説明したが、積極的に攪拌タンク1内を加圧する加圧手段を設け、当該加圧手段により攪拌タンク1内を加圧して溶解液Wの攪拌混合を促進する構成としてもよい。これにより、攪拌タンク1内をより確実に加圧状態に維持することができるので、攪拌タンク1や筒状管部6の溶解液W中において気泡の発生を防止することができる。すなわち、粉体P自体に付着した気体が攪拌により気泡として析出(放出)することを、より確実に防止できるとともに、沸騰等による気泡の発生もより確実に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、容器内の溶解液を攪拌しながら加熱して溶解混合する際に、溶解液中における気泡の発生を良好に防止して、溶解混合に必要な時間を短縮するとともに、溶解液の品質を向上できる攪拌溶解装置として良好に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 攪拌タンク(容器)
1a 上部開口
2 攪拌羽根(攪拌部材)
3 攪拌手段
4 加熱手段
4A 一方側電極(対を成す電極)
4B 他方側電極(対を成す電極)
5 蓋体
6 筒状管部
6a 直管部(筒状管部)
6b 縮径部(筒状管部)
7 温度センサ
8 リリーフ弁(弁体、密閉手段)
50 攪拌溶解装置
X 攪拌タンクの中心軸(容器の軸芯)
Z 攪拌タンクの中心軸を含む平面
W 溶解液
P 粉体
R 液体
Q 気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の容器と、前記容器内に収容された粉体と液体とを含む溶解液を、前記容器の軸芯周りで回転する攪拌部材により攪拌して溶解混合する攪拌手段と、前記容器内の溶解液を加熱する加熱手段とを備えた攪拌溶解装置であって、
前記容器の上部開口を開放及び閉鎖自在な蓋体を備え、
前記溶解液の上側にある気体と前記溶解液とが接触する液面の接触面積が前記容器の断面積より小さい気液接触面積減少状態で、前記溶解液を前記容器内に収容可能に構成されるとともに、
前記攪拌手段及び前記加熱手段の何れか一方又は両方が運転された運転状態で、前記気液接触面積減少状態が形成される攪拌溶解装置。
【請求項2】
前記容器の断面積より小さい断面積の筒状管部を、前記蓋体の上側に前記容器の内部空間と連通接続して備え、前記溶解液の液面を前記筒状管部内に位置させて前記気液接触面積減少状態とする請求項1に記載の攪拌溶解装置。
【請求項3】
前記容器及び前記筒状管部を密閉する密閉手段を備え、前記密閉手段は、前記筒状管部内が所定圧力以上になると、前記筒状管部内の気体を外部に放出する弁体で構成されている請求項2に記載の攪拌溶解装置。
【請求項4】
前記筒状管部の下部が、前記容器の上方開口から上方に行くに従って断面積が小さくなる縮径部として形成されている請求項2又は3に記載の攪拌溶解装置。
【請求項5】
前記筒状管部が、前記蓋体の軸芯側よりも径方向外方側に位置する状態で、前記蓋体の上側に配設されている請求項2〜4の何れか一項に記載の攪拌溶解装置。
【請求項6】
前記加熱手段が、前記容器内に配設された対を成す電極を備え、当該対を成す電極間に電圧を印加して前記容器内の溶解液を通電加熱する構成である請求項1〜5の何れか一項に記載の攪拌溶解装置。
【請求項7】
前記溶解液は、前記液体としての水と、前記粉体としての水溶性ポリマーとの混合溶液である請求項1〜6の何れか一項に記載の攪拌溶解装置。
【請求項8】
有底筒状の容器と、前記容器内に収容された粉体と液体とを含む溶解液を、前記容器の軸芯周りで回転する攪拌部材により攪拌して溶解混合する攪拌手段と、前記容器内の溶解液を加熱する加熱手段と、前記容器の上部開口を開放及び閉鎖自在な蓋体とを備えた攪拌溶解装置の使用方法であって、
前記攪拌手段及び前記加熱手段の何れか一方又は両方を運転して攪拌又は溶解を行うに、前記溶解液の上側にある気体と前記溶解液とが接触する液面の接触面積が前記容器の断面積より小さい気液接触面積減少状態で、攪拌又は溶解を行う攪拌溶解装置の使用方法。
【請求項9】
前記攪拌溶解装置が、前記容器の断面積より小さい断面積の筒状管部を、前記蓋体の上側に前記容器の内部空間と連通接続して備え、
前記溶解液の液面を前記筒状管部内に位置させるように前記溶解液を前記容器内に収容して、前記気液接触面積減少状態とする請求項8に記載の攪拌溶解装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81397(P2012−81397A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228885(P2010−228885)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【Fターム(参考)】