説明

攪拌脱泡方法およびその攪拌脱泡装置

【課題】容器に被混練物を投入する作業中であっても、容器から混練物を取り出す作業中であっても駆動モータをその都度止める必要がなく、連続的に被混練物を投入することができ、混練物を連続的に取り出すことができる攪拌脱泡方法を提供する。
【解決手段】被混練物kが連続的に供給された攪拌脱泡室2を公転軸3のまわりに公転させながら自転軸2aのまわりに自転させることで、被混練物kの攪拌および脱泡を行う攪拌脱泡方法であって、公転軸3から自転軸2aを介して攪拌脱泡室2まで連通する内部通路a,b,cに被混練物kを連続的に供給しながら、攪拌脱泡室2を公転および自転させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半田ペースト、歯科用印象材料、油脂、樹脂、染料、顔料、各種粉体等のような流動性を有する材料(以下「被混練物k、混練物K」という)を収容した容器を公転させながら自転させることにより、被混練物kの攪拌および脱泡を行う攪拌脱泡装置に関し、特に被混練物kの連続供給、混練物Kの連続回収が可能な攪拌脱泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被混練物kを収容した容器を容器ホルダに保持して公転させながらその公転軌道上で自転させるように構成した攪拌脱泡装置が知られている(特許文献1参照)。
図6は、従来の攪拌脱泡装置の縦断面図である。図6に示すように、たとえば、この攪拌脱泡装置100は、支持体103に支持される公転駆動モータ105により公転駆動される公転軸106に回転体107が一体に形成され、回転体107の遠心側に、容器108を支持する容器ホルダ109を公転軸106に対し45度傾斜した軸線の周りに自転可能に取り付けた混練装置である。この容器ホルダ109の下方にはギヤG4を下端部に配置した自転軸123が設けられ、中空の公転軸106の間には前記ギヤG4と噛み合うアイドルギヤG3が設けられ、もう一方の上端部にはアイドルベベルギヤG2が配置されたアイドル軸122を設け、中空の公転軸106の中には回転力伝達軸121が設けられ、回転力伝達軸121の上端部には、前記アイドルベベルギヤG2と噛み合うベベルギヤG1が配置され、下端部にはプーリP6が配置されている。
【0003】
ここで、容器108を収容した容器ホルダ109の公転運動および自転運動について説明する。モータ105の回転力は、モータ軸105aに固定されたプーリP1からベルトV1を介して公転軸106と一体に形成されたプーリP2に伝達され、回転体107を回転させる。これにより、容器108を収容した容器ホルダ109は、A1軸を中心に公転運動を行う。
また、モータ105の回転力は、モータ軸105aに固定されたプーリP7からベルトを介して回転力伝達軸121の一端側に固定されたプーリP2に伝達される。また、その回転力は、回転力伝達軸121の他端側に固定されたベベルギヤG1からアイドルベベルギヤG2に伝達され、アイドルギヤG3からギヤG4に伝達されて自転軸123を回転させる。これにより、自転軸123に一体の容器ホルダ109に収容された容器108は、A2軸を中心に自転運動を行う。
【特許文献1】特開2004−243158号公報([0020]〜[0029]、図1、図6参照)
【0004】
このように、従来の攪拌脱泡装置100は、一つのモータ105の駆動によって公転軸106に回転を付与できるとともに、公転軸106の回転と異なる最適な自転運動を容器ホルダ109に伝達して自転させることができる。また、このとき、無断変速機130によって無段に切り替えることができるため、被混練物Kの攪拌脱泡に都合の良い自転速度を選定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の攪拌脱泡装置100では、容器108自体が公転するために、装置の稼動中は、公転する容器108に対して被混練物kを連続的に供給することは困難であった。そのため、容器108に被混練物kを投入する場合、一旦モータ105を停止せざるを得ず、稼動率と生産性が上がらないという問題があった。また、同様に、従来の攪拌脱泡装置100では、容器108から混練物K(以下、完成品を「混練物K」という)を取り出す作業中はモータ105の駆動ができないため、稼動率と生産性が上がらないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、第一に、駆動モータを止めることなく、連続的に被混練物を投入することができ、稼動率と生産性の向上を図ることができる攪拌脱泡方法およびその攪拌脱泡装置を提供することを課題とする。また、第二に、連続的に被混練物を取り出すことができる攪拌脱泡装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、被混練物(k)が連続的に供給された攪拌脱泡室(2)を公転軸(3)のまわりに公転させながら自転軸(2a)のまわりに自転させることで、前記被混練物(k)の攪拌および脱泡を行う攪拌脱泡方法であって、前記公転軸(3)から前記自転軸(2a)を介して前記攪拌脱泡室(2)まで連通する内部通路(a,b,c)に前記被混練物(k)を連続的に供給しながら、前記攪拌脱泡室(2)を公転および自転させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、被混練物(k)を連続的に供給された攪拌脱泡室(2)を公転させながら自転させることで、前記被混練物(k)が攪拌および脱泡を行う攪拌脱泡装置(10)であって、本体容器(1)と、前記本体容器(1)に回転自在に支持された公転軸(3)と、前記公転軸(3)に一体に構成された公転部材(4)と、前記公転部材(4)に回転自在に軸支された自転軸(5)と、前記自転軸(5)に一体に形成され、前記自転軸(5)の少なくとも一部が内部に臨む攪拌脱泡室(2)と、を備え、前記公転軸(3)と前記自転軸(2a)には、前記攪拌脱泡室(2)まで連通する内部通路(a,b,c)が形成され、前記公転軸(3)の一端側から前記攪拌脱泡室(2)まで前記内部通路を介して被混練物(k)を連続的に供給することができるように構成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の攪拌脱泡装置(10)であって、前記攪拌脱泡室(2)は、有底筒状のケース(2b)と、前記有底筒状のケース(2b)内に上下方向に複数形成され、材料移送口が設けられた材料隔壁(2g)と、前記材料隔壁(2g)により上下方向に複数の部屋に区分された隔室(2c)と、を備え、前記自転軸(2a)は、前記攪拌脱泡室(2)の内部上方に臨む部分に材料流入口(2e)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の攪拌脱泡装置(10)であって、前記材料隔壁(2g)は、空洞部を有する複数底で形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項2に記載の攪拌脱泡装置(10′)であって、前記攪拌脱泡室(2′)は、有底筒状のケース(2b′)と、前記有底筒状のケース(2b′)内に上下方向に複数形成され、前記ケース(2b′)の内周面との間に隙間(2t,2t…)が設けられた材料隔壁(2g′)と、前記材料隔壁(2g′)により上下方向に複数の部屋に区分された隔室(2c)と、を備え、前記自転軸(2a)は、前記攪拌脱泡室(2)の内部上方に臨む部分に材料流入口(2e)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の攪拌脱泡装置(10,10′)であって、前記ケース(2b,2b′)の下部側には、材料噴出口(2f)が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、公転軸から自転軸を介して攪拌脱泡室まで連通する内部通路に前記被混練物を連続的に供給しながら、攪拌脱泡室を公転および自転させる。つまり、その位置が変動しない公転軸の内部通路に材料を供給することにより、駆動モータをその都度止めることなく、連続的に被混練物を投入することができる。また、これにより、稼動率と生産性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、被混練物が連続的に供給された攪拌脱泡室を公転させながら自転させることで、被混練物の攪拌および脱泡を行う攪拌脱泡装置であって、本体容器と、本体容器に回転自在に支持された公転軸と、公転軸に一体に構成された公転部材と、公転部材に回転自在に軸支された自転軸と、自転軸に一体に形成され、自転軸の少なくとも一部が内部に臨む攪拌脱泡室と、を備え、公転軸と自転軸には、攪拌脱泡室まで連通する内部通路が形成され、公転軸の一端側から攪拌脱泡室まで内部通路を介して被混練物(k)を連続的に供給することができるように構成されたことにより、その位置が変動しない公転軸に、攪拌脱泡室に連通する内部通路が形成されているため、駆動モータをその都度止めることなく、連続的に被混練物を投入することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、攪拌脱泡室は、有底筒状のケースと、有底筒状のケース内に上下方向に複数形成され、材料移送口が設けられた材料隔壁と、材料隔壁により上下方向に複数の部屋に区分された隔室と、を備え、自転軸は、前記攪拌脱泡室の内部上方に臨む部分に材料流入口が設けられている。これにより、材料流入口から攪拌脱泡室に投入される被混練物は、上側の隔室側から各材料隔壁の材料移送口を介して下側の隔室に順々に送り込まれる。このように送り込まれることで、被混練物が攪拌脱泡室内に留まる時間を稼ぐことができるため、攪拌および脱泡の精度を向上させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、材料隔壁は、空洞部を有する複数底で形成されたことにより、もう一つの隔室(隔壁室)を設けることができるため、より充分な攪拌作業と、より充分な脱泡作業を行うことができることから、品質のよい材料を作ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、攪拌脱泡室は、有底筒状のケースと、有底筒状のケース内に上下方向に複数形成され、ケースの内周面との間に隙間が設けられた材料隔壁と、材料隔壁により上下方向に複数の部屋に区分された隔室と、を備え、自転軸は、攪拌脱泡室の内部上方に臨む部分に材料流入口が設けられている。これにより、材料流入口から攪拌脱泡室に投入される被混練物は、上側の隔室側から、ケースの内周面と各材料隔壁との間の隙間を介して下側の隔室に順々に送り込まれる。このように送り込まれることで、被混練物が攪拌脱泡室内に留まる時間を稼ぐことができるため、攪拌および脱泡の精度を向上させることができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、ケースの下部側には、材料噴出口が形成されている。これにより、ケースの下部まで送り込まれた被混練物(混練物)は、材料噴出口を介して攪拌脱泡室外、つまり、本体容器内に吐出されるため、この本体容器から混練物を連続的に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1実施の形態>
以下、本発明の第1実施の形態から、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施の形態を示し、攪拌脱泡装置の構成を示す断面図、図2は公転伝達手段の構成を示し、図1に示すA−A線の断面図、図3は図1に示す攪拌脱泡室の構成を示す拡大断面図である。
図1に示すように、攪拌脱泡装置10は、本体容器1と、本体容器1に収容された攪拌脱泡室2と、本体容器1に回転自在に支持された公転軸3と、公転軸3に一体に構成された公転部材4と、攪拌脱泡室2の中心軸となる自転軸2a(図3参照)と、公転軸3の中に配置され、自転軸2aを自転駆動する自転駆動回転軸5と、攪拌脱泡室2に公転力と自転力を付与するモータ6と、このモータ6から攪拌脱泡室2を公転させるための公転伝達手段Sと、同じく攪拌脱泡室2を自転させるための自転伝達手段Uと、混練物Kが回収されるタンク16とにより、構成されている。
【0020】
図1に示すように、本体容器1は、円筒状に形成されて直立して設置されている。本体容器1の上部は、トップカバー8で閉鎖されており、トップカバー8の外周を覆うリング状のクランパ11によって固定されている。このトップカバー8の上には、モータ6と変速機7と、モータ6から回転力を伝達する公転伝達手段Sと自転伝達手段Uの伝達機構が格納されている。本体容器1は、別名、チャンバーとも呼ばれる。
この本体容器1の下方には漏斗(ろうと)部が形成されている。この漏斗部は、円錐形状から絞られて細いパイプ1aに形成され、先端にはフランジ部1bが形成されており、タンク16から延びたパイプ16aのフランジ部と接続されている。また、漏斗部の円錐形状部にはヒーター19が配置されている。ヒーター19は、漏斗部を暖めることによって、本体容器1全体を暖め、適度の温度を保つとともに、材料である被混練物kが攪拌、脱泡されて混練物Kとなり、漏斗部を流れ落ちる際、混練物Kの流動性をよくするようにしている。また、本体容器1には攪拌脱泡室2が収容されている。
攪拌脱泡室2は、ここでは2個収容されている。攪拌脱泡室2は、1個よりも2個の方が左右のバランスがとれるため、高速回転には都合がよい。この2個に限らず、3個、4個であってもよく、バランス上は問題ないので、2個以上の構成も可能となっている。
【0021】
公転軸3は、中空材で形成されており、上端部のトップカバー8との間に上ベアリングB1と下ベアリングB2が設けられ、本体容器1に回転自在に支持されている。
公転部材4は、上公転部材4aと下公転部材4bから構成されている。上公転部材4aは、公転軸3の上方に固定されており、攪拌脱泡室2の上ベアリングB5,B5を保持するとともに、下公転部材4bは、公転軸3の下方に固定され、攪拌脱泡室2の下ベアリングB6,B6を保持している。これらの公転部材4は、公転軸3と一体になって公転する。
【0022】
自転駆動回転軸5は、前記した中空材の公転軸3の中に挿通されている。自転駆動回転軸5は、中空材で形成されている。また、上端部には上ベアリングB3が設けられ、本体容器1に回転自在に支持されている。下端部には下ベアリングB4が設けられ、前記下公転部材4bに回転自在に支持されている。また、自転駆動回転軸5の中は、内部通路aとなっている。
このように、従来技術の攪拌脱泡装置100(図7参照)では、容器108に被混練物kを投入せざるを得なかったが、本発明では公転軸3の中に自転駆動回転軸5を配置し、
中空の自転駆動回転軸5から被混練物kを投入できるようにしたため、攪拌脱泡室2の動きに拘わらず、被混練物kを連続的に供給することができる。そのため、その都度、モータ6を停止することは不要となる。
【0023】
図1に示す公転伝達手段Sとは、モータ6の回転が1本のベルトV1によって、モータ6のプーリP1から、公転軸3のプーリP2へ伝達する構成をいう。図2に示すように、公転伝達手段Sは、モータ6のプーリP1と、公転軸3のプーリP2と、変速機軸7aのプーリP3にベルトV1が掛け回されており、モータ軸6aと公転軸3との間にはアイドラーP6,P6が配置され、支障なくモータ6の回転が伝達されるようになっている。
【0024】
自転伝達手段Uとは、図1に示すように、モータ6の回転がベルトV1によって変速機軸7aのプーリP3へ伝達され、変速機7を介して変速された回転が、ベルトV2によって、プーリP4から自転駆動回転軸5のプーリP5に伝達され、自転駆動回転軸5の下方に設けられたギヤG1から、ギヤG2とギヤG3とへ伝達されて、それぞれの攪拌脱泡室2の中心軸として構成された自転軸2a,2aを回転させる構成をいう。したがって、モータ6は、公転軸3と自転軸2aを同時に回転させることができる。
【0025】
攪拌脱泡室2は、この本体容器1内に、2個、または、3個、4個が組み込まれる。図3に拡大して示すように、攪拌脱泡室2は、有底筒状のケース2bと、材料移送口2hが設けられた材料隔壁2gと、材料隔壁2gにより上下方向に複数の部屋に区分された隔室2cとを備えている。
自転軸2aは、攪拌脱泡室2の中心を貫く中心軸となっており、中空状の回転軸である。自転軸2aの一方の上端部は上ベアリングB5が設けられ、上公転部材4aに回転自在に支持されている。他方の下端部は下ベアリングB6が設けられ、下公転部材4bに回転自在に支持されている。さらに、自転軸2aは、攪拌脱泡室2の内部上方に臨む部分に材料流入口2eが設けられている。
攪拌脱泡室2の下部には、材料噴出口2fが設けられており、攪拌脱泡室2で攪拌、脱泡された混練物Kは、攪拌脱泡室2の公転運動と自転運動によって、勢い良く本体容器1の内壁に噴出する。
【0026】
材料隔壁2gは、攪拌脱泡室2を複数の隔室2cに仕切っており、図3では6個の材料隔壁2gが配置されている。ここでは、説明の便宜上、図3に示すように、材料隔壁2gで仕切られた隔室2cを隔室2cとし、材料隔壁2gで仕切られた隔室2cを隔室2cとし、材料隔壁2gで仕切られた隔室2cを隔室2cとしている。
材料隔壁2gの形状は中心に穴を有する円盤状であるが、その盤は二重構造となっており、天板と底板との間には空洞部を有している。つまり、複数底で形成されている。
また、材料隔壁2gの貫通した中心の穴は、自転軸2aに対して閉鎖された空洞部を形成している。この閉鎖によって、隔室2cと隔室2cとの間に、もう一つの隔壁室というべき隔室(空洞部)を設けることができるので、より充分な攪拌作業と、より充分な脱泡作業を行うことができる。
【0027】
図1に示すように、タンク16は、本体容器2の下方に設置されている。このタンク16は、攪拌脱泡装置10の攪拌脱泡室2によって攪拌・脱泡された被混練物kが、攪拌脱泡室2の下部から噴出し、この混練物Kを回収するための貯蔵室となっている。このタンク16からパイプ16aが突出し、パイプ16aの上端にはフランジ部が形成され、攪拌脱泡室2の下部のフランジ部1bと接続されている。また、このパイプ16aはタンク16の底の近傍まで延長されている。さらに、この隣接部には負圧を供給するための真空配管用のパイプ18が設けており、その先端部にもポンプ(図示せず)からのパイプと接続するためのフランジ部18aが形成されている。
これにより、混練物Kを連続的に取り出すことができる。
【0028】
つぎに、攪拌脱泡装置の動作を説明する。
図1に示すように、本体容器1の上部には、被混練物kを連続的に投入するためのホース17が、スイベルジョイント9を介して自転駆動回転軸5に接続されている。
起動釦が押されると、モータ6が起動し、回転を始める。その回転は公転伝達手段Sにより公転軸3に伝達され、公転軸3を回転(公転)させる。また、自転伝達手段Uにより、変速機7により変速された回転は自転駆動回転軸5に伝達されて、自転駆動回転軸5を回転させる。この自転駆動回転軸5の回転は、下部に配置されたギヤG1からギヤG2、G3に伝達されて、それぞれの自転軸2aを回転させ、それぞれの攪拌脱泡室2を自転させる。
【0029】
連続的に被混練物kが投入される流通経路を説明する。
この流通経路は、内部通路aと、内部通路bと、内部通路cとから構成されている。
機外のコンプレッサー等により加圧された被混練物kである材料は、自転駆動回転軸5に形成された内部通路aを通り、スイベルジョイント9aを通り、一方は、スイベルジョイント9bとをつなぐパイプ9dの内部通路bを通り、さらに、スイベルジョイント9bを経て、攪拌脱泡室2の中心軸である自転軸2aに形成された内部通路cを通り、図3に示すように、攪拌脱泡室2の内部上方に臨む部分に設けられた材料流入口2eまで流通する。さらに、この被混練物kは、材料流入口2eから材料隔壁2gによって仕切られた隔室2cへ流入する。
【0030】
流入した被混練物kは、攪拌脱泡室2の自転運動により攪拌が行われ、公転運動による遠心力により脱泡が行われる。そして、材料隔壁2gに設けられた材料移送口2hから出て、隔壁内の空洞部である隔壁室2jに入り、その隔壁室2jの中でも同じように、自転運動と公転運動により攪拌と脱泡は行われる。そして、材料隔壁2gに設けられたもう一つの材料移送口2hからつぎの隔室2cに流入する。これをここでは、例えば、6回繰り返すことにより、充分に脱泡され、充分に攪拌された混練物Kが漏斗部を流れ落ち、タンク16内に回収される。
【0031】
つぎに、本発明の攪拌脱泡方法について、説明する。図1に示すように、
・ 被混練物kを、公転軸3の中にある自転駆動回転軸5から自転軸2aを介して攪拌脱泡室2まで連通する内部通路a,b,cに連続的に供給する。
・ この攪拌脱泡室2を公転と自転させる。
このように、従来技術ではできなかった本発明の攪拌脱泡方法によって、装置を停止した状態で、容器に被混練物を投入する作業は不要となり、容器から混練物を取り出す作業も不要になったことから、駆動モータをその都度止める必要がなく、連続的に被混練物を投入ができ、混練物を連続的に取り出すことができる。また、稼動率と生産性の向上を図ることができる。
【0032】
<第2実施の形態>
以下、本発明の第2実施の形態を、図面を参照しながら攪拌脱泡装置を説明する。なお、すでに図1、図2、図3において説明した構成と同じ構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。図4は第2実施の形態の攪拌脱泡装置の構成を示す断面図である。
図5は図4に示す攪拌脱泡室の構成を示す拡大断面図である。
図1と図4との相違点は、攪拌脱泡室2と攪拌脱泡室2′の構成である。
【0033】
図5に示すように、攪拌脱泡室2′のケース2b′は、約3度の傾斜に相当するテ―パ(1/10)の形状になっており、上端部の直径より下端部の直径の方が10%ほど大きくなっている。攪拌脱泡室2′の材料隔壁2g′は、前記した攪拌脱泡室2の材料隔壁2gとは大きく異なり、材料隔壁2g′には空洞部は無く、一枚板から構成されている。
材料隔壁2g′は、自転軸2aから下方へ約3度の傾斜(テ―パ形状)を有しており、傘状に形成されている。また、下方に移るにしたがい、ケース2b′のテーパ形状に合わせて、しだいに直径が大きくなっており、ケース2b′の内周面との間に所定の隙間2tが確保されている。
なお、この材料隔壁2g′に3度の傾斜を設けることにより、例えば、材料成分の違いによる流動性の悪い被混練物kには、流動性を高める効果を奏する。
【0034】
その結果、図5に示すように、被混練物kは、攪拌脱泡室2′の内部上方に臨む部分に設けられた材料流入口2eから材料隔壁2gで仕切られた隔室2cに流入すると、
隔室2cに流入した被混練物kは、自転運動と公転運動により攪拌と脱泡が行われ、材料隔壁2gとケース2b′の内周面との間の隙間2tから出る。
同様に、隔室2cに流入した被混練物kは、自転運動と公転運動による攪拌と脱泡が行われ、材料隔壁2gとケース2b′の内周面との間の隙間2tから出る。
そして、隔室2cに流入した被混練物kは、自転運動と公転運動による攪拌と脱泡が行われ、材料隔壁2gとケース2b′の内周面との隙間2tから出る。
このように繰り返し、最後の隔室2cn+1の材料噴射口2fから、充分に脱泡され、充分に攪拌された混練物Kが漏斗部を流れ落ち、タンク16内に回収される。
なお、ここでは材料隔壁2gは4枚配置し、5回、繰り返すようにしたが、材料隔壁2gの枚数をもっと増やしてもよいし、減らしてもよい。
【0035】
以上、各実施の形態について説明したが、本発明は、前記した各実施の形態に限定されることなく、適宜変更して実施することができる。例えば、
1.図1に示す攪拌脱泡室2の形状を円筒状にしたが、テーパ形状にしてもよいし、逆テーパ形状にしてもよい。
2.図4、図5に示す攪拌脱泡室2′の形状をテーパ形状にしたが、逆テーパ形状にしてもよいし、円筒状にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施の形態を示し、攪拌脱泡装置の構成を示す断面図である。
【図2】公転伝達手段の構成を示し、図1に示すA−A線の断面図である。
【図3】図1に示す攪拌脱泡室の構成を示す拡大断面図である。
【図4】第2実施の形態の攪拌脱泡装置の構成を示す断面図である。
【図5】図4に示す攪拌脱泡室の構成を示す拡大断面図である。
【図6】従来の攪拌脱泡装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 本体容器(チャンバー)
1a パイプ
1b フランジ部
2,2′ 攪拌脱泡室
2a 自転軸
2b ケース
2c 隔室
2d 栓
2e 材料流入口
2f 材料噴出口
2g 材料隔壁
2h 材料移送口
2j 隔壁室
2t 隙間
3 公転軸
4 公転部材
4a 上公転部材
4b 下公転部材
5 自転駆動回転軸
6 モータ
6a モータ軸
7 変速機
7a 変速機軸
8 トップカバー
9,9a,9b,9c スイベルジョイント
10,10′ 攪拌脱泡装置
11 クランパ
16 タンク
16a パイプ
17 ホース
18 パイプ
18a フランジ部
19 ヒーター
a,b,c 内部通路
k 被混練物
B1,B3,B5 上ベアリング
B2,B4,B6 下ベアリング
G1,G2,G3 ギヤ
K 混練物
P1,P2,P3,P4,P5 プーリ
P6 アイドラー
S 公転伝達手段
U 自転伝達手段、
V1,V2 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被混練物が連続的に供給された攪拌脱泡室を公転軸のまわりに公転させながら自転軸のまわりに自転させることで、前記被混練物の攪拌および脱泡を行う攪拌脱泡方法であって、
前記公転軸から前記自転軸を介して前記攪拌脱泡室まで連通する内部通路に前記被混練物を連続的に供給しながら、前記攪拌脱泡室を公転および自転させることを特徴とする攪拌脱泡方法。
【請求項2】
被混練物が連続的に供給された攪拌脱泡室を公転させながら自転させることで、前記被混練物の攪拌および脱泡を行う攪拌脱泡装置であって、
本体容器と、
前記本体容器に回転自在に支持された公転軸と、
前記公転軸に一体に構成された公転部材と、
前記公転部材に回転自在に軸支された自転軸と、
前記自転軸に一体に形成され、前記自転軸の少なくとも一部が内部に臨む攪拌脱泡室と、
を備え、
前記公転軸と前記自転軸には、前記攪拌脱泡室まで連通する内部通路が形成され、前記公転軸の一端側から前記攪拌脱泡室まで前記内部通路を介して被混練物を連続的に供給することができるように構成されたことを特徴とする攪拌脱泡装置。
【請求項3】
前記攪拌脱泡室は、
有底筒状のケースと、
前記有底筒状のケース内に上下方向に複数形成され、材料移送口が設けられた材料隔壁と、
前記材料隔壁により上下方向に複数の部屋に区分された隔室と、
を備え、
前記自転軸は、前記攪拌脱泡室の内部上方に臨む部分に材料流入口が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の攪拌脱泡装置。
【請求項4】
前記材料隔壁は、空洞部を有する複数底で形成されたことを特徴とする請求項3に記載の攪拌脱泡装置。
【請求項5】
前記攪拌脱泡室は、
有底筒状のケースと、
前記有底筒状のケース内に上下方向に複数形成され、前記ケースの内周面との間に隙間が設けられた材料隔壁と、
前記材料隔壁により上下方向に複数の部屋に区分された隔室と、
を備え、
前記自転軸は、前記攪拌脱泡室の内部上方に臨む部分に材料流入口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の攪拌脱泡装置。
【請求項6】
前記ケースの下部側には、材料噴出口が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の攪拌脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−144352(P2007−144352A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344820(P2005−344820)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】