説明

攪拌装置および分析装置

【課題】攪拌処理の異常を正確に検出し、正常に攪拌されなかった液体の分析処理における使用を防止できる攪拌装置および分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる攪拌装置1は、攪拌容器23内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置であって、圧力測定部6によって測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量をもとに、攪拌対象である攪拌容器23内の液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する異常検出部35を備えるため、正常に攪拌されなかった液体の分析処理における使用を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等を分析する分析装置においては、検体や試薬を反応管へ分注するために、シリンジから伝達された圧力によって液体を吸引または吐出するノズルを有する分注装置が設けられている。このような分注装置において、液体の吸引異常を検出するために、ノズルに加えられる圧力を測定し、この圧力測定値の変化率と所定の閾値とを比較することによって、ノズルの詰まりを検出する検出方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−46846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血液や体液等を分析する分析装置においては、容器内の液体を吸引および吐出を繰り返して容器内の液体を攪拌する攪拌装置が用いられている。このような攪拌装置は、たとえば、全血検体などの検体を希釈液で希釈する前処理装置や、反応管の液体と試薬とを攪拌して反応を促進させる攪拌機構として用いられている。そして、分析装置における分析精度を高めるためには、前処理装置および攪拌機構における攪拌処理を適切に行なう必要がある。前処理装置において容器内の検体と希釈液とが十分に攪拌されていないと、希釈後の検体を精度よく分注できなくなり、また、分析装置内の攪拌機構において反応管の検体と試薬とが十分に攪拌されていないと、検体と試薬との反応が適切に進まなくなるためである。したがって、分析装置において分析精度を高めるため、攪拌装置における攪拌処理が正常に行われているか否かを検知する必要がある。
【0005】
しかしながら、従来のノズル詰まり検出方法においては、液体吸引時の詰まりを検出できるのみである。このため、従来のノズル詰まり検出方法においては、攪拌装置の全ての異常を検出できず、液体吸引時における詰まり以外の原因による液体吸引異常のみならず液体吐出異常に関しても検知することができなかった。このように、従来のノズル詰まり検出方法では攪拌装置の攪拌異常を正確に検出できなかったため、十分に希釈されていない検体および十分に反応が促進していない反応液を分析処理で使用してしまう場合があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、攪拌処理の異常を正確に検出し、正常に攪拌されなかった液体の分析処理における使用を防止できる攪拌装置および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる攪拌装置は、容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置において、前記液体を吸引または吐出するノズルと、前記ノズルが前記液体を吸引または吐出するために必要な圧力を発生する圧力発生手段と、前記圧力発生手段によって発生し、前記ノズルに加えられる圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量をもとに、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力波形のうち所定期間内における各吸引圧力測定値の積算値が、前記予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第1の許容範囲内に納まる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲外にずれる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲上限を上回る場合、液量不足または前記ノズルの液面不到達により前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲下限を下回る場合、前記ノズルの詰まりにより前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる攪拌装置は、容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置において、前記液体を吸引または吐出するノズルと、前記ノズルが前記液体を吸引または吐出するために必要な圧力を発生する圧力発生手段と、前記圧力発生手段によって発生し、前記ノズルに加えられる圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力変化を示す吐出圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量をもとに、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力波形のうち所定期間内における各吐出圧力測定値の積算値が、前記予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第2の許容範囲内に納まる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲外にずれる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲上限を上回る場合、前記ノズルの詰まりにより前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲下限を下回る場合、液量不足または前記ノズルの液面不到達により前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる攪拌装置は、容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置において、前記液体を吸引または吐出するノズルと、前記ノズルが前記液体を吸引または吐出するために必要な圧力を発生する圧力発生手段と、前記圧力発生手段によって発生し、前記ノズルに加えられる圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量、および、前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力変化を示す吐出圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量をもとに、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力波形のうち所定期間内における各吸引圧力測定値の積算値が、前記予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第1の許容範囲内に納まる場合であって、前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力波形のうち所定期間内における各吐出圧力測定値の積算値が前記予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第2の許容範囲内に納まる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲外にずれる場合、および/または、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲外にずれる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲の上限を上回る場合または前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲の下限を下回る場合、および、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲の上限を上回る場合または前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲の下限を下回る場合のそれぞれの場合の組み合わせに応じて、液量不足、前記ノズルの液面不到達、前記ノズルの詰まり、または、前記ノズルの前記容器の底面接触により前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記第1の許容範囲は、前記予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値、および、当該攪拌装置によって攪拌された前記液体を分注する分注装置における分注精度をもとに設定されることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記第2の許容範囲は、前記予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値、および、当該攪拌装置によって攪拌された前記液体を分注する分注装置における分注精度をもとに設定されることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記圧力測定手段は、前記ノズルにおける各吸引処理ごとに前記ノズルに加えられる圧力を測定し、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吸引処理における吸引圧力測定値の積算値の平均値を演算し、演算した積算値の平均値と第1の許容範囲とを比較して前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記圧力測定手段は、前記ノズルにおける各吐出処理ごとに前記ノズルに加えられる圧力を測定し、前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吐出処理における吐出圧力測定値の積算値の平均値を演算し、演算した積算値の平均値と第2の許容範囲とを比較して前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる攪拌装置は、前記所定期間は、前記圧力測定手段によって測定された圧力波形形状が安定する期間であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる分析装置は、上記いずれか一つに記載の攪拌装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置において、測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量、および、圧力測定手段によって測定された吐出圧力変化を示す吐出圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量の少なくともいずれか一方をもとに、攪拌対象である容器内の液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断するため、正常に攪拌されなかった液体の分析処理における使用を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について、血液や尿などの検体と希釈液とを希釈する分析装置の前処理装置として機能する攪拌装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0024】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1にかかる攪拌装置の構成を模式的に示す図である。図1に示す攪拌装置1は、攪拌対象である攪拌容器23内の液体Sbを吸引および吐出する管状のノズル2と、ノズル2に鉛直方向の昇降動作や水平方向の回転動作を行わせることによってノズル2を移送するノズル移送部3と、ノズル2に圧力を伝達する圧力伝達用媒体である洗浄液Waの吸排動作を行うシリンジ4と、ノズル2とシリンジ4とを接続し、洗浄液Waの流路をなすチューブ5と、ノズル2に加わる圧力を検出する圧力測定部6と、を備える。洗浄液Waは、イオン交換水や蒸留水等の非圧縮性流体から成る。
【0025】
ノズル2、ノズル移送部3、シリンジ4およびチューブ5は、攪拌対象の液体である攪拌容器23内の検体および希釈液に対する吸引および吐出を繰り返して攪拌容器23内の液体を攪拌するとともに、希釈対象である全血検体や尿などの検体Saを、この検体Saが収容されている容器22から攪拌容器23内に所定量分注する。
【0026】
そして、攪拌装置1は、希釈液Laを攪拌容器23内に注入する管状のノズル12と、ノズル12に鉛直方向の昇降動作や水平方向の回転動作を行わせることによってノズル12を移送する図示しないノズル移送部と、希釈液Laの吸排動作を行うシリンジ14と、ノズル12とシリンジ14とを接続し希釈液Laの流路を成すチューブ15とを備える。希釈液Laは、イオン交換水等から成る。ノズル12、シリンジ14およびチューブ15は、検体Saを希釈する希釈液Laを希釈液タンク21から攪拌容器23内に所定量分注する。
【0027】
シリンジ4は、シリンダ4aとピストン4bとを有し、ピストン駆動部7によってピストン4bがシリンダ4aの内部を図1で鉛直上下方向に摺動することにより、洗浄液Waを介してノズル2に伝達すべき圧力を発生する。シリンジ4は、ノズル2が攪拌容器23内の液体を吸引または吐出するために必要な圧力を発生する圧力発生手段の一部の機能を実現する。シリンジ4は、チューブ5とは異なるチューブ8にも接続されている。このチューブ8の他端は、洗浄液Waを収容する洗浄液タンク11に達している。そして、チューブ8には、洗浄液Waの流量を調整する電磁弁9および洗浄液Waの吸排動作を行うポンプ10が設けられており、電磁弁9が開いたときにポンプ10によって吸い上げられた洗浄液Waがシリンダ4a内に供給される。
【0028】
圧力測定部6は、チューブ5に接続されてチューブ5の内部に充填された洗浄液Waの圧力変化を検出して電気信号に変換する圧力センサ61と、圧力センサ61から出力された電気信号に対して増幅やA/D変換などの信号処理を施す信号処理回路62とを有し、ノズル2に加えられる圧力を測定する。圧力測定部6は、ノズル2の近傍に設置すればより好ましいが、圧力センサ61の感度などの条件によってはノズル2とシリンジ4の中間部に設置してもよいし、シリンジ4の近傍に設置してもよい。
【0029】
そして、シリンジ14は、シリンダ14aとピストン14bとを有する。シリンジ14は、チューブ15とは異なるチューブ18にも接続されている。このチューブ18の他端は、希釈液Laを収容する希釈液タンク21に達している。そして、チューブ18には、希釈液Laの流量を調整する電磁弁19および希釈液Laの吸排動作を行うポンプ20が設けられており、電磁弁19が開いたときにポンプ20によって吸い上げられた希釈液Laがシリンダ14a内に供給される。そして、ピストン駆動部17によってピストン14bがシリンダ14aの内部を図1で鉛直上下方向に摺動することにより、シリンジ14から所定量の希釈液Laがノズル12から攪拌容器23内に注入される。
【0030】
さらに、攪拌装置1は、攪拌装置1を構成する構成部位の動作処理を制御する制御部30と、各種情報の入力を行なう入力部34と、攪拌装置1における攪拌処理の異常を検出する異常検出部35と、異常検出部35における異常検出処理に使用される各種情報を記憶する記憶部36と、各種情報の出力を行なう出力部37とを備える。
【0031】
異常検出部35は、予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形と圧力測定部6によって測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形とのずれ量をもとに、攪拌容器23内の液体Sbに対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する。
【0032】
具体的に、図2を参照して、正常攪拌時における吸引圧力波形と異常攪拌時における吸引圧力波形とを説明する。図2は、正常攪拌時における吸引圧力と異常攪拌時における吸引圧力との時間依存性を示す図である。図2において、縦軸の0はほぼ大気圧を示す。図2における波形Ws0は、正常攪拌時における吸引圧力波形を示す。そして、波形Ws1は、ノズル2のフィブリンなどの詰まり発生に起因する異常攪拌時における吸引波形を示す。そして、波形Ws2は、攪拌対象である液体の液量不足またはノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における吸引圧力波形を示す。また、時間Tssにおいてピストン4bによる下方向の摺動が開始され、液体の吸引が開始する。そして、時間Tseにおいて、ピストン4bの下方向の摺動が停止され、液体の吸引が終了する。
【0033】
図2の波形Ws0に示すように、正常攪拌時では、吸引経過にともなって振幅が次第に小さくなる圧力波形を示す。これに対し、図2のノズル2の詰まり発生に起因する異常攪拌時における波形Ws1に示すように、ノズル2の詰まりが発生した場合には、吸引圧力は、吸引開始時直後に急減後、負圧が高い(大気圧より低くて絶対値は大きい)値で飽和した状態が継続する。また、液量不足またはノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における波形Ws2に示すように、攪拌対象である液体の液量が不足していた場合には、ノズル2は所定量の液体を吸引できないため、吸引圧力値は正常時と比較し負圧が低い(絶対値は小さい)値を示す。
【0034】
つぎに、各圧力波形が安定する時間Ts1から時間Ts2までの所定期間Tsにおける各波形を図3に示す。図3に示すように、ノズル2の詰まり発生に起因する異常攪拌時における波形Ws1は、正常攪拌時における波形Ws0よりも、常に負圧が高い値を示し続ける。したがって、矢印Y10に示す正常攪拌時の波形Ws0に対する積算値As0よりも、矢印Y11に示す波形Ws1に対する積算値As1は格段に小さく(絶対値は大きく)なる。このため、ノズル2の詰まりが発生した場合には、所定期間Ts内における各吸引圧力値の積算値As1は、正常攪拌時の波形Ws0に対する積算値As0よりも常に小さくなる。
【0035】
このように、攪拌装置1においては、ノズル2の詰まりが発生した場合には、所定期間Ts内における各吸引圧力値の積算値が、正常攪拌時の波形Ws0に対する積算値As0よりも格段に小さくなることを利用して、攪拌処理の異常の有無を判断する。
【0036】
具体的には、攪拌装置1は、正常攪拌時における積算値As0およびノズル2の詰まり発生に起因する異常攪拌時における積算値As1をもとに、矢印Y13のように所定の閾値As01を設定して、この閾値を用いてノズル2の詰まり発生による攪拌異常を判断する。この閾値As01は、予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形の所定期間Ts内における各圧力測定値の積算値をもとに設定される。この予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形の所定期間Ts内における各圧力測定値の積算値は、正常状態において、攪拌処理を設定された回数行ない、各攪拌処理ごとに所定期間Ts内における各圧力測定値の積算値を求め、この積算値の平均を演算することによって求められる。そして、この攪拌装置1によって希釈液と攪拌された検体が正確な量で分注される必要があることから、この閾値As01は、この攪拌装置1によって攪拌された液体を分析処理のために所定量分注する分注機構の分注精度をもとに設定される。たとえば、この閾値As01は、正常攪拌時における各圧力測定値の積算値As0の平均値の(−20)%の値である。
【0037】
したがって、図4に示すように、各圧力波形が安定する所定期間Tsにおいて、各吸引圧力値の積算値が、閾値As01を下回る場合には、ノズル2に詰まりが発生し、攪拌処理が正常に行われなかったものと判断できる。
【0038】
また、図3に示すように、液量不足またはノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における波形Ws2は、正常攪拌時における波形Ws0よりもほとんどの場合において負圧が低い値を示し続ける。したがって、正常攪拌時の波形Ws0に対する積算値As0よりも、矢印Y12に示す波形Ws2に対する積算値As2の方が大きく(絶対値は小さく)なる。このため、攪拌対象である液体の液量が不足していた場合またはノズル2が液面に到達していなかった場合には、所定期間Ts内における各吸引圧力値の積算値As2は、正常攪拌時の波形Ws0に対する積算値As0よりも大きくなる。
【0039】
このように、攪拌装置1においては、攪拌対象である液体の液量が不足していた場合またはノズル2が液面に到達していなかった場合には、所定期間Ts内における各吸引圧力値の積算値が、正常攪拌時の波形Ws0に対する積算値As0よりも大きくなることを利用して、攪拌処理の異常の有無を判断する。具体的には、攪拌装置1は、正常攪拌時における積算値As0、および、液量不足またはノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における積算値As2をもとに、矢印Y14のように所定の閾値As02を設定して、この閾値As02を用いて液量不足またはノズル2の液面不到達による攪拌異常を判断する。この閾値As02は、予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形の所定期間Ts内における各圧力測定値の積算値をもとに設定される。そして、この攪拌装置1によって希釈液と攪拌された検体が正確な量で分注される必要があることから、この閾値As02は、この攪拌装置1によって攪拌された液体を分析処理のために所定量分注する分注機構の分注精度をもとに設定される。たとえば、この閾値As02は、正常攪拌時における各圧力測定値の積算値As0の平均値の(+20)%の値である。
【0040】
したがって、図4に示すように、各圧力波形が安定する所定期間Tsにおいて、各吸引圧力値の積算値が閾値As02を上回る場合には、液量不足またはノズル2の液面不到達が発生し、攪拌処理が正常に行われなかったものと判断できる。
【0041】
すなわち、図4に示すように、各圧力波形が安定する所定期間Tsにおいて、各吸引圧力値の積算値が、閾値As02から閾値As01までの範囲にある場合には、つまり閾値As02を上限とし閾値As01を下限とする範囲内にある場合には、攪拌装置1における攪拌処理は正常に行われているものと判断できる。そして、各吸引圧力値の積算値が閾値As01を下回る場合には、ノズル2に詰まりが発生し、攪拌処理が正常に行われていないものと判断できる。また、各吸引圧力値の積算値が閾値As02を上回る場合には、液量不足またはノズル2の液面不到達が発生し、攪拌処理が正常に行われていないものと判断できる。
【0042】
このように、攪拌装置1においては、正常攪拌時における積算値As0、および、攪拌装置1によって攪拌された液体を所定量分注する分注装置の分注精度をもとに設定された閾値As02から閾値As01までの許容範囲をもとに、攪拌異常の有無および攪拌異常の原因を判断する。なお、記憶部36は、この閾値As01,As02を記憶する。
【0043】
つぎに、図5を参照して、攪拌装置1における攪拌処理について説明する。図5に示すように、攪拌装置1においては、ノズル移送部3によるノズル2の移送処理およびピストン駆動部7によるピストン4bの駆動処理のもと、ノズル2は、容器22から攪拌容器23内に原液である検体Saを所定量分注する原液分注処理を行なう(ステップS1)。次いで、ピストン駆動部17によるピストン14bの駆動処理のもと、ノズル12は、希釈液タンク21から攪拌容器23内に希釈液Laを所定量注入する希釈液注入処理を行なう(ステップS2)。その後、ノズル移送部3は、ノズル2を攪拌容器23内に下降させるノズル下降処理を行なう(ステップS3)。
【0044】
ノズル移送部3によってノズル2が攪拌容器内に挿入された後、圧力測定部6は、ノズル2に加えられる圧力を測定する圧力測定処理を開始する(ステップS4)。圧力測定部6によって測定された各圧力測定値は、制御部30を介して、異常検出部35に出力される。
【0045】
次いで、ピストン駆動部7によってピストン4bが鉛直下方向に摺動することによって、ノズル2は、攪拌容器23内の攪拌対象液を吸引する攪拌対象液吸引処理(ステップS5)を行なう。さらに、ピストン駆動部7によるピストン4bが鉛直上方向に摺動することによって、ノズル2は、吸引した攪拌対象液を攪拌容器23に吐出する攪拌対象液吐出処理(ステップS6)を行なう。この攪拌対象液吐出処理が終了した後、圧力測定部6は、圧力測定を終了する(ステップS7)。
【0046】
制御部30は、攪拌対象液吸引処理(ステップS5)および攪拌対象液吐出処理(ステップS6)を設定した回数実施したか否かを判断する(ステップS8)。制御部30は、設定した回数実施していないと判断した場合には(ステップS8:No)、攪拌対象液吸引処理(ステップS5)および攪拌対象液吐出処理(ステップS6)を設定した回数実施するため、ステップS4に戻り、圧力測定開始処理(ステップS4)、攪拌対象液吸引処理(ステップS5)および攪拌対象液吐出処理(ステップS6)および圧力測定終了処理(ステップS7)を行なう。
【0047】
これに対し、制御部30が攪拌対象液吸引処理(ステップS5)および攪拌対象液吐出処理(ステップS6)を設定した回数実施したと判断した場合には(ステップS8:Yes)、ノズル移送部3は、攪拌処理を終了するため、ノズル2を攪拌容器23から上昇させるノズル上昇処理を行なう(ステップS9)。
【0048】
次いで、異常検出部35は、圧力測定部6によって測定されたノズル2に加えられた各圧力値のうち、吸引時における各圧力測定値の積算値と、記憶部36に記憶された各閾値とを比較して、攪拌処理の異常の有無および攪拌異常の原因を検出する攪拌異常検出処理を行なう(ステップS10)。
【0049】
つぎに、制御部30は、異常検出部35において攪拌処理の異常が検出されたか否かを判断する(ステップS11)。制御部30は、異常検出部35において攪拌処理の異常が検出されたと判断した場合(ステップS11:Yes)、出力部37に本攪拌処理に異常があったこと、および、この攪拌処理の異常の原因を示すエラーを出力させる(ステップS12)。一方、制御部30は、異常検出部35において攪拌処理の異常が検出されなかったと判断した場合(ステップS11:No)、出力部37に本攪拌処理が正常に終了した旨を出力させる(ステップS13)。
【0050】
そして、図6を参照して、図5に示す攪拌異常検出処理について説明する。図6に示すように、異常検出部35は、圧力測定部6によって測定された各圧力測定値のうち、吸引時の圧力測定値を示す吸引圧力データを取得する(ステップS22)。そして、異常検出部35は、設定された回数行われた攪拌対象液吸引処理ごとに所定期間Ts内における各圧力測定値を積算し、この積算した積算値の平均値Asmを演算する演算処理を行なう(ステップS24)。次いで、異常検出部35は、記憶部36から、閾値As01,As02を取得する(ステップS26)。異常検出部35は、演算した積算値の平均値Asmと取得した閾値As01,As02とを比較することによって、攪拌処理の異常の有無、および、攪拌異常の原因を検出する。
【0051】
まず、異常検出部35は、上述した許容範囲の上限である閾値As01と演算した積算値の平均値Asmとを比較し、As01>Asmであるか否かを判断する(ステップS28)。異常検出部35は、As01>Asmであると判断した場合(ステップS28:Yes)、すなわち、ノズル2における実際の吸引圧力測定値の積算値の平均値Asmがノズル2の詰まり発生の判断基準である許容範囲下限の閾値As01を下回って許容範囲外にずれる場合には、ノズル2の詰まりにより本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する(ステップS30)。
【0052】
これに対し、異常検出部35は、As01>Asmでないと判断した場合(ステップS28:No)、すなわち、ノズル2における実際の吸引圧力測定値の積算値の平均値Asmが、ノズル2の詰まり発生の判断基準である許容範囲下限の閾値As01以上である場合には、上述した許容範囲の上限である閾値As02と演算した積算値の平均値Asmとを比較し、Asm>As02であるか否かを判断する(ステップS32)。
【0053】
異常検出部35は、Asm>As02であると判断した場合(ステップS32:Yes)、すなわち、ノズル2における実際の吸引圧力測定値の積算値の平均値Asmが、液量不足またはノズル2の液面不到達発生の判断基準である許容範囲上限の閾値As02を上回って許容範囲外にずれる場合には、液量不足またはノズル2の液面不到達により本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する(ステップS34)。この場合、ノズル2を移送するノズル移送部3の移送制御の異常、ノズル2による検体Saの分注量不足、ノズル12による希釈液Laの注入量不足が考えられる。
【0054】
一方、異常検出部35は、Asm>As02でないと判断した場合(ステップS32:No)、ノズル2における実際の吸引圧力測定値の積算値の平均値Asmが基準範囲内に納まる場合であることから、攪拌処理が正常に実行されたと判断する(ステップS36)。そして、異常検出部35は、検出結果を出力して(ステップS38)、攪拌異常検出処理を終了する。
【0055】
このように、本実施の形態1における攪拌装置1は、圧力測定部6によって測定された吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量をもとに、攪拌対象である容器内の液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断するため、正常に攪拌されなかった液体の分析処理における使用を防止でき、分析処理における試薬および分析時間の無駄をなくすことができる。
【0056】
また、攪拌装置1は、圧力測定部6によって測定された吸引圧力波形のうち所定期間Ts内における各吸引圧力測定値の積算値が、予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち所定期間Ts内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された許容範囲内にあるか否かを判断している。言い換えると、攪拌装置1は、圧力測定部6によって測定された吸引圧力波形における正常攪拌時における吸引圧力波形からの各ずれ量を時間的に積算した値で攪拌処理の異常の有無を判断しており、積算する圧力測定値の数が複数あることから、1点のみにおけるずれ量で判断した場合と比較し、確実な攪拌処理異常有無の判断を行なえる。また、攪拌装置1においては、不安定状態における圧力測定値ではなく、吸引圧力波形が安定する期間の各圧力測定値の積算値をもとに異常検出処理を行なっているため、不安定状態における圧力測定値のばらつきなどの影響を低減して、正確に攪拌処理の異常検出を行うことができる。さらに、攪拌装置1においては、複数回の吸引処理ごとに圧力測定値の積算値をそれぞれ演算し、この複数の積算値の平均値を用いて異常検出処理を行なうため、ただ一度の吸引処理における圧力測定値の積算値のみで判断した場合と比較し、モニタしたポイント数が多く、測定した吸引圧力値を平均化することができることから、確実な攪拌処理異常有無の判断を行なえる。
【0057】
さらに、実施の形態1においては、攪拌処理の単なる異常の有無のみならず、攪拌処理の異常の原因までも検出できる。したがって、攪拌装置1の保守管理者は、攪拌処理の異常の原因がいずれの機構に関与するかを認識することができるため、迅速かつ正確に攪拌装置における攪拌処理の異常に対応することが可能になる。
【0058】
なお、一般的に、攪拌対象である液体の量および粘度が同じであれば、正常な攪拌処理時における吸引圧力波形は毎回ほぼ同じ形状となる。したがって、攪拌装置1は、攪拌対象となる液体の量および粘度にそれぞれ応じた各許容範囲をもとに攪拌異常の有無を判断すればよい。具体的には、攪拌装置1は、液体の量および粘度をそれぞれ変えた状態で予め攪拌処理を行ない、この各攪拌処理における吸引圧力波形のうち所定期間における各吸引圧力値の積算値をそれぞれ求めた上で、各積算値などをもとに、液体の各量および各粘度に対応する許容範囲下限である閾値As01、許容範囲上限である閾値As02をそれぞれ設定すればよい。
【0059】
また、実施の形態1においては、さらに、液量不足またはノズル2の液面不到達のそれぞれに対応した閾値を設けて、液量不足またはノズル2の液面不到達のいずれが異常攪拌処理の原因となったかを詳細に判断してもよい。
【0060】
ここで、図7に、正常攪拌時における吸引圧力波形である波形Ws0とともに、液量不足に起因する異常攪拌時における吸引圧力波形である波形Ws21と、ノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における吸引圧力波形である波形Ws22とを示す。図7の波形Ws21に示すように、液量が不足する場合の各吸引圧力値は、所定量よりも少ない液量を吸引するため、正常攪拌時の波形Ws0よりも負圧が低い値を示す。さらに、図7の波形Ws22に示すように、液面不到達である場合の各吸引圧力値は、液体を吸引することができないため、液量不足時における波形Ws21よりもさらに負圧が低い値を示す。このように、液量不足時と液面不到達である場合とでは、各吸引圧力値の値分布に所定の傾向が認められる。攪拌装置1では、この傾向を利用して、正常攪拌時であるか否かを区別可能である閾値As02に加え、液量不足時である場合と液面不到達である場合とを区別可能である閾値を設定して、液量不足またはノズル2の液面不到達のいずれが異常攪拌処理の原因となったかを判断する。
【0061】
具体的には、矢印Y15に示す液量不足時の波形Ws21における所定期間Ts内における各吸引圧力値の積算値の平均値As21および矢印Y16に示す液面不到達である場合の波形Ws22における所定期間Ts内における各吸引圧力値の積算値の平均値As22をもとに、矢印Y17のように液量不足時である場合と液面不到達である場合とを区別可能である閾値As03を設定すればよい。
【0062】
したがって、図8に示すように、異常検出部35は、各圧力波形が安定する所定期間Tsにおいて各吸引圧力値の積算値が、閾値As02を上回る場合であって閾値As03以下である場合には、液量不足によって攪拌処理が正常に行われなかったものと判断する。そして、異常検出部35は、各圧力波形が安定する所定期間Tsにおいて各吸引圧力値の積算値が、閾値As02を上回り、さらに閾値As03を上回る場合には、液面不到達によって攪拌処理が正常に行われなかったものと判断する。このように、攪拌装置1は、閾値As03をさらに設けて、液量不足またはノズル2の液面不到達のいずれが異常攪拌処理の原因となったかを詳細に判断してもよい。
【0063】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、攪拌処理のうち液体吐出時の圧力波形をもとに攪拌処理の異常を検出する場合について説明する。図9は、実施の形態2にかかる攪拌装置の構成を模式的に示す図である。図9に示すように、実施の形態2にかかる攪拌装置201は、図1に示す異常検出部35に代えて、異常検出部235を備える。
【0064】
異常検出部235は、圧力測定部6によって測定された吐出圧力変化を示す吐出圧力波形と、予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量をもとに、攪拌容器23内の液体Sbに対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する。
【0065】
具体的に、図10を参照して、正常攪拌時における吐出圧力波形と、異常攪拌時における吐出圧力波形とを説明する。図10は、正常攪拌時における吐出圧力と、異常攪拌時における吐出圧力との時間依存性を示す図である。図10における波形Wg0は、正常攪拌時における吐出圧力波形を示し、波形Wg1は、ノズル2のフィブリンなどの詰まり発生に起因する異常攪拌時における吐出波形を示し、波形Wg2は、攪拌対象である液体の液量不足またはノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における吐出圧力波形を示す。また、時間Tgsにおいてピストン4bによる上方向の摺動が開始され、液体の吐出が開始する。そして、時間Tgeにおいて、ピストン4bの上方向の摺動が停止され、液体の吐出が終了する。
【0066】
図10の波形Wg0に示すように、正常攪拌時では、吐出経過にともなって振幅が次第に小さくなる圧力波形を示す。これに対し、図10のノズル2の詰まり発生に起因する異常攪拌時における波形Wg1に示すように、ノズル2の詰まりが発生した場合には、吐出圧力は、詰まりに起因し、吐出開始直後に急増後、大きな値で飽和した状態が継続する。また、攪拌対象である液体の液量が不足していた場合には、ノズル2は所定量の吐出ができず、吐出対象となる液体が最初または途中からノズル2内に存在しない状態となることから、吐出圧力値は正常時と比較し圧力が低い状態となる。
【0067】
つぎに、各圧力波形が安定する時間Tg1から時間Tg2までの所定期間Tgにおける各波形を図11に示す。図11に示すように、ノズル2の詰まり発生に起因する異常攪拌時における波形Wg1は、正常攪拌時における波形Wg0よりも、常に高い吐出圧力値を示し続ける。したがって、ノズル2の詰まりが発生した場合には、所定期間Tg内における各吐出圧力値の積算値は、矢印Y20に示す正常攪拌時の波形Wg0に対する積算値Ag0よりも、矢印Y21に示す波形Wg1に対する積算値Ag1が常に大きくなる。
【0068】
このように、攪拌装置201においては、ノズル2の詰まりが発生した場合には、所定期間Tg内における各吐出圧力値の積算値が、正常攪拌時の波形Wg0に対する積算値Ag0よりも常に大きくなることを利用して、攪拌処理の異常の有無を判断する。
【0069】
具体的には、攪拌装置201は、正常攪拌時における積算値Ag0およびノズル2の詰まり発生に起因する異常攪拌時における積算値Ag1をもとに、矢印Y23のように所定の閾値Ag01を設定して、この閾値を用いてノズル2の詰まり発生による攪拌異常を判断する。この閾値Ag01は、予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形の所定期間Tg内における各圧力測定値の積算値をもとに設定される。この予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形の所定期間Tg内における各圧力測定値の積算値は、正常状態において、攪拌処理を設定された回数行ない、各攪拌処理ごとに所定期間Tg内における各圧力測定値の積算値を求め、この積算値の平均を演算することによって求められる。そして、この攪拌装置201によって希釈液と攪拌された検体が正確な量で分注される必要があることから、この閾値Ag01は、この攪拌装置201によって攪拌された液体を分析処理のために所定量分注する分注装置の分注精度をもとに設定される。たとえば、この閾値Ag01は、正常攪拌時における各圧力測定値の積算値Ag0の平均値の(+20)%の値である。
【0070】
したがって、図12に示すように、各圧力波形が安定する所定期間Tgにおいて、各吐出圧力値の積算値が、閾値Ag01を上回る場合には、ノズル2に詰まりが発生し、攪拌処理が正常に行われなかったものと判断できる。
【0071】
また、図11に示すように、液量不足またはノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における波形Wg2は、正常攪拌時における波形Wg0よりもほとんどの場合において低い吐出圧力値を示し続ける。したがって、攪拌対象である液体の液量が不足していた場合またはノズル2が液面に到達していなかった場合には、所定期間Tg内における各吐出圧力値の積算値は、正常攪拌時の波形Wg0に対する積算値Ag0よりも、矢印Y22に示す波形Wg2に対する積算値Ag2の方が小さくなる。
【0072】
このように、攪拌装置201においては、攪拌対象である液体の液量が不足していた場合またはノズル2が液面に到達していなかった場合には、所定期間Tg内における各吐出圧力値の積算値が、正常攪拌時の波形Wg0に対する積算値Ag0よりも小さくなることを利用して、攪拌処理の異常の有無を判断する。具体的には、攪拌装置201は、正常攪拌時における積算値Ag0、および液量不足またはノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における積算値Ag2をもとに、矢印Y24のように所定の閾値Ag02を設定して、この閾値Ag02を用いて液量不足またはノズル2の液面不到達による攪拌異常を判断する。この閾値Ag02は、予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形の所定期間Tg内における各圧力測定値の積算値をもとに設定される。そして、この攪拌装置201によって希釈液と攪拌された検体が正確な量で分注される必要があることから、この閾値Ag02は、この攪拌装置201によって攪拌された液体を分析処理のために所定量分注する分注装置の分注精度をもとに設定される。たとえば、この閾値Ag02は、正常攪拌時における各圧力測定値の積算値Ag0の平均値の(−20)%の値である。
【0073】
したがって、図12に示すように、各圧力波形が安定する所定期間Tgにおいて、各吐出圧力値の積算値が閾値Ag02を下回る場合には、液量不足またはノズル2の液面不到達が発生し、攪拌処理が正常に行われなかったものと判断できる。
【0074】
すなわち、図12に示すように、各圧力波形が安定する所定期間Tgにおいて、各吐出圧力値の積算値が、閾値Ag02から閾値Ag01までの範囲にある場合には、つまり閾値Ag01を上限とし閾値Ag02を下限とする範囲内にある場合には、攪拌装置201における攪拌処理は正常に行われているものと判断できる。そして、各吐出圧力値の積算値が閾値Ag01を上回る場合には、ノズル2に詰まりが発生し、攪拌処理が正常に行われていないものと判断できる。また、各吐出圧力値の積算値が閾値Ag02を下回る場合には、液量不足またはノズル2の液面不到達が発生し、攪拌処理が正常に行われていないものと判断できる。
【0075】
このように、攪拌装置201においては、正常攪拌時における積算値Ag0、および、攪拌装置201によって攪拌された液体を所定量分注する分注装置の分注精度をもとに設定された閾値Ag01から閾値Ag02までの許容範囲をもとに、攪拌異常の有無および攪拌異常の原因を判断する。なお、記憶部36は、この閾値Ag01,Ag02を記憶する。
【0076】
つぎに、図13を参照して、攪拌装置201における攪拌処理について説明する。図13に示すように、攪拌装置201は、図5に示すステップS1〜ステップS9と同様の処理手順を行なうことによって、原液分注処理(ステップS201)、希釈液注入処理(ステップS202)、ノズル下降処理(ステップS203)、圧力測定開始処理(ステップS204)、攪拌対象液吸引処理(ステップS205)、攪拌対象液吐出処理(ステップS206)、圧力測定終了処理(ステップS207)、攪拌対象液吸引処理および攪拌対象液吐出処理を設定回数実施判断処理(ステップS208)およびノズル上昇処理(ステップS209)を行なう。
【0077】
次いで、異常検出部235は、圧力測定部6によって測定されたノズル2に加えられた各圧力値のうち、吐出時における各圧力測定値の積算値と、記憶部36に記憶された各閾値とを比較して、攪拌処理の異常の有無および攪拌異常の原因を検出する攪拌異常検出処理を行なう(ステップS210)。
【0078】
つぎに、攪拌装置201は、図5に示すステップS11〜ステップS13と同様の処理手順を行なって、攪拌処理異常検出判断処理(ステップS211)、エラー出力処理(ステップS212)、攪拌処理の正常終了出力処理(ステップS213)を行なう。
【0079】
そして、図14を参照して、図13に示す攪拌異常検出処理について説明する。図14に示すように、異常検出部235は、圧力測定部6によって測定された各圧力測定値のうち、吐出時の圧力測定値を示す吐出圧力データを取得する(ステップS222)。そして、異常検出部235は、設定された回数行われた攪拌対象液吐出処理ごとに所定期間Tg内における各圧力測定値を積算し、この積算した積算値の平均値Agmを演算する演算処理を行なう(ステップS224)。次いで、異常検出部235は、記憶部36から、閾値Ag01,Ag02を取得する(ステップS226)。異常検出部235は、演算した積算値の平均値Agmと取得した閾値Ag01,Ag02とを比較することによって、攪拌処理の異常の有無、および、攪拌異常の原因を検出する。
【0080】
まず、異常検出部235は、上述した許容範囲の上限である閾値Ag01と演算した積算値の平均値Agmとを比較し、Agm>Ag01であるか否かを判断する(ステップS228)。異常検出部235は、Agm>Ag01であると判断した場合(ステップS228:Yes)、すなわち、ノズル2における実際の吐出圧力測定値の積算値の平均値Agmがノズル2の詰まり発生の判断基準である許容範囲上限の閾値Ag01を上回って許容範囲外にずれる場合には、ノズル2の詰まりにより本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する(ステップS230)。
【0081】
これに対し、異常検出部235は、Agm>Ag01でないと判断した場合(ステップS228:No)、すなわち、ノズル2における実際の吐出圧力測定値の積算値の平均値Agmが、ノズル2の詰まり発生の判断基準である許容範囲上限の閾値Ag01以下である場合には、上述した許容範囲の下限である閾値Ag02と演算した積算値の平均値Agmとを比較し、Ag02>Agmであるか否かを判断する(ステップS232)。
【0082】
異常検出部235は、Ag02>Agmであると判断した場合(ステップS232:Yes)、すなわち、ノズル2における実際の吐出圧力測定値の積算値の平均値Agmが、液量不足またはノズル2の液面不到達発生の判断基準である許容範囲下限の閾値Ag02を下回って許容範囲外にずれる場合には、液量不足またはノズル2の液面不到達により本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する(ステップS234)。この場合、ノズル2を移送するノズル移送部3の移送制御の異常、ノズル2による検体Saの分注量不足、ノズル12による希釈液Laの注入量不足が考えられる。
【0083】
一方、異常検出部235は、Ag02>Agmでないと判断した場合(ステップS232:No)、ノズル2における実際の吐出圧力測定値の積算値の平均値Agmが基準範囲内に納まる場合であることから、攪拌処理が正常に実行されたと判断する(ステップS236)。そして、異常検出部235は、検出結果を出力して(ステップS238)、攪拌異常検出処理を終了する。
【0084】
このように、本実施の形態2における攪拌装置201は、圧力測定部6によって測定された吐出圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量をもとに、攪拌対象である容器内の液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断するため、正常に攪拌されなかった液体の分析処理における使用を防止でき、分析処理における試薬および分析時間の無駄をなくすことができる。
【0085】
また、攪拌装置201は、圧力測定部6によって測定された吐出圧力波形のうち所定期間Tg内における各吐出圧力測定値の積算値が、予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち所定期間Tg内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された許容範囲内にあるか否かを判断している。言い換えると、攪拌装置201は、圧力測定部6によって測定された吐出圧力波形における正常攪拌時における吐出圧力波形からの各ずれ量を時間的に積算した値で攪拌処理の異常の有無を判断しており、積算する圧力測定値の数が複数あることから、1点のみにおけるずれ量で判断した場合と比較し、確実な攪拌処理異常有無の判断を行なえる。また、攪拌装置201においては、不安定状態における圧力測定値ではなく、吐出圧力波形が安定する期間の各圧力測定値の積算値をもとに異常検出処理を行なっているため、不安定状態における圧力測定値のばらつきなどの影響を低減して、正確に攪拌処理の異常検出を行うことができる。さらに、攪拌装置201においては、複数回の吐出処理ごとに圧力測定値の積算値をそれぞれ演算し、この複数の積算値の平均値を用いて異常検出処理を行なうため、ただ一度の吐出処理における圧力測定値の積算値のみで判断した場合と比較し、モニタしたポイント数が多く、測定した吐出圧力値を平均化することができることから、確実な攪拌処理異常有無の判断を行なえる。
【0086】
さらに、実施の形態2においては、攪拌処理の単なる異常の有無のみならず、攪拌処理の異常の原因までも検出できる。したがって、攪拌装置201の保守管理者は、攪拌処理の異常の原因がいずれの機構に関与するかを認識することができるため、迅速かつ正確に攪拌装置における攪拌処理の異常に対応することが可能になる。
【0087】
なお、一般的に、攪拌対象である液体の量および粘度が同じであれば、正常な攪拌処理時における吐出圧力波形は、毎回同じ形状となる。したがって、攪拌装置201は、攪拌対象となる液体の量および粘度にそれぞれ応じた各許容範囲をもとに攪拌異常の有無を判断すればよい。具体的には、攪拌装置201は、液体の量および粘度をそれぞれ変えた状態で予め攪拌処理を行ない、この各攪拌処理における吐出圧力波形のうち所定期間における各吐出圧力値の積算値をそれぞれ求めた上で、各積算値などをもとに、液体の各量および各粘度に対応する許容範囲上限である閾値Ag01、許容範囲下限である閾値Ag02を設定すればよい。
【0088】
また、実施の形態2においては、さらに、液量不足またはノズル2の液面不到達のそれぞれに対応した閾値を設けて、液量不足またはノズル2の液面不到達のいずれが異常攪拌処理の原因となったかを詳細に判断してもよい。
【0089】
ここで、図15に、正常攪拌時における吐出圧力波形である波形Wg0とともに、液量不足に起因する異常攪拌時における吐出圧力波形である波形Wg21と、ノズル2の液面不到達に起因する異常攪拌時における吐出圧力波形である波形Wg22とを示す。図15の波形Wg21に示すように、液量が不足する場合の各吐出圧力値は、所定量よりも少ない液量を吐出するため、正常攪拌時の波形Wg0よりも低い吐出圧力値となる。さらに、図15の波形Wg22に示すように、液面不到達である場合の各吐出圧力値は、液体を吐出することができないため、液量不足時における波形Wg21よりもさらに低い吐出圧力値を示す。このように、液量不足時と液面不到達である場合とでは、各吐出圧力値の値分布に所定の傾向が認められる。攪拌装置201では、この傾向を利用して、正常攪拌時であるか否かを区別可能である閾値Ag02に加え、液量不足時である場合と液面不到達である場合とを区別可能である閾値を設定して、液量不足またはノズル2の液面不到達のいずれが異常攪拌処理の原因となったかを判断する。
【0090】
具体的には、矢印Y25に示す液量不足時の波形Wg21における所定期間Tg内における各吐出圧力値の積算値の平均値Ag21および矢印Y26に示す液面不到達である場合の波形Wg22における所定期間Tg内における各吐出圧力値の積算値の平均値Ag22をもとに、矢印Y27のように液量不足時である場合と液面不到達である場合とを区別可能である閾値Ag03を設定すればよい。
【0091】
したがって、図16に示すように、異常検出部235は、各圧力波形が安定する所定期間Tgにおいて各吐出圧力値の積算値が、閾値Ag02を下回る場合であって閾値Ag03以上である場合には、液量不足によって攪拌処理が正常に行われなかったものと判断する。そして、異常検出部235は、各圧力波形が安定する所定期間Tgにおいて各吐出圧力値の積算値が、閾値Ag02を下回り、さらに閾値Ag03を下回る場合には、液面不到達によって攪拌処理が正常に行われなかったものと判断する。このように、攪拌装置201は、閾値Ag03をさらに設けて、液量不足またはノズル2の液面不到達のいずれが異常攪拌処理の原因となったかを詳細に判断してもよい。
【0092】
(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3について説明する。実施の形態3においては、攪拌処理における液体吸引時の圧力波形および液体吐出時の圧力波形の双方をもとに攪拌処理の異常を検出する場合について説明する。
【0093】
図17は、実施の形態3にかかる攪拌装置の構成を模式的に示す図である。図17に示すように、実施の形態3にかかる攪拌装置301は、図1に示す異常検出部35に代えて、異常検出部335を備える。
【0094】
異常検出部335は、圧力測定部6によって測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量、および、圧力測定部6によって測定された吐出圧力変化を示す吐出圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量をもとに、液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する。
【0095】
ここで、異常検出部335は、実施の形態1において設定された閾値As01から閾値As02までの範囲を第1の許容範囲として、圧力測定部6によって測定された吸引圧力値の積算値を用いた攪拌処理に対する異常検出を行う。そして、異常検出部335は、実施の形態2において設定された閾値Ag01から閾値Ag02までの範囲を第2の許容範囲として、圧力測定部6によって測定された吐出圧力値の積算値を用いた攪拌処理に対する異常検出を行う。
【0096】
異常検出部335は、圧力測定部6によって測定された吸引圧力波形のうち所定期間内における各吸引圧力測定値の積算値が、予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第1の許容範囲内に納まる場合であって、圧力測定部6によって測定された吐出圧力波形のうち所定期間内における各吐出圧力測定値の積算値が予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第2の許容範囲内に納まる場合、液体に対する攪拌処理が正常に実行されたと判断する。一方、異常検出部335は、圧力測定部6によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が第1の許容範囲外にずれる場合、および/または、圧力測定部6によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が第2の許容範囲外にずれる場合、液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断する。
【0097】
さらに、異常検出部335は、圧力測定部6によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が第1の許容範囲の上限を上回る場合または圧力測定部6によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が各吸引圧力測定値の積算値が第1の許容範囲の下限を下回る場合、および、圧力測定部6によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が第2の許容範囲の上限を上回る場合または圧力測定部6によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が第2の許容範囲の下限を下回る場合のそれぞれの場合の組み合わせに応じて、液量不足、ノズル2の液面不到達、ノズル2の詰まり、または、ノズル2の前記容器の底面接触により前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断する。
【0098】
つぎに、図18を参照して、攪拌装置301における攪拌処理について説明する。図18に示すように、攪拌装置301は、図5に示すステップS1〜ステップS9と同様の処理手順を行なうことによって、原液分注処理(ステップS301)、希釈液注入処理(ステップS302)、ノズル下降処理(ステップS303)、圧力測定開始処理(ステップS304)、攪拌対象液吸引処理(ステップS305)、攪拌対象液吐出処理(ステップS306)、圧力測定終了処理(ステップS307)、攪拌対象液吸引処理および攪拌対象液吐出処理を設定回数実施判断処理(ステップS308)およびノズル上昇処理(ステップS309)を行なう。
【0099】
次いで、異常検出部335は、圧力測定部6によって測定された吸引時における各圧力測定値の積算値および吐出時における各圧力測定値の積算値と、記憶部36に記憶された各閾値とを比較して、攪拌処理の異常の有無および攪拌異常の原因を検出する攪拌異常検出処理を行なう(ステップS310)。
【0100】
つぎに、攪拌装置301は、図5に示すステップS11〜ステップS13と同様の処理手順を行なって、攪拌処理異常検出判断処理(ステップS311)、エラー出力処理(ステップS312)、攪拌処理の正常終了出力処理(ステップS313)を行なう。
【0101】
そして、図19を参照して、図18に示す攪拌異常検出処理について説明する。図19に示すように、異常検出部335は、圧力測定部6によって測定された各圧力測定値のうち、吸引時の圧力測定値を示す吸引圧力データを取得し(ステップS322)、次いで、吐出時の圧力測定値を示す吐出圧力データを取得する(ステップS323)。そして、異常検出部335は、設定された回数行われた攪拌対象液吸引処理ごとに所定期間Ts内における各圧力測定値を積算し、この積算した積算値の平均値Asmを演算するとともに、設定された回数行われた攪拌対象液吐出処理ごとに所定期間Tg内における各圧力測定値を積算し、この積算した積算値の平均値Agmを演算する演算処理を行なう(ステップS324)。
【0102】
そして、異常検出部335は、記憶部36から、積算値の平均値Asm,Agmの組み合わせにそれぞれ対応する攪拌処理の異常検出内容を示す判断テーブルを参照する(ステップS326)。異常検出部335は、この判断テーブルを参照することによって、演算結果であるAsmおよびAgmの組み合わせに対応する攪拌処理に対する検出結果を取得し(ステップS328)、取得した検出結果を出力して(ステップS338)、攪拌異常検出処理を終了する。
【0103】
この判断テーブルは、たとえば図20に示すように、吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmと吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmとのそれぞれの組み合わせに、攪拌処理における異常の有無、および異常の原因が対応付けられており、記憶部36内に記憶されている。
【0104】
組み合わせ番号「1」である場合について説明する。これは、吸引圧力データにおける積算値の平均値AsmがAs01以上As02以下であり第1の許容範囲内である場合であって、吐出圧力データにおける積算値の平均値AgmがAg02以上Ag01以下であり第2の許容範囲内である場合である。このように組み合わせ番号「1」である場合には、吸引および吐出の双方において許容範囲を満たすため、異常検出部335は、本攪拌処理は正常に行われたと判断する。
【0105】
そして、組み合わせ番号「2−2」である場合について説明する。これは、吸引圧力データにおける積算値の平均値AsmがAs01以上As02以下であり第1の許容範囲内である場合であるものの、吐出圧力データにおける積算値の平均値AgmがAg02を下回る場合である。この場合、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが液量不足またはノズル2の液面不到達発生の判断基準である許容範囲下限の閾値Ag02を下回って許容範囲外にずれるため、攪拌対象液の吐出処理において液量不足またはノズル2の液面不到達が発生したものと判断できる。このように組み合わせ番号「2−2」である場合には、異常検出部335は、本攪拌処理は吐出処理時における液量不足またはノズル2の液面不到達により本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する。
【0106】
ここで、吐出圧力データにおける積算値の平均値AgmがAg01を上回る場合は、吐出処理時においてノズル2の詰まりが発生していた場合である。そして、吸引した液体を吐出する吐出処理時においてノズル2が詰まった状態となるには、吐出処理前の吸引処理時において既にノズル2が詰まってしまった場合であると言える。したがって、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが閾値Ag01を上回る場合には、吸引処理時においてもノズル2の詰まりに起因して積算値の平均値Asmが閾値As01を下回ることになることが明らかである。このため、組み合わせ番号「2−1」である場合、すなわち吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmが閾値As01以上閾値As02以下であり、かつ、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが閾値Ag01を上回る場合は発生しないものと考えられる。
【0107】
そして、組み合わせ番号「3−2」である場合について説明する。これは、吐出圧力データにおける積算値の平均値AgmがAg02以上Ag01以下であり第2の許容範囲内である場合であるものの、吸引圧力データにおける積算値の平均値AsmがAs01を下回る場合である。つまり、吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmがノズル2の詰まり発生の判断基準である許容範囲下限の閾値As01を下回って許容範囲外にずれるにもかかわらず、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmは正常である場合である。この場合、吸引処理はノズル2の詰まりに起因して異常が認められるものの、吐出処理は正常に行なわれていることから、攪拌対象液の吸引処理終了直前においてノズル2の詰まりが発生したものの、吐出時にはこの詰まりは解消したものと考えられる。
【0108】
ここで、吸引圧力データにおける積算値の平均値AsmがAs02を上回る場合は、吸引処理時に液量不足またはノズル2の液面不到達によって、設定された所定量の液体を吸引できなかった場合である。そして、設定された量よりも少ない量しか液体を吸引できなかった場合には、当然に、吐出処理において設定された量よりも少ない量しか液体を吐出できないこととなる。したがって、吸引圧力データにおける積算値の平均値AsmがAs02を上回る場合には、吐出処理時においても、液量不足または液面不到達に起因して、積算値の平均値Agmが閾値Ag02を下回ることは明らかである。このため、組み合わせ番号「3−1」である場合、すなわち、吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmが閾値As02を上回り、かつ、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが閾値Ag02以上閾値Ag01以下である場合はほとんど発生しないが、吸引時の容量が閾値ぎりぎりで容量不測になった場合には組み合わせ番号「3−1」となることもある。
【0109】
つぎに、組み合わせ番号「4−1」である場合について説明する。組み合わせ番号「4−1」である場合とは、吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmがノズル2の詰まり発生の判断基準である閾値As01を下回り、かつ、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが液量不足またはノズル2の液面不到達の判断基準である閾値Ag02を下回る場合である。これは、吸引処理中にノズル2に詰まりが発生して吸引した液量が少なくなってしまった結果、吐出処理時に吐出される液量が不足した場合であると考えられる。このため、組み合わせ番号「4−1」である場合には、異常検出部335は、吸引処理中に詰まりが発生したことによって本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する。
【0110】
つぎに、組み合わせ番号「4−2」である場合について説明する。これは、吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmがノズル2の詰まり発生の判断基準である閾値As01を下回り、かつ、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmがノズル2の詰まり発生の判断基準である閾値Ag01を上回る場合である。これは、吸引開始時からノズル2が塞がれ液体を全く吸引できなくなってしまった場合、たとえば、攪拌対象液が収容された攪拌容器23の底面にノズル2が接触してしまった場合が考えられる。このため、組み合わせ番号「4−2」である場合には、異常検出部335は、攪拌容器23の底面にノズルが接触してしまったことによって本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する。なお、組み合わせ番号「4−2」である場合には、単純な詰まりの場合に該当することもある。
【0111】
つぎに、組み合わせ番号「4−3」である場合について説明する。これは、吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmが液量不足またはノズル2の液面不到達発生の判断基準である閾値As02を上回り、かつ、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが液量不足またはノズル2の液面不到達発生の判断基準である閾値Ag02を下回る場合である。これは、吸引処理および吐出処理の双方において液量不足またはノズル2の液面不到達が発生した場合であると考えられる。この組み合わせ番号「4−3」である場合には、異常検出部335は、吸引処理および吐出処理の双方において液量不足またはノズル2の液面不到達発生によって本攪拌処理は正常に実行されなかったと判断する。
【0112】
なお、前述したように、吐出圧力データにおける積算値の平均値AgmがAg01を上回り吐出処理時においてノズル2の詰まりが発生していた場合は、吸引処理時において既にノズル2が詰まっていることが明らかであるため、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが閾値Ag01を上回る場合には、吸引処理時においてもノズル2詰まりに起因して積算値の平均値Asmが閾値As01を下回ることは明らかである。このため、組み合わせ番号「4−4」である場合、すなわち吸引圧力データにおける積算値の平均値Asmが液量不足またはノズル2の液面不到達発生の判断基準である閾値As02を上回り、かつ、吐出圧力データにおける積算値の平均値Agmが閾値Ag01を上回る場合は発生しないものと考えられる。
【0113】
このように、実施の形態3にかかる攪拌装置301は、圧力測定部6によって測定された吸引圧力波形および吐出圧力波形の双方を用いて、吸引圧力波形または吐出圧力波形の一方のみを用いる場合と比較し、さらに確実に攪拌処理の異常の有無を検出できるとともに攪拌処理の詳細な異常原因を検出することができる。
【0114】
また、実施の形態1〜3にかかる攪拌装置1,201,301においては、圧力測定部6による圧力測定が確実に行えるように、ピストン4bの上下駆動をする速度を設定すればよい。分注装置においては、所定量の液体を精度よく分注できるようにピストンの上下駆動速度が厳密に制御されている。これに対し、攪拌装置1,201,301においては、液体を十分に攪拌できれば足りるため、特に高い分注精度は要求されていない。したがって、攪拌装置1,201,301においては、圧力測定部6による圧力測定ポイントを多く取得するため、ピストン4bの上下駆動速度を、圧力測定部6の測定タイミングに対応させて、分注装置におけるピストンの上下駆動速度よりも遅くするなど、圧力測定部6による圧力測定タイミングに合わせて調整してもよい。この結果、攪拌装置1,201,301における攪拌異常を所定精度で検出することが可能になる。
【0115】
また、実施の形態1〜3にかかる攪拌装置1,201,301においては、ノズル2に加えられる圧力値をもとに攪拌処理の異常を検出していることから、攪拌対象液が圧力測定可能な程度の量であれば攪拌処理の異常を検出可能であるため、少量の攪拌対象液に対しても十分に攪拌処理の異常を検出できる。また、実施の形態1〜3にかかる攪拌装置1,201,301においては、ノズル2に加えられる圧力値を用いて攪拌処理の異常を検出していることから、攪拌対象液が導電性などの特定の性質を備えずとも攪拌対象液の攪拌処理の異常を検出できる。
【0116】
なお、実施の形態1〜3にかかる攪拌装置1,201,301は、血液や尿などの検体を分析する分析装置における攪拌装置として適用可能である。この場合、攪拌装置1,201,301は、分析装置内における血液や尿などの検体を所定の希釈液で希釈する攪拌装置として適用される。具体的に、攪拌装置1,201,301のうち攪拌装置1を適用した分析装置について説明する。
【0117】
図21は、図1に示す攪拌装置1を適用した分析装置の内部構成の一例を示す概略斜視図である。図21に示すように、この分析装置401は、免疫学的凝集反応を用いて被検血液の抗原抗体反応等の免疫学的検査を行う装置であり、サンプルラック搬送部411と、サンプル分注部415と、希釈サンプルラック搬送部417と、希釈液分注部421と、希釈サンプル分注部423と、プレート搬送部425と、試薬分注部429と、試薬格納部431と、測定部433と、プレート回収部435とを備える。
【0118】
サンプルラック搬送部411は、後述する制御部404の制御のもと、ラックフィーダ4111に配列したサンプルラック413を搬送する。サンプルラック413には、サンプル(検体)を収容した複数の容器22が搭載されており、サンプルラック搬送部411は、サンプルラック413を順次移送して容器22を所定のサンプル吸引位置に搬送する。
【0119】
一方、所定の希釈液分注位置において、希釈液の吐出を行う複数のノズル12を備える希釈液分注部421によって、希釈サンプルラック419の攪拌容器23内にそれぞれ所定量の希釈液が分注され、希釈液が分注された各攪拌容器23は、所定のサンプル吐出位置に移送される。
【0120】
サンプル分注部415は、サンプルの吸引および吐出を行うノズル2を備える。サンプル分注部415は、制御部404の制御のもと、サンプル吸引位置に搬送された容器22内のサンプルをノズル2によって吸引し、所定のサンプル吐出位置の各攪拌容器23内に吸引したサンプルを順次吐出して分注を行う。その後、ノズル2による吸引処理および吐出処理によって、分注された検体と希釈液とが攪拌される。
【0121】
希釈サンプル分注部423は、希釈サンプルの吸引および吐出を行う複数のサンプルノズルを備える。この希釈サンプル分注部423は、制御部404の制御のもと、希釈サンプル吸引位置に搬送された希釈サンプルラック419上の各攪拌容器23から各サンプルノズルによってそれぞれ希釈サンプルを吸引し、希釈サンプル吐出位置に移送する。この希釈サンプル吐出位置には、ウェルと呼ばれる複数の反応容器4271がマトリクス状に配設されて構成されるマイクロプレート427が載置されており、希釈サンプル分注部423は、このマイクロプレート427の各反応容器4271内に、各希釈サンプルを吐出して分注を行う。
【0122】
プレート搬送部425は、マイクロプレート427の各反応容器4271内に希釈サンプルおよび試薬を分注し、各反応容器4271内での希釈サンプルおよび試薬の混合液の測定を行うため、制御部404の制御のもと、希釈サンプル吐出位置のマイクロプレート427を移送して各反応容器4271を試薬吐出位置に搬送し、続いて測定位置に搬送する。試薬吐出位置に搬送された反応容器4271には、試薬分注部429によって試薬が分注される。
【0123】
試薬分注部429は、それぞれ試薬の吸引および吐出を行う試薬ノズルを備える。この試薬分注部429は、制御部404の制御のもと、試薬格納部431の各試薬容器4311内の試薬を各試薬ノズルによってそれぞれ吸引して試薬吐出位置に移送し、プレート搬送部425によって試薬吐出位置に搬送されたマイクロプレート427の反応容器4271内に吐出する。試薬格納部431には、サンプルと抗原抗体反応を起こす所定の試薬をそれぞれ収容した複数の試薬容器4311が配列されて収納されている。
【0124】
マイクロプレート427は、希釈サンプル分注部423によって各反応容器4271内に希釈サンプルが分注され、試薬分注部429によって各反応容器4271内に試薬が分注され、必要な反応時間が経過して反応容器4271内のサンプルの抗原抗体反応が完了した後、プレート搬送部425によって測定位置に搬送される。この抗原抗体反応によって、各反応容器4271の底面に凝集反応パターンが形成される。
【0125】
測定部433は、測定位置の上方に設けられて測定位置に搬送されたマイクロプレート427を上方から撮像するCCDカメラ等の撮像部4331と、測定位置に下方に設けられてマイクロプレート427の各反応容器4271に照明光を照射する光源4333とを備え、撮像部4331は、各反応容器4271を透過した光量を受光して各反応容器4271の底面に形成された凝集反応パターンを撮像する。得られた測定結果(画像情報)は制御部404に出力される。なお、一般的に、陽性であるサンプルではサンプルと試薬との凝集が発生し、陰性であるサンプルではサンプルと試薬との凝集が発生しない。
【0126】
プレート回収部435は、測定部433による測定が終了したマイクロプレート427を回収する。回収されたマイクロプレート427は、図示しない洗浄部で洗浄され、再利用される。具体的には、各反応容器4271内の混合液が排出され、洗剤や洗浄水等の洗浄液の吐出および吸引によって洗浄される。なお、検査内容によっては1回の測定終了後にマイクロプレート427を破棄する場合もある。
【0127】
また、分析装置401は、装置を構成する各部への動作タイミングの指示やデータの転送等を行って各部の制御を行い、装置全体の動作を統括的に制御する制御部404を備える。制御部404は、分析結果の他、分析装置401の動作に必要な各種データを保持するメモリを内蔵したマイクロコンピュータ等で構成され、装置内の適所に収められる。この制御部404は、分析部441と接続されており、測定部433による測定結果を分析部441に出力する。分析部441は、測定部433による測定結果をもとに抗原抗体反応を分析し、分析結果を制御部404に出力する。例えば、分析部441は、測定部433によって得られた画像情報を画像処理し、各反応容器4271の底面に形成された凝集反応パターンを検出・判定する。また、制御部404は、サンプル数や分析項目等、分析に必要な情報を入力するためのキーボードやマウス等の入力装置で構成される入力部443や、分析結果画面や警告画面、各種設定入力のための入力画面等を表示するLCDやELD等の表示装置などで構成される出力部445と接続されている。そして、分析装置401は、図1に示す攪拌装置1と同様に希釈液分注部421における攪拌処理の異常を検出する異常検出部35と、異常検出部35における異常検出処理に使用される各種情報を記憶する記憶部36とを備える。
【0128】
このように、分析装置401においては、実施の形態1〜3における攪拌装置1,201,301を備えることによって、正常に攪拌されなかった検体および希釈液の分析処理における使用を防止して分析精度の向上を図ることができる。
【0129】
なお、上記実施の形態で説明した攪拌装置1,201,301および分析装置401は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで攪拌装置および分析装置の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】実施の形態1にかかる攪拌装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】正常攪拌時における吸引圧力と異常攪拌時における吸引圧力との時間依存性を示す図である。
【図3】正常攪拌時における吸引圧力と異常攪拌時における吸引圧力との時間依存性を示す図である。
【図4】図1に示す攪拌装置における攪拌処理の異常判断処理について説明する図である。
【図5】図1に示す攪拌装置における攪拌処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す攪拌異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】正常攪拌時における吸引圧力と異常攪拌時における吸引圧力との時間依存性を示す図である。
【図8】図1に示す攪拌装置における攪拌処理の異常判断処理について説明する図である。
【図9】実施の形態2にかかる攪拌装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】正常攪拌時における吐出圧力と異常攪拌時における吐出圧力との時間依存性を示す図である。
【図11】正常攪拌時における吐出圧力と異常攪拌時における吐出圧力との時間依存性を示す図である。
【図12】図9に示す攪拌装置における攪拌処理の異常判断処理について説明する図である。
【図13】図9に示す攪拌装置における攪拌処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図13に示す攪拌異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】正常攪拌時における吐出圧力と異常攪拌時における吐出圧力との時間依存性を示す図である。
【図16】図9に示す攪拌装置における攪拌処理の異常判断処理について説明する図である。
【図17】実施の形態3にかかる攪拌装置の構成を模式的に示す図である。
【図18】図17に示す攪拌装置における攪拌処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】図18に示す攪拌異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図20】図17に示す異常検出部が参照する判断テーブルを例示した図である。
【図21】実施の形態にかかる攪拌装置を適用した分析装置の内部構成の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0131】
1,201,301 攪拌装置
2 ノズル
3 ノズル移送部
4 シリンジ
4a シリンダ
4b ピストン
5 チューブ
6 圧力測定部
7 ピストン駆動部
8 チューブ
9 電磁弁
10 ポンプ
11 洗浄液タンク
12 ノズル
14 シリンジ
14a シリンダ
14b ピストン
15 チューブ
17 ピストン駆動部
18 チューブ
19 電磁弁
20 ポンプ
21 希釈液タンク
22 容器
23 攪拌容器
30 制御部
34 入力部
35,235,335 異常検出部
36 記憶部
37 出力部
61 圧力センサ
62 信号処理回路
401 分析装置
404 制御部
411 サンプルラック搬送部
415 サンプル分注部
417 希釈サンプルラック搬送部
419 希釈サンプルラック
421 希釈液分注部
423 希釈サンプル分注部
425 プレート搬送部
427 マイクロプレート
429 試薬分注部
431 試薬格納部
433 測定部
435 プレート回収部
441 分析部
443 入力部
445 出力部
4111 ラックフィーダ
4271 反応容器
4311 試薬容器
4331 撮像部
4333 光源
La 希釈液
Sa 検体
Sb 液体
Wa 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置において、
前記液体を吸引または吐出するノズルと、
前記ノズルが前記液体を吸引または吐出するために必要な圧力を発生する圧力発生手段と、
前記圧力発生手段によって発生し、前記ノズルに加えられる圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量をもとに、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力波形のうち所定期間内における各吸引圧力測定値の積算値が、前記予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第1の許容範囲内に納まる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲外にずれる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲上限を上回る場合、液量不足または前記ノズルの液面不到達により前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲下限を下回る場合、前記ノズルの詰まりにより前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする請求項2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置において、
前記液体を吸引または吐出するノズルと、
前記ノズルが前記液体を吸引または吐出するために必要な圧力を発生する圧力発生手段と、
前記圧力発生手段によって発生し、前記ノズルに加えられる圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力変化を示す吐出圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量をもとに、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力波形のうち所定期間内における各吐出圧力測定値の積算値が、前記予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第2の許容範囲内に納まる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲外にずれる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする請求項4に記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲上限を上回る場合、前記ノズルの詰まりにより前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲下限を下回る場合、液量不足または前記ノズルの液面不到達により前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする請求項5に記載の攪拌装置。
【請求項7】
容器内の液体に対する吸引および吐出を繰り返して該液体を攪拌する攪拌装置において、
前記液体を吸引または吐出するノズルと、
前記ノズルが前記液体を吸引または吐出するために必要な圧力を発生する圧力発生手段と、
前記圧力発生手段によって発生し、前記ノズルに加えられる圧力を測定する圧力測定手段と、
前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力変化を示す吸引圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形とのずれ量、および、前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力変化を示す吐出圧力波形と予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形とのずれ量をもとに、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された吸引圧力波形のうち所定期間内における各吸引圧力測定値の積算値が、前記予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第1の許容範囲内に納まる場合であって、前記圧力測定手段によって測定された吐出圧力波形のうち所定期間内における各吐出圧力測定値の積算値が前記予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値をもとに設定された第2の許容範囲内に納まる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたと判断し、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲外にずれる場合、および/または、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲外にずれる場合、前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする請求項7に記載の攪拌装置。
【請求項9】
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲の上限を上回る場合または前記圧力測定手段によって測定された各吸引圧力測定値の積算値が各吸引圧力測定値の積算値が前記第1の許容範囲の下限を下回る場合、および、前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲の上限を上回る場合または前記圧力測定手段によって測定された各吐出圧力測定値の積算値が前記第2の許容範囲の下限を下回る場合のそれぞれの場合の組み合わせに応じて、液量不足、前記ノズルの液面不到達、前記ノズルの詰まり、または、前記ノズルの前記容器の底面接触により前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されなかったと判断することを特徴とする請求項8に記載の攪拌装置。
【請求項10】
前記第1の許容範囲は、前記予め求められた正常攪拌時における吸引圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値、および、当該攪拌装置によって攪拌された前記液体を分注する分注装置における分注精度をもとに設定されることを特徴とする請求項2、3、8または9に記載の攪拌装置。
【請求項11】
前記第2の許容範囲は、前記予め求められた正常攪拌時における吐出圧力波形のうち前記所定期間内における各圧力測定値の積算値、および、当該攪拌装置によって攪拌された前記液体を分注する分注装置における分注精度をもとに設定されることを特徴とする請求項5、6、8または9に記載の攪拌装置。
【請求項12】
前記圧力測定手段は、前記ノズルにおける各吸引処理ごとに前記ノズルに加えられる圧力を測定し、
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吸引処理における吸引圧力測定値の積算値の平均値を演算し、演算した積算値の平均値と第1の許容範囲とを比較して前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断することを特徴とする請求項2、3、8、9または10に記載の攪拌装置。
【請求項13】
前記圧力測定手段は、前記ノズルにおける各吐出処理ごとに前記ノズルに加えられる圧力を測定し、
前記判断手段は、前記圧力測定手段によって測定された各吐出処理における吐出圧力測定値の積算値の平均値を演算し、演算した積算値の平均値と第2の許容範囲とを比較して前記液体に対する攪拌処理が正常に実行されたか否かを判断することを特徴とする請求項5、6、8、9または11に記載の攪拌装置。
【請求項14】
前記所定期間は、前記圧力測定手段によって測定された圧力波形形状が安定する期間であることを特徴とする請求項2、3、5、6、8〜13のいずれか一つに記載の攪拌装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の攪拌装置を備えたことを特徴とする分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2009−198308(P2009−198308A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40177(P2008−40177)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】