支承交換用取付部材
【課題】既設コンクリート桁と新設支承との連結固定が容易で、耐震性能を高めることができる橋梁支承交換方法及びその際用いる支承交換用取付部材の提供。
【解決手段】橋梁支承交換方法において、下部構造4上の既設支承6を撤去する工程と、上部構造である既設コンクリート桁1の側面及び下面の一部をはつり作業により鉄筋14を露出させる工程と、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、露出した前記鉄筋14の内側に突出した補強兼定着部を備える支承交換用取付部材を、前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】橋梁支承交換方法において、下部構造4上の既設支承6を撤去する工程と、上部構造である既設コンクリート桁1の側面及び下面の一部をはつり作業により鉄筋14を露出させる工程と、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、露出した前記鉄筋14の内側に突出した補強兼定着部を備える支承交換用取付部材を、前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架道路橋、橋梁等の既設支承を撤去し、新設の支承に交換する橋梁支承交換方法及びその際用いる支承交換用取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースプレートをアンカーボルトによって下部構造に固定する鋼製あるいは弾性支承装置を、タイプBの鋼製または弾性支承装置に交換する既設支承の交換方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−300897号公報
【非特許文献1】道路橋示方書(V耐震設計編)社団法人日本道路協会、2002年4月10日発行、P.245参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設支承を交換する場合、交換される新設支承には、保有耐力法により耐震性能を高めることが要求される。この要求に対応するためには、新設支承と上部構造である既設桁との連結をより確実にする必要がある。
【0005】
既設桁が鋼製である場合、鋼製既設桁とソールプレートを連結固定する溶接部に肉盛りを形成することにより容易に補強し要求される耐震性能を有するようにすることができるが、既設桁がコンクリート桁の場合、ソールプレートと既設コンクリート桁とはアンカーボルトにより連結固定される。しかし、この連結固定手段では連結固定部の強度を要求される耐震性能まで高めることに困難性があった。
【0006】
本発明は、前記従来技術の持つ課題を解決する、既設コンクリート桁と新設支承との連結固定が容易で、耐震性能を高めることができる橋梁支承交換方法及びその際用いる支承交換用取付部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の橋梁支承交換方法は、前記課題を解決するために、下部構造上の既設支承を撤去する工程と、上部構造である既設コンクリート桁の側面及び下面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去して鉄筋を露出させる工程と、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、かぶりコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口の形成及び連結部材による連結の内少なくともいずれか1つを有する複数の補強兼定着部とを備える支承交換用取付部材を前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し固化させて前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成した複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成し、且つ、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記複数の補強兼定着部の上端隅角部に斜め切欠を形成することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記底板部の両側に固定される保持部に複数の前記補強兼定着部を予め固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記底板部の両側端に保持部を一体に形成し、前記補強兼定着部を前記保持部に固定ねじで固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記補強兼定着部の下部を前記底板部の両側に形成した嵌合溝に嵌合して固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記補強兼定着部の下部に雄ねじを形成し前記底板部の両側に形成した雌ねじ孔に螺着して固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記補強兼定着部を前記底板部の両側に下側から固定ねじにより固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
下部構造上の既設支承を撤去する工程と、上部構造である既設コンクリート桁の側面及び下面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去して鉄筋を露出させる工程と、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、かぶりコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口の形成及び連結部材による連結の内少なくともいずれか1つを有する複数の補強兼定着部とを備える支承交換用取付部材を前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し固化させて前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、を含む構成により、補強兼定着部材に開口が形成されているので固化性充填材の定着性を向上させ、且つ、複数の補強兼定着部が連結部材で連結されていることでより固化性充填材の定着性を向上させ、コンクリート桁と支承交換用取付部材とを強固に一体化することができる。その結果、コンクリート桁の支承取付部の強度が向上し、新設支承との連結固定も底板部が鋼製であるため溶接、ボルト固定等の高強度の連結固定が可能となり、耐震性能を向上することが可能となる。
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成した複数の補強兼定着部と、を備える構成により、補強兼定着部の開口が固化性充填材の流動性を確保すると共に、固化性充填材との定着性を向上させ、コンクリート桁と支承交換用取付部材とを強固に一体化し、新設支承との高強度に連結固定が可能となるため耐震性能を向上することが可能となる。
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備える構成により、複数の補強兼定着部の連結部材による連結で、固化性充填材との定着性が向上し、コンクリート桁の地震時の変位を確実に支承交換用取付部材を介して新設支承に伝達することが可能になる。
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成し、且つ、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備える構成により、開口の形成と連結部材による連結で補強兼定着部の固化性充填材との定着性がより向上し、コンクリート桁と支承交換用取付部材との一体化がより強固にすることが可能になる。
複数の補強兼定着部の上端隅角部に斜め切欠を形成する構成により、コンクリート桁の変位による補強兼定着部への応力集中を緩和することが可能となる。
底板部の両側に固定される保持部に複数の補強兼定着部を予め固定する構成により、底板部への補強兼定着部の取付作業を容易にすることが可能となる。
底板部の両側端に保持部を一体に形成し、補強兼定着部を保持部に固定ねじで固定する構成により、底板部の橋軸直角方向の寸法を小さくし、底板部の両端に水が滞留する水平部分をなくすことが可能となる。
補強兼定着部の下部を底板部の両側に埋め込み固定する構成により、補強兼定着部の底板部への固定を容易にすることが可能になる。
補強兼定着部の下部に雄ねじを形成し底板部の両側に形成した雌ねじ孔に螺着により固定する構成により、補強兼定着部の溶接による熱影響を排除して底板部への固定を容易にすることが可能になる。
補強兼定着部を底板部の両側の下側から固定ねじにより固定する鋼製により、ナットで締め付けるので所定トルクの締結が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は交換前橋梁支承の一実施形態を示す図である。
【0011】
上部構造の既設コンクリート桁1は、その下部にソールプレート2がアンカーボルト3により固定されている。橋脚等のコンクリート製の下部構造4上にアンカーボルト5により既設支承6が固定されている。既設支承6は、ベースプレート8と弾性支承体10により構成される。既設支承6の弾性支承体10上にソールプレート2が載置され、ベースプレート8に一端を固定されたサイドブロック7の係合部がソールプレート2と係合し上揚力止めの機能を果たす。
【0012】
図1に示される状態から、新設支承に交換するため、既設支承6とソールプレート2を係合しているサイドブロックの固定を解除し、下部構造4をはつり作業により既設支承6を固定しているアンカーボルト5が露出するまで除去し、アンカーボルト5を切断し、既設支承6を撤去する。
【0013】
その後、既設コンクリート桁1の支承取付部の側面及び底面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて内部の鉄筋14が露出するように破砕除去する。その後、アンカーボルト3がコンクリート桁1の底面から下に突き出さないように切断し、ソールプレート2を撤去する。図2は、はつり作業が終了し、アンカーボルト3を切断し、ソールプレート2を撤去した状態の既設コンクリート桁1を示す図である。
【0014】
図3は、図2の状態の既設コンクリート桁1の外側に配置される支承交換用取付部材24の一実施形態を示す図である。図3に示される実施形態の支承交換用取付部材24は、鋼製の底板部25と底板部の両側から垂直に立設し橋軸方向に平行に延びる一対の保持部23を有する。保持部23間の内側間隔は、はつり作業前の既設コンクリート桁1の側壁の間の間隔とほぼ同じにする。この実施形態では、保持部23は、水平板部23bと溶接等の連結手段により断面L字形に形成する。また、水平板部23bと一体に形成してL字形としても良い。図3に示す実施形態では、水平板部23と底板部25を複数のボルト23aで連結することにより保持部23を底板部25に固定する。
【0015】
図3に示す実施形態では、保持部23に内側に補強兼定着部22が橋軸方向に所定間隔で複数溶接により固定される。補強兼定着部22の一部は、図2に示されるはつり作業後の既設コンクリート桁1の外側に支承交換用取付部材24を配置した状態で、鉄筋14の内側に位置する突出長さを有する。そのため、補強兼定着部22の配置は鉄筋14と干渉しない位置とする。補強兼定着部22の配置数は適宜設計する。保持部23の両側端には、外側方向に向く補強リブ26が溶接により固定されて配置される。保持部23及び補強兼定着部22は鋼材により形成される。
【0016】
補強兼定着部22の上端隅角部に斜め切欠22Bを形成する。補強兼定着部22の上端隅角部に斜め切欠22Bは、地震時のコンクリート桁の変位による応力が充填コンクリートを介して補強兼定着部22に伝達され際の応力集中を緩和する機能を有する。また、補強兼定着部22には開口22Aを形成する。開口22Aの形状は円形、矩形、楕円形等どのような形状でも良い。開口22Aの大きさは、コンクリート桁1と支承交換用取付部材24との狭い空間に無収縮モルタル等の固化性充填材を充填する際の固化性充填材の流動性の確保と、固化性充填材が固化した際の補強兼定着部22と固化性充填材との定着性を考慮して決定する。開口22Aを形成することで充填コンクリートと補強兼定着部22の定着性が向上し、地震時のコンクリート桁の変位による応力が確実に充填コンクリートを介して支承交換用取付部材24に伝達される。
【0017】
図4は、図3の一部拡大図である。支承交換用取付部材24がはつり後のコンクリート桁1の外側に配置した状態で、補強兼定着部22の一部は露出した鉄筋14の内側に位置する。露出した鉄筋14の外側の位置で複数の補強兼定着部22を連結部材27で連結する。図4に示される実施形態では、補強兼定着部22に連結孔22Cをし、連結孔22Cに外周の雄ねじを形成した鉄筋等の連結部材27を挿入し、ナット28で固定している。しかし、複数の補強兼定着部22を連結する手段としては、プレート状の連結部材27を溶接して連結しても良い。複数の補強兼定着部22を鉄筋14の外側の位置で連結部材27で連結することにより、補強兼定着部22と充填コンクリートとの定着性が向上すると共に、補強兼定着部22の強度を向上させ、支承交換用取付部材24とコンクリート桁1とが強固に一体化し、地震時のコンクリート桁の変位による応力が確実に充填コンクリートを介して支承交換用取付部材24に伝達される。補強兼定着部22に開口22Aを形成する構成と、複数の補強兼定着部22を連結部材27で連結する構成は、両方の構成を備えても良いし、いずれか一方の構成だけを備えるようにしても良い。
【0018】
支承交換用取付部材の底板部25は、固化性充填材を充填する際の型枠の機能と、コンクリート桁1と一体化された後、新設支承と連結するための支承取付の機能を有し、鋼製であるため、溶接、ボルト固定等の高強度の連結固定が可能となり、耐震性能を向上することが可能となる。保持部23は、補強兼定着部22を固定し補強する機能を有する。後述するが、補強兼定着部22の底板部25への取付方法の相違により、保持部23を配置しない場合がある。補強兼定着部22は、はつり後のコンクリート桁1と支承交換用取付部材24を強固に一体化する機能を有し、さらに、地震時のコンクリート桁1の変位による応力を充填コンクリートを介して確実に新設支承に伝達する機能を有する。
【0019】
支承交換用取付部材24を図2に示されるはつり後の既設コンクリート桁1の外側に位置決めして配置する。型枠を設置後、無収縮モルタル等の固化性充填材34を充填し固化させ、既設コンクリート桁1と支承交換用取付部材24を一体化し、支承交換用のコンクリート桁1を形成する。支承交換用のコンクリート桁1は、支承交換用取付部材24の補強兼定着部22が固化性充填材34との定着性を向上させ、支承交換用のコンクリート製桁1を高強度に補強する。
【0020】
図5〜図9は、補強兼定着部22の底板部25へ取付手段の実施形態を示す図である。
【0021】
図5は、図3に示される実施形態の支承交換用取付部材24をはつり後のコンクリート桁1に配置した状態の一部拡大図である。補強兼定着部22は、底板部25にボルト23aにより固定された断面L字形の保持部23に予め溶接により固定する。複数の補強兼定着部22を溶接で固定した保持部23を底板部25の両側に配置し、保持部23の水平部23bからボルト23aで固定される。複数の補強兼定着部22が予め保持部23に溶接で固定されているので底板部25への取付けが容易になる。
【0022】
図6は、補強兼定着部22の底板部25へ取付けのための他の実施形態を示す図である。この実施形態では、底板部25の両側端部から直角に立ち上がる保持部23に折り曲げ加工又は溶接により予め一体に形成する。保持部23の内側に補強兼定着部22を配置し、保持部23の外側から固定ボルト29で固定する。この実施形態では、この実施形態では、底板部25の両端部に水平部がないため水の滞留を防止することが可能となると共に、底板25の橋軸直角方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0023】
図7は、補強兼定着部22の底板25への取付けのための他の実施形態を示す。この実施形態では、底板部25の両端に補強兼定着部22の下部が嵌合する嵌合溝を形成し、補強兼定着部22の下部を嵌合溝に嵌合し、溶接32により固定する。補強兼定着部22を直接底板部25に取付けるため保持部23を必要としない。溶接部32をテーパとして水の滞留を防止する。
【0024】
図8は、補強兼定着部22の底板25への取付けのための他の実施形態を示す。この実施形態では、補強兼定着部22の下部に雄ねじ22Dを形成する。底板部25に雌ねじ孔を形成し、補強兼定着部22の雄ねじ22Dを雌ねじ孔に螺着して補強兼定着部22を固定する。補強兼定着部22を直接底板部25に取付けるため保持部23を必要としない。また、取付けに溶接を用いないので、補強兼定着部の溶接による熱影響を排除して底板部への固定を容易にすることが可能になる。
【0025】
図9は、補強兼定着部22の底板25への固定のための他の実施形態を示す。この実施形態では、補強兼定着部22の下部に雌ねじ孔を形成する。底板部25に固定ボルト挿通孔を形成し、固定ボルト31を底板部25の下側から挿入し、固定ボルト31を補強兼定着部22の雌ねじ孔に螺着して固定する。補強兼定着部22の雄ねじ22Dを雌ねじ孔に螺着して補強兼定着部22を固定する。補強兼定着部22を直接底板部25に取付けるため保持部23を必要としない。また、取付けに溶接を用いないので、補強兼定着部の溶接による熱影響を排除して底板部への固定を容易にすることが可能になる。また、ナットで締め付けるので所定トルクの締結が可能となる。
【0026】
橋梁支承交換方法の工程を図10(a)(b)(c)(d)、図11(a)(b)(c)(d)、図12(a)(b)(c)(d)、図13(a)(b)により説明する。
【0027】
図10(a)に示される既設支承6の交換方法の第1の工程は、ベースプレート8にボルトにより連結されているサイドブロック7を取り外す。サイドブロック7を取り外すことにより、既設支承6とソールプレート2が固定されたコンクリート桁1との係合が解除される。
【0028】
図10(b)に示される第2工程では、ベースプレート8の下部の下部構造4をはつり作業により除去し、ベースプレート8下のアンカーボルト5が露出するようにする。
【0029】
図10(c)に示される第3工程では、ベースプレート8下のアンカーボルト5を切断する。アンカーボルト5を切断することによりベースプレート8と弾性支承体10からなる既設支承6は、上下構造1、4に拘束されない状態になる。
【0030】
図10(d)に示される第4工程では、既設支承6を撤去する。
【0031】
図11(a)に示される第5工程では、既設コンクリート桁1の側面及び下面の一部を、はつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて鉄筋14が露出するまで除去する。
【0032】
図11(b)に示される第6工程では、アンカーボルト3により固定されているソールプレート2の固定を解除し、撤去する。
【0033】
図11(c)に示される第7工程では、はつり作業により凹部の形成された下部構造4に、新設アンカーボルト用孔17を穿孔する。新設アンカーボルト用孔17は、下部構造4の鉄筋が露出する程度の深さとする。
【0034】
図11(d)に示される第8工程では、新設アンカーボルト用孔17に新設アンカーボルト20を配置する。新設アンカーボルト20は短尺なものが用いられ、支持力を得るため、その下端部を露出した鉄筋に溶接等で固定する。
【0035】
図12(a)に示される第9工程では、新設アンカーボルト20に新設ベースプレート18、弾性層36、上部鋼板35からなる新設支承21と、せん断キー37により連結された新設ソールプレート2Aを設置する。
【0036】
図12(b)に示される第10工程では、はつり作業により鉄筋14が露出する状態の既設コンクリート桁の外側に図3に示される支承交換用取付部材24を位置決めして配置する。
【0037】
図12(c)に示される第11工程では、新設支承21に連結された新設ソールプレート2Aと支承交換用取付部材24の鋼製の底板部25とを溶接又はボルト止め等の固定手段で固定する。
【0038】
図12(d)に示される第12工程では、はつり作業により鉄筋が露出する状態の既設コンクリート桁と支承交換用取付部材24に型枠を組立て、無収縮モルタル等の固化性充填材を打設する。
【0039】
図13(a)に示される第13工程では、はつり作業により凹部が形成された下部構造4に型枠を組立て、無収縮モルタル等の固化性充填材を打設する。
【0040】
図13(b)に示される第14工程では、固化性充填材の固化後型枠を取り外し、新設支承21に交換される。
【符号の説明】
【0041】
1:コンクリート桁、1A:コンクリート桁、2:ソールプレート、2A:新設ソールプレート、3:アンカーボルト、4:下部構造、5:アンカーボルト、6:既設支承、7:サイドブロック、8:ベースプレート、10:弾性支承体、14:鉄筋 、17:新設アンカーボルト用孔、18:新設ベースプレート、20:新設アンカーボルト、21:新設支承、22:補強兼定着部、22A:開口、22B:斜め切欠、22C:連結孔、22D:雄ねじ、23:保持部、23a:ボルト、23b:水平板部、24:支承交換用取付部材、25:底板部、26:補強リブ、27:連結部材、28:ナット、29:固定ボルト、35:上部鋼板、36:弾性層、37:せん断キー、38:ナット、
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架道路橋、橋梁等の既設支承を撤去し、新設の支承に交換する橋梁支承交換方法及びその際用いる支承交換用取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースプレートをアンカーボルトによって下部構造に固定する鋼製あるいは弾性支承装置を、タイプBの鋼製または弾性支承装置に交換する既設支承の交換方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−300897号公報
【非特許文献1】道路橋示方書(V耐震設計編)社団法人日本道路協会、2002年4月10日発行、P.245参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設支承を交換する場合、交換される新設支承には、保有耐力法により耐震性能を高めることが要求される。この要求に対応するためには、新設支承と上部構造である既設桁との連結をより確実にする必要がある。
【0005】
既設桁が鋼製である場合、鋼製既設桁とソールプレートを連結固定する溶接部に肉盛りを形成することにより容易に補強し要求される耐震性能を有するようにすることができるが、既設桁がコンクリート桁の場合、ソールプレートと既設コンクリート桁とはアンカーボルトにより連結固定される。しかし、この連結固定手段では連結固定部の強度を要求される耐震性能まで高めることに困難性があった。
【0006】
本発明は、前記従来技術の持つ課題を解決する、既設コンクリート桁と新設支承との連結固定が容易で、耐震性能を高めることができる橋梁支承交換方法及びその際用いる支承交換用取付部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の橋梁支承交換方法は、前記課題を解決するために、下部構造上の既設支承を撤去する工程と、上部構造である既設コンクリート桁の側面及び下面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去して鉄筋を露出させる工程と、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、かぶりコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口の形成及び連結部材による連結の内少なくともいずれか1つを有する複数の補強兼定着部とを備える支承交換用取付部材を前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し固化させて前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成した複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成し、且つ、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記複数の補強兼定着部の上端隅角部に斜め切欠を形成することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記底板部の両側に固定される保持部に複数の前記補強兼定着部を予め固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記底板部の両側端に保持部を一体に形成し、前記補強兼定着部を前記保持部に固定ねじで固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記補強兼定着部の下部を前記底板部の両側に形成した嵌合溝に嵌合して固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記補強兼定着部の下部に雄ねじを形成し前記底板部の両側に形成した雌ねじ孔に螺着して固定することを特徴とする。
また、本発明の支承交換用取付部材は、前記補強兼定着部を前記底板部の両側に下側から固定ねじにより固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
下部構造上の既設支承を撤去する工程と、上部構造である既設コンクリート桁の側面及び下面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去して鉄筋を露出させる工程と、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、かぶりコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口の形成及び連結部材による連結の内少なくともいずれか1つを有する複数の補強兼定着部とを備える支承交換用取付部材を前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し固化させて前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、を含む構成により、補強兼定着部材に開口が形成されているので固化性充填材の定着性を向上させ、且つ、複数の補強兼定着部が連結部材で連結されていることでより固化性充填材の定着性を向上させ、コンクリート桁と支承交換用取付部材とを強固に一体化することができる。その結果、コンクリート桁の支承取付部の強度が向上し、新設支承との連結固定も底板部が鋼製であるため溶接、ボルト固定等の高強度の連結固定が可能となり、耐震性能を向上することが可能となる。
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成した複数の補強兼定着部と、を備える構成により、補強兼定着部の開口が固化性充填材の流動性を確保すると共に、固化性充填材との定着性を向上させ、コンクリート桁と支承交換用取付部材とを強固に一体化し、新設支承との高強度に連結固定が可能となるため耐震性能を向上することが可能となる。
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備える構成により、複数の補強兼定着部の連結部材による連結で、固化性充填材との定着性が向上し、コンクリート桁の地震時の変位を確実に支承交換用取付部材を介して新設支承に伝達することが可能になる。
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成し、且つ、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備える構成により、開口の形成と連結部材による連結で補強兼定着部の固化性充填材との定着性がより向上し、コンクリート桁と支承交換用取付部材との一体化がより強固にすることが可能になる。
複数の補強兼定着部の上端隅角部に斜め切欠を形成する構成により、コンクリート桁の変位による補強兼定着部への応力集中を緩和することが可能となる。
底板部の両側に固定される保持部に複数の補強兼定着部を予め固定する構成により、底板部への補強兼定着部の取付作業を容易にすることが可能となる。
底板部の両側端に保持部を一体に形成し、補強兼定着部を保持部に固定ねじで固定する構成により、底板部の橋軸直角方向の寸法を小さくし、底板部の両端に水が滞留する水平部分をなくすことが可能となる。
補強兼定着部の下部を底板部の両側に埋め込み固定する構成により、補強兼定着部の底板部への固定を容易にすることが可能になる。
補強兼定着部の下部に雄ねじを形成し底板部の両側に形成した雌ねじ孔に螺着により固定する構成により、補強兼定着部の溶接による熱影響を排除して底板部への固定を容易にすることが可能になる。
補強兼定着部を底板部の両側の下側から固定ねじにより固定する鋼製により、ナットで締め付けるので所定トルクの締結が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は交換前橋梁支承の一実施形態を示す図である。
【0011】
上部構造の既設コンクリート桁1は、その下部にソールプレート2がアンカーボルト3により固定されている。橋脚等のコンクリート製の下部構造4上にアンカーボルト5により既設支承6が固定されている。既設支承6は、ベースプレート8と弾性支承体10により構成される。既設支承6の弾性支承体10上にソールプレート2が載置され、ベースプレート8に一端を固定されたサイドブロック7の係合部がソールプレート2と係合し上揚力止めの機能を果たす。
【0012】
図1に示される状態から、新設支承に交換するため、既設支承6とソールプレート2を係合しているサイドブロックの固定を解除し、下部構造4をはつり作業により既設支承6を固定しているアンカーボルト5が露出するまで除去し、アンカーボルト5を切断し、既設支承6を撤去する。
【0013】
その後、既設コンクリート桁1の支承取付部の側面及び底面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて内部の鉄筋14が露出するように破砕除去する。その後、アンカーボルト3がコンクリート桁1の底面から下に突き出さないように切断し、ソールプレート2を撤去する。図2は、はつり作業が終了し、アンカーボルト3を切断し、ソールプレート2を撤去した状態の既設コンクリート桁1を示す図である。
【0014】
図3は、図2の状態の既設コンクリート桁1の外側に配置される支承交換用取付部材24の一実施形態を示す図である。図3に示される実施形態の支承交換用取付部材24は、鋼製の底板部25と底板部の両側から垂直に立設し橋軸方向に平行に延びる一対の保持部23を有する。保持部23間の内側間隔は、はつり作業前の既設コンクリート桁1の側壁の間の間隔とほぼ同じにする。この実施形態では、保持部23は、水平板部23bと溶接等の連結手段により断面L字形に形成する。また、水平板部23bと一体に形成してL字形としても良い。図3に示す実施形態では、水平板部23と底板部25を複数のボルト23aで連結することにより保持部23を底板部25に固定する。
【0015】
図3に示す実施形態では、保持部23に内側に補強兼定着部22が橋軸方向に所定間隔で複数溶接により固定される。補強兼定着部22の一部は、図2に示されるはつり作業後の既設コンクリート桁1の外側に支承交換用取付部材24を配置した状態で、鉄筋14の内側に位置する突出長さを有する。そのため、補強兼定着部22の配置は鉄筋14と干渉しない位置とする。補強兼定着部22の配置数は適宜設計する。保持部23の両側端には、外側方向に向く補強リブ26が溶接により固定されて配置される。保持部23及び補強兼定着部22は鋼材により形成される。
【0016】
補強兼定着部22の上端隅角部に斜め切欠22Bを形成する。補強兼定着部22の上端隅角部に斜め切欠22Bは、地震時のコンクリート桁の変位による応力が充填コンクリートを介して補強兼定着部22に伝達され際の応力集中を緩和する機能を有する。また、補強兼定着部22には開口22Aを形成する。開口22Aの形状は円形、矩形、楕円形等どのような形状でも良い。開口22Aの大きさは、コンクリート桁1と支承交換用取付部材24との狭い空間に無収縮モルタル等の固化性充填材を充填する際の固化性充填材の流動性の確保と、固化性充填材が固化した際の補強兼定着部22と固化性充填材との定着性を考慮して決定する。開口22Aを形成することで充填コンクリートと補強兼定着部22の定着性が向上し、地震時のコンクリート桁の変位による応力が確実に充填コンクリートを介して支承交換用取付部材24に伝達される。
【0017】
図4は、図3の一部拡大図である。支承交換用取付部材24がはつり後のコンクリート桁1の外側に配置した状態で、補強兼定着部22の一部は露出した鉄筋14の内側に位置する。露出した鉄筋14の外側の位置で複数の補強兼定着部22を連結部材27で連結する。図4に示される実施形態では、補強兼定着部22に連結孔22Cをし、連結孔22Cに外周の雄ねじを形成した鉄筋等の連結部材27を挿入し、ナット28で固定している。しかし、複数の補強兼定着部22を連結する手段としては、プレート状の連結部材27を溶接して連結しても良い。複数の補強兼定着部22を鉄筋14の外側の位置で連結部材27で連結することにより、補強兼定着部22と充填コンクリートとの定着性が向上すると共に、補強兼定着部22の強度を向上させ、支承交換用取付部材24とコンクリート桁1とが強固に一体化し、地震時のコンクリート桁の変位による応力が確実に充填コンクリートを介して支承交換用取付部材24に伝達される。補強兼定着部22に開口22Aを形成する構成と、複数の補強兼定着部22を連結部材27で連結する構成は、両方の構成を備えても良いし、いずれか一方の構成だけを備えるようにしても良い。
【0018】
支承交換用取付部材の底板部25は、固化性充填材を充填する際の型枠の機能と、コンクリート桁1と一体化された後、新設支承と連結するための支承取付の機能を有し、鋼製であるため、溶接、ボルト固定等の高強度の連結固定が可能となり、耐震性能を向上することが可能となる。保持部23は、補強兼定着部22を固定し補強する機能を有する。後述するが、補強兼定着部22の底板部25への取付方法の相違により、保持部23を配置しない場合がある。補強兼定着部22は、はつり後のコンクリート桁1と支承交換用取付部材24を強固に一体化する機能を有し、さらに、地震時のコンクリート桁1の変位による応力を充填コンクリートを介して確実に新設支承に伝達する機能を有する。
【0019】
支承交換用取付部材24を図2に示されるはつり後の既設コンクリート桁1の外側に位置決めして配置する。型枠を設置後、無収縮モルタル等の固化性充填材34を充填し固化させ、既設コンクリート桁1と支承交換用取付部材24を一体化し、支承交換用のコンクリート桁1を形成する。支承交換用のコンクリート桁1は、支承交換用取付部材24の補強兼定着部22が固化性充填材34との定着性を向上させ、支承交換用のコンクリート製桁1を高強度に補強する。
【0020】
図5〜図9は、補強兼定着部22の底板部25へ取付手段の実施形態を示す図である。
【0021】
図5は、図3に示される実施形態の支承交換用取付部材24をはつり後のコンクリート桁1に配置した状態の一部拡大図である。補強兼定着部22は、底板部25にボルト23aにより固定された断面L字形の保持部23に予め溶接により固定する。複数の補強兼定着部22を溶接で固定した保持部23を底板部25の両側に配置し、保持部23の水平部23bからボルト23aで固定される。複数の補強兼定着部22が予め保持部23に溶接で固定されているので底板部25への取付けが容易になる。
【0022】
図6は、補強兼定着部22の底板部25へ取付けのための他の実施形態を示す図である。この実施形態では、底板部25の両側端部から直角に立ち上がる保持部23に折り曲げ加工又は溶接により予め一体に形成する。保持部23の内側に補強兼定着部22を配置し、保持部23の外側から固定ボルト29で固定する。この実施形態では、この実施形態では、底板部25の両端部に水平部がないため水の滞留を防止することが可能となると共に、底板25の橋軸直角方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0023】
図7は、補強兼定着部22の底板25への取付けのための他の実施形態を示す。この実施形態では、底板部25の両端に補強兼定着部22の下部が嵌合する嵌合溝を形成し、補強兼定着部22の下部を嵌合溝に嵌合し、溶接32により固定する。補強兼定着部22を直接底板部25に取付けるため保持部23を必要としない。溶接部32をテーパとして水の滞留を防止する。
【0024】
図8は、補強兼定着部22の底板25への取付けのための他の実施形態を示す。この実施形態では、補強兼定着部22の下部に雄ねじ22Dを形成する。底板部25に雌ねじ孔を形成し、補強兼定着部22の雄ねじ22Dを雌ねじ孔に螺着して補強兼定着部22を固定する。補強兼定着部22を直接底板部25に取付けるため保持部23を必要としない。また、取付けに溶接を用いないので、補強兼定着部の溶接による熱影響を排除して底板部への固定を容易にすることが可能になる。
【0025】
図9は、補強兼定着部22の底板25への固定のための他の実施形態を示す。この実施形態では、補強兼定着部22の下部に雌ねじ孔を形成する。底板部25に固定ボルト挿通孔を形成し、固定ボルト31を底板部25の下側から挿入し、固定ボルト31を補強兼定着部22の雌ねじ孔に螺着して固定する。補強兼定着部22の雄ねじ22Dを雌ねじ孔に螺着して補強兼定着部22を固定する。補強兼定着部22を直接底板部25に取付けるため保持部23を必要としない。また、取付けに溶接を用いないので、補強兼定着部の溶接による熱影響を排除して底板部への固定を容易にすることが可能になる。また、ナットで締め付けるので所定トルクの締結が可能となる。
【0026】
橋梁支承交換方法の工程を図10(a)(b)(c)(d)、図11(a)(b)(c)(d)、図12(a)(b)(c)(d)、図13(a)(b)により説明する。
【0027】
図10(a)に示される既設支承6の交換方法の第1の工程は、ベースプレート8にボルトにより連結されているサイドブロック7を取り外す。サイドブロック7を取り外すことにより、既設支承6とソールプレート2が固定されたコンクリート桁1との係合が解除される。
【0028】
図10(b)に示される第2工程では、ベースプレート8の下部の下部構造4をはつり作業により除去し、ベースプレート8下のアンカーボルト5が露出するようにする。
【0029】
図10(c)に示される第3工程では、ベースプレート8下のアンカーボルト5を切断する。アンカーボルト5を切断することによりベースプレート8と弾性支承体10からなる既設支承6は、上下構造1、4に拘束されない状態になる。
【0030】
図10(d)に示される第4工程では、既設支承6を撤去する。
【0031】
図11(a)に示される第5工程では、既設コンクリート桁1の側面及び下面の一部を、はつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて鉄筋14が露出するまで除去する。
【0032】
図11(b)に示される第6工程では、アンカーボルト3により固定されているソールプレート2の固定を解除し、撤去する。
【0033】
図11(c)に示される第7工程では、はつり作業により凹部の形成された下部構造4に、新設アンカーボルト用孔17を穿孔する。新設アンカーボルト用孔17は、下部構造4の鉄筋が露出する程度の深さとする。
【0034】
図11(d)に示される第8工程では、新設アンカーボルト用孔17に新設アンカーボルト20を配置する。新設アンカーボルト20は短尺なものが用いられ、支持力を得るため、その下端部を露出した鉄筋に溶接等で固定する。
【0035】
図12(a)に示される第9工程では、新設アンカーボルト20に新設ベースプレート18、弾性層36、上部鋼板35からなる新設支承21と、せん断キー37により連結された新設ソールプレート2Aを設置する。
【0036】
図12(b)に示される第10工程では、はつり作業により鉄筋14が露出する状態の既設コンクリート桁の外側に図3に示される支承交換用取付部材24を位置決めして配置する。
【0037】
図12(c)に示される第11工程では、新設支承21に連結された新設ソールプレート2Aと支承交換用取付部材24の鋼製の底板部25とを溶接又はボルト止め等の固定手段で固定する。
【0038】
図12(d)に示される第12工程では、はつり作業により鉄筋が露出する状態の既設コンクリート桁と支承交換用取付部材24に型枠を組立て、無収縮モルタル等の固化性充填材を打設する。
【0039】
図13(a)に示される第13工程では、はつり作業により凹部が形成された下部構造4に型枠を組立て、無収縮モルタル等の固化性充填材を打設する。
【0040】
図13(b)に示される第14工程では、固化性充填材の固化後型枠を取り外し、新設支承21に交換される。
【符号の説明】
【0041】
1:コンクリート桁、1A:コンクリート桁、2:ソールプレート、2A:新設ソールプレート、3:アンカーボルト、4:下部構造、5:アンカーボルト、6:既設支承、7:サイドブロック、8:ベースプレート、10:弾性支承体、14:鉄筋 、17:新設アンカーボルト用孔、18:新設ベースプレート、20:新設アンカーボルト、21:新設支承、22:補強兼定着部、22A:開口、22B:斜め切欠、22C:連結孔、22D:雄ねじ、23:保持部、23a:ボルト、23b:水平板部、24:支承交換用取付部材、25:底板部、26:補強リブ、27:連結部材、28:ナット、29:固定ボルト、35:上部鋼板、36:弾性層、37:せん断キー、38:ナット、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造上の既設支承を撤去する工程と、
上部構造である既設コンクリート桁の側面及び下面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去して鉄筋を露出させる工程と、
鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、かぶりコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口の形成及び連結部材による連結の内少なくともいずれか1つを有する複数の補強兼定着部とを備える支承交換用取付部材を前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、
前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し固化させて前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、
前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、
を含むことを特徴とする橋梁支承交換方法。
【請求項2】
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成した複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする支承交換用取付部材。
【請求項3】
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする支承交換用取付部材。
【請求項4】
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成し、かつ、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする支承交換用取付部材。
【請求項5】
前記複数の補強兼定着部の上端隅角部に斜め切欠を形成することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項6】
前記底板部の両側に固定される保持部に複数の前記補強兼定着部を予め固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項7】
前記底板部の両側端に保持部を一体に形成し、前記補強兼定着部を前記保持部に固定ねじで固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項8】
前記補強兼定着部の下部を前記底板部の両側に形成した嵌合溝に嵌合して固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項9】
前記補強兼定着部の下部に雄ねじを形成し前記底板部の両側に形成した雌ねじ孔に螺着して固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項10】
前記補強兼定着部の下部を前記底板部の両側の下側から固定ねじにより固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項1】
下部構造上の既設支承を撤去する工程と、
上部構造である既設コンクリート桁の側面及び下面の一部をはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去して鉄筋を露出させる工程と、
鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔おいて配置され、かぶりコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口の形成及び連結部材による連結の内少なくともいずれか1つを有する複数の補強兼定着部とを備える支承交換用取付部材を前記コンクリート桁の外側に配置する工程と、
前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材との間に型枠を配置し固化性充填材を充填し固化させて前記コンクリート桁と前記支承交換用取付部材を一体化する工程と、
前記下部構造に配置した新設支承を前記支承交換用取付部材の底板部に固定する工程と、
を含むことを特徴とする橋梁支承交換方法。
【請求項2】
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成した複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする支承交換用取付部材。
【請求項3】
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする支承交換用取付部材。
【請求項4】
側面及び底面の一部がはつり作業によりかぶりコンクリートの厚さを越えて除去され鉄筋が露出したコンクリート桁の外側に固化性充填材の固化により一体化される支承交換用取付部材であって、鋼製の底板部と、前記底板部の両側に橋軸方向に所定間隔をおいて配置され、その一部がかぶるコンクリートの厚さを越えて露出した鉄筋の内側に突出し、開口を形成し、かつ、露出した鉄筋の外側で連結部材により連結された複数の補強兼定着部と、を備えることを特徴とする支承交換用取付部材。
【請求項5】
前記複数の補強兼定着部の上端隅角部に斜め切欠を形成することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項6】
前記底板部の両側に固定される保持部に複数の前記補強兼定着部を予め固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項7】
前記底板部の両側端に保持部を一体に形成し、前記補強兼定着部を前記保持部に固定ねじで固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項8】
前記補強兼定着部の下部を前記底板部の両側に形成した嵌合溝に嵌合して固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項9】
前記補強兼定着部の下部に雄ねじを形成し前記底板部の両側に形成した雌ねじ孔に螺着して固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【請求項10】
前記補強兼定着部の下部を前記底板部の両側の下側から固定ねじにより固定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の支承交換用取付部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−252368(P2011−252368A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128626(P2010−128626)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【特許番号】特許第4587238号(P4587238)
【特許公報発行日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(391051256)株式会社美和テック (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【特許番号】特許第4587238号(P4587238)
【特許公報発行日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(391051256)株式会社美和テック (29)
【Fターム(参考)】
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