説明

支承装置

【課題】機能を容易に復旧することが出来る。
【解決手段】上沓11と、下沓12と、上沓11と下沓12との間に配設される弾性体13と、弾性体13を囲繞する拘束体16とを備える。拘束体16は固定ボルト17によって上沓11に固定されている。拘束体16には固定ボルト17のネジ部17eが締め付けられるネジ穴17dと予備ネジ穴26が形成され、上沓11にはネジ穴17dに対応した貫通孔17bが形成されている。拘束体16は、固定ボルト17のネジ部17eが貫通孔17bに挿通されネジ穴17dに締め付けられることで上沓11に固定される。固定ボルト17が破断した場合、拘束体16は、新たな固定ボルト17が貫通孔17bに挿通され予備ネジ穴26に締め付けられることで、その機能が復旧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらが加硫接着によって相互に接着されて構成されたゴム支承がある(特許文献1参照)。ゴム支承では、ゴムの変位を拘束することで、鉛直バネ剛性を高める工夫や回転追従性能を向上させる工夫がなされている。例えば、ゴム支承では、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらを加硫接着することによって、ゴムの流動性を低減し、鉛直バネ剛性を高めるようにしている。
【0003】
また、密閉ゴム支承では、ゴム板が下沓となる金属製ポット内に配置され、ゴム板の上にピストン状の上沓が載置され、ゴム板が非圧縮性の流体的に振る舞うように拘束されることで、回転追従性能が得られるように構成されている(特許文献2参照)。尚、この密閉ゴム支承は、鉛直可撓性がないことから金属支承の扱いとなる。
【0004】
更に、所謂コンパクト支承では、大きな鉛直荷重を支持するため、上沓と下沓の相対する面にそれぞれ凹部を設け、それぞれの凹部内にゴム層が配設され、鉛直荷重が加わった際にゴムが撓み変形によって半径方向外方に膨出しないようにして、鉛直バネ剛性の向上を図るようにしている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−1820号公報
【特許文献2】特開2000−178921号公報
【特許文献3】特開2009−13773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような支承装置は、大規模震災等に予め設定された所定値以上の入力があり、上沓と下沓が相対的に大きく鉛直上向きの方向及び/又は水平方向に変位して、上沓や下沓といった強度部材が損傷した場合、直ちに交換する必要がある。度重なる余震が発生した場合、強度部材が損傷した支承装置は、本来の支承性能を発揮することが出来なくなる虞がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その機能を容易に復旧することが出来る支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る支承装置は、第一剛性体と、第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に配設される弾性体と、前記弾性体を囲繞する拘束体とを備える。前記拘束体は、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れかに、鉛直変位方向に略並行なネジ部を有する固定ボルトによって固定される。前記拘束体、前記拘束体が固定される剛性体の何れかには、前記固定ボルトのネジ部が締め付けられるネジ穴と予備ネジ穴が形成され、他方には、前記固定ボルトのネジ部が挿通されるネジ穴に対応した貫通孔が形成されている。
【0009】
前記拘束体は、前記固定ボルトのネジ部が前記貫通孔に挿通され前記ネジ穴に締め付けられることで前記剛性体に固定される。前記固定ボルトが破断した場合、前記拘束体は、新たな前記固定ボルトのネジ部が前記貫通孔に挿通され前記予備ネジ穴に締め付けられることで前記剛性体に固定される。
【0010】
即ち、前記拘束体は、前記拘束体と前記拘束体が固定される剛性体との前記固定部、即ち固定ボルトが破断すると、他方の剛性体の方向に重力によって落下し、接近及び/又は当接する。これにより、前記固定ボルトの破断前にはあった前記拘束体と他方の剛性体との間の間隙は狭くなり又は無くなり、この間隙の有無や大きさを判別することで、支承装置が破損したかどうかを判別することが出来る。破損した支承装置において、前記ネジ穴は破断した固定ボルトが残存し使用することが出来ない。そこで、復旧の際には、落下した拘束体を持ち上げ、この際、前記予備ネジ穴と前記貫通孔とを一致させて、新たな固定ボルトで前記拘束体を一方の剛性体に固定する。これにより、前記支承装置は、その機能を復旧させることが出来る。
【0011】
ここで、前記ネジ穴及び前記予備ネジ穴を前記拘束体に形成した場合、前記貫通孔は、前記拘束体が固定される剛性体に形成されることになる。この際、前記予備ネジ穴は、前記ネジ穴の間に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記ネジ穴及び前記予備ネジ穴を前記拘束体が固定される剛性体に形成した場合、前記貫通孔は、前記拘束体に形成されることになる。この際、前記拘束体は、前記拘束体が固定される剛性体側の端部にフランジ部が形成され、前記フランジ部に、前記貫通孔が形成されていることが好ましい。また、前記拘束体は、前記拘束体が固定される剛性体側の端部にフランジ板が固定され、前記フランジ板に、前記貫通孔が形成されていることが好ましい。この場合も、前記予備ネジ穴は、前記ネジ穴の間に形成されていることが好ましい。
【0013】
前記支承装置において、前記弾性体の側面には、凸部又は凹部を設けるようにしても良い。このような支承装置では、所定以上入力されると、前記弾性体が弾性変形し、弾性変形した前記弾性体の側面が前記拘束体に当接及び/又は圧接して前記弾性体の変形が拘束される。前記弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記拘束体とによって囲繞されて半密閉状態とされ、前記弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化する。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、拘束体は、拘束体と剛性体との固定部、即ち固定ボルトが破断すると、他方の剛性体の方向に重力によって落下し、接近及び/又は当接する。破損した支承装置において、ネジ穴は破断した固定ボルトが残存し使用することが出来ない。そこで、復旧の際には、落下した拘束体を持ち上げ、予備ネジ穴と貫通孔とを一致させて、新たな固定ボルトで前記拘束体を一方の剛性体に固定する。これにより、前記支承装置は、その機能を容易に復旧させることが出来る。即ち、本発明では、拘束体や拘束体が結合されていた剛性体が大きく損傷していない限り、拘束体や剛性体の部品交換をするまでもなく、拘束体を剛性体に新たな固定ボルトを予備ネジ穴に締め付けることで補修することが出来る。従って、復旧の作業効率の向上を実現出来ると共に、補修の経費を削減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した支承装置の通常の使用状態を示す断面図である。
【図2】側面の周回り方向に凸部と凹部を設けた弾性体の斜視図である。
【図3】側面の高さ方向に凸部と凹部を設けた弾性体の斜視図である。
【図4】側面に凸部と凹部を設けていない弾性体の斜視図である。
【図5】支承装置の分解斜視図である。
【図6】鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示す特性グラフである。
【図7】固定ボルトが破断するような大きな上揚力や水平力が加わり破損した状態の断面図である。
【図8】上沓の貫通孔と拘束体のネジ穴及び予備ネジ穴との関係を示す図であり、(A)は固定ボルトがネジ穴に締め付けられているときの位置を示し、(B)は固定ボルトが予備ネジ穴に締め付けられているときの位置を示す。
【図9】固定ボルトを予備ネジ穴に締め付ける状態を示す分解斜視図である。
【図10】支承装置の変形例であり、拘束体にフランジ部を形成し、拘束体を上沓に下側から固定ボルトで結合する支承装置の断面図である。
【図11】図10に示す支承装置の分解斜視図である。
【図12】図10に示す支承装置に固定ボルトが破断するような大きな上揚力や水平力が加わった場合の断面図である。
【図13】上沓のネジ穴及び予備ネジ穴と拘束体の貫通孔との関係を示す図であり、(A)は固定ボルトがネジ穴に締め付けられているときの位置を示し、(B)は固定ボルトが予備ネジ穴に締め付けられているときの位置を示す。
【図14】図10の支承装置において、上沓の予備ネジ穴に固定ボルトを締め付ける状態を示す断面図である。
【図15】図10-図14に示した支承装置の変形例であり、拘束体とフランジ板とを別体で構成した支承装置の分解斜視図である。
【図16】図15に示した支承装置の断面図である。
【図17】拘束体を上沓に上側から固定ボルトで結合し、補修時、拘束体を上沓に下側から固定ボルトで結合する支承装置の断面図である。
【図18】図17に示す支承装置に固定ボルトが破断するような大きな上揚力や水平力が加わり破損した状態の断面図である。
【図19】図17に示す支承装置に上沓の予備ネジ穴に固定ボルトを締め付けた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る弾性体拘束度可変構造が適用された支承装置について図面を参照して説明する。尚、以下、支承装置について、以下の順に沿って説明する。
【0017】
1.支承装置の説明
2.弾性体及び拘束体の説明
3.支承装置の動作説明
4.支承装置の変形例1の説明
5.支承装置の変形例2の説明
6.支承装置の変形例3の説明
7.その他の変形例
【0018】
[1.支承装置の説明]
図1に示すように、支承装置10は、橋桁等の上部構造物1と橋脚や橋台といった下部構造物2との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的又は静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。この支承装置10は、第一剛性体としての上沓11と第二剛性体としての下沓12との間に支承体となる弾性体13が介在されている。また、弾性体13は、上沓11又は下沓12(ここでは上沓11)に固定された拘束体16によって囲繞されている。
【0019】
上沓11は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材とを組み合せた材料によっても構成することが出来る。各種素材から構成される上沓11は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。尚、上沓11は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成しても良い。
【0020】
上部構造物1に対する上沓11の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓11を上部構造物1に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、上沓11よりも広面積の板状をなす上部プレート3を用いて上沓11を上部構造物1に対して間接的に固定している。上沓11の上部構造物1への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0021】
尚、可動支承装置として用いるとき等は、上沓11の上部、例えば上沓11と上部プレート3との間に摺滑部材4を配設して、上部構造物1と支承装置10とを相対変位可能に固定しても良い。この摺滑部材4としては、例えば、フッ化炭素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓11の上面に固定したり、又は上部構造物1や上部構造物1に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0022】
下沓12は、上沓11同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材とを組み合せた材料によって構成することも出来る。各種素材から構成される下沓12は、平面形状が略多角形、略円形、略長円形、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、又は施工上、交換上で有利である。下沓12の平面形状等は、必ずしも上沓11と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓12の設定と上沓11の設定を互いに整合させる必要がある。尚、下沓12は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することも出来る。
【0023】
下部構造物2に対する下沓12の固定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓12を下部構造物2に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、下沓12よりも広面積の板状をなす下部プレート5を用いて下沓12を下部構造物2に対して間接的に固定している。下沓12の下部構造物2への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0024】
尚、可動支承装置として用いるとき等は、下沓12の下部、例えば下部プレート5と下沓12との間に摺滑部材6を配設して、下部構造物2と支承装置10とを相対変位可能に固定しても良い。この摺滑部材6としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓12の下面に固定したり、又は下部構造物2や下部構造物2に固定される取付手段側の上面に固定することが可能である。
【0025】
尚、上沓11や下沓12の直接的又は間接的な固定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0026】
[2.弾性体及び拘束体の説明]
ここで用いられる弾性体13は、例えば、弾性層13aと補強板13bとが積層された積層構造の弾性体である。弾性体13は、内部に補強板13bが設けられ、弾性層13aが複数設けられ、補強板13bと弾性層13aとが加硫接着によって相互に接着されている。また、弾性体13は、上面と下面も上板13cと下板13dとが加硫接着され補強されている。
【0027】
ここで、弾性層13aとしては、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを一種単独、或いは二種以上を併用することが出来る。そして、補強板13bや上板13cや下板13dは、鉄板といった剛性の鋼材が用いられている。以上のような積層型の弾性体13は、荷重が加わったとき、自由側面となっている補強板13bの間の弾性層13aの側面が荷重の大きさに応じて側方に僅かに膨出する特性を有する。
【0028】
そして、弾性体13の周囲には、周回り方向に、凸部14と凹部15とが設けられている。凸部14と凹部15は、図1の例では、互いに平行に、周回り方向に連続して設けられている。勿論、凸部14と凹部15は、周回り方向に断続的に設けられていてもよい。特に、弾性体13では、自由側面となっている弾性層13aの側面に凸部14が設けられ、補強板13bの位置に凹部15が設けられている。勿論、これとは逆に、弾性層13aの位置に凹部15を設け、補強板13bの位置に凸部14を設けるようにしてもよい。
【0029】
以上のような弾性体13は、下沓12に固定された芯材21の大径部22に配設され、支持される。弾性体13は、上沓11と下沓12との間を接着して高支圧化しても良いが、接着しないことにより、良好な回転追従性を実現することも出来る。
【0030】
尚、以上の例では、弾性体13が積層型である場合を説明したが、本発明での弾性体13は、図2に示すように、凸部14や凹部15を設けながらも、内部に鉄板といった剛性の補強板13bが設けられていない弾性層が一つ(単層)のものであってもよい。また、図3に示すように、弾性体13としては、高さ(厚さ)方向に、凸部14や凹部15を設けたものであってもよい。図3の例では、弾性層が単層でもよいが、図1の例のように、補強板を有する積層型であってもよい。更に、図4に示すように、側面に凸部14や凹部15を有しない弾性体であってもよい。この場合も、弾性体13は、弾性層が単層でもよいが、補強板13bを有する積層型であってもよい。また、図1−図4の弾性体13の大きさは、拘束体16内に挿入するとき、拘束体16に嵌合する大きさでもよいが、組立性を考慮して、一回り小さくして、拘束面16aと弾性体13の側面との間に間隙を設けるようにしてもよい。尚、以下の説明では、図1に示した凸部14や凹部15を有する積層型の弾性体を例に説明する。
【0031】
以上のように構成される弾性体13は、図1に示すように、拘束体16によって囲繞されている。拘束体16は、弾性体13の外径よりやや大きい内径を有する円筒体であり、上沓11又は下沓12の何れか、図1では上沓11の外周部に固定されている。例えば、上沓11と拘束体16との結合は、固定部を構成する締結部材である固定ボルト17によって行われ、拘束体16は、弾性体13の鉛直変位の方向、即ち上側から固定されている。具体的に、上沓11の上面外周部には、厚さ方向に、ボルト凹部17aが形成されていると共に、その底部に、貫通孔17bが形成され、貫通孔17bの周囲にボルト座部17cが形成されている。更に、拘束体16の上側の端面には、貫通孔17bに対応するネジ穴17dが形成されている。即ち、ボルト軸部にあるネジ部17eは、上側から芯材21と並行に(鉛直変位の方向に)螺入される。固定ボルト17のボルト頭部17fは、ボルト凹部17aから突出することなく収容され、上部構造物1や上部プレート3に当たらないようにしている。この固定ボルト17は、過剰な上揚力や水平力が加わったとき、他の部材が破損する前に、ネジ部17eが破断する強度となっている。
【0032】
更に、下沓12には、芯材21が固定され、上揚防止部と水平変位防止部となっている。具体的に、芯材21は、ベースプレートとなる下沓12に下端部が固定される。芯材21は、大径部22となる頭部を有する金属性のボルト状部材からなり、先端部である大径部22が拘束体16内に配設され、弾性体13をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンのように機能する。この芯材21は、下沓12のネジ穴23に螺合されることによって固定される。尚、芯材21の下沓12への固定構造も、これに限定されるものではなく、例えば芯材21のネジ穴に、下沓12の下面から挿通させた固定ボルトを螺合して固定するようにしてもよい。また、芯材21と下沓12との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、通常の使用範囲を超える高い上揚力や水平力が加わった場合にも、固定ボルト17より先に芯材21と下沓12との固定部分が破損しないようになっている。尚、大径部22も、例えば芯材21の先端部に設けたネジ部を別部材の大径部のネジ穴に螺合して固定するようにしてもよい。
【0033】
芯材21と一体の大径部22は、外周部下面が上沓11の外周部にネジ等の固定部材24によって固定された拘束体16の上揚防止片25と係合する。固定部材24も、下沓12のボルト凹部24a内にボルト頭部が収まり、下沓12側に突出しないように構成されている。下沓12と一体の芯材21の大径部22は、上揚防止部ともなって、上沓11に上揚力が加わったとき、上沓11側の上揚防止片25が係止されることで、上沓11と下沓12とが乖離することを防止する。即ち、芯材21の大径部22は、拘束体16内に配設されることで、弾性体13の鉛直方向の変位を許容し、また、水平変位防止部となって、芯材21で水平方向の変位を規制する。これにより、過剰に上沓11と下沓12とが水平方向において相対変位することを防止することが出来る。更に、上揚防止片25と下沓12との間は、間隙19が設けられており、鉛直下向きに変位して、上沓11が下沓12側に移動した際にも、上揚防止片25が下沓12に突き当たらないようにしている。尚、上揚防止片25は、溶接等によって、拘束体16に固定されていてもよい。また、固定部材24による拘束体16と上揚防止片25との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重が加わった場合にも、固定ボルト17より先に拘束体16と上揚防止片25との固定部分が破損しないようになっている。
【0034】
即ち、支承装置10は、拘束体16内において、弾性体13を支持する大径部22が配設されることで、下沓12が上沓11と下沓12の間に配設される弾性体13の剪断変形を抑制する機能や、弾性体13をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現する。かくして、下沓12に支持された弾性体13は、上面が上沓11、側面が拘束体16によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになる。支承装置10は、半密閉のゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0035】
この支承装置10の組立方法について説明すると、図5に示すように、拘束体16に芯材21を挿入し、芯材21を下沓12のネジ穴23に固定する。これにより、拘束体16内には、大径部22によって、弾性体13を収納するポット部が形成される。この後、ポット部には、弾性体13が芯材21の大径部22上に配置される。
【0036】
ここで、上沓11と拘束体16との固定構造について説明すると、上沓11には、円筒体である拘束体16の上側の端面に対応する位置に、厚さ方向に貫通し、固定ボルト17が挿通される貫通孔17bが形成されている。具体的に、貫通孔17bは、拘束体16の上側の端面が当接する位置に対応して、環状に複数形成されている。拘束体16の上側の端面には、固定ボルト17のネジ部17eが螺合されるネジ穴17dが環状に形成されている。更に、拘束体16の上側の端面には、ネジ穴17dの間に、予備ネジ穴26が形成されている。予備ネジ穴26は、ネジ穴17dと同じものであり、ネジ穴17dの間に、ネジ穴17dと同数となるように形成されている。
【0037】
図5に示すように、拘束体16の上側の端面には、上沓11が配置され、上沓11と拘束体16とは、貫通孔17bとネジ穴17dの軸線を一致させ、貫通孔17bにネジ部17eを挿通し、更に、ネジ穴17dにネジ部17eを締め付けることによって一体化され結合される。勿論、支承装置10の組立方法は、上記の例に限定されるものではない。尚、弾性体13と拘束体16との間は、摺滑手段18を設けて、低摩擦にして弾性体13が拘束体16内で円滑に鉛直変位させることが出来る。また、摩擦力を小さくするためには、潤滑剤を塗布しても良いし、拘束体16の拘束面16aを鏡面加工して低摩擦にしたり、又は、潤滑剤との組み合わせで、所定以上の入力があって、上沓11に対して拘束体16を固定している固定ボルト17が破断した際に、拘束体16が、弾性体13に対して鉛直方向に移動し易くなるように構成してもよい。
【0038】
ここで、弾性体13と拘束体16との大きさの関係について説明すると、図1の例では、支承装置10が上部構造物1と下部構造物2との間に設置され、支承装置10に対して上部構造物1の荷重によって弾性体13が変形している状態(例えば死荷重が加わった状態)において、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aに当接した状態となっている。つまり、上部構造物1と下部構造物2との間に設置される前は、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aとの間が非接触の状態で、隙間が設けられた状態となっており、上部構造物1と下部構造物2との間に設置されると、上部構造物1の死荷重によって、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aに当接した状態となる。尚、死荷重の載荷時には、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aと非接触で、例えば大型車両等の交通荷重による活荷重があった際に、弾性体13の側面の凸部14が拘束体16の内周面の拘束面16aと当接し、更なる高荷重の入力によって拘束面16aに凸部14、並びに、凹部15の膨出変形した部分が圧接されるようにしてもよい。尚、図3に示すように、弾性体13の側面に高さ方向の凸部14と凹部15がある場合、弾性体13を、拘束体16内のポット部に容易に収納することが出来る。
【0039】
[3.支承装置の動作説明]
以上のような支承装置10では、上部構造物1と下部構造物2との間に設置されると、図1に示すように、弾性体13が、通常の使用範囲の荷重(例えば死荷重や死荷重+車両通行時の活荷重)によって、圧縮され、弾性体13の凸部14は、弾性体13を囲繞した拘束体16の拘束面16aに近接又は当接した位置となる。支承装置10は、弾性体13が鉛直荷重の大きさに応じた弾性変形をし、この弾性変形によって側面の凸部14が凹部15により構成された隙間を埋めるように変形しながら、拘束体16の拘束面16aに圧接される。即ち、弾性体13の変位量は、拘束体16によって制限される。
【0040】
更に、弾性体13の凸部14及び凹部15と拘束体16の拘束面16aとの関係を説明すると、積層型の弾性体13は、自由側面の弾性層13aの位置に凸部14を設け、補強板13bの位置に凹部15を設けるようにしている。この場合、凸部14は、荷重が加わった際、弾性層13aの自由側面が膨出することで、凹部15より先に拘束体16の拘束面16aに強く圧接される。積層型の弾性体13は、従来最も膨出量が多い補強板間の位置の弾性層13aに凸部14を設けた上、拘束体16の拘束面16aによってこの凸部14周辺の膨出量が拘束されているので、高荷重が入力されている際でも内部の補強板13bの周囲における弾性層13aに対する局部応力が緩和される。また、内部の補強板13bが高荷重によっても潰れにくくなり、補強板13bを薄くすることが出来、支承装置10の全体の薄型化を実現出来る。尚、補強板13bの位置を凸部14とし、弾性層13aの位置を凹部15としてもよい。この場合、凹部となっている弾性層13aの自由側面が僅かに膨出することで、凸部14と凹部15の部分が同じように拘束体16の拘束面16aと当接され均等に圧接されるようにすることが出来る。
【0041】
そして、支承装置10は、拘束体16の内側に、弾性体13を支持する芯材21の大径部22が配設されることで、大径部22が下沓12が上沓11と下沓12の間に配設される弾性体13の剪断変形を抑制する機能や、弾性体13をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現する。かくして、下沓12に支持された弾性体13は、上面が上沓11、側面が拘束体16によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになり、半密閉のゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0042】
また、低荷重から高荷重の入力に亘って鉛直面内における回転力の作用時には、弾性体13が拘束体16によって部分的に支持されながらも凸部14又は凹部15による隙間により弾性体13が変形し、弾性体への極端な負荷なく、良好な回転追従性を実現出来る。
【0043】
ここで、図6に、鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示す。
線A・・・一般的な積層ゴム支承
尚、ここで言うゴム支承は、弾性体が積層ゴムであり、内部に複数枚の鋼板が設けられた地震時水平力分散型ゴム支承や免震支承であり、密閉ゴム支承ではなく、荷重が加わった際の変位が拘束されていない支承である。
線B・・・拘束体16の内径(ポット部の内径)に対して弾性体13の外形を小さくし、凸部14と凹部15を大きく形成して、拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を大きくしたときの特性を示す。(隙間大)
線C・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を線Bの場合より小さくしたときの特性を示す。(隙間中)
線D・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を最も小さくしたときの特性を示す。(隙間小)
線E・・・拘束面16aと弾性体13の側面との間の隙間を設けない密閉ゴム支承。回転追従性能を有するが、鉛直方向の弾性変位はほとんど無く、金属支承の扱いとなる。
【0044】
尚、本発明では、線A−Eの何れの支承装置も適用可能である。
【0045】
図6の線Aで示すゴム支承では、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量もほぼ比例的に大きくなり、グラフの傾き(拘束度又はバネ定数)はほぼ一定である。弾性体13の側面に凸部14と凹部15を設けた線B−Dの例によれば、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量も大きくなるが、その特性は非線形となる。即ち、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾き(拘束度又はバネ定数)は、鉛直変位又が大きくなるほど大きくなる。このように、弾性体13の側面に凸部14と凹部15を設けたときには、大きな荷重が入力されたときほど、より高度な密閉状態に変化して鉛直変位量の増加量が小さくなるような特性で、即ち拘束度を可変として、上部構造物1を支承することが出来る。即ち、この支承装置10では、適度な鉛直可撓性を有しながら高荷重を支持することが出来る。また、線B−Dの例を見ると、隙間が小さい程、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾きの緩やかな範囲(一次勾配)を狭く設定することが出来る。即ち、鉛直変位が小さくなる。更に、線Eの密閉ゴム支承では、鉛直方向の弾性変位はほとんど見られない。
【0046】
特に、弾性体13の側面に凸部14と凹部15を設けた線B−Dの例によれば、高荷重が加わると、鉛直可撓変位が小さくなり、密閉ゴム支承のように挙動する。従って、線B−Dの例では、支承する上部構造物1の種類、用途等に応じて、線B−Dの使用範囲を設定していくことになる。例えば、死荷重に活荷重が加わったとき、グラフの急勾配の範囲(二次勾配)の領域に含まれるようにすることで、車両通過時の振動や騒音を低減することが出来る。尚、低荷重の載荷では、鉛直撓みがあるため、線B−Dの支承装置は、弾性支承装置に属する扱いとし得る。
【0047】
次に、この支承装置10が破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重(例えば大地震発生時の活荷重)が加わった場合について説明する。図7は、支承装置10が破損するような大きな水平力や上揚力が加わった場合の断面図である。上記図1に示したように、芯材21と下沓12との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、また、固定部材24による拘束体16と上揚防止片25との結合強度も、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高くなっている。このため、支承装置10は、支承装置10が破損するような通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わった場合、他の部材が破損する前にネジ部17eが破断する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙19は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙20が発生する。従って、作業者は、間隙19,20が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙20があるとき、支承装置10が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0048】
以上のように、支承装置10は、通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わって上沓11と拘束体16との結合が破損した場合であっても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。しかしながら、この状態は暫定的なものであって、順次、破損した支承装置10を含む橋梁等を復旧していく必要がある。支承装置10を含む橋梁等の復旧の際には、支承装置10を全部交換するよりも、支承装置10の補修によって、機能を回復していく方が、復旧作業や費用の観点からも効率的な場合がある。
【0049】
そこで、この支承装置10では、支承装置10を含む橋梁等の復旧作業の際に、全部交換をするまでもなく、支承装置10の機能を回復させることが出来るようになっている。具体的に、支承装置10を含む橋梁等の復旧作業の際には、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げ、上部構造物1から上沓11を取り外し、上沓11の貫通孔17b内に残存している固定ボルト17を貫通孔17bから取り除く。ここで、拘束体16の上側の端面のネジ穴17dには、破断したボルト軸部やネジ部17eが残存している。そこで、例えば、拘束体16の上側の端面の平坦化処理をして、拘束体16の上側の端面より突出した破断したボルト軸部やネジ部17eを削り取る。勿論、ボルト軸部やネジ部17eをネジ穴17dから取り除いても良い。拘束体16の上側の端面には、ネジ穴17dの間に未使用の予備ネジ穴26が形成されている。支承装置10の復旧の際、拘束体16は、図8に示すように、貫通孔17bがネジ穴17dと軸線が一致した状態(図8(A)参照)から、予備ネジ穴26の軸線と一致させた状態(図8(B)参照)にθだけ回転される。そして、上沓11の貫通孔17bには、図9に示すように、新たな固定ボルト17のボルト軸部にあるネジ部17eが挿通され、更に、予備ネジ穴26には、ネジ部17eが締め付けられる。即ち、ここでは、残存したボルト軸部やネジ部17eで塞がり使用不能となったネジ穴17dではなく、予備ネジ穴26を用いて上沓11の下面に拘束体16を結合し一体化するようにしている。このように、支承装置10の修理が完了すると、修理された支承装置10は、ジャッキ等により上沓11上に上部構造物1が配置され、上部構造物1に固定される。
【0050】
以上のような支承装置10では、橋梁等の復旧作業の際に、上部構造物1を下部構造物2から離間させた状態で修理することが出来る。この際、支承装置10は、拘束体16をθだけ回転させて、上沓11の貫通孔17bと予備ネジ穴26との軸線を一致させ、新たな固定ボルト17で結合することで、その機能を回復させることが出来る。即ち、支承装置10では、橋梁等の復旧作業の際に、支承装置10を全部交換する必要が無く、上沓11も拘束体16もそのまま用いることが出来る。従って、橋梁等の復旧作業の際には、支承装置10を全部交換する作業を省略することが出来、作業効率の向上を図ることが出来る。また、支承装置10に関しては、新たな部品は固定ボルト17だけとなり、工費の削減を図ることも出来る。
【0051】
尚、本発明では、上沓11と拘束体16とを拘束体16の予備ネジ穴26を用いて結合した後に、改めて、支承装置10を交換する補修工事を行うようにしても良い。
【0052】
[4.支承装置の変形例1の説明]
上記図1の例では固定ボルト17を上沓11側から挿入し、上沓11と拘束体16とを結合していたが、図10に示す支承装置30は、拘束体16側から固定ボルト17を挿入し、上沓11と拘束体16とを結合することを特徴とする。
【0053】
具体的に、拘束体16には、図10及び図11に示すように、上側の端面から外側に張り出すようにフランジ部31が形成されている。このフランジ部31の下面には、厚さ方向に、ボルト凹部17aが形成されていると共に、その底部に、貫通孔17bが形成され、貫通孔17bの周囲にボルト座部17cが形成されている。更に、上沓11の下面には、貫通孔17bに対応するネジ穴17dが形成されている。即ち、ボルト軸部のネジ部17eは、芯材21と平行に(鉛直変位の方向に)螺入される。この固定ボルト17は、過剰な上揚力や水平力が加わったとき、他の部材が破損する前に、ボルト軸部やネジ部17eが破断する強度となっている。固定ボルト17のネジ部17eは、下側から芯材21と並行に(鉛直変位の方向に)ネジ穴17dに螺入される。更に、上沓11の下面には、ネジ穴17dの間に、予備ネジ穴26が形成されている。予備ネジ穴26は、ネジ穴17dと同じものであり、ネジ穴17dの間に、ネジ穴17dと同数となるように形成されている。
【0054】
この支承装置30の組立方法について説明すると、図10及び図11に示すように、拘束体16には、芯材21が挿入され、この芯材21は、下沓12のネジ穴23に固定される。これにより、拘束体16内には、大径部22によって、弾性体13を収納するポット部が形成される。この後、ポット部には、弾性体13が芯材21の大径部22上に配置される。そして、上沓11の下面には、拘束体16のフランジ部31が突き当てられ、フランジ部31の貫通孔17bと上沓11のネジ穴17dの軸線が一致される。上沓11と拘束体16とは、拘束体16のフランジ部31の貫通孔17bにボルト軸部のネジ部17eを挿入し、更に、上沓11のネジ穴17dにネジ部17eを締め付けることによって一体化され結合される。勿論、支承装置30の組立方法は、上記の例に限定されるものではない。
【0055】
次に、この支承装置30が破損するような通常の使用範囲を超える高い荷重(例えば大地震発生時の活荷重)が加わった場合について説明する。図12は、支承装置30が破損するような大きな水平力や上揚力が加わった場合の断面図である。この支承装置30において、芯材21と下沓12との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、また、固定部材24による拘束体16と上揚防止片25との結合強度も、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高くなっている。このため、支承装置30は、支承装置30が破損するような通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わった場合、他の部材が破損する前にボルト軸部やネジ部17eが破断する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、近接及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙19は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16のフランジ部31との間に間隙20が発生する。従って、作業者は、間隙19,20が拘束体16と下沓12との間にあるのか、拘束体16のフランジ部31と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の間隙があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙20があるとき、支承装置30が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0056】
以上のように、支承装置30は、通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わって上沓11と拘束体16との結合が破損した場合であっても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。しかしながら、この状態は暫定的なものであって、順次、破損した支承装置30を含む橋梁等を復旧していく必要がある。支承装置30を含む橋梁等の復旧の際には、支承装置30を全部交換するよりも、支承装置30の補修によって、機能を回復していく方が、復旧作業や費用の観点からも効率的な場合がある。
【0057】
そこで、支承装置30では、支承装置30を含む橋梁等の復旧作業の際に、全部を交換するまでもなく、支承装置30の機能を回復させることが出来るようになっている。具体的に、支承装置30を含む橋梁等の復旧作業等の際には、上沓11が上部構造物1に取り付いたままの状態で、上沓11の下面を平坦化処理して、ネジ穴17dに残存した破断したボルト軸部やネジ部17eを削り取る。また、拘束体16のフランジ部31の貫通孔17bからは、ボルト頭部17fを含むボルト軸部やネジ部17eを取り除く。固定ボルト17は、破断したとき、ボルト頭部17fを含むボルト軸部やネジ部17eがボルト凹部17aから自重で落下する。また、ボルト凹部17aから自ずと落下しないときであっても、重力が作用してボルト凹部17aから容易にボルト頭部17fを含むボルト軸部やネジ部17eを取り除くことが出来る。
【0058】
上述のように、上沓11のネジ穴17dの間には、予備ネジ穴26が形成されている。支承装置30の復旧の際、拘束体16は、図13に示すように、拘束体16のフランジ部31の貫通孔17bが上沓11のネジ穴17dと軸線が一致した状態(図13(A)参照)から、予備ネジ穴26の軸線と一致させた状態(図13(B))にθだけ回転される。そして、拘束体16は、ジャッキ等によって持ち上げられ、フランジ部31が上沓11の下面に近接される。この後、拘束体16のフランジ部31の貫通孔17bには、図14に示すように、新たな固定ボルト17のネジ部17eが挿通され、更に、上沓11の下面の予備ネジ穴26には、ネジ部17eが締め付けられる。
【0059】
以上のような支承装置30では、橋梁等の復旧作業の際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げることなく修理することが出来る。具体的に、支承装置30は、上沓11から離間している拘束体16をθだけ回転させて、拘束体16のフランジ部31の貫通孔17bと上沓11の予備ネジ穴26との軸線を一致させ、新たな固定ボルト17で結合することで、その機能を回復させることが出来る。即ち、この支承装置30では、橋梁等の復旧作業の際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げる必要が無く、また、支承装置30を全部交換する必要もなくなり、上沓11も拘束体16もそのまま用いることが出来る。従って、支承装置30を修理する際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げる必要も無くなり、作業効率の向上を図ることが出来る。また、支承装置30に関しては、新たな部品は固定ボルト17だけとなり、工費の削減を図ることも出来る。
【0060】
[5.支承装置の変形例2の説明]
上記図10−図14の例では、フランジ部31を拘束体16の上側に一体的に形成した場合を説明したが、図15及び図16の例では、拘束体16とフランジ部31とを別体に設けた支承装置40について説明する。
【0061】
この支承装置40では、拘束体16の上側の端面に、リング状のフランジ板41が固定される。拘束体16の上側の端面には、フランジ板41を固定するためのネジ穴42が形成されている。また、フランジ板41の内周側には、ネジ穴42に対応して、固定ボルト43のボルト頭部が収まるボルト凹部44が形成され、ボルト凹部44の底面には、固定ボルト43のボルト軸部にあるネジ部が挿通される貫通孔45が形成されている。フランジ板41は、上沓11に固定される前に、拘束体16の上側の端面上に配置され、拘束体16のネジ穴42とフランジ板41の貫通孔45と軸線が一致され、フランジ板41の貫通孔45の側から固定ボルト43が挿入され、拘束体16のネジ穴42に締め付けられる。固定ボルト43のボルト頭部は、ボルト凹部44内に収まり、フランジ板41上には、上沓11が配置される。フランジ板41は、拘束体16の上側の端面に固定されると、外周側が拘束体16より張り出し、張り出した部分が上沓11の下面に固定ボルト17で固定する部分となる。なお、拘束体16内には、芯材21の大径部22によって、弾性体13を収納するポット部が形成される。ポット部は、拘束体16の内部とフランジ板41の内周面によって構成される。
【0062】
フランジ板41の外周側の下面には、厚さ方向に、ボルト凹部17aが形成されていると共に、その底部に、貫通孔17bが形成され、貫通孔17bの周囲にボルト座部17cが形成されている。更に、上沓11の下面には、貫通孔17bに対応するネジ穴17dが形成されている。即ち、ボルト軸部のネジ部17eは、芯材21と並行に(鉛直変位の方向に)螺入される。この固定ボルト17は、過剰な上揚力や水平力が加わったとき、他の部材が破損する前に、ボルト軸部やネジ部17eが破断する強度となっている。例えば、上述のように、フランジ板41は、拘束体16の上側の端面に固定ボルト43によって固定されているが、固定ボルト17は、フランジ板41と拘束体16との固定部分が破損する前に破断する強度となっている。固定ボルト17のネジ部17eは、下側から芯材21と並行に(鉛直変位の方向に)ネジ穴17dに螺入される。更に、上沓11の下面には、ネジ穴17dの間に、予備ネジ穴26が形成されている。予備ネジ穴26は、ネジ穴17dと同じものであり、ネジ穴17dの間に、ネジ穴17dと同数となるように形成されている。
【0063】
この支承装置の組立方法について説明すると、拘束体16には、芯材21が挿入され、この芯材21は、下沓12のネジ穴23に固定される。これにより、ポット部には、弾性体13が芯材21の大径部22上に配置される。また、拘束体16の上側の端面上には、フランジ板41が配置され、フランジ板41は、貫通孔45の側から固定ボルト43が挿入され、上沓11のネジ穴42に締め付けられることによって、拘束体16に一体化される。そして、上沓11の下面には、拘束体16のフランジ板41が突き当てられ、フランジ板41の貫通孔17bと上沓11のネジ穴17dの軸線が一致される。上沓11と拘束体16とは、拘束体16のフランジ板41の貫通孔17bにボルト軸部のネジ部17eを挿入し、更に、上沓11のネジ穴17dにネジ部17eを締め付けることによって一体化され結合される。勿論、支承装置40の組立方法は、上記の例に限定されるものではない。
【0064】
次に、この支承装置40が破損するような通常の範囲を超える高い荷重(例えば大地震発生時の活荷重)が加わった場合について図16を参照して説明する。この支承装置40においても、芯材21と下沓12との結合強度は、上沓11と拘束体16との結合力より高く、また、固定部材24による拘束体16と上揚防止片25との結合強度も、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高くなっている。更に、拘束体16とフランジ板41との結合強度も、上沓11と拘束体16との結合力より高くなっている。このため、支承装置40は、支承装置40が破損するような通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わった場合、他の部材が破損する前にボルト軸部やネジ部17eが破断する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙19は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16のフランジ板41との間に間隙20が発生する。従って、作業者は、間隙19,20が拘束体16と下沓12との間にあるのか、拘束体16のフランジ板41と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の間隙があるのかを目視で確認し、上沓11の側に間隙20があるとき、支承装置40が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0065】
以上のように、支承装置40は、通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わって上沓11と拘束体16との結合が破損した場合であっても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。しかしながら、この状態は暫定的なものであって、順次、破損した支承装置40を含み橋梁等を復旧していく必要がある。支承装置40を含み橋梁等の復旧の際には、支承装置40を全部交換するよりも、支承装置40の補修によって、機能を回復していく方が、復旧作業や費用の観点からも効率的な場合がある。
【0066】
そこで、支承装置40も、支承装置30と同様に、支承装置40を含む橋梁等の復旧作業の際に、全部を交換するまでもなく、支承装置40の機能を回復させることが出来るようになっている。具体的に、支承装置40を含む橋梁等の復旧作業等の際には、上沓11が上部構造物1に取り付いたままの状態で、上沓11の下面を平坦化処理して、ネジ穴17dに残存した破断したボルト軸部やネジ部17eを削り取る。また、拘束体16のフランジ板41の貫通孔17bからは、ボルト頭部17fを含むボルト軸部やネジ部17eを取り除く。固定ボルト17は、破断したとき、ボルト頭部17fを含むボルト軸部やネジ部17eがボルト凹部17aから自重で落下する。また、ボルト凹部17aから自ずと落下しないときであっても、重力が作用してボルト凹部17aから容易にボルト頭部17fを含むボルト軸部やネジ部17eを取り除くことが出来る。
【0067】
上述のように、上沓11のネジ穴17dの間には、予備ネジ穴26が形成されている。支承装置40の復旧の際、拘束体16は、拘束体16のフランジ板41の貫通孔17bが上沓11のネジ穴17dと軸線が一致した状態から予備ネジ穴26の軸線と一致した状態に回転される。そして、拘束体16は、ジャッキ等によって持ち上げられ、フランジ板41が上沓11の下面に近接される。この後、拘束体16のフランジ板41の貫通孔17bには、新たな固定ボルト17のネジ部17eが挿通され、更に、上沓11の下面の予備ネジ穴26には、ネジ部17eが締め付けられる。
【0068】
以上のような支承装置40では、支承装置30と同様に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げることなく修理することが出来る。具体的に、支承装置40は、上沓11から離間している拘束体16を回転させて、拘束体16のフランジ板41の貫通孔17bと上沓11の予備ネジ穴26との軸線を一致させ、新たな固定ボルト17で結合することで、その機能を回復させることが出来る。即ち、この支承装置40では、橋梁等の復旧作業の際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げることなく、支承装置40を全部交換する必要なく、上沓11も拘束体16やフランジ板41もそのまま用いることが出来る。従って、支承装置40を修理する際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げる必要も無くなり、作業効率の向上を図ることが出来る。また、支承装置40に関しては、新たな部品は固定ボルトだけとなり、工費の削減を図ることが出来る。更に、支承装置40は、拘束体16とフランジ部31とが一体の支承装置30と異なり、拘束体16とフランジ板41とが別体であることから、拘束体16の加工が容易なものとなる。
【0069】
[6.支承装置の変形例3の説明]
図17−図19の支承装置50は、図1、図5、図7及び図9の支承装置10と同様、固定ボルト17で、拘束体16を上沓11に固定しながら、補修時、下側から固定ボルト52で拘束体16を上沓11の下面に固定するものである。
【0070】
具体的に、図17に示すように、支承装置50の上沓11の上面外周部には、厚さ方向に、第一ボルト凹部17aが形成されていると共に、その底部に、第一貫通孔17bが形成され、第一貫通孔17bの周囲に第一ボルト座部17cが形成されている。更に、拘束体16の上側の端面には、第一貫通孔17bに対応する第一ネジ穴17dが形成されている。即ち、ボルト軸部の第一ネジ部17eは、上側から芯材21と並行に(鉛直変位の方向に)螺入される。第一固定ボルト17の第一ボルト頭部17fは、第一ボルト凹部17aから突出することなく収容され、上部構造物1や上部プレート3に当たらないようにしている。この第一固定ボルト17は、過剰な上揚力や水平力が加わったとき、他の部材が破損する前に、ボルト軸部や第一ネジ部17eが破断する強度となっている。なお、フランジ部51には、第二ボルト凹部52aが必ずしも必要ではなく、ボルトを挿通することが出来るように第二貫通孔52bが貫穿されていればよい。
【0071】
また、拘束体16には、上側の端面から外側に張り出すようにフランジ部51が形成されている。このフランジ部51の下面には、厚さ方向に、第二ボルト凹部52aが形成されていると共に、その底部に、第二貫通孔52bが形成され、第二貫通孔52bの周囲に第二ボルト座部52cが形成されている。更に、上沓11の下面には、第二貫通孔52bに対応する予備ネジ穴52dが環状に形成されている。第二固定ボルト52の第二ネジ部52eは、下側から芯材21と並行に(鉛直変位の方向に)予備ネジ穴52dに螺入される。予備ネジ穴52dは、ネジ穴17dと同じものであり、ネジ穴17dと同数となるように形成されている。
【0072】
この支承装置50の組立方法について説明すると、拘束体16には、芯材21が挿入され、この芯材21は、下沓12のネジ穴23に固定される。これにより、拘束体16内には、大径部22によって、弾性体13を収納するポット部が形成される。この後、ポット部には、弾性体13が芯材21の大径部22上に配置される。そして、上沓11の下面には、拘束体16のフランジ部51が突き当てられる。図17に示すように、上沓11と拘束体16とは、第一貫通孔17bと第一ネジ穴17dの軸線を一致させ、第一貫通孔17bに第一ネジ部17eを挿通し、更に、第一ネジ穴17dに第一ネジ部17eを締め付けることによって一体化され結合される。勿論、支承装置50の組立方法は、上記の例に限定されるものではない。尚、第一固定ボルト17の固定部分の外周側にある第二貫通孔52b及び予備ネジ穴52dには、第二固定ボルト52は挿入螺合されていない。ここには、補修時に、第二固定ボルト52が挿入螺合される。従って、組立時には、第二貫通孔52b及び予備ネジ穴52dの軸線は一致していても、一致していなくても良い。
【0073】
次に、この支承装置50が破損するような通常の範囲を超える高い荷重(例えば大地震発生時の活荷重)が加わった場合について図18を参照して説明する。図18は、支承装置50が破損するような大きな水平力や上揚力が加わった場合の断面図である。上述のように、芯材21と下沓12との結合強度は、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高く、また、固定部材24による拘束体16と上揚防止片25との結合強度も、上述した上沓11と拘束体16との結合力より高い。このため、支承装置50は、支承装置50が破損するような通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わった場合、他の部材が破損する前にボルト軸部や第一ネジ部17eが破断する。すると、拘束体16は、上沓11側から下沓12の上に落下し、接近及び/又は当接する。これにより、破損前、上揚防止片25と下沓12との間にあった間隙19は、拘束体16が落下することで狭くなり又は無くなり、代わりに、上沓11と拘束体16との間に間隙20が発生する。従って、作業者は、間隙19,20が、拘束体16と下沓12の間にあるのか、拘束体16と上沓11との間にあるのか、又は、どちらにどの程度の隙間があるのかを目視で確認し、上沓11側に間隙20があるとき、支承装置50が破損していると判別することが出来る。また、拘束体16が下沓12上に落下しても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。
【0074】
以上のように、支承装置50は、通常の使用範囲を超える上揚力や水平力が加わって上沓11と拘束体16との結合が破損した場合であっても、芯材21に支持された弾性体13は、上沓11を支承し続けることが出来る。しかしながら、この状態は暫定的なものであって、順次、破損した支承装置50を含む橋梁等を復旧していく必要がある。支承装置50を含む橋梁等の復旧の際には、支承装置50を全部交換するよりも、支承装置50の補修によって、機能を回復していく方が、復旧作業や費用の観点からも効率的な場合がある。
【0075】
そこで、この支承装置50では、支承装置50を含む橋梁等の復旧作業の際に、全部交換をするまでもなく、支承装置50の機能を回復させることが出来るようになっている。具体的に、支承装置50を含む橋梁等の復旧作業等の際には、図19に示すように、上沓11が上部構造物1に取り付いたままの状態で、上沓11の下面を平坦化処理して、第一ネジ穴17dに残存した破断したボルト軸部や第一ネジ部17eを削り取る。この後、拘束体16は、拘束体16のフランジ部51の第二貫通孔52bと上沓11の予備ネジ穴52dとの軸線を一致させる。そして、拘束体16は、ジャッキ等によって持ち上げられ、フランジ部51が上沓11の下面に近接される。この後、拘束体16のフランジ部51の第二貫通孔52bには、新たな第二固定ボルト52の第二ネジ部52eが挿通され、更に、上沓11の下面の予備ネジ穴52dには、第二ネジ部52eが締め付けられる。
【0076】
以上のような支承装置50では、橋梁等の復旧作業の際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げることなく修理することが出来る。具体的に、支承装置50は、上沓11から離間している拘束体16のフランジ部51の第二貫通孔52bと上沓11の予備ネジ穴52dとの軸線を一致させ、新たな固定ボルト52で結合することで、その機能を回復させることが出来る。即ち、この支承装置50では、橋梁等の復旧作業の際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げることなく、支承装置50を全部交換する必要なく、上沓11も拘束体16もそのまま用いることが出来る。従って、支承装置50を修理する際に、上部構造物1をジャッキ等で持ち上げる必要も無くなり、作業効率の向上を図ることが出来る。また、支承装置50に関しては、新たな部品は第二固定ボルト52だけとなり、工費の削減を図ることも出来る。尚、この支承装置50において、拘束体16のフランジ部51は、拘束体16と一体であっても良いが、図15及び図16の例のように、拘束体16と別体で、固定ボルトを用いて拘束体16に固定するようにしても良い。
【0077】
[7.その他の変形例]
上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。また、支承装置の支承構造も以上の例に限定されるものではない。また、上沓11と上揚防止部との固定方法は、上述した固定ボルト17を用いる他に、溶接や接着剤による接着等であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 上部構造物、2 下部構造物、3 上部プレート、4 摺滑部材、5 下部プレート、6 摺滑部材、10 支承装置、11 上沓、12 下沓、13 弾性体、13a 弾性層、13b 補強板、13c 上板、13d 下板、14 凸部、15 凹部、16 拘束体、16a 拘束面、17 (第一)固定ボルト、17a (第一)ボルト凹部、17b (第一)貫通孔、17c (第一)ボルト座部、17d (第一)ネジ穴、17e (第一)ネジ部、17f (第一)ボルト頭部、18 潤滑剤、21 芯材、22 大径部、23 ネジ穴,24 固定部材、24a ボルト凹部、25 上揚防止片、30 支承装置、31 フランジ部、40 支承装置、41 フランジ板、42 ネジ穴、43 固定ボルト、44 ボルト凹部、45 貫通孔、50 支承装置、51 フランジ部、52 第二固定ボルト、52a 第二ボルト凹部、52b 第二貫通孔、52c 第二ボルト座部、52d 第二ネジ穴、52e 第二ネジ部、52f 第二ボルト頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一剛性体と、
第二剛性体と、
前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に配設される弾性体と、
前記弾性体を囲繞する拘束体とを備え、
前記拘束体は、前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れかに、ネジ部を有する固定ボルトによって固定され、
前記拘束体、前記拘束体が固定される剛性体の何れか一方には、前記固定ボルトのネジ部が締め付けられるネジ穴と予備ネジ穴が形成され、他方には、前記固定ボルトのネジ部が挿通されるネジ穴に対応した貫通孔が形成され、
前記拘束体は、前記固定ボルトのネジ部が前記貫通孔に挿通され前記ネジ穴に締め付けられることで前記剛性体に固定され、
前記固定ボルトが破断した場合、前記拘束体は、新たな前記固定ボルトのネジ部が前記貫通孔に挿通され前記予備ネジ穴に締め付けられることで前記剛性体に固定されることを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記ネジ穴及び前記予備ネジ穴は、前記拘束体に形成され、
前記貫通孔は、前記拘束体が固定される剛性体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記ネジ穴及び前記予備ネジ穴は、前記拘束体が固定される剛性体に形成され、
前記貫通孔は、前記拘束体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項4】
前記拘束体は、前記拘束体が固定される剛性体側の端部にフランジ部が形成され、
前記フランジ部に、前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の支承装置。
【請求項5】
前記拘束体は、前記拘束体が固定される剛性体側の端部にフランジ板が固定され、
前記フランジ板に、前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の支承装置。
【請求項6】
前記予備ネジ穴は、前記ネジ穴の間に形成されていることを特徴とする請求項1−5の何れかに記載の支承装置。
【請求項7】
前記弾性体の側面には、凸部又は凹部が設けられていることを特徴とする請求項1−6の何れかに記載の支承装置。
【請求項8】
所定以上入力されると、前記弾性体が弾性変形し、弾性変形した前記弾性体の側面が前記拘束体に当接及び/又は圧接して前記弾性体の変形が拘束されることを特徴とする請求項1−7の何れかに記載の支承装置。
【請求項9】
所定以上入力されると、前記弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記拘束体とによって囲繞されて半密閉状態とされ、
前記弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化することを特徴とする請求項1−8の何れかに記載の支承装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−113018(P2013−113018A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260919(P2011−260919)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【特許番号】特許第5186589号(P5186589)
【特許公報発行日】平成25年4月17日(2013.4.17)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】