説明

支持部材、およびトンネル拡幅部の構築方法

【課題】トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられるコンクリート躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位の強度を確保するとともに、作業性に優れ、溶断作業等の不要なセグメント及びセグメントとコンクリート躯体との接合方法を提供する。
【解決手段】セグメント1はトンネル施工時にはスキンプレート5を有した状態で使用される。コンクリート躯体の構築時には、スキンプレート5が撤去され孔35、孔37を有する鋼板31が設けられ、支持部材30が構築される。孔35、孔37は、セグメント1を貫通して設けられ、コンクリート躯体との接合時に、コンクリート躯体の補強鉄筋等が貫通して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられるコンクリート躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位に使用される支持部材、およびトンネル拡幅部の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルを有する高速道路の合流部等の施工方法としては、シールドトンネルを設けた後、合流部のシールドトンネルに部分的な開口部を設け、当該開口部に別途コンクリート躯体を設けて、コンクリート躯体により形成される空間とトンネルを連結する方法が取られている。このようなコンクリート躯体との接合部位におけるセグメントは、コンクリート躯体との接合施工時に、セグメントの加工を行う必要がある。
【0003】
図8は、従来使用されている鋼製のセグメント70を示す斜視図である。セグメント70は主に、スキンプレート71、側板73、縦リブ75、および継手板79等から構成される。トンネル外周面に相当するスキンプレート71は、トンネル外径に対応して湾曲した形状となっている。スキンプレート71の長辺側の両端には側板73が設けられる。また、スキンプレート71の短辺側の両端には、継手板79が設けられる。すなわち、スキンプレート71と側板73と継手板79により、箱型の形状となる。
【0004】
側板73と垂直方向には、一定間隔で縦リブ75が設けられる。縦リブ75は、トンネルの軸方向に配されたリブであり、シールドジャッキの推力に抵抗するとともに、スキンプレート71に作用する荷重を側板73へ伝達する役割を持つ。また、縦リブ75は、トンネル完成時において、側板73の座屈を抑止するための役割も持つ。
【0005】
側板73には、トンネルの軸方向のセグメント70同士を接合するための継手穴77が設けられる。また、継手板79には、セグメント70を周方向に接合するための接合穴81が設けられる。従って、セグメント70はトンネルの周方向および軸方向にそれぞれ接続される。ここで、各部材は鋼製であり、それぞれ溶接によって接合されている。
【0006】
図9は、セグメント70が隣接するコンクリート躯体と接合される場合の加工状態を示した図である。セグメント70とコンクリート躯体とを接合するためには、まず、セグメント70のスキンプレート71を取り外す。スキンプレート71が取り外されることで、セグメント70は梯子状となり、トンネルの内外部が空間的につながる。
【0007】
また、縦リブ75の中央部(図9の斜線部)が切断される。切断は、コンクリート躯体内に埋め込まれる補強鉄筋等との干渉を避けるためである。また、この際、縦リブ75と側板73との接合部近傍の一部は切断されずに残される。この部位が、コンクリート躯体との接合時に、シアコネクタ83として機能し、コンクリート躯体とセグメント70とのせん断接合強度を保持する。
【0008】
図10は加工後のセグメント70がコンクリート躯体85に埋め込まれて接合された状態を示す図である。図10に示すように、コンクリート躯体85に埋め込まれたセグメント70は、シアコネクタ85により、セグメント70とコンクリート躯体85とのせん断方向のずれが防止され、確実に接合される。このように、コンクリート躯体85との接合部位に使用されるセグメント70は、接合強度を得るため、シアコネクタ85を設けなければならないが、縦リブ75の切断は通常溶断により行われ、シール部材等の可燃物が近傍にあるため危険であり、作業性も悪い。
【0009】
このようなコンクリート躯体とセグメントとの接合部位の構造としては、この他に例えば、セグメント先端とコンクリート打設前の補強鉄筋を交差して配置するとともに、トンネルの頂版の端縁からの張り出し部補強鉄筋が、セグメントリングの頂部とセグメントリング中心を結ぶ垂直線を越えて先端がセグメントリングまで届くまで伸長配置し、セグメントとコンクリートが埋設一体化するセグメントの接合構造がある(特許文献1)。
【0010】
また、鋼殻の中空部に取り付けた鉄筋継手にRC部材を形成するための鉄筋を連結し、コンクリートを打設してRC部材を形成するとともに、鋼殻の中空部にコンクリートを充填することにより、鋼殻の外側にRC部材を一体に接合した鋼殻とRC部材との接合構造がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−188398号公報
【特許文献2】特開2006−97317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の接合構造では、セグメントとコンクリート躯体との接合部位を大きくすることはできるものの、セグメントとコンクリート躯体との接合強度を確保するためには、従来技術と同様に接合部位のセグメントを加工する必要があり、危険であるとともに、作業性が悪いという問題がある。また、トンネル内において補強鉄筋の施工作業等が必要となるが、トンネル内においては作業が制約される場合があるという問題がある。
【0012】
特許文献2の接合構造では、ウェブの内面にフランジ及び補強リブを溶接する必要があり、また、鉄筋継手を所定の間隔で取り付け、鋼殻とRC部材の補強鉄筋とを接続する必要がある。このため、構造が複雑であるとともに、作業工数を要するという問題がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられるコンクリート躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位の強度を確保するとともに、作業性に優れ、溶断作業等の不要な支持部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、スキンプレートと、前記スキンプレートの長辺側に設けられた側板と、前記スキンプレートの短辺側に設けられた応力伝達部と、を具備するセグメントの前記スキンプレートを取り外し、複数の孔を有する鋼板を設け、前記孔が支持部材を貫通することを特徴とする支持部材である。ここで支持部材とは、セグメントからスキンプレートを撤去し、スキンプレートに代えて孔を有する鋼板が設けられ、コンクリート躯体等との接合部に用いられる部材をいう。
【0015】
前記応力伝達部は、コンクリート内部に、アンカ材が埋め込まれ、前記アンカ材の内部にはねじが設けられてもよく、前記鋼板は、前記支持部材の両面に設けられてもよい。
【0016】
第1の発明によれば、セグメントリング構築時には、セグメントはスキンプレートを有するため、外部より水の浸入はないが、躯体構築時には、スキンプレートに代えて複数の貫通孔を有する鋼板を用いるため、孔を貫通するように躯体の補強鉄筋等を設けることができ、このため、支持部材と補強鉄筋との応力伝達がスムーズに行われ、孔を含めて支持部材内部にコンクリートが打設されるため、別途シアコネクタ等を設けなくても支持部材と躯体とのせん断ずれを防止することができ、また、支持部材とコンクリートとの接合時に縦リブの溶断作業を行う必要が無いため、作業が安全で、かつ、コストが低減でき、構造が簡易な支持部材を提供することができる。
【0017】
第2の発明は、トンネル拡幅部の構築方法であって、
シールド機によりセグメントリングを設ける工程と、前記セグメントリングの外部の所定の箇所を掘削する工程と、前記セグメントリングの躯体との接合予定部に設けられた第1のセグメントのスキンプレートを取りはずし、前記第1のセグメントへ複数の孔を有する鋼板を設置する工程と、前記孔にコンクリート躯体用の補強部材を配置する工程と、前記掘削された区間へ前記第1のセグメントに端部を有するように躯体を設ける工程と、前記セグメントリングの掘削された区間の第2のセグメントを撤去する工程と、を具備することを特徴とするトンネル拡幅部の構築方法である。
【0018】
前記補強部材は、鉄筋および/または鉄骨であってもよい。
【0019】
第2の発明によれば、セグメントリング構築時には、通常のスキンプレートを有するため外部より水の浸入がないが、躯体構築時には、当該スキンプレートを複数の孔を有する鋼板と容易に交換することができ、また、孔を貫通するように躯体の補強鉄筋等を設けることができるため、複数の孔を有する鋼板が設けられたセグメント(支持部材)と鉄筋との応力伝達がスムーズに行われ、また、孔を含めて支持部材内部にコンクリートが打設されるため、別途シアコネクタ等を設けなくてもセグメントと躯体とのせん断ずれを防止することができ、支持部材とコンクリートとの接合時に縦リブの溶断作業を行う必要が無いため、作業が安全で、かつ、コストが低減できるトンネル拡幅部の構築方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられるコンクリート躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位に使用される支持部材等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、セグメント1を示す図であり、図1(a)はセグメント1の斜視図、図1(b)はセグメント1の平面図である。
【0022】
セグメント1は、主にスキンプレート5、側板3、継手部側板9等から構成される。スキンプレート5の長辺側には、側板3が設けられ、短辺側には継手部側板9が設けられる。また、スキンプレート5には、側板3と略垂直に縦リブ7が設けられる。スキンプレート5は、トンネル外周面に相当する部位であり、スキンプレート5はトンネル形状に応じた湾曲形状である。側板3は、セグメント1の側壁部で、トンネルに作用する外力に抵抗する主要部分を形成する。継手部側板9はセグメント1同士の周方向の接合部である。縦リブ7は、シールドジャッキの推力に抵抗するとともに、スキンプレート5に作用する荷重を側板3に伝達する。
【0023】
図1(b)に示すように、セグメント1の一方の端には応力伝達部21が設けられ、応力伝達部21以外の部位が埋設部23となる。埋設部23は、コンクリート躯体との接合時に、コンクリートに埋設される部分である。トンネル周方向のセグメント同士を接合する応力伝達部21は、内部にコンクリートが充填されている。応力伝達部21と埋設部23との間には仕切板14が設けられる。なお、応力伝達部21の詳細は後述する。
【0024】
応力伝達部21の端部には、継手部側板9が設けられる。継手部側板9には、貫通穴である接合穴11が設けられる。接合穴11はセグメント1をトンネル周方向に接合する際に、継手ボルト等の接合部材の取り付け時に使用される。
【0025】
側板7には継手穴13が設けられる。継手穴13は、トンネル軸方向のセグメント同士を接続するためのものである。また、側板3の応力伝達部21に該当する部位には、注入孔19が設けられる。注入孔19は、応力伝達部21にコンクリートを注入するためのものである。
【0026】
応力伝達部21を覆うようにセグメント1の両面にジベル鋼板15が設けられる。ジベル鋼板15は、応力伝達部21を覆い、埋設部23へ伸長される。ジベル鋼板15の埋設部23に該当する部分は接合部16であり、接合部16には、複数のボルト穴17が設けられる。
【0027】
図2は、図1(b)におけるA−A断面図である。図1(b)のA−A断面は、埋設アンカ27、ねじ29が配置されている部位の断面である。図2に示すように、応力伝達部21は、継手部側板9、仕切板14、ジベル鋼板15により囲まれており、内部にはコンクリート25が打設されている。ジベル鋼板15の応力伝達部21に該当する部位の内面にはジベル33が設けられる。
【0028】
継手部側板9には、接合穴11が設けられており、接合穴11部位におけるコンクリート25内には、埋設アンカ27が設けられている。埋設アンカ27はコンクリート25とアンカ効果により一体化されている。
【0029】
埋設アンカ27の端部には穴が設けられ、穴の内面には、タップ加工によりねじ29が設けられる。従って、ねじ29により、接合穴11を貫通した継手ボルト等で、隣接するセグメントと接合することができる。
【0030】
ジベル鋼板15が埋設部23に伸長された部位は接合部16であり、ボルト穴17が設けられる。応力伝達部25において、隣接するセグメントより伝達される力は、埋設アンカ27を介して、コンクリート25に伝達され、更に外側スキンプレート5、ジベル鋼板15および側板3へ伝達される。
【0031】
セグメント1は、トンネル施工時にはスキンプレート5を有する状態で使用される。スキンプレート5は穴などを有さないため、外部の地盤からトンネル内への水の浸入を防ぐことができる。なお、スキンプレート5は最終的に撤去されるため、必要最低限の厚みで良い。
【0032】
図3は、本実施の形態にかかる支持部材30を示す図であり、図3(a)は支持部材30の斜視図、図3(b)は支持部材30の平面図である。
【0033】
支持部材30は、セグメント1のスキンプレート5に代えて鋼板31を設けたものであり、トンネル拡幅工事において躯体を構築する際に、図3に示すように、セグメント1からスキンプレート5が取り外され、セグメント1の両面に鋼板31を設けることで構築される。
【0034】
鋼板31には、複数の孔35、孔37が設けられている。鋼板31の両端部は、接合部18であり、複数のボルト穴が設けられ、ボルト39によりセグメント1のボルト穴17と接合される。
【0035】
図4は、図3(b)におけるA−A断面図である。図4に示すように、スキンプレート5が撤去され、鋼板31が設けられる。鋼板31に設けられた孔35、孔37は、それぞれ、支持部材30を貫通するように設けられる。また、鋼板31の接合部18と、ジベル鋼板15の接合部16とは、ボルト39によって接合される。従って、支持部材30の埋設部23は、貫通する孔35、37を有し、鋼板31と側板3で囲まれた中空の状態である。
【0036】
図5は、コンクリート躯体との接合部に支持部材30が設けられ、コンクリート躯体の主筋61、補強鉄筋63が設けられた状態を示す図である。コンクリート躯体を構築するには、まず、コンクリート躯体の形状に応じ、必要強度が確保できるよう、主筋61および補強鉄筋63が設けられる。この際、前述したように、セグメント1からスキンプレート5が撤去され、鋼板31が設置された支持部材30が設けられる。主筋61、補強鉄筋63は、それぞれ孔35、孔37を貫通するように配置される。
【0037】
鋼板31における孔35、孔37の大きさおよび設置位置は、施工されるコンクリート躯体に使用される主筋61や補強鉄筋63の断面形状および配筋される位置によって予め決定される。例えば、角形の孔35には、コンクリート躯体の主筋61が貫通して設けられ、円形の孔37には、補強鉄筋63が貫通して設けられる。
【0038】
なお、孔35、孔37の大きさは、それぞれ主筋61、補強鉄筋63の外径よりも十分大きいため、コンクリートの打設時には、コンクリートは孔35、孔37と主筋61、補強鉄筋63の隙間から支持部材30の内部へも充填され、固結する。このため、コンクリート躯体と支持部材30内のコンクリートは一体となる。従って、孔35、孔37は、コンクリート躯体と支持部材30のずれ止めの機能をも果たし、また、貫通する主筋61、補強鉄筋63からの力を受ける機能を有する。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態にかかる支持部材30によれば、トンネル構築時には、スキンプレート5及びスキンプレートに設けられた縦リブ7を有する従来のセグメントと同様に使用され、トンネル外部からトンネル内部への水の浸入などの恐れがなく、シールドジャッキによる推力に対応する強度を有する。また、コンクリート躯体の施工時には、スキンプレート5が取り外され、複数の孔を有する鋼板31が設けられることで、コンクリート躯体に使用される主筋61、補強鉄筋63が孔35、孔37を貫通するように配置されるため、主筋61や補強鉄筋63との干渉を防ぐためセグメント1(支持部材30)の加工が不要である。
【0040】
また、孔35、孔37は、貫通する主筋61、補強鉄筋63の外形よりも大きいため、コンクリートの打設時に、コンクリートが孔35、孔37と主筋61、補強鉄筋63の隙間から、支持部材30内の中空部へ充填される。従って、孔35、孔37に充填されたコンクリートとコンクリート躯体は一体化され、コンクリート躯体と支持部材30のせん断ずれが生じず、別途シアコネクタ等の設置が不要である。
【0041】
また、応力伝達部21にねじ29を有する埋設アンカ27を設け、コンクリート25で一体化したことで、隣接するセグメントからの力は埋設アンカ27およびコンクリート25を介して、ジベル鋼板15、鋼板31および側板3へ伝達することができる。このため、継手板等が不要となり、また、継手板をスキンプレート5等へ強固に溶接することも不要となる。従って、製造工数が削減でき、溶接に起因する変形を防止することができる。
【0042】
また、鋼板31は支持部材30とボルト39により接合されるため、トンネル内での溶接作業不要である。このため、コンクリート躯体の施工工数が削減でき、また、作業が安全である。
【0043】
次に、支持部材30を使用した、トンネルの拡幅工事の工程について説明する。図6(a)〜図6(f)は、工事の各工程を示した図である。
【0044】
まず、図6(a)に示すように、トンネル施工部の上部の地面40より、土留壁41を設けるとともに、その内部を掘削する。土留壁41内部には、必要に応じて支保工43を設ける。また、土留壁41の根入れ部には予め地盤改良45を施す。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、シールド機によりトンネルを構築し、セグメントリング47a、47bを設ける。この際、コンクリート躯体と接合される部位のセグメントには、セグメント1を配置する。なお、その他の部位のセグメントは通常の鋼製セグメントや合成セグメントなどが使用できる。
【0046】
次に、図6(c)に示すように、セグメントリング47a、47b内に内部支保工49を設け、セグメントリング47の拡幅予定部位に相当するセグメントリング47aの外部(セグメントリング47a、47b間)の地盤を掘削する。掘削部には必要に応じて、支保工43を設ける。
【0047】
次に、図6(d)に示すように、セグメント1を含み、掘削した部位に面した位置(図中A部)に配置されたセグメント(通常の鋼製セグメント等)のスキンプレートを取り外す。スキンプレートを外すことで、当該セグメントは梯子状となり、セグメントリング47a、47b内部と掘削部とが空間的につながる。また、セグメント1からスキンプレート5を撤去後、図3に示すように鋼板31を接合し、支持部材30を構築する。
【0048】
この状態で、図5で示したように、支持部材30の孔35、孔37を貫通するように、コンクリート躯体の主筋61、補強鉄筋63を配置する。次いで、支持部材30および主筋61、補強鉄筋63を埋め込むように、図示しない型枠にコンクリートを打設して、下底版51を設ける。
【0049】
次に、図6(e)に示すように、支保工43、内部支保工49を撤去しながら、図示を省略した主筋61、補強鉄筋63を設置するとともに、図示しない型枠にコンクリートを打設して、側壁55および上底版53を設け、コンクリート躯体59を構築する。この状態で、セグメントリング47内には、舗装57等がなされ、例えば道路等が施工される。
【0050】
次に、図6(f)に示すように、セグメントリング47aとコンクリート躯体59との間の撤去セグメント65を撤去し、また、支保工43及び内部支保工49を全て撤去し、掘削部を埋め戻す。セグメントリング47a、47b内の道路工事等が終了すると、トンネルが完成する。
【0051】
図7は、図6(f)のB部拡大図であり、コンクリート躯体59に支持部材30が埋め込まれた状態を示す図である。支持部材30の上方に配置された一般セグメント60は、支持部材30(セグメント1)の応力伝達部21と接続されている。コンクリート躯体59の主筋61、補強鉄筋63は、支持部材30の孔35、孔37を貫通して配置される。支持部材30(セグメント1)の埋設部23は、主筋61、補強鉄筋63とともに、コンクリート躯体59に埋め込まれている。支持部材30(セグメント1)の下方には、撤去セグメント62が配置されていたが、前述の通り、コンクリート躯体59施工後に撤去される。
【0052】
本実施の形態に係る支持部材30を用いたトンネルの拡幅工事によれば、トンネル構築時には、スキンプレート5を有する従来のセグメント1として利用でき、トンネル外部からトンネル内部への水の浸入などの恐れがない。また、コンクリート躯体の施工時には、セグメント1からスキンプレート5が取り外され、孔35、孔37を有する鋼板31が取り付けられた支持部材30を構築することで、コンクリート躯体に使用される主筋61、補強鉄筋63が孔35、孔37を貫通するように配置されるため、主筋61や補強鉄筋63との干渉を防ぐための支持部材30(セグメント1)の加工作業が不要である。
【0053】
また、孔35、孔37は、貫通する主筋61、補強鉄筋63の外形よりも大きいため、コンクリートの打設時に、コンクリートが孔35、孔37と主筋61、補強鉄筋63の隙間から、支持部材30内の中空部へ充填される。従って、孔35、孔37に充填されたコンクリートとコンクリート躯体は一体化され、コンクリート躯体と支持部材30のせん断ずれが生じず、別途シアコネクタ等の設置が不要である。
【0054】
また、鋼板31は支持部材30とボルト39により接合されるため、トンネル内での溶接作業不要である。このため、コンクリート躯体の施工工数が削減でき、また、作業が安全である。
【0055】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、トンネル周方向に隣接するセグメントとの接合部としての応力伝達部21には埋設アンカ27を用いたが、通常の継手板をスキンプレートへ強固に溶接して、接合部としても良い。また、応力伝達部21は支持部材30の一方の端のみではなく、両側に設けても良い。また、鋼板31は支持部材30の両面に設けたが、外面又は内面いずれか一方のみに設けても良い。また、セグメント1へ鋼板31を接合する方法は、溶接であっても良く、または、別途接合板などを介して接合しても良い。
【0057】
支持部材30は、セグメント1のスキンプレート5を鋼板31へ交換して構築したが、セグメント1に代えて、通常の鋼製セグメントまたは合成セグメント等も使用することができる。この場合、通常の鋼製セグメント等のスキンプレートを鋼板31へ交換することで、既設のセグメントリングへのコンクリート躯体の接合時にも支持部材30を構築することができるため、支持部材30と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】セグメント1を示す図であり、(a)はセグメント1の斜視図、(b)はセグメント1の平面図。
【図2】図1(b)におけるセグメント1のA−A断面図。
【図3】セグメント1のスキンプレート5を撤去し、鋼板31を設けた支持部材30を示す図であり、(a)は支持部材30の斜視図、(b)は支持部材30の平面図。
【図4】図3(b)における支持部材30のA−A断面図。
【図5】支持部材30とコンクリート躯体の主筋61、補強鉄筋63との設置状態を示す断面図。
【図6(a)】地面40を掘削し、土留壁41および地盤改良45を設けた状態を示す図。
【図6(b)】シールド機によりセグメントリング47が設けられた状態を示す図。
【図6(c)】セグメントリング47内に内部支保工49を設け、セグメントリング47間を掘削した状態を示す図。
【図6(d)】セグメントリング47を構成する一部のセグメントのスキンプレートを取り外し、支持部材30を設け、下底版51を設けた状態を示す図。
【図6(e)】側壁55および上底版53を設け、コンクリート躯体59を施工した状態を示す図。
【図6(f)】支保工を撤去し、掘削部を埋め戻した状態を示す図。
【図7】図6(f)のB部拡大図であり、支持部材30とコンクリート躯体59とが接合された状態を示す図。
【図8】セグメント70を示す斜視図。
【図9】コンクリート躯体と接合する部位におけるセグメント70の加工状態を示す図。
【図10】セグメント70がコンクリート躯体85と接合された状態を示す図。
【符号の説明】
【0059】
1………セグメント
3………側板
5………スキンプレート
7………縦リブ
9………継手部側板
11………接合穴
13………接合穴
14………仕切板
15………ジベル鋼板
16………接合部
17………ボルト穴
18………接合部
19………注入孔
21………応力伝達部
23………埋設部
25………コンクリート
27………埋設アンカ
29………ねじ
30………支持部材
31………鋼板
33………ジベル
35………孔
37………孔
39………ボルト
40………地面
41………土留壁
43………支保工
45………地盤改良
47………セグメントリング
49………内部支保工
51………下底版
53………上底版
55………側壁
57………舗装
59………コンクリート躯体
60………一般セグメント
61………主筋
63………補強鉄筋
65………撤去セグメント
70………セグメント
71………スキンプレート
73………側板
75………縦リブ
77………継手穴
79………継手板
81………接合穴
83………シアコネクタ
85………コンクリート躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキンプレートと、
前記スキンプレートの長辺側に設けられた側板と、
前記スキンプレートの短辺側に設けられた応力伝達部と、
を具備するセグメントの前記スキンプレートを取り外し、
複数の孔を有する鋼板を設け、
前記孔が支持部材を貫通することを特徴とする支持部材。
【請求項2】
前記応力伝達部は、
コンクリート内部に、アンカ材が埋め込まれ、前記アンカ材の内部にはねじが設けられることを特徴とする請求項1記載の支持部材。
【請求項3】
前記鋼板は、前記支持部材の両面に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の支持部材。
【請求項4】
トンネル拡幅部の構築方法であって、
シールド機によりセグメントリングを設ける工程と、
前記セグメントリングの外部の所定の箇所を掘削する工程と、
前記セグメントリングの躯体との接合予定部に設けられた第1のセグメントのスキンプレートを取りはずし、前記第1のセグメントへ複数の孔を有する鋼板を設置する工程と、
前記孔にコンクリート躯体用の補強部材を配置する工程と、
前記掘削された区間へ前記第1のセグメントに端部を有するように躯体を設ける工程と、
前記セグメントリングの掘削された区間の第2のセグメントを撤去する工程と、
を具備することを特徴とするトンネル拡幅部の構築方法。
【請求項5】
前記補強部材は、
鉄筋および/または鉄骨であることを特徴とする請求項4記載のトンネル拡幅部の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図6(d)】
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【図6(e)】
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【図6(f)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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