説明

改善した触媒性能のための添加剤および潤滑剤処方物

【課題】向上したリン保持を示す潤滑油で表面を潤滑するための方法および組成物。
【解決手段】この潤滑面は、潤滑粘度の基油、一定量の少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の少なくとも1種の炭化水素可溶性チタン化合物を含有する潤滑剤組成物を含み、前記チタン化合物が、この炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒を提供するのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、現在係属中である2007年5月9日出願の米国特許出願第11/745,803号の一部継続出願である。
【0002】
本明細書中に記載する実施形態は、特定の油溶性の金属添加剤、および潤滑油処方物におけるこのような金属添加剤の使用に関し、特に排ガス触媒性能特性を改善するために使用する可溶性チタン添加剤に関する。
【背景技術】
【0003】
50年以上もの間、自動車のエンジンオイルには、低レベルの磨耗、酸化、および腐蝕をもたらす亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)が配合されてきた。この添加剤は実にどこにでも使われており、ほぼすべての現在のエンジンオイルに見出すことができる。ZDDPは、耐磨耗、酸化防止、および耐腐蝕の領域で多機能の性能を賦与し、エンジンオイルの製造者および販売者による一般的な使用では紛れもなく最も費用対効果が高い添加剤の1つである。
【0004】
しかし、エンジンオイルに由来するリンは、揮発して燃焼室を通過する可能性があり、その結果、元素状のリンが触媒システム上に堆積し、触媒効率が低下するという懸念がある。ZDDPは、リンの供給源となることが知られている。リンは、燃焼したオイルに由来するリンが貴金属触媒部位を覆う可能性がある不浸透性の薄膜を形成すると、排ガス触媒転換器および酸素センサに関する重大な問題を引き起こす可能性がある。結果として、エンジンオイルで使用するリン含有化合物の量を制御し/または減らして転換器および酸素センサの寿命をより長くするため、そして貴金属の含量を下げることにより転換器に対する製造業者の初期費用を下げるためという自動車メーカーからの圧力がある。
【0005】
潤滑油のリン含量を下げると触媒転換器の寿命または効率を改善するかも知れないが、他方で摩擦制御および磨耗の防止についてのリン添加剤の利点は、リン不含有添加剤によっては都合よくは満たされない可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、潤滑油組成物の全リン含量を大きくは下げることなく触媒活性の保護を可能にする添加剤および方法に対する競合する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中の1種の実施形態では、潤滑粘度を有する基油、一定量のリン含有化合物、および一定量の少なくとも1種の炭化水素可溶性チタン化合物を含む潤滑剤組成物を含有する潤滑面を提示する。このチタン化合物は、この炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効である。
【0008】
別の実施形態では、可動部分を有し、かつこの可動部分を潤滑するための潤滑剤を含有する車両を提供する。この潤滑剤は、潤滑粘度を有する基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の少なくとも1種の炭化水素可溶性チタン化合物を含む。このチタン化合物は、この炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、
一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効である。
【0009】
さらに別の実施形態では、完全処方の潤滑剤組成物を提供する。この潤滑剤組成物は、潤滑粘度を有する基油成分、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の炭化水素可溶性チタン含有薬剤を含む。このチタン含有薬剤は、この炭化水素可溶性チタン含有薬剤がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効である。このチタン含有薬剤は、実質的に硫黄およびリン原子を含まない。
【0010】
本開示のさらなる実施形態は、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換するのに有効は劣化排ガス触媒温度を下げる方法を提供する。この方法は、エンジン部品を、潤滑粘度を有する基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の炭化水素可溶性チタン化合物を有する潤滑剤組成物と接触させることを含む。このチタン化合物は、この炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化排ガス触媒温度よりも低い、劣化排ガス触媒温度を提供するのに有効である。
【0011】
上に手短に示したように、本開示の実施形態は、本発明でなければ時間がたてば排ガス触媒性能に悪影響を及ぼすリン化合物を含有する潤滑剤組成物を使用するにもかかわらず、排ガス触媒性能を大きく改善する可能性がある炭化水素可溶性チタン添加物を提供する。この添加剤は、可動部分間の表面に塗布される油性流体と混合することもできる。他の用途では、この添加剤は、完全処方の潤滑剤組成物中に提供されてもよい。この添加剤は、特に、現在提案されている、乗用車用モーターオイルに対するGF−5規格および大型車両用ディーゼルエンジン用オイルに対するPC−10規格、ならびに将来の乗用車およびディーゼルエンジン用オイルの仕様を満たすことに向けられている。この添加剤は、車両がEPA Tier−II、BIN5のような厳しい120,000マイル触媒耐久性効率規格を満たすようにするために特に有用である。
【0012】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はともに、例示的なものであって説明のためのみのものであり、開示し特許請求する実施形態のさらなる説明を提供することを意図していることを理解すべきである。
【0013】
例示的な実施形態のさらなる利点は、その1つ以上の非限定的な局面を図示する以下の図面と組み合わせて考察した場合に、例示的な実施形態の詳細な説明を参照することによって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書中に記載する潤滑剤組成物に供する添加剤および濃縮物の第一成分は、炭化水素可溶性チタン化合物である。用語「炭化水素可溶性」は、例えば反応性金属化合物と炭化水素物質との反応または錯体形成により、その化合物が実質的に炭化水素物質に実質的に分散しているか溶解していることを意味する。本明細書中で使用する場合、「炭化水素」は、種々の組合せで炭素、水素、および/または酸素を含有する膨大な数の化合物のいずれかを意味する。
【0015】
用語「ヒドロカルビル」とは、分子の残りの部分と直接結合した炭素原子を有し、かつ主として炭化水素の性質を有する基をいう。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、
シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族置換、脂肪族置換および脂環式置換芳香族置換基、ならびに環がその分子の別の部分を通って完結している(例えば、2つの置換基が一緒に脂環式ラジカルを形成する)場合の環式置換基;(2)置換炭化水素置換基、すなわち本明細書の記載の文脈において主として炭化水素である置換基を変えない非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、塩素およびフッ素)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)を含む置換基;(3)ヘテロ置換基、すなわち主として本明細書の記載の文脈における炭化水素の性質を有しつつも、他の部分は炭化水素から構成される環中または鎖中に炭素以外のものを含む置換基、が挙げられる。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに2つ以下、好ましくは1つ以下の非炭化水素置換基が存在する;代表的には、ヒドロカルビル基中には非炭化水素置換基は存在しない。
【0016】
例えばリン保持剤として本発明中で使用するのに適した炭化水素可溶性チタン化合物は、チタンアルコキシドと約C〜C25のカルボン酸との反応生成物によってもたらされる。この反応生成物は、以下の式:
【化1】

または式:
【化2】

で表すことができ、ここで、nは2,3、および4から選択される整数であり、Rは約5〜約24個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、R、R、RおよびRの各々は同じでも異なっていてもよく、そして約5〜約25個の炭素原子を含むヒドロカルビル基から選択される。上記の式の化合物は、本質的にリンおよび硫黄を含まない。
【0017】
1つの実施形態では、この炭化水素可溶性チタン化合物は、実質的にまたは本質的に硫黄およびリンがないかまたはそれらを含まず、その結果、この炭化水素可溶性チタン化合物を含む潤滑剤または処方潤滑剤パッケージが約0.7重量%以下の硫黄および0.12重量%以下のリンしか含有しない。
【0018】
別の実施形態では、この炭化水素可溶性チタン化合物は、実質的に活性硫黄を含まない。「活性」硫黄は、完全には酸化されていない硫黄のことである。活性硫黄はさらに酸化し、使用するにつれてオイル中でより酸性になる。
【0019】
さらに別の実施形態では、この炭化水素可溶性チタン化合物は、実質的にすべての硫黄を含まない。さらなる実施形態では、この炭化水素可溶性チタン化合物は、実質的にすべてのリンを含まない。
【0020】
なおさらなる実施形態では、この炭化水素可溶性チタン化合物は、実質的にすべての硫黄およびリンを含まない。例えば、このチタン化合物が溶解している基油は、比較的少量の硫黄を含むことができる。例えば、1つの実施形態では、0.5重量%未満であり、別の実施形態では約0.03重量%以下の硫黄(例えば、グループIIの基油について)であり、そしてなおさらなる実施形態では基油中の硫黄および/またはリンの量を、完成した油が施行されている適切なモーターオイル用硫黄および/リン仕様を所定の時間で満たすことができる量に制限することができる。
【0021】
チタン/カルボン酸生成物の例としては、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などから選択される酸とチタンとの反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。このようなチタン/カルボン酸生成物を製造するための方法は、例えば、米国特許第5,260,466号に記載されている。この特許文献の開示を本明細書中に参考として援用する。
【0022】
本明細書中に記載する実施形態の炭化水素可溶性チタン化合物は、潤滑剤組成物中に有利に取り入れることができる。従って、この炭化水素可溶性チタン化合物は、その潤滑油組成物中に直接添加することができる。しかし、1つの実施形態では、炭化水素可溶性チタン化合物は、鉱油、合成油(例えば、ジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル(例えばC10〜C13アルキル)化ベンゼン、トルエンまたはキシレンのような実質的に不活性で通常は液体の有機希釈剤で希釈して、チタン添加剤濃縮物を形成する。このチタン添加剤濃縮物は、通常、約0重量%〜約99重量%の希釈油を含む。
【0023】
潤滑油処方物を調製する際には、炭化水素油(例えば、鉱物潤滑油)または他の適切な溶剤中1〜99重量%の活性成分濃縮物の形態にあるチタン添加剤濃縮物を導入することを通常おこなう。通常、これらの濃縮物は、分散剤/禁止剤(DI)添加剤パッケージ、およびDIパッケージ1重量部あたり0.01〜50重量部の潤滑油を含む粘度指数(VI)向上剤とともに潤滑油に添加して、完成した潤滑剤(例えば、クランクケースモーターオイル)を形成することができる。適切なDIパッケージは、例えば米国特許第5,204,012号および同第6,034,040号に記載されている。DI添加剤パッケージに含まれる多くのタイプの添加剤としては、清浄剤、分散剤、磨耗防止剤、摩擦調整剤、シール膨張剤(seal swell agent)、抗酸化剤、潤滑剤、発泡防止剤、潤滑剤、防錆剤、腐蝕防止剤、乳化破壊剤、粘度指数向上剤などがある。これらの成分のいくつかは、当業者には周知であり、好ましくは従来の量で本明細書中に記載する添加剤および組成物とともに使用される。
【0024】
別の実施形態では、上記チタン添加剤濃縮物は、完全処方のモーターオイルまたは完成した潤滑剤の中に最後に添加する(top treat)することができる。もちろん、チタン添加剤濃縮物およびDIパッケージの目的は、種々の物質の取り扱いをより難しく厄介なものにしないようにすること、および最終のブレンドにおける溶解または分散を容易にすることである。代表的なDIパッケージは、分散剤、抗酸化剤、清浄剤、磨耗防止剤、消泡剤、流動点降下剤、ならびに必要に応じてVI向上剤およびシール膨潤剤を含むことができる。
【0025】
本明細書中に記載する実施形態は、炭化水素可溶性チタン化合物の濃度が比較的低く、完成した潤滑剤組成物中の元素のチタンとして約1〜約1500ppmのチタンを含む潤滑油および潤滑剤組成物を提供する。1つの実施形態では、このチタン化合物は、約50〜約1000ppmのチタンを、そしてさらなる実施形態では約50〜約500ppmの
チタンを提供するのに十分な量で潤滑油組成物に存在する。
【0026】
上記の炭化水素可溶性チタン添加剤を用いて製造される潤滑剤組成物は、広範な用途で使用される。圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンについては、潤滑剤組成物が公表されたILSAC GF−4規格またはAPI−CJ−4規格を満たすか超えることが好ましい。上述のILSAC GF−4規格またはAPI−CJ−4規格に従う潤滑剤組成物は、完全処方の潤滑剤を提供するために、基油、DI添加剤パッケージ、および/またはVI向上剤を含む。本開示に従う潤滑剤のための基油は、天然潤滑油、合成潤滑油およびこれらの混合物から選択される、潤滑粘度を有する油である。このような基油としては、火花点火内燃機関および圧縮点火内燃機関(例えば、自動車およびトラック用エンジン、船舶および鉄道用のディーゼルエンジンなどのためのクランクケース潤滑油として従来用いられているものが挙げられる。
【0027】
(リン含有化合物)
潤滑剤組成物の別の成分はZDDPのようなリン含有化合物である。適切なZDDPは、特定量の1級および/または2級アルコールから調製することができる。例えば、これらのアルコールは、約100:0〜約0:100の1級アルコール:2級アルコールの比で組み合わせることができる。さらなる例として、これらのアルコールは、約60:40の1級アルコール:2級アルコールの比で組み合わせることができる。適切なZDDPの例は、(i)約50〜約100mol%の約C〜約C18の1級アルコール;(ii)50mol%までの約C〜約C18の2級アルコール;(iii)リン含有成分;および(iv)亜鉛含有成分を組み合わせることにより得られる反応生成物を含むことができる。さらなる例として、この1級アルコールは、約C〜約C18のアルコールの混合物であってもよい。なおさらなる例として、この1級アルコールは、C〜Cの1級アルコールの混合物であってもよい。2級アルコールもまた、アルコールの混合物であってもよい。例として、この2級アルコールは、Cアルコールを含むことができる。このアルコールは分枝鎖、環状鎖または直鎖のいずれかを含んでいてもよい。ZDDPは、約60mol%の1級アルコールおよび約40mol%の2級アルコールの組合せを含むことができる。代替として、ZDDPは約100mol%の2級アルコールまたは約100mol%の1級アルコールを含むことができる。
【0028】
上記リン含有化合物のリン含有成分は、任意の適切なリン含有成分を含むことができ、その例としては硫化リンが挙げられるが、これに限定されない。適切な硫化リンとしては、五硫化リン、または三硫化四リンを挙げることができる。
【0029】
亜鉛含有成分は、任意の適切な亜鉛含有成分を含むことができ、その例としては酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛(zinc propylate)、塩化亜鉛、プロピオン酸亜鉛または酢酸亜鉛が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
この反応生成物は、得られる混合物、成分、または成分の混合物を含むことができる。この反応生成物は、未反応の反応物、化学結合した成分、生成物、または極性結合した成分を含んでいてもいなくてもよい。
【0031】
ZDDPまたは灰分含有リン化合物は、潤滑剤組成物中のリンが約0.02重量%〜約0.15重量%になるのに十分な量で存在することができる。
【0032】
加えて、または代わりに、灰分を含まないリン化合物が、リン含有化合物の混合物に含まれていてもよい。この灰分を含まないリン化合物は、リン酸の有機エステル、亜リン酸の有機エステル、またはそれらのアミン塩から選択することができる。例えば、灰分を含まないリン含有化合物としては、1種以上の亜リン酸ジヒドロカルビル、亜リン酸トリヒ
ドロカルビル、リン酸モノヒドロカルビル、リン酸ジヒドロカルビル、リン酸トリヒドロカルビル、任意のその硫黄アナログ、ならびにそれらのアミン塩を挙げることができる。さらなる例として、灰分を含まないリン含有化合物としては、リン酸モノヒドロカルビルおよびリン酸ジヒドロカルビルのアミン塩の少なくとも1種またはこれらの混合物(例えば、アミル酸リン酸塩は、モノアミル酸リン酸塩およびジアミル酸リン酸塩の混合物であってもよい)を挙げることができる。
【0033】
潤滑油組成物中の灰分含有リン化合物に由来するリンおよび灰分を含まないリン化合物に由来するリンに基づく重量比は、約3:1〜約1:3の範囲であってもよい。使用することができるリン化合物の別の混合物は、灰分含有リン化合物に由来するリン約0.5〜約2.0重量部、および灰分を含まないリン化合物に由来するリン約1重量部までを含むことができる。リン化合物のさらに別の混合物は、灰分含有リン化合物に由来するリンおよび灰分を含まないリン化合物に由来するリンをほぼ等しい重量部で含むことができる。灰分含有リン化合物に由来するリンおよび灰分を含まないリン化合物に由来するリンの混合物の例を以下の表に提供する。
【0034】
潤滑油処方物中のリン含有化合物の混合物は、その潤滑油処方物中に約300〜約1200重量ppmの全リンを提供するのに十分な量で存在することができる。さらなる例として、リン含有化合物の混合物は、その潤滑油処方物中に約500〜約800重量ppmの全リンを提供するのに十分な量で存在することができる。
【0035】
本明細書中に開示するリン含有化合物およびチタン化合物の混合物は、他の添加剤と組み合わせて使用される。この添加剤は、代表的には、その添加剤が所望の機能を果たすことができる量で基油にブレンドされる。クランクケース潤滑剤として使用する場合の、このリン含有化合物およびチタン化合物の混合物および添加剤の代表的な有効量を以下の表1に列挙する。列挙したすべての値は、活性成分を重量%で示したものである。
【0036】
(表1)
【表1】

【0037】
(分散剤成分)
DIパッケージに含まれる分散剤としては、分散すべき粒子と会合することができる官能基を有する油溶性のポリマー状炭化水素骨格が挙げられるが、これに限定されない。代表的には、この分散剤は、たいていは架橋部分で上記ポリマー骨格に結合したアミン、アル
コール、アミド、またはエステル極性部分を含む。分散剤は、米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載されるようなマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載されるような無灰スクシンイミド分散剤;米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号および同第5,633,326号に記載されるようなアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号および同第5,627,259号に記載されるようなコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号および同第5,792,729号に記載されるようなポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択することができる。
【0038】
(酸化防止剤成分)
酸化防止剤または抗酸化剤は、ベースストックが使用中に劣化する傾向を低減する。この劣化は、スラッジ、金属表面に堆積するワニスのような堆積物のような酸化生成物によって、または完成した潤滑剤の粘度上昇によって明らかになり得る。このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、硫化ヒンダードフェノール、C〜C12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化アルキルフェノールまたは非硫化アルキルフェノールのいずれかの金属塩(例えば、カルシウムノニルフェノールスルフィド)、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リン硫化または硫化炭化水素、リン酸エステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載される油溶性銅化合物が挙げられる。
【0039】
上記炭化水素可溶性チタン化合物と組合せで使用することができる他の抗酸化剤としては、米国特許公開公報第2004/0266630号に記載される立体的に嵩高いフェノール;ジアリールアミン;アルキル化フェノチアジン;硫化化合物;および無灰ジアルキルジチオカルバメートが挙げられる。
【0040】
ジアリールアミン抗酸化剤としては、以下の式を有するジアリールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【化3】

【0041】
ここで、R’およびR”は、各々独立に、置換または非置換の6〜30個の炭素原子を有するアリール基を示す。
【0042】
別のクラスのアミン抗酸化剤としては、以下の化学式を有するフェノチアジンまたはアルキル化フェノチアジンが挙げられる。
【化4】

ここで、Rは直鎖または分枝状のC〜C24アルキル、アリール、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基であり、Rは水素または直鎖もしくは分枝状のC〜C24
アルキル、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基である。
【0043】
硫黄含有抗酸化剤としては、それらの生産において使用したオレフィンのタイプおよびその抗酸化剤の最終硫黄含量によって特徴づけられる硫化オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち168〜351g/モルの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用することができるオレフィンの例としては、α−オレフィン、異性化α−オレフィン、分枝状オレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組合せが挙げられる。上述のアミン抗酸化剤、フェノチアジン抗酸化剤、および硫黄含有抗酸化剤は、例えば、米国特許第6,599,865号に記載されている。
【0044】
抗酸化剤添加剤として使用することができる無灰ジアルキルジチオカルバメートとしては、上記添加剤パッケージ中に可溶または分散可能である化合物が挙げられる。使用することができるジアルキルジチオカルバメートの例は、以下の特許に開示されている:米国特許第5,693,598号;同第4,876,375号;同第4,927,552号;同第4,957,643号;同第4,885,365号;同第5,789,357号;同第5,686,397号;同第5,902,776号;同第2,786,866号;同第2,710,872号;同第2,384,577号;同第2,897,152号;同第3,407,222号;同第3,867,359;号;および同第4,758,362号。
【0045】
摩擦調整剤として使用する有機モリブデン含有化合物も、抗酸化剤としての機能を示すことがある。米国特許第6,797,677号は、完成した潤滑剤処方物で使用するための有機モリブデン化合物、アルキルフェノチアゼンおよびアルキルジフェニルアミンの組合せを記載している。適切なモリブデン含有摩擦調整剤の例は、以下の摩擦調整剤の節で説明する。
【0046】
(摩擦調整剤成分)
硫黄もリンも含まない有機モリブデン化合物としては以下の特許に記載される化合物が挙げられる;米国特許第4,259,195号;同第4,261,843号;同第4,164,473号;同第4,266,945号;同第4,889,647号;同第5,137,647号;同第4,692,256号;同第5,412,130号;同第6,509,303号;および同第6,528,463号。
【0047】
硫黄含有モリブデン化合物の例としては、以下の特許に記載される化合物が挙げられる;米国特許第3,509,051号;同第3,356,702号;同第4,098,705号;同第4,178,258号;同第4,263,152号;同第4,265,773号;同第4,272,387号;同第4,285,822号;同第4,369,119号;同第4,395,343号;同第4,283,295号;同第4,362,633号;同第4,402,840号;同第4,466,901号;同第4,765,918号;同第4,966,719号;同第4,978,464号;同第4,990,271号;同第4,995,996号;同第6,232,276号;同第6,103,674号;および同第6,117,826号。
【0048】
グリセリドも単独で、または他の摩擦調整剤と組み合わせて使用することができる。適切なグリセリドとしては、以下の式のグリセリドが挙げられる。
【化5】

ここで各Rは、独立にHおよびC(O)R’からなる群から選択され、R’は3〜23個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル基である。
【0049】
(他の添加剤)
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、アニオン性アルキルスルホン酸から選択される防錆剤を使用することができる。
【0050】
少量の乳化破壊成分を使用することができる。好ましい乳化破壊成分は、欧州特許第330,522号に記載されている。このような乳化破壊成分は、ビスエポキシドと多価アルコールとを反応させることによって得られる付加体とアルキレンオキシドとを反応させることによって得ることができる。乳化破壊剤は、活性成分の0.1質量%を超えないレベルで使用すべきである。0.001〜0.05質量%の活性成分の処理速度が好都合である。
【0051】
流動点降下剤は、別名では潤滑油流動性向上剤(lube oil flow improver)としても公知であり、その流体が流れるかまたはそれを注ぐことができる最低温度を下げる。このような添加剤は公知である。流体の低温流動性を改善するこれらの点化剤の代表的なものは、C〜C18ジアルキルフマレート/酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキルメタクリレートなどである。
【0052】
泡制御は、ポリシロキサンタイプの消泡剤、例えばシリコーン油またはポリジメチルシロキサンが挙げられる多くの化合物によって実現することができる。
【0053】
例えば、米国特許第3,794,081号および同第4,029,587号に記載されるようなシール膨潤剤も使用することができる。
【0054】
粘度調整剤(VM)は、潤滑油に高温および低温での操作性を賦与する機能を果たす。使用するVMは、その単独の機能を有していてもよいし、多機能であってもよい。
【0055】
分散剤としての機能も果たす多機能粘度調整剤も公知である。適切な粘度調整剤は、ポリイソブチレン;エチレンとプロピレンと高級α−オレフィンとのコポリマー;ポリメタクリレート;ポリアルキルメタクリレート;メタクリレートコポリマー;不飽和ジカルボン酸およびビニル化合物とのコポリマー;スチレンとアクリルエステルとの共重合体(interpolymer);ならびにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分水素化コポリマー;ならびにブタジエンおよびイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分水素化ホモポリマーである。
【0056】
使用することができる官能化オレフィンコポリマーとしては、無水マレイン酸のような活性モノマーでグラフトし、その後アルコールまたはアミンで誘導体化したエチレンとプロピレンとの共重合体が挙げられる。他のこのようなコポリマーは、窒素化合物でグラフトしたエチレンとプロピレンのコポリマーである。
【0057】
使用する場合、上述の添加剤の各々は、潤滑剤に所望の特性を賦与するための機能的有効量で使用する。従って、例えば添加剤が腐蝕防止剤である場合、この腐蝕防止剤の機能的有効量は、潤滑剤に所望の腐蝕防止特性を賦与するために十分な量である。一般に、これらの添加剤の各々の濃度は、潤滑油組成物の重量に基づき約20重量%までの範囲であり、1つの実施形態では潤滑油組成物の重量に基づき約0.001重量%〜約20重量%、そして1つの実施形態では約0.01重量%〜約10重量%の範囲である。
【0058】
炭化水素可溶性チタン添加剤は、潤滑油組成物に直接添加することができる。しかし、1つの実施形態では、それらは鉱油、合成油、ナフサ、アルキル(例えばC10〜C13アルキル)化ベンゼン、トルエンまたはキシレンのような実質的に不活性で通常は液体の有機希釈剤で希釈して、添加剤濃縮物を形成する。これらの濃縮物は、通常、約1重量%〜約100重量%、1つの実施形態では約10重量%〜約90重量%のチタン化合物を含む。
【0059】
(基油)
本明細書中に記載する組成物、添加剤、および濃縮物を処方する際に使用するのに適した基油は、合成油または天然油またはこれらの混合物のいずれかから選択することができる。合成基油としては、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリ−α−オレフィン(ポリブテンが挙げられる)、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコーン油、およびアルキレンオキシドポリマー、末端のヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって変性されたこれらの共重合体、コポリマーおよび誘導体が挙げられる。
【0060】
天然基油としては、動物油および植物油(ヒマシ油、ラード油)、鉱油、ならびにパラフィン、ナフテンおよびパラフィン−ナフテン混合タイプの水素化精製鉱油系潤滑油、溶媒処理鉱油系潤滑油または酸処理鉱油系潤滑油が挙げられる。石炭または頁岩から誘導した潤滑粘度を有する油も有用な基油である。基油は、代表的には、100℃で約2.5〜約15cSt、好ましくは約2.5〜約11cStの粘度を有する。
【0061】
実施形態の局面を例示する目的のために以下の実施例を提示するが、決して実施形態を限定する意図はない。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
(ネオデカン酸チタン)
冷却器、ディーン−スタークトラップ、温度計、熱電対およびガス取込口を備えた反応容器の中にネオデカン酸(600g)を入れた。窒素ガスを酸の中に吹き込んだ。チタンイソプロポキシド(245g)を、激しく攪拌しながらこの反応容器にゆっくりと加えた。反応物を140℃に加熱し、1時間攪拌した。反応物からのオーバーヘッドおよび凝縮物をトラップに集めた。この反応容器に大気より低い圧力を加え、反応が完結するまで、反応物をさらに2時間攪拌した。反応物の分析により、生成物が100℃での14.3cStの動粘性率、および6.4重量%のチタン含量を有していることが分かった。
【0063】
触媒性能を、エージングプロセスの前後で、転換効率(CE)試験を実行することにより決定した。本開示の目的のために、「劣化触媒」は、転換されるべき排ガス成分を含む排ガスに以前に曝露されたことがある任意の触媒である。例えば、触媒を、約17,000〜約20,000マイルに対する触媒を含む車両の動作を模擬試験するのに十分な量の排ガスに曝露してもよい。このCE評価では、エンジンを定常状態で運転し、排ガス温度を定常触媒入口温度を維持するように制御する。排ガス入口温度を15℃間隔で200℃
から440℃まで段階的に上昇させ、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、および窒素酸化物(NO)排出物を触媒の前後に挿入したプローブを通して測定する。データから曲線を作成し、「T50」値すなわち各排出物のタイプに対して50%転換率が起こる温度を求める。触媒のエージングの前後でT50値を比較することにより、触媒劣化の相対量を決定し互いに比較することができる。エージングプロセスは、油がリン含有添加剤を含まない場合を除いて、たいていは、T50値のすべての上昇をもたらす。性能試験の間に起こる主要な不活性化が化学的不活性化であるように、極端な温度を用いた触媒の熱的不活性化は避ける。
【0064】
図1は、いくつかの5W−30マルチグレード潤滑剤処方物についての性能比較を図示する。炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、および窒素酸化物(NO)の50%を転換するためのT50温度は、表2の潤滑剤処方物を含むエンジンからの排ガス触媒について決定した。これらの処方物の添加剤金属含量は、表3に示しており、これらの処方物についてのT50データは表4に示している。
【0065】
この排ガス中のHCおよびCOは、触媒によって酸化反応を介してCOおよびHOに転換される。この排ガス中のNOは、触媒によって還元反応を介してNおよびNOに転換される。触媒の容積および触媒中における排ガスの滞留時間は、各性能試験について同一であるので、得られたT50温度は、示した処方物の各々について、相対比較することができる。
【0066】
以下の表では、式1の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートを1級アルコールから誘導した。式2および式4の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートをメチル−イソブチルカルビノール(MIBC)から誘導した。式3の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートを従来の2級アルコールから誘導した。
【0067】
(表2)
【表2】

【0068】
(表3)
【表3】

【0069】
(表4)
【表4】

【0070】
表4中の結果からわかるように、炭化水素可溶性チタン化合物をMIBCから誘導したZDDPと組合せて調製した97ppmのチタンを含有する処方物(処方物4)が、他のいずれのものとは違って、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)および一酸化炭素(CO)についてのT50温度が実質的により低くなる変化を示し、これにより処方物1〜3よりも改善した劣化触媒性能をもたらした。このようにして、処方物4は、上記チタン化合物がない処方物1〜3と比べて改善した触媒性能をもたらすことが期待できる。理論上の考察に限られることなく、上記チタン化合物は、経時的な触媒の化学的不活性化を低減するのに有効であると考えられる。
【0071】
本明細書全体の多くの箇所で、多数の米国特許を参照した。すべてのこのような引用した文献は、それらが完全に本明細書中に示されたかの如くに、明示的にその全体を本開示に援用する。
【0072】
上述の実施形態には、その実施においてはかなりの変更を加えることができる。従って、実施形態を本明細書中上記に示した特定の具体例に限定することは意図していない。むしろ、上述の実施形態は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲の内にあり、法律問題として通用するその等価物も含んでいる。
【0073】
本特許権者は、いずれの開示した実施形態も公共に捧げる意図はなく、開示した改変または変更が字義通りには特許請求の範囲の範囲内に入らない程度までも、均等論の下に、それらの改変または変更は本発明の一部であると考えている。
【0074】
本発明の主な特徴および態様を挙げれば以下のとおりである。
1.排ガス触媒を含むデバイスの潤滑面であって、潤滑粘度の基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の少なくとも1種の炭化水素可溶性チタン化合物を含む潤滑剤組成物を含み、前記炭化水素可溶性チタン化合物が、この炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効である潤滑面。
2.エンジン動力伝達装置を構成する上記1に記載の潤滑面。
3.内燃機関および圧縮点火エンジンからなる群から選択されるエンジンの内面または構成要素を含む上記1に記載の潤滑面。
4.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約50〜約1000ppmの範囲のチタンの量を提供する上記1に記載の潤滑面。
5.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約100〜約500ppmの範囲のチタンの量を提供する上記1に記載の潤滑面。
6.前記炭化水素可溶性チタン化合物がネオデカン酸チタンを含む上記1に記載の潤滑面。
7.可動部分を有し、かつ前記可動部分を潤滑するための潤滑剤を含有する車両であって、前記潤滑剤が、潤滑粘度を有する基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の少なくとも1種の炭化水素可溶性チタン化合物を含み、前記炭化水素可溶性チタン化
合物が、前記炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効である車両。
8.前記炭化水素可溶性チタン化合物がネオデカン酸チタンを含む上記7に記載の車両。9.前記可動部分が大型車両用ディーゼルエンジンを構成する上記7に記載の車両。
10.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約50〜約1000ppmの範囲のチタンの量を提供する上記7に記載の車両。
11.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約100〜約500ppmの範囲のチタンの量を提供する上記7に記載の車両。
12.完全処方の潤滑剤組成物であって、前記潤滑剤組成物は、潤滑粘度を有する基油成分、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の炭化水素可溶性チタン含有薬剤を含み、前記炭化水素可溶性チタン含有薬剤は、前記炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効であり、前記チタン含有薬剤は、本質的に硫黄およびリン原子を含まない潤滑剤組成物。
13.圧縮点火エンジンに適した低灰分、低硫黄および低リン潤滑剤組成物を含む上記12に記載の潤滑剤組成物。
14.前記炭化水素可溶性チタン含有薬剤の量が前記潤滑剤組成物において約50〜約1000ppmのチタンを提供する上記12に記載の潤滑剤組成物。
15.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約100〜約500ppmの範囲の量のチタンを提供する上記12に記載の潤滑剤組成物。
16.排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換するのに有効な劣化排ガス触媒温度を下げる方法であって、潤滑粘度を有する基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の炭化水素可溶性チタン化合物を含む潤滑剤組成物にエンジンの部品を接触させることを含み、前記炭化水素可溶性チタン化合物は、前記炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化排ガス触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化排ガス触媒温度を提供するのに有効である方法。
17.前記エンジンが大型車両用ディーゼルエンジンを含む上記16に記載の方法。
18.前記炭化水素可溶性チタン化合物含有薬剤がネオデカン酸チタンを含む上記16に記載の方法。
19.前記炭化水素可溶性チタン含有薬剤の量が前記潤滑剤組成物において約50〜約1000ppmのチタンを提供する上記16に記載の方法。
20.前記炭化水素可溶性チタン含有薬剤の量が前記潤滑剤組成物において約100〜約500ppmの範囲の量のチタンを提供する上記16に記載の方法。
21.排ガス触媒を含有するエンジンを潤滑するために使用する潤滑剤組成物のための添加剤濃縮物であって、前記添加剤濃縮物は、少なくとも1種のリン含有化合物および一定量の炭化水素可溶性チタン含有薬剤を含み、前記チタン含有薬剤は、前記炭化水素可溶性チタン含有薬剤がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効であり、前記チタン含有薬剤は、本質的に硫黄およびリン原子を含まない、添加剤濃縮物。
22.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約50〜約1000ppmの範囲の量のチタンを提供する上記21に記載の濃縮物。
23.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約100〜約500ppmの範囲の量のチタンを提供する上記21に記載の濃縮物。
24.前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約50〜約30
0ppmの範囲の量のチタンを提供する上記21に記載の濃縮物。
25.前記炭化水素可溶性チタン化合物がネオデカン酸チタンを含む上記21に記載の濃縮物。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】T50温度上昇対潤滑組成のグラフによる比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス触媒を含むデバイスの潤滑面であって、潤滑粘度の基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の少なくとも1種の炭化水素可溶性チタン化合物を含む潤滑剤組成物を含み、前記炭化水素可溶性チタン化合物が、この炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効である潤滑面。
【請求項2】
内燃機関および圧縮点火エンジンからなる群から選択されるエンジンの内面または構成要素を含む請求項1に記載の潤滑面。
【請求項3】
前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約50〜約1000ppmの範囲のチタンの量を提供する請求項1に記載の潤滑面。
【請求項4】
前記炭化水素可溶性チタン化合物がネオデカン酸チタンを含む請求項1に記載の潤滑面。
【請求項5】
可動部分を有し、かつ前記可動部分を潤滑するための潤滑剤を含有する車両であって、前記潤滑剤が、潤滑粘度を有する基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の少なくとも1種の炭化水素可溶性チタン化合物を含み、前記炭化水素可溶性チタン化合物が、前記炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効である車両。
【請求項6】
前記炭化水素可溶性チタン化合物の量が前記潤滑剤組成物において約100〜約500ppmの範囲のチタンの量を提供する請求項5に記載の車両。
【請求項7】
完全処方の潤滑剤組成物であって、前記潤滑剤組成物は、潤滑粘度を有する基油成分、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の炭化水素可溶性チタン含有薬剤を含み、前記炭化水素可溶性チタン含有薬剤は、前記炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効であり、前記チタン含有薬剤は、本質的に硫黄およびリン原子を含まない潤滑剤組成物。
【請求項8】
圧縮点火エンジンに適した低灰分、低硫黄および低リン潤滑剤組成物を含む請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換するのに有効な劣化排ガス触媒温度を下げる方法であって、潤滑粘度を有する基油、少なくとも1種のリン含有化合物、および一定量の炭化水素可溶性チタン化合物を含む潤滑剤組成物にエンジンの部品を接触させることを含み、前記炭化水素可溶性チタン化合物は、前記炭化水素可溶性チタン化合物がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化排ガス触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化排ガス触媒温度を提供するのに有効である方法。
【請求項10】
排ガス触媒を含有するエンジンを潤滑するために使用する潤滑剤組成物のための添加剤
濃縮物であって、前記添加剤濃縮物は、少なくとも1種のリン含有化合物および一定量の炭化水素可溶性チタン含有薬剤を含み、前記チタン含有薬剤は、前記炭化水素可溶性チタン含有薬剤がない潤滑剤組成物の、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度よりも低い、排ガス炭化水素、一酸化炭素およびNOの少なくとも50%を転換する劣化触媒温度を提供するのに有効であり、前記チタン含有薬剤は、本質的に硫黄およびリン原子を含まない、添加剤濃縮物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−68012(P2009−68012A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235204(P2008−235204)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】