説明

改変されたCry1Ca殺虫性Cryタンパク質

本発明は、本明細書中でDIG−109およびDIG−152と呼ばれるタンパク質ならびにDIG109およびDIG−152の変異体を含む改変された殺虫性B.t.Cry1Caタンパク質;これらのタンパク質をコードする核酸;該タンパク質を使用して有害生物を防除する方法;遺伝子導入宿主細胞中で該タンパク質を産生させる方法;ならびに該タンパク質を産生する遺伝子導入植物を包含する。DIG−109およびDIG−152タンパク質は、B.t.Cry1Caのコア毒素セグメントおよびCry1Abプロトキシンセグメントから構成されるキメラペプチドを含む。DIG−109およびDIG−152タンパク質の殺虫活性のある変異体についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な殺虫性Cryタンパク質、および昆虫を防除するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フォールアーミーワーム(FAW;スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))は、トウモロコシ、ならびにダイズおよびワタなどのその他の農作物に重大な損傷を引き起こす。
【0003】
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(B.t.)は、δ−エンドトキシンまたはCryタンパク質として知られる殺有害生物性結晶タンパク質を産生する土壌伝播性細菌である。Cryタンパク質は、感受性のある昆虫の中腸細胞に作用することによって機能する経口中毒性物質である。δ−エンドトキシンの広範なリストが、ウェブサイト、http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/intro.htmlに維持され、定期的に更新されている。
【0004】
Cryタンパク質、最も顕著にはCry1Fをコードする遺伝子を発現する遺伝子導入トウモロコシは、FAWに対して商業的レベルの効力を提供する。
【0005】
FAW抵抗性遺伝子導入トウモロコシが成功したにもかかわらず、抵抗性昆虫集団の発生の可能性により、FAW防除におけるCryタンパク質の長期耐用性がおびやかされ、FAWおよびその他の有害生物を防除するための新規なCryタンパク質を発見および開発する必要性が生じる。B.t.Cryタンパク質に対する昆虫の抵抗性は、いくつかの機構を介して発生する可能性がある(Heckelら、2007年;PigottおよびEllar、2007年)。Cryタンパク質に対する多数のクラスの受容体タンパク質が、昆虫内で確認され、多数の例が各受容体クラス内に存在する。特定のCryタンパク質に対する抵抗性は、例えば、受容体タンパク質のカドヘリン領域の毒素結合部分内での突然変異によって発生する可能性がある。抵抗性のさらなる手段は、プロトキシンを処理するプロテアーゼによって介在される可能性がある。したがって、鱗翅目(Lepidoptera)の種におけるCry毒素に対する抵抗性は、少なくとも4つの独特で重要な抵抗性遺伝子を伴う複雑な遺伝子的根拠を有する。Cryタンパク質に対して抵抗性である鱗翅目昆虫は、コナガ(Plutella xylostella)(Tabashnikら、1994年)、キンウワバ(Trichoplusia ni)(JanmaatおよびMyers、2003、2005年)、およびオオタバコガ(Helicoverpa zeae)(Tabashnikら、2008年)の分野で発生した。新規で効力の高いCryタンパク質の開発は、FAWおよびその他の害虫を管理するためのさらなるツールを提供するであろう。遺伝子導入トウモロコシ中で組み合わせて作られる異なる作用機序を有するCryタンパク質は、FAW昆虫の抵抗性の発生を防ぎ、害虫防除のためのB.t.技術の長期有用性を保護するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本明細書中でDIG−109およびDIG−152と呼ばれるタンパク質ならびにDIG−109およびDIG−152の変異体を含む殺虫性B.t.Cryタンパク質、これらのタンパク質をコードする核酸、該タンパク質を使用して有害生物を防除する方法、遺伝子導入宿主細胞中でタンパク質を産生させる方法、および該タンパク質を産生する遺伝子導入植物を提供する。
【0007】
実施例1に記載のように、DIG−109およびDIG−152タンパク質は、B.t.Cry1Caのコア毒素セグメントおよびCry1Abプロトキシンセグメントから構成されるキメラペプチドを含む。DIG−109およびDIG−152タンパク質の殺虫活性のある変異体についても説明する。
【0008】
本明細書中で報告する驚くべき発見は、DIG−109およびDIG−152タンパク質が、Cry1Fに対して抵抗性であるフォールアーミーワームの幼虫およびシュガーケーンボーラーの幼虫の集団に対して活性であることである。したがって、DIG−109およびDIG−152タンパク質は、鱗翅目の有害生物を防除するのに使用するための理想的な候補である。該タンパク質は、抵抗性昆虫集団の発生を抑制するために、単独で、またはCry1F、Cry1AbおよびCry1Acなどのその他のCryタンパク質と組み合わせて使用することができる。このような有害生物の考察については、たとえば、Tabashnik、PNAS (2008)、vol. 105、no. 49、19029〜19030を参照されたい。
【0009】
DIG−109およびDIG−152の殺虫活性のあるフラグメント、およびこのようなフラグメントをコードするヌクレオチドは、本発明の別の態様である。
【0010】
一実施形態において、本発明は、
(a)配列番号1の残基28〜619のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)配列番号1の残基28〜619のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(c)配列番号1によってコードされるタンパク質の発現または活性に不都合な影響を及ぼさない20個までのアミノ酸の置換、欠失または修飾を伴う、配列番号1の残基28〜619のアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択されるコア毒素セグメントを含む、単離されたDIG−109タンパク質ポリペプチドを提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、
(a)配列番号1の残基1〜619のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)配列番号1の残基1〜619のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(c)配列番号1によってコードされるタンパク質の発現または活性に不都合な影響を及ぼさない20個までのアミノ酸の置換、欠失または修飾を伴う、配列番号1の残基1〜619のアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択されるDIG−109コア毒素セグメントを含む、単離されたDIG−109毒素ポリペプチドを提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、DIG−109タンパク質を含む植物を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、有害生物集団を防除する方法であって、前記集団を殺有害生物上有効な量のDIG−109タンパク質と接触させることを含む方法を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、DIG−109タンパク質をコードする単離された核酸を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来でなく植物中での発現を駆動する能力のあるプロモーターに作動可能的に連結された、DIG−109タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築体を提供する。本発明は、また、そのゲノム中に安定的に組み込まれたDNA構築体を含む遺伝子導入植物、および有害生物から植物を保護する方法であって、前記植物中に該構築体を導入することを含む方法を提供する。
【0016】
配列の簡単な説明
配列番号1は、Cry1Caコア毒素セグメントである(619個のアミノ酸)
【0017】
配列番号2は、第1Cry1Abプロトキシンセグメントである(545個のアミノ酸)
【0018】
配列番号3は、DIG−152キメラタンパク質である(1164個のアミノ酸)(Pfバージョン)
【0019】
配列番号4は、第2Cry1Abプロトキシンセグメントである(545個のアミノ酸)
【0020】
配列番号5は、DIG−109キメラタンパク質である(1164個のアミノ酸)(トウモロコシバージョン)
【0021】
配列番号6は、Cry1Ca436ペプチドである(10個のアミノ酸)
【0022】
配列番号7は、Cry1Ca591ペプチドである(10個のアミノ酸)
【0023】
配列番号8は、DIG−109をコードする、トウモロコシに対して最適化されたCDSである(3492個の塩基対)
【0024】
配列番号9は、ZGP3Sオリゴヌクレオチドである(21個のヌクレオチド)
【0025】
配列番号10は、ZGP3Aオリゴヌクレオチドである(21個のヌクレオチド)
【0026】
配列番号11は、TQZGP3オリゴヌクレオチドである(23個のヌクレオチド)
【0027】
配列番号12は、DSM2Sオリゴヌクレオチドである(17個のヌクレオチド)
【0028】
配列番号13は、DSM2Aオリゴヌクレオチドである(19個のヌクレオチド)
【0029】
配列番号14は、DSM2FQオリゴヌクレオチドである(20個のヌクレオチド)
【0030】
配列番号15は、CRY1CaSオリゴヌクレオチドである(18個のヌクレオチド)
【0031】
配列番号16は、CRY1CaAオリゴヌクレオチドである(18個のヌクレオチド)
【0032】
配列番号17は、Cry1Caオリゴヌクレオチドである(23個のヌクレオチド)
【0033】
配列番号18は、AAD1Sオリゴヌクレオチドである(20個のヌクレオチド)
【0034】
配列番号19は、AAD1Aオリゴヌクレオチドである(22個のヌクレオチド)
【0035】
配列番号20は、AAD1オリゴヌクレオチドである(24個のヌクレオチド)
【0036】
配列番号21は、Y1CASオリゴヌクレオチドである(18個のヌクレオチド)
【0037】
配列番号22は、Y1CARオリゴヌクレオチドである(18個のヌクレオチド)
【0038】
配列番号23は、F6Y1CAオリゴヌクレオチドである(23個のヌクレオチド)
【0039】
配列番号24は、IVF−Taqオリゴヌクレオチドである(18個のヌクレオチド)
【0040】
配列番号25は、IVR−TAQオリゴヌクレオチドである(19個のヌクレオチド)
【0041】
配列番号26は、IV−Probeオリゴヌクレオチドである(26個のヌクレオチド)
【0042】
配列番号27は、DIG−110である(1079個のアミノ酸)
【0043】
配列番号28は、トウモロコシに対して最適化された、DIG−110のためのコード領域である(3237個の塩基対)
【0044】
配列番号29は、DIG−111である(543個のアミノ酸)
【0045】
配列番号30は、トウモロコシに対して最適化された、DIG−111のためのコード領域である(1629個の塩基対)
【0046】
配列番号31は、DIG−112である(1044個のアミノ酸)
【0047】
配列番号32は、トウモロコシに対して最適化された、DIG−112のためのコード領域である(3132個の塩基対)
【0048】
配列番号33は、DIG−113である(508個のアミノ酸)
【0049】
配列番号34は、トウモロコシに対して最適化された、DIG−113のためのコード領域である(1524個の塩基対)
【0050】
配列番号35は、DIG−114である(582個のアミノ酸)
【0051】
配列番号36は、トウモロコシに対して最適化された、DIG−114のためのコード領域である(1746個の塩基対)
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】フォールアーミーワーム(FAW)およびCry1Fに抵抗性のあるフォールアーミーワーム(rFAW)の新生幼虫によりin vitroで攻撃されたトウモロコシ葉片の摂食損傷率の図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
DIG−109およびDIG−152タンパク質、ならびに殺虫活性のある変異体。配列番号5の完全長DIG−109タンパク質および配列番号3のDIG−152タンパク質に加えて、本発明は、殺虫活性のある変異体も包含する。用語「変異体」とは、本出願人らによれば、フラグメント、特定の欠失および挿入突然変異体、ならびに特定の融合タンパク質を包含することを意図する。DIG−109およびDIG−152タンパク質のCry1Caコア毒素セグメントは、典型的な3ドメイン型Cryタンパク質である。本発明に包含されるDIG−109およびDIG−152タンパク質の変異体を説明する前置きとして、概括的に3ドメイン型Cryタンパク質、とりわけDIG−109およびDIG−152タンパク質毒素の構成を簡単に概観することが有用であろう。
【0054】
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のδ−エンドトキシン結晶タンパク質分子の大部分は、2つの機能性セグメントから構成されている。プロテアーゼ抵抗性のコア毒素が、第1セグメントであり、タンパク分子の最初の約半分に相当する。約130kDaの完全なプロトキシン分子は、昆虫消化管中のプロテアーゼによって迅速に処理されて、抵抗性のあるコアセグメントになる。この処理によって除去されるセグメントは、本明細書中で「プロトキシンセグメント」と呼ぶ。プロトキシンセグメントは、毒素結晶の形成に関与すると考えられる(Arvidsonら、1989)。プロトキシンセグメントは、かくして、毒素分子のプロテアーゼ処理を低減することによって(Haiderら、1986)、または毒素の溶解性を低下させることによって(Aronsonら、1991)、昆虫へのコアの接近可能性を制約して毒素に対する部分的昆虫特異性を伝達することができる。B.t.毒素は、特定のクラス内でさえも、コア毒素セグメントからプロトキシンセグメントまでの長さおよび変異の正確な配置においてある程度変化する。コア毒素セグメントからプロトキシンセグメントまでの変異は、典型的には、完全長毒素の約50%〜約60%で起こることになる。配列番号3は、完全長DIG−152ポリペプチドの1164個のアミノ酸配列を開示し、その中のN末端の619個のアミノ酸が、配列番号1として開示されるCry1Caコア毒素を含む。配列番号5は、完全長DIG−109ポリペプチドの1164個のアミノ酸配列を開示し、その中のN末端の619個のアミノ酸が、Cry1Caコア毒素を含む。
【0055】
三次元結晶構造が、Cry1Aa1、Cry2Aa1、Cry3Aa1、Cry3Bb1、Cry4Aa、Cry4BaおよびCry8Ea1について決定されている。コア毒素に関するこれらの構造は、著しく類似しており、後記の特徴を有する3つの異なるドメインから構成される(de Maagdら、2003年で概説されている)。
【0056】
ドメインIは、7つのα−ヘリックスの束であり、そのヘリックス5は、6つの両親媒性ヘリックスで取り囲まれている。このドメインは、細孔形成に関連し、溶血毒およびコリシンを含む他の細孔生成タンパク質と相同性を有している。Cry1Caコア毒素タンパク質のドメインIは、配列番号1のアミノ酸残基36〜254を含む。[DIG−109およびDIG−152キメラタンパク質は、Cry1Caコア毒素セグメントを含み、それゆえ配列番号1に開示のようなCry1Caコア毒素セグメントのアミノ酸配列に割り当てられた座標は、配列番号5に開示のDIG−109キメラタンパク質のアミノ酸配列、および配列番号3に開示のDIG−152キメラタンパク質のアミノ酸配列に好都合に当てはまることを理解されたい。]
【0057】
ドメインIIは、β−プリズム中に一緒に詰められた3つの逆並行βシートによって形成されている。このドメインのループは、昆虫の中腸受容体に結合する上で重要な役割を演じる。Cry1Aタンパク質において、ドメインIIのβシートの頂端で表面に露出されたループは、鱗翅目類のカドヘリン受容体に結合する上で必要とされる。Cry3AaのドメインIIのループは、レプチノタルサ・デセムリネアタ(Leptinotarsa decemlineata)(Say)(コロラドポテトビートル(Colorado potato beetle))の膜結合型メタロプロテアーゼを類似の方式で結合する(Ochoa−Campuzanoら、2007)。ドメインIIは、卵黄およびジャカリンを含めた特定の炭水化物結合性タンパク質と相同性を有する。Cry1Caコア毒素タンパク質のドメインIIは配列番号1のアミノ酸残基262〜458を含む。
【0058】
ドメインIIIは、2つの逆平行βシートのβサンドイッチである。構造的に、このドメインは、グルカナーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、シアリダーゼなどのタンパク質の炭水化物結合ドメインに関連する。ドメインIIIは、特定のクラスの受容体タンパク質を結合し、第2のクラスの受容体(その例が、Cry1Aタンパク質の場合のアミノペプチダーゼおよびアルカリホスファターゼである)と相互作用するオリゴマー毒素プレ細孔の挿入に関係する(PigottおよびEllar、2007)。類似のCryドメインIII受容体が、さらに鞘翅目で確認されている。保存されたB.t.配列のブロック2および3は、ドメイン2のそれぞれN末端およびC末端近くに位置する。それゆえ、これらの保存された配列のブロック2および3は、3つの機能性ドメイン間の隣接境界領域である。これらの領域の保存されたDNAおよびタンパク質の相同性は、組み換えB.t.毒素を遺伝子操作するために活用されている(米国特許第6090931号、国際公開第1991/01087号、国際公開第1995/06730号、国際公開第1998/022595号)。Cry1Caタンパク質のドメインIIIは、配列番号1のアミノ酸残基468〜617を含む。
【0059】
ドメインIのα−ヘリックス1は、受容体に結合した後、除去されることが報告されている。Aronsonら(1999)は、BBMVに結合したCry1Acが、α−ヘリックス1の直後の残基59で始まるプロテイナーゼKによる開裂から保護されたことを立証し、Cry1Abについて同様の結果が述べられている。Gomezら(2002)は、BBMV受容体に結合して形成されるCry1Abオリゴマーが、ドメインIのα−ヘリックス1部分を欠くことを見出した。また、Soberonら(2007)は、三次元Cry構造上のα−ヘリックス1を包含するほぼ60個のアミノ酸を欠くCry1AbおよびCry1AcのN末端欠失突然変異体が、カドヘリン結合の不在下で、分子量約60kDaのモノマーをプレ細孔に組み立てる能力があることを示した。これらのN末端欠失突然変異体は、Cry抵抗性の昆虫幼生に対して活性であると報告された。さらに、Diaz−Mendozaら(2007)は、地中海コーンボーラー(Mediterranean corn borer)(Sesamia nonagrioides)に対する活性を保持している43kDaおよび46kDaのCry1Abフラグメントを発表した。これらのフラグメントは、アミノ酸残基116〜423を含むことが立証されたが、正確なアミノ酸配列は解明されておらず、これらのタンパク質分解フラグメントの活性の機構は未知である。Gomezら(2002)、Soberonら、2007およびDiaz−Mendozaら(2007)の結果は、Cry1AbのN末端からの36個のアミノ酸の欠失により殺虫活性の喪失がもたらされることを報告したHofteら(1986)の結果と対比する。
【0060】
本発明者らは、Cry1Caコア毒素のドメインI中のヘリックス1、2A、2B、3および4の始まりおよび終端、ならびにそれらの間のスペーサー領域の位置を、Cry1Caのアミノ酸配列をその構造が既知であるCry8Ea1のためのアミノ酸配列と比較することによって推定した。これらの位置を表1に記す。
【0061】
【表1】

【0062】
DIG−109およびDIG−152のアミノ末端欠失変異体。その一態様において、本発明は、殺虫活性を改善し、昆虫による抵抗性の発生を回避するために、α−ヘリックス1、2A、および2Bのすべてまたは一部が欠失したDIG−109およびDIG−152変異体を提供する。これらの改変は、改善された標的有害生物スペクトル、効力、および昆虫の抵抗性の管理などの改善された特性を備えたDIG−109およびDIG−152変異体を提供するために行われた。本発明の一部の実施形態において、対象とする改変は、昆虫の中毒につながるプロトキシン活性化および細孔形成の有効性に影響を及ぼす可能性がある。より具体的には、改善された特性を備えたDIG−109およびDIG−152変異体を提供するために、N末端をコードする遺伝子の一部を除去する段階的欠失が記述される。その欠失は、ドメインIのα−ヘリックス1のすべて、およびα−ヘリックス2のすべてまたは一部を、α−ヘリックス3〜7の構造的完全性を維持しながら除去する。したがって、本発明は、部分的には、より有効な細孔形成のためのドメイン1のα−ヘリックス構成部分を遺伝子操作することによってなされるCryタンパク質の有効性の改善に関する。より具体的には、本発明は、部分的には、Cry1タンパク質のドメインI中のα−ヘリックス1および2に対する推定上の二次的な構造相同性を備えた領域中にN末端欠失を有するように設計された、改善されたDIG−109およびDIG−152タンパク質に関する。
【0063】
DIG−109およびDIG−152毒素の殺虫特性を改善するための欠失は、予想されるα−ヘリックス2Aの開始前に始まることができ、かつα−ヘリックス2Bの終結後に終わることができるが、好ましくはα−ヘリックス3中に拡がることはない。
【0064】
N末端欠失変異体のためのコード配列の設計において、メチオニンをコードするATG開始コドンは、欠失変異体をコードするように設計されたヌクレオチド配列の5’末端で挿入される。遺伝子導入植物中で使用するために設計された配列の場合、Varshavsky(1997)の「N末端則」に従うことが有益である可能性がある。一部のアミノ酸は、タンパク質のN末端残基として提示されると真核細胞中でのタンパク質の不安定性および分解の一因となることが教示されている。例えば、酵母および哺乳動物細胞中での観察から集められたデータは、N末端を不安定化するアミノ酸は、F、L、W、Y、R、K、H、I、N、Q、D、Eおよび可能性としてはPであることを示している。タンパク質の分解機構の詳細は、生物間で多少異なる可能性があるが、上で観察されるN末端を不安定化するアミノ酸の同一性が保存されていることは、類似の機構が植物細胞中で機能できることを示唆している。例えば、Worleyら(1998)は、植物において、N末端則は、塩基性および芳香族残基を包含することを見出した。主題のB.t.殺虫性タンパク質のα−ヘリックス3の開始点近くでの植物プロテアーゼによるタンパク質分解開裂は、不安定化N末端アミノ酸を露出する可能性があることがあり得る。このようなプロセシングは、開裂されたタンパク質を急速な崩壊に導き、B.t.殺虫性タンパク質の蓄積を、有効な昆虫防除に不十分なレベルまでに制限する可能性がある。したがって、不安定安化アミノ酸の1つで始まるN末端欠失変異体の場合、本出願人らは、翻訳開始メチオニンと不安定化アミノ酸との間にG(グリシン)アミノ酸を指定するコドンを付加することを選択する。
【0065】
実施例13および14は、本発明によるDIG−109およびDIG−152のアミノ酸末端欠失変異体の具体例を与える。さらなる有用な断片は、完全長の可溶化結晶タンパク質のトリプシンまたはキモトリプシン消化によって生じる断片の昆虫でのバイオアッセイによって確認して、どの断片が毒性を維持しているかを判定することができ、あるいはCryタンパク質をコードする領域のDNA断片によってコードされた毒性タンパク質断片の配列を決定することによって同定することができる。このタンパク質は、大部分が、プロトキシンに比較して短いN末端および長いC末端の切断を有する。最も短い毒性フラグメントのN末端終端は、当技術分野で日常的に利用可能な技術によるトリプシンまたはキモトリプシンで処理された可溶性結晶タンパク質のN末端アミノ酸配列決定によって好都合に決定される。
【0066】
キメラ毒素。別のCry毒素のプロトキシンセグメントに融合された1つのCry毒素のコア毒素セグメントを利用するキメラタンパク質が、以前に報告されている。DIG−109およびDIG−152変異体は、コア毒素セグメントの終端を越えたいくつかの箇所で異種プロトキシンセグメントに融合されたCry1Ca毒素のN末端毒素コアセグメントを含む毒素(完全長であっても、前記のN末端欠失を有してもよい)を包含する。異種プロトキシンセグメントへの変異は、ほぼコア毒素/プロトキシン結合点で起こることができ、あるいは代わりに、本来のプロトキシンの一部(コア毒素セグメントを越えて拡がる)を、下流中で起こる異種プロトキシンへの変異を伴って保持することができる。例として、本発明のキメラ毒素は、Cry1Caの完全長コア毒素セグメント(アミノ酸1〜619)および異種プロトキシン(アミノ酸620〜C末端)を有する。好ましい実施形態において、プロトキシンの異種セグメントは、配列番号2および配列番号4に示したような、Cry1Abδ−エンドトキシンから得られる。
【0067】
プロテアーゼ感受性変異体。昆虫の消化管内プロテアーゼは、典型的には、飼料のタンパク質から必要なアミノ酸を得ることにおいて昆虫を助けることで機能する。最も理解されている昆虫の消化性プロテアーゼは、とりわけ鱗翅目種中で最も一般的であると思われるセリンプロテアーゼである(EnglemannおよびGeraerts、1980)。鞘翅目昆虫は、鱗翅目の消化管に比べてより中性〜酸性である消化管を有する。鞘翅目の幼虫および成虫の大部分、例えば、コロラドポテトビートル(Colorado potato beetle)は、わずかに酸性の中腸を有し、システインプロテアーゼが、重要なタンパク質分解活性を提供する(WolfsonおよびMurdock,1990)。より正確には、ThieおよびHouseman(1990)は、コロラドポテトビートル(Colorado potato beetle)中にシステインプロテアーゼ、カテプシンB様、およびカテプシンH様、ならびにアスパルチルプロテアーゼ、カテプシンD様を確認し、特徴付けた。Gillikinら(1992)は、ウェスターンコーンルートワーム(western corn rootworm)幼虫の消化管中でのタンパク質分解活性を特徴付け、主としてシステインプロテアーゼを見出した。米国特許第7230167号には、セリンプロテアーゼ、カテプシンGが、ウェスターンコーンルートワーム(western corn rootworm)中に存在することが開示されている。昆虫消化管プロテアーゼの多様性および異なる活性レベルは、特定のB.t.毒素に対する昆虫の感受性に影響を及ぼす可能性がある。
【0068】
本発明の別の実施形態において、プロテアーゼの開裂部位は、特定の害虫の感受性幼虫の中腸内でのタンパク質プロセシングに影響を及ぼすように所望の位置で遺伝子操作することができる(Waltersら、2008)。これらのプロテアーゼ開裂部位は、化学的遺伝子合成またはスプライス重複PCR(Hortonら、1989)などの方法で導入することができる。例えば、セリンプロテアーゼ認識配列は、感受性幼虫の中腸内で所望の欠失点でのタンパク質プロセシングを実施するように、Cryタンパク質構造中の特定部位で任意選択により挿入することができる。このような方式で利用できるセリンプロテアーゼには、トリプシンまたはトリプシン様酵素、キモトリプシン、エラスターゼなどの、鱗翅目中腸セリンプロテアーゼが含まれる(Christellerら、1992)。さらに、未分画幼虫中腸プロテアーゼ標本で作り出されるCryタンパク質消化産物を配列決定することによって、または刷子縁膜小胞への結合によって経験的に同定される欠失部位を、タンパク質活性化をもたらすように遺伝子操作することができる。遺伝子欠失によって、またはプロテアーゼ開裂部位の導入によって作り出される改変Cryタンパク質は、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)、ジアトラエア・グランジオセラ(Diatraea grandiosella)、ヘリコベルパ・ジア(Helicoverpa zea)、アグロチス・イプシロン(Agrotis ipsilon)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、スポドプテラ・イクシグア(Spodoptera exigua)、ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis)、ロクサグロチス・アルビコスタ(Loxagrotis albicosta)、およびその他の標的有害生物を含む、鱗翅目有害生物に対して改善された活性を有する。
【0069】
トリプシン、キモトリプシン、およびカテプシンG様プロテアーゼなどの鞘翅目セリンプロテアーゼ、カテプシン(B様、L様、O様、およびK様プロテアーゼ)などの鞘翅目システインプロテアーゼ(Koiwaら、2000;およびBownら、2004)、ADAM10などの鞘翅目メタロプロテアーゼ(Ochoa−Campuzanoら、2007)、およびカテプシンD様およびE様、ペプシン、プラスメプシン、ならびにキモシンなどの鞘翅目アスパラギン酸プロテアーゼを、特定害虫の感受性幼虫の中腸内でのCryタンパク質のプロセシングに影響を及ぼすように、所望のプロセシング部位で適切な認識配列を遺伝子操作することによってさらに利用することができる。
【0070】
このようなプロテアーゼ開裂部位を導入するのに好ましい位置は、α−ヘリックス2Bとα−ヘリックス3との間の「スペーサー」領域内に、例えば、Cry1Caコア毒素タンパク質のアミノ酸85〜90内に存在する可能性がある(配列番号1および表1)。遺伝子欠失によって、またはプロテアーゼ開裂部位の導入によって作り出される改変Cryタンパク質は、限定はされないが、フォールアーミーワーム、シュガーケーンボーラーなどを含む害虫に対して改善された活性を有する。
【0071】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基を含むアミノ酸の配列決定を可能にする種々の技術が存在する。例えば、自動化されたエドマン分解法を逐次方式で使用して、30アミノ酸残基までのN末端アミノ酸配列を残基につき98%の正確さで決定することができる。さらに、ポリペプチドのカルボキシ終端を含むアミノ酸配列の決定も可能である(Baileyら、1992;米国特許第6046053号)。したがって、一部の実施形態において、例えば昆虫の消化管から調製されたプロテアーゼによるタンパク質分解処理によって活性化されたB.t.Cryタンパク質を、特徴付け、活性化された毒素フラグメントのN末端またはC末端アミノ酸を確認することができる。昆虫、植物または微生物プロテアーゼによるより大きな変異体タンパク質のタンパク質分解開裂を可能にするまたは排除するためのコード配列中の適切な位置でのプロテアーゼプロセシング部位の導入または排除によって作られるDIG−109およびDIG−152変異体は、本発明の範囲に包含される。このような操作の最終結果は、無傷の(完全長)毒素タンパク質と同様またはより良好な活性を有する毒素フラグメント分子の生成であると理解される。
【0072】
DIG−109およびDIG−152毒素のドメイン。DIG−109およびDIG−152毒素において例示されるようなCry1Caコア毒素セグメントの分離ドメイン(およびこのようなドメインと90%、95%または97%同一である変異体)は、増大された有害生物毒性スペクトル、改善された有効性、または改善されたタンパク質の安定性を備えた新規毒素を提供するために、他のCry毒素からのドメインとの組合せを形成する上で有用であると予想される。Cry1Caコア毒素タンパク質のドメインIは、配列番号1のアミノ酸残基36〜254からなる。Cry1Caコア毒素タンパク質のドメインIIは、配列番号1のアミノ酸残基262〜458からなる。Cry1Caコア毒素タンパク質のドメインIIIは、配列番号1のアミノ酸残基468〜617からなる。ドメインの交換または組み換えは、変えられたδ−エンドトキシンタンパク質を作り出すための機構である。ドメインIIおよびIIIは、δ−エンドトキシンタンパク質間で交換することができ、改善された殺有害生物活性または標的スペクトルを備えたハイブリッドまたはキメラ毒素をもたらす。ドメインIIは、受容体結合に関連する。ドメインIIIは、特定クラスの受容体タンパク質を結合し、恐らく、オリゴマー毒素プレ細孔の挿入に関与する。他の毒素中での一部のドメインIIIの置換は、スポドプテラ・エクシグア(Spodoptera exigua)に対して優れた毒性を生じることが示され(de Maagdら、1996)、Cry毒素ドメイン交換の設計に関する指針が存在する(Knightら、2004)。
【0073】
組み換えタンパク質を作り出し、それらを殺有害生物活性について試験するための方法は、当技術分野で周知である(例えば、Naimovら、2001;de Maagdら、1996;Geら、1991;Schnepfら、1990;Rangら、1999を参照されたい)。Cry1AおよびCry3Aタンパク質からのドメインIは、膜中に細孔を挿入および形成する能力について研究された。ドメインIのα−ヘリックス4および5は、膜内挿入および細孔形成において重要な役割を演じ(Waltersら、1993;Gazitら、1998;Nunez−Valdezら、2001)、他のヘリックスは、傘の骨のように膜表面に接触させるように提案された(Bravoら、2007;Gazitら、1998)。
【0074】
限られた数のアミノ酸の欠失、置換、または付加することによって創り出されるDIG−109およびDIG−152変異体。配列番号1のCry1Caコア毒素セグメントのアミノ酸配列に対するアミノ酸の欠失、置換、および付加は、逐次的方式で容易に行うことができ、このような変更の殺虫活性に対する効果は、バイオアッセイで試験することができる。変化の数が数の上で限られているなら、このような試験は、不合理な実験を必要としない。本発明は、コア毒素の殺虫活性のある変異体(配列番号1のアミノ酸1〜619)を包含し、その中で、10個まで、15個まで、または20個までの独立なアミノ酸の付加、欠失、または置換がなされた。
【0075】
本発明は、配列番号1のアミノ酸1〜619に90%、95%または97%同一であるコア毒素セグメントを有するDIG−109およびDIG−152変異体を包含する。変異体は、ランダムな突然変異をもたらすことによって調製することができ、あるいは変異体を設計することができる。設計された突然変異体の場合には、アミノ酸の同一性が、生物学的活性の原因である、または最終的に生物学的活性の原因である三次元配置の決定に関与する、毒素の重要な領域中で維持されるなら、天然の毒素に類似の活性を備えた変異体を作り出す確率が高くなる。また、置換が保存的である場合にも、活性を保持する確率が高くなる。アミノ酸は、次のクラス、すなわち、無極性、無電荷極性、塩基性、および酸性に分けることができる。あるクラスのアミノ酸を、同一タイプの別のアミノ酸で置き換える保存的置換は、変異体の生物学的活性を著しく変える可能性が最も少ない。表2に各クラスに属するアミノ酸の例を列挙する。
【0076】
【表2】

【0077】
一部の例において、非保守的置換も行うことができる。重要な要素は、これらの置換が、毒素の生物学的活性を顕著に損なうべきではないことである。変異体は、突然変異誘発のためアミノ酸配列が異なるポリペプチドを包含する。本発明に包含される変異体タンパク質は、生物学的に活性であり、すなわち、それらは、天然タンパク質の所望される生物学的活性を有し続ける、すなわち、殺虫活性を保持する。
【0078】
また、配列レベルを異にするが、同様のまたは類似の総合的に必須な三次元構造、表面電荷分布などを有する変異体タンパク質も設計することができる。例えば、米国特許第7058515号;Larsonら、2002;Stemmer、1994a、1994b、1995;およびCrameriら、1996a、1996b、1997を参照されたい。
【0079】
核酸。DIG−109毒素をコードする、またはDIG−152毒素をコードする単離核酸は、本発明の一態様である。これは、配列番号1、配列番号3、および配列番号5をコードする核酸、ならびにその相補配列、ならびに配列番号1、配列番号3、および配列番号5の殺虫性変異体をコードするその他の核酸を包含する。「単離」とは、本発明者らにとって、該核酸分子が、人間の手によって、それらの本来の環境から取り出され、かつ異なる環境中に配置されていることを意味する。遺伝子コードの冗長性のため、種々の異なるDNA配列が、本明細書に開示のアミノ酸配列をコードすることができる。同一または本質的に同一の毒素をコードするこれらの代わりのDNA配列を創り出すことは、当業者の技術に包含される。
【0080】
遺伝子合成。本明細書に記載の改善されたCryタンパク質をコードする遺伝子は、当技術分野で周知の種々の方法によって調製することができる。例えば、合成遺伝子セグメントおよび合成遺伝子は、亜リン酸トリエステルおよびホスホラミダイト化学物質(Caruthersら、1987)によって調製することができ、必要に応じて、遺伝子合成を実施するためにコマーシャルベンダーを利用可能である。完全長遺伝子は、例えば、制限断片のライゲーションまたはポリメラーゼ連鎖反応、重複オリゴヌクレオチドの組立てを含む、種々の方法で組み立てることができる(StewartおよびBurgin、2005)。さらに、末端遺伝子欠失は、部位特異的末端オリコヌクレオチドを使用するPCR増幅によって調製することができる。
【0081】
DIG−109毒素およびDIG−152毒素をコードする核酸は、例えば、いくつかの商業的供給業者のいずれかによって現在実施されている方法による合成的構築によって調製することができる(例えば、米国特許第7482119号参照)。これらの遺伝子またはその部分もしくは変異体は、また、例を挙げれば、例えば米国特許第5380831号の遺伝子シンセサイザーおよび設計方法を使用して、合成的に構築することができる。別法として、合成または天然に存在する遺伝子の変形形態を、点突然変異を生じさせるための標準的な分子生物学的技術を使用して容易に構築することができる。これらの遺伝子のフラグメントは、また、市販のエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを使用して標準的手順により調製することができる。例えば、Bal31などの酵素または部位特異的突然変異誘発を利用して、これらの遺伝子の終端からヌクレオチドを規則正しく切り離すことができる。また、活性毒素フラグメントをコードする遺伝子フラグメントを、種々の制限酵素を使用して得ることができる。
【0082】
DIG−109毒素およびDIG−152毒素のためのアミノ酸配列が得られると、意図した宿主によって好まれるコドンを使用してタンパク質配列を逆翻訳し、次いで問題を引き起こす可能性のある配列を除去するために代わりの(冗長)コドンを使用して配列を精製することによって、コード配列を設計することができる。さらに、長い偶発性オープン読取り枠を除去するために、周期的停止コドンを遺伝子操作して非コード読取り枠に作り変えることができる。
【0083】
配列同一性の定量。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を測定するため、配列を最適な比較目的のために整列させる。2つの配列間のパーセント同一性は、配列が共有する同一位置の数の関数である(すなわち、パーセント同一性=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複位置)×100)。一実施形態において、2つの配列は、同じ長さである。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップを許容するまたはしない後記技術に類似した技術を使用して測定することができる。パーセント同一性の計算では、典型的には、正確な一致を計数する。
【0084】
2つの配列間のパーセント同一性の測定は、数学的アルゴリズムを使用して完遂できる。このようなアルゴリズムの非限定的例は、KarlinおよびAltschul(1993)中のように修正され、BLASTNおよびBLASTX各プログラム中に組み込まれた、BLAST(Altschulら、1990、ならびにKarlinおよびAltschul、1990)である。BLASTサーチは、核またはタンパク質データベース中の問い合わせ配列に一致(類似)する配列を同定するのに好都合に使用することができる。BLASTNサーチは、本発明の要求された核酸分子に対して相同性を有するヌクレオチド配列を同定するために実施することができる(スコア=100、ワード長=12)。BLASTXサーチは、本発明の要求された殺虫性タンパク質分子に対して相同性を有するアミノ酸配列を同定するために実施することができる(スコア=50、ワード長=3)。
【0085】
ギャップ化BLAST(Altschulら、1997)は、比較の目的でギャップのあるアラインメントを得るのに利用できる。別法として、PSI−Blastは、分子間の遠隔関係を検出する反復サーチを実施するのに使用することができる(Altschulら、同書)。BLAST、ギャップ化BLAST、およびPSI−Blast各プログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーターを使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0086】
配列を比較するために利用される数学的アルゴリズムの非限定的例が、ClustalWアルゴリズムである(Thompsonら、1994)。ClustalWは、配列を比較し、アミノ酸またはDNA配列の全体を整列し、かくして、すべてのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の配列保存に関するデータを提供することができる。ClustalWアルゴリズムは、Vector NTIプログラムスイート(Invitrogen,Inc.、Carlsbad、カリフォルニア州)のALIGNXモジュールなどの、市販DNA/アミノ酸解析ソフトウェアパッケージ中で使用されている。アミノ酸配列をALIGNXで整列する場合には、2つの配列間のパーセントアミノ酸類似性(コンセンサス)または同一性を評価するために、10のギャップオープンペナルティ、0.1のギャップ伸張ペナルティ、およびblosum63mt2比較マトリックスでのデフォルト設定を好都合に使用することができる。DNA配列をALIGNXで整列する場合には、2つの配列間のパーセント同一性を評価するために、15のギャップオープンペナルティ、6.6のギャップ伸張ペナルティ、およびswgapdnamt比較マトリックスでのデフォルト設定を好都合に使用することができる。
【0087】
配列比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的例が、MyersおよびMiller(1988)の例である。このようなアルゴリズムは、wEMBOSS配列整列ソフトウェアパッケージ(http://emboss.sourceforge.net/で利用可能)の一部であるwSTRETCHERプログラム中に組み込まれている。wSTRETCHERは、線形空間を使用する標準的な動的プログラミングアルゴリズムの修正形態を使用して、2つの配列の最適な大域的アラインメントを計算する。アラインメントを計算するのに使用される置換マトリックス、ギャップ挿入ペナルティ、およびギャップ伸張ペナルティを指定することができる。ヌクレオチド配列を比較するためにwSTRETCHERを利用する場合には、16のギャップオープンペナルティおよび4のギャップ伸張ペナルティを、スコアリングマトリックスファイルEDNAFULLと共に使用することができる。アミノ酸配列を比較するために使用する場合には、12のギャップオープンペナルティおよび2のギャップ伸張ペナルティを、EBLOSUM62スコアリングマトリックスファイルと共に使用することができる。
【0088】
配列比較のために利用される数学的アルゴリズムのさらなる非限定的例は、配列アラインメントソフトウェアパッケージGAPバージョン10およびwNEEDLE(http://emboss.sourceforge.net/)中に組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(1970)の例である。GAPバージョン10は、次のパラメーターを使用して配列の同一性または類似性を測定するのに使用することができ、ヌクレオチド配列の場合、%同一性および%類似性は、50のギャップウェイトおよび3の長さウェイト、ならびにnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを使用して検索される。アミノ酸の配列比較の場合、%同一性または%類似性は、8のギャップウェイトおよび2の長さウェイト、ならびにBLOSUM62スコアリングプログラムを使用して測定される。
【0089】
wNEEDLEは、2つの入力配列を読み取り、それらの全長に沿って最適アラインメント(ギャップを含む)を検索し、それらの最適な大域的配列アラインメントをファイルに書き込む。アルゴリズムは、すべての可能なアラインメントを探索し、それぞれの可能な残基またはヌクレオチドの一致に関する値を含むスコアリングマトリックスを使用して最良のものを選択する。wNEEDLEは、最大の可能なスコアを有するアラインメントを検索し、ここで、アラインメントのスコアは、スコアリングマトリックスから得られる一致の合計マイナス整列された配列中のオープンおよび伸張各ギャップから生じるペナルティに等しい。置換マトリックスおよびギャップオープンおよび伸張各ペナルティは、ユーザー指定である。アミノ酸配列を比較する場合には、10のデフォルトギャップオープンペナルティ、0.5のギャップ伸張ペナルティ、およびEBLOSUM62比較マトリックスを使用する。wNEEDLEを使用してDNA配列を比較する場合には、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップ伸張ペナルティ、およびEDNAFULL比較マトリックスを使用する。
【0090】
同等のプログラムも使用することができる。「同等のプログラム」とは、問題の任意の2つの配列に関して、ALIGNX wNEEDLE、またはwSTRETCHERによって作り出される対応するアラインメントに比較した場合に、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の一致および同一のパーセント配列同一性を有するアラインメントを作り出す任意の配列比較プログラムを意図する。%同一性は、報告される整列領域にわたる2つの配列(長さ中の任意のギャップを含む)間の同じ一致のパーセンテージであり、%類似性は、報告される整列領域にわたる2つの配列(長さ中の任意のギャップを含む)間の一致のパーセンテージである。
【0091】
アラインメントは、点検によってマニュアル的に実施することもできる。
【0092】
組換え宿主。本発明の毒素をコードする遺伝子は、広範な種類の微生物または植物宿主中に導入することができる。毒素遺伝子の発現は、直接的または間接的に、殺有害生物性タンパク質の細胞内産生および維持をもたらす。適切な微生物宿主、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)の場合、該微生物を、それらが増殖し、取り込まれる有害生物の環境に適用することができる。結果は、有害生物の防除である。別法として、毒素遺伝子を宿す微生物を、毒素の活性を延長し、かつ細胞を安定化する条件下で処理することができる。毒性活性を維持している処理細胞を、次いで、標的有害生物の環境に適用することができる。
【0093】
B.t.毒素遺伝子が適当なベクターを介して微生物宿主中に導入され、前記宿主が生存状態で環境に適用される場合、特定の宿主微生物を使用することが必須である。注目の1種または複数の作物の「植物圏」(葉面、葉圏、根圏、および/または根面)を占拠することが知られている微生物宿主が選択される。これらの微生物は、特定の環境(作物およびその他の昆虫生息地)中で野生型土着微生物と成功裡に競争する能力があり、ポリペプチド殺有害生物剤を発現する遺伝子の安定な維持および発現を提供し、望ましくは環境での分解および不活性化からの殺有害生物剤の改善された保護を提供するように選択される。
【0094】
多数の微生物が、広範な種類の重要作物の葉面(植物の葉の表面)および/または根圏(植物の根を取り囲む土壌)に存在することが知られている。これらの微生物には、細菌、藻類、および真菌が含まれる。とりわけ重要なのは、細菌、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)、エルウィニア(Erwinia)、セラチア(Serratia)、クレブシエラ(Klebsiella)、キサントモナス(Xanthomonas)、ストレプトミセス(Streptomyces)、リゾビウム(Rhizobium)、シノリゾビウム(Sinorhizobium)、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、メチロフィリウス(Methylophilius)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、アセトバクター(Acetobacter)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、アゾトバクター(Azotobacter)、ロイコノストック(Leuconostoc)、およびアルカリゲネス(Alcaligenes)属;真菌とりわけ酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、ロドトルラ(Rhodotorula)、およびアウレオバシジウム(Aureobasidium)属などの微生物である。とりわけ興味のあるのは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、ロドシュードモナス・スフェロイデス(Rhodopseudomonas spheroides)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、シノリゾビウム・メリロチ(Sinorhizobium meliloti)(以前にはリゾビウム・メリロチ(Rhizobium meliloti))、アルカリゲネス・ユートロフス(Alcaligenes eutrophus)、およびアゾトバクター・ビネランジ(Azotobacter vinelandii)などの植物圏細菌種;ならびにロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、R.グルチニス(R.glutinis)、R.マリナ(R.marina)、R.アウランティアカ(R.aurantiaca)、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、C.ジフルエンス(C.diffluens)、C.ラウレンティ(C.laurentii)、サッカロミセス・ロセイ(Saccharomyces rosei)、S.プレトリエンシス(S.Pretoriensis)、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、スポロボロマイセス・ロセウス(Sporobolomyces roseus)、S.オドルス(S.odorus)、クリベロマイセス・ベロナエ(Kluyveromyces veronae)、およびアウレオバシジウム・ポルランス(Aureobasidium pollulans)などの植物圏酵母種である。とりわけ興味のあるのは、有色微生物である。
【0095】
害虫の防除方法。
昆虫が、遺伝子導入植物の発現、製剤化されたタンパク質組成物(群)、噴霧可能なタンパク質組成物(群)、ベイトマトリックス、またはその他の送達システムを介して送達された有効量の毒素と接触すると、結果は、典型的には昆虫の死亡であり、あるいは昆虫は、毒素を昆虫にとって利用可能にする供給源を餌にしない。
【0096】
対象とするタンパク質毒素は、種々の方式で標的昆虫に接触するように「適用」または提供できる。例えば、遺伝子導入植物(ここで、タンパク質は、植物によって産生され、植物中に存在する)を使用することができ、それは当技術分野で周知である。毒素遺伝子の発現は、また、根、葉などの植物の特定組織中で選択的に達成することができる。これは、例えば、組織特異的プロモーターの使用を介して完遂することができる。スプレー式適用は、もう1つの例であり、これも当技術分野で周知である。対象とするタンパク質は、所望の最終用途向けに適切に製剤化され、次いで、蔓延が発見される前に、標的昆虫が発見された後に、前および後の双方などに、保護すべき植物上に、および/または植物の周りに/植物の付近に噴霧(そうでなければ適用)することができる。例えば、ベイト顆粒も使用することができ、当技術分野で周知である。
【0097】
遺伝子導入植物
対象とするタンパク質は、任意のクラスの植物を鱗翅目昆虫による損傷から実際に保護するために使用することができる。このような植物の例には、少し例を挙げれば、トウモロコシ、ヒマワリ、ダイズ、ワタ、カノーラ、イネ、モロコシ、タバコ、コムギ、オオムギ、野菜、観賞植物、コショウ(トウガラシを含む)、サトウダイコン、果実、および芝生が含まれる。植物を形質転換する方法は、当技術分野で周知であり、実例となる形質転換法は、実施例中に記載される。
【0098】
本発明の好ましい実施形態は、対象とする殺虫性タンパク質またはその変異体をコードする遺伝子での植物の形質転換である。形質転換された植物は、形質転換された植物の細胞中の抑制量の対象とする殺虫性タンパク質またはその変異体の存在によって、昆虫標的有害生物による攻撃に抵抗性がある。B.t.殺虫性毒素の殺虫特性をコードする遺伝子材料を、特定の害虫によって食される植物のゲノム中に組み込むことによって、成虫または幼虫は、食用植物の摂取後に死亡するであろう。単子葉および双子葉各類の多数のメンバーが、形質転換されている。遺伝子導入農耕作物、ならびに果実および野菜は、商業的に重要である。このような作物には、限定はされないが、トウモロコシ、イネ、ダイズ、カノーラ、ヒマワリ、アルファルファ、モロコシ、コムギ、ワタ、ピーナツ、トマト、ジャガイモなどが含まれる。外来遺伝子材料を植物細胞中に導入するための、および導入された遺伝子を安定的に維持し発現する植物を得るためのいくつかの技術が存在する。このような技術には、ミクロ粒子上に被覆された遺伝子材料の直接的な細胞中への促進(米国特許第4945050号および米国特許第5141131号)が含まれる。アグロバクテリウム(Agrobacterium)技術を使用して植物を形質転換することができ、米国特許第5177010号、米国特許第5104310号、欧州特許出願公開第0131624号、欧州特許出願公開第120516号、欧州特許出願公開第159418号、欧州特許出願公開第176112号、米国特許第5149645号、米国特許第5469976号、米国特許第5464763号、米国特許第4940838号、米国特許第4693976号、欧州特許出願公開第116718号、欧州特許出願公開第290799号、欧州特許出願公開第320500号、欧州特許出願公開第604662号、欧州特許出願公開627752号、欧州特許出願公開第0267159号、欧州特許出願公開第0292435号、米国特許第5231019号、米国特許第5463174号、米国特許第4762785号、米国特許第5004863号、および米国特許第5159135号を参照されたい。その他の形質転換技術には、WHISKERS(商標)技術が含まれ、米国特許第5302523号および米国特許第5464765号を参照されたい。また、エレクトロポレーション技術を使用して植物を形質転換しており、国際公開第1987/06614号、米国特許第5472869号、米国特許第5384253号、国際公開第1992/09696号、および国際公開第1993/21335号を参照されたい。これらの形質転換の特許および刊行物はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。植物を形質転換するための多数の技術に加えて、外来遺伝子と接触させる組織のクラスも変えることができる。このような組織には、限定はされないが、胚形成組織、カルス組織I型およびII型、胚軸、分裂組織などが含まれる。ほとんどすべての植物組織を、当業者の技術範囲内の適切な技術を使用して、脱分化中に形質転換することができる。
【0099】
DIG−109もしくはDIG−152毒素またはその変異体をコードする遺伝子を、上で開示した、当技術分野で周知の種々の技術を使用して、植物細胞中に挿入することができる。例えば、形質転換される微生物細胞および大腸菌(Escherichia coli)中で機能する複製系の選択を許容するマーカーを含む多数のクローニングベクターを、高等植物中への挿入のための外来遺伝子の調製および改変に利用できる。このような操作には、例えば、意図した用途のために望まれるような、突然変異の挿入、切り詰め、付加、または置換が含まれ得る。ベクターは、例えば、pBR322、pUC系、M13mp系、pACYC184などを含む。したがって、Cryタンパク質または変異体をコードする配列を、ベクター中に適切な制限酵素部位で挿入することができる。得られるプラスミドは、大腸菌(E.coli)の形質転換のために使用され、その細胞を、適切な栄養培地中で培養し、次いで、収集、溶菌して、有効な量のプラスミドを回収する。配列解析、制限酵素フラグメント解析、電気泳動、およびその他の生化学−分子生物学的方法が、解析の方法として一般に実施される。各操作の後、使用するDNA配列を、開裂させ、次のDNA配列に連結することができる。操作された各DNA配列を、同じまたは他のプラスミド中でクローン化することができる。
【0100】
植物細胞の形質転換のためにT−DNAを含むベクターを使用することは、徹底的に研究され、欧州特許出願公開第120516号;LeeおよびGelvin、2008;Fraleyら、1986;およびAnら、1985中に十分に記載されており、その分野で確立されている。
【0101】
挿入されるDNAが植物ゲノム中に組み込まれると、それは、後の世代を通して比較的安定である。植物細胞を形質転換するのに使用されるベクターは、通常、形質転換された植物細胞に、とりわけビアラホス、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、またはヒグロマイシンなどの除草剤または抗生物質に対する抵抗性を付与するタンパク質をコードする選択マーカー遺伝子を含む。個別に採用される選択マーカー遺伝子は、したがって、挿入されるDNAを含まない細胞の増殖を選別化合物によって抑制しながら、形質転換された細胞の選択を許容すべきである。
【0102】
多数の技術が、宿主植物細胞中にDNAを挿入するために利用可能である。それらの技術には、形質転換剤としてのアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)によって送達されるT−DNAを用いる形質転換が含まれる。さらに、植物プロトプラストの、送達されるべきDNAを含むリポソームとの融合、DNAの直接注入、遺伝子銃形質転換(微粒子衝突)、またはエレクトロポレーション、ならびにその他の可能な方法を採用することができる。
【0103】
本発明の好ましい実施形態において、植物は、タンパク質コード領域のコドン使用頻度が植物に対して最適化されている遺伝子で形質転換される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5380831号を参照されたい。また、有利には、切り詰められた毒素をコードしている植物が使用される。切り詰められた毒素は、典型的には、完全長毒素の約55%〜約80%をコードしている。植物中で使用するための合成B.t.遺伝子を創り出す方法は、当技術分野で公知である(Stewart、2007)。
【0104】
形質転換技術にかかわらず、遺伝子は、ベクター中に植物プロモーターを含めることによって植物細胞中でB.t.殺虫性毒素遺伝子および変異体を発現するように適合された遺伝子移入ベクター中に好ましくは組み込まれる。植物プロモーターに加えて、種々の供給源からのプロモーターを、各植物細胞で効率的に使用して外来遺伝子を発現することができる。たとえば、オクトピンシンターゼプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター、マンノピンシンターゼプロモーターなどの細菌起源のプロモーター;カリフラワーモザイクウイルスの35Sおよび19Sプロモーターなどの植物ウイルス起源のプロモーターなどを使用することができる。植物プロモーターには、限定はされないが、リブロース−1,6−ビスホスフェート(RUBP)カルボキシラーゼの小サブユニット(ssu)、β−コングリシニンプロモーター、ファセオリンプロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、熱ショックプロモーター、ADF(アクチン解重合因子)プロモーター、および組織特異的プロモーターが含まれる。プロモーターは、また、転写効率を改善できる特定のエンハンサー配列要素を含むことができる。典型的なエンハンサーには、限定はされないが、ADH1−イントロン1およびADH1−イントロン6が含まれる。構成プロモーターを使用することもできる。構成的プロモーターは、ほとんどすべての細胞型中で、およびほとんどすべての時点で連続的な遺伝子発現を指令する(例えば、アクチン、ユビキチン、CaMV35S)。組織特異的プロモーターは、葉または種子など、特定の細胞または組織型中での遺伝子発現の原因であり(例えば、ゼイン、オレオシン、ナピン、ACP(アシル担体タンパク質))、これらのプロモーターを使用することもできる。植物発育の特定段階で活性である、および特定の植物組織および器官中で活性であるプロモーターを使用することもできる。このようなプロモーターの例には、限定はされないが、根特異的、花粉特異的、胚特異的、コーンシルク特異的、ワタ繊維特異的、種子胚乳特異的、師部特異的であるなどのプロモーターが含まれる。
【0105】
特定の状況下では、誘導性プロモーターを使用することが望ましいことがある。誘導性プロモーターは、物理的刺激(例えば、熱ショック遺伝子)、光(例えば、RUBPカルボキシラーゼ)、ホルモン(例えば、グルココルチコイド)、抗生物質(例えば、テトラサイクリン)、代謝産物、およびストレス(例えば、欠乏)などの特定のシグナルに応答した遺伝子発現の原因である。5’未翻訳リーダー配列、RNA転写終結配列、およびポリ−アデニレート付加シグナル配列などの、植物中で機能するその他の望ましい転写および翻訳各要素を使用することができる。多数の植物特異的遺伝子移入ベクターが、当技術分野で知られている。
【0106】
昆虫抵抗性(IR)形質を含む遺伝子導入作物は、コーンおよびワタ各植物において北米全体で普及しており、これらの形質の利用は、世界的に拡大している。IRと除草剤耐性(HT)を組み合わせた市販の形質転換作物が、多数の種子会社によって開発されてきた。これらには、B.t.殺虫性タンパク質によって付与されるIR形質と、スルホニルウレア類、イミダゾリノン類、トリアゾロピリミジン、スルホンアニリド類などのアセト乳酸シンターゼ(ALS)阻害剤;ビアロホス、グルホシネートなどのグルタミンシンターゼ(GS)阻害剤;メソトリオン、イソキサフルトールなどの4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)阻害剤;グリホサートなどの5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(EPSPS)阻害剤;およびハロキシホップ、キザロホップ、ジクロホップなどのアセチル−補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)阻害剤に対する耐性などのHT形質との組合せが含まれる。形質転換で準備されたタンパク質が、植物に、フェノキシ酸系除草剤およびピリジルオキシ酢酸オーキシン系除草剤(国際公開第2007/053482号を参照されたい)、またはフェノキシ酸系除草剤、およびアリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤(国際公開第2005/107437号を参照されたい)などの除草剤の化学クラスに対する耐性を提供する、その他の例が知られている。IR形質を介して複数の有害生物の問題を抑制する能力は、価値ある商品構想であり、この製品構想の便益は、昆虫防除形質および雑草防除形質が同一植物中で組み合わされる場合に、増強される。さらに、改善された価値は、本発明のタンパク質などのB.t.殺虫性タンパク質によって付与されるIR形質の、前述のような1種または複数のさらなるHT形質+1種または複数のさらなる移入形質(例えば、B.t.由来またはその他の殺虫性タンパク質によって付与されるその他の昆虫抵抗性、RNAiなどの機構によって付与される昆虫抵抗性、B.t.由来またはその他の殺線虫性タンパク質によって付与される線虫抵抗性、RNAiなどの機構によって付与される線虫抵抗性、病気抵抗性、ストレス耐性、改善された窒素使用性など)、または移出形質(例えば、高い油脂流量、健康的な油脂組成、栄養改善など)との単一植物での組合せを介して得ることができる。このような組合せは、通常的な育種(育種の積み重ね)を介して、または共同的に複数の遺伝子の同時導入を含む新規な形質転換事象(分子の積み重ね)として得ることができる。利益には、生産者および/または消費者に二次的利益を提供する、作物植物における害虫および改善された雑草防除を管理する能力が含まれる。したがって、本発明は、任意の数の農学的問題を柔軟かつ高い費用効果で制御する能力を有する改善された作物品質の完全な農学的パッケージを提供するために、その他の形質と組み合わせて使用することができる。
【0107】
標的有害生物
本発明のDIG−109毒素およびDIG−152毒素は、鱗翅目昆虫の防除で使用するのにとりわけ適している。鱗翅目は、毎年極めて大きな総額の損害をもたらす、農業、園芸、および家庭の有害生物の重要な群である。この昆虫目は、葉および根を摂食する幼虫および成虫を包含する。鱗翅目害虫には、限定はされないが、アコロイア・グリセラ(Achoroia grisella)、アクレリス・グロベラナ(Acleris gloverana)、アクレリス・バリアナ(Acleris variana)、アドキソフィエス・オラナ(Adoxophyes orana)、アグロチス・イプシロン(Agrotis ipsilon)(ブラックカットワーム)、アラバマ・アルギラセア(Alabama argillacea)、アルソフィラ・ポメタリア(Alsophila pometaria)、アメロイス・トランシテラ(Amyelois transitella)、アナガスタ・クエニエラ(Anagasta kuehniella)、アナルシア・リネアテラ(Anarsia lineatella)、アニソタ・セナトリア(Anisota senatoria)、アンテラエア・ペルニイ(Antheraea pernyi)、アンチカルシア・ゲマタリス(Anticarsia gemmatalis)、アルキプス(Archips)種、アルギロタエニア(Argyrotaenia)種、アテチス・ミンダラ(Athetis mindara)、ボンビクス・モリ(Bombyx mori)、ブクラトリックス・ツルベリエラ(Bucculatrix thurberiella)、カドラ・カウテラ(Cadra cautella)、コリストネウラ(Choristoneura)種、コチルス・ホスペス(Cochylls hospes)、コリアス・ユリセマ(Colias eurytheme)、コルシラ・セファロニカ(Corcyra cephalonica)、シディア・ラチフェレナス(Cydia latiferreanus)、シディア・ポモネラ(Cydia pomonella)、ダタナ・インテゲリマ(Datana integerrima)、デンドロリムス・シベリカス(Dendrolimus sibericus)、デスミア・フェネラリス(Desmia feneralis)、ジアファニア・ヒアリナタ(Diaphania hyalinata)、ジアファニア・ニチダリス(Diaphania nitidalis)、ジアトラエア・グランジオセラ(Diatraea grandiosella)(サウスウェスターンコーンボーラー)、ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis)(シュガーケインボーラー)、エノモス・サブシグナリア(Ennomos subsignaria)、エオレウマ・ロフチニ(Eoreuma loftini)、エスフェスチア・エルテラ(Esphestia elutella)、エラニス・チラリア(Erannis tilaria)、エスチグメネ・アクレア(Estigmene acrea)、エウリア・サルブリコラ(Eulia salubricola)、エウポコエリア・アンビグエラ(Eupocoellia ambiguella)、エウポエシリア・アンビグエラ(Eupoecilia ambiguella)、エウプロクチス・クリソロエア(Euproctis chrysorrhoea)、エウゾア・メソリア(Euxoa messoria)、ガレリア・メロネラ(Galleria mellonella)、グラホリタ・モレスタ(Grapholita molesta)、ハリシナ・アメリカナ(Harrisina americana)、ヘリコベルパ・サブフレクサ(Helicoverpa subflexa)、ヘリコベルパ・ゼア(Helicoverpa zea)(コーンイアーワーム)、ヘリオチス・ビレセンス(Heliothis virescens)、ヘミロイカ・オリビア(Hemileuca oliviae)、ホモエオソマ・エレクテルム(Homoeosoma electellum)、ヒファンチア・クネア(Hyphantia cunea)、ケイフェリア・リコペルシセラ(Keiferia lycopersicella)、ランブジナ・フィセラリア・フィセラリア(Lambdina fiscellaria fiscellaria)、ランブジナ・フィセラリア・ルグブロサ(Lambdina fiscellaria lugubrosa)、ロイコーマ・サリシス(Leucoma salicis)、ロベシア・ボトラナ(Lobesia botrana)、ロクサグロチス・アルビコスタ(Loxagrotis albicosta)(ウェスターンビーンカットワーム)、ロクソステジ・スチクチカリス(Loxostege sticticalis)、リマントリア・ジスパル(Lymantria dispar)、マカラ・チリサリス(Macalla thyrisalis)、マラコソマ(Malacosoma)種、マメストラ・ブラシカエ(Mamestra brassicae)、マメストラ・コンフィグラタ(Mamestra configurata)、マンデュカ・キンクエマクラタ(Manduca quinquemaculata)、マンデュカ・セクスタ(Manduca sexta)、マルカ・テスツラリス(Maruca testulalis)、メランクラ・ピクタ(Melanchra picta)、オペロフテラ・ブルマタ(Operophtera brumata)、オリジア(Orgyia)種、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(ユーロピアンコーンボーラー)、パレアクリタ・ベルナタ(Paleacrita vernata)、パピアペマ・ネブリス(Papiapema nebris)(コモンストークボーラー)、パピリオ・クレスホンテス(Papilio cresphontes)、ペクチノホラ・ゴシピエラ(Pectinophora gossypiella)、フィリガニジア・カリフォルニカ(Phryganidia californica)、フィロノリクテル・ブランカルデラ(Phyllonorycter blancardella)、ピエリス・ナピ(Pieris napi)、ピエリス・ラパエ(Pieris rapae)、プラチペナ・スカブラ(Plathypena scabra)、プラチノタ・フロエンダナ(Platynota flouendana)、プラチノタ・スツルタナ(Platynota stultana)、プラチプチリア・カルヅイダクチラ(Platyptilia carduidactyla)、プロジア・インテルプンクテラ(Plodia interpunctella)、プルテラ・キシロステラ(Plutella xylostella)(ダイアモンドバックモス)、ポンティア・プロトダイス(Pontia protodice)、プソイダレチア・ユニプンクタ(Pseudaletia unipuncta)(アーミーワーム)、プソイドプラシア・インクルデンス(Pseudoplasia includens)、サブロデス・アエグロタタ(Sabulodes aegrotata)、シズラ・コンシナ(Schizura concinna)、シトトロガ・セレアレラ(Sitotroga cerealella)、スピロンタ・オセラナ(Spilonta ocellana)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(フォールアーミーワーム)、スポドプテラ・エクシグア(Spodoptera exigua)(ビートアーミーワーム)、タウルンストポエア・ピチオカンパ(Thaurnstopoea pityocampa)、エンソラ・ビセリエラ(Ensola bisselliella)、トリコプルシア・ヒ(Trichoplusia hi)、ウデア・ルビガリス(Udea rubigalis)、キシロミゲス・クリアイルス(Xylomyges curiails)、およびイポノメウタ・パデラ(Yponomeuta padella)が含まれる。
【0108】
作物植物の鞘翅目有害生物を防除するためのDIG−109毒素およびDIG−152毒素ならびにその変異体の使用も想定される。一部の実施形態において、Cryタンパク質は、限定はされないが、例えば、ジアブロチカ・ウンデシンプンクタタ・ホワルジ(Diabrotica undecimpunctata howardi)(サザンコーンルートワーム)、ジアブロチカ・ロンジコルニス・バルベリ(Diabrotica longicornis barberi)(ノーザンコーンルートワーム)およびジアブロチカ・ベルギフェラ(Diabrotica virgifera)(ウェスターンコーンルートワーム)などのルートワーム、ならびにシクロセファラ・ボレアリス(Cyclocephala borealis)(ノーザンマスクドコガネムシ)、シクロセファラ・イマクラテ(Cyclocephala immaculate)(サザンマスクドコガネムシ)、およびポピリア・ジャポニカ(Popillia japonica)(ジャパニーズビートル)の幼虫などの地虫が含まれる害虫の防除向けに、経済的に導入できる。
【0109】
DIG−109およびDIG−152毒素の抗体検出
抗毒素抗体。本明細書に開示のB.t.毒素に対する、または同等の毒素、あるいはこれらの毒素の断片に対する抗体は、例えば、Coliganら、2007およびその更新版によって教示されるように、本技術分野の標準的手順を使用して容易に調製することができる、このような抗体は、DIG−109毒素、DIG−152毒素、およびこれらの変異体の存在を検出するのに有用である。
【0110】
B.t.殺虫性毒素が単離されたら、該毒素に特異的な抗体を、当技術分野で周知である通常の方法によって生じさせることができる。選択した宿主への数週間または数ヶ月にわたる反復注入は、免疫応答を誘発し、かなりの抗B.t.毒素血清価をもたらす。好ましい宿主は哺乳動物種であり、より好ましい種は、ウサギ、ヤギ、ヒツジおよびマウスである。このような免疫化された動物から採取した血液を、確立された方法で処理して、B.t.殺虫性毒素と反応性のある抗血清(ポリクロナール抗体)を得ることができる。次いで、抗血清を、当技術分野で既知の技術による毒素への吸着によって親和性精製することができる。親和性精製された抗血清を、当技術分野で既知の手順を使用して抗血清内の免疫グロブリン画分を単離することによってさらに精製することができる。得られる材料は、B.t.殺虫性毒素と反応性のある免疫グロブリンの異種集団となる。
【0111】
抗B.t.毒素の抗体は、また、免疫原性担体に複合されたB.t.殺虫性毒素の合成ペプチドフラグメントからなる半合成免疫原を調製することによって作り出すことができる。ペプチドフラグメントを作製するのに有用な多数のスキームおよび装置が、当技術分野で周知である。ウシ血清アルブミンまたはスカシ貝ヘモシアニンなどの多くの適切な免疫原性担体も、当技術分野で周知であり、免疫原と担体タンパク質とをカップリングするための技術も同様である。半合成免疫原が構築されると、B.t.殺虫性毒素フラグメントに特異的な抗体の調製手順は、天然B.t.毒素と反応性のある抗体を調製するのに使用されるものと同じである。
【0112】
抗B.t.毒素のモノクローナル抗体(MAb)は、精製されたB.t.殺虫性毒素を使用して容易に調製される。MAbの産生方法は、15年にわたって実施されており、当業者に周知である。免疫賦活剤中の精製されたB.t.殺虫性毒素の腹腔内または皮下反復注入は、ほとんどの動物で免疫応答を誘発する。過免疫のB−リンパ球を、動物から取り出し、無期限に培養される能力のある適切な融合パートナー細胞系と融合する。そのB−リンパ球が過免疫であり、MAbの産生で使用される可能性のある好ましい動物は、哺乳動物である。より好ましい動物は、ラットおよびマウスであり、最も好ましいのは、BALB/cマウス系統である。
【0113】
多数の哺乳動物細胞系が、ハイブリドーマの産生に適した融合パートナーである。多くのこのような系は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、バージニア州)および商業的供給業者から入手可能である。好ましい融合パートナー細胞系は、マウスの骨髄腫に由来し、HL−1(登録商標)フレンドリー骨髄腫−653細胞系(Ventrex、Portland、メイン州)が最も好ましい。融合したら、得られるハイブリドーマを、選択増殖培地中で1〜2週間培養する。2種の周知の選択系が、未融合骨髄腫細胞または骨髄腫細胞間の融合物を混合ハイブリドーマ培養物から除去するために利用することができる。選択系の選択は、免疫されるマウスの系統、および使用される骨髄腫融合パートナーに依存する。TaggartおよびSamloff(1983)によって発表されたaaT選択系を使用することができるが、Littlefield(1964)によって発表されたHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択系が、好ましいマウス系統および前述の融合パートナーとのその適合性のため、好ましい。次いで、費やされた増殖培地を、免疫特異的MAb分泌についてスクリーニングする。酵素結合性免疫吸着アッセイ(ELISA)法が、この目的に最も適しているが、大規模なスクリーニング用に適合されたラジオイムノアッセイも許容される。関連性のないまたはあまり所望されない培養物の著しい数を連続的に削減するように設計された複数のスクリーニングを実施することができる。B.t.殺虫性毒素と反応性のあるMAbを分泌する培養物を、既知のB.t.殺虫性毒素との交差反応性についてスクリーニングすることができる。好ましいB.t.殺虫性毒素に優先的に結合するMAbは、市販のアッセイを使用してイソタイプに分けられる。好ましいMAbは、IgGクラスに属し、より高度に好ましいMAbはIgGおよびIgG2aサブイソタイプに属する。
【0114】
好ましいMAbを分泌するハイブリドーマ培養物を数回サブクローニングして、単クローン性および安定性を確立することができる。真核生物の非接着性細胞培養物をサブクローニングするための周知の方法は、限界希釈法、軟質アガロースおよび蛍光活性化細胞ソーティング技術を包含する。各サブクローニングの後、生じた培養物を、好ましくは、抗体分泌およびイソタイプについて再アッセイして、安定な好ましいMAb分泌培養物が確立されたことを確実にする。
【0115】
抗B.t.毒素抗体は、特許請求された本発明のB.t.殺虫性毒素、およびその変異体またはフラグメントを検出する種々の方法において有用である。レポーティング基(reporting group)で標識された抗体を使用して、多様な環境中での抗原の存在を確認することができることは広く知られている。放射性同位体で標識された抗体は、卓越した正確さおよび感度で、多様な生物学的流体中での抗原の存在を確認するためのラジオイムノアッセイにおいて数十年の間使用されてきた。より最近になって、酵素で標識された抗体が、ELISAアッセイにおいて放射能標識化抗体の代替として使用されている。さらに、本発明のB.t.殺虫性毒素に対して免疫反応性のある抗体を、ポリスチレンウェルなどの固定化物質または粒子に結合させ、B.t.毒素が試験サンプル中に存在するかどうかを判定するための免疫アッセイで使用することができる。
【0116】
プローブを使用する検出
本発明の毒素および遺伝子を同定するためのさらなる方法は、オリゴヌクレオチドプローブの使用による。これらのプローブは、ヌクレオチド配列を検出できる。これらの配列を、適切な放射性標識によって検出可能にすることができ、あるいは米国特許第6268132号中に記載のように本質的に蛍光性にすることができる。当技術分野で周知のように、プローブ分子および核酸サンプルが、2つの分子間で強力な塩基対形成結合を形成することによってハイブリッドを形成すると、プローブおよびサンプルが実質的に配列相同性を有することを、合理的に想定することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、例えばKellerおよびManak(1993)の論文中に記載のような当技術分野で周知の技術によって厳密な条件下で実施される。プローブの検出は、ハイブリダイゼーションが起こったかどうかを既知の方式で判定する手段を提供する。このようなプローブ分析は、本発明の毒素をコードする遺伝子を同定するための迅速な方法を提供する。本発明によるプローブとして使用されるヌクレオチドセグメントは、DNAシンセサイザーおよび標準的手順を使用して合成することができる。これらのヌクレオチド配列は、また、本発明の遺伝子を増幅するためのPCRプライマーとして使用することができる。
【0117】
ハイブリダイゼーション
分子生物学の当業者にとって周知であるように、2つの核酸の類似性は、それらのハイブリダイズする傾向によって特徴付けることができる。本明細書中で使用する場合、「厳密な条件」または「厳密なハイブリダイゼーション条件」という用語は、プローブがその標的配列に他の配列に比べて検出可能なより大きな程度まで(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍超)ハイブリダイズ(アニール)する条件を指すと解釈される。厳密な条件は、配列に依存し、環境により異なる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件の厳密性を制御することによって、プローブに対して100%相補的である標的配列を同定することができる(相同プロービング)。別法として、より低度の類似性を検出するように、厳密性の条件を、配列中の一部の不一致を認めるように調節することができる(非相同プロービング)。一般に、プローブは、約1000未満のヌクレオチド長、好ましくは500未満のヌクレオチド長である。
【0118】
典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜pH8.3で約1.5M未満のNaイオン、典型的には約0.01〜1.0MのNaイオン濃度(またはその他の塩)であり、温度は、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)で少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)で少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、また、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加で達成することができる。典型的なストリンジェンシーが低い条件には、37℃の30%〜35%ホルムアミドの緩衝溶液、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーション、および50℃〜55℃での1X〜2X SSC(20X SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)中での洗浄が含まれる。典型的なストリンジェンシーが中等度の条件には、37℃での、40%〜45%のホルムアミド、1.0M NaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および55℃〜60℃での0.5X〜1X SSC中での洗浄が含まれる。典型的なストリンジェンシーが高い条件には、37℃での50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および60℃〜65℃での0.1X SSC中での洗浄が含まれる。任意選択で、洗浄緩衝液は、約0.1%〜約1%のSDSを含むことができる。ハイブリダイゼーションの継続時間は、一般に、約24時間未満、通常、約4〜約12時間である。
【0119】
特異性は、典型的には、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、最も重要な因子は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。DNA/DNAハイブリッドの場合、熱融解温度(T)は、(規定のイオン強度およびpHの下で)相補性標的配列の50%が、完全に一致したプローブにハイブリダイズする温度である。Tは、各1%の不一致に対し約1℃低下し、したがって、T、ハイブリダイゼーション条件、および/または洗浄条件を調節して、所望の同一性をもつ配列のアニーリングを促進することができる。例えば、90%を超える同一性を備えた配列を求めるなら、Tを10℃下げることができる。一般に、厳密な条件は、規定されたイオン強度およびpHで、特定の配列およびその相補配列に対するTに比べて約5℃低いように選択される。しかし、高度に厳密な条件は、Tに比べて1℃、2℃、3℃または4℃より低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができ、中等度に厳密な条件は、Tに比べて6℃、7℃、8℃、9℃または10℃より低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができ、ストリンジェンシーが低い条件は、Tに比べて11℃、12℃、13℃、14℃、15℃または20℃より低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。
【0120】
(℃)は、実験的に測定することができ、あるいは計算によって近似することができる。DNA−DNAハイブリッドの場合、Tは、MeinkothおよびWahlの式(1984)で近似することができる:
(℃)=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%ホルムアミド)−500/L;
ここで、Mは一価カチオンのモル濃度であり、%GCはDNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%ホルムアミドはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、Lは塩基対中のハイブリッドの長さである。
【0121】
別法として、Tは、次式によって記述される(Beltzら、1983)。
(℃)=81.5℃+16.6(log[Na+])+0.41(%GC)−0.61(%ホルムアミド)−600/L
ここで、[Na+]はナトリウムイオンのモル濃度であり、%GCはDNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%ホルムアミドはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、Lは塩基対中のハイブリッドの長さである。
【0122】
該式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成物、および所望のTを使用して、当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーの変更が本質的に記述されることを理解するであろう。所望の不一致度が、45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)未満のTをもたらすなら、より高い温度を使用できるように、SSC濃度を高めることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションへの完璧な指針が、Tijssen(1993)およびAusubelら(1995)の論文中およびその更新版に見出される。Sambrookら(1989)の論文およびその更新版も参照されたい。
【0123】
サザンブロット上に固定化されたDNAの放射能標識化された遺伝子特異的プローブとのハイブリダイゼーションは、標準的な方法によって実施することができる(Sambrookら、同上)。ポリヌクレオチドプローブを標識化するのに使用される放射性同位体としては、32P、33P、14C、または3Hを挙げることができる。放射性同位体のポリヌクレオチドプローブ分子中への組み込みは、分子生物学の分野の当業者にとって周知であるいくつかの方法のいずれかによって行うことができる(例えば、Sambrookら、同上を参照されたい)。一般に、ハイブリダイゼーションおよびそれに続く洗浄は、要求される毒素をコードする遺伝子に対して相同性を有する標的配列の検出を可能にする厳密な条件下で実施することができる。二本鎖DNA遺伝子プローブの場合、ハイブリダイゼーションは、6X SSPE、5Xデンハート液、0.1%SDS、0.1mg/mL変性DNA中、DNAハイブリッドのTより20〜25℃低い温度で一夜実施することができる[20X SSPEは3M NaCl、0.2M NaHPO、および0.02M EDTA(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩)であり;100Xデンハート液は、20g/Lポリビニルピロリドン,20g/L Ficoll400型、および20g/Lウシ血清アルブミン(分画V)である]。
【0124】
洗浄は、典型的には、次のように実施することができる:
1X SSPE、0.1%SDS中、室温で15分間、2回(低ストリンジェンシーの洗浄)。
0.2X SSPE、0.1%SDS中、T−20℃で15分間、1回(高ストリンジェンシーの洗浄)。
【0125】
オリゴヌクレオチドプローブの場合、ハイブリダイゼーションは、6X SSPE、5Xデンハート液、0.1%SDS、0.1mg/mL変性DNA中、ハイブリッドのTより10℃〜20℃低い温度で一夜実施することができる。オリゴヌクレオチドプローブのためのTは、次式によって決定することができる(Suggsら、1981)。
(℃)=2(T/A塩基対の数)+4(G/C塩基対の数)
【0126】
洗浄は、典型的には、次のように実施することができる:
1X SSPE、0.1%SDS中、室温で15分間、2回(低ストリンジェンシーの洗浄)。
1X SSPE、0.1%SDS中、ハイブリダイゼーション温度で15分間、1回(高ストリンジェンシーの洗浄)。
【0127】
塩濃度と温度との組合せのいくつかの例(ストリンジェンシーの増加順)は次の通りである:室温で2X SSPEまたはSSC;42℃で1X SSPEまたはSSC;42℃で0.1X SSPEまたはSSC;65℃で0.1X SSPEまたはSSC。
【0128】
ハイブリダイゼーション用プローブ分子、およびプローブと標的分子との間で形成されるハイブリッド分子を、放射能標識化以外の手段によって検出できるようにすることができる。このような代わりの方法は、本発明の範囲に包含されると解釈される。
【0129】
本明細書に記載の実施例および実施形態は、単に例示の目的のためであること、およびそれらを考慮した種々の修正形態または変更は、当業者に対して示唆され、本出願の精神および範囲内に、ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されることを理解されたい。
【0130】
特別に指摘または暗示しない限り、不定冠詞(a、an)および定冠詞(the)は、本明細書中で使用する場合、「少なくとも1つ」を意味する。
【0131】
以下は、本発明を実施するための手順を例示する実施例である。これらの実施例を、限定と解釈すべきでない。特記しない限り、パーセンテージは、すべて重量によるものであり、溶媒混合物の比率は、すべて容積による。温度は、すべて摂氏温度である。
【実施例】
【0132】
〔実施例1〕
キメラCry1Caコア毒素およびCry1Abプロトキシンの設計
キメラ毒素。別のCry毒素のプロトキシンセグメントに融合された1つのCry毒素のコア毒素ドメインを利用するキメラタンパク質は、以前に、例えば米国特許第5593881号および米国特許第5932209号中に報告されている。Cry1Ca3δエンドトキシンのタンパク質配列は、旧式の用語CryIC(b)の下にGenBank受託番号AAA22343として寄託されている。
【0133】
本発明のCry1Caキメラタンパク質変異体は、コア毒素セグメントの終端を越えたいくつかの箇所で異種δ−エンドトキシンプロトキシンセグメントに融合されたCry1Ca3殺虫性毒素に由来するN末端コア毒素セグメントを含む毒素を包含する。コア毒素から異種プロトキシンセグメントへの変異は、ほぼ本来のコア毒素/プロトキシンの結合点で起こることができ、あるいは代わりに、本来のプロトキシンの一部(コア毒素セグメントを越えて拡がる)を、下流中で起こる異種プロトキシンへの変異を伴って保持することができる。変異体の型式において、コア毒素およびプロトキシンセグメントは、それらが由来する本来の毒素のアミノ酸配列を正確に含んでいてもよく、あるいは互いに融合された場合に該セグメントの生物学的機能を縮小せず、増強する可能性もあるアミノ酸の付加、欠失または置換を含むことができる。
【0134】
例えば、本発明のキメラ毒素は、Cry1Ca3に由来するコア毒素セグメントおよび異種プロトキシンを含む。本発明の好ましい実施形態において、Cry1Ca3に由来し、配列番号1のCry1Caコア毒素セグメント(619個のアミノ酸)として開示されているコア毒素セグメントは、Cry1Abδ−エンドトキシンに由来するプロトキシンセグメントを含む異種セグメントに融合される。配列番号2は、Cry1Abに由来し、本発明のCry1Ca変異体で有用な1つのプロトキシンセグメントの545個のアミノ酸の配列を開示する。本発明のキメラ毒素中に含めることが重要である、配列番号2のこのプロトキシンセグメントの末尾の約100〜150個のアミノ酸が注目される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、配列番号1として開示されたCry1Caコア毒素セグメントが配列番号2中で開示されたようなCry1Abに由来するプロトキシンセグメントに連結されているキメラタンパク質を含む。本明細書中でDIG−152と呼ばれるキメラタンパク質の1164個のアミノ酸配列は、配列番号3として開示される(pMYC2547バージョン)。本発明の第2の好ましい実施形態は、配列番号1として開示されたCry1Caコア毒素セグメントが、配列番号4に示すようなCry1Abに由来する、アミノ酸が545個の第2のプロトキシンセグメントに連結されているキメラタンパク質を含む。本発明のキメラ毒素中に含めることが重要であるこのプロトキシンセグメントの末尾の約100〜150個のアミノ酸が注目される。DIG−109と呼ばれる第2キメラタンパク質の1164個のアミノ酸の配列は、配列番号5(トウモロコシに対して最適化されたバージョン)として開示される。Cry1Caコア毒素変異体およびCry1Abに由来するプロトキシンを含むその他のキメラ融合は、本発明の範囲に包含されることを理解されたい。
【0135】
配列番号2および配列番号4で示されるようなCry1Abに由来するプロトキシンセグメントは、本質的には互いに機能的に同等であり、1つの(第1)位置でのみ配列を異にすることに留意されたい。
【0136】
〔実施例2〕
Cry1Caコア/Cry1Abプロトキシンのキメラタンパク質をコードする発現プラスミドの構築およびシュードモナス(Pseudomonas)中での発現
Cry1Abプロトキシンに融合されたCry1Caコアから構成される完全長キメラタンパク質(DIG−152、配列番号3)を産生するように遺伝子操作された、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(Pf)発現構築体pMYC2547の構築では、標準的なクローニング法[例えば、Sambrookら、(1989)およびAusubelら、(1995)、およびこれらの更新版中に記載のような]を使用した。タンパク質の産生は、米国特許第5169760号中に開示のように、改変されたlacオペロンの挿入を有するシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)株MB214(株MB101の誘導体;P.フルオレセンス(P.fluorescens)次亜種I)中で実施した。基本的なクローニング戦略は、DIG−152をコードするDNA断片をプラスミドベクター中にサブクローニングすることを必要とし、それによって、それは、PtacプロモーターおよびプラスミドpKK223−3(PL Pharmacia、Milwaukee、ウィスコンシン州)からのrrnBTIT2ターミネーターの発現調節下に置かれる。1つのこのようなプラスミドは、pMYC2547と命名され、このプラスミドを抱えるMB214分離株はDpf108と命名される。
【0137】
振盪フラスコ中での増殖および発現の解析。特徴付けおよび昆虫でのバイオアッセイのためのDIG−152タンパク質の製造は、振盪フラスコ中で増殖させたP.フルオレセンス(P.fluorescens)株Dpf108によって完遂された。Ptacプロモーターによって駆動されるDIG−152タンパク質の製造は、米国特許第5527883号に以前に記載のように実施した。振盪しながらの30℃で24時間の初期インキュベーションの後に、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによって発現を誘導した。培養物を、誘導の時点および誘導後の異なる時点でサンプリングした。細胞密度を、600nmでの光学密度(OD600)によって測定した。
【0138】
振盪フラスコ中のサンプルの細胞分画およびSDS−PAGE分析。各サンプリングの時点で、サンプルの細胞密度をOD600=20に調節し、1mLのアリコートを14000×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを−80℃で凍結した。凍結された振盪フラスコ内細胞ペレットサンプルからの溶性および不溶性画分を、EasyLyse(商標)細菌タンパク質抽出溶液(EPICENTRE(登録商標)Biotechnologies、Madison、ウィスコンシン州)を使用して作り出した。各細胞ペレットを、1mLのEasyLyse(商標)溶液に再懸濁し、さらに溶解緩衝液中に1:4で希釈し、振盪しながら室温で30分間インキュベートした。溶菌液を、4℃、14,000rpmで20分間遠心分離し、上清液を溶性画分として回収した。次いで、ペレット(不溶性画分)を等容積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS;11.9mM NaHPO、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4)に再懸濁した。
【0139】
サンプルを、β−メルカプトエタノールを含む2X Laemmliサンプル緩衝液(Sambrookら、同上)と1:1で混合し、Criterion XT Bis−Tris 12%ゲル(Bio−Rad Inc.、Hercules、カリフォルニア州)に挿入するに先立って5分間沸騰させた。推奨されたXT MOPS緩衝液中で電気泳動を実施した。ゲルを、製造業者(Bio−Rad)のプロトコールに従ってBio−Safeクーマシー染色液で染色し、Alpha Innotech Imagingシステム(San Leandro、カリフォルニア州)を使用して画像化した。
【0140】
封入体の調製。DIG−152タンパク質封入体(IB)の調製は、SDS−PAGEおよびMALDI−MS(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分光測定法)によって立証されるように、不溶性B.t.殺虫性タンパク質を産生するP.フルオレセンス(P.fluorescens)発酵からの細胞で実施した。P.フルオレセンス(P.fluorescens)発酵のペレットを、37℃の水浴中で解凍した。細胞を、溶菌緩衝液(50mM Tris、pH7.5、200mM NaCl、20mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)二ナトリウム塩、1%Triton X−100、および5mMジチオスレイトール(DTT)、5mL/Lの細菌プロテアーゼ阻害剤カクテル(カタログ番号P8465、Sigma−Aldrich、St.Louis、ミズーリ州)を使用直前に添加した)中に25%w/vまで再懸濁した。細胞を、最低に設定した携帯型ホモジナイザー(Tissue Tearor、BioSpec Products Inc.、Bartlesville、オクラホマ州)を使用して懸濁した。細胞懸濁液にリゾチーム(25mgのSigma L7651、チキン卵白由来)を、金属スパチュラで混合しながら添加し、懸濁液を室温で1時間インキュベートした。懸濁液を、氷上で15分間冷却し、次いで、Branson Sonifier250(1分の持続期間で2回、動作周期50%、出力30%)を使用して超音波処理した。細胞溶菌は、顕微鏡法でチェックした。必要に応じて、さらなる25mgのリゾチームを添加し、インキュベーションおよび超音波処理を繰り返した。細胞溶菌を顕微鏡法で確認した後、溶菌液を11,500×gで25分間(4℃)遠心分離して、IBペレットを形成し、上清液を廃棄した。IBペレットを、100mLの溶菌緩衝液で再懸濁し、携帯型ミキサーでホモジナイズし、上記のように遠心分離した。IBペレットを、上清液が無色になり、かつIBペレットが硬くオフホワイト色になるまで、再懸濁(50mLの溶菌緩衝液中に)、ホモジナイズ、超音波処理、および遠心分離によって反復洗浄した。最終洗浄では、IBペレットを、2mM EDTAを含む滅菌濾過(0.22μm)蒸留水中に再懸濁し、遠心分離した。最終ペレットを、2mM EDTAを含む滅菌濾過蒸留水中に再懸濁し、1mLアリコートの状態で、−80℃で貯蔵した。
【0141】
IB調製物中のタンパク質のSDS−PAGE分析および定量を、IBペレットの1mLアリコートを解凍すること、および滅菌濾過蒸留水で1:20に希釈することによって実施した。希釈されたサンプルを、次いで、4X還元サンプル緩衝液[250mM Tris、pH6.8、40%グリセロール(v/v)、0.4%ブロモフェノールブルー(w/v)、8%SDS(w/v)、および8%β−メルカプトエタノール(v/v)]と共に煮沸し、1X Tris/グリシン/SDS緩衝液(BioRad)で展開される、Novex(登録商標)4〜20%Tris−グリシン、12+2ウェルゲル(Invitrogen)に挿入した。ゲルを、200ボルトで60分間展開し、次いでクーマシーブルー(45%メタノール、10%酢酸中の50%G−250/50%R−250)で染色し、蒸留水中の7%酢酸、5%メタノールで脱染した。標的バンドの定量化は、該バンドの濃度測定値を、標準曲線を作出するために同一ゲル上で展開されたウシ血清アルブミン(BSA)標準サンプルに対比して行った。
【0142】
封入体の可溶化。PfクローンDPf108からのDIG−152封入体懸濁液6mLを、最高に設定したEppendorfモデル5415C微量遠心管で遠心分離(ほぼ14000×g)して封入体をペレットにした。貯蔵緩衝液の上清液を除去し、50mLコニカル管中、25mLの100mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH11)で置き換えた。封入体を、ピペットを使用して再懸濁し、渦撹拌して完全に混合した。管を、静かに揺れる台上に4℃で一夜載せ、標的タンパク質を抽出した。抽出物を、4℃、30,000×gで30分間遠心分離し、生じた上清液を、Amicon Ultra−15再生セルロース遠心フィルター装置(30,000の分子量カットオフ;Milipore)を使用して5分の1に濃縮した。次いで、サンプル緩衝液を、使い捨てのPD−10カラム(GE Healthcare、Piscataway、ニュージャージー州)を使用して10mM CAPS[3−(シクロヘキサミノ)1−プロパンスルホン酸]、pH10に変更した。
【0143】
封入体タンパク質の可溶化およびトリプシンでの活性化。一部の例において、PfクローンDPf108からのDIG−152封入体の懸濁液を、最高に設定したEppendorfモデル5415C微量遠心管で遠心分離(ほぼ14000×g)して封入体をペレットにした。貯蔵緩衝液の上清液を除去し、100mMのCAPS(pH11)で置き換えて、ほぼ50mg/mLのタンパク質濃度を得た。チューブを室温で3時間揺り動かして、タンパク質を完全に可溶化した。トリプシンを5%〜10%(w:w、IB粉末の初期重量を基準にして)に等しい量で添加し、4℃で一夜揺動しながらの、または室温で90〜120分間揺り動かすことによるインキュベーションによって消化を完遂した。不溶性材料を、10,000×gで15分間遠心分離することによって除去し、上清液を、MonoQアニオン交換カラム(10mm×10cm)にかけた。活性化されたDIG−152タンパク質を、カラム容積の25倍を超える0%〜100%の1M NaClでの勾配で溶離した(SDS−PAGEによって判定されるように、後記参照)。活性化されたタンパク質を含む画分をプールし、必要に応じて、前記のようなAmicon Ultra−15再生セルロース遠心濾過装置を使用して10mL未満まで濃縮した。次いで、材料を、100mM NaCl、10%グリセロール、0.5%Tween−20、および1mM EDTAを含む緩衝液でSuperdex200カラム(16mm×60cm)に通した。活性化された(酵素的に切断された)タンパク質が65〜70mLで溶離することがSDS−PAGE分析よって判定された。活性化されたタンパク質を含む画分をプールし、前記のような遠心濃縮装置を使用して濃縮した。
【0144】
ゲル電気泳動。電気泳動のために、濃縮されたタンパク質調製物を、還元剤として5mM DTTを含むNuPAGE(登録商標)LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)で1:50に希釈することによって調製し、95℃で4分間加熱した。サンプルを、0.2μg〜2μg/レーンの範囲の5つのBSA標準(標準曲線の作出のため)と並んで、4〜12%NuPAGE(登録商標)ゲルの二つ組みレーンに挿入した。MOPS SDS展開緩衝液(Invitrogen)を使用して、追跡用色素がゲルの底部に到達するまで、200Vの電圧を印加した。ゲルを、45%メタノール、10%酢酸中の0.2%クーマシーブルーG−250で染色し、まず45%メタノール、10%酢酸で簡単に、次いで7%酢酸、5%メタノールで、背景が澄明になるまで十分に脱染した。脱染に続いて、ゲルをBioRad Fluor−S MultiImagerで走査した。装置のQuantity Oneソフトウェア v.4.5.2を使用して、染色されたタンパク質バンドの背景控除容積を得てBSA標準曲線を作出し、その曲線を使用して原液中のキメラDIG−152タンパク質の濃度を計算した。
【0145】
〔実施例3〕
シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)中で産生されるDIG−152タンパク質の殺虫活性
DIG−152タンパク質の殺虫活性は、ユーロピアンコーンボーラー(ECB;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(Hubner))、Cry1F抵抗性ECB(rECB)、コーンイアーワーム(CEW;ヘリコベルパ・ゼア(Helicoverpa zea)(Boddie))、ブラックカットワーム(BCW;アグロチス・イプシロン(Agrotis ipsilon)(Hufnagel))、フォールアームーワーム(FAW;スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(J.E.Smith))、Cry1F抵抗性FAW(rFAW)、およびサウスウェスターンコーンボーラー(SWCB;ジアロラエ・グランジオセラ(Diatraea grandiosella))を含む鱗翅目種に関して立証された。
【0146】
サンプルの調製およびバイオアッセイ。封入体調製物(本来の完全長タンパク質またはトリプシンで活性化されたタンパク質)を、透析またはPD−10カラムなどの交換方法によって、10mM CAPS(pH10)緩衝液に移した。次いで、サンプルを、10mM CAPS(pH10)で適切に希釈し、すべてのバイオアッセイに、この緩衝液からなる対照処理を含めた。この対照処理は、死亡率または成長阻害に関するバックグラウンドのチェックとして役立った。
【0147】
前記のようなBioRad画像化システムを使用して測定されるゲルデンシトメトリー用の標準曲線を作り出すために、BSAを使用するゲル電気泳動によって、バイオアッセイ緩衝液中のタンパク質濃度を推定した。ゲルマトリックス中のタンパク質を、クーマシーブルーをベースにした染色液で染色し、読取り前に脱染した。
【0148】
精製されたタンパク質を、殺虫活性について、人工昆虫飼料の新生鱗翅目幼虫を用いて実施されるバイオアッセイで試験した。ECB、CEW、BCW、FAW、およびSWCBの幼虫を、商業的昆虫飼育場(Benzon Research Inc.、Carlisle、ペンシルベニア州)によって養育されたコロニーから入手した卵から孵化させた。rECBおよびrFAWの幼虫は、所有コロニー(Dow AgroSciences、Indianapolis、インディアナ州)から集めた卵から孵化させた。
【0149】
バイオアッセイは、昆虫でのバイオアッセイ用に特別に設計された128ウェルのプラスチックトレー(C−D International、Pitman、ニュージャージー州)中で実施した。各ウェルには、1.0mLの多種用鱗翅目飼料(Southland Products、Lake Village、アーカンサス州)を入れた。各ウェルの1.5cmの飼料表面上にピペットで40μLアリコートのタンパク質サンプル(すなわち、26.7μL/cm)を送達した。飼料の濃度は、ウェル中の表面積の平方センチメートル当たりのDIG−152タンパク質の量(ng)として計算した。処理されるトレーは、飼料表面上の液体が蒸発、または飼料中に吸収されるまで換気フード中に保存した。
【0150】
孵化の数時間以内に、個々の幼虫を湿らせたラクダ毛ブラシで拾い上げ、ウェル毎に1幼虫を、処理された飼料上に置いた。次いで、寄生されたウェルを、透明プラスチックの粘着シート(C−D International)で密封し、ガス交換を可能にするため穴を開けた。バイオアッセイトレーを、調節された環境条件[28℃、相対湿度(RH)約40%、16時間:8時間(明:暗)]下に5日間保存した後、各タンパク質サンプルに曝露された昆虫の総数、死亡昆虫数、および生き残り昆虫の重量を記録した。各処理について、パーセント死亡率およびパーセント成長阻害を計算した。パーセント成長阻害(GI)は、次の通り計算した:
%GI=[1−(TWIT/TNIT)/(TWIBC/TNIBC)]×100
ここで、
TWITは、その処理における昆虫の総重量であり、
TNITは、その処理における昆虫の総数であり、
TWIBCは、バックグラウンドチェック(緩衝液対照)における昆虫の総重量であり、
TNIBCは、バックグラウンドチェック(緩衝液対照)における昆虫の総数である。
【0151】
GI50は、%GI値が50となる飼料中のキメラDIG−152タンパク質の濃度であると定めた。LC50(50%致死濃度)を、試験昆虫の50%が死滅する飼料中のDIG−152タンパク質濃度として記録した。JMPソフトウェア(SAS、Cary、ノースカロナイナ州)を使用して統計解析(一方向ANOVA)を行った。
【0152】
表3は、7種の試験昆虫幼虫に関するDIG−152タンパク質の摂取バイオアッセイの結果を示す。
【0153】
【表3】

【0154】
フォールアーミーワーム(スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda))およびサウスウェスターンコーンボーラー(ジアトラエア・グランジオセラ(Diatraea grandiosella))の新生幼虫の成長が、DIG−152タンパク質の摂取後に阻害されることは、本発明のDIG−152タンパク質の特徴である。さらに、Cry1Fによる中毒に対して抵抗性であるフォールアーミーワームの幼虫は、野生型フォールアーミーワームの幼虫と同様にDIG−152の活性に対して感受性を有する。
【0155】
〔実施例4〕
シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)中で産生されるDIG−152タンパク質のさらなる殺虫活性
DIG−152タンパク質(トリプシンで活性化されていない)の鱗翅目殺虫活性は、さらに、飼料組込み法を利用する用量−反応実験において、シュガーケーンボーラー(SCB;ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis))およびCry1Ab抵抗性SCB(rSCB)の新生幼虫について立証された。DIG−152封入体を、7.5mLの100mM CAPS(pH11)、1mM EDTA中、4℃で4時間静かに揺動することによって可溶化し、それに、200μLの細菌プロテアーゼ阻害剤(Sigma P4865;供給業者の説明書により調製された)を添加した。不溶性材料をペレット化するための遠心分離に続いて、原液のタンパク質濃度を、100mM CAPS(pH11)中、4.0mg/mLに調整した。昆虫でのバイオアッセイの場合、0.030μg〜102μg/飼料(g)のDIG−152タンパク質濃度は、128−セルトレー(Bio−Ba−128、C−D International)の個々のセル中にほぼ0.7mLの飼料を分配する直前に、適切な量をメリディック飼料(meridic diet)(Bio−Serv、Frenchtown、ニュージャージー州)と混合することによって準備した。
【0156】
トリプシンで活性化されたCry1Abタンパク質(殺虫活性に関する陽性対照として使用される)を、0.03125μg〜32μg/飼料(g)(飼料調製の前に凍結乾燥粉末を適切な量の蒸留水と混合することによって調製された)の範囲で試験した。
【0157】
蒸留水(ブランク対照、Cry1Abの試験用)または緩衝液(100mM CAPS、pH11、DIG−152の試験用)のみで調製された飼料を、対照処理として使用した。D.サッカラリス(D.saccharalis)の1つの新生幼虫(孵化後24時間未満)を各セル中の飼料表面上に放出した。幼虫播種の後、セルを、穴を開けた蓋(C−D International)で覆い、バイオアッセイトレーを、28℃、50%RH、および16時間:8時間(明:暗)の光周期に維持された環境チャンバー中に配置した。幼虫死亡率、幼虫重量、重量増加を示さなかった(幼虫につき0.1mg未満)生き残り幼虫の数を、播種の7日後に記録した。昆虫系統/Cryタンパク質濃度の各組合せを、各繰り返しにおいて16〜32頭の幼虫を用いて、4回繰り返した。
【0158】
幼虫死亡率の判定基準は、死亡(病的)幼虫、および有意な体重増加を示さなかった(すなわち、幼虫当たり0.1mg未満)生き残り(発育を阻害された、摂食しない)幼虫の双方を考慮に入れた「実質的」死亡率として評定した。処理中の幼虫の実質的死亡率は、次式を使用して計算した:
実質的死亡率(%)=[TDS/TNIT]×100
ここで、TDSは、死亡幼虫の総数+発育を阻害された幼虫数であり、TNITは、処理中の昆虫の総数である。
【0159】
各D.サッカラリス(D.saccharalis)系統の「実質的」死亡率(以後、死亡率と簡略化する)を、Cry1Ab処理に続く結果を分析するための水ブランク対照飼料、またはDIG−152処理のための緩衝液のみで処理された飼料に関して観察された幼虫死亡率に対して補正した。
【0160】
用量反応実験の結果を、さらに分析して、GI50値[すなわち、幼虫成長阻害(%GI)値が50になる、飼料中のB.t.タンパク質の濃度]を確立した。Cry1Abタンパク質を含む飼料に関する幼虫の%GI値を、次式を使用して計算した:
%GI=[TWC−TWT]/TWC×100
ここで、TWCは、水対照飼料で給餌されている幼虫の総体重であり、TWTは、Cry1Ab処理飼料で給餌されている幼虫の総体重であり、一方、DIG−152タンパク質摂取の結果としての幼虫の%GIを分析するには、次式を使用して計算した:
%GI=[TWB−TWT]/TWB×100
ここで、TWBは、緩衝液のみの対照処理飼料で給餌されている幼虫の総体重であり、TWTは、DIG−152処理飼料で給餌されている幼虫の総体重である。
【0161】
100%の幼虫成長阻害は、有意な体重増加(幼虫につき0.1mg未満)を有する幼虫が存在しない場合に繰返しに割り当てられた。成長阻害データを、昆虫系統およびCryタンパク質濃度を2つの主要因子とした二方向ANOVAを使用して解析した。LSMEANS検定を使用して、α=0.05のレベルでの処理差を判定した。
【0162】
ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis)幼虫での飼料組込みバイオアッセイの結果を表4に示す。
【0163】
【表4】

【0164】
データ解析。補正した用量/死亡率データを、次いで、50%死亡率(LC50)値および対応する95%信頼区間(CI)をもたらす処理タンパク質濃度を決定するためのプロビット分析に供した。プロビット分析で使用する処理には、ゼロ死亡率をもたらした最高濃度、100%死亡率をもたらした最低濃度、およびそれらの極値間のすべての結果を含めた。抵抗率を、rSCB系統のLC50値をSCB昆虫のそれで割ることによって計算した。致死量の比率の検定を使用して、抵抗率がα=0.05のレベルで有意であるかどうかを判定した。また、二元ANOVAを使用して、死亡率データを解析し、続いて、α=0.05のレベルでのLSMEANS検定を使用して処理差を判定した。解析の結果を表5に示す。
【0165】
【表5】

【0166】
同様の生物学的応答を与える活性化されたCry1Abタンパク質のそれに類似したレベルでのDIG−152タンパク質の摂取のあとに、新生シュガーケーンボーラー(Diatraea saccharalis)幼虫の成長を阻害する、または幼虫を死滅させることは、本発明のDIG−152タンパク質の特徴である。さらに、Cry1Abタンパク質の毒性効果に対して抵抗性であるジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis)幼虫が、それにもかかわらず、DIG−152タンパク質の毒性作用に対して感受性であることは、DIG−152タンパク質の特徴である。
【0167】
〔実施例5〕
キメラCry1Caタンパク質に対して免疫反応性のあるウサギポリクローナルおよびマウスモノクローナル抗体の産生
例えば本発明のタンパク質を産生する遺伝子導入植物から調製された抽出物中でキメラCry1Caタンパク質およびキメラCry1Caタンパク質の変異体を検出および定量するための抗体を開発した。抗体を特徴付けるのに、およびB.t.タンパク質を検出するために、標準的な免疫ブロットの調製/分析方法およびELISA法を使用した(例えば、Coliganら、2007およびその更新版中で教示されているように)。
【0168】
ポリクローナル抗体の製造。ポリクローナル免疫処置に使用するタンパク質抗原は、実施例2中で教示したようなP.フルオレセンス(P.fluorescens)細胞中で産生されたDIG−152タンパク質から調製されたトリプシンで切断されたコア毒素とした。加えて、Cry1Caコア毒素セグメントに特異的な2つのペプチドを、キーホールリンペットヘモシアニンに接合し、免疫原として使用した。該ペプチドは、配列番号1のアミノ酸436〜445(VQRSGTPFLT;Cry1Ca436;配列番号6)およびアミノ酸591〜600(SEQPLFGAGS;Cry1Ca591;配列番号7)に相当した。これらのペプチド配列は、Cry1Caのタンパク質配列をいくつかの他のクラスのCry1B.t.タンパク質の配列と比較した場合、Cry1Caに特有であると確認された。さらに、該ペプチドは、本来のCry1Caタンパク質の表面上に露出されると予想される。
【0169】
免疫処置および血清採取は、契約業者が標準的手順で実施した。ポリクローナル抗体は、Covance(Princeton、ニュージャージー州)を介して入手した。ニュージーランドホワイト種ウサギを使用して、トリプシンで活性化されたDIG−152タンパク質に対するポリクローナル抗体を産生させた。免疫処置と血清採取との間に14日のサイクル時間を利用した。投与は、0.5mgのタンパク質または共役ペプチドを含むフロインド完全アジュバントを用いて開始した。その後の注入液は、不完全フロインドアジュバントを用いて調製した。
【0170】
2羽のウサギからの血清を合わせて、Cry1Caコア毒素タンパク質と反応性のある単一ロットのタンパク質A精製抗体(DIG152RPC1と名づける)を製造した。抗体の特徴付けの分野の当業者にとって周知のように、無傷のタンパク質に対して作出されたポリクローナル抗体は、一般に、極度に特異的ではなく、しばしば、免疫化するタンパク質およびその他の関連タンパク質上の多くのエピトープを検出する。したがって、免疫ブロット分析は、DIG152RPC1が他のCry1−クラスのB.t.毒素、特に、トリプシンで活性化されたCry1Ab、Cry1Da、およびCry1Fa、ならびにキモトリプシンで活性化されたCry1BeおよびCry1Eaを検出することを明らかにした。商業的背景において、農作物植物は、他のCry1−クラスのタンパク質を産生することができ、したがって、DIG152PRC1は、タンパク質の切断およびその他形態を含むこれらのタンパク質を検出するのに有用な試薬になる。
【0171】
ウサギポリクローナル抗体の2つの共役ペプチドに特異的なロットを、Cry1Caのために開発した。2羽のニュージーランドホワイト種ウサギを、各ペプチドに関して使用し、各ペプチドに関して血清をプールし、2つのペプチドのそれぞれに関して1ロットのペプチド抗体を得た。免疫処置および血清採取は、免疫処置と血清採取との間に14日のサイクル期間を設け、標準的手順によって実施した。最終ロットの血清を、対応するペプチドとの親和性で精製した。双方のペプチド−特異的抗体の直接ELISAによる評価は、ペプチドCry1Ca591に対する抗体が、他のCry1クラスのタンパク質との反応と比較した場合Cry1Caを特異的に検出し、一方、ペプチドCry1Ca436に対する抗体は特異的でないことを明らかにした(表6)。
【0172】
【表6】

【0173】
モノクローナル抗体の製造。モノクローナル抗体は、Open BioSystems/Thermo Fisher Scientific(Huntsville、アラバマ州)によって調製された。マウス抗Cry1Caモノクローナル抗体の開発は、実施例2に記載のようなP.フルオレセンス(P.fluorescens)細胞中で産生されたDIG−152タンパク質から調製された、トリプシンで切断されたコア毒素を使用した。免疫処置および細胞株の開発は、腹水産生法ではなく細胞培養における標準的な抗体開発法によって実施した。モノクローナル細胞株は、免疫されたマウスの脾臓細胞を適合性のあるND4マウス骨髄腫細胞株と融合することによる標準的手順で開発した。
【0174】
直接結合ELISAスクリーニングは、マウスM4血清を、Cry1Caタンパク質に対してかなりの特異性を有すると認定した(表7)。
【0175】
【表7】

【0176】
すべてのM4由来モノクローナル株を、Cry1Ca、Cry1Da、Cry1Ac、Cry1Fa、Cry1Be、およびCry1Abに対する結合について直接結合ELISAで試験した。Cry1Caを検出する[すなわち、高い光学密度(OD)の読みを与える]が、他のCry1クラスのタンパク質を検出しない[すなわち、ODの読みを与えない、または非常に低いODの読みを与える]能力が立証されたM4−34およびM4−23株は、とりわけ重要である(表8)。好ましいM4−34株からのモノクローナル抗体は、抗体DIG152MabM4−34と呼ばれる。
【0177】
【表8】

【0178】
したがって、切断型Cry1Ca B.t.タンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することは、本発明の主題である。
【0179】
〔実施例6〕
DIG−109タンパク質をコードする、トウモロコシのコドンに対して最適化された配列の設計
植物分子生物学に関わる当業者は、単一のアミノ酸配列をコードするのに、複数のDNA配列を設計することができることを理解するであろう。対象のタンパク質のためのコード領域の発現を増大させることの一般的意味は、そのコドン組成が、遺伝子を発現するように運命付ける宿主の全コドン組成に似ているような方式で、該コード領域を仕立てることである。合成遺伝子の設計および製造に関する指針は、例えば、国際公開第1997/13402号および米国特許第5380831号中に見出すことができる。
【0180】
トウモロコシのコドン偏位を有するDNA配列を、遺伝子導入単子葉植物中で殺虫性DIG−109キメラタンパク質を産生するように設計し、合成した。トウモロコシ(Zea mays L.)に関するコドン使用頻度表を、GenBankに寄託された配列から得られる706のタンパク質コード配列から計算した(www.ncbi.nlm.nih.gov)。トウモロコシの重量平均コドンセットを、アミノ酸の総コドン使用数の約10%未満で使用される任意の冗長コドンを削除した後に計算した。各コドンについての重量平均表示は、次式を使用して計算した:
C1の重量平均%=1/(%C1+%C2+%C3+など)×%C1×100
ここで、C1は、当該コドンであり、%C2、%C3などは、残りの同義コドンの平均%使用頻度値を表す。
【0181】
配列番号5のDIG−109タンパク質の1164個のアミノ酸をコードする、トウモロコシのコドンに対して最適化されたDNA配列を得るために、Cry1Caコア毒素セグメントをコードする本来のCry1CaのDNA配列に対するコドン置換を、得られるDNA配列が、トウモロコシに対して最適化されたコドン偏位表の全コドン組成を有するように調製した。類似の方式で、配列番号4のCry1Abプロトキシンセグメントをコードする本来のCry1AbのDNA配列に対するコドン置換を、得られるDNA配列が、トウモロコシに対して最適化されたコドン偏位表の全コドン組成を有するように調製した。植物細胞中のコード領域の望ましくない制限酵素認識部位、潜在的植物イントロンスプライス部位、A/TまたはC/G残基の長い並び、およびRNAの安定性、転写、または翻訳を妨害する可能性のあるその他のモチーフを排除するために、配列に対するさらなる純化を行った。所望される制限酵素認識部位を導入するために、および長い内部オープン読取り枠(+1以外のフレーム)を排除するために、その他の変更を行った。これらの変更は、すべて、トウモロコシに対して偏位されたコドン組成をほぼ維持するという制約内で行われた。DIG−109タンパク質をコードする、トウモロコシのコドンに対して最適化された完全配列は、配列番号8として開示される。配列番号8に相当するDNA断片の合成は、コマーシャルベンダー(DNA2.0、Menlo Park、カリフォルニア州)によって実施された。
【0182】
〔実施例7〕
DIG−109タンパク質をコードする植物で発現可能な遺伝子を含む植物形質転換ベクターの構築
単子葉植物宿主の形質転換には、アグロバクテリウム(Agrobacterium)スーパーバイナリー系(日本たばこ、東京、日本)を好都合には使用した。該スーパーバイナリー系は、複数のクローニング部位で分離された右T−DNAボーダー反復(RB)および左T−DNAボーダー反復(LB)のための配列を含むpSB11シャトルベクタープラスミドを採用する。pSB11の誘導体(pDAB7691と呼ばれる)を、標準的なDNAクローニング法によって調製した。プラスミドpDAB7691は、トウモロコシのユビキチン1プロモーターの関連イントロン1(米国特許第5510474号)およびトウモロコシPer5 3’未翻訳領域(3’UTR)(米国特許第7179902号)での転写制御下で、トウモロコシに対して最適化されたDIG−109をコードする配列(CDS;すなわち配列番号8)を含む。さらに、pDAB7691は、コメのアクチン1プロモーターの関連イントロン1(米国特許第5641876号)およびトウモロコシのリパーゼ3’UTR(米国特許第7179902号)での転写制御下で、Dow AgroSciences DSM2 CDS(国際公開第2008/070845号)を含む植物の選択マーカー遺伝子を含む。pDAB7691のT−領域の要素の物理的配置は、好都合には、
RB>トウモロコシUbi1プロモーター:DIG−109 CDS:トウモロコシPer5 3’UTR>コメAct1プロモーター:DSM2 CDS:トウモロコシLip3’UTR>LB:として例示される。
【0183】
pSB11の第2誘導体(pDAB100276と呼ぶ)を、標準的なDNAクローニング法で調製した。プラスミドpDAB100276は、トウモロコシのユビキチン1プロモーターの関連イントロン1およびトウモロコシPer5 3’UTRでの転写制御下で、トウモロコシに対して最適化されたDIG−109をコードする配列(CDS;すなわち配列番号8)を含む。さらに、pDAB100276は、トウモロコシのユビキチン1プロモーターの関連イントロン1およびトウモロコシのリパーゼ3’UTRでの転写制御下で、Dow AgroSciences AAD1 CDS(米国特許出願公開第2009/0093366号)を含む植物の選択マーカー遺伝子を含む。pDAB100276のT−領域の要素の物理的配置は、好都合には、
RB>トウモロコシUbi1プロモーター:DIG−109 CDS:トウモロコシPer5 3’UTR>トウモロコシUbi1プロモーター:AAD−1 CDS:トウモロコシLip3’UTR>LBとして示される。
【0184】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)の形質転換を準備するために、プラスミドpDAB7691またはプラスミドpDAB100276を抱える大腸菌(Escherichia coli)クローニング株DH5αの細胞を、スペクチノマイシン(100μg/mL)を中に含むLB寒天培地(g/L:Bactoトリプトン、10;Bacto酵母エキス、5;NaCl、10;寒天、15)上、37℃で一夜増殖させた。接合起動性プラスミドpRK2013を含むDH5α細胞株を、カナマイシン(50μg/mL)を含むLB寒天上で増殖させた。インキュベーションの後、プラスミドpSB1を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株LBA4404のアベイラビリティーを待つために、プレートを4℃に置いた。
【0185】
〔実施例8〕
スーパーバイナリーベクターを作出するためのアグロバクテリウム(Agrobacterium)の形質転換
プラスミドpSB1を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株LBA4404を採用するアグロバクテリウム(Agrobacterium)スーパーバイナリー系を、単子葉植物宿主の形質転換のために好都合に使用する。スーパーバイナリーベクターを構築および検証するための方法論は、pSB1用操作マニュアル(日本たばこ)中に提供されているように十分確立されている。標準的な微生物学的および分子生物学的方法を使用して、プラスミドpSB1およびpDAB7691を含む共組込み型プラスミドであるスーパーバイナリープラスミドpDAS5162、ならびにプラスミドpSB1およびpDAB100276を含む共組込み型プラスミドであるスーパーバイナリープラスミドpDAS5848を作出および検証した。
【0186】
〔実施例9〕
トウモロコシ植物中でのDIG−109タンパク質の産生
トウモロコシのアグロバクテリウム(Agrobacterium)介在型形質転換。Hi−II F1交雑種(Armstrongら、1991)からの種子を、95%Metro−Mix360無土壌成長培地(Sun Gro Horticulture、Bellevue、ワシントン州)と5%粘土/ローム土壌との混合物を含む5ガロンポット中に播種した。高圧ナトリウムランプとメタルハライドランプとの組合せを16時間の明:8時間の暗の光周期で使用し、温室中で植物を育成した。形質転換のための未熟F2胚を得るために、制御された同胞受粉を実施した。トウモロコシの穂を、未熟胚が1.0mm〜2.0mmの大きさである、受粉のほぼ8〜10日目に収穫した。
【0187】
感染および共培養。トウモロコシの穂を脱穀し、液体石鹸でこすり洗いすること、20%市販漂白剤(5%次亜塩素酸ナトリウムを含む)に約20分間浸漬すること、次いで滅菌水で3回すすぎ洗うことによって表面を滅菌した。DIG−109タンパク質をコードする遺伝子を抱き、かつDSM2植物選択マーカー遺伝子を含むスーパーバイナリーベクターpDAS5162を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞の懸濁液を、細菌[100mg/Lスペクチノマイシン、10mg/Lテトラサイクリン、および250mg/Lストレプトマイシンを含むYEP固形培地(g/L:Bacto酵母エキス、10;Bactoペプトン、10;NaCl;5;寒天、15)上、28℃で、2〜3日間増殖させる]1または2ループを、100μMのアセトシリンゴンを含む5mLの液体感染培地[LS基本培地(LinsmaierおよびSkoog、1965)、N6ビタミン(Chuら、1975)、1.5mg/L 2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、68.5g/L蔗糖、36.0g/Lグルコース、6mM L−プロリン、pH5.2]中に移すことによって調製した。
【0188】
別法として、DIG−109をコードする遺伝子を抱き、かつAAD−1植物選択マーカー遺伝子を含むスーパーバイナリーベクターpDAS5848を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞の懸濁液を、前記のように増殖させた細菌の1または2ループを100〜200μMアセトシリンゴンを含む5mLの液体感染培地中に移すことによって調製した。
【0189】
双方の場合において、溶液を、均一な懸濁が達成されるまで渦撹拌し、紫色フィルターを備えたKlett−Summerson比色計を使用して200klett単位の最終密度まで(pDAS5162の形質転換の場合)、または550nmで1.2の光学密度まで(pDAS5848の形質転換の場合)濃度を調節した。未熟胚を、2mLの感染培地を含むミクロ遠心管中に直接的に単離した。培地を除去し、1mLのアグロバクテリウム(Agrobacterium)溶液で置き換え、アグロバクテリウム(Agrobacterium)/胚溶液を室温で5〜10分間インキュベートした。次いで、胚を、100μMアセトシリンゴン(pDAS5162での形質転換細胞の場合)または100〜200μMアセトシリンゴン(pDAS5848での形質転換細胞の場合)を含む共培養培地[LS基本培地、N6ビタミン、1.5mg/L 2,4−D、30.0g/L蔗糖、6mM L−プロリン、0.85mg/L AgNO、2.8g/L ゲランガム(PhytoTechnology Laboratories、Lenexa、カンサス州)、pH5.8]に移し、暗所にて20℃で3〜4日間共培養した。
【0190】
共培養の後、胚を、MS塩およびビタミン、6mM L−プロリン、100mg/Lミオイノシトール、500mg/L MES、30g/L蔗糖、1.5mg/L 2,4−D、0.85mg/L AgNO、250mg/Lセフォタキシム、2.8g/Lゲランガムを含む休止培地(pH5.8)へ移した。ほぼ7日後に、胚を、3mg/Lビアラホスで補足された(pDAS5162での形質転換細胞の場合)、または100nMハロキシホップで補足された(pDAS5848での形質転換細胞の場合)同一培地(選択培地)へ移した。形質転換された分離株を、ほぼ8週間後に同定し、再生および分析のために2週間間隔で新鮮な選択培地へ移すことによって大きくした。
【0191】
再生および種子生産。再生のため、培養物を、3mg/Lビアラホスで補足された(pDAS5162での形質転換細胞の場合)、または100nMハロキシホップで補足された(pDAS5848での形質転換細胞の場合)「28」誘導培地(MS塩およびビタミン、30g/L蔗糖、5mg/Lベンジルアミノプリン、0.25mg/L 2,4−D、250mg/Lセフォタキシム、2.5g/Lゲランガム、pH5.7)へ移した。低照度条件(14μEm−2−1)下で1週間、次いで高照度条件(ほぼ89μEm−2−1)下で1週間インキュベートした。続いて、組織を、「36」再生培地(植物成長調節剤を欠くことを除けば誘導培地と同じ)へ移した。小植物が3〜5cmの長さである時に、それらを、SHGA培地[(Schenk−Hildebrandt(1972)塩およびビタミン;PhytoTechnologies Labr.)、1.0g/Lミオイノシトール、10g/L蔗糖、および2.0g/Lゲランガム、pH5.8]を含むガラス培養管に移し、茎および根のさらなる成長および発生を可能にした。植物を、前に記載したと同様の土壌混合物に移植し、温室中で開花まで育成した。種子生産のための制御された受粉を実行した。
【0192】
トウモロコシの形質転換に関わる当業者は、他の植物で発現可能なで選択マーカー遺伝子(例えば、除草剤耐性遺伝子)を使用すると、トウモロコシの形質転換に、および形質転換された植物の選択に他の方法を利用できることを理解するであろう。
【0193】
〔実施例10〕
DIG−109タンパク質を産生するトウモロコシ植物の生化学的分析および昆虫でのバイオアッセイ
遺伝子導入トウモロコシ植物中でのDIG−109タンパク質の産生を、若木(T0世代)の葉から抽出したタンパク質中で試験した。トウモロコシの葉の直径6mmの円板2枚を、ディープウェル96クラスターチューブボックス(Costarカタログ番号3957)からサンプル管中に配置し、分析当日まで−80℃で凍結した。その時点で、各管(凍結された)に、PBS(リン酸緩衝生理食塩水;Fisherカタログ番号BP665−1)+0.05%Tween20から構成される200μLの抽出緩衝液と一緒に、2つの4.5mm亜鉛被覆Daisy(商標)BB‘sを添加した。各管に蓋をし、ボックスを、最大設定のビーズミル(Kleco(商標)4−96パルベライザー;Garcia Manufacturing、Visalia、カリフォルニア州)中に3分間配置した。粉砕したサンプルを、2,500×gで5分間遠心分離し、溶性タンパク質を含む上清液をイムノアッセイに使用した。
【0194】
抽出されたトウモロコシ葉タンパク質の免疫ブロット分析は、DIG152RPC1ポリクローナル抗体が、非遺伝子導入植物の葉から抽出されたタンパク質と交差反応しないことを明らかにした。pDAS5162で形質転換された植物の抽出物において、いくつかのタンパク質種が、DIG152PRC1抗体によって検出された。少なくとも4種の主な免疫反応バンドが通常的に検出された。多くの場合、ほぼ70kDaのタンパク質に相当する移動度で移動する豊富なタンパク質種が観察された。その他の主なタンパク質種は、実施例2でDpf108から調製されたDIG−152のトリプシン制限ペプチドのそれと同一物である65kDa、60kDa、および55kDaであると見積もられる分子サイズを有した。pDAS5162遺伝子導入トウモロコシの葉の抽出物を、DIG−152ポリクローナル抗体を使用する免疫ブロットで試験すると、一部の植物において、60kDaおよび55kDaの種がもっとも豊富であった。どちらの抗体でも、少数の植物のみが、完全長DIG−109(130kDa)タンパク質を有することが見出され、見出される場合、それは少数の種として存在した。
【0195】
pDAS5162での形質転換を介してトウモロコシ中に導入された導入遺伝子は完全長DIG−109タンパク質をコードするが、トウモロコシの細胞内でのタンパク質分解活性は、新生タンパク質を安定でより小さな分子量の多数の種に処理する。
【0196】
pDAS5162構築物で形質転換された独立に単離された遺伝子導入トウモロコシ植物から収穫された葉の昆虫毒性を、フォールアーミーワーム(FAW、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(J.E.Smith))の新生幼虫およびCry1F抵抗性FAW(rFAW)幼虫を使用してin vitroで試験した。FAWの卵は商業的昆虫飼育場(Benzon)から入手し、rFAWの卵は所有集団(Dow AgroSciences)から入手した。昆虫でのバイオアッセイのために、植物を実験室から温室中に移植してほぼ2週間後に、温室育成のT0植物から葉の切片サンプルを採取した。各植物から2枚の葉片(それぞれほぼ1平方インチ)を、32ウェルトレー(CD International)のセパレートウェル中に、約3mLの固化2%寒天の上部に配置した。卵を、複数種用の鱗翅目用飼料(Southland Products)上で孵化させ、24時齢未満で新生幼虫を選択した。葉切片につきほぼ10頭の幼虫を、ラクダ毛ペイントブラシを使用して各ウェル中に注意して配置した。外寄生されたトレーを、トレーと一緒に供給される穴を開けた蓋で封止し、次いで、28℃、40%RH、16時間の明:8時間の暗で3日間保存した。各葉片に対するパーセント損傷(%DAM)を、試験の終結時点で記録した。損傷率を、平均化し、どの植物が、各種の試験昆虫から最小の損傷を受けたかを判定するのに使用した。この試験をすべての昆虫において何回か繰り返した。
【0197】
データは、JMP統計ソフトウェア(SAS、Cary、ノースカロライナ州)を使用し、各植物、各昆虫類に対する%DAMスコアを平均化して解析した。一方向ANOVA解析には「Y/Xフィット」モデルを使用した。Tukey−Kramer平均値分離を、各処理に対する平均%DAMスコア間の有意差について解析する必要がある場合に使用した。比較は、類似齢の対照植物から得られた%DAMスコアに対して実施した。陽性対照植物を、Cry1Fa B.t.毒素を産生する市販のHerculex I(商標)ハイブリッドの種子から育成した。陰性対照(すなわち、非形質転換植物)を、Hi IIおよびB104系統、およびHerculex I(商標)Isoline(Herculex I(商標)ハイブリッドの非Cryを含む親)とした。
【0198】
図1に、昆虫でのこのようなバイオアッセイ試験で得られた結果を要約する。遺伝子導入葉でのDIG−109の産生と%DAM評価との間に正の相関が存在することは驚くべき発見である。FAWの場合、F=35.3;d.f.=1、33;P<0.0001;r=0.52、rFAWの場合、F=25.3;d.f.=1、33;P<0.0001;r=0.43である。Cry1FaB.t.毒素による中毒に対して抵抗性であるフォールアーミーワームの幼虫が、DIG−109 B.t.毒素による給餌からやはり阻害されることは、さらに驚くべき新規な発見である。
【0199】
トウモロコシのその他の害虫を類似の方式で試験することができることが理解される。これらの有害生物には、限定はされないが、アグロミザ・パルビコルニス(Agromyza parvicornis)(コーンブロットリーフマイナー)、アグロチス・イプシロン(Agrotis ipsilon)(ブラックカットワーム)、アンチカルシア・ゲマタリス(Anticarsia gemmatalis)(ベルベットビーンキャタピラー)、ジアトラエア・グランジオセラ(Diatraea grandiosella)(サウスウェスターンコーンボーラー)、ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis)(シュガーケーンボーラー)、エラスモパルプス・リグノセルス(Elasmopalpus lignosellus)(レッサーコーンスタークボーラー)、ヘリコベルパ・ゼア(Helicoverpa zea)(コーンイアーワーム)、ヘリオチス・ビレセンス(Heliothis virescens)(タバコバットワーム)、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(ユーロピアンコーンボーラー)、Cry1F抵抗性O.ヌビラリス(O.nubilalis)、プルテラ・キシロステラ(Plutella xylostella)(ダイアモンドバックモス)、Cry1抵抗性P.キシロステラ(P.xylostella)、スポドプテラ・エキシグア(Spodoptera exigua)(ビートアーミーワーム)、およびトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)(キャベツルーパー)が含まれる。
【0200】
pDAS5848で形質転換された遺伝子導入トウモロコシ植物(T0世代)も、昆虫でのバイオアッセイ、および免疫分析によって試験した。葉抽出物中のDIG−109タンパク質の量は、市販のCry1C ELISA検出キット(Envirologix(商標)、Portland、マサチュセッツ州;カタログ番号AP007)を使用して定量され、検出されるDIG−109タンパク質のレベルは、100万分の1(ppm;1ppmは、抽出物中の総溶性タンパク質のmg当たり1ngのDIG−109タンパク質を意味する)として表現される。FAWおよびrFAWによる摂食損傷は、次のように分類した:0=損傷なしまたは少数のピンホール状摂食マーク、1=葉の25%〜50%が食されている、2=葉のほとんどすべてが食い尽くされているか、葉が残っていない。保護された植物とは、その損傷スコアが0.67以下のものである。
【0201】
表9のデータは、T0植物中のELISAで検出されるDIG−109タンパク質種の存在と、in vitroでのバイオアッセイにおけるフォールアーミーワームの幼虫によってなされた摂食損傷の抑制との間に正の相関が存在することを示す。最も高い検出レベルのDIG−109タンパク質を有する植物(植物5848−005.4)は、最も低い葉の摂食損傷スコアを有した。また、190〜230ppmの範囲のより低いレベルの検出可能なDIG−109タンパク質を有する植物からの葉は、1.7および1.8の平均損傷スコアを有した陰性対照植物(すなわち、非形質転換対照B104およびHi II)からの葉で観察されるのに比べて受けた摂食損傷がより少なかった。試験したすべてのpDAS5848の葉において、検出された有力なDIG−109タンパク質種は、ほぼ60kDaおよび55kDaの大きさのペプチドのダブレットから構成されていた。
【0202】
【表9】

【0203】
したがって、本発明の特徴は、トウモロコシ植物中で産生させた場合のDIG−109タンパク質が、植物をフォールアーミーワームの幼虫およびCry1F抵抗性フォールアーミーワームの幼虫による摂食損傷に対して抵抗性にすることである。
【0204】
〔実施例11〕
DIG−109タンパク質を産生するトウモロコシ植物の分子解析
組織抽出。ゲノムDNAを、pDAS5162およびpDAS5848で形質転換されたT0遺伝子導入トウモロコシ植物の葉から単離した。組織サンプルを、96ウェルのコレクションプレート(Qiagen、カタログ番号19560)中に集め、2日間凍結乾燥した。組織の破壊は、Klecko(商標)組織パルベライザーおよび実施例10で本質的には開示したようなタングステンビーズを用いて実施した。加水分解プローブ(HP)でのアッセイのため、ゲノムDNAを、DNeasy(商標)96Plant Kit(Qiagen)を製造業者の提唱するプロトコールに従って使用するハイスループットフォーマットで単離した。サザンブロット分析のため、ゲノムDNAを、MurrayおよびThompsonのCTAB DNA抽出プロトコール(1980)の修正形態を使用するハイスループットフォーマットで単離した。Murray, M. G.、Thompson, W. F.(1980)、「Rapid isolation of high molecular weight plant DNA」Nucl. Acids Res. 8:4321〜4325。
【0205】
どちらかのプロトコールによって抽出されたDNAを、Quant−IT Pico Green DNAアッセイキット(Molecular Probes、Invitrogenカタログ番号P7589)を用いて定量した。この手順中、88の未知のサンプルを、20ng/μL〜1.25ng/μLの範囲の2倍逐次希釈標準、プラス緩衝液ブランク、水ブランク、および空ウェルを含む第1のカラムを用いる96ウェルフォーマットでアッセイした。次いで、試験DNAサンプル、5μLの1:5〜1:40の希釈液(予想初期濃度に応じて)を、適切に希釈され緩衝化された挿入染料と混合し、105μLの反応液中、暗所で10分間インキュベートした。インキュベーションの後に、Synergy2プレートリーダー(BioTek、Winooski、バーモント州)を使用して蛍光を記録した。ゲノムDNA濃度を、バックグラウンド蛍光を補正した後に計算した標準曲線から見積もった。
【0206】
サザンブロットの準備。pDAS5848で形質転換された10のトウモロコシ系統からの10μgのゲノムDNAを、制限酵素BsmIを用い37℃で一夜消化した。消化されたDNAサンプルの断片を、1%アガロースゲル(SAS、Cary、ノースカロライナ州)によるゲル電気泳動によって分離し、ナイロン膜(INYC00010 IMMOBILON−NY+、Millipore)に移行させた。サザンブロットを、配列番号8の塩基251〜630に相当するジゴキシゲニン標識化PCR−増幅プローブ(DIG PCRプローブ合成キット;Roche Applied Science、Indianapolis、インディアナ州)とハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションおよび検出は、供給業者のプロトコールに従って実施した。DIG−109をコードする遺伝子の単一コピーを収容するためのサザンブロット分析で確認されたpDAS5848で形質転換された系統からのDNAを、定量的PCRコピー数アッセイのための参照対照として使用した。
【0207】
加水分解プローブでのアッセイ。加水分解プローブ(HP)アッセイによる導入遺伝子のコピー数判定を、LightCycler(登録商標)480システム(Roche Applied Science)を使用するリアルタイムPCRで実施した。LightCycler(登録商標)Probe Designソフトウェアv2.0を使用して、DSM2およびAAD−1選択マーカー遺伝子、GLP1(トウモロコシ胚様タンパク質1;GenBank受託番号AY394010)およびINV(トウモロコシインベルターゼ;GenBank受託番号U16123)参照遺伝子、およびDIG−109をコードする遺伝子を検出するためのアッセイを設計した。増幅のため、LightCycler(登録商標)480Probes Master Mixを、0.4μMの各プライマーおよび0.2μMの各プローブを含む10μL容積の複合反応における1x最終濃度で調製した(オリゴヌクレオチドの配列および蛍光標識を表10に列挙する)。2段階増幅反応を、56℃で40秒間の伸張、蛍光捕捉で実施した。すべてのサンプルを、三つ組みで実行し、平均したCt値を、各サンプルの分類に使用した。
【0208】
【表10】

【0209】
DSM2に関するHP分析を、pDAS5162で形質転換された36系統上で完結した。遺伝子の1〜2のコピーとして定義される単純組込み事象を、サンプルの95%(34事象)中で検出した。
【0210】
AAD−1およびDIG−109に関するHP分析を、pDAS5848で形質転換された13系統上で完結した。単純組込み事象を、AAD−1では93%(12系統)、DIG−109では54%(7系統)で検出した。系統の54%(7系統)は、双方の遺伝子に対して単純組込み事象を含んでいた。
【0211】
〔実施例12〕
トウモロコシのDIG−109切断種の生化学的特徴付け
より詳細な分析を、pDAS5162で形質転換されたT0トウモロコシ植物の葉から抽出されたタンパク質に関して実施した。DIG152RPC1ポリクローナル抗体で探索されたタンパク質抽出物の免疫ブロットは、5種のDIG−109タンパク質種の存在を明らかにした。これらのペプチドの相対移動度をベースにして、次の正体を割り当てた:種1は配列番号5中で示されるような完全長DIG−109(130kDa)タンパク質に相当し;種2は70kDaのDIG−109産物に相当する。同一移動度のペプチドが、完全長DIG−152タンパク質をコードする遺伝子を発現する細菌細胞の抽出物中に見出される。これらのほぼ70kDaの断片の生成は、トウモロコシおよび細菌の双方中で見出されるプロテアーゼに曝露される完全長タンパク質上の優勢開裂部位の存在を指摘する。種3は、大きさにおいて、実施例2で調製されるようなほぼ65kDaのサイズを有するDIG−152のトリプシン制限ペプチドに相当し、種4は、ほぼ60kDaの切断型DIG−109産物に相当し、種5は、ほぼ55kDaの切断型DIG−109産物に相当する。ほぼ70kDa、60kDaおよび55kDaのペプチドは、実施例14中でさらに特徴付けられる。
【0212】
〔実施例13〕
DIG−109の変異体をコードする遺伝子の設計およびドメインIのα−ヘリックスの欠失
DIG−109タンパク質の殺虫特性を改善するために、そのそれぞれの欠失により、配列番号5に開示されるようなDIG−109タンパク質のN末端の一部が除去される、逐次的、段階的欠失を実施した。該欠失は、α−ヘリックス3からα−ヘリックス7までの構造的完全性を維持しながら、ドメインI中のα−ヘリックス1の一部またはすべてを、またα−ヘリックス2の一部またはすべてを除去する。本発明者らは、α−ヘリックス1、α−ヘリックス2A、α−ヘリックス2B、α−ヘリックス3、およびα−ヘリックス4の始まりおよび終端、ならびにCry1Caコア毒素のドメインI中におけるそれらのヘリックス間スペーサー領域の位置を、Cry1Caコア毒素のアミノ酸配列を構造が既知であるCry1Aaタンパク質のアミノ酸配列(GenBank受託番号AAA22353)[RCBS タンパク質構造データベース番号:CRY1A(A);Grochulskiら、(1995)]と比較することによって推定した。これらの位置を表1に記載する。
【0213】
N末端欠失変異体に対するコード配列の設計において、メチオニンをコードするATG開始コドンを、欠失変異体を発現するように設計されたヌクレオチド配列の5’終端に挿入する。遺伝子導入植物で使用するために設計された配列の場合、Varshavskyの「N末端則」(1997)に固執することが有益であり得る。一部のアミノ酸は、タンパク質のN末端残基として呈示される場合に、真核細胞中でのタンパク質の不安定性および分解に寄与する可能性があることが教示される。例えば、酵母および哺乳動物細胞中での観察から集められたデータは、N末端を不安定化するアミノ酸は、F、L、W、Y、R、K、H、I、N、Q、D、E、あるいは場合によりPであることを指摘している。タンパク質の分解機構の特性は、生物体間で若干異なる可能性があるが、上で観察されるN末端を不安定化するアミノ酸の同一性の保存は、類似の機構が、植物細胞中で機能する可能性があることを示唆している。例えば、Worleyら(1998)は、植物中で、N末端則は、塩基性および芳香族残基を包含することを見出した。対照B.t.殺虫性タンパク質のα−ヘリックス3の開始点近くの植物プロテアーゼによるタンパク質分解性開裂が、不安定化N末端アミノ酸を曝露することはあり得る。このような処理は、開裂されたタンパク質を迅速な崩壊に向ける可能性があり、B.t.殺虫性タンパク質の蓄積を、有効な昆虫防除には不十分なレベルに制限する。したがって、不安定化アミノ酸の1つで始まるN末端欠失変異体の場合、本発明者らは、翻訳開始メチオニンと不安定化アミノ酸との間にG(グリシン)アミノ酸を指定するコドンを付加することを好む。
【0214】
欠失は、次のように設計される。この実施例は、完全長1164アミノ酸キメラDIG−109タンパク質(すなわち配列番号5)をコードする、トウモロコシのコドンに対して最適化された完全長3492bpのDNA配列(すなわち配列番号8)を利用して、65の特定変異体で設計原理を例示する。当業者は、Cry1Caコア毒素セグメントのすべてまたはN末端部分をコードするその他のDNA配列を、同様に操作して所望の結果を達成することができることを理解するであろう。最初の欠失変異体をコードする配列を考案するため、α−ヘリックス2Aの始めに近いバリン残基(すなわち、配列番号5の完全長DIG−109タンパク質のV51)に対するコドンを含む、α−ヘリックス1をコードする塩基のすべてを除去する。したがって、配列番号8の1から153の塩基の排除は、配列番号5の1から51のアミノ酸のためのコード配列を除去する。初め(すなわち、完全長タンパク質のアミノ酸52に対応するコドンの前)の翻訳開始ATG(メチオニン)コドンの再導入は、1114個のアミノ酸(すなわち、メチオニン+完全長DIG−109タンパク質のアミノ酸52〜1164)を含む欠失変異体DIG−109タンパク質をコードする3342塩基のオープン読取り枠を含む欠失変異体のコード配列を提供する。配列番号5の完全長DIG−109タンパク質の残基52〜91に対応する単一アミノ酸のための付加的コドンを除去する逐次的、段階的欠失は、α−ヘリックス2Aおよびα−ヘリックス2Bの一部または全部を欠く変異体を提供する。したがって、第2の設計される欠失変異体をコードする配列は、配列番号8の塩基1〜156を排除し、それによって、アミノ酸1〜52のためのコード配列を除去することを必要とする。機能性オープン読取り枠の回復は、残りのコード配列の初めに翻訳開始メチオニンコドンを再導入すること、かくして、1113個のアミノ酸(すなわち、メチオニン+完全長DIG−109タンパク質のアミノ酸53〜1164)を含む欠失変異体DIG−109タンパク質をコードする3339個の塩基のオープン読取り枠を有する第2の欠失変異体のコード配列を提供することによって再び完遂される。最後に設計される欠失変異体のコード配列は、配列番号8の塩基1〜273を除去すること、かくして、アミノ酸1〜91のためのコード配列を排除すること、および、翻訳開始メチオニンコドンの再導入の後に、1074個のアミノ酸(すなわち、メチオニン+完全長DIG−109タンパク質のアミノ酸92〜1164)の欠失変異体DIG−109タンパク質をコードする3222塩基のオープン読取り枠を有する欠失変異体のコード配列を提供することを必要とする。例示したように、欠失配列を排除した後、残りのコード配列の初めに開始メチオニンコドンを付加して、機能性オープン読取り枠を回復する。また、記載のように、欠失配列の除去が、前に示したような不安定性を決めるアミノ酸の1つである完全長タンパク質の残りの部分のN末端で曝露されて残る場合、付加的なグリシンコドンを、メチオニンコドンと不安定性を決めるアミノ酸のためのコドンとの間に付加すべきである。
【0215】
表11に、前記の戦略により設計された特定の変異体を記載する。
【0216】
【表11】

【0217】
表11に記載のDIG−109タンパク質変異体をコードする付加的核酸は、実施例6で教示したように、植物中での発現を意図した合成遺伝子に関する一般原理に従って設計される。
【0218】
〔実施例14〕
さらなるDIG−109タンパク質変異体の設計
実施例12で開示したように、完全長DIG−109タンパク質を含む最初の翻訳産物を、植物中で種々の程度まで処理すると、産物の1つは、大きさにおいて、65kDaのトリプシンで切断されたコア毒素ペプチドに相当する。このコア毒素は、昆虫中腸中の受容体に結合し毒性をもたらす、毒素の活性化形態であると考えられる。トリプシンは、アルギニン(R)またはリシン(K)残基のC末端側でタンパク質を開裂するエンドペプチダーゼである。したがって、トウモロコシ中に見出される65kDaのDIG−109ペプチドは、トウモロコシのトリプシン様プロテアーゼによる配列番号5の残基R28およびR628の後での開裂によって作出される65kDaの断片に相当する可能性がある。この65kDaのコア毒素ペプチドは、配列番号1のCry1Caコア毒素セグメントのアミノ酸28〜619、および配列番号4のCry1Abプロトキシンセグメントのアミノ酸1〜9を含むことができることが注目される。しかし、遺伝子導入トウモロコシ中で観察される、および後で考察される65kDaの切断産物またはその他の切断産物の正確なC末端は、実験的に決定されていないことを理解されたい。したがって、本明細書中で考察されるDIG−109変異体タンパク質の設計は、例示であることを意図し、殺虫活性を保持するその他のDIG−109切断型変異体タンパク質も、本発明の範囲内に包含される。
【0219】
ほとんどの遺伝子導入トウモロコシ植物中に存在するDIG−109ペプチド産物の濃度は、ほぼ200ppmであると判定された。したがって、DIG−109ペプチドのアミノ酸配列を決定するためには、手近な植物組織から精製するのに利用可能である材料では不十分である。トウモロコシ中で検出される切断型産物に大きさが類似している代用ペプチドを、完全長DIG−152タンパク質を開裂させるための種々のプロテアーゼを使用することによって作出した。
【0220】
70kDaのペプチドの同定。シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(Pf)中の封入体として産生される完全長DIG−152のSDS−PAGEプロファイルは、70kDaの見かけ分子サイズを有し、トリプシン処理に対して比較的安定であるかなりの量のタンパク質を明らかにした。アニオン交換とサイズ排除クロマトグラフィーとの組合せによる、可溶化された完全長DIG−152封入体からの精製の後に、このペプチドは、SDS−PAGEに関して、遺伝子導入トウモロコシ植物からの抽出物中で検出されるほぼ70kDaのDIG−109ペプチドと同一の移動度を有した。双方のペプチドは、DIG−152に向けられたポリクローナル抗体によって認識され、Pfにより産生されるペプチドのアミノ酸配列分析は、MDNNPをN末端配列(配列番号5のDIG−109の残基1〜5)と同定した。したがって、70kDaのペプチドは、完全長DIG−109タンパク質の本来のN末端を含む。推定上のコア毒素のC末端開裂部位(R628)でのトリプシン開裂は、コア毒素を作り出すためのR28でのトリプシン開裂によってDIG−109タンパク質から特徴的に除去される最初の28残基を無傷で残しながら、Pf封入体から単離され、遺伝子導入トウモロコシ植物中で検出されるDIG−152ペプチドの見かけ分子量にほぼ同一の70.5kDaの計算された大きさを有するペプチド(DIG−109の残基1〜628から構成される)を作り出す。したがって、70kDaのタンパク質の正体は、アミノ酸1〜628から構成される切断型DIG−109ペプチドに相当することが提案される。
【0221】
60kDaおよび55kDaのペプチドの正体。pDAS5162およびpDAS5848で形質転換されたトウモロコシ植物は、60kDaおよび55kDaに相当する移動度のDIG−109由来タンパク質を産生することも見出された。これらの大きさのペプチドは、トリプシンで完全長DIG−152タンパク質をまず開裂すること、続いて、トリプシンで開裂された産生物をキモトリプシンで処理することによって実験的に作り出された。[完全長DIG−152タンパク質のキモトリプシン単独での処理は、60kDaより若干大きな複数の切断型産生物をもたらした]。トリプシン/キモトリプシンで開裂された産生物を、大量に調製し、次いでアニオン交換クロマトグラフィー、続いてSuperose200サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。3つの主要ピークが、12.5mL、18.3mL、および20mLの採集容積で溶離されるサイズ排除クロマトグラフィーの段階で観察された。最初の大きなピーク(12.5mL)はDIG−152タンパク質の高分子量(700kDa〜1000kDa)凝集物を含み、3番目の大きなピーク(20mL)は、過剰のキモトリプシンを含んでいた。12.5mLの画分も、DIG−152の65kDaおよび60kDaの産生物に相当する移動度を有するバンドを含んでおり、したがって、DIG−152由来ペプチドのオリゴマー化または凝集は可逆的であると思われる。
【0222】
18.3mLピーク中のタンパク質を、トリプシンのみで開裂されたDIG−152タンパク質と一緒に、還元および変性条件下でのSDS−PAGEによって分析した。これらのタンパク質は、60kDaおよび55kDaに相当する移動度を有する2つの主な種を含んでいた。14kDaおよび9kDaのより小さなタンパク質も観察され、精製中にDIG−152ペプチドに見かけ上結合されていたキモトリプシンと同定された。さらに、240kDaに相当する移動度を有する高分子量バンドが観察された。このバンド中のタンパク質は、DIG152RPC1抗体によって認識され、それはDIG−152の開裂産物のオリゴマー(テトラマー)らしいことを立証した。
【0223】
DIG−109を産生する植物からの抽出物中のタンパク質を、SDS−PAGEで分離し、次いで、精製されトリプシンで開裂されたDIG−152およびトリプシン次いでキモトリプシンで開裂されたDIG−152タンパク質のサンプルと一緒に、ニトロセルロース上にエレクトロブロットした。DIG−109またはDIG−152ペプチドに相当するバンドを、一次DIG152RPC1ウサギ抗体と二次抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ標識化抗体との組合せによって誘発される増強された化学発光を使用して可視化した。トリプシンで処理されたDIG−152サンプルは、ほぼ65kDaの移動度に単一バンドを呈示した。DIG−109ペプチドを産生する植物からの抽出物は、4つのバンド:130kDa(完全長DIG−109タンパク質を意味する)に相当する移動度を有する1つのバンド、60kDaおよび55kDaに相当する移動度の2つのバンド、およびほぼ20kDaに相当する移動度の1つのバンドを呈示した。DIG−109の20kDaの開裂産物について、さらなる特徴付けは行わなかった。トリプシン次いでキモトリプシンで処理されたDIG−152タンパク質は、ほぼ60kDaおよび55kDaに相当する移動度を有し、植物抽出物中で観察される60kDaおよび55kDaのバンドと共に移動する2つのバンドを呈示した。また、トリプシン次いでキモトリプシンで処理されたDIG−152タンパク質サンプル中に、約240kDaに相当する移動度を有する高分子量のバンドも存在した。
【0224】
したがって、トウモロコシ中で産生されるDIG−109の主要開裂産物は、完全長DIG−152タンパク質が、まずトリプシンで開裂され次いでキモトリプシンでさらに開裂される場合に得られる2つの産物に大きさの上で相当する。酵素的に産生された60kDaおよび55kDaのペプチドからの最初の5つのN末端残基は、双方とも、DAFLV(配列番号5のDIG−109タンパク質の残基74〜78に相当する)であると判定された。完全長DIG−109タンパク質のW73の後のこのような開裂が、α−ヘリックス1、α−ヘリックス2A、およびα−ヘリックス2Bの一部の除去をもたらすことは注目される(表1)。
【0225】
さらに、60kDaおよび55kDaの双方のペプチドは、同一のN末端配列を有するので、より小さな(55kDa)ペプチドの産生中に除去される5kDaのセグメントは、60kDaのペプチドのC末端終端からのさらなるプロセッシングを意味するはずである。
【0226】
pDAS5162およびpDAS5848で形質転換されたトウモロコシ植物中で産生される5つの主要DIG−109ペプチドの推定アミノ酸座標を表12に要約する。これらの種の正確なC末端は決定しなかった。60kDaの種4のR569の後でのトリプシン開裂は、56kDa(すなわち、種5のそれに近い)のペプチドを作り出すことは注目される。
【0227】
【表12】

【0228】
DIG−109切断型変異体の設計。表1に示したように、DIG−109コア毒素のα−ヘリックス1〜α−ヘリックス4は、DIG−109タンパク質の最初の145個のアミノ酸内に存在する。DIG−109コア毒素のN末端終端上の最初の潜在的部位(DIG−109のR87;コア毒素のR59)での開裂は、DIG−109コアから59個のアミノ酸を除去し、α−ヘリックス1、α−ヘリックス2A、およびα−ヘリックス2Bが除去された61.02kDaの分子量を有するタンパク質をもたらす。Cry1Abのα−ヘリックス1の除去は、タンパク質がカドヘリン受容体への初期結合を迂回することを可能にする上で影響を及ぼし、昆虫中腸細胞膜中への挿入に先立つオリゴマーのプレ細孔構造の形成をもたらし、結局、細孔形成をもたらす。それらの研究の類推により、α−ヘリックス1の喪失をもたらすトリプシンで切断されたDIG−109コアのN末端部分の除去は、オリゴマーの形成、および機能性細孔の形成につながる第2のアミノペプチダーゼN受容体への結合を可能にするのに必須のステップであることが予測される。したがって、このような方式での植物中でのDIG−109タンパク質の開裂は、昆虫による摂食によりカドヘリン受容体への結合のための要件を迂回するDIG−109毒素ペプチドをもたらす可能性がある。このような効果は、突然変異カドヘリン受容体タンパク質を有する昆虫におけるBtタンパク質中毒に対する抵抗性の克服をもたらすことを示した。
【0229】
pDAS5162およびpDAS5848で形質転換されたトウモロコシ植物中で見出されるより小さいペプチド(60kDaおよび55kDa)は、トリプシン様プロテアーゼによるさらなる開裂の産物に相当する可能性がある。これらのペプチドは、65kDaのコアペプチドに比べて5kDa〜10kDaだけ小さいので、このようなさらなる開裂は、コア毒素のどちらかの終端から全部に満たないほぼ80残基を除去する。DIG−109タンパク質のN末端から最初の130残基以内で、潜在的トリプシン開裂部位は、R28(コア毒素のR−1)、R87(コア毒素のR59)、R93(コア毒素のR65)、K115(コア毒素のK87)、K122(コア毒素のK94)、R127(コア毒素のR99)、およびR129(コア毒素のR101)に位置する。コア毒素のC末端の最後の100個のアミノ酸内で、潜在的トリプシン開裂部位は、R530(コア毒素のR502)、R533(コア毒素のR505)、K557(コア毒素のK529)、R568(コア毒素のR540)、R571(コア毒素のR543)、R582(コア毒素のR554)、およびK610(コア毒素のK582)に位置する。
【0230】
上記の確認された潜在的プロテアーゼ開裂部位の位置をガイドとして利用して、トウモロコシに対して最適化された、配列番号8で開示されるDIG−109のコード配列に由来するDNA配列を、遺伝的に切断されたDIG−109タンパク質変異体をコードするように設計した。実施例13で開示したような切断型コード領域を開始するための5’末端のメチオニンおよびグリシンコドンを付加するための指針を、これらの構築体のためにも採用した。最初のこのような実施形態、配列番号27として開示されたDIG−110は、メチオニンおよびグリシンのN末端付加を伴うDIG−109タンパク質のアミノ酸88〜1164を含む。トウモロコシに対して最適化された、DIG−110をコードするDNA配列は、配列番号28として開示される。第2の実施形態、配列番号29として開示されたDIG−111は、メチオニンおよびグリシンのN末端付加を伴うDIG−109タンパク質のアミノ酸88〜628を含む。トウモロコシに対して最適化された、DIG−111をコードするDNA配列は、配列番号30として開示される。第3の実施形態、配列番号31として開示されたDIG−112は、メチオニンおよびグリシンのN末端付加を伴うDIG−109タンパク質のアミノ酸123〜1164を含む。トウモロコシに対して最適化された、DIG−112をコードするDNA配列は、配列番号32として開示される。第4の実施形態、配列番号33として開示されたDIG−113は、メチオニンおよびグリシンのN末端付加を伴うDIG−109タンパク質のアミノ酸123〜628を含む。トウモロコシに対して最適化された、DIG−113をコードするDNA配列は、配列番号34として開示される。第5の実施形態、配列番号35として開示されたDIG−114は、DIG109タンパク質のアミノ酸1〜582を含む。トウモロコシに対して最適化された、DIG−114をコードするDNA配列は、配列番号36として開示される。
【0231】
DIG−110およびDIG−112タンパク質は、配列番号4で開示されたCry1Abプロトキシンセグメントを含むことに留意されたい。このC末端プロトキシンセグメントは、一部の例において、植物中のタンパク質を安定化するように、またはそれをより溶解性にするように機能する可能性があると考えられる。DIG−110のR543、トリプシン部位での開裂、したがって、プロトキシンセグメントのほとんどを除去することは、計算で61.2kDaの大きさのペプチドを作り出し、その大きさは、pDAS5162およびpDAS5848で形質転換されたトウモロコシ植物において観察される60kDaのDIG−109切断型ペプチドのそれにきわめて近い。DIG−111タンパク質(最初の9個のアミノ酸を除いてCry1Abプロトキシンセグメントのすべてを欠く)は、このような開裂に由来するDIG−110のセグメント(すなわち、DIG−110のアミノ酸1〜543;計算で61.2kDaの大きさ)を含む。
【0232】
同様に、DIG−112の類似のR508部位での開裂は、計算で57.2kDaの大きさのペプチドを作出し、その大きさは、pDAS5162およびpDAS5848で形質転換されたトウモロコシ植物において観察される55kDaのDIG−109ペプチドのそれにきわめて近い。DIG−113タンパク質(最初の9個のアミノ酸を除いてCry1Abプロトキシンセグメントのすべてを欠く)は、このような開裂に由来するDIG−112のセグメント(すなわち、DIG−112のアミノ酸1〜508;計算で57.2kDaの大きさ)を含む。
【0233】
DIG−114タンパク質は、DIG−109タンパク質のアミノ酸1〜28(これらの残基は、植物細胞中または昆虫の中腸中で酵素的に除去できる)を保持し、DIG−109タンパク質のR582、潜在的トリプシン開裂部位で終結する。したがって、このDIG−109変異体は、N末端の28個のアミノ酸がin vivoで除去されるかどうかに応じて、65.7kDaのタンパク質として、または62.6kDaのペプチドとして存在することができる。
【0234】
トウモロコシに対して最適化されたさらなるコード配列を、本明細書に開示の原理によってさらなるDIG−109タンパク質変異体をコードするように設計することができる。
【0235】
〔実施例15〕
DIG−109およびDIG−109変異体タンパク質をコードする発現プラスミドの構築およびシュードモナス(Pseudomonas)中での発現
DIG−109タンパク質、あるいはDIG−110、DIG−111、DIG−112、DIG113またはDIG−114タンパク質(集合的にDIG−109変異体タンパク質と呼ぶ)を産生するように遺伝子操作されたシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(Pf)発現構築物の構築では、標準的なクローニング技術[例えば、Sambrookら、(1989)およびAusubelら、(1995)、およびこれらの更新版]を使用した。タンパク質の産生は、米国特許第5169760号中に開示されているような改変されたlacオペロンの挿入を有するシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)株MB214(株MB101の誘導体;P.フルオレセンス(P.fluorescens)次亜種I)中で実施した。基本的なクローニング戦略は、DIG−109またはDIG−109変異体タンパク質をコードするDNA断片をプラスミドpDOW1169中にサブクローニングすることを必要とし、それによって、それは、プラスミドpKK223−3(PL Pharmacia、Milwaukee、ウィスコンシン州)からのPtacプロモーターおよびrrnBT1T2ターミネーターの発現調節の下に置かれる。pDOW1169は、RSF1010複製起点、pyrF遺伝子、およびタンパク質コード領域を含むDNA断片を導入することのできる制限酵素認識部位に先立つリボソーム結合部位を備えた中程度のコピープラスミドである(米国特許出願公開第2008/0193974号)。発現プラスミドを、エレクトロポレーションによってDC454(突然変異ΔpyrFおよびIsc::lacIQIを有する野生型に近いP.フルオレセンス(P.fluorescens)株)またはその誘導体に形質転換し、SOC−ダイズ水解物培地中に回収し、選択培地(ウラシルを欠くM9グルコース寒天、Sambrookら、同上)上に播種した。微生物学的操作の詳細は、参照により本明細書に組み込まれるSquiresら(2004)、米国特許出願公開第2006/0008877号、米国特許出願公開第2008/0193974号、および米国特許出願公開第2008/0058262号中から入手可能である。コロニーを、まずPCRでスクリーニングし、陽性クローンを、次いで、ミニプレッププラスミドDNAの制限消化によって分析した。挿入物を含む選択されたクローンのプラスミドDNAを、MWG Biotech(Huntsville、アラバマ州)などの商業的配列決定業者との契約によって配列決定した。配列データを集め、Sequencher(商標)ソフトウェア(Gene Codes Corp.、Ann Arbor、ミシガン州)を使用して解析した。
【0236】
振盪フラスコ中での増殖および発現分析。特徴付けおよび昆虫でのバイオアッセイのためのDIG−109タンパク質またはDIG−109変異体タンパク質の産生は、適切な発現プラスミドを含む振盪フラスコで増殖させたP.フルオレセンス(P.fluorescens)株によって完遂された。DIG−109タンパク質またはDIG−109変異体タンパク質の産生は、Ptacプロモーターによって駆動され、米国特許第5527883号中に既に記載されているように実施した。発現は、振盪しながら30℃で24時間の最初のインキュベーションをした後に、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによって誘導された。誘導の時点および誘導後のいくつかの時点で培養物をサンプリングした。600nmでの光学密度(OD600)によって細胞密度を測定した。各サンプリング時点で、サンプルの細胞密度をOD600=20に調節し、1mLのアリコートを14000×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを−80℃で凍結した。
【0237】
〔実施例16〕
シュードモナス(Pseudomonas)によるDIG−109およびDIG−109変異体タンパク質の産生に関する振盪フラスコサンプルの細胞分画およびSDS−PAGE分析
振盪フラスコ細胞ペレットの凍結サンプルから、EasyLyse(商標)細菌タンパク質抽出溶解液(EPICENTRE(登録商標)Biotechnologies、Madison、ウィスコンシン州)を使用して、溶性および不溶性画分を作出する。実施例2で開示したような方法および指針を採用する。
【0238】
〔実施例17〕
シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)中で産生されるDIG−109変異体タンパク質の殺虫活性
DIG−109変異体タンパク質の殺虫活性は、ユーロピアンコーンボーラー(ECB;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(Hubner))、Cry1F抵抗性ECB(rECB)、コーンイアーワーム(CEW;ヘリコベルパ・ゼア(Helicoverpa zea)(Boddie))、ブラックカットワーム(BCW;アグロチス・イプシロン(Agrotis ipsilon)(Hufnagel))、フォールアーミーワーム(FAW;スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(J.E.Smith))、Cry1F抵抗性FAW(rFAW)、サウスウェスターンコーンボーラー(SWCB;ジアトラエア・グランジオセラ(Diatraea grandiosella))、シュガーケーンボーラー(SCB;ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis))、およびCry1Ab抵抗性SCB(rSCB)を含む鱗翅目種に対して立証される。
【0239】
実施例3および実施例4に開示の方法、指針、およびデータ解析に従う。
【0240】
〔実施例18〕
DIG−109変異体タンパク質をコードする植物で発現可能な遺伝子を含む植物形質転換ベクターの構築
アグロバクテリウム(Agrobacterium)スーパーバイナリー系(日本たばこ、東京、日本)を、単子葉植物宿主の形質転換に好都合には使用する。植物発現ベクターの構築、およびスーパーバイナリープラスミドの作出、およびそれらの検証は、実施例7および実施例8に開示のような方法によって実施する。pSB11誘導体プラスミドのT−DNA成分の物理的配置は、好都合には、
RB>トウモロコシUbi1プロモーター:DIG−109変異体CDS:トウモロコシPer5 3’UTR>コメAct1プロモーター:DSM2 CDS:トウモロコシLip3’UTR>LB、または
RB>トウモロコシUbi1プロモーター:DIG−109変異体CDS:トウモロコシPer5 3’UTR>トウモロコシUbi1プロモーター:AAD−1 CDS:トウモロコシLip3’UTR>LBとして例示される。
【0241】
〔実施例19〕
トウモロコシ植物中でのDIG−109タンパク質変異体の産生
トウモロコシのアグロバクテリウム(Agrobacterium)介在性形質転換。DIG−109変異体タンパク質を産生する遺伝子導入トウモロコシ植物を、実施例9で開示した方法で作出する。
【0242】
トウモロコシの形質転換に関わる当業者は、他の植物で発現可能な選択マーカー遺伝子(例えば、除草剤耐性遺伝子)を使用する場合、トウモロコシの形質転換および形質転換された植物の選択のためにその他の方法を利用可能であることを理解するであろう。
【0243】
〔実施例20〕
DIG−109変異体タンパク質をコードする遺伝子を発現する遺伝子導入トウモロコシ植物の生化学的および分子的分析ならびに昆虫でのバイオアッセイ。
DIG−109変異体タンパク質をコードする遺伝子を抱え、発現する遺伝子導入トウモロコシ植物によって産生されたDIG−109変異体タンパク質の生化学的特徴付けは、実施例10および実施例12の方法および試薬を用いて実施される。DIG−109変異体タンパク質をコードする遺伝子の導入遺伝子分析は、実施例11に開示の方法および試薬により実施される。DIG−109変異体タンパク質をコードする遺伝子を抱え、発現する遺伝子導入トウモロコシ植物に由来する葉片の昆虫でのバイオアッセイは、実施例10に開示の方法によって行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫活性を有するCry1Ca変異体タンパク質であって、対応する野生型Cry1CaのN末端αヘリックス1、2A、および/または2Bの全部または一部が欠失している、変異体タンパク質。
【請求項2】
欠失により、ドメインI中のα−ヘリックス1の全部、およびα−ヘリックス2の全部または一部を除去される、前記タンパク質がα−ヘリックス3〜7を含む、請求項1に記載の変異体タンパク質。
【請求項3】
前記欠失により殺虫性タンパク質DIG−109の殺虫活性が改善され、前記欠失が、α−ヘリックス2Aの開始点の前で始まり、α−ヘリックス2Bの終端の後で終結し、α−ヘリックス3中に拡がっていない、請求項1に記載の変異体タンパク質。
【請求項4】
前記欠失により殺虫性タンパク質DIG−152の殺虫活性を改善され、前記欠失が、α−ヘリックス2Aの開始点の前で始まり、α−ヘリックス2Bの終端の後で終結し、α−ヘリックス3中に拡がっていない、請求項1に記載の変異体タンパク質。
【請求項5】
N末端欠失が少なくとも1つの不安定化アミノ酸で始まり、前記タンパク質が、翻訳開始メチオニンと不安定化アミノ酸との間のグリシンアミノ酸を指定する付加コドンを含む、請求項1に記載の変異体タンパク質。
【請求項6】
C末端プロトキシン配列を欠く、請求項1に記載の変異体タンパク質。
【請求項7】
α−ヘリックス2Bとα−ヘリックス3との間のスペーサー領域内に導入されたプロテアーゼ開裂部位を含む、改変されたCry1Caタンパク質。
【請求項8】
前記プロテアーゼ開裂部位が、配列番号1のCry1Caコア毒素タンパク質のアミノ酸85〜90の範囲内に導入されている、請求項7に記載の改変されたタンパク質。
【請求項9】
昆虫に対して改善された活性を有する、請求項1または7に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記昆虫が、フォールアーミーワームおよびシュガーケーンボーラーからなる群から選択される、請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
ドメインIIおよびドメインIIIからなる群から選択される交換されたまたは組み換えられたドメインを含む、改変されたCry1Caタンパク質。
【請求項12】
配列番号1のアミノ酸1〜619を含むコア毒素セグメントを含み、10まで、15までまたは20個までのアミノ酸の付加、欠失、または置換がなされている、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項13】
コア毒素セグメントを越えた箇所で異種のδエンドトキシンプロトキシンセグメントに融合されたCry1Ca殺虫性タンパク質に由来するN末端コア毒素セグメントを含む、融合された殺虫性タンパク質。
【請求項14】
20個までのアミノ酸の置換、欠失、または修飾を伴う、配列番号1の残基28〜619のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のタンパク質。
【請求項15】
20個までのアミノ酸の置換、欠失、または修飾を伴う、配列番号1の残基1〜619を含む、請求項12に記載のタンパク質。
【請求項16】
配列番号3、配列番号5、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、および配列番号1からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である、単離されたタンパク質。
【請求項17】
配列番号3、配列番号5、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、および配列番号1からなる群から選択される配列を含む、請求項16に記載のタンパク質。
【請求項18】
請求項16に記載のタンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号4、配列番号8、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、および配列番号2からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
鱗翅目昆虫を防除する方法であって、前記昆虫を請求項16に記載のタンパク質と接触させることを含む方法。
【請求項21】
請求項16に記載のタンパク質を産生する植物細胞。
【請求項22】
請求項18に記載のポリヌクレオチドを含む微生物細胞。
【請求項23】
請求項21に記載の複数の細胞を含む植物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−514772(P2013−514772A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544843(P2012−544843)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060826
【国際公開番号】WO2011/084627
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】