説明

改良されたビールの醸造方法

本発明は、回分発酵槽中で麦芽を発酵させるステップと、その発酵麦芽を遠心分離するステップとを具え、前記遠心分離ステップをディスクスタック遠心分離機によって実行することを特徴とするビールの醸造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビールを醸造する工程に関する。より詳細には、本発明は、発酵麦芽の熟成の工程に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のビール醸造工程においては、麦芽を生産し、酵母を加えることによって発酵容器中でその麦芽を発酵させる。発酵が完了した後、発酵麦芽(又はいわゆる「グリーンビール」)を熟成タンクにポンプで送り込んで熟成又は冷却熟成を行う。いくつかの工程構成においては、その後の熟成に醗酵タンクを用いることもできる。
【0003】
熟成は、大量の発酵後酵母、粒子状物質、及び、発酵麦芽中に存在するその他の成分を除去する醸造工程における重要なステップである。これらの化合物が最終製品のビールに濁りを生じさせるので、前記化合物は最終製品において望ましくない。更に、発酵麦芽は、容器詰めした後に沈殿する可能性があるタンパク及びポリフェノールをも含んでおり、これらは、最終ビール製品のコロイド安定性を低下させる。
【0004】
従来の熟成において、発酵麦芽を一般的には−2℃乃至5℃の範囲で数日間冷却する。発酵後酵母及び粒子状物質の大部分を、重量沈殿によって沈殿させ、熟成タンクの底の圧縮された層中に回収することができる。タンパク、及び、低い程度で、ポリフェノールは、これらの温度で沈殿することもある。熟成後に得られたビールをろ過する。
【0005】
従来の熟成は重大な欠点を有する。第1の非常に重大な欠点は、発酵に加えて、従来の熟成は、数時間かかるだけである麦芽生産などの処理工程と、濾過及びパッケージングなどのより連続的な処理工程との間の、ビールの生産において通常は数日を要する一時保管的段階であることである。
【0006】
第2に、従来の熟成は、大容積熟成タンクなどのように運用及び機器の費用に莫大な投資金額を必要とする。
【0007】
第3に、事業計画的視点から、貯蔵ステップは、運用を複雑にし、特に、複数ブランド醸造業者における運用の柔軟性を低下させる。
【0008】
現行の熟成工程のさらなる欠点は、熟成タンクの底にスラッジが蓄積することである。次に、このスラッジは、自己断熱し、暖まり、それによって、酵母を自己分解させ、異臭を生じる。さらに、廃棄したスラッジは、なおビールを主成分として含んでおり、ビールの回収にさらなる費用が必要になり、工程が複雑になるので、効率が低下する。水平タンクを用いる場合、スラッジを手動で除去しなければならず、その結果、相当な中断時間が生じ、運転費が増大する。さらに、タンク(垂直及び水平)を2回の回分間にきちんと洗浄する必要があり、それによってさらなる運転費が生じる。
【0009】
現行の熟成工程のもう1つの欠点は、発酵麦芽が−2℃乃至5℃の間の温度を維持するように、熟成タンクを冷却したまま維持しなければならないことである。高体積を冷却することは、高いエネルギ量を必要とし、高い運転費が生じる。
【0010】
従来の熟成が重大な欠点を有することは明らかであるが、グリーンビールから望ましくない物質を除去することは、なお、醸造業者の好ましい方法である。実際に、WO2007/136254は、セパレータ又はフィルタのいずれかのみでは、低酵母発酵物中に存在する非溶解成分を効率的に除去できないことを開示している。この先行技術文献は、第1に沈殿によって酵母菌を除去し、次いで、遠心分離機などのセパレータによる処理によってその他の非溶解成分を除去する方法を提案する。沈殿は、本明細書に記載されているように、数日間の低温貯蔵を要する。
【0011】
上述した問題を緩和しようとする試みの一例は、WO97/43400にも記載されている。この方法では、発酵麦芽を熟成タンク中で数日間貯蔵する従来のステップが、発酵麦芽中に存在する濁り前駆物質と反応する薬剤によって発酵麦芽を処理することによってその前駆物質を沈殿させるステップで置換されている。薬剤を加えた後に、遠心工程を用いることによって、沈殿した成分の少なくとも本質的部分を除去してもよい。この方法は、薬剤導入及び投薬システム、並びに、専用の薬剤を必要とする。
【0012】
既存の方法の欠点を考慮して、本発明の第1の目的は、熟成時間を相当短縮するか又はほとんどゼロまで短縮することができるビールの醸造方法を提供することである。
【0013】
本発明の第2の目的は、経済的及び効率的に最適化されたビールの醸造方法を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、醸造工程を実行し易くし、かつ、複数ブランド醸造業者のための予測を改善することができる方法を提供することである。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、経済的に管理できる費用及び工程複雑性でビールの収率を最適化する方法を提供することである。
【0016】
本発明に従って、上記の目的は、発酵麦芽をディスクスタック遠心分離機によって遠心分離することによって熟成時間が短縮されたビールの醸造工程によって達成される。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、回分発酵槽中で麦芽を発酵させるステップと、その発酵麦芽を遠心分離するステップとを具え、ディスクスタック遠心分離機によって遠心分離ステップを実行することを特徴とするビールの醸造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、従来の醸造工程を図示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態を図示している。
【図3】図3は、本発明のもう1つの実施形態を図示している。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施形態を図示している。
【図5】図5は、発酵麦芽の熟成工程を図示している。
【図6】図6は、本発明のさらに好ましい実施形態を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
当業者は以下に述べる実施形態が本発明の単なる例示であり、本発明の意図した範囲を限定するものではないことを理解するであろう。他の実施形態を検討することもできる。
【0020】
本発明の第1実施形態として、回分発酵槽中で麦芽を発酵させるステップと、その発酵麦芽を遠心分離するステップとを具え、ディスクスタック遠心分離機によって前記遠心分離ステップを実行することを特徴とするビールの醸造方法を提供する。少なくとも1つのディスクスタック遠心分離機によって発酵麦芽を遠心分離することによって、発酵後に従来の醸造工程において通常は用いられる熟成ステップを、相当短縮するか又はほとんどゼロまで短縮することができる。
【0021】
結果として、ディスクスタック遠心分離機が連続的な遠心分離を可能にし、それによって、発酵麦芽を、醗酵槽からディスクスタック遠心分離機へ、さらに濾過及びパッケージングまで連続的に移すことができるので、熟成タンクに投資することがもはや必要ではなくなる。
【0022】
更に、熟成させる代わりに発酵麦芽を遠心分離することによって、熟成時間を考慮する必要がない。これによって、数時間のみを要する麦芽生産などの処理工程と濾過やパッケージングなどのさらに連続的な処理工程との間に数日間を要する熟成を行う醸造工程よりも、運転が複雑ではない、さらに連続的な醸造工程がもたらされる。従って、運用上の柔軟性は、特に複数ブランドを醸造する会社において改善される。
【0023】
従来の回分醸造工程を図1に概略的に図示する。これに対して本発明の回分醸造工程を図2に概略的に図示する。発酵性麦芽生産(a)の後に、回分発酵(b)が生じる。発酵の終了時に、従来の工程においては、発酵麦芽を熟成タンク(c)に移すか又は醗酵槽(図示せず)において熟成が生じるが、これに対して、本発明の工程においては、発酵麦芽をディスクスタック遠心分離機(c’)に移す。遠心分離後に、遠心分離したビールをろ過し(d)、パックする(e)。
【0024】
本質的には、ディスクスタック遠心分離機は、中心線のまわりで基部が包まれた除濁装置である。このユニットを高速回転させることは、重力の影響を、液体中に懸濁された固形に対して重力の10000倍を超え得る影響を有する制御可能な遠心力で置換することを意味する。そのような力に供されると、濃度がより低い液相が同心内部層を形成する一方で、より濃度が高い固形粒子が回転するボウル壁に対して外へ押しつけられる。特別なプレート(ディスクスタック)を挿入することによって、さらなる表面沈殿領域が提供され、結果として、分離工程が非常に迅速化される。ディスクスタック遠心分離機の設計及び用途に応じて、いわゆるスラッジ保持空間中で回収される濃縮固形相を、連続的に、断続的に又は手動で除去することができる。
【0025】
ディスクスタック遠心分離機の例は、Westfalia Separator及びAlfa Lavalのウェブサイト及びパンフレットに記載されている。
【0026】
シグマ因子(Σ)と呼ばれる理論容量因子によって遠心分離機を比較することができる。ディスクスタック遠心分離機の場合には、このΣ因子は、ディスクの数、重力加速度、角速度、縦パイプに対するディスクの角度、ディスクパッケージの内半径、及び、ディスクパッケージの外半径に応じて変わる。さらに、「Industrial Centrifugation Technology」(Wallace Woon−Fong Leung,McGraw−Hill,1998)によれば、一般に、Σ因子は、遠心分離機による流速に比例し、標準状態における沈殿速度に反比例する。沈殿速度は平均粒子サイズに比例することがわかっており、固形が小さい平均粒子サイズを有する発酵麦芽を効率的に遠心分離するには、比例的低い流速、又は、比例的高いΣ因子のいずれかを必要とする。本発明の文脈において、Σ因子と流速との比率は、少なくとも400mhr/hlであってもよく、好ましくは少なくとも700mhr/hlであり、又は、好ましくは少なくとも1000mhr/hlである。例えば、従って、遠心分離ステップを、500hl/hrの流速に対して、少なくとも200,000m、好ましくは少なくとも350,000m、又は、より好ましくは少なくとも500,000mのΣ因子で行うことができる。さらに、従って、遠心分離ステップを、200,000mのΣ因子に対して、500hl/hr以下、好ましくは285hl/hr以下、又は、より好ましくは200hl/hr以下の流速で行うことができる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態において、ビールを醸造する方法であって、遠心分離した発酵麦芽の欧州醸造規格(EBC)濁り度が125未満、100未満又は好ましくは75未満である方法を提供する。主として酵母、また、ある程度において、麦芽生産から残存する微細澱粒子状物質は、発酵麦芽におけるEBC濁り度の原因である。したがって、遠心分離ステップは、75未満のEBCに達するために、主として、酵母除去及び微細澱粒子除去(高いシグマに関して)に焦点が当てられる。既に述べたように、酵母及び微細澱粒子状物質の除去効率は、Σ因子及び流速に応じて変化する。
【0028】
本発明の一実施形態において、ビールの醸造方法であって、遠心分離ステップ中において、発酵麦芽中に存在する10マイクロメートル未満、5マイクロメートル未満、又は、好ましくは2マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する固形が、少なくとも85パーセント又は少なくとも90パーセント、及び、好ましくは95パーセント以上の割合で除去される方法を提供する。6乃至10マイクロメートルの平均粒子サイズを有する酵母粒子状物質を、少なくとも95パーセント又は少なくとも99パーセント除去してもよい。6マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する微細澱粒子状物質を、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、又は、少なくとも95%除去していもよい。既に述べたように、特定の平均サイズを有する粒子の除去効率は、Σ因子及び流速に応じて変化する。ディスクスタック遠心分離機は、Σ因子及び流速に依存して、0.1乃至100マイクロメートルの粒子径を有する固形の分離を可能にする。例えば、デカンター遠心分離機は、通常、10マイクロメートル以上のサイズを有する固形の分離を可能にする。
【0029】
本発明のもう1つの実施形態において、図3に図示されているように、ビールを醸造する方法であって、発酵ステップと遠心分離ステップとの間に、選択的に、熟成ステップ(c)を行う方法を提供する。そのような選択的な熟成ステップ中に、発酵麦芽を、−2℃乃至5℃で数日間冷却することによって、固形の少なくとも一部の沈殿、及び、他の濁り前駆物質の少なくとも一部の沈殿を生じさせる。後者はおそらく、その粒子径に依存して遠心分離中にも除去される。好ましくは、熟成時間は、少なくとも1つのディスクスタック遠心分離機の能力に応じて、3日未満、1日未満、好ましくは12時間未満、又は、より好ましくは6時間未満を要してもよい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、ビールを醸造する方法であって、実質的に発酵の直後に遠心分離ステップを実行する方法を提供する。図4に図示されているように、発酵後に、発酵麦芽を、少なくとも1つのディスクスタック遠心分離機の入口に連続的かつ直接的に輸送することができ、選択的に、輸送中に、発酵麦芽(f)を冷却するための熱交換回路を通してもよい。
【0031】
熟成ステップの追加及び熟成時間の長さは、発酵に用いる酵母の種類に応じて変更してもよい。当業者に公知であるように主として2つのタイプの酵母、すなわち、凝集性酵母及び粉末酵母が用いられている。凝集性酵母は、使用した種類に応じて低い程度又は高い程度で沈殿するが、粉末酵母は、非常に沈殿しにくい。これは、図5に図示されている。カーブ(m)は、発酵麦芽中の粉末酵母濃度と熟成時間との典型的な関係を示している。カーブ(n)は、発酵麦芽中の凝集性酵母濃度と熟成時間との典型的な関係を示している。粉末酵母によって発酵させた麦芽の従来の熟成において、熟成は7日以内であってもよい。熟成時間を短縮するために、醸造業者は、多くの場合に凝固剤を用いる。しかしながら、充分なΣ因子及び充分なスラッジ保持空間を有するディスクスタック遠心分離機を用いる場合、発酵(o)直後に遠心分離を開始することができる。凝集性酵母によって発酵させた麦芽の場合、遠心分離を、例えば、6時間未満又は4時間未満というような数時間(p)の熟成時間の後に開始することができ、それによって、遠心分離機中に投入される酵母がより少なくなるように、熟成開始時の発酵麦芽中の酵母濃度ピークをわずかに減少させることができる。この短い熟成時間は、必ずしも−2℃乃至3℃の間の従来の熟成温度で行う必要はなく、さらに高温度(例えば8℃乃至12℃の間で)行ってもよい。しかしながら、当業者は、熟成ステップの追加及び熟成時間の長さが、酵母タイプ、発酵麦芽中の酵母濃度、並びに、ディスクスタック遠心分離機のΣ因子及びスラッジ保持空間に常に依存することを理解するであろう。
【0032】
従来の醸造方法においては、多くの場合、熟成中に、凝固剤又は清澄剤などの沈澱剤を用いて酵母の沈殿及び他の濁り前駆物質の沈殿を促進する。しかしながら、適切なディスクスタック遠心分離機を用いる場合、これらの薬剤の使用を最小限にすることもできるし又は中止することさえも可能である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、ビールを醸造する方法であって、前記熟成ステップにおいて、前記発酵麦芽中に存在する濁り前駆物質と反応する薬剤を用いない方法を提供する。
【0033】
本発明のさらなる実施形態において、ビールを醸造する方法であって、遠心分離ステップにおいて直列的な及び/又は並列的なディスクスタック遠心分離機を用いる方法を提供する。上述したように、遠心分離ステップは、500hl/hrの流速に対して、少なくとも200,000m、好ましくは少なくとも350,000m、又は、より好ましくは少なくとも500,000mのΣ因子で実行することができる。この能力は、連続的若しくは並行的又は両方の組合せで配置され得る1つよりも多いディスクスタック遠心分離機を用いることによって得られる。
【0034】
特定の実施形態において、必要なEBC濁り度に達するようにしながら発酵麦芽を遠心分離するための、十分に高いΣ因子及びスラッジ保持空間を有する単一のディスクスタック遠心分離機の構成は、より低いΣ因子とより低いスラッジ保持空間とを有する2つ以上の並列ディスクスタック遠心分離機の構成によって置換されてもよい。並列的構成においては、単一の遠心分離機の構成における流速と比較して、各遠心分離機を経由した流速が比例的に低下するからである。
【0035】
もう1つの特定の実施形態において、必要なEBC濁り度に達するようにしながら発酵麦芽を遠心分離機するための、十分に高いΣ因子及びスラッジ保持空間とを有する単一のディスクスタック遠心分離機の構成は、少なくとも2つの直列のディスクスタック遠心分離機の構成によって置換されてもよい。第1の遠心分離機を通る流速は、単一の遠心分離機の場合と同様に高く、比較的大きい平均粒子サイズを有する多量の固体は、この段階で除去される。第2の遠心分離機を通る流速は、第1の遠心分離器を通る流速と当然に同じ流速であるが、比較的小さい平均粒子サイズを有する残りの固体は、この段階で除去される。したがって、第1のディスクスタック遠心分離機としては、より低いΣ因子で充分であるが、実際に高いスラッジ保持空間が必要である。一方で、第2の遠心分離機としては、Σ因子が必要であり、より低いスラッジ保持空間で充分である。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、仕上げの遠心分離ステップをさらに具えるビールの醸造方法を提供する。遠心分離ステップの後にさらなる遠心分離ステップを行うことによって、少なくとも残存酵母及び他の濁り前駆物質の一部を除去してもよい。そのようなさらなる遠心分離ステップ、又は、いわゆる、仕上げの遠心分離ステップは、仕上げ用遠心分離機、好ましくはディスクスタック遠心分離機によって行う。仕上げの遠心分離ステップは、遠心分離した発酵麦芽のEBC濁り度を改善するのに有用である。第2の仕上げディスクスタック遠心機と直列の第1のディスクスタック遠心機の構成は、以下の特性:第1のディスクスタック遠心分離機は、仕上げディスクスタック遠心分離機よりも低いΣ因子を有していてもよいが、実際にはより大きいスラッジ保持空間が必要とされる可能性があり、これに対して、第2の仕上げ遠心分離機は、第1遠心分離機よりもより高いΣ因子とより小さいスラッジ保持空間とを有する、を有していてもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、濾過ステップ(d)パフォーマンスは、従来の醸造工程と比較して影響を受けていなくてもよく、むしろ、高くなることがある。濾過は、珪藻土、若しくは、再生可能な濾過促進剤、又は、クロスフロー膜濾過によって行ってもよい。発酵麦芽を遠心分離することによって、濾過ステップのパフォーマンスは、珪藻土濾過の場合には珪藻土消費が減少して流速が向上する可能性があるので、従来の同等の醸造工程と比較して向上する可能性がある。珪藻土フィルタにおける圧力上昇を0.3bar/hr以下に維持してもよい。濾過後の濁りは、仕様の範囲内であってもよく、また、EBC濁り度は、0.7未満であってもよい。また、ビールの他の物理化学的特性(味、pH、色など)は、影響されない。
【実施例】
【0038】
本発明の醸造工程の一例を以下に記載し、図6に図示する。
【0039】
発酵性麦芽生産(a)の後に発酵性麦芽を醗酵槽(b)に移す。粉末酵母を加え、発酵を開始する。
【0040】
2つのパラメータ、すなわち、麦芽中の糖減少パーセント、及び、ジアセチル値によって発酵をモニターする。糖のパーセンテージが残存糖の20−25パーセントの典型的な値(麦芽及び酵母に依存する)に減少し、ジアセチル値が50ppbの典型的な値よりも低くなると、発酵麦芽(又はグリーンビール)を10℃に冷却し、醗酵槽中で4時間熟成させる。
【0041】
次に、そのビールに冷却ユニット(f)を通過させて−1℃の温度に冷却し、ディスクスタック遠心分離機(c’)の入口に送る。このディスクスタックは、200乃至450hl/hrの流速で最大200000mのΣ因子と、22リットルのスラッジ保持空間とを有する。
【0042】
遠心分離ステップを開始するとき、グリーンビールは、総計で40000000lev/mlの酵母、最大1.2%の固形分、及び、最大1000のEBC濁り度を有する。
【0043】
醗酵槽中の酵母及び微細澱粒子状物質の沈殿が遠心分離中に進行するので、酵母処理量の減少につながり(図5も参照されたい)、流速が、遠心分離ステップの開始時における約200hl/hrから450hl/hrに上昇する。
【0044】
遠心分離後、ビールは、125000lev/ml未満の酵母数、測定限界以下の固形分(限界は0.01%)、及び、50以下のEBC濁り度を有する。
【0045】
次に、再び、ビールを、一時保存タンク(h)において一時保存する前に冷却ユニット(g)で冷却し、珪藻土フィルタ(d)を通す。
【0046】
発酵麦芽を遠心分離することによって、珪藻土消費が従来の同等の醸造工程における120g/hlから95g/hlに減少し、流速が4700hl/hから6000hl/hrまで上昇するので、従来の同等の醸造工程と比較して濾過ステップのパフォーマンスが向上する。珪藻土フィルタにおける圧力上昇は、0.3bar/hr未満である。濾過後の濁りは、仕様の範囲内であり、EBC濁り度は、0.7未満である。また、ビールのその他の物理化学的特性(味、pH、色など)も影響を受けていない。
【0047】
ビール生産と、樽、ボトルなど(e)にビールを詰めるパッケージ詰めとの間の一時保管場所として機能する濾過ビールタンク(図示せず)に濾過からビールを送り、消費に備える。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦芽を回分発酵槽中で発酵させるステップと、その発酵麦芽を遠心分離するステップとを具え、前記遠心分離ステップをディスクスタック遠心分離機によって実行することを特徴とするビールの醸造方法。
【請求項2】
前記Σ因子と遠心分離ステップの流速との比率が少なくとも400mhr/hlであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Σ因子と遠心分離ステップの流速との比率が少なくとも700mhr/hlであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Σ因子と遠心分離ステップの流速との比率が少なくとも1000mhr/hlであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遠心分離ステップのΣ因子が、少なくとも500hl/hrの各流速に対して、少なくとも500000mであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遠心分離ステップ中に、発酵麦芽中に存在する5マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する固形分を少なくとも90パーセント除去することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記遠心分離ステップ中に、発酵麦芽中に存在する2マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する固形分を少なくとも90パーセント除去することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
遠心分離した発酵麦芽のEBC濁り度が100未満又は好ましくは75未満であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発酵ステップと前記遠心分離ステップとの間にさらなる熟成ステップを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記熟成時間が12時間未満であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熟成時間が6時間未満であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
発酵の実質的に直後に前記遠心分離ステップを実行することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熟成ステップにおいて、前記発酵麦芽中に存在する濁り前駆物質と反応する薬剤を用いないことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記遠心分離ステップにおいて、直列及び/又は並列のディスクスタック遠心分離機を用いることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記遠心分離ステップを磨き上げるステップをさらに具えることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−526483(P2011−526483A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515405(P2011−515405)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058098
【国際公開番号】WO2010/000688
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510339935)
【氏名又は名称原語表記】InBev S.A.
【Fターム(参考)】