説明

改良された特性を有するβ−1,3−グルカンの製造方法

本発明はβ−1,3−グルカンの製造方法に関する。前記方法により、グルカンを含有するマトリックスを、β(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテインで処理し、グルカナーゼの濃度が0.001〜3.0質量%である。グルカン含有マトリックスは場合により溶解しない固体、細胞成分および/または細胞断片を含有する発酵ブイヨン、培養基または懸濁液であるか、または20〜99.9質量%になる溶剤割合を有するミセル、ヒドロコロイド、または粉末組成物であってもよい。酵素による処理を15分〜24時間にわたり連続的に実施する。酵素処理に続いてグルカン含有マトリックスを濾過または遠心分離し、グルカンを分離する。本発明は更に、例えば改良された冷水溶解性、溶解しない成分の減少した量、増加した粘度、または改良された濾過特性を有する、こうして製造したβ−1,3−グルカンに関する。本発明は更に固体生成物および前記グルカンの化粧の用途、食品または油の回収のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象はβ−1,3−グルカンの製造方法、特定のβ−1,3−グルカン、固体組成物および特定の製造されたβ−1,3−グルカンの使用である。
【0002】
スクレログルカンとも呼ばれるβ−1,3−グルカンは相当する多糖類結合したグルコース分子である。
【0003】
スクレログルカン(Skleroglukane)は、例えばスクレロチウム・ロルフシイ(sclerotium rolfsii)のような多くのフィラメント状菌類により産生される水溶性の、非イオン性の天然のポリマーである。工業的規模においてスクレログルカンは選択された菌株の好気性、沈水性培養基により得られる。スクレログルカンはβ−1,3−D−グルコース分子からなり、それぞれに第3の糖分子β−1,6−D−グルコース側鎖を有する。平均分子量は10Daである。
【0004】
工業的ポリマーとしてスクレログルカンは主に石油の搬送の際に井戸の泥を濃縮するために使用される。全く同様にスクレログルカンは接着剤、水性絵の具、印刷インキ、化粧品および製薬工業に広く使用されている。この生体高分子は水中で剪断減粘性特性を有する疑似塑性溶液を形成し、更に高温、広いpH範囲を許容し、電解質に対して安定である。
【0005】
多くのスクレログルカンは、発酵肉汁から沈殿させ、固体として取得することにより経済的な方法で製造される。その粘度特性により沈殿工程の前に発酵の間に遊離した全部の固体を分離することは一般に不可能であり、乾燥した固体のスクレログルカンは一般に細胞の断片の形で一定の割合の水不溶性固体を有する。これらの固体はスクレログルカンの溶解の際に水中に溶解せずに再び残り、これが所定の純度の多糖類が必要である用途の場合にスクレログルカンを付加的に精製しなければならないという結果を生じる。このために発酵肉汁を高い粘度のためにまず希釈し、引き続く濾過工程の準備で濾過助剤を添加する。この工程はきわめて時間とエネルギーがかかり、精製した多糖類の収益は50%未満でかなり低い。その際付加的に生じるスクレログルカン溶液のいかなる場合も満足できない不透明度が欠点である。
【0006】
これらの欠点を回避するために、例えば米国特許第4165257号による方法のような多くの方法が開発され、前記方法はタンパク質類似細胞断片を分解するために、エスペラーゼのような腐食性酵素の添加を記載する。更に米国特許第4119491号は固体の珪酸塩物質の添加を記載し、これにより実質的に粘度を損失せずに多糖類の透明化が達成される。ドイツ特許第19547748号は発酵肉汁への洗浄剤の添加を記載し、これが相分離を生じ、多糖類が頭部相に蓄積される。
【0007】
多糖類含有溶液を精製する機械的方法は欧州特許第514890号に提案される。その際多糖類の水溶液を、攪拌装置を用いて親水性有機溶剤と混合するが、多糖類はこれにより溶解しない。
【0008】
刊行物、ドイツ特許第3835771号、米国特許第4299825号および米国特許第3355447号はそれぞれ熱処理、濾過または限外濾過による多糖類含有溶液の濾過能力を改良する方法を記載する。濃縮したキサンタン溶液を得るために、欧州特許第049012号により酵素による処理と結合した限外濾過を提案する。
【0009】
欧州特許第039962号に相当してキサントモナスの発酵から多糖類含有水溶液中の水不溶性成分を分解するために、ペリクラリア族(Pellicularia sp.)からの細胞溶解性β(1,3)−グルカナーゼ活性およびプロテアーゼ活性を有する酵素錯体の使用が勧められる。
【0010】
米国特許第4416990号により、バシドミセテス・ポリポラセアーゼ・セルラーゼ(Basidomycetes po;yporacease−Cellulase)のポリサッカラーゼ組成物を添加することにより、少なくともバクテリア細胞成分またはミクロゲルを含有する不純なキサンタンガムのための酵素による浄化法が保護される。水相での天然のキサンタン樹脂の酵素による浄化はドイツ特第3139249号に記載される、バクテリア細胞基またはミクロゲルを除去するために、この場合にバシドミセテス族のセルラーゼを使用する。
【0011】
前記のすべての試みはそれぞれ目的のための個々の改良を有し、その際個々の改良は実質的にポリサッカリド溶液の2つの主要特性に向けられる。
【0012】
1つは相当する溶液の透明性を改良し、1つは濾過を容易にし、濾過結果を改良する。
【0013】
グルカン含有細胞成分をβ−1,3−グルカナーゼまたは相当する活性の酵素で処理する多くの方法が知られている。
【0014】
欧州特許第440725号はラミナリナーゼの形のエンド−β−グルカナーゼに関するサッカロミセスセレビシアエ(Saccharomycetes cerevisiae)からのグルカンの製造が知られている。
【0015】
米国特許第6090615号はミセルを含有する培養基からβ−1,3−グルカナーゼを用いてβ−グルカン含有抽出物を製造する方法を記載する。しかしこの場合にグルカナーゼは単独でおよびキチナーゼおよびセルラーゼと組み合わせて使用され、ミセルから出発物質としてミセルに含まれる内容物質が溶解により遊離する。
【0016】
米国特許第5250436号および第4810646号からラミナリナーゼを用いるグルカン含有マトリックスの分解によるグルカンの取得法が記載される。その際酵母細胞からアルカリ処理および引き続く酸処理によりこれに含まれるグルカンの結合構造が変化し、これによりグルカンが使用される酵母株に依存して典型的な粘度特性を発揮する。
【0017】
マイクロカプセルの取得は米国特許第5521089号の主題である。この方法において酵母細胞をβ−1,3−グルカナーゼで処理し、これにより疎水性液体の封入に適しているマイクロカプセルが得られる。
【0018】
例えばクルドランまたはラミナリンのようなβ−グルカンの変性は米国特許第6284509号に相当してβ−1,3−グルカナーゼの使用により達成される。
【0019】
全体として前記方法により達成される結果が同時に改良されたレオロジー特性、高めた溶解性および高めた濾過収率を生じないことが注目される。
【0020】
技術水準の前記欠点から、本発明に関して、可能な限り改良された冷水溶解性、増加した粘度および減少した不透明度および溶解しない成分の明らかな減少した割合を有するグルカンが得られ、明らかに改良された濾過能力と結合した、β−1,3−グルカンの製造方法を提供する課題が設定される。
【0021】
前記課題は、グルカン含有マトリックスをβ(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテインで処理する相当する方法により解決される。
【0022】
意想外にも、この方法を使用して、溶解しない形でミセルに結合したグルカン分子が酵素活性により水溶液中で遊離できることが判明した。課題の設定に相当してこの方法を使用してグルカン含有溶液の粘度が増加し、付加的に溶解しない成分の割合が減少し、グルカンの冷水溶解性が明らかに改良することが達成される。
【0023】
β−1,3−グルカンβ(1,6)−グルコース側鎖を有するマトリックスが本発明の意味で特に適していることが示された。
【0024】
プロテインとしてβ(1,3)−グルカナーゼ、特にβ(1,3)−グルカナーゼ活性のほかにβ(1,4)−グルカナーゼ活性を示すプロテインを使用する方法が有利な変形とみなされる。本発明で有利に利用されるβ(1,3)−グルカナーゼはトリコデルマまたはバチルスのような種々の微生物から製造される。
【0025】
β(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテインの濃度に関して、本発明に関係して、前記濃度がそれぞれ反応混合物に関して0.001〜3.0質量%、特に0.01〜1.0質量%、得に有利に0.1〜0.5質量%である場合に好ましい値であることが示された。
【0026】
選択されたプロテインもしくは酵素および/またはその濃度に依存して本発明は15〜60℃、有利に20〜40℃である反応温度を考慮し、その際室温が得に有利とみなされる。
【0027】
本発明の範囲で有利なグルカン含有マトリックスとして発酵ブイヨン、培養基および懸濁液を使用し、固体含量に対して20〜99.9質量%、特に50〜99質量%の溶剤割合を有するミセル、ヒドロコロイドまたは粉末組成物も使用する。例えば固体組成物の形の水不溶性およびグルカン含有マトリックスを酵素錯体で処理することができ、その際この固体の組成物は一工程反応で反応できるとして特に有利である。
【0028】
前記の方法のために本発明は溶解しない固体、細胞成分および/または細胞断片を含有する発酵ブイヨンまたは培養基の有利な使用を考慮する。しかし水溶液として使用するミセル、ヒドロコロイドまたは粉末組成物も一様に特に適している。
【0029】
本発明により使用されるポリサッカリドは一般に発酵により通常の培養基に微生物を使用して得られる親水性コロイドである。例えばスクレログルカンの形のこの種のグルカンおよびその組成物は発酵ブイヨンまたは培養基の形で使用することができ、その際記載したように溶解しない固体および細胞成分または細胞断片を含有することができる。
【0030】
本発明の方法は、一般的に、酵素活性を有するプロテインをポリサッカリドを含有するマトリックスに付加的に溶解しない成分を含有する水溶液の形で添加し、引続きこの混合物を放置することにより実施し、その際この溶液を攪拌するかどうかは重要でない。反応の時間と結果に関する1つの決定的な基準は、ミセルに結合したポリサッカリドが溶液に酵素に起因して遊離するために必要な時間である。水溶液がポリサッカリド0.03〜3.0質量%を含有する場合は一般に完全に十分である。酵素活性を有する使用されるプロテインの濃度は常に直接グルカン濃度およびこれに含まれる細胞成分の量に依存する。
【0031】
すでに示したように、使用されるマトリックスはミセル、ヒドロコロイドまたは粉末組成物の形で所定の溶剤割合を有するかまたは水溶液として使用することができ、その際本発明によりマトリックスの溶剤として特に水が該当する。
【0032】
最適な酵素反応を達成するために、使用されるマトリックスを攪拌する方法が好ましく、こうして固体の沈殿を避け、ポリサッカリド含有溶液中の酵素活性を有する使用されるプロテインのきわめて均一な濃度が保証される。
【0033】
全体としてβ(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテイン、特にβ(1,3)−グルカナーゼが完全なpH寛容性であると示されるが、本発明の方法に関しては4.0〜10.0、特に5.0〜7.0であるマトリックスのpHが好ましい。前記条件下でかなり短い時間内で溶解しない細胞材料からのグルカンの最大遊離が保証できる。この理由から本発明は酵素による処理時間として15分〜24時間、特に1〜6時間の時間を要求する。
【0034】
本発明の方法はバッチ式に行うこともできるが、連続法が有利であり、その際酵素活性を有するプロテインを受け器に水性ポリサッカリドと一緒に希釈したまたは希釈していない発酵ブイヨンまたは単離したグルカンの水溶液の形で添加する。特に連続的方法の場合に十分な大きさの反応容器またはタンクを選択し、固体の細胞成分を有する水性ポリサッカリド溶液が十分な酵素濃度の存在で所望の細胞の分解およびポリサッカリドの遊離に十分な時間使用できるように酵素およびポリサッカリドの添加速度を固定することが好ましい。
【0035】
本発明にはグルカン含有マトリックスを、酵素処理を行った後に70〜150℃、特に80〜140℃の温度で熱処理する変法が含まれる。その際熱処理を1〜60分、特に2〜30分実施すべきである。この熱処理は特に微生物もしくは酵素活性プロテインを不活性にするために用いる。
【0036】
最終的にグルカン含有マトリックスを濾過および/または遠心分離することができ、これは本発明で同様に用意される。濾過工程は、例えばフィルタープレスを用いて、場合により濾過補助手段を使用して実施することができ、その際すべての場合に生成物として浄化されたグルカンが得られる。
【0037】
本発明の方法を完全にするために、本発明による酵素処理されたおよび場合により濾過されたグルカン含有溶液からグルカンを分離することができ、これは特に蒸発、凍結乾燥または沈殿により行うべきである。蒸発の場合は加熱により水を除去し、グルカンの沈殿はアルコールの添加により行うことができ、濾過により溶剤(残部)を除去する。熱による水の蒸発を達成するために、80〜100℃の温度範囲を提案する。凍結乾燥のために20℃の温度および0.01hPaの圧力を提案する。沈殿工程を行う場合は、ポリサッカリド含有溶液を純粋アルコールに添加する。引続き沈殿物をフィルターシーブを用いて濾過により除去し、分離した固体を室温(約25℃)で乾燥する。
【0038】
本発明はβ−1,3−グルカンの製造方法のほかにこの方法で製造されるβ−1,3−グルカン、特に改良された冷水溶解性および/または溶解しない成分の減少した割合および/または増加した粘度および/または水溶液中の減少した不透明度および/または改良した濾過能力を有する相当するグルカンに関する。
【0039】
本発明の対象は更に未処理β−1,3−グルカン少なくとも90〜99.9%およびβ(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテイン0.005〜0.1質量%および充填剤、不活性希釈剤またはミセルのような少なくとも1つの他の内容物質を含有する固体組成物である。その際使用されるβ−1,3−グルカンは再びβ(1,6)−グルコース側鎖を有し、使用されるプロテインは付加的にβ(1,4)−グルカナーゼ活性を示す。この組成物は固体の形で直接水または他の水性媒体に導入することができ、その際組成物は酵素およびポリサッカリドを別々に添加しなくてもよいという利点を有する。
【0040】
最後に本発明は更に前記製造方法で得られるβ−1,3−グルカンの化粧の用途および/または身体の手入れおよび健康の手入れおよび/または栄養および食品産業および/または石油搬送への使用に関する。
【0041】
要約すると、本発明がβ−1,3−グルカンを製造する改良された方法を提供し、その際収率が明らかに高くなり、これにより得られるグルカンおよび特にスクレログルカンの特性が未処理の発酵ブイヨンまたはグルカン粉末の酵素処理により改良することが保持される。更にこの方法を使用して酵素処理により溶解しないミセル成分をミセル結合したポリサッカリドの遊離により液化することが可能であり、これによりポリサッカリド含有溶液の高い粘度が生じる。
【0042】
以下の例はβ−1,3−グルカンの製造方法およびこれにより得られるグルカンの利点を説明する。
【0043】
実施例
例1:スクレログルカン含有溶液の粘度の増加
蒸留水100mlにスクレログルカン(ActigumCS6、Degussa社)1gを添加し、スクリュー攪拌器を使用して20℃で24時間攪拌した。引続きこのスクレログルカン含有溶液10mlをサーモハーケ粘度計(RotoviscoC1)に37℃でせん断速度10/秒で入れた。引続き酵素としてエンド−β(1,3)−グルカナーゼ(Megazyme)の蒸留水1.53mg/mlを含有する溶液1mlを入れ、測定を開始した。
【0044】
この例の結果を図1に示す。参考試料と比較して酵素処理した試料の粘度は2時間以内で約30%増加した。
【0045】
例2:スクレログルカンの酵素による変性
蒸留水100mlにスクレログルカン(ActigumCS6、Degussa社)1gを添加し、プロペラ攪拌器を使用して20℃で24時間攪拌した。引続き溶液を37℃に加熱し、1,3−β−グルカナーゼ(Glucanex、Novozymes)の蒸留水2mg/mlを含有する酵素溶液1mlを添加した。この溶液を37℃で3時間、一定に攪拌して保持し、引続き純粋アルコール(VMRNo.100943)1000mlに入れた。引続きフィルターシーブ(メッシュ幅70μm)を使用して溶解しない沈殿物を溶液から分離し、分離した沈殿物を20℃で乾燥し、ミルを用いて粉末にした。
【0046】
比較として、酵素溶液の代わりに蒸留水1mlを添加した、相当して製造した試料を使用した。酵素処理した本発明の試料と参考試料の粘度を、サーモハーケ粘度計(RotoviscoC1)を使用して20℃でせん断速度10/秒で測定した。
【0047】
図2は、本発明により変性したスクレログルカンの粘度が匹敵する条件下で処理した参考試料より約2倍高いことを示す。
【0048】
例3:溶解しないミセルの酵素による処理
蒸留水100mlにスクレログルカン(ActigumCS6、Degussa社)1gを入れ、スクリュー攪拌器を使用して20℃で24時間攪拌した。引続き1500rcfで30分間遠心分離し、溶液を分離し、沈殿物に蒸留水500mlを添加した。これから得られる懸濁液を磁気攪拌器で30分攪拌し、前記工程(遠心分離、上澄み液の除去、再取り入れ、および懸濁液の攪拌)を5回繰り返した。最後の遠心分離工程の後に溶液を除去し、残留物を−20℃で凍結した。引続き凍結した残留物を0.01hPaで24時間凍結乾燥し、引続きこのうち50mgを蒸留水10ml中で懸濁した。この懸濁液に1,3−β−グルカナーゼ(Glucanex、Novozymes)の蒸留水2ml/mlを含有する酵素溶液1mlを添加し、得られた溶液をサーモハーケ粘度計(RotoviscoC1)に37℃およびせん断速度10/秒で入れた。引続き測定を開始した。
【0049】
図3は本発明により酵素処理したミセル懸濁液が10倍より大きい粘度の増加を示し、これは酵素処理の間にポリサッカリドが溶解しないミセルから分離し、水に溶解したことを示す。同時に溶解しないミセル粒子の減少が観察できた。
【0050】
例4:スクレログルカンの発酵ブイヨンの酵素による処理
蒸留水2080gにスクレログルカンブイヨン(Degussa社)520gを入れ、高せん断攪拌器を使用して25℃で2時間攪拌し、引続き10%NaOH溶液を使用して溶液のpH値を5.2〜5.4の値に調節し、酵素粉末(SafizymCP、Safisis)2.6gを溶液に入れ、これを少量ずつ200gに分けた。個々の部分を引続きオービタル振動器に37℃で1〜6時間入れた。それぞれ1時間後に個々の部分を振動器から取り、溶液を分離し、ブルックフィールド粘度計(LVTD、30rpm)で測定した。
【0051】
図4は本発明の発酵ブイヨンの酵素処理の結果を示す。
【0052】
処理時間2〜4時間以内でポリサッカリドが溶解しないミセルから分離し、溶解し、溶液の粘度は増加し、匹敵する条件下で製造したが、酵素を添加しない参考試料より40%高い粘度の値が達成された。
【0053】
例5:浄化したスクレログルカンの製造
スクレログルカン150g(ActigumCS6、Degussa社)を蒸留水20lに80℃で2時間で高性能攪拌器を使用して攪拌しながら溶解した。引続き溶液を37℃に冷却し、SafizymCP(Safisis)24gを添加した。この懸濁液を37℃で2.5時間攪拌し、引続き溶液を再び80℃に加熱した。引続き濾過部材(FloM、CECA)500gを添加し、懸濁液をフィルタープレス(Eurofiltec)で濾過した。濾過液を80%エタノール40lに入れ、得られた凝結物をフィルターシーブ(メッシュ幅70μm)で濾過した。最後に凝結物を炉内で60℃で乾燥し、グリッドグラインダー(Retsch)で粉砕した。
【0054】
比較として、同じ条件下で、酵素を添加しないで製造した参考試料を使用した。この参考試料と本発明による酵素で処理したスクレログルカン試料の比較を図5に示し、本発明の方法での収率が濾過工程後に参考試料に比べて約30%高くなり、その際濾過したスクレログルカンの粘度が更に10%高い。最後に本発明の試料の不透明度が参考試料と比較して1/4になった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のスクレログルカン含有溶液の粘度の増加を示す図である。
【図2】本発明により変性したスクレログルカンの粘度の増加を示す図である。
【図3】本発明の酵素で処理したミセル懸濁液の粘度の増加を示す図である。
【図4】本発明の発酵ブイヨンの酵素による処理の結果を示す図である。
【図5】本発明の酵素で処理した試料と処理しない参考試料の特性の相違を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−1,3−グルカンの製造方法において、グルカン含有マトリックスを15〜60℃の温度および4.0〜10.0のpH値でβ(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテインを用いて処理することを特徴とするβ−1,3−グルカンの製造方法。
【請求項2】
β−1,3−グルカンがβ−1,6−グルコース側鎖を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
プロテインがβ(1,3)−グルカナーゼである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
プロテインがβ(1,4)−グルカナーゼ活性を有する請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
β(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテインの濃度が反応混合物に対して0.001〜3.0質量%、有利に0.01〜1.0質量%、特に0.1〜0.5質量%である請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
20〜40℃の温度および特に室温で実施する請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
グルカン含有マトリックスが固体含量に対して20〜99.9質量%、特に50〜99質量%の溶剤割合を有する発酵ブイヨン、培養基、懸濁液またはミセル、ヒドロコロイド、または粉末組成物である請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
発酵ブイヨンまたは培養基が溶解しない固体、細胞成分および/または細胞断片を含有する請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
水溶液としてミセル、ヒドロコロイドまたは粉末組成物を使用する請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
マトリックスが溶剤として水を含有する請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
使用されるマトリックスを攪拌する請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
マトリックスのpH値が5.0〜7.0である請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
酵素による処理の時間が15分〜24時間、特に1〜6時間である請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
連続的に実施する請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
グルカン含有マトリックスを酵素処理の後に70〜150℃、特に80〜140℃の温度で熱処理する請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
熱処理を1〜60分、特に2〜30分実施する請求項15記載の方法。
【請求項17】
グルカン含有マトリックスを引続き濾過および/または遠心分離する請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
グルカンを、有利に蒸発、凍結乾燥または沈殿により分離する請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項記載の方法により製造されたβ−1,3−グルカン。
【請求項20】
改良された冷水溶解性および/または溶解しない成分の減少した割合および/または増加した粘度および/または水溶液中の減少した不透明度および/または改良された濾過能力を有する請求項19記載のβ−1,3−グルカン。
【請求項21】
少なくとも未処理β−1,3−グルカン90〜99.9%、β(1,3)−グルカナーゼ活性を有するプロテイン0.005〜0.1質量%および充填剤、不活性希釈剤またはミセルのような少なくとも1つの他の内容物質0〜10質量%を含有する固体組成物。
【請求項22】
化粧用途および/または身体の手入れおよび健康用手入れおよび/または栄養および食品産業および/または石油搬送への請求項1から18までのいずれか1項記載の方法により製造されたβ−1,3−グルカンの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−523958(P2007−523958A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504537(P2006−504537)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002203
【国際公開番号】WO2004/078788
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505106704)サティア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Satia GmbH
【住所又は居所原語表記】Lise−Meitner−Strasse 34, D−85354 Freising,Germany
【Fターム(参考)】