説明

改良された特性を有するコポリカーボネート

本発明は、改良された表面硬度を有するコポリカーボネート、その製造方法、および混合物、成形物、および押出し物、ホイル(層)、ホイルラミネート、およびカードを製造するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された機械特性、および良好な熱耐性および化学物質耐性を有する成形物および押出し物、ホイルおよびラミネートに関し、さらにはその製造方法および特に電気/電子(E/E)分野および医療技術でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネートはエンジニアリング熱可塑性プラスチックである。芳香族ポリカーボネートは次の技術的に重要な特性:透明性、熱耐性および靭性を併せ持つことを特徴とする。
【0003】
日本特許公開第JP−A 09−183838号公報は、溶融法を用いたポリカーボネートを記載しており、その芳香族ジヒドロキシ成分は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TMC)と2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンから成る混合物を、少なくとも80mol%の割合で含有している。このポリカーボネートは、複屈折率が低いので、光学用途(ディスク、レンズ、カード)に特に良好な適性を有すると述べられている。
【0004】
日本特許公開第JP−A 09−204053号公報は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとを、有機感光体層内の結合成分として含有するポリカーボネートを記載している。しかし、これらは、多くとも50%のTMCとヒドラゾン誘導体を含有しうるコポリカーボネートから成る混合物をもっぱら使用する用途である。本願は前記用途に関するものではない。
【0005】
国際特許出願第WO 2008/008599 A2号公報は、難燃剤を製造するために、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび/または1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを含有し、良好な引っ掻き耐性を有するポリカーボネートを使用することを記載している。
【0006】
国際特許出願第WO 2003/005354 A1号公報は、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを含有しうるポリカーボネートを記載している。これらは、その制振特性が良好なので、データキャリア用材料として特に適性を有すると述べられている。
【0007】
国際特許出願第WO 2007/008390 A2号公報は、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと任意に2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含有するポリカーボネートを記載している。前記コポリカーボネートから成る窓および他の物品は、良好な引っ掻き耐性を有すると開示されている。また、アンモニアに対する耐性が良好であることも開示されている。
【0008】
日本特許公開第JP−A 10−138649号公報は、各種ジフェノールを含有するホモ−およびコポリカーボネートを記載しており、これらは熱転写用途におけるノンブロッキング(nonblocking)シートに好適である。この文献は、本願に記載される特定の組み合わせ、またはこれらの有益な特性を記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、単純な無架橋モノマーユニットから成る公知のコポリカーボネートに比べて、表面硬度、引っ掻き耐性、熱耐性および化学物質耐性の関して改良された特性の組み合わせを有する単純な無架橋モノマーユニットから成るコポリカーボネートを提供するといった目的を達成するものである。本発明はまた、このようなコポリカーボネートを製造する方法を提供し、表面安定性および/または化学物質耐性および/または熱耐性が特に求められる用途用に、さらなる保護層を塗布する必要なく、このようなコポリカーボネートを提供するといった目的を達成するものである。ここで記載されうる特定の用途および製品とは、医療技術、電気/電子分野(たとえば、「ソフトキー」)、レンズ(たとえば、赤外線レンズ)、スクリーン/ディスプレイカバー、およびフレーム、およびハウジング部品およびさらにはホイル、ホイルラミネート、およびカード用のものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、一般式(Ia)および(Ib)のそれぞれ少なくとも1つの化合物の組み合わせを使用することを通じて、コポリカーボネートは本問題を解決することを見出し、
【化1】

ここで、R1は互いに独立してC〜C−アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルであり、
nは1、2または3であり、かつ
R2は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルであり、かつ
R3は互いに独立して、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、非常に特に好ましくはC−アルキルであり、かつ
R4部分は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはHまたはメチルである。
【0011】
したがって本発明のコポリカーボネートは、
a)一般式
【化2】

(ここで、R1部分は互いに独立してC〜C−アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルであり、
nは1、2または3であり、かつ
R2部分は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルである)
を有する化合物からなる群からの少なくとも1つの化合物、および
b)一般式
【化3】

(ここで、R3部分は互いに独立して、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、非常に特に好ましくはC−アルキルであり、かつ
R4部分は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはHまたはメチルである)
を有する化合物からなる群からの少なくとも1つの化合物
から誘導されるジフェノレートモノマーユニットを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
コポリカーボネートは、一般式(2a)および(2d)、(2a)および(2b)、またはその他(2c)および(2b)の1以上の化合物の組み合わせを含有することが特に好ましく、
【化4】

ここで、n、R1およびR3は式(1)で記載される部分である。
【0013】
化合物(2a)、(2b)、(2c)および(2d)の中で、式(3a)、(3b)、(3c)および(3d)で記載される化合物がここでは非常に特に好ましい。
【化5】

【0014】
したがって本発明は、一般式(1a)の少なくとも1つの化合物と一般式(1b)の少なくとも1つの化合物の組み合わせから誘導されるモノマーユニット(4a)および(4b)の組み合わせを含有するコポリカーボネートを提供し、
【化6】

ここで、R1部分は互いに独立してC〜C−アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルであり、
nは1、2または3であり、かつ
R2部分は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルであり、かつ
R3部分は互いに独立して、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、非常に特に好ましくはC−アルキルであり、かつ
R4部分は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはHまたはメチルである。
【0015】
モノマーユニットは一般式(1a)および(1b)の対応するジフェノールによって導入される。
【0016】
モノマーユニットは、一般式(2a)〜(2d)のジフェノールから誘導されるのが特に好ましい。
【0017】
ここでは以下の化合物の各組み合わせ:(2a)と(2b)、(2b)と(2c)および(2a)と(2c)が特に好ましい。これらの化合物において、n=3で、かつR1およびR3=メチルが非常に特に好ましい。
【0018】
以下の化合物の組み合わせ:
・1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(3a)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(3d)(ビスフェノールA)、
・1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(3a)と2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(3b)または
・1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(3c)(ビスフェノールTMC)と2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(3b)
を含有するものが、本発明の非常に特に好ましいコポリマーを与える。
【0019】
コポリカーボネート中の本発明のジフェノール性化合物(1a)の全含有量は、(使用される一般式(1a)および(1b)のジフェノールの全モル量に基づいて)0.1〜70mol%、好ましくは1〜60mol%、特に好ましくは5〜50mol%、および非常に特に好ましくは5〜35mol%である。他の好ましい実施の形態では、化合物(1a)の全含有量は、使用される一般式(1a)および(1b)のジフェノールの全モル量に基づいて、40〜90mol%、45〜80mol%、50〜75mol%、および55〜75mol%である。
【0020】
コポリカーボネートはブロックコポリカーボネートの形態を取っても、ランダムコポリカーボネートの形態を取ってもよい。ここでは、コポリカーボネート中のジフェノレートモノマーユニットの頻度は、使用されるジフェノールのモル比から計算される。
【0021】
ポリカーボネートまたはコポリカーボネートはまた、分岐を有してもよい。この末端に、使用されるジフェノールのモル量に基づいて、所定の少量の、好ましくは0.05〜5mol%、特に好ましくは0.1〜3mol%、非常に特に好ましくは0.1〜2mol%の3官能性化合物を公知の分岐剤として使用し、その例はイサチンビスクレゾール(IBc)またはフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン;1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン;1,1,1−トリ(4−ヒドロキシ-フェニル)エタン(THPE);トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)-シクロヘキシル]プロパン;2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール;2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール;2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン;ヘキサ(4−(4−ヒドロキシ-フェニル-イソ-プロピル)フェニル)オルトテレフタレート;テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン;テトラ(4−(4−ヒドロキシフェニルイソ-プロピル)フェノキシ)メタン;トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;2,4−ジヒドロキシ安息香酸;トリメシン酸;塩化シアヌル酸;3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール;1,4−ビス(4’,4’’−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼン、および特に1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよびビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。使用される分岐剤はイサチンビスクレゾールまたはその他1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよびビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールを含有するのが好ましい。
【0022】
これらの分岐剤を使用することで、分岐構造を与える。得られた長鎖分岐は、線形タイプに比べて、得られたポリカーボネートの流動性について一般的により擬似塑性にする。
【0023】
本発明のコポリカーボネートはまた、2〜20の割合で式(5a)のジフェノールを含有してもよく、
【化7】

ここで、RおよびRは互いに独立して水素、C〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、ハロゲンまたはそれぞれ任意に置換されたアリールまたはアラルキルであり、
Xは、単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、またはC〜C−シクロアルキリデンであり、これはC〜C−アルキルで置換されてもよく、またはXはC〜C12−アリーレンであり、これは任意にヘテロ原子を含有するさらなる芳香族環と縮合してもよい。
【0024】
構造(5a)が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAまたはBPA)であるのが特に好ましい。
【0025】
界面法によって高分子量のポリカーボネートを得るために、ジフェノールのアルカリ金属塩を2相混合物においてホスゲンと反応させる。分子量はモノフェノール、たとえば、フェノールまたはtert−ブチルフェノールの量を介して制御されてもよい。これらの反応は実際にはもっぱら線形ポリマーを製造する。このことは末端基分析を介して示すことができる。また、ここでは分岐剤として公知のもの、一般的に多水酸化化合物を特に使用することで、分岐ポリカーボネートを得る。
【0026】
さらに、本発明は式(1)、(2)および(3)のジフェノールから誘導されるジフェノレートユニットを含有する本発明のコポリカーボネートを製造する方法を提供するものであり、ジフェノールおよび任意の分岐剤をアルカリ水溶液中に溶解し、これを、アルカリ水溶液、有機溶媒および触媒、好ましくはアミン化合物から成る2相混合物中で、カーボネート源、たとえば、ホスゲンと反応させる(ここでカーボネート源は任意に溶媒中に溶解させておいてもよい)ことを特徴とする。また、反応を多段階で行ってもよい。
【0027】
ポリカーボネートを製造するこのタイプの方法は原理的には2相界面法として、たとえば、シュネル(Schnell),ポリカーボネートの化学と物理(Chemistry and Physics of Polycarbonates),ポリマー・レビューズ(Polymer Reviews),Vol.9,インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers),ニューヨーク 1964 pp.33ff.、およびポリマー・レビューズ(Polymer Reviews),Vol.10,「界面法および溶液法による縮合ポリマー(Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods)」,ポール(Paul)W.モーガン(Morgan),インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers),ニューヨーク 1965,第VIII章,p.325から公知であり、基本的条件はしたがって当業者に知られている。
【0028】
ここではアルカリ水溶液中のジフェノール濃度は、2〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは2〜18重量%、および非常に特に好ましくは3〜15重量%である。アルカリ水溶液はアルカリ金属またはアルカリ土金属の水酸化物を溶解した水から成る。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましい。
【0029】
ホスゲンをカーボネート源として使用する場合には、アルカリ水溶液の有機溶媒に対する体積比は5:95〜95:5、好ましくは20:80〜80:20、特に好ましくは30:70〜70:30、および非常に特に好ましくは40:60〜60:40である。ジフェノールのホスゲンに対するモル比は、1:10未満、好ましくは1:6未満、特に好ましくは1:4未満および非常に特に好ましくは1:3未満である。有機相内の本発明の分岐ポリカーボネートおよびコポリカーボネートの濃度は、1.0〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは2〜18重量%、および非常に特に好ましくは3〜15重量%である。
【0030】
アミン化合物の濃度は、使用されるジフェノールの量に基づいて、0.1〜10mol%、好ましくは0.2〜8mol%、特に好ましくは0.3〜6mol%、および非常に特に好ましくは0.4〜5mol%である。
【0031】
ジフェノールという用語は、所定の割合で前述の分岐剤を含む前述の化合物から選択されるジフェノール混合物を意味する。カーボネート源は、ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲン、好ましくはホスゲンである。ホスゲンを使用する場合には、任意に溶媒を除き、ホスゲンを直接反応混合物に導入することができる。
【0032】
使用してもよい触媒は、3級アミン、たとえば、トリエチルアミンまたはN−アルキルピペリジンである。好適な触媒はトリアルキルアミンおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジンである。特に好適な化合物はトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンおよびN−プロピルピペリジンである。
【0033】
使用してもよい有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素、たとえば、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンまたはその混合物、または芳香族炭化水素たとえば、トルエンまたはキシレンである。反応温度は−5℃〜100℃、好ましくは0℃〜80℃、特に好ましくは10℃〜70℃および非常に特に好ましくは10℃〜60℃であってもよい。
【0034】
ポリカーボネートを溶融エステル交換法によって製造することもでき、ここではジフェノールを溶融物で、ジアリールカーボネート、大抵の場合ジフェニルカーボネートと、触媒たとえば、アルカリ金属塩、アンモニウム化合物またはホスホニウム化合物の存在中で反応させる。
【0035】
溶融エステル交換法は、たとえば、ポリマー科学百科事典(Encyclopedia of Polymer Science),vol.10(1969),ポリカーボネートの化学と物理(Chemistry and Physics of Polycarbonates),ポリマー・レビューズ(Polymer Reviews),H.シュネル(Schnell),Vol.9,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(John Wiley and Sons, Inc.)(1964)、およびさらにはドイツ特許出願第DE−C 10 31 512号公報に記載される。
【0036】
溶融エステル交換法では、界面法用の上記芳香族ジヒドロキシ化合物を溶融物で、好適な触媒および任意のさらなる添加剤の助けを得て、炭酸ジエステルとエステル交換する。
【0037】
本発明の目的では、炭酸ジエステルは式(6)および(7)のものであり、
【化8】

ここで、R、R’およびR”は互いに独立して、H、任意に分岐されたC〜C34−アルキル/シクロアルキル、C〜C34−アルクアリールまたはC〜C34−アリールであってもよく、
その例は、
ジフェニルカーボネート、
ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジブチルフェニルカーボネート、
イソブチルフェニルフェニルカーボネート、ジイソブチルフェニルカーボネート、
tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、 ジ−tert−ブチルフェニルカーボネート、
n−ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(n−ペンチルフェニル)カーボネート、
n−ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(n−ヘキシルフェニル)カーボネート、
シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジシクロヘキシルフェニルカーボネート、
フェニルフェノールフェニルカーボネート、ジフェニルフェノールカーボネート、
イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジイソオクチルフェニルカーボネート、
n−ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ(n−ノニルフェニル)カーボネート、
クミルフェニルフェニルカーボネート、ジクミルフェニルカーボネート、
ナフチルフェニルフェニルカーボネート、ジナフチルフェニルカーボネート、
ジ−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(ジ−tert−ブチルフェニル)カーボネート、
ジクミルフェニルフェニルカーボネート、ジ(ジクミルフェニル)カーボネート、
4−フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−フェノキシフェニル)カーボネート、
3−ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、
トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジトリチルフェニルカーボネート、
好ましくは
ジフェニルカーボネート、
tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−tert−ブチルフェニルカーボネート、
フェニルフェノールフェニル カーボネート、ジフェニルフェノールカーボネート、
クミルフェニルフェニル カーボネート、ジクミルフェニル カーボネート、
特に好ましくはジフェニルカーボネート
である。
【0038】
記載の炭酸ジエステルの混合物を使用することもできる。
【0039】
炭酸エステルの割合は、ジヒドロキシ化合物に基づいて、100〜130mol%、好ましくは103〜120mol%、特に好ましくは103〜109mol%である。
【0040】
本発明の目的のために溶融エステル交換法で使用される触媒は、上記文献に記載されるように、塩基性触媒、たとえば、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土金属水酸化物およびアルカリ金属酸化物およびアルカリ土金属酸化物、およびさらにはアンモニウム塩またはホスホニウム塩(以後オニウム塩と呼ぶ)である。ここでは、オニウム塩、特にホスホニウム塩が好ましい。本発明の目的では、ホスホニウム塩は次の一般式(8)の塩であり、
【化9】

ここで
1〜4は同じまたは異なったC〜C10−アルキル部分、C〜C10−アリール部分、C〜C10−アラルキル部分またはC〜C−シクロアルキル部分、好ましくはメチルまたはC〜C14−アリール部分、特に好ましくはメチルまたはフェニルでもよく、かつ
は、陰イオン、たとえば、ヒドロキシド、スルフェート、ヒドロゲンスルフェート、ヒドロゲンカーボネート、カーボネート、ハライド、好ましくはクロライドまたは式ORのアルコレートであってもよく、ここでRはC〜C14−アリールまたはC〜C12−アラルキル、好ましくはフェニルであってもよい。好ましい触媒は、
テトラフェニルホスホニウムクロライド、
テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、
テトラフェニルホスホニウムフェノレート、
および特にテトラフェニルホスホニウムフェノレート
である。
【0041】
触媒の好ましい使用量は、ジフェノール1molに基づいて、10−8〜10−3mol、特に10−7〜10−4molである。
【0042】
重合速度を上げるために、他の触媒を単独で、または任意にオニウム塩に加えて使用してもよい。これらには、アルカリ金属およびアルカリ土金属の塩、たとえば、リチウム、ナトリウムおよびカリウムの水酸化物、アルコキシドおよびアリールオキシド、好ましくはナトリウムの水酸化物、アルコキシドまたはアリールオキシドがある。水酸化ナトリウムおよびナトリウムフェノレートが最も好ましい。共触媒の量は、各場合ナトリウムとして計算して、1〜200ppb、好ましくは5〜150ppbおよび最も好ましくは10〜125ppbの範囲であってもよい。
【0043】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの溶融物におけるエステル交換反応は、好ましくは2段階で行われる。第1段階では、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの溶融を、80〜250℃、好ましくは100〜230℃、特に好ましくは120〜190℃の温度で、大気圧下で、0〜5時間、好ましくは0.25〜3時間行う。触媒添加後に、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルから、真空の印加(2mmのHgまで及ぶ)と温度上昇(260℃程度まで及ぶ)を介し、蒸留によってモノフェノールを除去することを通じて、オリゴカーボネートが生成される。この方法で生じる気体の大部分は、この段階で生じる。得られたオリゴカーボネートの重量平均分子量Mwは、2000g/mol〜18,000g/mol、好ましくは4000g/mol〜15,000g/molの範囲である(これは、ジクロロメタン中、またはフェノール/o−ジクロロベンゼンの等重量の混合物中での相対溶液粘度の測定を介して、光散乱によるキャリブレーションを用いて決定される)。
【0044】
第2段階では、さらに250〜320℃、好ましくは270〜295℃に温度を上げ、<2mmのHgの圧力を用いて、重縮合法でポリカーボネートを生成する。この方法で生じた残りの気体をこの段階で除去する。
【0045】
(2以上の)触媒を互いに組み合わせて使用することもできる。
【0046】
アルカリ金属/アルカリ土金属触媒を使用する場合には、アルカリ金属/アルカリ土金属触媒を後の時点で(たとえば、オリゴカーボネートの合成後、第2段階での重縮合処理時に)添加するのが有益な場合もある。
【0047】
本発明の方法の目的では、ポリカーボネートを得るための芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を、バッチ法でまたは好ましくは連続的に、たとえば、攪拌タンク、薄膜蒸発器、流下薄膜型蒸発器、攪拌タンクカスケード、押出し成形機、混練機、単純なディスク反応器および高粘度ディスク反応器内で行ってもよい。
【0048】
多官能性化合物を用いて、界面法と同様に、分岐型ポリまたはコポリカーボネートを製造することができる。
【0049】
本発明のコポリカーボネートの相対溶液粘度はDIN51562に従って決定され、好ましくは1.15〜1.35の範囲である。
【0050】
好ましい、特に好ましいまたは非常に特に好ましいまたは好ましくは等の見出しで記載されるパラメータ、化合物、定義および説明を用いた実施の形態は、好ましく、特に好ましくまたは非常に特に好ましい。
【0051】
しかし、記載内で一般的に挙げた、または好ましい範囲として挙げた定義、パラメータ化合物および説明は、互いに所望のように組み合わせてもよく、すなわちそれぞれの範囲および好ましい範囲を組み合わせてもよい。
【0052】
本発明のコポリカーボネートを、公知の方法で、たとえば、押出し成形、射出成形または押出しブロー成形を通じて加工処理して、いずれの所望の成形物を得てもよい。
【0053】
本発明のコポリカーボネートはまた、他の芳香族ポリカーボネートおよび/または他の芳香族ポリエステルカーボネート、および/または他の芳香族ポリエステルと、公知の方法で、たとえば、混練を通じて混合されたものであってもよい。
【0054】
本発明のコポリカーボネートはまた、これらの熱可塑性プラスチックにとって常套の量の、常套の添加剤、たとえば、離型剤またはガンマ線安定剤との混合物であってもよい。またこれらは他のプラスチック内容物を含有してもよい(混合物)。
【0055】
任意に他の熱可塑性プラスチックとのおよび/または常套の添加剤との混合物での、本発明のコポリカーボネートを処理して、従来から知られるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルが使用されるいずれの所望の成形物/押出し物を得てもよい。その特性は、比較的大型の成形物、たとえば、自動車のウィンドシールドを射出成形するための材料として特に好適である。しかし、低吸水性とそれに伴って改良された寸法安定性は、光学データ記憶システム、たとえば、CD、CD−R、DVD、DVD−R、ブルーレイディスク、アドバンスド・オプティカル・ディスク(AOD)用基材材料としても特に好適であるだけでなく、たとえば、電気分野ではホイルの形態で、自動車構造では成形物の形態で、安全/セキュリティ分野ではカバーリング用パネルの形態でも使用されうる。本発明のポリカーボネートの他の可能な用途は次の通りである。
【0056】
・建物、自動車および飛行機の多くの領域で求められることが知られている安全/セキュリティパネル、およびさらにはヘルメットのシールド。
・ホイル、特にスキーホイルの製造。
・ブロー製品、たとえば、1〜5ガロンを保持する水ボトルの製造(たとえば、米国特許第2 964 794号公報参照)。
・建物、たとえば、鉄道の駅または植物園、および照明システムのたとえば、保護カバーリング用の、特に中空チャンバーパネルの半透明シートの製造。
・光学データ記憶デバイスの製造。
・信号機のハウジングまたは道路標識の製造。
・発泡材の製造(たとえば、ドイツ特許出願第DE−B 1 031 507号公報参照)。
・フィラメントおよびワイヤの製造(たとえば、ドイツ特許出願第DE−B 1 137 167およびドイツ特許公開第DE−A 1 785 137号公報参照)。
・光学用途用ガラスファイバを備える半透明プラスチック(たとえば、ドイツ特許公開第DE−A 1 554 020号公報参照)
・硫酸バリウム、二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムをそれぞれ含み、有機ポリマー状アクリレートゴムを含有する、半透明の光散乱成形物の製造用半透明プラスチック(欧州特許出願第EP−A 634 445、EP−A 269 324号公報)
・精密技術射出成形部品、たとえば、レンズホルダーの製造。ガラスファイバを含むポリカーボネートをこの目的のために用い、適当ならば、全重量に基づいて約1〜10重量%のMoSをも含有する。
・光学デバイス部品、特に写真カメラ用およびフィルムカメラ用レンズの製造(たとえば、ドイツ特許公開第DE−A 2 701 173号公報参照)。
・光送信機、特に光コンダクタケーブル(たとえば、欧州特許出願第EP−A 0 089 801号公報参照)。
・導電体およびプラグハウジング、およびさらにはプラグコネクタ用絶縁性材料。
・香水、アフターシェーブローションおよび汗に対する耐性が改良された携帯電話ケーシングの製造。
・ネットワークインターフェイスデバイス。
・照明、たとえば、ヘッドランプ、拡散シートまたは内部レンズ、およびさらには線形照明器具の製造。
・飲食用途、たとえば、ボトル、テーブルウェアおよびチョコレート型。
・石油や潤滑剤との接触が起こりうる自動車分野での用途、たとえば、バンパーであり、任意にABSまたは好適なゴムとの好適な混合物の形態である。
・スポーツ用品、たとえば、スラロームポールまたはスキーブーツクリップ。
・家庭用品、たとえば、キッチンシンクユニットおよびメールボックスハウジング。
・ハウジング、たとえば、配電キャビネット。
・電動歯ブラシ用ケーシングおよびヘアドライヤーケーシング。
・透明洗浄機−洗浄液に対する耐性が改良された窓。
・保護眼鏡、バイザーまたは矯正眼鏡。
・キッチンの煙、特に油の煙に対する耐性が改良されたキッチン設備用ランプカバー。
・調剤品用パッケージングホイル。
・クリップボックスおよびクリップキャリア。
・他の用途、たとえば、動物ケージ、または動物小屋用飼料ドア。
・安全ヘルメット。
【0057】
医療技術、特に
・医療用途、たとえば、酸素供給器、透析器(中空ファイバ透析器)、透析モジュール、または血液フィルタ(これらの「人工腎臓」の透明なハウジング部品)
・心臓切開術のリザーバ(吸引によって取り除かれた血液を回収するために、処置時に使用するもの)
・血温交換器
・ホースコネクタ
・3又バルブ
・血液フィルタ
・注入システム(血液と静脈内に導入された液体とを直接接触させるもの)
・呼吸器(喘息および気道を処置するもの)
・医療技術における遠心分離システム(心臓切開術のリザーバと組み合わせた血液遠心分離)
・アンプル(たとえば、針なし注入システム用)
・たとえば、血糖値測定装置に使用されるホイル
・患者端末(たとえば、看護士用呼び出しシステム)
・外科手術のメス用処理ボックス
・救急医療用吸引−除去装置
・保育器用ランプハウジング
・救急医療サービス用呼吸補助具、たとえば、バッグバルブマスク
・微細外科手術用腹腔鏡
・調剤品用パッケージングホイル
用製品に本発明のコポリカーボネートを使用するのが特に好ましい。
【0058】
同様に、電気/電子(E/E)用途用製品、たとえば、
・ソフトキー、キーパッド
・タッチスクリーン用途
・ハウジング、ハウジング部品およびフレーム
・レンズ(たとえば、赤外線レンズ)
・スクリーン/ディスプレイカバー
・拡散シート
は特に好ましい。
【0059】
ここでのある好ましい用途は、ポータブルマルチメディアデバイス、たとえば、MP3プレイヤー、携帯電話、コンピュータおよびデジタルカメラ、およびさらにはフラットスクリーンである。
【0060】
ホイルおよびホイルラミネート、およびさらには本発明のポリマーから成る共押出しまたはラミネート層を備えるホイルおよびホイルラミネート、および前述の用途でのこれらの使用も非常に特に好ましい。
【0061】
以下の実施例は本発明を例示することを意図するものであって、これに限定されない。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
モノマーユニット1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(3a)の合成(HCl処理):
【化10】

42.07g(0.3mol)の量の3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、324.42g(3.0mol)の純度>99%の新規に蒸留されたo−クレゾールおよび共触媒として0.812g(0.004mol)のドデシルメルカプタンを、丸底多首フラスコ内に、約36℃で、窒素下で始めに充填する。
【0063】
10gの塩化水素ガスを次に、ガスシリンダから無色の透明溶液に30分間で導入する。
反応は僅かに発熱し、溶液全体を約42℃に加熱する。
【0064】
導入終了後、混合物を10分間で60℃に加熱し、25分間前記温度を保持する。
【0065】
反応終了後、過剰のHClを、80℃でウォーターポンプによって真空を与えることで、排除する。次に、過剰のo−クレゾールおよび触媒を除去するために、残留物に注意深く始めの高真空蒸留を施す。
【0066】
残留物を塩化メチレン内に取り、繰り返し水で洗浄し、乾燥する。そして残留物として白色固体を得、これはさらに精製することなくホスゲン化することができる(実施例4参照)。
【0067】
(実施例2(比較例))
ビスフェノールA(BPA)とビスフェノールTMCから成るコポリカーボネートの合成:
【化11】

塩化メチレン(568.4ml)を、47.94g(0.21mol)のビスフェノールA(BPA)、27.94g(0.09mol)のビスフェノールTMC、鎖重合停止剤として1.352g(0.009mol、ビスフェノールに基づいて3.0mol%)のp−tert−ブチルフェノール(BUP)、および27.60g(0.69mol)の水酸化ナトリウムの、568.4mlの水における窒素不活性化溶液に添加する。ホスゲン(47.47g)(0.48mol)を、pH12.5〜13.5で20℃で導入する。pHを12.5未満に下げないように、30%の強水酸化ナトリウム溶液をホスゲン処理時に添加した。ホスゲン化が完了し、混合物に窒素を流した後、攪拌をさらに5分間続け、次に、0.411ml(0.003mol、ビスフェノールに基づいて1mol%)のN−エチルピペリジンを触媒として添加し、さらに1時間攪拌を続ける。水相を除去した後、有機相をリン酸で酸性化し、中性化して塩がなくなるまで蒸留水で洗浄する。有機相を単離し、80℃でウォーターポンプによって真空を与えることで濃縮し、130℃でウォーターポンプによって真空を与えることで、一定量にまで乾燥する。
【0068】
そして透明なポリカーボネートを得る。
【0069】
((本発明の)実施例3)
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(3b)(「ジメチルビスフェノールA」)とビスフェノールTMCから成るコポリカーボネートの合成:
【化12】

7.171lの塩化メチレンと8.591lのクロロベンゼンを、1281.75g(5.0mol)のジメチルビスフェノールA、1552.1g(5.0mol)のビスフェノールTMC、鎖重合停止剤として57.08g(0.380mol、ビスフェノールに基づいて3.8mol%)のp−tert−ブチルフェノール(BUP)、および929.29g(23.00mol)の水酸化ナトリウムの、15.763lの水における窒素不活性化溶液に添加する。ホスゲン(1285.7g)(13.0mol)を、pH12.5〜13.5で20℃で導入する。pHを12.5未満に下げないように、30%の強水酸化ナトリウム溶液をホスゲン処理時に添加した。ホスゲン化が完了し、混合物に窒素を流した後、攪拌をさらに5分間続け、次に、11.31g(0.10mol、ビスフェノールに基づいて1mol%)のN−エチルピペリジンを触媒として添加し、さらに1時間攪拌を続ける。水相を除去した後、有機相をリン酸で酸性化し、中性化して塩がなくなるまで蒸留水で洗浄する。溶媒をクロロベンゼンで置き換えた後、生成物を270℃でベント押出し成形機を通じて押出し、ペレット機を通じてペレット化する。そして透明なポリカーボネートペレットを得る。ポリカーボネート樹脂のモル量はMn=8921g/mol(室温で、ゲル浸透クロマトグラフィーGPCによって決定され、屈折率検出器を用いてBPAポリカーボネートについてキャリブレートされた数平均分子量)およびMw=21,537g/mol(重量平均)であり、D=2.41の多分散性を有する。塩化メチレンにおける相対溶液粘度(0.5g/100mlの溶液)は1.170である。
【0070】
((本発明の)実施例4)
ビスフェノールAと実施例1からの1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(3a)から成るコポリカーボネートの合成:
【化13】

水酸化ナトリウム(6.16g)(0.154mol)を始めに充填し、不活性化ホスゲン装置内で306gの水に溶解する。この溶液に次のものを添加する:11.19g(0.05mol)のビスフェノールA(BPA)および7.1058g(0.021mol)の実施例1からのジメチルTMCビスフェノール。鎖重合停止剤として0.32g(0.0021mol、ビスフェノールに基づいて3.0mol%)のp−tert−ブチルフェノール(BUP)および306mlの塩化メチレンから成る溶液を次に添加し、混合物を10分間穏やかなスチーラー回転速度で攪拌する。ホスゲン(13.851g)(0.14mol)を、pH12.5〜13.5で20℃で導入する。pHを12.5未満に下げないように、濃水酸化ナトリウム溶液をホスゲン処理時に添加した。ホスゲン化が完了し、混合物に窒素を流した後、攪拌をさらに5分間続け、次に、0.096ml(0.007mol、ビスフェノールに基づいて1mol%)のN−エチルピペリジンを触媒として添加し、さらに1時間攪拌を続ける。水相を除去した後、有機相をリン酸で酸性化し、中性化して塩がなくなるまで蒸留水で洗浄する。次に、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し一晩蒸発によって濃縮する。残留物を次に、再度80℃で8時間ウォーターポンプで真空を施すことで乾燥する。
【0071】
相対溶液粘度は1.218である。ガラス転移温度はDSCによって決定され:157℃であった。
【0072】
(実施例5(比較例))
【化14】

【0073】
Tg[℃]:145℃
ηrel:1.235
【0074】
(実施例6(比較例)):マクローロン(Makrolon)2600(バイエル・マテリアルサイエンスAG(Bayer Materialscience AG)製のBPAに基づく芳香族線形ポリカーボネート。
【0075】
(実施例7(比較例)):APEC2000(バイエル・マテリアルサイエンスAG(Bayer Materialscience AG)製のビスフェノールTMCおよびBPAに基づく芳香族線形コポリカーボネート。
【0076】
(実施例8(比較例)):マクローロン(Makrolon)3103(バイエル・マテリアルサイエンスAG(Bayer Materialscience AG)製のBPAに基づく芳香族線形ポリカーボネート。
【0077】
(実施例9(比較例)):APEC1895(バイエル・マテリアルサイエンスAG(Bayer Materialscience AG)製のビスフェノールTMCおよびBPAに基づく芳香族線形コポリカーボネート。
【0078】
(試験)
(アンモニア性試験溶液に対する実施例4からのコポリカーボネートの試験)
本試験溶液は、調剤薬の有効成分(たとえば、静脈内に導入される麻酔薬、カルシウム拮抗剤、抗痙攣薬、抗不整脈薬、移植医療用カルシニューリン抑制剤、または一般的には脂質含有エマルジョン)を表し、これらは分子中にアミン性基/NH官能基を有し、医療技術でポリマー状成分と接触することになるものである。
【0079】
アンモニア耐性試験では、4mmの層厚のポリカーボネートから成るステップ状プラークを完全にアンモニア性水溶液(10重量%)に浸漬する。それぞれ様々な時間、この試験溶液に暴露した後に(表1参照)、試験片を取り出し水で洗浄し、乾燥後に曇りを測定する。
【0080】
曇りはASTM D1003−00に従って広角光散乱によって決定される。データを%Haze(H)で記載し、値が低いほど曇りが低いことを表し、したがって望ましい。
【0081】
【表1】

【0082】
比較例の試験片に比べて、本発明のコポリカーボネートから成る試験成形物での光学測定値は、様々な時間、試験溶液に暴露した後に、曇りに関して著しく向上した安定性を示している。
【0083】
(表面硬度の測定)
コポリカーボネートを乾燥オーブン中で120℃で一晩予備乾燥する。次に、ポリマーを塩化メチレンに溶解し、直径5cmの小皿に注ぐ。溶媒を蒸発除去し、残ったポリマーを次に、真空乾燥オーブン中で120℃の条件に置いた。皿からポリマーを取り出し、直径5cmで厚さ約1〜1.5mmの試験ディスクを得る。
【0084】
表面硬度を原子間力顕微鏡AFM(デジタル・インスツルメンツ・ナノスコープ(Digital Instruments Nanoscope)によって小型プラークについて測定し;ナノインデント試験(nanoindent−test)ヘッド(ハイジトロン(Hysitron))内のダイアモンド針をポリマー表面に押し付けるのに使用される力(80μN)、針のスキャン速度(1Hz)、およびさらには測定領域の大きさ(30×30μm;256ラインでスキャン)を、ここでは予め設定し、各場合、スキャニング処理によって試験片表面から機械的に取り除かれた体積(材料内の窪み)を、依存性のある変数としてμmで決定し、したがってこれが表面硬度についての測定単位となる。この体積が増えると、各コポリカーボネート材料の表面の柔らかさが増す。したがって体積値が小さいほど、表面硬度が改良されたことを示す。表2は本発明のコポリカーボネートについて、さらには比較例について測定された値を挙げたものである。
【0085】
【表2】

【0086】
本発明の、ビスフェノールTMCとジメチルBPAから成るコポリカーボネートの実施例(実施例4)は、比較例(実施例5)よりここでは著しく低い体積値を示している。したがって、本発明のコポリカーボネートの表面硬度は先行技術に比べて著しく改良された。
【0087】
(研磨試験)
磨耗(研磨)耐性を、砥石法(DIN53 754)によって、散乱光の量の増加によって、決定する。CS−10Fキャリブライズ(Calibrase)砥石(タイプIV)を備えるテーバ(Taber)5151研磨装置を用い、砥石当たり500gの荷重を印加した。曇り値を表3に示すサイクル回数の後に測定し、ここでは低い値が良好な研磨耐性を意味する。





















【0088】
【表3】

【0089】
テーバ試験では、本発明のコポリカーボネート(実施例4)は、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート(実施例8)だけでなく、ビスフェノールA/ビスフェノールTMCに基づくコポリカーボネートよりも優れていることを表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式
【化1】

(ここで、R1部分は互いに独立してC〜C−アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルであり、
nは1、2または3であり、かつ
R2部分は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチルおよび非常に特に好ましくはメチルである)
を有する化合物からなる群からの少なくとも1つの化合物、および
b)一般式
【化2】

(ここで、R3部分は互いに独立して、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、非常に特に好ましくはC−アルキルであり、かつ
R4部分は互いに独立して、H、線形または分岐C〜C10−アルキル、好ましくは線形または分岐C〜C−アルキル、特に好ましくは線形または分岐C〜C−アルキルである)
を有する化合物からなる群からの少なくとも1つの化合物
から選択されるジフェノール化合物の組み合わせを含有するコポリカーボネート。
【請求項2】
一般式(1a)のジフェノールから選択されるジフェノールを、(使用されるジフェノールの量に基づいて)0.1〜80mol%含有する請求項1に請求されるコポリカーボネート。
【請求項3】
一般式(1a)のジフェノールから選択されるジフェノールを、(使用されるジフェノールの量に基づいて)5〜75mol%含有する請求項1または2に請求されるコポリカーボネート。
【請求項4】
一般式(1a)のジフェノールは一般式(2a)のジフェノール
【化3】

である請求項1〜3のいずれかに請求されるコポリカーボネート。
【請求項5】
一般式(1b)のジフェノールは一般式(2b)のジフェノール
【化4】

である請求項1〜4のいずれかに請求されるコポリカーボネート。
【請求項6】
一般式(5a)のジフェノール
【化5】

(ここで、RおよびRは互いに独立して水素、C〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、ハロゲンまたはそれぞれ任意に置換されたアリールまたはアラルキルであり、
Xは、単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、またはC〜C−シクロアルキリデンであり、これはC〜C−アルキルで置換されてもよく、またはXはC〜C12−アリーレンであり、これは任意にヘテロ原子を含有するさらなる芳香族環と縮合してもよい)
をも含有する請求項1に請求されるコポリカーボネート。
【請求項7】
式(5a)のジフェノールが2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)であることを特徴とする請求項6に請求されるコポリカーボネート。
【請求項8】
その溶液粘度ηrel=1.10〜1.35であることを特徴とする請求項1に請求されるコポリカーボネート。
【請求項9】
成形物、押出し物、ホイル、ホイルラミネート、および共押出し層を製造するための請求項1〜7のいずれかに請求されるコポリカーボネートの使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに請求されるコポリカーボネートから得られる成形物、押出し物、ホイルまたはホイルラミネート。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに請求されるコポリカーボネートから得られる1以上の共押出し層を備える押出し物、特にカードまたはホイル。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに請求されるコポリカーボネートと熱可塑性ポリマーとの混合物。
【請求項13】
ジフェノールとして、式(1a)の1以上の化合物と式(1b)の1以上の化合物とから選択される化合物の組み合わせを用いることを包含する、界面法または溶融エステル交換法によって請求項1〜8のいずれかに請求されるコポリカーボネートを製造する方法。
【請求項14】
請求項10または11に請求される成形物、押出し物、ホイルまたはホイルラミネートを備えるカード、電気または電子装置でのキーボード、レンズ、スクリーン/ディスプレイカバー、ポータブルマルチメディアデバイス、フラットスクリーンまたはその他ハウジング、ハウジング部品、またはフレーム。
【請求項15】
請求項10または11に請求される成形物、押出し物、ホイルまたはホイルラミネートを備える医療用途用品または医療技術における製品。

【公表番号】特表2012−520906(P2012−520906A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500119(P2012−500119)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001564
【国際公開番号】WO2010/105769
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】