説明

改良された耐薬品性を有するガラス物品

ガラスの本体中に部分的に組み込まれた粒子を含むガラス物品において、粒子が少なくとも一種の化学補強剤を含むことを特徴とするガラス物品。粒子は酸化アルミニウム(III)などの無機化合物から形成されていることが好ましい。表面は0.02〜20重量%の酸化アルミニウム(III)で濃縮されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知のガラス物品と比較して高められかつ改良された耐薬品性を有するガラス物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、保護処理を受けないなら、好ましくない環境条件の影響下で、特にアルカリ性pHの水性媒体において腐食しうることが知られている。ガラスがソーダライムガラスであるとき、Na及び少ないがKのようなアルカリ金属カチオンがガラスの表面近くに存在するときに放出され、周囲環境、例えば湿分又は表面水の存在下で溶解されうる。この現象を制限する様々な方法が提案され、例えばガラス物品の表面の近くのこれらのイオンを消失するための処理が提案されている。この方法は、表面近くの薄い領域中のナトリウム及び/又はカリウム含有量を除去又は大きく減少するために好適な化学剤(例えばSO)でガラスの表面を処理することからなる。
【0003】
しかしながら、この技術の効果は、表面の近くのNa及びKのイオンの消失処理によって作られる濃度勾配によって起こされるガラス物品の芯から来るNa及びKイオンの遅い拡散の結果として時間的に制限されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、改良された耐薬品性をガラスに与えることによってこれらの欠点を克服するものであり、その耐薬品性は、様々な環境条件下で、おそらくアルカリ水性媒体中で安定であり、かつ長期間の使用にわたって耐久性を有するものである。さらに、改良された耐薬品性を有するこのガラスは、Na及び/又はKイオンを消失するための処理をもはや受けないか、又は逆にそれは、その耐薬品性をさらに高めるNa及び/又はKイオンを消失するための相補的な処理を受けることができる。
【0005】
これに基づいて、本発明は、請求項1に規定されたガラス物品に関する。
【0006】
従属請求項は、本発明の他の可能な実施形態を規定し、その幾つかが好ましい。
【0007】
本発明は、添付図面(縮尺通りでない)を参照してより詳細にかつ限定されない方法で記載されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の特別な実施形態によるガラス物品の断面を示す。
【0009】
【図2】図2は、本発明の別の特別な実施形態によるガラス物品の断面を示す。
【0010】
【図3】図3は、本発明のさらに特別な実施形態によるガラス物品の断面を示す。
【0011】
【図4】図4は、本発明によるガラス物品の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【0012】
【図5】図5は、本発明によるガラス物品の別の透過型電子顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるガラス物品は、様々なカテゴリーに属することができる無機ガラスから作られる。従って、無機ガラスは、ソーダライムガラス、硼酸ガラス、鉛ガラス、例えば少なくとも一種の無機色素、酸化化合物、粘度調整剤及び/又は溶融助剤のような一種以上の添加剤をその本体の全体にわたって均一に分布して含有するガラスであることができる。無機ガラスはまた、その表面硬さを改良することを意図された熱強化工程を受けることができる。好ましくは、本発明によるガラス物品は、透明な又は均一に着色されたソーダライムガラスから作られる。表現「ソーダライムガラス」は本明細書では広義で使用され、以下の基本成分(ガラスの全重量の百分率で表示)を含有するガラスを示す。
SiO 60〜75%
NaO 10〜20%
CaO 0〜16%
O 0〜10%
MgO 0〜10%
Al 0〜5%
BaO 0〜2%
BaO+CaO+MgO 10〜20%
O+NaO 10〜20%
【0014】
それはまた、一種以上の添加剤をさらに含有しうる上述の基本成分を含有するガラスを示す。
【0015】
一般に、ガラス物品はまた、少なくとも耐薬品性が改良されることになる表面に、本発明の処理を受ける前にいかなる層によっても被覆されていないことが好ましい。
【0016】
本発明によるガラス物品は、本発明の処理後にいかなる層によっても被覆されることができる。層は、本発明に従って処理された表面上に、又は本発明に従って処理された面とは反対の表面上に付着されることができる。
【0017】
本発明によるガラス物品は改良された耐薬品性を持つ。これは、既知のガラスと比べて改良された化学薬剤に対する耐性を意味するものとして理解されるべきである。化学薬剤は、溶解又は懸濁された状態で雰囲気中で通常見出される汚染物質をおそらく含有する雨水、並びにおそらく様々な有機又は無機溶媒の存在下でアルカリ化、酸化、及び/又は酸化−還元化学薬剤を含有するおそらく水性の合成溶液のような雰囲気薬剤であるものとして理解される。本発明による物品の耐性は、数年に及びうる期間の化学薬剤の長期の影響下の腐食又は重量損失の不存在によって、又は少なくともこの腐食の有意な減少又は物品の使用時の重量損失の無視できる値への低下によって示される。
【0018】
本発明によれば、ガラス物品は、少なくとも一種の化学補強剤を含有する。この化学補強剤は、物品のガラス本体の組成において完全に異質の成分を含みうる化学組成物である。逆に、変形例では、それはまた、物品のガラス本体の組成において既に存在する一種以上の化学化合物を含むことができる。
【0019】
本発明によれば、化学補強剤は、物品の本体に部分的に含まれる粒子から形成される。ガラスの本体中に部分的に含められる粒子は、ガラスの本体内にありかつガラスの本体の外側にある粒子を意味するものとして理解される。換言すれば、粒子はガラスによって完全に包囲されない。
【0020】
もしガラス物品が図1の場合のように本発明による処理の前にいかなる層によっても被覆されないなら、粒子(2)はガラス(1)においてそれらの容積の一部分を持ち、外部媒体においてそれらの容積の他の部分を持つ。
【0021】
ガラス物品が本発明による処理前にいかなる層によっても被覆されず、本発明によって表面処理された本発明の特別な実施形態が図2に示されている。この場合において、本発明による粒子(3)はガラス(1)においてそれらの容積の一部分を持ち、前記層(4)の材料においてそれらの容積の他の部分を持つ。あるいは、本発明による粒子(5)はガラス(1)においてそれらの容積の一部分を持ち、それらの容積の他の部分は前記層(4)と外部媒体の間で分配されている。
【0022】
本発明による各粒子は、化学補強剤の単一化学化合物から形成される。変形例では、それはまた、幾つかの異なる化学補強剤の組成物から形成されることができる。この後者の場合において、組成物は必ずしも均一でない。
【0023】
本発明の物品の好ましい特徴によれば、粒子は少なくとも一種の無機化合物から形成される。この特徴によれば、各粒子は化学補強剤の少なくとも一種の無機化学化合物によって形成される。ガラス物品の腐食又は重量損失を除去又は低減するいかなる無機化学化合物も好適でありうる。
【0024】
しかしながら、本発明によるガラス物品では、粒子を形成する無機化学化合物は酸化物、窒化物、炭化物、及び少なくとも二種の酸化物及び/又は窒化物及び/又は炭化物の組み合わせから選択されることが一般に好ましい。
【0025】
もし無機化合物がマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの酸化物から、又はスカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズの酸化物、窒化物および炭化物、及び少なくとも二種のこれらの化合物の組み合わせから選択されるなら、さらに好ましい。
【0026】
もし無機化合物がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素及びスズの酸化物、及び少なくとも二種のこれらの化合物の組み合わせから選択されるなら、さらに一層好ましい。
【0027】
ガラスの化学的耐久性を有意に強化する全てのこれらの化合物のうち、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素が最良の結果を与える。酸化アルミニウム(III)(Al)は、単独で使用されるとき、極めて重要な化学補強剤であることがわかった。さらに、酸化ケイ素(IV)(SiO)はまた、単独で使用されるとき、粒子によって効果的に補強されたガラスを生成した。
【0028】
本発明によれば、粒子を含む無機化学化合物が物品のガラスの本体の組成物に既に存在する場合には、前記化合物によってガラスの表面濃縮を規定することができる。ガラスの本体に既に存在する無機化合物による表面濃縮はガラスの全重量の百分率割合として表示され、ガラス物品の芯の方向に表面から100μmの最大深さに延びる領域における前記化合物の重量百分率と物品の芯における前記化合物の重量百分率の間の差として規定される。
【0029】
本発明によれば、もし選択された無機化合物が例えば酸化アルミニウム(III)であるなら、酸化アルミニウムによる表面濃縮は0.02重量%に等しいか又はそれより大きく、好ましくは0.05重量%に等しいか又はそれより大きい。さらに、本発明による酸化アルミニウムによる表面濃縮は20重量%より低く、好ましくは15重量%より低い。
【0030】
本発明によれば、もし選択された無機化合物が例えば酸化ケイ素(IV)であるなら、酸化ケイ素による表面濃縮は0.02重量%より大きく、好ましくは0.05重量%より大きい。さらに、本発明による酸化ケイ素による表面濃縮は25重量%より低く、好ましくは20重量%より低い。
【0031】
本発明の物品の別の特別な特徴によれば、粒子は5nm以上、好ましくは50nm以上のサイズを有する。さらに、粒子は1500nm以下、好ましくは1000nm以下のサイズを有する。サイズは粒子の最大寸法を意味するものとして理解されるべきである。
【0032】
本発明の別の好ましい特徴によれば、粒子は少なくとも部分的に結晶化される。即ち、それらの重量の少なくとも5%の割合が結晶によって形成される。結晶は幾つかの異なる結晶系に属しうる。変形例では、それらはまた、全て同じ結晶系を持つことができる。好ましくは、混在物の少なくとも50重量%は結晶形態である。もし全ての粒子が結晶形態であるなら最も好ましい。
【0033】
本発明の物品の特別な特徴によれば、粒子の形状は準球形状である。準球形状は、三次元形状であり、その容積がこの準球形状を有する物体の最大寸法に等しい直径を有する球の容積に近いものを意味する。もし粒子の容積が粒子の最大寸法に等しい直径を有する球の容積の少なくとも60%に等しいなら、好ましい。もし粒子の容積が粒子の最大寸法に等しい直径を有する球の容積の少なくとも70%に等しいなら、より好ましい。
【0034】
ガラスの本体(1)内に部分的に組み込まれる粒子(2)に加えて、本発明によるガラス物品は粒子(6)を含み、それはガラスの本体(1)内に完全に組み込まれかつガラスの表面の下のそこから近い距離に見出される。この特別な実施形態は図3に示される。
【0035】
上述の全ての特別な形状及び特徴と適合しうる本発明の物品の別の特別な実施形態によれば、本発明によるガラス物品はまた、物品の表面上に堆積されかつそこに付着された粒子を含む。
【0036】
上述の全ての特別な形状及び特徴と同様に適合しうる本発明の物品のさらに特別な実施形態によれば、ガラス物品は、Naイオンを消失するための相補的処理に供されることができ、それはガラスの表面の近くの薄い領域においてナトリウム及び/又はカリウム含有量を除去又は大きく低減することを可能にする。消失処理を受けたガラス物品は、ガラス物品の芯内のナトリウム含有量より低いガラスの表面近くのナトリウム含有量を有する。もし消失処理が、二酸化硫黄(SO)を使用してガラスの表面を処理することからなる既知の方法で達成されるなら、好ましい。二酸化硫黄はガラスの表面にNaイオンを輸送し、この同じ表面上に硫酸ナトリウムの層を形成する。
【0037】
本発明の物品の別の実施形態によれば、本発明による物品のガラスは一枚の板ガラスのシートによって形成される。
【0038】
この実施形態によれば、板ガラスは例えばフロートガラス、機械引きガラス(drawn glass)又はロール成形型ガラス(patterned glass)であることができる。
【0039】
さらに、この実施形態によれば、板ガラスシートは、片面又はその両面に本発明の処理を受けることができる。ロール成形型ガラスのシートの片面に処理する場合において、本発明による処理は、もしシートが単一面にロール成形されるならシートの非ロール成形面に行なうことが有利である。
【0040】
本発明によるガラス物品は一枚のソーダライム板ガラスのシートから形成されることが好ましい。
【0041】
本発明による物品は、粒子を生成して前記物品のガラスの本体内にその粒子を部分的に組み込むことができるいかなる方法によっても得られることができる。
【0042】
特に、本発明は、(a)粒子の生成、(b)前記物品の表面上への粒子の付着、及び(c)粒子がガラス中に組み込まれるような方法での粒子及び/又は前記表面へのエネルギーの供給を含む方法によって得られる上の記載に対応する物品に関する。
【0043】
ガラス物品の表面上の粒子の形成及び付着は、以下のような既知の方法を使用して一工程で同時に実施されることができる。
− 化学蒸着(即ち、CVD):改良化学蒸着法(即ちMCVD)が本発明に使用されることができる。この改良法は、プリカーサがガラスの表面上よりむしろ気相で反応する点で従来法とは異なる。
− 例えばゾルゲル沈着のような湿式沈着、又は
− 液体、気体又は固体のプリカーサから出発するフレーム溶射。
【0044】
特に特許出願FI954370に開示されかつ実施例で引用されるフレーム溶射では、粒子は、燃焼が固体粒子を形成するために行なわれる火炎中に移動されたエアロゾルとして少なくとも一種の化学プリカーサの溶液を噴射することによって発生される。これらの粒子はそのとき火炎の縁の近くにある表面上に直接付着されることができる。この方法は特に良好な結果を与える。
【0045】
変形例では、ガラス物品の表面上の粒子の形成及び付着は二つの工程で連続して実施されることができる。この場合において、粒子はまず、蒸気法、湿式法(ゾル−ゲル、沈殿、熱水合成・・・)を使用して又は乾式法(機械的粉砕、機械化学合成・・・)を使用して固体の形態で又は液体中の懸濁物の形態で発生される。粒子をまず固体の形態で発生させることができる方法の例は、燃焼化学蒸気縮合(即ち、CVCC)として知られる方法である。この方法は、燃焼反応を受ける火炎中でプリカーサ溶液を蒸気相に変換して粒子を形成し、次いで収集することからなる。
【0046】
最初に発生される粒子は、様々な既知の方法を使用してガラス物品の表面に移動させることができる。
【0047】
ガラスの本体中への粒子の拡散/部分的組み入れのために必要なエネルギーは、例えばガラス物品を適切な温度に加熱することによって供給されることができる。
【0048】
本発明によれば、ガラスの本体中への粒子の拡散/部分的組み入れのために必要なエネルギーは、粒子の付着時又は付着後に供給されることができる。
【実施例】
【0049】
以下の実施例は本発明を示すが、いかなる方法でもその範囲を制限することは意図しない。
【0050】
実施例1(本発明による)
20cm×20cmの寸法の4mmの厚さの透明なソーダライムフロートガラスの一枚のシートを流水、脱イオン水、及びイソプロピルアルコールで連続して洗浄し、次いで乾燥した。
【0051】
水素及び酸素を直線状バーナ中に供給し、前記バーナの出口に火炎を発生した。使用したバーナは20cmの幅を有し、溶液の供給のために五つのノズルを有していた。洗浄されたガラスシートは、まず炉内で770℃の温度に加熱され、この温度で次いでガラスシートの上に150mmの距離にあるバーナの下を約4m/分のスピードで通過された。ノズルによって火炎中に供給された溶液は、メタノールに溶解された硝酸アルミニウム9水和物、Al(NO・9HOを含有する(アルミニウム/メタノール=1/22の重量比の希釈、溶液流量=100ml/分)。かくして酸化アルミニウムの粒子が火炎中に発生され、ガラスシートの表面上に集められた。ガラスシートは次いで周囲空気で冷却された。
【0052】
上記のように処理されたガラスシートは、走査型透過電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、X線蛍光分光法、X線光電子分光法、二次イオン質量分光法、及び電子線回折によって分析された。
【0053】
実施された分析は、アルミニウムがガラスの本体中に部分的に組み込まれた酸化アルミニウム粒子の形で組み込まれていることを証明した。粒子は準球形状であり、200〜1000nmで変動するサイズを有していた。粒子は、大部分が結晶性であった。酸化アルミニウムによる表面濃縮は0.9重量%であった。
【0054】
図4は、処理されたガラスシートの断面の透過型電子顕微鏡によって得られた画像を示す。それはガラスの本体中に部分的に組み込まれた酸化アルミニウム粒子を示す。ガラスが画像の上断面に位置され、一方外部媒体は下断面に位置される。この粒子は準球形状であり、約250nmのサイズを有する。
【0055】
処理されたガラスシートの加速エージングを可能にする気候室分析が行なわれ、ガラスの耐薬品性についての酸化アルミニウム粒子の部分的な組み入れの効果を示した。同一であるが、未処理のガラスシート(参照)と比較がなされた。
【0056】
気候室では、処理ガラスシートと参照シートは、98%の一定相対湿度で45℃〜55℃の温度サイクルに22日間までさらされた。1サイクルの期間は正確に1時間50分であり、1日あたり12サイクルがなされた。1日たったら、温度は30分で45℃から25℃に低下され、25℃で1時間維持された。温度は次にもう一度30分間で25℃から45℃に高められ、温度サイクルを再び開始した。ガラスシートは正確な時間経過後に検査された。
【0057】
気候室で2日後、参照未処理ガラスシートは腐食の兆候を示した。上記の方法を使用して処理されたガラスシートは気候室において22日後に腐食の兆候を示したにすぎなかった。従って、ガラスの本体中に部分的に組み込まれた酸化アルミニウム粒子の存在は、改良された耐薬品性を有するガラスを製造することを可能にする。
【0058】
実施例2(本発明による)
本発明によるガラス物品はソーダライムのロール成形型板ガラスの連続製造のためのプラントで製造された。このプラントは溶融炉、キャスト用装置(rolling machine)及びレアを含む。溶融状態のガラスをリボン形態で溶融炉からキャスト用装置内に流し、そこでそれは二つの重ねられたローラ間を通された。ローラの一方は平滑であり、他方は印刷パターンで彫刻されていた。この印刷パターンは次いで、水平リボンの下方に向けられたガラスの単一面上に再現された。このキャスト用装置を通過した後、ガラスリボンは4mmの平均厚さ(3.5〜4.5mm)を有していた。それは次いで約3.9m/分の一定速度及び725℃の温度で2m幅の線状バーナの方に移動した。
【0059】
バーナは、前記バーナの出口に火炎を発生するために水素及び酸素を供給され、ガラスシートの非ロール成形側の上に120mmの距離に位置された。メタノールに溶解された硝酸アルミニウム9水和物、Al(NO・9HOを含有する溶液(アルミニウム/メタノール=1/20の重量比の希釈、流量=1000ml/分)を火炎に供給した。かくして、酸化アルミニウム粒子はこの火炎中に発生され、ガラスシートの表面上に集められた。
【0060】
ガラスシートは最後にレアの方に移動し、そこでそれはロール成形型板ガラスのために通常使用される条件で制御された方法で冷却された。
【0061】
上記のように処理されたガラスシートは、実施例1で述べられたものと同じ技術を使用して分析された。
【0062】
実施された分析は、アルミニウムがガラスの本体中に部分的に組み込まれた酸化アルミニウム粒子の形で組み込まれていることを示した。粒子は準球形状であり、170〜850nmのサイズを有していた。粒子はまた、大部分が結晶性であった。酸化アルミニウムによる表面濃縮は0.6重量%であった。
【0063】
図5は、処理されたガラスシートの断面の透過型電子顕微鏡によって得られた画像を示す。それはガラスの本体中に部分的に組み込まれた酸化アルミニウム粒子を示す。ガラスが画像の上断面に位置され、一方外部媒体は下断面に位置される。この粒子は準球形状であり、約430nmのサイズを有する。
【0064】
さらに、上記のように処理されたガラスシートはまた、ガラスの本体中に完全に組み込まれかつ200〜670nmで変動するサイズを持つ粒子を含んでいた。これらの粒子はまた、大部分が結晶性である。
【0065】
気候室分析はまた、実施例1に使用されたものと同じ条件下で実施された。
【0066】
気候室で2日後、参照未処理ガラスシートは腐食の兆候を示した。上記の方法を使用して処理されたガラスシートは気候室において10日後に腐食の兆候を示したにすぎなかった。
【0067】
実施例3(本発明による)
20cm×20cmの寸法の4mmの厚さの透明なソーダライムフロートガラスの一枚のシートを流水、脱イオン水、及びイソプロピルアルコールで連続して洗浄し、次いで乾燥した。
【0068】
洗浄されたガラスシートをまず炉で1000℃の温度に加熱し、次いでこの温度で1000℃に加熱された空気の流れ(流速=60Nm/h)下で約4m/分のスピードで移動させ、その中にPlasmaChemによって供給されるもののような酸化アルミニウムのナノ粒子を注入した。使用された粒子は、5〜150nmで変化するサイズを有し、大部分が結晶化されていた。ガラスシートは次いで周囲空気中で冷却された。
【0069】
上記のように処理されたガラスシートは、実施例1で述べられたものと同じ技術を使用して分析された。
【0070】
分析は、酸化アルミニウム粒子がガラスの本体中に部分的に組み込まれていること、及びサイズ及び結晶性に関して得られた結果が空気流れ中に注入された粒子の出発特性と一致していることを示した。処理されたガラスシートはまた、ガラスの本体中に完全に組み込まれた粒子を含んでいた。酸化アルミニウムによる表面濃縮は2.5重量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの本体中に部分的に組み込まれた粒子を含むガラス物品において、粒子が少なくとも一種の化学補強剤を含むことを特徴とするガラス物品。
【請求項2】
粒子が少なくとも部分的に結晶化されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
粒子が完全に結晶化されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
【請求項4】
粒子が少なくとも一種の無機化合物から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項5】
無機化合物が酸化物、窒化物、炭化物、及び少なくとも二種の酸化物及び/又は窒化物及び/又は炭化物の組み合わせから選択されていることを特徴とする請求項4に記載のガラス物品。
【請求項6】
無機化合物がマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム及びスズの酸化物、及び少なくとも二種の前述の化合物の組み合わせから選択されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のガラス物品。
【請求項7】
無機化合物がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素及びスズの酸化物、及び少なくとも二種の前述の化合物の組み合わせから選択されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項8】
無機化合物が酸化アルミニウム(III)であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項9】
0.02重量%に等しいか又はそれより大きく、かつ20重量%に等しいか又はそれより小さい酸化アルミニウム(III)による表面濃縮を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項10】
無機化合物が酸化ケイ素(IV)であることを特徴とする請求項7に記載のガラス物品。
【請求項11】
粒子が準球形状であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項12】
粒子が5〜1500nmの範囲のサイズを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項13】
物品の芯内のナトリウム含有量より低いガラスの表面のナトリウム含有量を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項14】
粒子が少なくとも一種のプリカーサから出発して火炎中で発生される方法によって製造されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のガラス物品。
【請求項15】
ガラス物品がソーダライム板ガラスのシートから形成されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のガラス物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−505817(P2012−505817A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531513(P2011−531513)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063651
【国際公開番号】WO2010/046336
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(510191919)エージーシー グラス ユーロップ (27)
【Fターム(参考)】