説明

改良地盤

【課題】周辺地盤を垂直方向にも伝播する地震波に対する対策として有効で、しかも免振構造、制振構造又は制振構造等を用いた場合に効果が得られる改良地盤を提供する。
【解決手段】周辺地盤5より相対的に高い剛性の鉛直面211を水平方向に交差させて形成される多数の単位空間212から構成される高剛性構造物21を、卓越周波数の障害波による振動のエネルギー重心に相当する深さDcに埋設し、地上構造物1の基礎11から高剛性構造物21までの深さの範囲を上層3とし、高剛性構造物21の深さの範囲を下層2としてなる改良地盤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上構造物に対して害を与える地震波、交通振動、建設振動、工場事業所振動等の障害波を減衰させる改良地盤に関する。
【背景技術】
【0002】
障害波のうち、周辺地盤の地中を垂直方向にも伝播する地震波に対しては、地上構造物が建設される地盤が堅固であることを条件として、地上構造物自体に耐震性を付与させることで対応する。具体的には、地上構造物の基礎に免振機構を取り付けた免振構造、屋根裏にマスーダンパーを取り付けた制振構造、壁鉛直面に斜交部にオイルダンパーを取り付ける制振構造等が用いられる。これら免振構造、制振構造又は制振構造等は、地上構造物自体が振動することを抑制又は低減する働きを持っている。
【0003】
障害波のうち、主に周辺地盤の地表面付近を水平方向に伝播する交通振動、建設振動、工場事業所振動等に対しては、例えば地上構造物の直下又は周辺に、複数の柱状体から構成される固結地盤を造成する対策が開示されている(特許文献1)。また、複数の柱状体を平面視六角形に並べてセル構造を構成し、前記セル構造内に軟質の廃タイヤシュレッドを中詰めする対策も開示されている(特許文献2)。ここで、前記セル構造は、プレキャストコンクリート製のブロックとしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2764696号公報
【特許文献2】特許第4222812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2が開示する対策は、主に周辺地盤の地表面付近を水平方向に伝播する交通振動、建設振動、工場事業所振動等の障害波に対する対策であり、周辺地盤を垂直方向にも伝播する地震波(水平成分及び垂直線分を含む)を考慮していない。これから、特許文献1及び特許文献2が開示する対策は、障害波のうち、地震波の対策になり得ないか、少なくとも不十分と考えられる。この場合、地盤が堅固であれば、免振構造、制振構造又は制振構造等により地上構造物自体の振動を抑制又は低減することもできるが、地盤が軟弱であると、前記働きは発揮されない。つまり、特許文献1及び特許文献2が開示する対策は、地盤を耐震的に安定に改良するものではない、と言える。
【0006】
しかし、地上構造物が建設される地盤が軟弱である場合になされる改良は、地上構造物の基礎を直接載せる地表面から一定深さまでを一体の改良地盤とするものや、支持杭を打設して地盤補強した改良地盤とするものであった。これらの改良地盤では、地上構造物は地耐力の得られた改良地盤に基礎を構築し、支持杭が前記基礎から降ろされるため、地上構造物は堅固になった改良地盤と一体化して慣性力を増し、かえって地震波が地上構造物に伝播されやすくなる問題が生ずる。これでは、地上構造物が建設される地盤が堅固になったとしても、免振構造、制振構造又は制振構造の免震効果等は期待できない。
【0007】
以上から、軟弱な地盤に地上構造物を構築する場合、地盤を堅固に改良しなければそもそも免振構造、制振構造又は制振構造等を利用できないが、従来の改良地盤では地上構造物と一体化してしまい、やはり免振構造、制振構造又は制振構造の免震効果等を得ることができない。そこで、周辺地盤を垂直方向にも伝播する地震波に対する対策として有効で、しかも免振構造、制振構造又は制振構造を用いた場合に免震効果等が得られる改良地盤を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、周辺地盤より相対的に高い剛性の鉛直面を水平方向に交差させて形成される多数の単位空間から構成される高剛性構造物を、卓越周波数の障害波による振動のエネルギー重心(地震の主要動における深さ方向の振動振幅分布の重心)に相当する深さに埋設し、地表面又は地上構造物の基礎から高剛性構造物までの深さの範囲を上層とし、高剛性構造物の深さの範囲を下層としてなる改良地盤である。本発明の改良地盤は、地上構造物(家屋やビルのほか、道路や橋も含む)への障害波の伝播を防止するため、前記地上構造物の直下に構成されることが望ましい。しかし、後述するように、本発明の改良地盤は、周辺地盤の地表面付近を水平方向に伝播する交通振動、建設振動、工場事業所振動等の障害波に対しても有効であることから、地上構造物の直下からずれた位置又は地上構造物の周辺に構成してもよい。
【0009】
「卓越周波数の障害波(以下、卓越障害波Weと呼ぶ。)による振動のエネルギー重心に相当する深さ(以下、重心深さDcと呼ぶ。)」は、本発明の改良地盤を構築する前の施工対象地盤における卓越障害波Weが、前記施工対象地盤を振動させる際の中心となる深さを意味する。例えば施工対象地盤に堅固な支持層が存在した場合、地表面から支持層までの深さが卓越障害波の波長(以下、卓越波長λeと呼ぶ。)の1/4に相当し、エネルギー重心は地表面から支持層までの深さの1/3となるから、結果として重心深さDcは地表面から卓越波長λeの1/12の深さとなる。
【0010】
高剛性構造物は、周辺地盤より剛性が高い鉛直面、例えば金属製、コンクリート製又は樹脂製の面に囲まれた平面視三角形、平面視四角形や平面視六角形等の柱状空間である単位空間を水平方向に並べた構造物である。下層の深さ(厚み)D1は、重み平均により平坦化された高剛性構造物の仮想上面と仮想下面との距離に等しい。本発明は、前記仮想上面と仮想下面との距離を高剛性構造物の厚みと呼ぶ。高剛性構造物の厚みは、卓越波長λeの1/10倍〜10倍を目安とする。重心深さDcに高剛性構造物を埋設するとは、前記高剛性構造物の厚みの範囲に重心深さDcが収まるように、高剛性構造物を埋設することを意味する。重心深さDcは、高剛性構造物の仮想上面又は仮想下面に一致してもよい。高剛性構造物の水平方向の大きさは、直交する2方向(W1、W2)それぞれの外縁間距離(平面視形状の外縁を結ぶ距離)がいずれも卓越波長λeの1/4倍〜10倍を目安とする。また、単位空間の水平方向の大きさは、対向する鉛直面又は鉛直面の連結部分の距離Aの大きい方が卓越波長λeの1/20倍〜2倍を目安とする。
【0011】
本発明の改良地盤は、上層及び下層それぞれの作用により、前障害波が地表面又は地上構造物に伝播することを抑制又は防止する。下層は、障害波の低周波成分(本発明では10Hz未満、特に地震波の場合は数Hz未満)伝播しにくい高剛性構造物により、障害波(特に地震波)の低周波成分を減衰させるハイパスフィルターとして働く。高剛性構造物の単位空間は、必ずしも中実にしなくてもよいが、後述するように、現地土等を充填することにより障害波の高周波成分(本発明では10Hz以上、特に地震波の場合は数Hz以上)を減衰させる。上層は、相対的に下層より剛性が低いため、下層を通過した障害波の高周波成分を減衰させる。ここで、上層の深さ(厚さ)D2は、重み平均により平坦化された地上構造物の仮想下面から上記高剛性構造物の仮想上面までの距離であり、重心深さDc以下となるため、障害波の低周波成分を伝播しにくくなっており、下層を通過してきた地震波の低周波成分も減衰させる。これは、周辺地盤の地表面付近を水平方向に伝播する交通振動、建設振動、工場事業所振動等を減衰させる働きでもある。こうして、本発明の改良地盤は、様々な障害波を減衰させるが、剛性の高い下層は相対的に剛性の低い上層により地上構造物と隔離されるため、地上構造物と下層との一体化が防止されており、免震構造等を有効に利用できる。
【0012】
上層は、現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して高剛性構造物上に堆積させることにより構成する。本発明に言う粒状物とは、大きさが中礫以下の定形物又は不定形物の集合物を意味し、上層を形成するため、高剛性構造物上に堆積させた際、塊状化することなく、流動性を保持できるものを指す。これから、本発明に適当な粒状物として、ゴムチップ(例えば廃タイヤシュレッド)や、アスファルト又はベントナイト等の粉砕物を例示できる。こうして現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して形成される上層は、障害波の高周波成分を構成要素(土粒子や粒状物の要素)相互の摩擦熱に変換し、減衰させる働きを有する。
【0013】
高剛性構造物は、現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して単位空間に充填する。粒状物は、上記上層を形成する粒状物と同じである。これから、高剛性構造物の単位空間から上層まで、同じ現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して形成できる。単位空間に充填した現地土、置換土又は粒状物は、上述の上層における働き同様、障害波を構成要素(土粒子や粒状物の要素)相互の摩擦熱に変換し、減衰させる働きを有する。ここで、高剛性構造物は、現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して単位空間に充填し、前記現地土、置換土又は粒状物に対して更に抵抗体を圧入すると、現地土、置換土又は粒状物と抵抗体との間で大きな摩擦が発生し、障害波の高周波成分をより減衰させることができる。既述したように、高剛性構造物はハイパスフィルターとして働くことから、前記高周波成分の減衰により、下層は総じてバンドパスフィルターとして働くことになる。単位空間を形成する鉛直面と、単位空間に充填する現地土等との間の波動インピーダンス(密度と伝播速度の積)の比は、2倍〜20倍とする。抵抗体は、コンクリート製や金属製の棒体を例示できる。
【0014】
下層は、地中内部に形成された堅固な人工地層であることから、元の地盤の軟弱度に応じて、次のように補強することが考えられる。すなわち、高剛性構造物は、高剛性構造物は、鉛直面から支持杭又は抵抗杭の一方又は双方を降ろして、下層を構成する。支持杭は支持層まで延びる杭を、抵抗杭は支持層まで延びない杭をそれぞれ意味する。同様に、高剛性構造物は、鉛直面の一部を下方に延長してもよい。この場合、単位空間を構成する鉛直面の一面又は一面の一部のみを下方に延長してもよいし、単位空間を構成するすべての鉛直面を下方に延長してもよい。更に、従来同様、地上構造物の基礎から支持杭又は抵抗杭を降ろす場合、高剛性構造物は、地上構造物の基礎から支持杭又は抵抗杭の一方又は双方を、単位空間に貫通させて降ろすとよい。この場合、支持杭又は抵抗杭は、既述した単位空間に圧入する抵抗体に相当する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の改良地盤は、周辺地盤を垂直方向にも伝播する地震波に対する対策として有効で、しかも免振構造、制振構造又は制振構造を用いた場合に免震効果等が得られる。本発明の改良地盤を構成する下層は、高剛性構造物によりハイパスフィルターとして働き、加えて単位空間に現地土等を充填することによりバンドパスフィルターとして働いて、特に地震波を減衰させる。そして、本発明の改良地盤を構成する上層は、下層を通過してきた地震波を減衰させる。また、下層の存在により深さが制限される上層は、交通振動、建設振動、工場事業所振動等の障害波を減衰させる。このように、本発明の改良地盤は、地表面又は地上構造物に伝播して害を与えると考えられる障害波のほとんどを減衰させる効果がある。
【0016】
上層を形成したり、高剛性構造物の単位空間に充填されたりする現地土、置換土又は粒状物は、障害波を摩擦熱に変換することで、下層を通過してきた障害波や周辺地盤の地表面付近を水平方向に伝播する障害波を減衰させる。現地土又は置換土は、従来の地盤の改良でも利用されており、本発明の改良地盤を安価かつ容易に実現する効果がある。このほか、現地土の利用は、無用な排土を出さない利点がある。また、粒状物は、単価が廉価で入手しやすいことから、本発明の改良地盤を安価かつ容易に実現する効果がある。抵抗体は、特に空間重点構造物の単位空間に充填した現地土等による障害波の減衰をより効率的にする効果がある。
【0017】
鉛直面を水平方向に交差させて形成する単位空間から構成される高剛性構造物は、工場で予め製造しやすくする。また、コンクリート製高剛性構造物の場合、例えば硬化剤液等を直接地中に噴射して鉛直面を作り出す方法(例えば特開2004-316397号参照)を用いて、直接地中に構築することもできる。鉛直面から支持杭又は抵抗杭を降ろした高剛性構造物は、支持層により安定に支持されたり、周辺地盤に対してより剛性が高められたりして、下層をより堅固な地層にする効果をもたらす。地上構造物の基礎から降ろした支持杭又は抵抗杭は、地上構造物の安定した支持のほか、高剛性構造物の単位空間に充填した現地土等の間で摩擦熱を発生させ、障害波をより効率的に減衰させる効果ももたらす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の改良地盤の一例を示す断面図である。
【図2】本例の改良地盤における地上構造物と高剛性構造物との関係を表す平面図である。
【図3】本例の改良地盤における高剛性構造物を表す斜視図である。
【図4】高剛性構造物から鉛直面を延ばし、抵抗杭を降ろした別例の図1相当断面図である。
【図5】本別例の改良地盤における高剛性構造物を表す図3相当斜視図である。
【図6】地上構造物の基礎から支持杭及び抵抗杭を降ろした更に別例の図1相当断面図である。
【図7】更に別例の改良地盤における高剛性構造物を表す図3相当斜視図である。
【図8】実施例(本発明の対策済み)及び比較例(無対策)の地震波に対するフーリエスペクトル図である。
【図9】実施例(本発明の対策済み)及び比較例(無対策)の地震波に対する応答スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。本発明の改良地盤は、図1に見られるように、地中深くに支持層4を有する軟弱な地盤(施工対象地盤)に対して構成される下層2及び上層3からなる二層構造で、周辺地盤5は前記軟弱な地盤のままである。地上構造物1は、例えば前記上層3に構築された基礎11上に建造される。下層2は、地上構造物1の基礎11の仮想下面から支持層4までの深さ(卓越波長λeの1/4)の1/3、すなわち重心深さDcを含む位置に埋められた高剛性構造物21の単位空間212に、現地土と粒状物との混合物213を充填して構成される。下層2の深さD1は、高剛性構造物21の厚みに等しく、卓越波長λeの1/10倍〜10倍である。上層3は、高剛性構造物21の上に堆積させた現地土と粒状物との混合物31から構成される。上層の3の深さD2は、地上構造物1の基礎11の仮想下面から埋設した高剛性構造物21の仮想上面までである。
【0020】
下層を構成する高剛性構造物21は、図2(図2中地上構造物1直下における混合物213の図示は省略)及び図3(図3中単位空間212に充填した混合物213の図示は省略)に見られるように、周辺地盤5より高い剛性の鉛直面211を組み付けて、多数の平面視六角形の単位空間212を形成したハニカム構造である。周辺地盤5より高い剛性の鉛直面211を組み付けて構成される。ここで、高剛性構造物21は、単位空間212の大きさAを卓越波長λeの1/20倍〜2倍、全体構造における長手方向の長さW1及び短手方向の長さW2を共に卓越波長λeの1/4倍〜10倍としている。図2に見られるように、高剛性構造物21は平面視外形が地上構造物1の基礎11を少なくとも含む大きさにされることから、前記全体構造における長手方向長さW1及び短手方向長さW2の要件は、通常充足される。
【0021】
本例は、高剛性構造物21の単位空間212に現地土と粒状物との混合物213を充填し、また同様な現地土と粒状物との混合物31を堆積させて上層3を構成する。混合物213及び混合物31は、同種又は異種の現地土と粒状物とを混合してもよいし、現地土と粒状物と混合割合を同じ又は変えてもよい(本例では、混合割合が異なるとして別符号を用いている。)。混合物213及び混合物31は、いずれも現地土相互、粒状物相互、そして現地土及び粒状物相互が障害波、とりわけ障害波の高周波成分によって振動し、前記障害波を摩擦熱に変換して減衰させる点で、働きは同様である。しかし、下層2は高剛性構造物21及び混合物213の組み合わせで構成されるのに対し、上層3は混合物31のみで構成されることから、混合物213と混合物31とは、同種又は異種の現地土と粒状物とを混合したり、現地土と粒状物と混合割合を変えたりすることになる。
【0022】
周辺地盤5に対する下層2の剛性をより高めるには、図4及び図5(図5中単位空間212に充填した混合物213の図示は省略)に見られるように、1つの単位空間212を囲む6面の鉛直面214を支持層5まで降ろしたり、前記鉛直面211から抵抗杭22を降ろしたりするとよい。1つの単位空間212を囲む6面の鉛直面214は、平面視六角形の単位空間212を内部に有する支持杭に相当する。また、地上構造物1の基礎11から支持杭12及び抵抗杭13を降ろしてもよい。この場合、図6及び図7(図7中単位空間212に充填した混合物213の図示は省略)に見られるように、前記支持杭12及び抵抗杭13は、高剛性構造物21の単位空間212に貫通させて降ろす。支持杭12及び抵抗杭13は、単位空間212に充填した混合物213に対する抵抗体に相当する。更に、基礎11から降ろした支持杭12及び抵抗杭13は、上層3を貫通するから、混合物31からなる上層3に対する抵抗体にもなる。
【実施例】
【0023】
本発明の有効性を確認すべく、地震波によるシミュレーションを試みた。実施例は上述の図1〜図3に見られる構成に抵抗杭22のみを追加したモデルであり、比較例は周辺地盤5のみの構成(本発明の改良地盤のない構成)である。卓越周波数を4Hzとして、地上構造物1の基礎11の仮想下面から支持層4までの深さ(=卓越波長λeの1/4)は6.3m、重心深さDcは2.1mであり、下層2の深さ(厚み)D1、すなわち高剛性構造物21の厚みは1.0mとし、上層3の深さ(厚み)D2は1.0mとしている。高剛性構造物21は、鉛直面211の厚みが0.6m、単位空間の大きさAが6.8m、長手方向長さW1及び短手方向長さW2が共に45mである。地上構造物1の基礎11は、12m四方とした。高剛性構造物21の単位空間212に充填する混合物213や上層3を構成する混合物31は、現地土の埋め戻しである。抵抗杭22は、直径が1.0m,長さが6.0mである。
【0024】
このほか、シミュレーションの計算に必要なパラメータとして、支持層4のポアソン比νは0.45、障害波の剪断波速度Vsは200m/sec、密度ρは1800kg/m3、周辺地盤5のポアソン比νは0.45、障害波の剪断波速度Vsは100m/sec、密度ρは1800kg/m3、下層2のポアソン比νは0.25、障害波の剪断波速度Vsは2000m/sec、密度ρは2400kg/m3、減衰率は0.3、上層3のポアソン比νは0.45、障害波の剪断波速度Vsは100m/sec、密度ρは1800kg/m3、地上構造物1の基礎11のポアソン比νは0.25、障害波の伝播速度Vsは2000m/sec、密度ρは2400kg/m3、そして抵抗杭22の剪断波速度Vsは2000m/sec、密度ρは2400kg/m3、減衰率は0.05とした。
【0025】
障害波は、地震波として鉄道構造物設計標準S1-G1波を用い、実施例及び比較例それぞれのフーリエスペクトル特性及び応答スペクトル特性を計算した。この度は、計算を簡略化するため、下層2は高剛性構造物21により、短手方向(W2の方向)は粗密の繰り返しとし、垂直方向の2次元モデルとして解析している。フーリエスペクトル特性(図8)は、障害波の入力加速度をAmax=322galとして、地表面応答加速度を計算したものである。計算の結果、地震波の主要な低周波成分(数Hz未満)が、比較例に対して実施例が大きく減衰しており、本発明の改良地盤が特に地震に対して有効であることが理解される。応答スペクトル特性(図9)は、障害波の入力加速度をAmax=322galとして地表面応答加速度を計算したものである。前記フーリエスペクトル特性と同様、低周波成分の減衰はもちろん、高周波成分(数Hz以上)の減衰も確認された。これから、本発明の改良地盤は、障害波の低周波成分だけでなく、高周波成分の減衰にも有効であることが理解される。
【符号の説明】
【0026】
1 地上構造物
11 基礎
2 下層
21 高剛性構造物
211 鉛直面
212 単位空間
213 混合物
3 上層
31 混合物
λe 卓越波長
D1 下層の深さ(厚み)
D2 上層の深さ(厚み)
Dc 重心深さ
A 単位空間の大きさ
W1 長手方向長さ
W2 短手方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺地盤より相対的に高い剛性の鉛直面を水平方向に交差させて形成される多数の単位空間から構成される高剛性構造物を、卓越周波数の障害波による振動のエネルギー重心に相当する深さに埋設し、地表面又は地上構造物の基礎から高剛性構造物までの深さの範囲を上層とし、高剛性構造物の深さの範囲を下層としてなる改良地盤。
【請求項2】
上層は、現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して高剛性構造物上に堆積させることにより構成した請求項1記載の改良地盤。
【請求項3】
高剛性構造物は、現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して単位空間に充填した請求項1又は2いずれか記載の改良地盤。
【請求項4】
高剛性構造物は、現地土、置換土又は粒状物の1つ又は複数を混合して単位空間に充填し、前記現地土、置換土又は粒状物に対して更に抵抗体を圧入した請求項1又は2いずれか記載の改良地盤。
【請求項5】
高剛性構造物は、鉛直面から支持杭又は抵抗杭の一方又は双方を降ろした請求項1〜4いずれか記載の改良地盤。
【請求項6】
高剛性構造物は、鉛直面の一部を下方に延長した請求項1〜5いずれか記載の改良地盤。
【請求項7】
高剛性構造物は、地上構造物の基礎から支持杭又は抵抗杭の一方又は双方を、単位空間に貫通させて降ろした請求項1〜6いずれか記載の改良地盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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