説明

改良域形成方法

【課題】壁厚の大きい十字状や格子状の改良域の形成も容易に行え、礫を含む地盤にも使用できる、改良域形成方法を提供する。
【解決手段】所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する十字状改良域を形成するために、十字状改良域の凹角部イに造成ポイントを有する半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11一個を、当該扇形改良体の欠円辺二辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部イ形成の両辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第一工程と、十字状改良域の凹角部イと対角に位置する十字状改良域の凹角部ロに造成ポイントを共有する所定角度を有する扇形改良体12二個を、当該扇形改良体二個の欠円辺各々一辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第二工程とを有し、第一工程の後に第二工程を行うか、もしくは第二工程の後に第一工程を行い、略十字状改良域を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドを地中に挿入して、ロッドに設けられた噴射ノズルから硬化材液を噴射して地盤に混入して造成される改良体を用いて、十字状や格子状の改良域を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤の安定、地山支保、トンネル支保工、構築物の基礎、構築物の基礎補強、液状化防止、遮水用地中壁、地下水湧水防止などを目的とした地盤改良工法は従来より知られている。この地盤改良工法には、ロッドを地中に挿入して、ロッドに設けられた噴射ノズルから硬化材液を噴射して改良体を造成する改良体造成方法があるが、構築物の基礎や液状化防止や遮水用地中壁を目的とした場合は、特に格子状形状が有効とされている。格子状形状の造成方法は、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示される改良体の造成方法は、注入管(ロッド)の下端に噴射管を揺動自在に接続し、噴射管先端に噴射ノズルを設け、注入管を地盤に挿入し、噴射ノズルが噴射管と注入管の接続箇所より下方に位置する噴射管が下向き状態で噴射管を左右に揺動させて、噴射ノズル位置を移動または停止させながら硬化材を噴射ノズルから高圧で噴射させ、硬化材を地盤に混入させて、注入管を引抜きおよび/または回転を行い、壁状部と壁状部と直交する板状部を有する壁状改良体を造成している。また、この壁状改良体を複数連結造成することにより、平面方向、垂直方向ともに格子状とし、壁状改良体で囲む非硬化部分の地下水、砂などの流動性を遮断もしくは阻害する。
【0004】
つまり、注入管が移動する挿入または引き抜き方向に造成される壁状改良体と、噴射ノズルが噴射する左右方向に造成される壁状改良体とにより、格子状または多角形の筒状体群に改良体が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3219372号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の改良体の造成方法においては、注入管の挿入または引き抜き方向および挿入または引き抜き方向と直交する方向に壁状改良体を造成することはできるが、噴射ノズル位置を移動または停止させながら硬化材を噴射ノズルから高圧で噴射させる必要があり、壁厚は最大で1メートルが限界という制限があった。また土質に礫を含む地盤では、噴射ノズル位置の移動を礫が阻害するために使用出来なかった。また、噴射ノズル位置を移動させるという特徴より機械装置が高価で、工事価格を低下させることが難しい。そのため現在格子状の形成においては、重複改良域や過剰改良域が多大になっても、円形改良体を重複させながら隣接配置する方法が広く用いられている。
【0007】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであって、壁厚の大きい十字状や格子状の形成が特別な装置を用いずに容易に行え、かつ重複改良域や過剰改良域が少なく材料や工期が低減でき、礫を含む地盤にも使用できる、十字状や格子状の改良域形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の格子状改良体造成方法は、上記目的を達成するために、ロッドを地中に挿入し、ロッド先端部に設けられた噴射ノズルから硬化材液を含む液体を噴射して地盤に混入しつつロッドを所定角度回転もしくは揺動して対象地盤所定深度に所定角度の扇形改良体を形成する方法において、所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する十字状改良域を形成するために、十字状改良域の凹角部イに造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)を有する半径Bメートル以上の270度の扇形改良体一個を、当該扇形改良体の欠円辺二辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部イ形成の両辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第一工程と、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体を配置する十字状改良域の凹角部イと対角に位置する十字状改良域の凹角部ロに造成ポイントを共有する所定角度を有する扇形改良体二個を、当該扇形改良体二個の欠円辺各々一辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第二工程とを有し、第一工程の後に第二工程を行うか、もしくは第二工程の後に第一工程を行うことで、略十字状改良域を形成することを特徴とする改良域形成方法とした。
【0009】
これによれば重複改良域と余剰改良域が少ない略十字状改良域を形成できる上、壁厚も自在に設定できるため、改良域形状のバリエーションが広がるだけでなく、十字状改良域を含む格子状改良域等の形成も効率良く容易に行うことができる。また配置する扇形改良体の本数が少なく済むため工期と材料の低減が図れるとともに、機械装置も操作が単純なため安価に製作できる。
【0010】
また、第一工程と、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体を配置する十字状改良域の凹角部イと対角に位置する十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺上に造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)を各々有する所定角度を有する扇形改良体二個を、当該扇形改良体二個の欠円辺の各々一辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第三工程とを有し、第一工程の後に第三工程を行うか、もしくは第三工程の後に第一工程を行うことで、略十字状改良域を形成してもよい。これによれば、重複改良域と過剰改良域が少ない略十字状改良域を形成でき、また非対称型の十字状改良域の形成にも対応可能である。
【0011】
本発明はまた、第一工程で造成される半径Bメートル以上の270度の扇形改良体、もしくは半径Bメートル以上の270度の扇形改良体と第二工程で造成される所定角度を有する扇状改良体、もしくは半径Bメートル以上の270度の扇形改良体と前記第三工程で造成される所定角度を有する扇状改良体の半径を√2Bメートルとしてもよい。これによれば、形成される略十字状改良域の壁厚を自在に設定できるとともに、重複改良域と過剰改良域が少ない略十字状改良域を形成することができる。
【0012】
また、第二工程または第三工程で造成される所定角度を有する扇形改良体の造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)が半径Bメートル以上の270度の扇形改良体の外周円上に配置されてもよい。これによれば、形成される略十字状改良域の壁厚を自在に設定できるとともに、重複改良域と過剰改良域が少ない略十字状改良域を形成することができる。また、コラムインコラム(改良体の造成ポイントが、隣接する改良体造成時に、硬化材液の飛距離過剰などにより先に造成されてしまうこと)を未然に防ぎながら、未改良部のない確実な改良域の形成が可能となる。
【0013】
また、所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する所定の大きさの格子状改良域を形成するために、略十字状改良域が所定方向に所定個数連結配置されてもよい。これによれば、形成される格子状改良域の壁厚を自在に設定できるとともに、重複改良域と過剰改良域が少ない略格子状改良域を形成することができる。
【0014】
また、所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する所定の大きさの格子状改良域を形成するために、十字状改良域に隣接して所定の大きさの壁状改良域を配置し、十字状改良域と壁状改良域を合せた複合改良域に複合略十字状改良域を形成して当該複合略十字状改良域を所定方向に所定個数連結配置して略格子状改良域を形成することも出来る。これによれば、形成される格子状改良域の壁厚を自在に設定できるとともに、重複改良域と過剰改良域が少ない略格子状改良域を形成することができる。また、格子状の壁間距離が自在に設定できるので、格子状改良域の形状バリエーションが大幅に増加する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、壁厚の大きい十字状改良域や格子状改良域などの形成を容易に行え、かつ礫を含む地盤にも使用できる上、安価な設備で十字状や格子状の改良域を形成できる。
【0016】
十字状改良域を形成する場合、十字状改良域の凹角部イに造成ポイント((削孔及びロッド挿入地点)を有する半径Bメートル以上の270度の扇形改良体一個を、当該扇形改良体の欠円辺二辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部イ形成の両辺と重複するように配置し、かつ半径Bメートル以上の270度の扇形改良体を配置する十字状改良域の凹角部イと対角に位置する十字状改良域の凹角部ロに造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)を共有する所定角度を有する扇形改良体二個を、当該扇形改良体二個の欠円辺各々一辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置すれば、計二箇所の造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)から、所定の壁厚を有し過剰改良域のない(はつる必要も生じない)側面も有する略十字状改良域の形成が可能である。これは、噴射ノズルから噴射される硬化材液の噴射方向が特定されるためであるが、形状管理とともに、周辺地盤への硬化材液の拡散が少なく、環境に優しいだけでなく、硬化材液使用効率も向上する。
【0017】
また同様に、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体を配置する十字状改良域の凹角部イと対角に位置する十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺に造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)を各々有する所定角度を有する扇形改良体二個を、当該扇形改良体二個の欠円辺の各々一辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置すれば、計三箇所の造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)から、所定の壁厚を有し過剰改良域のない(はつる必要も生じない)側面も有する略十字状改良域の形成が可能である。これは、噴射ノズルから噴射される硬化材液の噴射方向が特定されるためであるが、形状管理とともに、周辺地盤への硬化材液の拡散が少なく、環境に優しいだけでなく、硬化材液使用効率も向上する。
【0018】
また本発明は半径Bメートル以上の270度の扇形改良体、もしくは半径Bメートル以上の270度の扇形改良体と第二工程で造成される所定角度を有する扇形改良体、もしくは半径Bメートル以上の270度の扇形改良体と前記第三工程で造成される所定角度を有する扇形改良体の半径を√2Bメートルとすることで、所望する十字状改良域に対して所定の壁厚を有し過剰改良域のない(はつる必要も生じない)側面も有する略十字状改良域を重複改良域もほとんど作ることなく形成可能である。また半径を√2Bメートルで統一して形成された略十字状改良域は、その形状が対角線を中心として対称となり、設計配置もし易く力学的バランスにも優れている。
【0019】
また本発明によれば、第二工程または第三工程で造成される所定角度を有する扇形改良体の施工ポイントが前記半径Bメートル以上の270度の扇形改良体の外周円上に配置することで、所望する十字状改良域に対して所定の壁厚を有し過剰改良域のない(はつる必要も生じない)側面も有する略十字状改良域を重複改良域もほとんど作ることなく形成可能である。また、コラムインコラムを未然に防ぎながら、未改良部のない確実な略十字状改良域の形成が可能となる。
【0020】
また、本発明によれば略十字状改良域を所定方向に所定個数連結して略格子状改良域を形成できるし、もしくは十字状改良域に隣接して所定の大きさの壁状改良域を配置し、十字状改良域と壁状改良域を合せた複合改良域に複合略十字状改良域を形成して当該複合略十字状改良域を所定方向に所定個数連結配置して略格子状改良域を形成することも出来る。格子状改良域の壁間距離も自在に設定出来る上、少ない造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)と改良体本数で広範囲に格子状改良域を効率よく形成できる。また矩形以外の形状の格子状改良域の形成も可能である。
【0021】
またさらに、本発明の略十字状改良域を形成する技術を用いれば、外周部に凸凹のない四角形状の格子状改良域の形成に際して、端部に生じる三方直角改良域及び格子状改良域の隅部に生じる二方直角改良域についても、容易に所定の壁厚で形成することができる。
【0022】
また、本発明で造成される扇形改良体は、半径Bメートル以上の270度扇形改良体および所定角度を有する扇形改良体ともに、半径をおおよそ0.5メートルから5メートル程度の範囲で設定できるので、本発明を用いれば、様々な大きさと形状を有する略十字状改良域や略格子状改良域を形成することができる。例えば格子状改良域を形成する際には1.0メートルから2.5メートル程度の壁厚として、壁間距離(格子間隔)を2.5メートルから8メートル程度の正四角形の格子状改良域が、地震対策や液状化対策に有効と考えられる。また、土留壁や止水壁などの目的にも対応できる。
【0023】
また、硬化材液は固化材に限らず、アスファルトや土壌汚染対策薬剤を用いることで、固化以外の用途にも広く活用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】改良域形成方法を実行する装置の概略構成図を示す図である。
【図2(a)】実施例1における所望する十字状改良域を示す斜視図である。
【図2(b)】実施例1における扇形改良体の配置と形成される略十字状改良域を示す平面図である。
【図3】実施例2における扇形改良体の配置を示す平面図である。
【図4】実施例2における扇形改良体の配置を示す平面図である。
【図5】従来例の円形改良体の配置を示す平面図である。
【図6】実施例3における扇形改良体の配置を示す平面図である。
【図7】実施例4における扇形改良体の配置を示す平面図である。
【図8(a)】実施例5における所望する格子状改良域を示す平面図である。
【図8(b)】実施例5における扇形改良体の配置を示す平面図である。
【図9】実施例6における扇形改良体の配置を示す平面図である。
【図10】実施例7における扇形改良体の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る改良域形成方法について説明する。本実施形態に係る改良域形成方法は、図1に示すように、ロッド110の周面に硬化剤液を噴射する噴射ノズル210が設けられており、ロッド110を地中に挿入して、施工マシン120により該ロッド110を周方向に所定角度回転もしくは揺動しながら硬化材液を噴射ノズル11から噴射させて、硬化材液を地盤に混入させることにより、改良体を造成する。以下においては、その具体的な内容について説明する。
【0026】
前記ロッド110は、地中に挿入される側の先端部近傍の周面において、硬化材液を高圧で径方向に噴射する噴射ノズル210を備えている。このロッド110は、地上側端部にスイベルを備えており、地上のプラントから専用のホースによって送られてくる硬化材液が該スイベルを介してロッド110に供給される。従って、ロッド110は供給された硬化材液などを噴射ノズル210から噴射させることにより、ロッド110の周囲の所定角度円形領域地盤に硬化材液を混入させて改良体を造成する。
【0027】
なお、本実施形態のロッド110は、断面形状が円形であるが、特にこれに限られるものではない。また、ロッド110内部においては、硬化材液、圧縮空気および水が供給される通路をそれぞれ必要数備えられており、二重管、三重管または四重管などあるいは多孔管の構造であってもよく、さらにロッド110内部にはその他に排泥用通路や通信用通路を適宜設けられてもよい。噴射ノズル210は、その径は大きければ大きいほど噴射する硬化材液の飛距離を大きくすることができるため、必要とする飛距離に応じて噴射ノズルの径を適宜変更してもよい。また噴射ノズル210の設置箇所および個数は一箇所および一個に限らず、設置箇所と方向と個数共に必要に応じて設定すればよい。
【0028】
前記施工マシン120は、図1に示すように、地中に挿入されたロッド110を保持するとともに、該ロッド110を所定の回転速度で周方向に所定角度回転もしくは揺動させる。施工マシン120の動作は制御する管理装置に接続し、該管理装置におけるプログラムによって施工マシン120の動作が制御されるようにしてもよい。
【0029】
次に、本改良域形成方法によって十字状改良域a1を形成する実施例1について説明する。なお、以下では既にロッド110が地中に挿入されているものとする。
【0030】
図2(a)に示すような、所定の造成長Aと壁厚Bを有する十字状改良域a1に対し、図2(b)のように十字状改良域a1の凹角部イに造成ポイント32を有する半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11を、当該扇形改良体11の欠円辺二辺がそれぞれ十字状改良域a1の凹角部イ形成の両辺と重複するように配置し、半径B以上の270度の扇形改良体11を配置する十字状改良域a1の凹角部イと対角に位置する十字状改良域a1の凹角部ロに造成ポイント31を共有する所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12´を、欠円辺各々一辺がそれぞれ十字状改良域a1の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置することで略十字状改良域を形成する。
【0031】
なお、ここにおける半径Bメートル以上の270度の扇状改良体11および所定角度を有する扇形改良体12と所定角度を有する扇状改良体12´および以下で説明する扇状改良体や改良域などは、一般的に所定の時間が経過することにより硬化して剛性の改良体となるが、説明の便宜上、硬化材液が地盤に混入された直後の硬化前の状態のものも改良体および改良域として説明する。また便宜上、平面図の配置例を用いて実施例を説明するため、造成長に関する記述を割愛して配置のみを記述しているものもあるが、本発明の実施例において配置された扇状改良体はいずれも必要な造成長を有している。
【0032】
図2(b)の配置による略十字状改良域の形成においての造成手順は、まず所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12´を造成ポイント31より必要造成長造成する。この際、所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12´は、同一の噴射ノズル210によって造成してもよいし、複数設けられた別々の噴射ノズル210によって造成してもよい。
【0033】
次に、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11を造成ポイント32より造成長Aメートル造成する。このように先に所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12´を先に造成した後に半径B以上の270度の扇形改良体11を造成することで、コラムインコラムの心配もなく、造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する略十字状改良域を形成することができる。ここでは、先に所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12´を造成した後に半径B以上の270度の扇形改良体11を造成した例を示したが、先に半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11を造成した後に所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12´を造成してもよい。またここでは75度としたが、所定角度を有する扇形改良体12と所定角度を有する扇形改良体12´二個の角度は必要とする十字状改良域a1の形状に応じて自由に設定すればよいし、二個が同一の角度である必要はないし、同一の改良半径を有する必要もない。
【0034】
次に、本改良域形成方法によって十字状改良域a1を形成する実施例2について、図3と図4を参照しつつ説明する。本実施例では、図2(a)に示す十字状改良域a1を実施例1と異なる方法で形成する場合について説明する。なお、上述において説明した内容については適宜省略して説明する。
【0035】
図3のように半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11を造成ポイント33に配置する一方で、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11を配置する十字状改良域a1の凹角部イと対角に位置する十字状改良a1の凹角部ロ形成の各々一辺上の所定箇所に造成ポイント34および35を配し、かつ各々に所定角度(ここでは115度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは115度)を有する扇状改良体12´を、当該扇形改良体12およびと12´の欠円辺の各々一辺がそれぞれ十字状改良域a1の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置する。
【0036】
図3の配置による十字状改良域a1の形成においての造成手順は、まず所定角度(ここでは115度)を有する扇形改良体12を造成ポイント34より造成長Aメートル造成した後、所定角度(ここでは115度)を有する扇形改良体12´を造成ポイント35より造成長Aメートル造成し、その後、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11を造成ポイント36より造成長Aメートル造成する。このように先に所定角度(ここでは115度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは115度)を有する扇形改良体12´を先に造成した後に半径Bメートル以上の270度の扇状改良体11を造成ポイント33より造成することで、コラムインコラムの心配もなく、所定の壁厚を有し過剰改良域のない(はつる必要も生じない)側面も有する造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する略十字状改良域を形成することができる。ここでは、先に所定角度(ここでは115度)を有する扇形改良体12および12´を造成した後に半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11を造成した例を示したが、順序は本実施例にこだわらず適宜変更できる。
【0037】
図4に第2の実施例の応用例を示した。図3と同様の工程で、所定角度(ここでは180度)を有する扇形改良体12と所定角度(ここでは180度)を有する扇形改良体12´を配置することで、図4のような非対称の変形型の十字状改良域a2の形成も可能である。
【0038】
図5に従来例の十字状改良域形成の改良体の配置を示した。十字状改良域a1に対し、円形改良体を五個、重複させながら配置しているので、全側面で過剰改良域が生じた略十字状改良域が形成されており、目的に応じてはつる必要が生じるばかりでなく、重複改良域も多数発生している。また、全円の円形改良体は全方向へ噴射ノズルから噴射される硬化材液の噴射方向が向いていて、不必要方向への硬化材液の飛び過ぎも起こりやすいため、形状管理が難しく、周辺地盤へ硬化材液の拡散も生じやすい。
【0039】
図5の従来例と図2(b)の本発明による十字状改良域a1を形成する実施例と比較すると、造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)が従来例の五箇所に対して本発明実施例は二箇所となり、改良体造成面積も従来例に比べて本発明実施例では約7%の低減となる。また本発明では不必要方向への硬化材液の飛び過ぎも起こりにくいため、形状管理がしやすく、周辺地盤へ硬化材液の拡散も生じにくい。
【0040】
図6に、壁厚Bメートルを有する十字状改良域a1に対し、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11と所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12および12´の改良半径をそれぞれ√2Bメートルとして配置した実施例3を示した。これによると、十字状改良域a1の中央方形域α1は、半径を√2Bメートルとした270度の扇形改良体11´により効率良く確実に形成されている。また、ここで、所定角度(ここでは75度)を有する扇形改良体12および12´の改良半径もそれぞれ√2Bメートルとしたことで、重複改良域と過剰改良域が少なく略十字状改良域を形成している。
【0041】
また図7に、壁厚Bメートルを有する十字状改良域a1に対し、半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11と所定角度(ここでは75度)を有する扇状改良体12および12´の改良半径をそれぞれ√2Bメートルとして配置し、かつ所定角度(ここでは75度)を有する扇状改良体12および12´の造成ポイント38を半径Bメートル以上の270度の扇形改良体11の外周円上に配置して略十字状改良域を形成した実施例4を示した。
【0042】
図7にあるように、対角線510および520により区分される略十字状改良域の各々の形状は対角線を中心として対称となっており、設計配置や施工が容易であるだけでなく力学的バランスも優れており、高い強度が得られると考えられる。ここでは所定角度(ここでは75度)を有する扇状改良体12および12´の角度を75度としたが、角度は必要とする十字状改良域の形状に応じて自由に設定すればよい。また図7のように、必ずしも二個が同一の角度である必要はないし、同一の改良半径を有する必要もない。
【0043】
図8に実施例5として、壁厚Bメートルで所定の壁間距離(ここでは2.5Bメートル)を有する所望する格子状改良域b1の平面図(a)と、本発明の略十字状改良域を複数個数連結配置して略格子状改良域を形成した配置の平面図(b)を示した。格子状改良域b1を効率良く形成するための配置として、図2(b)に示した略十字状改良域を4個連結配置したが、これによれば、隣接する略十字状改良域同士の接合が、連続施工であっても日をあけての非連続施工であっても容易かつ確実である。また、ここでは壁厚Bメートルで壁間距離2.5Bメートルとしたが、壁厚と壁間距離は自由に設定でき、略十字状改良域の形状は所望する格子状改良域b1の壁厚と壁間距離に合わせて設定することが可能である。
【0044】
複合略十字状改良域を形成する実施例6について、図9に示す。前述した十字状改良域a1に略十字状改良域を形成する際に、略十字状改良域に隣接して所定の大きさの壁状改良域c1を接合形成し、十字状改良域a1と壁状改良域c1を合せた複合改良域に本発明による略十字状改良域と壁状改良域c1に適合した扇状改良体を接合して形成することで複合略十字状改良域を形成する。略十字状改良域の大きさを一定とした場合でも、壁状改良域c1の形状と大きさを調節することで複合略十字状改良域の大きさも調節できる。ここでは壁状改良域c1に180度の扇形改良体を配置したが、壁状改良域c1の大きさに応じて、配置する扇状改良体の形状と配置は適宜変更できる。また壁状改良域c1には、円形改良体を配置することもできる。
【0045】
次に、複合略十字状改良域を用いて格子状改良域b2を形成する実施例7について説明する。図10に示すような壁厚Bメートルで壁間距離7Bメートルを有し、かつ平面配置で縦17Bメートル横25Bメートルの大きさの格子状改良域b2を形成するために、図9の複合略十字状改良体を格子状改良域b2の中央十字部二箇所に各々配置して連結し、周囲の壁状部にも半径Bメートル以上の270度の扇状改良体11と所定角度(ここでは75度と180度)を有する扇状改良体12を必要個数配置した。これによれば、壁厚と壁間距離の設定が自在に出来る上、少ない施工ポイントと改良体本数で所望する格子状改良域b2に対応した略格子状改良域が形成できる。また図10にあるように、格子状改良域b2の端部の三方直角改良域及び隅部の二方直角改良域についても、容易に所定の壁厚で形成することができる。尚、ここでは一例として格子状改良域b2を壁厚Bメートルで壁間距離7Bメートルを有しかつ平面配置で縦17Bメートル横25Bメートルの大きさとしたが、これら壁厚や壁間距離、および大きさは自由に設定できるし、本発明により形成される略格子状改良域は所望する格子状改良域に適応できる。
【0046】
なお、上記各実施形態においては、改良域を構成する壁状改良域が直交して構成された十字状改良域と正四角状の格子状改良域の形成方法について説明したが、直交していない十字状改良域を形成してもよく、これを所定方向に連結配置することで網状改良域や非正四角形の格子状改良域を形成することもできる。また、十字状改良域の形状と組合せにより、正四角状の格子状改良域だけでなく、三角形など他の多角形の格子状改良域を形成してもよい。
【0047】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
110…ロッド
120…マシン
210…噴射ノズル
11…半径Bメートル以上の270度の扇形改良体
12…所定角度を有する扇形改良体

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを地中に挿入し、ロッド先端部に設けられた噴射ノズルから硬化材液を含む液体を噴射して地盤に混入しつつロッドを所定角度回転もしくは揺動して対象地盤所定深度に所定角度の扇形改良体を形成する方法において、
所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する十字状改良域を形成するために、
十字状改良域の凹角部イに造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)を有する半径Bメートル以上の270度の扇形改良体一個を、当該扇形改良体の欠円辺二辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部イ形成の両辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第一工程と、
上記半径Bメートル以上の270度の扇形改良体を配置する十字状改良域の凹角部イと対角に位置する十字状改良域の凹角部ロに造成ポイントを共有する所定角度を有する扇形改良体二個を、当該扇形改良体二個の欠円辺各々一辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第二工程とを有し、
上記第一工程の後に上記第二工程を行うか、もしくは上記第二工程の後に上記第一工程を行うことで、略十字状改良域を形成することを特徴とする改良域形成方法。
【請求項2】
ロッドを地中に挿入し、ロッド先端部に設けられた噴射ノズルから硬化材液を含む液体を噴射して地盤に混入しつつロッドを所定角度回転もしくは揺動して対象地盤所定深度に所定角度の扇形改良体を形成する方法において、
所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する十字状改良域を形成するために、
前記第一工程と、
前記半径Bメートル以上の270度の扇形改良体を配置する十字状改良域の凹角部イと対角に位置する十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺上に造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)を各々有する所定角度を有する扇形改良体二個を、当該扇形改良体二個の欠円辺の各々一辺がそれぞれ十字状改良域の凹角部ロ形成の各々一辺と重複するように配置して造成長Aメートル造成する第三工程とを有し、
前記第一工程の後に上記第三工程を行うか、もしくは上記第三工程の後に前記第一工程を行うことで、略十字状改良域を形成することを特徴とする改良域形成方法。
【請求項3】
前記第一工程で造成される半径Bメートル以上の270度の扇形改良体、もしくは前記半径Bメートル以上の270度の扇形改良体と第二工程で造成される所定角度を有する扇形改良体、もしくは前記半径Bメートル以上の270度の扇形改良体と前記第三工程で造成される所定角度を有する扇形改良体の半径を√2Bメートルとしたことを特徴とする請求項および請求項2記載の改良域形成方法。
【請求項4】
前記第二工程または前記第三工程で造成される所定角度を有する扇形改良体の造成ポイント(削孔及びロッド挿入地点)が前記半径Bメートル以上の270度の扇形改良体の外周円上に配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の改良域形成方法。
【請求項5】
所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する所定の大きさの格子状改良域を形成するために、
前記略十字状改良域が所定方向に所定個数連結配置されたことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の改良域形成方法。
【請求項6】
所定の造成長Aメートルと壁厚Bメートルを有する所定の大きさの格子状改良域を形成するために、
前記十字状改良域に隣接して所定形状の壁状改良域を接合形成して複合略十字状改良域を形成し、かつ複合略十字状改良域が所定方向に所定個数連結配置されたことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の改良域形成方法。
































【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−2044(P2013−2044A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131097(P2011−131097)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(594051161)
【出願人】(502275001)
【Fターム(参考)】