改良RNAディスプレイ法
本発明は、発現ライブラリーからscFv抗体分子の確実な発現および選別を可能にするインビトロRNAディスプレイの改良法を特徴とする。改良法は、scFv鎖内ジスルフィド結合、従ってscFv抗体分子の正確なフォールディングに有利に働く弱還元条件の使用を部分的に含む。本発明の方法は、scFv抗体分子の発現および選別に特に適しているが、あらゆるクラスのタンパク質のインビトロRNAディスプレイにも都合が良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、これによりその内容が参照によって本明細書に組み込まれている、2008年9月30日に出願された米国仮出願第61/101471号に基づく優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、RNAディスプレイに関し、特に可溶性および細胞表面抗原の選別を可能にするRNAディスプレイ法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ほぼどのような構造的エピトープでもそれと高い特異性および親和性で結合し、リサーチツールとして、またFDAに認可された治療薬として日常的に使用される抗体を選別することができる。その結果、治療用および診断用モノクローナル抗体は、世界中で数十億ドル規模のマーケットを構成している。
【0004】
動物を免疫して抗体を得る古典的手法は、時間がかかり煩雑である。その結果、合成抗体ライブラリーを用いた、所望の標的分子に対する抗体をエキソビボ選別するための方法が開発された。一部の方法において、抗体またはその断片のライブラリーは生物(例えば、バクテリオファージ、ウイルス、酵母細胞、細菌細胞または哺乳類細胞)表面に提示され、生物は所望の抗体の発現を有するものが選別される。他の方法において、抗体ライブラリーは無細胞インビトロシステムにおいて発現、選別される。RNAディスプレイと呼ばれるこのようなシステムの一型において、発現されたタンパク質またはペプチドは、共有結合または緊密な非共有結合的相互作用によってそのコード化mRNAと結合してRNA/タンパク質融合分子を形成する。RNA/タンパク質融合体のタンパク質またはペプチド成分は、所望の標的との結合および結合しているコード化mRNA成分の配列決定によって決定されたタンパク質またはペプチドの同一性について選別され得る。
【0005】
現在のインビトロRNAディスプレイシステムは、単一の抗体可変領域の発現に優れているが、単鎖抗体(scFv)分子等、多ドメイン抗体の発現には非効率的である。これは主に現在のインビトロ発現システムの反応条件と、PCRによる増幅の繰り返しによってライブラリーからscFvのcDNA全長が失われ易いことに起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本技術分野における、所望の標的に対するscFv抗体選別のための改良インビトロディスプレイ法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、発現ライブラリーからscFv分子の確実な発現および選別を可能にする、インビトロRNAディスプレイの改良法を提供することによって上述の課題を解決する。本発明の方法は、scFv分子の発現および選別に特に適しているが、可溶性および細胞表面抗原の両方を含むあらゆるクラスのタンパク質のインビトロディスプレイにも都合が良い。
【0008】
従って、本発明は、前に記載された方法よりも簡便で実施にかかる時間が短い改良インビトロRNAディスプレイ法の提供を含むが、それに限定されない、いくつかの利点を有する。さらに、本発明の方法は、鎖内ジスルフィド結合を含有するタンパク質、例えばscFv抗体分子の増強された機能的発現を可能にする。
【0009】
本発明は、その一態様において、(a)ピューロマイシンまたはそのアナログを3’末端に、ソラレンC6を5’末端に有する一本鎖核酸リンカーと架橋し、5’scFvおよび3’スペーサー配列をコードするmRNAを含む、ピューロマイシンまたはそのアナログと架橋したscFv mRNA分子を提供するステップ、(b)標識の存在下、GSSG(酸化型グルタチオン)/GSH(還元型グルタチオン)およびPDI(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ)の存在下ならびにジチオスレイトールの不在下、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が形成されるような条件下でピューロマイシン架橋scFv mRNAをインビトロ翻訳するステップ、(c)標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を精製するステップ、(d)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を少なくとも1種類の抗原を用いた抗原選別に付すステップおよび(e)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を、親和性に基づいた磁気ビーズを用いて回収するステップを含む、scFv抗体RNAディスプレイライブラリーをスクリーニングする方法を提供する。
【0010】
一実施形態において、本方法は、(g)抗原選別の後、scFv mRNAを逆転写してcDNAを作製するステップをさらに含む。別の一実施形態において、本方法は、(h)cDNAを増幅するステップをさらに含む。
【0011】
一実施形態において、標識は、例えば35Sメチオニンまたはシステイン等、放射性標識である。
【0012】
一実施形態において、3’スペーサー配列は、約0−約200アミノ酸、例えば約16アミノ酸を含む、および/または3’スペーサーはアフィニティータグを含む。
【0013】
一実施形態において、リンカーは、5’から3’へと、ソラレンC6、配列UAGCGGAUGC(配列番号20)を含む2’OMeリボヌクレオチド、6個のトリエチレングリコールまたはPEG−150部分、2個のシチジン残基、およびピューロマイシンを含む。
【0014】
一実施形態において、scFv mRNA分子は、UVAによってDNAリンカーと光架橋される。別の一実施形態において、scFv mRNA分子は、T7、SP6およびT3からなる群から選択された5’プロモーターを含む。特別な一実施形態において、scFv mRNA分子は、タバコモザイクウイルス5’非翻訳領域を含む。
【0015】
一実施形態において、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子は、オリゴdTクロマトグラフィーによって精製される。別の一実施形態において、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子は、抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズを用いて精製される。さらに別の一実施形態において、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子は、オリゴdTクロマトグラフィーおよび抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズによって精製される。
【0016】
一実施形態において、抗原は、ビオチン化ペプチド、タンパク質またはハプテンである。別の一実施形態において、抗原は、ヒト免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)またはマウス免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)との融合タンパク質、さもなければ抗原は細胞集団である。特定の一実施形態において、本発明に係る抗体は、抗IL−12抗体、抗赤血球凝集素(抗HA)抗体、マウス抗体またはヒト抗体である。
【0017】
一実施形態において、ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳は、GSSH/GSHの存在下で行われる。
【0018】
一実施形態において、本方法は、mRNAキャッピングステップを含まない。別の一実施形態において、本方法は、精製ステップの前にインビトロ逆転写ステップを含まない。さらに別の一実施形態において、ステップ(a)から(g)の内いずれかの前、間または後にRNaseインヒビターが添加される。一実施形態において、精製ステップは、ジチオスレイトール(DTT)不在下におけるcDNA作製のためのmRNA逆転写を含む。
【0019】
特定の実施形態において、cDNAは、約pH=8.0−約pH=10.0のアルカリ加水分解によって溶出される。あるいは、cDNAは、DNA:RNAハイブリッドを変性するのに十分な熱によって、約pH=3.0−約pH=6.0の酸によって、またはRNaseH消化によって溶出される。
【0020】
一実施形態において、cDNAはポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される。一実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応は、耐熱性DNAポリメラーゼ、またはPlatinum HiFiおよびKODからなる群から選択されたDNAポリメラーゼを用いる。
【0021】
別の一実施形態において、ビーズはストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースからなる群から選択される。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明と特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一部の実施形態におけるmRNA−scFvディスプレイ技術の概略図を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態におけるmRNA−scFvディスプレイ技術の概略図を示す図である。
【図3】ライブラリーDNAコンストラクトの概要描写を示す図である。
【図4a】機能的scFvがmRNA−scFv分子として生じ得ることを表す結果を示す図である。
【図4b】遊離scFv分子とmRNA−scFv分子のモデルを示す図である。
【図5】mRNA−scFv分子フォーマットにおいて結合しているscFvが遊離scFv分子と機能的に同等であることを表す結果を示す図である。
【図6】異なる3’スペーサー長を備える3種類のD2E7mRNA−scFvコンストラクトを示す図である。
【図7】より短いスペーサー長が、mRNA−scFvの抗原への結合およびmRNA−scFv抗体分子の収量を改善したことを表す結果を示す図である。
【図8】D2E7の短い、中程度および長いCk3’スペーサー長の配列(記載順にそれぞれ配列番号42−44)を表す図である。
【図9a】短いおよび長いスペーサー長を備える17/9mRNA−scFvコンストラクトを示す図である。
【図9b】より短いスペーサー長が17/9mRNA−scFv分子の標的抗原への結合およびmRNA−scFv抗体分子の収量を改善したことを表す結果を示す図である。
【図10】PDI活性がscFv機能の一部に必要であったことを表す結果を示す図である。
【図11】逆転写におけるDTTの存在が17/9scFvの赤血球凝集素(HA)抗原への結合を阻害したことを表す結果を示す図である。
【図12】DTTが逆転写過程を有意に変化させなかったことを表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図13】選別前と後の両方におけるDTTおよびRNaseOUT(商標)有りまたは無しの異なるRT条件から得られたアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図14】選別前RTおよびcDNAアルカリ溶出(左レーン)と比較した、選別前または後のいずれかに逆転写した場合のPhylos40VH配列の回収を表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図15】RNaseインヒビターが、抗原選別後の逆転写によるRNAテンプレート回収を保存したことを表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図16】RNaseOUT(商標)の存在下または不在下におけるCL長およびCL短スペーサーの並列比較の結果を示す図である。
【図17】RNaseOUT(商標)の存在下または不在下におけるCL長およびCL短スペーサー回収の並列比較を表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図18】1ラウンドのmRNA−scFv選別の前と後における17/9scFvを定量化するアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図19】D2E7と2SD4との間のキメラの概要描写を示す図である。
【図20a】mRNAディスプレイ技術が異なる親和性のバインダーの識別に用いられ得ることを表す、異なるキメラ間の抗原結合後の回収率を示す図である。
【図20b】mRNAディスプレイ技術が異なる親和性のバインダーの識別に用いられ得ることを表す、抗原選別後の正規化回収率を示す図である。
【図21】mRNA−scFv分子の耐熱性を示す図である。
【図22】mRNA−scFv分子の高温処理後にRNAが回収され得ることを表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図23】短いおよび長いスペーサー長を備えるmRNA−scFvY61コンストラクトならびにmRNAとscFvタンパク質の間のDNAリンカーにポリAテールを備えるPF−y61scGene3コンストラクトを示す図である。
【図24】本発明の他の実施形態におけるmRNA−scFvディスプレイ技術の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な記述)
配列番号
本明細書に参照されているヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、次の配列番号を付与されている。
配列番号1−MAK195scFvタンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号2−Y61scFv短タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号3−Y61scFv長タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号4−Y61scFv Gene3タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号5−D2E7scFv短タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号6−D2E7scFv中タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号7−D2E7scFv長タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号8−17/9scFv短タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号9−17/9scFv長タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号10−MAK195scFvヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号11−Y61scFv短ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号12−Y61scFv長ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号13−Y61scFv Gene3PAヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号14−Y61scFv Gene3ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号15−D2E7scFv短ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号16−D2E7scFv中ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号17−D2E7scFv長ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号18−17/9scFv短ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号19−17/9scFv長ヌクレオチド配列の核酸配列。
【0025】
本発明をより容易に理解できるように、特定の用語を先ず定義する。
【0026】
I.定義
用語「抗体」は、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、マウス抗体およびそれらの断片、例えば、抗体L鎖(VL)、抗体H鎖(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメントおよび単領域抗体フラグメント(dAb)を含む。
【0027】
用語「抗体ライブラリー」は、抗体またはその断片をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を有する複数のDNAまたはRNA分子を意味する。これはまた、前記DNAまたはRNA分子から発現した複数の抗体タンパク質および核酸/抗体融合分子も含む。
【0028】
用語「H鎖可変領域」は、抗体H鎖可変領域をコードする核酸および該核酸のタンパク質産物を意味する。
【0029】
用語「L鎖可変領域」は、抗体L鎖可変領域をコードする核酸および該核酸のタンパク質産物を意味する。
【0030】
用語「エピトープタグ」は、抗体によって特異的に認識される短いアミノ酸配列であって、分子に化学的または遺伝学的に結合して、前記抗体によるその検出を可能にするアミノ酸配列、例えば、FLAGタグ、HAタグ、MycタグまたはT7タグを意味する。
【0031】
用語「非抗体配列」は、本発明の抗体ライブラリーに出現する、本来の抗体配列の一部ではない任意の核酸またはアミノ酸配列を意味する。このような配列は、例えばエピトープタグを含む。
【0032】
用語「調節配列」は、特定の宿主生物またはインビトロ発現システムにおける、作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列または遺伝要素を意味する。このような配列は、本技術分野においてよく知られている。原核生物に適した調節配列は、例えばプロモーター、場合によってオペレーター配列、そしてリボソーム結合部位を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。例えば、核酸は、別の核酸配列と機能的な関係になるよう配置されている場合「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に作用する場合コード配列に作動可能に連結されており、またリボソーム結合部位は、転写を促進できるよう配置されている場合コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結」は、連結されたDNA配列同士が隣接していることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも隣接している必要はない。
【0033】
用語「特異的結合」または「と特異的に結合する」は、少なくとも1×10−6M、1×10−7M、1×10−8M、1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、1×10−12M以下の親和性で標的と結合する、および/またはその非特異的抗原との親和性より少なくとも2倍強い親和性で標的と結合する、結合分子の能力を意味する。
【0034】
用語「標的」は、抗体によって認識される抗原またはエピトープを意味する。標的は、任意のペプチド、タンパク質、糖類、核酸またはそれに対して特異抗体を作製できる小分子等、他の分子を含む。一実施形態において、抗体は、ヒトタンパク質、例えばTNFα、IL−12、IL18、IL−1αまたはIL−1βに対するものである。
【0035】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、本技術分野において定義されている。
【0036】
用語「RNAディスプレイ」または「mRNAディスプレイ」は、発現したタンパク質またはペプチドがそのコード化mRNAと共有結合してまたは緊密な非共有結合的相互作用によって、「RNA/タンパク質融合」分子を形成するインビトロ技術を意味する。RNA/タンパク質融合体におけるタンパク質またはペプチド成分は、所望の標的との結合および結合しているコード化mRNA成分の配列決定によって決定されたタンパク質またはペプチドの同一性について選別され得る。このような方法は、本技術分野においてよく知られており、例えば、その内容全体がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,195,880号、6,951,725号、7,078,197号、7,022,479号、6,518,018号、7,125,669号、6,846,655号、6,281,344号、6,207,446号、6,214,553号、6,258,558号、6,261,804号、6,429,300号、6,489,116号、6,436,665号、6,537,749号、6,602,685号、6,623,926号、6,416,950号、6,660,473号、6,312,927号、5,922,545号および6,348,315号に記載されている。
【0037】
用語「単鎖抗体」または「scFv」は、VLおよびVH領域が組み合わされて一価分子を形成しそれらが単一のタンパク質鎖として生成されることを可能にする合成リンカーによる、組換え法を用いて接続されたL鎖可変領域の抗原結合部分とH鎖可変領域の抗原結合部分を意味する(単鎖Fv(scFv)として知られる。例えば、Birdら(1988)Science242:423−426およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A85:5879−5883を参照)。
【0038】
用語「機能性部分」は、それが結合した分子に追加的な機能性を付与する任意の生物学的または化学的物質を意味する。
【0039】
用語「選別」は、ある分子を集団内の他の分子から実質的に区分化することを意味する。本明細書において、「選別」ステップは、選別ステップの後に集団における望ましくない分子に対する所望の分子の、少なくとも2倍、好ましくは30倍、さらに好ましくは100倍、最も好ましくは1000倍濃縮を提供する。本明細書に示されているように、選別ステップは任意の回数繰り返すことができ、また異なる種類の選別ステップを特定のアプローチと組み合わせることもできる。
【0040】
用語「休止配列」は、リボソームの翻訳速度を減速または停止させる核酸配列を意味する。
【0041】
用語「固体支持体」は、アフィニティー複合体が直接的または間接的(例えば、他の抗体やプロテインA等、他の結合パートナーの介在によって)のいずれかで結合することのできる、またはアフィニティー複合体を包埋できる(例えば、レセプターまたはチャネルによって)、任意のカラム(またはカラム材料)、ビーズ、試験管、マイクロタイター皿、固体粒子(例えば、アガロースまたはセファロース)、マイクロチップ(例えば、シリコン、シリコンガラスまたはゴールドチップ)または膜(例えば、リポソームや小胞の膜)を意味するが、これらに限定されるものではない。
【0042】
用語「リンカー領域」は、scFv抗体遺伝子における抗体VHおよびVL領域をコード化する核酸配列を接続する核酸領域を意味する。リンカー領域は、VH、VLおよびリンカー領域を含む連続的なオープンリーディングフレームが形成されるように、抗体VHおよびVLをコード化する核酸配列とフレーム内に存在する。この用語はまた、scFvタンパク質においてVHとVLを接続する領域も意味する。
【0043】
用語「ペプチドアクセプター」は、リボソームのペプチジルトランスフェラーゼ機能の触媒活性によって、成長中のタンパク質鎖のC末端に付加され得る任意の分子を意味する。通常、このような分子は、(i)ヌクレオチドまたはヌクレオチド様部分(例えば、ピューロマイシンおよびそのアナログ)、(ii)アミノ酸またはアミノ酸様部分(例えば、20種類のD−もしくはL−アミノ酸の内のいずれかまたはその任意のアミノ酸アナログ(例えば、O−メチルチロシンまたはEllmanら、Meth.Enzymol.202:301、1991によって記載されたアナログの内のいずれか))および(iii)両者の間の結合(例えば、3’位置、より好ましくないが2’位置におけるエステル、アミドまたはケトン結合)を含むが、この結合は好ましくは天然のリボヌクレオチド構造由来の環状構造を顕著に乱さない。さらにこの用語は、タンパク質コード配列に(核酸配列に介在することによって直接的または間接的に)共有結合したペプチドアクセプター分子と共に、一部の非共有結合的手段、例えばタンパク質コード配列の3’末端に、またはその近傍に結合する第二の核酸配列を用いたハイブリダイゼーションによってタンパク質コード配列と接続した分子や、それ自身がペプチドアクセプター分子と結合する分子を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0044】
II.概観
本発明は、発現ライブラリーからscFv抗体分子の確実な発現および選別を可能にするインビトロRNAディスプレイの改良法を特徴とする。
【0045】
RNAディスプレイ法は、発現したタンパク質またはペプチドが共有結合または緊密な非共有結合的相互作用によってそのコード化mRNAと結合してRNA/タンパク質融合分子を形成する、タンパク質またはペプチドライブラリーの発現を一般に含む。RNA/タンパク質融合体におけるタンパク質またはペプチド成分は、所望の標的との結合および結合しているコード化mRNA成分の配列決定によって決定されるタンパク質またはペプチドの同一性に対して選別され得る。現在のRNAディスプレイ法は、scFv鎖内ジスルフィド結合の形成、従ってscFv抗体分子の正確なフォールディングを抑制する還元条件下でそのステップのいくつかが行われるため、scFv抗体発現に対して最適ではない。現在の方法は、追加的にVHまたはVL抗体断片のいずれかを選別プロセスにおいて利用する。
【0046】
本発明は、scFv鎖内ジスルフィド結合、従ってscFv抗体分子の正確なフォールディングに有利に働く、弱還元条件下でインビトロRNAディスプレイアッセイを行うことによって、この技術上の課題を解決する。単一の可変領域(例えば、単一のH鎖可変(VH)領域)ではなくむしろscFvフォーマットを用いることはまた、選別されたVH領域を完全IgG抗体に変換するのに必要な、適合するL鎖可変(VL)領域を同定する必要もなくす。従って、本発明の方法は、scFv抗体分子の発現および選別に特に適しているが、あらゆるクラスのタンパク質のインビトロRNAディスプレイにも都合が良い。
【0047】
本発明の方法はまた、RNAディスプレイ実施のためのより短く、より簡便なプロトコールも提供する。これは、標的で選別する前にRNA−タンパク質融合体におけるmRNAをcDNAに逆転写する、時間のかかるステップを避けることにより部分的に達成される。
【0048】
III.改良インビトロRNAディスプレイスクリーニング法
本発明はその一態様において、改良インビトロRNAディスプレイスクリーニング法を特徴とする。概要方法は、次の通りである。
【0049】
1)RNA/タンパク質融合体の形成
1種類以上のインビトロ抗体DNA発現ライブラリーが転写され、mRNAを生成する。どのようなインビトロ抗体発現ライブラリー(例えば、VH、VLまたはscFvライブラリー)も適切であるが、本発明の方法はscFvライブラリーに特によく適している。技術分野で認識されているどの転写方法も適切である。RNA転写後、DNAライブラリーテンプレートは除去される。この操作は、技術分野で認識されている任意の方法、例えばDNaseIによる消化を用いて行うことができる。
【0050】
DNA除去後、ペプチドアクセプターがライブラリーmRNAの3’末端に結合される。この操作は、技術分野で認識されている任意の方法を用いて行うことができる。一実施形態において、5’(ソラレンC6)2’OMe(UAGCGGAUGC)XXXXXXCC(ピューロマイシン)3’(配列番号20)、(式中、XはトリエチレングリコールまたはPEG−150であり、CCは標準的なDNA骨格である)を含むリンカーが用いられる。リンカーは先ず、相補的塩基対合によってライブラリーmRNAの3’末端に結合される。続いてリンカーは、ソラレンC6分子のUV活性化によってmRNAと架橋される。
【0051】
ペプチドアクセプターの付加後、続いてライブラリーmRNAはインビトロシステムにおいて翻訳される。技術分野で認識されている任意のインビトロ翻訳方法、例えばウサギ網状赤血球ライセート法が適切である。なお、scFv分子において適切な鎖内ジスルフィド結合を形成させるため、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)がインビトロ翻訳反応に添加されるおよび/または弱酸化条件下で反応が行われる。一実施形態において、弱い酸化剤(例えば、GSSG/GSH、例えば、100mM GSSG/10mM GSH)がインビトロ翻訳反応に添加される。別の一実施形態において、還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT))がインビトロ翻訳反応から取り除かれる。
【0052】
1種類以上の標識アミノ酸またはその誘導体が、標識アミノ酸がその結果生じる抗体に取り込まれるようにインビトロ翻訳システムに添加されてよい。技術分野で認識されている任意の標識アミノ酸、例えば放射性標識アミノ酸、例えば35S標識メチオニンまたはシステインが企図される。
【0053】
インビトロ翻訳反応において、mRNA分子は、3’末端に融合したペプチドアクセプター(例えば、ピューロマイシン)を介してそのタンパク質産物と共有結合するようになる。このRNA/タンパク質融合分子は、インビトロ翻訳反応混合液から精製される。反応混合液からRNA/タンパク質融合分子を分離する、技術分野で認識されている任意の方法が企図される。一実施形態において、RNA/タンパク質融合タンパク質は、ポリデオキシチミジン(ポリdT)レジンを用いたクロマトグラフィーによって分離される。別の一実施形態において、RNA−抗体融合タンパク質は、RNA/タンパク質融合タンパク質の抗体成分に存在するエピトープに特異的な抗体への結合によって分離される。エピトープは、アミノ酸配列タグ、例えばRNA−抗体融合タンパク質の抗体成分のアミノ酸配列の、例えばN末端、C末端または可変領域間リンカーに取り込まれたFLAGまたはHAタグとなることができる。
【0054】
本発明のRNA/タンパク質融合体は、裸のRNAの使用を含む。好ましい一実施形態において、RNA/タンパク質融合体と接触するあらゆる試薬は、RNaseインヒビター試薬、例えばRNaseOUT(商標)、酵母tRNA、SUPERaseIn(商標)、RNasin(登録商標)その他の本技術分野で公知のRNaseインヒビターで処理される。
【0055】
2)所望の標的に対する抗体のスクリーニング
RNA/タンパク質融合体のライブラリーは、所望の標的とのインビトロ結合に対してスクリーニングされる。一般に、標的分子は、固体支持体、例えばアガロースビーズに結合する。一実施形態において、標的分子は固体基質と直接結合する。別の一実施形態において、標的分子は先ず修飾、例えばビオチン化され、続いて修飾標的分子は修飾を介して固体基質、例えばストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースと結合する。他の実施形態において、固体支持体は、磁気ビーズ、例えばDynabeadsをさらに含む。このような磁気ビーズによって、固体支持体とそれに結合した任意のRNA/抗体融合体をアッセイ混合液から磁石を用いて分離できる。
【0056】
RNA/タンパク質融合体の結合の後、固体支持体は1回以上洗浄されて非結合RNA/タンパク質融合体を除去し、次にRNAが増幅される。一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAが増幅されてより多くのmRNAを産生する。技術分野で認識されている任意のRNA複製方法、例えばRNAレプリカーゼ酵素を用いた方法が企図される。別の一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAは、PCRで増幅される前にcDNAに転写されてもよい。PCR増幅プールは1ラウンド以上のスクリーニングに付されて、最も高い親和性の抗体を濃縮してもよい。
【0057】
さらに、またはあるいは、RNA/タンパク質融合体は、核酸成分の増幅前に固体支持体から溶出され得る。技術分野で認識されている任意の溶出方法が企図される。一実施形態において、RNA/タンパク質融合体は、アルカリ性条件を用いて、例えば約8.0−10.0のpHを用いて溶出される。別の一実施形態において、RNA/タンパク質融合体は、酸性条件を用いて、例えば約3.0−6.0のpHを用いて溶出される。一実施形態において、RNA/タンパク質融合体は、核酸成分の増幅前に溶出されず、むしろRNA/タンパク質融合体は増幅反応混合液に直接添加される。
【0058】
さらに、またはあるいは、核酸のPCR増幅プールは単分子配列決定法を用いて配列決定され、選別された全RNA/タンパク質分子の核酸配列を決定することができる。一実施形態において、PCR増幅は、高忠実度プルーフリーディングポリメラーゼ、例えばサーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来のKOD1耐熱性DNAポリメラーゼまたはPlatinum Taq DNAポリメラーゼHigh Fidelity(Invitrogen)を用いて行われてよい。
【0059】
さらに、またはあるいは、核酸配列は増幅DNAに突然変異を導入させる条件下で増幅され、これにより選別された核酸配列にさらなる多様性を導入することができる。この突然変異したDNA分子のプールは、さらなるスクリーニングラウンドに付されてよい。
【0060】
IV.ライブラリー構築
本発明のライブラリーは、標的に結合できる任意の抗体断片から作製され得る。一実施形態において、抗体可変領域のライブラリーが作製される。これは、VHおよび/またはVL領域となることができる。別の一実施形態において、scFvライブラリーが作製される。
【0061】
本発明のライブラリーは、可変部の外側の領域、例えば定常部もしくはその断片またはヒンジ部をコード化する抗体核酸配列を含むこともできる。
【0062】
本発明の核酸ライブラリーは、RNA、DNAまたはRNAとDNAの両要素を含有するハイブリッドを含むことができる。
【0063】
核酸のペプチドアクセプターとの連結
抗体核酸ライブラリーは、ペプチドアクセプター部分を含むよう修飾され得る。この操作は、核酸発現ライブラリーの個々のメンバーとその同系タンパク質産物との共有結合を容易にする。例えばその内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,643,768号、米国特許第5,658,754号、米国特許第7,195,880号および米国特許第6,951,725号に記載されている手段等、技術分野で認識されているペプチドアクセプターを核酸に結合する任意の手段が企図される。
【0064】
本発明はその一態様において、ペプチドアクセプターを核酸ライブラリーへと結合するための新しい方法および組成物を特徴とする。一実施形態において、ソラレンC6分子およびペプチドアクセプター分子が核酸ライブラリーの3’末端配列と相補的な核酸配列と融合した、ソラレンC6分子およびペプチドアクセプター分子を含む連結分子が合成され得る。このような連結分子は、相補的塩基対合を介して核酸ライブラリークローンの3’末端と結合することができる。ソラレンC6は、紫外線(UV)光感受性であり、リンカーを核酸ライブラリークローンに架橋し、これによりペプチドアクセプターを核酸ライブラリークローンに共有結合させる。別の一実施形態において、リンカー分子の核酸部分は、修飾されたヌクレオチド、例えば2プライムメトキシ(2’OMe)リボヌクレオチドを含むことができる。別の一実施形態において、リンカー分子は、ソラレンC6分子とペプチドアクセプター分子を含む核酸領域を隔てるトリエチレングリコールまたはPEG−150リンカーをさらに含む。一実施形態において、リンカーは、5’から3’へと、ソラレンC6、配列UAGCGGAUGC(配列番号20)を含む2’OMeリボヌクレオチド、6個のトリエチレングリコールまたはPEG−150部分、2個のシチジン残基、およびピューロマイシンを含むことができる。このようなリンカーは、例えばTriLink BioTechnologies,Inc.によってオーダーメイド合成され得る。
【0065】
V.一般スクリーニング法
本発明はその一態様において、本発明の発現ライブラリーをスクリーニングして所望の抗原と結合できる抗体を同定する方法を特徴とする。抗体の標的分子への結合に基づいて発現ライブラリーから抗体の選別を可能にする任意のインビトロまたはインビボスクリーニング法が企図される。
【0066】
一実施形態において、本発明の発現ライブラリーは、技術分野で認識されているインビトロ無細胞表現型−遺伝子型連関ディスプレイを用いてスクリーニングされ得る。このような方法は、本技術分野でよく知られており、例えば米国特許第7,195,880号、6,951,725号、7,078,197号、7,022,479号、6,518,018号、7,125,669号、6,846,655号、6,281,344号、6,207,446号、6,214,553号、6,258,558号、6,261,804号,6,429,300号、6,489,116号、6,436,665号、6,537,749号、6,602,685号、6,623,926号、6,416,950号、6,660,473号、6,312,927号、5,922,545号および6,348,315号に記載されている。これらの方法は、タンパク質がその起源である核酸と物理的に関連または結合するような仕方で、核酸からインビトロでタンパク質を転写することを含む。発現したタンパク質を標的分子で選別することによって、タンパク質をコードする核酸もまた選別される。
【0067】
scFvタンパク質の発現を改善するため、上述において参照されたインビトロスクリーニングアッセイは特定の試薬の添加または除去を必要とし得る。一実施形態において、機能的scFv分子の産生を改善するために、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ酵素がインビトロ発現システムに添加されてよい。別の一実施形態において、弱い酸化剤(例えば、GSSG/GSH、例えば、100mM GSSG/10mM GSH)がscFvタンパク質のインビトロ翻訳反応混合液に添加されて、scFv分子のVHおよびVL領域における鎖内ジスルフィド結合を形成させることができる。別の一実施形態において、還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT))が、scFvのインビトロ翻訳反応混合物から除去されてよい。
【0068】
別の一実施形態において、1種類以上の標識アミノ酸またはその誘導体が、標識アミノ酸がその結果生じる抗体に取り込まれるように、インビトロ翻訳システムに添加されてよい。技術分野で認識されている任意の標識アミノ酸、例えば放射性標識アミノ酸、例えば35S標識メチオニンまたはシステインが企図される。
【0069】
一実施形態において、本発明のインビトロスクリーニングアッセイは、単数または複数の抗体のインビトロ選別後に、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAが逆転写されて前記単数または複数の抗体をコードするcDNAを生成できることを必要とする。任意の適切な逆転写方法、例えば、酵素を介した逆転写、例えばモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素が企図される。
【0070】
本発明で用いられているスクリーニング法は、所望の標的に特異的に結合する抗体をコードする核酸の増幅を必要とし得る。一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAは、増幅されてさらにmRNAを生成することができる。技術分野で認識されている任意のRNA複製方法、例えばRNAレプリカーゼ酵素を用いた方法が企図される。別の一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAは、PCRで増幅される前に先ずcDNAに逆転写されてよい。一実施形態において、PCR増幅は、高忠実度プルーフリーディングポリメラーゼ、例えばサーモコッカス・コダカラエンシス由来のKOD1耐熱性DNAポリメラーゼまたはPlatinum Taq DNAポリメラーゼHigh Fidelity(Invitrogen)を用いて行われてよい。別の一実施形態において、PCR増幅は、増幅されたDNAに突然変異を導入する条件下、例えばエラープローンPCRを用いて行われてもよい。
【0071】
別の一実施形態において、本発明の発現ライブラリーは、細胞、ウイルスまたはバクテリオファージ表面における提示によってスクリーニングされ、固定化した標的分子を用いた選別に付されてよい。適切なスクリーニング方法は、米国特許第7,063,943号、6,699,658号、6,423,538号、6,696,251号、6,300,065号、6,399,763号、6,114,147号および5,866,344号に記載されている。
【0072】
本発明で用いられているスクリーニング法は、発現した抗体分子における1個以上のアミノ酸置換および/または欠失を生じ得る核酸置換および/または欠失を導入することによって、抗体ライブラリーへの多様性の導入を必要とし得る。技術分野で認識されている任意の突然変異誘発方法、例えばランダム突然変異誘発、「walk through」突然変異誘発および「look through」突然変異誘発が企図される。このような抗体の突然変異誘発は、例えばエラープローンPCR、酵母もしくは細菌の「ミューテーター」株または抗体の全体もしくは一部のアブイニシオ合成における、ランダムまたは確定的な核酸変化の取り込みを用いて達成され得る。一実施形態において、1個以上のアミノ酸がランダムに突然変異した抗体分子のライブラリーが作製され得る。別の一実施形態において、1個以上のアミノ酸が1個以上の所定のアミノ酸に突然変異した抗体分子のライブラリーが作製され得る。
【0073】
本発明で用いられているスクリーニング法は、改善された標的親和性を備える抗体の選別のため、標的結合スクリーニングアッセイのストリンジェンシーが強まることも必要とし得る。抗体−標的相互作用アッセイのストリンジェンシー増強するための、技術分野で認識されている任意の方法が考慮され得る。一実施形態において、1種類以上のアッセイ条件(例えば、アッセイバッファーの塩濃度)が変化され、抗体分子の所望の標的に対する親和性を低減させることができる。別の一実施形態において、抗体が所望の標的と結合できる時間の長さが短縮され得る。別の一実施形態において、抗体−標的相互作用アッセイに競合結合ステップが加えられてよい。例えば、抗体は所望の固定化標的と先ず結合できる。次に、抗原に対して最も低い親和性を有する抗体が固定化標的から溶出され、その結果、抗原結合親和性の向上した抗体が濃縮されるよう、固定化標的との結合と競合するよう作用する特定の濃度の非固定化標的が添加され得る。アッセイ条件のストリンジェンシーは、アッセイに添加される非固定化標的濃度を増加することによってさらに強くなることができる。
【0074】
本発明のスクリーニング法はまた、標的結合の向上した1種類以上の抗体を濃縮するために複数ラウンドの選別も必要とし得る。一実施形態において、選別の各ラウンドにおいて、技術分野で認識されている方法を用いてさらなるアミノ酸突然変異が抗体に導入され得る。別の一実施形態において、選別の各ラウンドにおける所望の標的に対する結合のストリンジェンシーは、所望の標的に対して向上した親和性を有する抗体を選別するために強くなることができる。
【0075】
本発明のスクリーニング法は、インビトロ翻訳システムの成分からRNA−抗体融合タンパク質の精製を必要とし得る。この操作は、技術分野で認識されている任意の分離方法を用いて行われてよい。一実施形態において、RNA−抗体融合タンパク質は、ポリデオキシチミジン(ポリdT)レジンを用いたクロマトグラフィーによって分離されてよい。別の一実施形態において、RNA−抗体融合タンパク質は、RNA−抗体融合タンパク質の抗体成分に存在するエピトープに特異的な抗体を用いたクロマトグラフィーによって分離されてよい。エピトープは、アミノ酸配列タグ、例えばRNA−抗体融合タンパク質の抗体成分のアミノ酸配列の、例えばN末端、C末端または可変領域間リンカーに取り込まれたFLAG、MycまたはHAタグとなることができる。
【0076】
本発明のライブラリーの抗体選別は、固定化標的分子の使用を必要とし得る。一実施形態において、標的分子は固体基質、例えばアガロースビーズに直接連結される。別の一実施形態において、標的分子は先ず修飾、例えばビオチン化され、続いて修飾された標的分子は修飾を介して固体支持体、例えばストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースと結合する。
【実施例】
【0077】
発明の具体例
他に記載がなければ、実施例を通じて次の材料と方法が用いられた。
【0078】
材料と方法
一般に、他に断りがなければ、本発明の実施において、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば免疫グロブリン技術)および畜産業における従来の技法が用いられる。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology)、510、Paul、S.、Humana Pr(1996);Antibody Engineering:A Practical Approach(Practical Approach Series、169)、McCafferty、Ed.、Irl Pr(1996);Antibodies:A Laboratory Manual、Harlowら、C.S.H.L.Press、Pub.(1999);Current Protocols in Molecular Biology、eds.Ausubelら、John Wiley&Sons(1992)を参照。
【0079】
scFv用のmRNAディスプレイプロトコール
mRNAディスプレイは、図2に示されている方法に従って行うことができる。この方法の特定の実施形態はより詳細に後述される。これら実施形態は、本発明の方法を説明することを目的としており、限定するものであると理解するべきでない。
【0080】
1.抗体ライブラリーテンプレートの設計
ライブラリーDNAコンストラクトは、本技術分野で公知の抗体ライブラリー作製方法に従って設計することができる。一実施形態において、ライブラリーコンストラクトは、抗体断片、すなわち抗体L鎖断片(VL)または抗体H鎖断片(VH)をコードすることができる。例示的な実施形態において、ライブラリーコンストラクトは、単鎖可変断片(scFv)をコードすることができる。
【0081】
2.標的抗原の調製
一般に、mRNAディスプレイ抗体ライブラリーは、ビオチン化抗原に対して選別することができる。各標的に対する最良の抗原は、ケースバイケースの原則に従って決定するべきであるが、次の記載は一般的ガイドラインとして用いることができる。標的抗原は、通常十分に特徴付けられ、多型(SNPおよびハプロタイプ)および/または薬理遺伝学的解析によって決定されるような、関連または優性遺伝アイソタイプである。標的抗原はさらに適切な生物活性(天然の抗原と同等の)、十分な溶解度ならびに化学的および物理的特性を有することができ、ライブラリー選別すなわちスクリーニングおよび下流のバイオアッセイに十分な量を調製することができる。
【0082】
3.ライブラリーDNAの調製
ライブラリーDNAおよびその選別アウトプットは、PCRによって増幅することができる。PCR増幅は、本技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。PCR反応液は通常、DNAテンプレート、反応バッファー、dNTP、増幅用プライマー、DNAポリメラーゼおよび水を含む。複数の反応チューブをマスターミックスから一度に調製し、増幅DNA収量を増加することができる。25サイクルのPCRによって通常十分な増幅がもたらされるが、より多くの産物を得るために35サイクルもの回数を用いてもよい。
【0083】
4.ライブラリーDNAの精製
産物が正確なサイズ(scFvは、ほぼ850bp、VHまたはVLライブラリーは、ほぼ500bp)であり、最小限の非特異的産物を含む場合、産物は転写反応に直接用いることができる。あるいは、産物は調製用アガロースゲルにおいて正確なサイズの特異的なバンドを切り出して精製することができる。DNA濃度は分光計で測定することができる。
【0084】
5.RNAの転写
ライブラリーDNAからRNAの転写は、本技術分野で公知の標準的な方法を用いて行うことができる。大量の反応容量を用いて、全ライブラリー多様性を標本抽出するのに十分なDNAテンプレートを転写することができる。例示的な一実施形態において、1×1013コピーのライブラリーテンプレートをRNA転写反応に用いることができる。RNA転写液は、通常5−10μgのPCR産物、反応バッファー、ATP、CTP、GTP、UTPおよびT7RNAポリメラーゼを含む。RNA転写反応は37℃で2時間から一晩の間行うことができる。選別の最初のラウンドの後、より短い時間を用いてもよいが、一晩の温置によって反応のRNA収量を最大化することができる。RNA転写の後、DNAテンプレートはDNaseI消化によって反応混合液から除去できる。
【0085】
6.NAPカラムクロマトグラフィーによるRNA精製
転写後、RNAはNAP−10カラムを用いて分画することができる。最大約1mLの転写反応液が、RNA精製のためNAP−10カラムに装填できる。カラムは、分画前にDEPC処理dH2Oを用いて平衡化することができる。RNAは、約1.5×反応容量のDEPC処理dH2O(例えば、500μLの転写反応液につき750μL)を用いてカラムから溶出できる。全溶出容量は、転写反応液の容量の約150%未満となることができる。さらに、またはあるいは、RNAはNAP−25カラムを用いて分画できる。
【0086】
7.RNAの品質管理と定量
RNAサンプルのサイズおよび収量は、ゲル電気泳動を用いて、あるいは収集した画分におけるRNA濃度の260nmのOD(OD260)を測定することによって分析できる。例えば、scFv RNAのモル濃度は、次の通り計算できる。
[RNA](μM)=[RNA](mg/mL)×106/(850×330)
=OD260×希釈係数×40(μg/mL)×1000/(850×330)
RNA収量(nmol)=[RNA](μM)×容量(μL)/1000
RNA収量は、通常500μLの転写反応液につき約20nmol/mLの最高値に達する。
【0087】
8.リンカーへのRNAライゲーション
ペプチドアクセプター分子をその3’末端に備えるDNAリンカーは、UV架橋によって各RNA分子の3’末端と共有結合的ライゲーションを行う。リボソームA部位に入り込んで未完成ポリペプチド鎖のカルボキシル末端に共有結合できるペプチドアクセプターは、mRNA(遺伝子型)の、該mRNAによってコード化されたタンパク質(表現型)との共有結合的関連を最終的に可能にできる。次式を有する例示的なPEG6/10リンカーを用いることができる。
5’(ソラレンC6)2’OMe(UAGCGGAUGC)XXXXXXCC(ピューロマイシン)3’(配列番号20)
【0088】
ソラレンC6の5’修飾は光感受性であり、UV架橋によってリンカーとmRNAとの間の共有結合を形成するよう機能する。2’OMe(UAGCGGAUGC)(配列番号20)骨格領域は、mRNAにおけるFLAG配列に対して3’のリンカーアニーリング部位とアニーリングする(図1参照)。上述の配列において、Xは「スペーサー9」、あるいはトリエチレングリコールまたはPEG−150として知られている物質を示す。このスペーサーは、ピューロマイシンの真核生物リボソームA部位への挿入に対する柔軟性を提供するよう最適化されている。CCは標準的なDNA骨格を含む。ピューロマイシンの3’修飾は、リボソームA部位に挿入してリンカーと未完成ポリペプチドとの間に安定的な結合を形成する。本明細書に記載されているリンカーの減衰係数は、約147.7OD260/μモルとなることができる。このリンカーは光感受性であるため、このリンカーを含む溶液は、光から保護しなくてはならない。
【0089】
推定約1012−1013の多様性を備える未処理の抗体ライブラリーの全多様性を標本抽出するため、ライブラリー選別の最初のラウンドのためにラージスケールのライゲーション反応(約5nmolまたは約3.1×1015転写RNA分子)が推奨され得る。このRNA量は、十分なテンプレートが翻訳反応に取り込まれて、ほぼ10pmolの機能的mRNAディスプレイ分子が産生されることを保証し得る。後期ラウンドでは、RNAインプットは選別当たり約0.5nmolへと減少できる。例示的な一実施形態において、RNAライゲーション反応液は、次の成分、すなわちRNA、水、化学ライゲーションバッファーおよびPEG6/ピューロマイシンリンカー(1mM)を含むことができる。例示的な一実施形態において、全反応容量は約100μLである。好ましい一実施形態において、リンカー/RNA分子比は、約1.5より大きくなることができる。一実施形態において、反応液における最終リンカー濃度は約15μMであり、反応液におけるRNA濃度は約3−10μM(=0.3−1nmolのRNAインプット)の範囲に及ぶ。参考までに、1mg/mLの850ntのscFv RNA=3.56μMであり、達成可能な最大ライゲーション濃度は、約3.16μM(約0.32nmol)である。
【0090】
アニーリング反応(リンカーと転写されたRNAとのアニールにおける)は、サーマルサイクラーにおいて行うことができる。好ましい一実施形態において、アニーリング反応は、サンプルを約85℃で約30秒間、続いて1秒当たり約0.3℃のランプ速度を用いて約4℃で温置することによって行うことができる。次に、反応液は約4℃で維持することができる。
【0091】
アニーリングしたリンカー/RNAのライゲーションは、UV架橋によって行うことができる。この操作は当業者に知られた任意の方法を用いて行うことができる。一実施形態において、反応チューブは凍結したフリーザーパックの上に置いて、手持ち式長波長(約365nm)UVランプの下に直接置き、暗所で約15分間架橋することができる。通常のライゲーション効率は約50−90%である。一般に精製は必要とされない。ライゲーション産物は−80℃で保存することができる。
【0092】
9.翻訳反応
例示的な一実施形態において、全反応および精製の後、ほぼ約0.1%のインプットRNAをmRNAディスプレイ分子へと作製することができる。インビトロ翻訳は、当業者に知られた方法と試薬を用いて行われる。一実施形態において、scFvライブラリーを用いた翻訳反応は、約15mLの反応容量における約5nmolのRNAテンプレートと約10mLの網状赤血球ライセートを用いる。
【0093】
翻訳反応液の調製において、GSSG/GSH(酸化型グルタチオン/還元型グルタチオン)溶液は、最終濃度約100mM GSSG/10mM GSHに調製できる。PDIは、PDI粉末をdH2Oに溶解して約1ユニット/μL濃度になるよう調製される。PDI溶液は−20℃で保存できる。
【0094】
【表1】
【0095】
翻訳反応液は、30℃のウォーターバスで1−2時間温置することができ、RNA/タンパク質融合体形成は遅滞なく行うべきである。翻訳容量が3mLを超える場合、RNA/タンパク質融合体収量の顕著な減少が観察できる。従って、反応容量が3mLより多い場合、翻訳反応液のマスターミックスを調製し、続いてより小さなアリコートに分注してよい。
【0096】
10.RNA/タンパク質融合体形成
翻訳反応後、300μLの翻訳反応混合液につき約100μLの2M KClおよび約20μLの1M MgCl2を添加し、約1時間室温または−20℃で一晩温置することができる。あるいは、1.5mlの翻訳反応混合液につき約500μLの2M KClおよび約100μLの1M MgCl2を添加し、約1時間室温または−20℃で一晩温置することができる。この操作は、mRNAテンプレート末端における休止リボソームを安定化し、DNAリンカー末端のピューロマイシンを休止リボソームのA部位に挿入し、これにより翻訳されたscFvタンパク質とそのmRNAテンプレートとを永続的に接続する。反応液が−20℃で一晩保存される場合、室温の温置は短縮できる。反応は、300μLまたは1.5mlの翻訳反応液につきそれぞれ約50μLまたは約250μLの0.5M EDTAを加えてリボソームを停止することによって終了できる。反応液は−20℃で保存できる。5−10μLアリコートを後のシンチレーション計数のため取り分けることができる。
【0097】
11.オリゴdTセルロースによるRNA/タンパク質融合体の精製
このステップは、mRNAディスプレイ分子および残存RNAテンプレートを翻訳/融合反応液から精製するために含まれる。オリゴdT結合のため、全RNAテンプレートを捕集するのに必要な、前洗浄したオリゴdTセルロース量を概算するべきである。十分量のオリゴdT結合バッファーは、約1×最終濃度となるよう融合反応液に加えることができる。次に、前洗浄したオリゴdTセルロースが加えられ、反応液は1時間、4℃で回転することができる。反応液は、場合によって約1500rpm、5分間、4℃でスピンダウンすることができ、上清は廃棄される。オリゴdTセルロースビーズを移し、スピンカラムを用いて1×オリゴdT結合バッファーで約6回洗浄することができ、バッファーは通常、カラムを約1000rpm、10秒間スピンすることによって除去される。貫流液は廃棄してよいが、最後の洗浄液はシンチレーション計数のため取っておくことができる。塩濃度を低下させて溶出を容易にするため、最初のスラリー容量の1/10のdH2Oを乾燥オリゴdTビーズに添加し、即座に10秒間遠心分離して貫流液を廃棄することができる。mRNAディスプレイ分子(および遊離RNAテンプレート)は、ビーズにdH2Oを加えて5分間室温で温置することによって溶出できる。溶出液は、約4000rpm(以上)で20秒間スピンすることによって収集できる。溶出は通常1回繰り返し、溶出液を合わせる。5μLの溶出液をシンチレーション計数のため取り分けることができる。場合によって、オリゴdT精製効率は、NanoDrop分光装置の260nmのOD(OD260)によって評価することもできる。理論的に、全残存RNAテンプレートおよびmRNAディスプレイ分子がオリゴdTビーズによって回収される。5×FLAG結合バッファーが、約1×最終濃度になるよう溶出液に加えられる。サンプルは、次のFLAG精製ステップに進まない場合、−80℃で保存することができる。
【0098】
オリゴdT回収は、次の通りに計算される。約5μLのインプット(融合反応液由来)、最後の洗浄液由来の約100μLおよび約5μLのアウトプット(オリゴdT精製由来の溶出液)。最後の洗浄液は、洗浄の程度を評価するために用いられ、他の2種の計数は、元来のRNAテンプレートインプットからRNA/タンパク質融合体回収を計算するために用いられる。RNA/タンパク質融合体収量(pmol)=(CPMアウトプット×容量アウトプット×5μM×容量ライセート)/[CPMインプット×容量インプット×(産物におけるメチオニンの#)]。この式は網状赤血球ライセートにおける5μMのメチオニン濃度を推測し、計算に用いられているあらゆる容量はμLで表されている。選別の初期のラウンドのmRNAディスプレイ分子収量は、通常0.5−2%であるが、後期ラウンドでは10%に増加する。例えば、PROfusionライブラリーにおける初期ラウンドのメチオニン数は次の通りとなることができる。
・VH−Vκ scFvは約3μM
・VH−Vλ scFvは約2−3μM
・VHは約2μM
・Vκは約2μM、および
・Vλは約1μM
これらの数値は平均であり、生殖細胞系列の配列に基づいており、当業者であれば、ライブラリーが特定の配列へと濃縮するに従って、これらが選別ラウンドにわたって変化し得ることを理解できる。
【0099】
12.抗FLAG M2アガロースによるRNA/タンパク質融合体精製
このステップは、残存RNAテンプレートからmRNAディスプレイ分子を精製するよう設計されている。ライブラリーが抗原オフレート競合によってまたは抗原発現細胞によって選別される場合、このステップに進む必要はない。全mRNAディスプレイ分子の捕集に必要とされる、前洗浄された抗FLAG M2アガロースビーズの量を概算することができる。一実施形態において、ビーズの結合能力は、50%スラリー1mL当たり約6nmol融合タンパク質となることができる。結合と洗浄における操作に十分なビーズ容量を有するために、少なくとも約200μLの前洗浄されたビーズを用いることが推奨される。後述の例は、最初の翻訳反応液300μLに対するものである。
【0100】
FLAG精製:大口径ピペットチップを用いて300μLの前洗浄した抗FLAG M2アガロースをオリゴdT精製されたアウトプットに移し、次に1時間4℃で回転することができる。抗FLAG M2アガロースとの温置は一晩続けてよい。抗FLAG M2アガロースは、場合によって遠心分離機で約1500rpm、約1分間4℃でスピンして、上清を捨てることができる。抗FLAGビーズは、スピンカラムを用いて(例えば、Invitrogen(商標)微量遠心スピンカラム)約500−700μLの1×FLAG結合バッファーで約5−6回洗浄し、各洗浄につき約1000rpmで10秒間遠心分離することができる(Invitrogen(商標)カラムは、より高速、例えば約10,000rpmでスピンできることに留意)。貫流液は廃棄することができる。ビーズは約1000rpmで10秒間遠心分離することによって、700μLの選別バッファー(後述を参照)で追加的に2回洗浄することができる。最後の洗浄は、シンチレーション計数のため取っておくことができる。mRNAディスプレイ分子は、約400μLの100μg/mL FLAGペプチド(選別バッファーに溶解)を添加して5分間室温で温置することによって溶出できる。溶出液は、約3000rpm(か、可能であればそれ以上)で20秒間スピンすることによって収集することができる。溶出ステップは、約400μLの100μg/mL FLAGペプチドを加えることによって、もう1回繰り返すことができる。両方の溶出液は合わされて、約5μLをシンチレーション計数のために取り分けることができる。この容量のFLAGペプチドは、最大約1mLの50%スラリーからの溶出に十分となることができ、より少量のスラリーが用いられているおよび/またはより高いRNA/タンパク質融合体濃度が望ましい場合、半量(200μL)に縮小することができる。保存や抗原選別におけるRNA分解を防ぐため、適量の本技術分野で公知のRNaseインヒビター(すなわち、1−2U/μL RNaseOUTおよび0.02μg/mL酵母tRNA)が、精製されたmRNAディスプレイライブラリーに添加されてよい。次の抗原選別ステップに進まない場合、サンプルを−80℃で保存する。
【0101】
FLAG回収を定量するため、約5μLの溶出アウトプットおよび最後の洗浄由来の約100μLをベータカウンターで計数する。10−30%以上の回収を予想でき、次式に従って計算することができる。
PROfusion分子回収%=(CPMアウトプット×容量アウトプット)/(CPMインプット×容量インプット)
【0102】
13.ビオチン化抗原によるライブラリー選別
選別は、ライブラリーの抗原への結合が平衡に達したときに目的の標的に特異的に結合する分子を濃縮するように設計される。ネガティブ選別(プレクリア)は、非特異的およびマトリックスバインダーを未処理scFvライブラリーから除去するのに必要となり得るが、単一のテンプレートから作製されたライブラリー、例えば単一scFvテンプレートに基づいて親和性成熟を行う、親和性成熟のために作製されたライブラリーが挙げられるがこれらに限定されない、を用いる場合省略することができる。標的フォーマットに依存して選別プロトコールは異なる。次に、ビオチン化標的を用いた使用のための例示的な選別プロトコールを記載する。このプロトコールは、他のフォーマットの標的抗原に適合するよう修正することができ、所望のアウトプットに応じてスケールアップまたはスケールダウンすることができる。
【0103】
A.選別前の調製
ストレプトアビジン(SA)磁気ビーズは、捕集のため用いることができ、通常使用前にプレブロッキングすることができる。SAビーズは、原瓶から1.5または2mLチューブに移して2mLの1×FLAG結合バッファーで2回洗浄することができる。ビーズは2mLの選別バッファーで(2時間から一晩)4℃で回転しながらブロッキングすることができる。プレクリアと選別捕集の両方に十分なビーズを調製することが重要である。プレブロッキングされたビーズは4℃で保存することができる。10pmolのビオチン化抗原につき約100μLのビーズが通常用いられるが、捕集ビーズ容量は、反応収量に対する遊離ビオチンの結合能力(例えば、ビーズ濃度が通常10mg/mlである場合、650−900pモル/mgビーズ)を考慮して計算するべきことを当業者であれば理解できる。
【0104】
1.5mLまたは2mL微量遠心チューブは、1×FLAG結合バッファーで約1時間から一晩、プレブロッキングすることができる。プレブロッキングされたチューブは、全プレクリアおよび選別ステップに用いることができる。通常、各サンプルにつき4本のチューブが必要とされる。2本はプレクリア用、1本はビーズ用、そして1本は選別用である。
【0105】
最適な結果は、ライブラリーをプレクリアすることによって得ることができる。FLAG精製したmRNAディスプレイライブラリーは、捕集容量の半量に相当するSAビーズ容量のビーズ(バッファーから分離)に加えることができる。ビーズは、30℃で約30分間回転することができる。プレクリアしたmRNAディスプレイライブラリーは、磁石を用いてビーズから分離することができ、プレクリアはもう一回繰り返すことができる。第二のプレクリアSAビーズは、上述の通りに洗浄、計数して、バックグラウンドが高いか判断することができる。これは、「抗原無し」ネガティブコントロールとすることもできる。
【0106】
B.ライブラリー選別:結合
選別の第一ラウンドのため、ビオチン化標的(100nM)をプレクリアしたライブラリー全体に添加して、30℃で1時間回転することができる。後期選別ラウンドのため、抗原結合分子の回収が1%を超えることが予想される場合、プレクリアしたライブラリーは、2個の等量アリコートに分注することができる。ビオチン化抗原は一方のアリコートに加えることができ、他方のアリコートは「抗原無し」ネガティブコントロールとなることができる。あるいは、上述の通り、洗浄した第二のプレクリアビーズは、より「プレクリア」でないことになるが、「抗原無し」コントロールであると考えることができる。後期ラウンドにおける抗原濃度は、抗原結合分子の回収が5%を超える場合減少させることができる。特に、抗原濃度は、抗原が「粘着性」であるように思われ、顕著な回収が初期ラウンドで観察される場合、減少させるべきである。抗原濃度は、抗原結合分子の回収がバックグラウンドより(例えば、抗原無しコントロールに対して)顕著に高くなる場合、後期ラウンドで減少させてよい。ライブラリーと抗原との間の化学量論に注意して、特に抗原濃度が低い場合、ライブラリーPROfusion分子より少なくとも5倍モル過剰の抗原が含まれていることを確実にすることが重要である。
【0107】
C.ライブラリー選別:捕集
ライブラリー捕集用SAビーズのブロッキングに用いられている選別バッファーは、遠心分離と磁気選別によって除去することができる。抗原と結合したライブラリーは、プレブロッキングされたSAビーズ(バッファーから分離)、次に結合反応液へと移され、30℃で5−10分間回転した。捕集用SAビーズ量は、結合能力および選別に用いられている標的の濃度(上述を参照)に基づいて計算するべきである。SAビーズ量は、SAビーズバインダーを抑制するため標的濃度を下げる場合少なくするべきであるが、通常50μL以上のビーズが用いられる。
【0108】
D.ライブラリー選別:洗浄
磁石を用いてSAビーズを捕集し、約1mLの選別バッファーで1分間洗浄することができる。このステップは、約5回繰り返すことができる(合計約6回)。洗浄回数を後期ラウンドで増やして、オフレート選別戦略を一部の標的に取り込むことができる。ビーズは、最後の1回は約1mLの逆転写に適切な1×バッファーで洗浄して磁石で捕集し、水(上で計算された捕集ビーズ容量の4分の1)に再懸濁することができる。
【0109】
別の一例として、Dynabeads(商標)(Invitrogen)を用いることができるが、当業者であれば、他のビーズも等しく適切であることを理解することができる。Dynabeads(商標)は、遠心分離と磁気選別によって非結合ライブラリーから分離することができる。上清は1mLチップで除去することができるが、相互汚染を避けるため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる。Dynabeads(商標)は、1mLの選別バッファーで洗浄し、穏やかにピペッティングまたはチューブを複数回反転することによって再懸濁することができる。チューブは、次のライブラリーを処理している間にビーズ分離用の磁気ホルダーに戻すことができる。全ライブラリーを洗浄した後、上清は1mLチップによって除去することができるが、相互汚染を避けるため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる。洗浄を5回繰り返す。Dynabeads(商標)は、上述の通り1mLの1×First Strandバッファー(SuperScript II、Invitrogen)で2回洗浄することができる。最後の洗浄において、必要に応じて、計数のためライブラリーの1/10を別個のチューブに取り分けて、ライブラリー回収を決定した。Dynabeads(商標)は、磁気選別によって捕集することができ、バックグラウンド計数のため約100μlの洗浄バッファーを取り分けることができる。Dynabeads(商標)は、上で計算された通り、捕集ビーズ容量の1/4の水に再懸濁することができる。
【0110】
E.ライブラリー選別:計数および回収計算
ラウンド3から始めて、最後の洗浄液およびビーズの約10−20%を計数する。計数を抑える可能性があるため、100μLより多いビーズを計数することは望ましくない。ライブラリー選別回収は次式に従って計算することができる。
選別回収%=100×CPM全ビーズ/CPM全インプット
【0111】
14.Fc融合タンパク質による平衡ライブラリー選別
別の一実施形態において、ライブラリー選別は、抗体Fc領域と結合した標的抗原(例えば、Fc融合タンパク質)に対して行うことができる。ネガティブ選別(プレクリア)は、未処理抗体ライブラリーから非特異的およびマトリックスバインダーを除去するために必要となり得るが、親和性成熟には省略してよい。選別特異性は、標的抗原をヒトIgG1とマウスIgG2aの両方と融合することによって改善することができる。ライブラリー選別においてFc融合タンパク質中に異なるFc領域を有することによって、Fc領域特異的なライブラリーバインダーを同定するリスクを最小限に抑えることができる。この操作はまた、ライブラリーバインダーを2種類の異なる磁気ビーズ(プロテインGおよび抗マウスIgG)によってプルダウンすることもでき、これによりさらに抗プロテインGまたは抗−抗マウスIgGバインダーを回収する可能性を低減させることができる。標的Fc融合タンパク質は、ビオチン化し、本明細書に記載されている方法か上述第13節の方法のいずれかによって選別することができる。抗体VH領域の特定部位(例えば、ヒトVH3ファミリー生殖細胞系列の配列に由来するVH)との交差反応のため、プロテインA磁気ビーズがFc融合タンパク質標的に対する選別に適さない可能性を留意するべきである。scFv−PROfusion分子と結合する抗原のプルダウンに適切な磁気ビーズは、DynabeadsプロテインG、Dynabeads全マウスIgGおよび他のヒトまたはマウスIgGに利用可能なDynabeads M−280を含むが、これらに限定されるものではない。一般に、プロテインGビーズの結合能力は、プロテインA/G磁気ビーズ100μLにつき約25μgのヒトIgG1(ほぼ167pmol)であると考えられる。
【0112】
A.選別前の調製
DynabeadsプロテインGまたはDynabeads全マウスIgG(標的抗原がマウスFc融合タンパク質である場合)は、捕集のため用いることができ、通常使用前にプレブロッキングされる。ライブラリーのプレクリアと選別に必要とされるDynabeadsの量は計算することができる。Dynabeadsは、原瓶から1.5または2mL微量遠心チューブへと移してバッファーを除去することができる。ビーズは1mLの選別バッファーで(2時間から一晩)4℃、または1時間室温でブロッキングすることができる。プレクリアと選別捕集の両方に十分なビーズを調製することが重要である。
【0113】
1.5mLまたは2mL微量遠心チューブは選別バッファーで1時間から一晩プレブロッキングすることができ、全プレクリアおよびライブラリー選別ステップにおいてプレブロッキングされたチューブを用いるべきである。
【0114】
FLAG精製したscFv PROfusionライブラリーは、プレブロッキングしたビーズ(バッファーから分離)に加えることができ、捕集容量(上述の通り計算された)の半量に相当するDynabead(プロテインGまたは全マウスIgG)容量を用いて、反応液を30℃で30分間回転することができる。プレクリアした融合ライブラリーは、磁石を用いてビーズから分離することができ、プレクリアはもう1回繰り返される。第二のプレクリアDynabeadsは、上述の通り洗浄、計数してバックグラウンドが高いか判断することができる。これは「抗原無し」ネガティブコントロールとなることもできる。
【0115】
B.ライブラリー選別:結合
選別の第一ラウンドのため、ビオチン化標的(100nM)をプレクリアしたライブラリー全体に添加して、30℃で1時間回転することができる。後期選別ラウンドのため、抗原結合分子の回収が1%を超えることが予想される場合、プレクリアしたライブラリーは、2個のアリコートに分注することができる(ライブラリーの計数に応じて、50/50から80/20)。ビオチン化抗原が一方のアリコート(全体の50−80%)に添加され、他方のアリコートは「抗原無し」ネガティブコントロールとなることができる。あるいは、上述の通り、洗浄された第二のプレクリアビーズも、より「プレクリア」でない場合を除き「抗原無し」コントロールであると考えることができる。抗原が「粘着性」であると思われ、初期ラウンドで顕著な回収が観察される場合、抗原濃度は低減させてよい。さらに、抗原結合分子の回収がバックグラウンド(抗原無しコントロール)よりも顕著に高くなる場合、抗原濃度は後期ラウンドで低減させてよい。ライブラリーと抗原との間の化学量論に注意して、特に抗原濃度が低い場合、ライブラリーPROfusion分子に対して少なくとも5倍モル過剰の抗原が含まれていることを確実にすることが重要である。
【0116】
C.ライブラリー選別:捕集
ライブラリー捕集用Dynabeadsのブロッキングに用いられている選別バッファーは、遠心分離と磁気選別によって除去することができる。抗原結合ライブラリーは、プレブロッキングされたDynabeads(バッファーから分離)へと移され、続いて結合反応液へと移されて30℃で20分間回転することができる。捕集に用いられているDynabeadsの量は、上述の通りビーズの結合能力と、選別に用いられている標的抗原濃度に基づいて計算することができる。ビーズバインダーのプルダウンを避けるため、標的抗原濃度が低い場合、Dynabeadsの量は低く抑えるべきである(なお、500μgまたは50μl以上であること)。
【0117】
D.ライブラリー選別:洗浄
Dynabeads(商標)は、非結合ライブラリーから遠心分離や磁気選別によって分離することができる。上清は1mLチップで除去することができるが、相互汚染をなくすため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いることができる。新しいピペットチップを用いて、Dynabeads(商標)を約1mLの選別バッファーで洗浄することができ、Dynabeads(商標)は、穏やかなピペッティングによってまたはチューブを複数回反転することによって再懸濁することができる。チューブは、次のライブラリーを処理している間にビーズの分離のために磁気ホルダーに戻すことができる。全ライブラリーを洗浄した後、上清は1mLチップ(相互汚染をなくすため、各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる)で除去することができる。このステップは、5回の洗浄を繰り返すことができる。Dynabeads(商標)は、上述の通り1mLの1×First Strandバッファー(SuperScript II、Invitrogen)で2回洗浄することができる。最後の洗浄において、ライブラリーの1/10は、必要に応じてライブラリー回収を決定する計数のため別個のチューブに取り分けることができる。Dynabeads(商標)は、磁気分離によって捕集することができ、約100μlの洗浄バッファーはバックグラウンド計数のため取り分けることができる。Dynabeads(商標)は、上で計算された捕集ビーズ容量の1/4の水に再懸濁することができる。
【0118】
E.ライブラリー選別:計数
上述の第13節(E)に記載されている通りに行うことができる。
【0119】
15.抗原競合によるオフレートライブラリー選別
オフレート選別と平衡選別との間の大きな差は、FLAG精製の前に先ずライブラリーが選別抗原と結合することである。FLAG精製後、オフレート競合においてPROfusion分子から非結合になった任意の前結合抗原が競合分子と置き換わるように、ライブラリーは過剰量の競合抗原または抗体(例えば、競合抗原が利用できない場合)と温置することができる。競合分子と結合したPROfusion分子が次の回収ステップで回収されないという点において、競合分子は前結合抗原と異なる。これらは、非修飾抗原または異なるフォーマットの抗原となることができる。抗体もまた競合分子となり得るが、通常抗体は抗原ほど効率的な競合分子ではなく、その効率はライブラリーの抗原に対する親和性が高くなるにつれ減少する。適切な競合期間を特定するため、選別のちょうど前にライブラリーのオフレートを決定することは都合が良い。この期間は、数時間から数週間の範囲に及ぶ。
【0120】
A:ビオチン化抗原または抗原−Fc融合タンパク質を用いたプレロードライブラリー
PROfusion分子を翻訳し、上述の通りオリゴdTによって精製することができる。オリゴdT精製ライブラリーは、5×FLAG結合バッファーを加えて1×最終濃度にする(単純に、ライブラリー容量の25%を加える)ことによって平衡化することができる。十分に高い濃度になるよう抗原(ビオチン化またはFc融合)が加えられ、30℃で30分間回転して抗原−抗体結合を飽和させることができる。PROfusion分子は、上述の通り抗FLAG M2アガロースによって精製することができる。FLAG精製したPROfusionライブラリーは氷上に維持するべきだが、凍結してはならないことに留意することが重要である。上述の通り、十分な量の捕集ビーズをプレブロッキングすることが重要である。
【0121】
B:競合分子の濃度およびライブラリーのベースライン回収の決定
前記ステップから回収されたライブラリー量を計算してそのモル濃度を決定することができる。これは、最大量のライブラリー結合抗原を表し、オフレート競合に必要とされる量(500×から1000×)の計算に用いることができる。
【0122】
10%のプレブロッキングしたビーズが、抗原結合PROfusionライブラリーの10%アリコートに加えられ、約20分間約4℃で回転することができる。ビーズは、上述の通り1mLの選別バッファーで5回洗浄することができる。オフレート選別前に抗原と結合したPROfusionライブラリーの割合は、ビーズを計数して次の通り決定することができる。
回収%=100×(CPMビーズ/CPMインプット)×10
【0123】
C:ライブラリー選別:競合
1000倍モル過剰の競合分子(例えば、非修飾抗原または抗体)が、FLAG精製PROfusionライブラリーに加えられ、より良いオフレートを備えるクローンを選別するための十分な淘汰圧をかけることのできる所定の期間約30℃で回転することができる。氷上でライブラリーを約1−2分間冷却して、ビーズ捕集前にオフレート減速する。
【0124】
D:ライブラリー選別:捕集
ライブラリー捕集用Dynabeadsのブロッキングに用いられている選別バッファーは、遠心分離および磁気選別によって除去することができる。抗原結合ライブラリーはプレブロッキングされたDynabeads(バッファーから分離)へと移し、4℃で約20分間回転することができる。
【0125】
E:ライブラリー選別:洗浄
Dynabeadsは、遠心分離および磁気選別によってライブラリーから収集することができる。上清は、1mLチップ(上述の通り、相互汚染を避けるため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる)で除去することができる。
【0126】
上述の通り、ビーズは約1mLの1×First Strandバッファー(SuperScript II、Invitrogen)で2回洗浄することができる。最後の洗浄において、ライブラリーの10−20%は、必要に応じ計数してライブラリー回収を決定するため別個のチューブに移すことができる。Dynabeadsは、磁気選別によって捕集することができ、100μlの洗浄バッファーはバックグラウンド計数のため取っておくことができる。ビーズは、水(上で計算された捕集ビーズ容量の1/4)に再懸濁することができる。
【0127】
F:ライブラリー選別:計数および回収の計算
最後の洗浄液およびビーズの10−20%を計算することができる。100μLを超えるビーズの使用は計数を抑えるため、避けることが望ましい。ライブラリー選別回収は、次式を用いて計算することができる。
選別回収%=100×CPM全ビーズ/CPM全インプット
【0128】
16.ライブラリー選別アウトプットの逆転写
逆転写は、SuperScript II逆転写酵素(Invitrogen(商標))を用いて行うことができる。各反応液の容量は、選別後のビーズ容量に従ってスケールアップすることができる。アウトプットは、適切なプライマー対を用いた逆転写(RT)によって分析することができる。例えば、「Ckリバース」または「Ck5−FLAGA20Rev」プライマーはκライブラリーに対して用いることができ、「CJLリバース」または「CL5FLAGA20Rev」プライマーはλライブラリーに対して用いることができ、「Lib−GS−Rev」または「VH−GSFLAGA20−Rev」プライマーはヒトPBMC VHライブラリーに対して用いることができる。
【0129】
逆転写プライマーは、逆転写反応から取り残された残存プライマーが異なる3’末端配列を有する増幅産物を生成するのを避けるため、少なくとも続くPCRのリバースプライマーと同一の5’末端配列を有するべきである。これらプライマーはいかなる残存量であっても次のPCRに関与してポリAテールを欠く産物を生成し得るため、より短い「Ckリバース」、「CJLリバース」または「Lib−GS−Rev」プライマーがRTに用いられている場合特に、このことが重要である。
【0130】
【表2】
【0131】
例示的なRT反応条件
最終容量200μLの反応液に対し、RT反応は次の通り設定することができる。
ビーズ(水に懸濁) XμL
dH2O 108μLとする
10μMリバースプライマー 2μL
10mM dNTP 10μL
65℃、5分間温置し、氷上で冷却する。次の試薬を加える。
5×First Strandバッファー 40μL
0.1M DTT 20μL
RNaseOUT 10μL
【0132】
反応液は、10μLのSuperScript II逆転写酵素を加える前に42℃で2分間温置することができる。反応液は、100μLアリコートに分注し、時々攪拌しつつ42℃で50分間温置することができる。次に反応後、チューブを95℃で5分間温置することができる。ビーズを単離し、上清を新しいチューブに移すことができる。通常、同一の選別アウトプットに由来する場合、サンプルはプールすることができる。ビーズを水(RT容量の半量)に再懸濁する。反応後、チューブは95℃で5分間温置することができ、ビーズは磁石によって捕集することができ、上清は前に移した上清と共にプールすることができる。これは、選別アウトプットのPCR増幅のためのcDNAテンプレートを表す。
【0133】
17.細胞表面抗原に対するライブラリー選別
細胞表面抗原に対する場合と可溶性ビオチン化抗原に対する場合との間のPROfusionライブラリー選別の大きな差は、PROfusion分子のmRNA部分が、cDNAの相補性によって細胞性RNase分解から保護され、従ってライブラリー選別前にcDNAに逆転写される必要があることである。逆転写反応は、オリゴdT精製後のライブラリー容量に応じてFLAG精製の前または後に行うことができる。scFv分子の鎖内ジスルフィド結合を保存するため、還元剤DTTは逆転写またはライブラリー選別前のどのステップにも含まれるべきではないことに留意することが重要である。
【0134】
A:オリゴdT精製後のライブラリー調製
一実施形態において、選別の第一ラウンドに適切な最初の10mlの翻訳容量を用いることができるが、次の手順はより少量の翻訳反応に容易に適用できることに留意するべきである。
【0135】
PROfusion分子は、上述の通り翻訳およびオリゴdTによって精製することができる。精製されたライブラリーは、翻訳に用いられている網状赤血球ライセート容量と等量またはより少ないdH2O容量で回収するべきである。インプット、最後の洗浄バッファーおよび10μlのライブラリーは、上述の通り計数して収量および回収率を決定することができる。
【0136】
B:FLAG結合
オリゴdT精製したライブラリーは、ライブラリー容量の1/4の5×PBSを加えることによって最終濃度1×PBSに平衡化することができる。全PROfusion分子の捕集に必要な抗FLAG M2アガロースビーズ量を概算することができる(例えば、ビーズの結合能力を50%スラリー1mL当たり約6nmol融合タンパク質であると概算)。結合および洗浄における操作に十分なビーズ容量を有するために、200μL未満の前洗浄ビーズを用いることは勧められない。大口径ピペットチップを用いて抗FLAG M2アガロースを新しいチューブに移すことができる。ビーズをスピンダウン(1500rpm、1分間)してバッファーを除去することができる。保存バッファーに含まれているどれ程微量の界面活性剤も除去するため、ビーズを1mlのPBSで2−3回洗浄することができる。オリゴdT精製したライブラリーは、1×PBSにおいて洗浄した抗FLAG M2アガロースビーズに移して、4℃で1時間から一晩回転することができる。
【0137】
C:FLAG洗浄
場合によるステップとして、抗FLAG M2アガロースビーズは、1500rpm、1分間4℃でスピンダウンして上清を廃棄することができる。1×PBSを用いてビーズをBio−Rad(商標)ミニスピンカラムまたはInvitrogen(商標)微量遠心スピンカラムに移し、続いてバッファーは1000rpmで10秒間スピンすることによって除去できる。Invitrogen(商標)カラムは、より高速(例えば、10,000RPMが可能)でスピンすることができる。ビーズは、500−600μLの1×PBSによって4回洗浄することができ、PBSはカラムを通してスピンすることができる。ビーズは、500−600の1×RT First Strandバッファー(DTT無し)によって2回洗浄することができる。貫流液は廃棄することができるが、シンチレーション計数のため最後の洗浄液を取り分けることが望ましい。
【0138】
D:FLAG溶出
PROfusion分子は、100μg/mL FLAGペプチドの1:20希釈のRNaseOUTを含有するFirst Strandバッファー(DDT無し)中溶液を450μL(より少量のM2アガロース容量には230μLを用いてよいことに留意)加え、続いて混合液を10分間室温で温置することによって溶出することができる。溶出液は、3000rpm以上で20秒間スピンすることによって収集できる。このステップは、1回繰り返すことができ、次に両方の溶出液から得られたライブラリーをプールすることができる。
【0139】
E:FLAG回収の計算
5−10μLの溶出アウトプットおよび最後の洗浄液から得られた100μLをベータカウンターで計数する。PROfusion分子の回収%は、次の通りに計算することができる(10−30%以上の回収が予想されることに留意)。
=(CPMアウトプット×容量アウトプット)/(CPMインプット×容量インプット)
【0140】
F:逆転写
上述の第16節に記載されているプライマーを用いることができる。
【0141】
【表3】
反応液は、攪拌有りまたは無しで、37℃で1時間温置することができる。ライブラリーは、次の通り細胞表面抗原に対する選別のため平衡化することができる。逆転写反応が完了した後、5M NaClが反応混合液に添加されて、75mMとなることができる(15.3μLが1mL反応液に、7.6が500μLに)。容量を増やす必要がある場合、追加的な1×PBSをライブラリーに加えることができる。次のブロッキング試薬は、選別前にライブラリーに添加することができる。
【0142】
【表4】
【0143】
プレクリアステップは、未処理ライブラリー選別に必要となり得るが、単一のテンプレートから作製されたライブラリー、例えば親和性成熟のため作製されたライブラリーを用いる場合、省略することができる。
【0144】
ライブラリープレクリアに用いられている細胞(抗原未処理細胞)は、フローサイトメトリーまたはウエスタンブロット解析によって標的抗原を細胞表面に発現していないことを確認するべきである。例えば、この細胞は、抗原を発現する安定した細胞系の作製に用いた親細胞となることができ、このことは、プレクリアと選別に用いられている細胞の間の唯一知られている表面タンパク質の差異が、標的抗原そのものであるべき状況を提示する。
【0145】
ライブラリーのプレクリアに必要とされる細胞数を計算するべきである。これは、ライブラリーのプレクリアに必要とされる抗原未処理細胞の数であり、ライブラリー選別用と同数である。細胞数(X)は、いくつかの数値、すなわち抗原発現細胞表面上の抗原コピー数(C)、選別のためのライブラリーサイズ(S=モル数×6×1023)および標的抗原と結合するライブラリーの画分(F)から計算される。これは次式により概算して、10倍過剰の標的抗原またはプレクリア能力を可能にする。
X=10×S×F/C
【0146】
例えば、ある特定の抗原が1×104の推定細胞表面コピー数を有するとすると、抗原結合またはバックグラウンド固着によって、10pmol未処理抗体ライブラリーにおいて0.05%(5×10−4)未満のライブラリーが回収できる。プレクリアおよび選別に必要とされる細胞数は、次の通りである。
X=10×(10×10−12×6×1023)×(5×10−4)/(1×104)=3×106
【0147】
実際には、ペレット形成後に細胞ペレットを目視できることを確実にするため、細胞数は5×106以上とするべきである。
【0148】
G:ライブラリーのプレクリア
細胞密度は血球計算板またはコールターカウンターによって計数することができ、十分な細胞を遠心分離チューブに移すことができる。細胞は、1500rpm、4℃でスピンダウンし、1mLの氷冷PBSに非常に穏やかに再懸濁することができる。細胞懸濁液は1.7mLねじ蓋付き微量遠心チューブに移すことができる。細胞をピペッティングによって剪断しないよう注意する。細胞は、1500rpmでスピンダウンしてPBSを除去することができる。PBSによる洗浄ステップは、もう1回繰り返すことができる。ステップ13.3.3から得られたライブラリーは、穏やかに再懸濁した細胞に即座に添加するべきである。次にチューブは、氷水ウォーターバスに浸して約60分間攪拌することができる。細胞を1500rpmでスピンダウンし、第二のプレクリアまたは抗原選別のための細胞の新しいチューブにライブラリーを移すことができる。
【0149】
H:抗原発現細胞に対するライブラリー選別
抗原選別に必要な細胞数を計算する。これは、上で計算された通りのライブラリープレクリア用と同数である。細胞数(X)は、いくつかの数値、すなわち抗原発現細胞表面における抗原のコピー数(C)、選別のためのライブラリーサイズ(S=モル数×6×1023)および標的抗原と結合するライブラリーの画分(F)から計算される。これは、次式によって概算して、10倍過剰の標的抗原またはプレクリア能力を可能にする。
X=10×S×F/C
【0150】
I:ライブラリー選別
抗原発現細胞の密度は、血球計算板またはコールターカウンターによって計数することができ、十分な抗原発現細胞を遠心チューブに移すことができる。細胞は、1500rpm、4℃でスピンダウンし、細胞を非常に穏やかに1mLの氷冷PBSに再懸濁することができる。細胞懸濁液は、1.7mLねじ蓋付き微量遠心チューブに移すことができる。細胞をピペッティングによって剪断しないよう注意する。細胞を1500rpmでスピンダウンしてPBSを除去し、PBSでもう1回洗浄を繰り返す。精製および/またはプレクリアしたライブラリーを即座に用いて、細胞を穏やかに再懸濁することができる。チューブは氷水のウォーターバスに浸し、2時間回転することができる。1500rpmでスピンダウンし、上清を廃棄する。細胞は1mLのPBSで4回洗浄し、1500rpmでスピンダウンして上清を廃棄することができる。細胞は、500μLのPBSに再懸濁することができる。必要に応じて、細胞と最後の洗浄液の20%までを計数する。
【0151】
J:ライブラリーアウトプットの回収
5μLのRNaseH(2U/μL)を再懸濁した細胞に加え、37℃で20分間温置することができる。この操作はRNAを消化し、細胞表面からcDNAを遊離させる。細胞を1500rpmで30秒間スピンダウンし、上清を新しいチューブに移すことができる。ここに至って細胞を廃棄することができる。5μLのRNaseA(20mg/ml)を上清に加え、37℃で30分間温置することができる。この操作は、選別過程において破砕された細胞に由来する可能性のあるあらゆる細胞性RNAを分解する。分解されたRNAは後に透析によって除去することができ、これによってPCRによるライブラリー増幅への干渉を防ぐことができる。上清に等量のフェノール/CHCl3/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え、30秒間ボルテックスにかける。下層の有機相は、Phase Lock Gel Heavy2mlチューブ(Eppendorf)において、最高速度で5分間遠心分離することによって上層の水相から分離することができる。上層の水相を新しいチューブに移し、フェノール/CHCl3/イソアミルアルコール(25:24:1)で1回、CHCl3で1回抽出を繰り返すことができる。CHCl3抽出後の上層の水相は、Mini Dialysis Kit、8kDa cut−off、2mL(GE healthcare)へと移し、一晩4℃で4リットルのdH2Oに対して透析することができる。
【0152】
K:計数およびライブラリー選別回収の計算
ラウンド3から始めて、最後の洗浄液と細胞の10−20%を計数する。
選別回収%=100×CPM全細胞/CPM全インプット
【0153】
18.RT−PCRによるライブラリーDNAの再増幅
逆転写は、ライブラリーから捕集した材料を用いて行うことができる。本技術分野で公知の試薬およびプロトコールが、逆転写反応の実施に適切である。選別後のビーズ容量に応じて、反応液の容量はスケールアップまたはダウンすることができる。
【0154】
逆転写に用いられているプライマーは、抗体ライブラリーの3’末端非可変領域に位置する任意の適切なリバース相補配列となることができ、また続く増幅PCRに用いられるリバースプライマーと同一またはさらに3’となることができる。
【0155】
例示的な逆転写反応液は、ライブラリー選別由来のビーズ(水に懸濁)、リバースプライマーおよびdNTPを含む。反応液を65℃で約5分間温置し、氷上で冷却する。次に、通常First Strand合成バッファー、約0.1M DTTおよびRNaseインヒビターを反応液に添加する。逆転写酵素の添加前に、逆転写反応液を約42℃で2分間温置する。反応液は、時々攪拌しつつ約42℃で50分間温置する。次に反応液は95℃で5分間温置する。続いてビーズを磁石によって収集し、上清を新しいチューブに移し、同一の選別アウトプット由来であればプールする。ビーズを水(RT容量の半量)に再懸濁し、チューブにおいて95℃で5分間温置する。磁石を用いてビーズを再度収集し、上清を、前に移しておいた上清と共にプールする。これは選別アウトプットのPCR増幅のためのcDNAテンプレートを含む。PCR後、10−□LのPCR産物を2%アガロースゲル上にロードし、反応が成功したことを確認する。
【0156】
19.ライブラリーDNAテンプレート増幅のためのPCR
第一および第二ラウンドの選別アウトプットのため、cDNA(RT反応由来の上清)は8kDaカットオフを用いて水に対して透析することができ、cDNA全量をPCRテンプレートとして用いることができる。後期ラウンドの選別アウトプットのため、通常cDNAの10%をPCRテンプレートとして用いることができ、通常透析は必要とされない。ラウンド1および2のアウトプットのために(全RT産物を用いて)、反応は1mLのPCR容量において行うことができるが、一方後期ラウンド由来のアウトプットのために反応容量はスケールダウンすることができる。100μL反応溶液のためのアリコートはマスターミックスから作製するべきである。ライブラリーDNAテンプレート増幅のための例示的なPCR反応液を下の表7に示す。
【0157】
【表5】
【0158】
例示的な一実施形態において、ラウンド1および2のアウトプットには1mLのPCR反応液が用いられ、後期ラウンド由来のアウトプットには0.5mLの反応液が用いられる。100μL反応液のアリコートはマスターミックスから作製するべきである。ライブラリーDNAテンプレート増幅のための例示的なサーマルサイクル条件を下の表8に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
例示的な一実施形態において、ラウンド1および2のアウトプットには1mLのPCR反応液が用いられ、後期ラウンド由来のアウトプットには0.5mL反応液が用いられる。100−□L反応液のアリコートはマスターミックスから作製するべきである。ライブラリーDNAテンプレート増幅のための例示的なサーマルサイクル条件を下の表8に示す。
【0161】
【表7】
ライブラリーDNAテンプレート増幅のためのサーマルサイクル条件
95℃ 2分間
95℃ 20秒間
55℃ 10秒間 20サイクル*
70℃ 15秒間
70℃ 30秒間
4℃ 永続的に維持する
*注記:通常、KODホットスタートDNAポリメラーゼを用いて18−20サイクルの増幅を行うことができるが、十分量のライブラリーDNAの増幅には13サイクルもの回数でも良好に行うことができる。追加的な増幅サイクルによって様々なサイズの非特異的産物がより顕著となる可能性があり、産物はゲル精製が必要となり得る。可能であれば、増幅サイクル数よりもDNAテンプレートインプットの増加が有用となり得る。
【0162】
【表8】
【0163】
PCR後、PCR産物のサイズは例えばアガロースゲル電気泳動によって確認される。産物が正確なサイズ(scFvは、ほぼ850bp、VHまたはVLライブラリーは、ほぼ500bp)であり、最小限の非特異的産物が存在している場合、産物は一般に、直接次のラウンドの転写反応溶液において、またはスピンカラム(例えば、Qiagen(商標) QIAquick PCR精製キット)による精製の後に用いることができる。一部のケースにおいて、PCR産物はゲル精製を必要とし得る。ゲル精製がPCR産物に対して行われる場合、残りの全産物を調製的アガロースゲルで分離して、特異的バンドをゲル抽出のために切り出す。DNAにおける残存EtBrはUV吸光度に干渉する傾向があるため、ゲル精製したDNAは定量を誤らせる可能性がある。ゲル抽出におけるより広範な洗浄ステップはこの干渉を低減するのに有用となり得る。UV走査トレースは純粋なDNAサンプルと残存EtBrを有するDNAとの間で非常に異なるため、可能であればDNA濃度は分光計で測定するべきである。続いてこのプロトコールは繰り返され、複数ラウンドの選別を行う。
【0164】
A:VH CDR3スペクトラタイピングPCR
スペクトラタイピングPCRは、ライブラリーまたはその選別アウトプットにおけるVH CDRサイズ分布の解析に用いることができる。これは選別の進行と共にライブラリーの多様性を評価するのに有用なツールである。最初の数ラウンドのライブラリー選別アウトプットと選別前のライブラリーは十分に多様でなければならず、CDR3サイズ分布はガウス分布に近似する。
【0165】
【表9】
スペクトラタイピングPCRの設定
cDNAテンプレート 2.0μL
dH2O 18.1μL
5×GoTaq Flexi反応バッファー 6.0μL
25mM MgCl2 1.8μL
10mM dNTP 0.6μL
5’フォワードプライマー(10μM) 0.6μL
3’リバースプライマー(10μM) 0.6μL
GoTaq Flexi DNAポリメラーゼ 0.3μL
全容量 30.0μL
【0166】
Promega製GoTaq DNAポリメラーゼがこの設定に用いられているが、他のソース由来の耐熱性DNAポリメラーゼが代用してもよい。最終Mg2+濃度は1.5mMである。
サーマルサイクルのプログラム
94℃ 2分間
94℃ 20秒間
55℃ 20秒間 30サイクル
72℃ 30秒間
72℃ 5分間
4℃ 永続的に維持する
【0167】
B:スペクトラタイピング電気泳動と解析
PCR後、10μLの産物を2%アガロースゲルにロードし、反応が成功したことを確認することができ、残りの産物は、ROX標識DNAサイズマーカーと共にシーケンサーでスペクトラタイピング電気泳動のための配列決定コアファシリティーに付すことができるが、これは恐らく標識色素が異なるためDNA産物のサイズを通常3bp過小評価する。
【0168】
増幅DNA産物は、次の構成を備える。
5’−FR3(27bp)−VH CDR3−FR4(35bp)−3’
VH CDR3のサイズは、Rox色素サイズマーカーによって決定された見かけ上のDNA産物のサイズから、次の計算によって推定される。
サイズVH CDR3=(サイズ見かけ上のDNA産物サイズ−60)/3
式中、60=(62両末端のフレームワーク−13’突出+3DNAマーカー過小評価)
【0169】
16.例示的な試薬およびバッファーの組成
10×化学ライゲーションバッファー
Tris、pH7 250mM
NaCl 1M
【0170】
【表10】
【0171】
【表11】
【0172】
選別バッファー
リン酸塩ベースバッファー
PBS 1×
BSA 1mg/mL
サケ精子DNA 0.1mg/mL
TritonX−100 0.025%
酵母tRNA(場合による、使用前に添加) 20ng/mL
【0173】
代替的なHEPESベースバッファー
HEPES 50mM
NaCl 150mM
BSA 1mg/mL
サケ精子DNA 0.1mg/mL
TritonX−100 0.025%
酵母tRNA(場合による、使用前に添加) 20ng/mL
【0174】
First Strandバッファー
Tris−HCl、pH8.3 250mM
KCl 375mM
MgCl2 15mM
【0175】
50×FLAGストック溶液
FLAGペプチド 25mg
選別バッファー 5mL
1mLのアリコートを作製し、−20℃で保存する。
【0176】
FLAG溶出溶液
50×FLAGストック溶液 1mL
選別バッファー 49mL
1mLのアリコートを作製し、−20℃で保存する。
【0177】
オリゴdTセルロースの調製
2.5gのオリゴdTセルロースを50mLチューブ内で計量する。
25mLの0.1N NaOHを添加し、混合する。
1500rpmで3分間スピンダウンし、上清を捨てる。
オリゴdTセルロースを25mLの1×オリゴdT結合バッファーで洗浄する。
1500rpmで3分間スピンダウンし、上清を捨てる。
もう3回洗浄を繰り返し、上清のpHを測定する。
pHは洗浄バッファーと同じでなければならない(ほぼpH8.5)。
最終容量が25mLになるよう1×オリゴdT結合バッファーを加えることによってオリゴdTセルロースを再懸濁する。これは約50%スラリーとなることができる。
前洗浄したセルロースビーズを4℃で保存する。
最終濃度=100mg/mL=1nmol RNA結合能力。
【0178】
抗FLAG M2アガロースの調製
25mLのM2アガロースビーズを50mLチューブに移す。
Beckman遠心分離機において5分間1000rpmでビーズをスピンダウンし、アスピレーションによって上清を除去する。
ビーズを等量の10mMグリシン、pH3.5に再懸濁することによって洗浄する。
Beckman遠心分離機において5分間1000rpmでビーズをスピンダウンし、アスピレーションによって上清を除去する。
1カラム容量の1×FLAG結合バッファーに再懸濁する。
Beckman遠心分離機において5分間1000rpmでスラリーをスピンダウンし、アスピレーションによって上清を除去する。
洗浄を3回繰り返す。
1カラム容量の1×結合バッファー(1mg/mL BSAと100mg/mLサケ精子DNAを含む)に再懸濁する。
1時間または一晩、4℃で転倒混和する。
必要に応じて2mL画分のアリコートを作製し、4℃で維持する。
【0179】
(実施例1)
機能的mRNA−scFv分子の証明
4種の公知の抗体を用いて、機能的mRNA−scFv分子が提示され、それらそれぞれの抗原と結合できることを証明した。D2E7(ヒト抗hTNF)、Y61(ヒト抗hIL−12)、17/9(マウス抗−HA)およびMAK195(マウス抗hTNF)。下の表9に示されているプライマーを用いたプラスミドDNAのPCRによって、MAK−195scFvを作製した。
【0180】
【表12】
NCBIデータベースからダウンロードしたタンパク質配列A31790およびB31790に基づく次のプライマー(下の表10を参照)を用いたPCRによって、抗HA17/9scFv(Schulze−Gahmenら(1993)J.Mol.Biol.234(4):1098−118を参照)を作製した。
【0181】
【表13】
【0182】
これらscFvのDNAコンストラクトは、インビトロで転写され、次にウサギ網状赤血球ライセートによってmRNA−scFv(タンパク質はピューロマイシン修飾を有するリンカーを介してmRNAに結合している)として、または遊離scFv(タンパク質はmRNAに結合していない)として翻訳された。両方のタイプの分子を精製し、対応するビオチン化抗原によるプルダウンアッセイに付した(図4を参照)。
【0183】
図4のデータは、機能的mRNA−scFv(ビオチン化抗原と結合)は、遊離scFvよりも低い回収率であったがストレプトアビジン−磁気ビーズによってプルダウンできることを示す。さらに別の実験によって、この差が単にscFvに繋がった重いRNAによるものであることが示された。mRNA−scFv分子におけるRNA部分をRNaseによって分解することにより、scFvの抗原による回収を遊離scFvの回収と同一のレベルにまで回復させた(図5を参照)。
【0184】
(実施例2)
翻訳反応を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化
好ましい一実施形態において、ライブラリーサイズは1×1012である。ライブラリーサイズの12倍をカバーするため、約20pmolの融合タンパク質(例えば、1.2×1013)が選別に必要とされる。FLAG精製に続いて行われる回収は、通常約30%である。従って、FLAG精製にインプットするため、約60pmolの融合タンパク質がオリゴdT精製の後に必要とされる。一実施形態において、オリゴdT精製の後、100pmolのRNAにつき約1.2pmolの融合タンパク質が得られる。この実施形態において、60pmolの融合タンパク質を得るために約5nmolのRNA(ライブラリーサイズの3000倍に及ぶ)が必要とされる。この計算が、融合mRNAディスプレイ分子の約20−30%だけが機能的である(選別後に回収できる)との観察を考慮に入れていないことに留意。
【0185】
mRNAディスプレイ法の次のステップに必要とされる前記融合タンパク質量のため、タンパク質の回収を最大化するよう翻訳反応を最適化した。翻訳反応への最初のRNAインプット量の変化をFLAG精製の後に評価した。翻訳反応において取り込まれたS35メチオニンの比率を測定することによって、またタンパク質pmol数(アウトプット)のRNApmol数(インプット)に対する比率を計算することによってタンパク質回収を評価した。試験したインプットRNA出発量を、その結果得られたタンパク質回収と共に表12に示す。この解析で証明されたように、より少量のRNAインプットによって驚くほどさらに高いタンパク質回収率がもたらされる。
【0186】
【表14】
【0187】
様々な量の遊離アミノ酸混合物を用いた翻訳反応も行って、タンパク質回収における影響を決定した。試験したアミノ酸混合物の相対的な出発量を、その結果得られたタンパク質回収と共に表13に示す。各ケースにおけるRNAインプットは50pmolであった。この解析で証明されたように、アミノ酸プールの増加は翻訳効率を減少させる。
【0188】
【表15】
【0189】
様々な量の「非アイソトープ」(すなわち、非放射性)メチオニンの、その翻訳効率における効果も試験した。試験した様々な濃度の非アイソトープメチオニンを、その結果得られたタンパク質回収と共に表14に示す。各ケースのRNAインプットは50pmolである。この解析によって証明されたように、非アイソトープメチオニンのインプット増加は翻訳効率の増加を生じない。
【0190】
【表16】
【0191】
従って、mRNAディスプレイの翻訳反応を計画する場合、RNAインプットおよびアミノ酸濃度を考慮するべきである。各反応におけるRNAインプットの減少はタンパク質回収を改善できるが、これはライブラリーサイズにも影響を与える。本発明のmRNAディスプレイ法の実施に有用となり得る例示的なRNA翻訳反応液を表15に示す。
【0192】
【表17】
【0193】
(実施例3)
scFv選別のためのmRNAディスプレイ技術の最適化−スペーサー長
scFvタンパク質とmRNA末端の間の長いスペーサー長がscFvフォールディングおよび機能を改善させることは、以前から提案されていた(Hanesら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(10):4937−42を参照)。従って、mRNA−scFv分子の機能および収量におけるscFvとリンカーアニーリング部位との間のスペーサー長の影響を調査した(図6を参照)。短い、中程度のおよび長い3’スペーサーを備える3種類の異なるD2E7scFvコンストラクトと、Y61および17/9scFvのための2種類の短いおよび長いスペーサーコンストラクトを作製した(D2E7スペーサーコンストラクトは図8を参照)。図7に示されている結果は、より長いスペーサーは、抗原結合に評価されるようなmRNA−scFV分子の機能に測定可能な利点をもたらさないことを示す。さらに、より長いスペーサー長は、mRNA−scFvの収量を顕著に低減させた(図7参照)。より長いスペーサーはRNA収量も低かった。短いスペーサーは6nmol RNAを生じ、中程度のスペーサーは3.4nmol RNAを生じ、長いスペーサーは1.7nmolを生じた。従って、一実施形態において、より短いスペーサーがscFvライブラリー構築に好ましい。
【0194】
3種類の異なるY61コンストラクト(図23を参照)を用いて異なるスペーサーおよびリンカーの比較も行った。下の表16に示されている結果は、より長いスペーサーはRNA収量も低いことを示す。さらに、配列番号10と配列番号4それぞれに示されている通り、これら2種類のコンストラクトの間でscFvタンパク質は同一であるため、mRNAそのもの(Y61−scGene3pA)からmRNAとscFvタンパク質の間のDNAリンカー(Y61−scGene3)へとポリAテールを移動することによっても、mRNA分子の精製にも抗原結合に違いはなかった。
【0195】
【表18】
【0196】
下に示す通り、17/9は機能的となるために翻訳においてPDIを必要とし、選別前の逆転写反応においてDTTはその抗原結合に影響することが示された。これらの結果が示すように、ジスルフィド結合は17/9機能に必要であり、このことから17/9はスペーサー長要求を調べるのに適切な候補となる。図9は、より長いスペーサー長はmRNA−scFv分子の抗原への結合を改善せず、その収量を低減させることを示す。
【0197】
(実施例4)
scFvタンパク質のフォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−システイン残基における化学修飾の省略
本技術分野におけるメッセンジャーRNAディスプレイ技術は、シアニル化をもたらす2−ニトロ−5−チオシアナト安息香酸による、またはスルフヒドリル基と共有結合するN−エチルマレイミドによる、望ましくないシステインジスルフィド結合の形成を防ぐためのフリーのシステイン残基の化学キャッピング反応を含む。このキャッピング反応は、フリーのシステイン残基のランダム架橋に起因する潜在的なタンパク質誤フォールディングを取り除くが、本発明は、予見できない物理的または化学的特性に起因するその将来的な製造可能性を損なう可能性のある抗体内フリーシステインの人為的な保護を取り除く。ライブラリー選別においてscFvのIg領域フォールディングに必要とされる4個のシステインを超えるどの余分のフリーのシステインも活発に保護されないように、化学キャッピングのステップは削除される。
【0198】
(実施例5)
scFvタンパク質フォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−同時翻訳タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ活性要求
イソメラーゼかシャペロンのいずれかの活性またはその両方によって、PDIがより良いタンパク質機能および分泌に寄与することが示唆されてきた(Shustaら、Nat Biotechnol 16(8):773−7;Smithら、Biotechnol Bioeng 85(3):340−50を参照)。2個のIg領域内ジスルフィド結合は全scFv配列によってコード化されており、一方はVHに、他方はVL領域に存在する。同時翻訳タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)活性が、適切なジスルフィド結合のインビトロ形成に重要であることが示唆されてきた(Ryabovaら、Nat Biotechnol 15(1):79−84を参照)。本技術分野におけるmRNAディスプレイのプロトコールは、翻訳反応液に(PDI)を含むことを定める。
【0199】
D2E7、Y61および17/9scFvを用いて、これらのmRNAディスプレイシステムにおけるPDI活性要求を試験した。結果は、scFvの内の2種類(D2E7および17/9)が、その生成においてPDI無しではその同起源の抗原と結合しないのに対し、Y61は影響を受けない様子であることを示した(図10を参照)。広範なライブラリーレベルにおいて、高い多様性は、最大限のscFv機能を確実にするためPDI活性を必要とすることが結論される。
【0200】
追加的なPDI添加有りまたは無しで翻訳されたD2E7scFvの回収と機能性も試験した。翻訳反応液は、1チューブのライセート(200μl)、100pmol D2E7短スペーサーRNA、PDIおよびGSSG/GSHを含む。PDI無しの翻訳は、PDIとGSSG/GSHを含まない。翻訳されたタンパク質をFLAG精製によって回収し、回収量を定量した。続いて100000cpm当たり50mMビオチン化TNFαおよび等量のインプットを用いて抗原結合/回収を行った。結果を下の表17に示す。
【0201】
【表19】
【0202】
Y61が機能性のために翻訳においてPDIを必要としないことを示す結果を下の表18に示す。
【0203】
【表20】
【0204】
17/9が機能性のために翻訳においてPDIを必要とすることを示す結果を下の表19に示す。
【0205】
【表21】
【0206】
(実施例6)
scFvタンパク質フォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−反応からジチオスレイトールの除去
ジチオスレイトール(DTT)は、タンパク質凝集を最小限に抑え、タンパク質の酸化を抑制するよう酵素反応に一般に導入される還元剤である。これはまた、mRNAscFv分子のインビトロ翻訳ステップに続く逆転写(RT)反応に通常用いられる。これを含有することによって、PDI活性によって形成されたscFv分子における2個の鎖内ジスルフィド結合を抑制できるため、DTTのscFv抗原結合機能における潜在的な効果を調査した(図11参照)。DTTが存在することによって、RT後の17/9scFvの抗原結合活性が顕著に失われ、これは図11に示されている17/9機能のPDI活性依存と矛盾しない。RTからDTTが除かれると17/9の大部分の抗原結合活性が保存されたため、この抗原結合活性の損失はRT反応それ自身が原因ではない。さらに、結果から、17/9scFvのcDNAはDTT無しでmRNAから確かに逆転写されたことがPCRによって示され、これはDTTがRT反応に必須でないことを示唆する(データ無し)。
【0207】
選別前のRT反応におけるDTTが17/9機能性に影響を与えることを示す結果は、下の表20に示されている。しかし、図12に示されている通り、DTTはRT過程には影響を与えない。
【0208】
【表22】
【0209】
17/9scFvと対照的に、抗IL−12Y61scFvの機能は、DTTに影響されなかった(図11参照)。この結果は、上述のPDI活性に対して感受性がないことと矛盾なく、あらゆる抗体scFvがジスルフィド結合を機能のために必要とする訳ではないことを示唆する。様々なRT条件をY61−scCL−短のために検討し、対応する結果を下の表21に、また図13にも示す。
【0210】
【表23】
【0211】
一実施形態において、DTTはRTに含まれない、あるいはRTは抗原選別後まで延期してmRNA−scFvライブラリーから得られる機能的scFv収量の生産を最大化する。下の表22および23は、Y61−ScCL−長およびY61−ScCL−短それぞれにおける抗原選別ステップ後までRTステップを延期させた結果を示す。
【0212】
【表24】
【0213】
【表25】
【0214】
(実施例7)
scFvタンパク質フォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−抗原選別におけるRNaseインヒビターの含有
RTによる二本鎖mRNA−cDNAの形成は、抗原結合のためのmRNA−scFv分子を準備し、RNA分解を防止してRNA二次構造を抑制すると考えられる。抗原による選別の後、cDNAはmRNAのアルカリ加水分解によって回収することができ、PCRの増幅テンプレートとなる。抗原選別前のRTにおけるDTTのscFv機能に対する潜在的な影響を避けるため、選別後の増幅のためのmRNAを保護するために代替法を用いることが必要とされる。
【0215】
従って、mRNA−VH分子におけるその保護的cDNA鎖を欠くmRNAが、十分に安定的で、抗原選別後のRT−PCRによる増幅に接近可能であるかどうか調査した。前に確認したIL−1α結合mRNA−VH分子をモデル分子として用いた。抗原選別前または後にRTが行われた場合のPhylos40VH配列の回収を比較した(図14参照)。本技術分野における方法(選別前RTおよびcDNAのアルカリ溶出、左レーン)と比較したところ、mRNA−IL−1α複合体をSA磁気ビーズに捕集して直接RTに用いた場合(右レーン)、抗原選別後のRT−PCRによるmRNAの回収は顕著に抑制されたと考えられる。これは抗原選別における部分的なRNA分解、またはビーズ上のmRNAへRTのために接近しづらいことに起因する可能性がある。IL−1α−Phylos40VH相互作用を阻害し、mRNA接近可能性をより良くするための酸溶出(pH3)によってSAビーズからmRNA−VH分子を解離する試みは、恐らくmRNA安定性の低下、またはSAビーズと複合体を除去する前にmRNA−VH分子がその抗原から溶出バッファーに解離しにくいため、その回収を悪化させると思われる。図14は、酸溶出を用いたオリゴDT後に続いてRT−PCRが行われる標準的なRT−PCR法と、捕集後のビーズから直接行ったRT−PCRを比較する、抗原選別後の逆転写の結果を示す。非結合ビーズで1:10、1:100および1:1000希釈することによって、1:1000希釈において強い再増幅が達成されたことが示された。
【0216】
抗原選別前のRTを省略し、その後RT−PCRによってmRNAを回収することが可能なため、コンタミネートしたRNase活性からRNAをRNaseインヒビターで保護することによって、減少したmRNAテンプレートの回収を回復または増強することができるか調査した。抗原選別ステップにおいてRNaseOUT(商標)(Invitrogen、cat.#10777−019)を1:20希釈で含有させ、続いてRT−PCRを行ってmRNA回収を比較した(図15参照)。抗原選別前のRTと比較すると、RTを抗原選別後にRNaseインヒビター無しで行った場合、mRNAテンプレートの再度の回収は減少する。興味深いことに、抗原選別におけるRNaseインヒビターの含有は、mRNA回収を回復させるだけでなく顕著に増強する。従って、この増強は少なくとも部分的により軽いほぼ280kDaのmRNA−scFv分子の、追加的なcDNAを有するより重いほぼ560kDamRNA−scFv分子より高い捕集効率に起因すると思われる。
【0217】
RNaseOUTの含有はまた、mRNA−scFv分子を用いても試験した。図16は、RNaseOUT有りまたは無しにおいてY61−CL−長とY61−CL−短を比較するよう行われた実験を表す。結果は図17と共に下の表24に見出すことができる。
【0218】
【表26】
【0219】
(実施例8)
17/9scFvのライブラリー選別
本明細書に記載されているmRNAディスプレイ法を用いた数ラウンドの選別によってmRNA−scFv分子を濃縮できることを証明するため、重複PCRによって25の多様性を有するscFvライブラリーを構築した。scFvライブラリーを作製するため、17/9、D2E7、2SD4、Y61およびMAK195の等量のVHおよびVL断片を混合し、25の最大多様性を有するscFvライブラリーに合わせ、上述の通りに用いた。次にこのライブラリーからビオチン化HAタグペプチドによって17/9scFvを選別した。選別後、クローニングおよびコロニーPCRによって17/9の濃縮を検査した。1ラウンドのmRNA−scFv選別の前と後で17/9scFvを定量した結果を、図18に示す。1ラウンドのHAペプチドに対する選別の後、選別アウトプットから回収された全scFv配列は、17/9scFvの配列であった。
【0220】
(実施例9)
mRNAディスプレイ技術は、異なる親和性を有するscFvバインダーを識別するために用いることができる
mRNAディスプレイ技術、すなわち上述の技術が、異なる親和性を有するscFvバインダーを識別するために用いることができるか決定するため、D2E7と2SD4のキメラを作製した。2SD4は、TNFαに対して低い親和性(遊離タンパク質としてKDほぼ200nM)を示す、D2E7scFvの前駆体である。図19はキメラを示す。
【0221】
遊離タンパク質に対して滴定を行った。図20aは異なるキメラの間の抗原結合後の回収率を示すが、一方図20bは抗原選別後の正規化回収率を表す。上述の結果から、本明細書に記載されているmRNAディスプレイ技術は、異なる親和性を有するバインダーを識別するために用いることができることが示される。
【0222】
(実施例10)
mRNA−scFv分子の耐熱性
mRNA−scFv分子の耐熱性を決定するため、本明細書に記載されているようにD2E7−scCkおよびY61−scCkを翻訳して、mRNA−scFvフォーマットに精製した。次に、mRNA−scFv分子を抗原選別前に様々な温度で30分間温置した。抗原選別後の正規化回収率を図21に示す。
【0223】
図22は、mRNA−scFv分子の高温処理後にRNAを回収できることを示す。そこで、回収されたY61−scClのmRNA−scFv分子を有するビーズにおいてRT−PCRを行った。
【0224】
参照による援用
本願を通じて引用されている可能性のあるあらゆる引用文献(参考文献、特許、特許出願およびウエブサイト)の内容は、そこに引用されている参考文献のように、いかなる目的においてもこれによりその内容全体が参照によって本明細書に特に組み込まれている。本発明の実施において、他に断りがない限り、本技術分野においてよく知られている従来の細胞培養と分子生物学の技法が用いられている。
【0225】
均等
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態に具体化することができる。従って上述の実施形態は、本明細書の記載に本発明を限定するものではなくむしろ説明のためのものであることをあらゆる点で考慮するべきである。従って本発明の範囲は、上述の説明によってではなくむしろ添付の特許請求の範囲によって示され、従って特許請求の範囲における均等の意義および範囲内のあらゆる変更を本明細書に包含することを目的とする。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、これによりその内容が参照によって本明細書に組み込まれている、2008年9月30日に出願された米国仮出願第61/101471号に基づく優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、RNAディスプレイに関し、特に可溶性および細胞表面抗原の選別を可能にするRNAディスプレイ法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ほぼどのような構造的エピトープでもそれと高い特異性および親和性で結合し、リサーチツールとして、またFDAに認可された治療薬として日常的に使用される抗体を選別することができる。その結果、治療用および診断用モノクローナル抗体は、世界中で数十億ドル規模のマーケットを構成している。
【0004】
動物を免疫して抗体を得る古典的手法は、時間がかかり煩雑である。その結果、合成抗体ライブラリーを用いた、所望の標的分子に対する抗体をエキソビボ選別するための方法が開発された。一部の方法において、抗体またはその断片のライブラリーは生物(例えば、バクテリオファージ、ウイルス、酵母細胞、細菌細胞または哺乳類細胞)表面に提示され、生物は所望の抗体の発現を有するものが選別される。他の方法において、抗体ライブラリーは無細胞インビトロシステムにおいて発現、選別される。RNAディスプレイと呼ばれるこのようなシステムの一型において、発現されたタンパク質またはペプチドは、共有結合または緊密な非共有結合的相互作用によってそのコード化mRNAと結合してRNA/タンパク質融合分子を形成する。RNA/タンパク質融合体のタンパク質またはペプチド成分は、所望の標的との結合および結合しているコード化mRNA成分の配列決定によって決定されたタンパク質またはペプチドの同一性について選別され得る。
【0005】
現在のインビトロRNAディスプレイシステムは、単一の抗体可変領域の発現に優れているが、単鎖抗体(scFv)分子等、多ドメイン抗体の発現には非効率的である。これは主に現在のインビトロ発現システムの反応条件と、PCRによる増幅の繰り返しによってライブラリーからscFvのcDNA全長が失われ易いことに起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本技術分野における、所望の標的に対するscFv抗体選別のための改良インビトロディスプレイ法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、発現ライブラリーからscFv分子の確実な発現および選別を可能にする、インビトロRNAディスプレイの改良法を提供することによって上述の課題を解決する。本発明の方法は、scFv分子の発現および選別に特に適しているが、可溶性および細胞表面抗原の両方を含むあらゆるクラスのタンパク質のインビトロディスプレイにも都合が良い。
【0008】
従って、本発明は、前に記載された方法よりも簡便で実施にかかる時間が短い改良インビトロRNAディスプレイ法の提供を含むが、それに限定されない、いくつかの利点を有する。さらに、本発明の方法は、鎖内ジスルフィド結合を含有するタンパク質、例えばscFv抗体分子の増強された機能的発現を可能にする。
【0009】
本発明は、その一態様において、(a)ピューロマイシンまたはそのアナログを3’末端に、ソラレンC6を5’末端に有する一本鎖核酸リンカーと架橋し、5’scFvおよび3’スペーサー配列をコードするmRNAを含む、ピューロマイシンまたはそのアナログと架橋したscFv mRNA分子を提供するステップ、(b)標識の存在下、GSSG(酸化型グルタチオン)/GSH(還元型グルタチオン)およびPDI(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ)の存在下ならびにジチオスレイトールの不在下、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が形成されるような条件下でピューロマイシン架橋scFv mRNAをインビトロ翻訳するステップ、(c)標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を精製するステップ、(d)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を少なくとも1種類の抗原を用いた抗原選別に付すステップおよび(e)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を、親和性に基づいた磁気ビーズを用いて回収するステップを含む、scFv抗体RNAディスプレイライブラリーをスクリーニングする方法を提供する。
【0010】
一実施形態において、本方法は、(g)抗原選別の後、scFv mRNAを逆転写してcDNAを作製するステップをさらに含む。別の一実施形態において、本方法は、(h)cDNAを増幅するステップをさらに含む。
【0011】
一実施形態において、標識は、例えば35Sメチオニンまたはシステイン等、放射性標識である。
【0012】
一実施形態において、3’スペーサー配列は、約0−約200アミノ酸、例えば約16アミノ酸を含む、および/または3’スペーサーはアフィニティータグを含む。
【0013】
一実施形態において、リンカーは、5’から3’へと、ソラレンC6、配列UAGCGGAUGC(配列番号20)を含む2’OMeリボヌクレオチド、6個のトリエチレングリコールまたはPEG−150部分、2個のシチジン残基、およびピューロマイシンを含む。
【0014】
一実施形態において、scFv mRNA分子は、UVAによってDNAリンカーと光架橋される。別の一実施形態において、scFv mRNA分子は、T7、SP6およびT3からなる群から選択された5’プロモーターを含む。特別な一実施形態において、scFv mRNA分子は、タバコモザイクウイルス5’非翻訳領域を含む。
【0015】
一実施形態において、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子は、オリゴdTクロマトグラフィーによって精製される。別の一実施形態において、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子は、抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズを用いて精製される。さらに別の一実施形態において、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子は、オリゴdTクロマトグラフィーおよび抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズによって精製される。
【0016】
一実施形態において、抗原は、ビオチン化ペプチド、タンパク質またはハプテンである。別の一実施形態において、抗原は、ヒト免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)またはマウス免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)との融合タンパク質、さもなければ抗原は細胞集団である。特定の一実施形態において、本発明に係る抗体は、抗IL−12抗体、抗赤血球凝集素(抗HA)抗体、マウス抗体またはヒト抗体である。
【0017】
一実施形態において、ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳は、GSSH/GSHの存在下で行われる。
【0018】
一実施形態において、本方法は、mRNAキャッピングステップを含まない。別の一実施形態において、本方法は、精製ステップの前にインビトロ逆転写ステップを含まない。さらに別の一実施形態において、ステップ(a)から(g)の内いずれかの前、間または後にRNaseインヒビターが添加される。一実施形態において、精製ステップは、ジチオスレイトール(DTT)不在下におけるcDNA作製のためのmRNA逆転写を含む。
【0019】
特定の実施形態において、cDNAは、約pH=8.0−約pH=10.0のアルカリ加水分解によって溶出される。あるいは、cDNAは、DNA:RNAハイブリッドを変性するのに十分な熱によって、約pH=3.0−約pH=6.0の酸によって、またはRNaseH消化によって溶出される。
【0020】
一実施形態において、cDNAはポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される。一実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応は、耐熱性DNAポリメラーゼ、またはPlatinum HiFiおよびKODからなる群から選択されたDNAポリメラーゼを用いる。
【0021】
別の一実施形態において、ビーズはストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースからなる群から選択される。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明と特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一部の実施形態におけるmRNA−scFvディスプレイ技術の概略図を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態におけるmRNA−scFvディスプレイ技術の概略図を示す図である。
【図3】ライブラリーDNAコンストラクトの概要描写を示す図である。
【図4a】機能的scFvがmRNA−scFv分子として生じ得ることを表す結果を示す図である。
【図4b】遊離scFv分子とmRNA−scFv分子のモデルを示す図である。
【図5】mRNA−scFv分子フォーマットにおいて結合しているscFvが遊離scFv分子と機能的に同等であることを表す結果を示す図である。
【図6】異なる3’スペーサー長を備える3種類のD2E7mRNA−scFvコンストラクトを示す図である。
【図7】より短いスペーサー長が、mRNA−scFvの抗原への結合およびmRNA−scFv抗体分子の収量を改善したことを表す結果を示す図である。
【図8】D2E7の短い、中程度および長いCk3’スペーサー長の配列(記載順にそれぞれ配列番号42−44)を表す図である。
【図9a】短いおよび長いスペーサー長を備える17/9mRNA−scFvコンストラクトを示す図である。
【図9b】より短いスペーサー長が17/9mRNA−scFv分子の標的抗原への結合およびmRNA−scFv抗体分子の収量を改善したことを表す結果を示す図である。
【図10】PDI活性がscFv機能の一部に必要であったことを表す結果を示す図である。
【図11】逆転写におけるDTTの存在が17/9scFvの赤血球凝集素(HA)抗原への結合を阻害したことを表す結果を示す図である。
【図12】DTTが逆転写過程を有意に変化させなかったことを表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図13】選別前と後の両方におけるDTTおよびRNaseOUT(商標)有りまたは無しの異なるRT条件から得られたアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図14】選別前RTおよびcDNAアルカリ溶出(左レーン)と比較した、選別前または後のいずれかに逆転写した場合のPhylos40VH配列の回収を表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図15】RNaseインヒビターが、抗原選別後の逆転写によるRNAテンプレート回収を保存したことを表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図16】RNaseOUT(商標)の存在下または不在下におけるCL長およびCL短スペーサーの並列比較の結果を示す図である。
【図17】RNaseOUT(商標)の存在下または不在下におけるCL長およびCL短スペーサー回収の並列比較を表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図18】1ラウンドのmRNA−scFv選別の前と後における17/9scFvを定量化するアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図19】D2E7と2SD4との間のキメラの概要描写を示す図である。
【図20a】mRNAディスプレイ技術が異なる親和性のバインダーの識別に用いられ得ることを表す、異なるキメラ間の抗原結合後の回収率を示す図である。
【図20b】mRNAディスプレイ技術が異なる親和性のバインダーの識別に用いられ得ることを表す、抗原選別後の正規化回収率を示す図である。
【図21】mRNA−scFv分子の耐熱性を示す図である。
【図22】mRNA−scFv分子の高温処理後にRNAが回収され得ることを表すアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。
【図23】短いおよび長いスペーサー長を備えるmRNA−scFvY61コンストラクトならびにmRNAとscFvタンパク質の間のDNAリンカーにポリAテールを備えるPF−y61scGene3コンストラクトを示す図である。
【図24】本発明の他の実施形態におけるmRNA−scFvディスプレイ技術の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な記述)
配列番号
本明細書に参照されているヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、次の配列番号を付与されている。
配列番号1−MAK195scFvタンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号2−Y61scFv短タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号3−Y61scFv長タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号4−Y61scFv Gene3タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号5−D2E7scFv短タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号6−D2E7scFv中タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号7−D2E7scFv長タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号8−17/9scFv短タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号9−17/9scFv長タンパク質配列のアミノ酸配列。
配列番号10−MAK195scFvヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号11−Y61scFv短ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号12−Y61scFv長ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号13−Y61scFv Gene3PAヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号14−Y61scFv Gene3ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号15−D2E7scFv短ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号16−D2E7scFv中ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号17−D2E7scFv長ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号18−17/9scFv短ヌクレオチド配列の核酸配列。
配列番号19−17/9scFv長ヌクレオチド配列の核酸配列。
【0025】
本発明をより容易に理解できるように、特定の用語を先ず定義する。
【0026】
I.定義
用語「抗体」は、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、マウス抗体およびそれらの断片、例えば、抗体L鎖(VL)、抗体H鎖(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメントおよび単領域抗体フラグメント(dAb)を含む。
【0027】
用語「抗体ライブラリー」は、抗体またはその断片をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を有する複数のDNAまたはRNA分子を意味する。これはまた、前記DNAまたはRNA分子から発現した複数の抗体タンパク質および核酸/抗体融合分子も含む。
【0028】
用語「H鎖可変領域」は、抗体H鎖可変領域をコードする核酸および該核酸のタンパク質産物を意味する。
【0029】
用語「L鎖可変領域」は、抗体L鎖可変領域をコードする核酸および該核酸のタンパク質産物を意味する。
【0030】
用語「エピトープタグ」は、抗体によって特異的に認識される短いアミノ酸配列であって、分子に化学的または遺伝学的に結合して、前記抗体によるその検出を可能にするアミノ酸配列、例えば、FLAGタグ、HAタグ、MycタグまたはT7タグを意味する。
【0031】
用語「非抗体配列」は、本発明の抗体ライブラリーに出現する、本来の抗体配列の一部ではない任意の核酸またはアミノ酸配列を意味する。このような配列は、例えばエピトープタグを含む。
【0032】
用語「調節配列」は、特定の宿主生物またはインビトロ発現システムにおける、作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列または遺伝要素を意味する。このような配列は、本技術分野においてよく知られている。原核生物に適した調節配列は、例えばプロモーター、場合によってオペレーター配列、そしてリボソーム結合部位を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。例えば、核酸は、別の核酸配列と機能的な関係になるよう配置されている場合「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に作用する場合コード配列に作動可能に連結されており、またリボソーム結合部位は、転写を促進できるよう配置されている場合コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結」は、連結されたDNA配列同士が隣接していることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも隣接している必要はない。
【0033】
用語「特異的結合」または「と特異的に結合する」は、少なくとも1×10−6M、1×10−7M、1×10−8M、1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、1×10−12M以下の親和性で標的と結合する、および/またはその非特異的抗原との親和性より少なくとも2倍強い親和性で標的と結合する、結合分子の能力を意味する。
【0034】
用語「標的」は、抗体によって認識される抗原またはエピトープを意味する。標的は、任意のペプチド、タンパク質、糖類、核酸またはそれに対して特異抗体を作製できる小分子等、他の分子を含む。一実施形態において、抗体は、ヒトタンパク質、例えばTNFα、IL−12、IL18、IL−1αまたはIL−1βに対するものである。
【0035】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、本技術分野において定義されている。
【0036】
用語「RNAディスプレイ」または「mRNAディスプレイ」は、発現したタンパク質またはペプチドがそのコード化mRNAと共有結合してまたは緊密な非共有結合的相互作用によって、「RNA/タンパク質融合」分子を形成するインビトロ技術を意味する。RNA/タンパク質融合体におけるタンパク質またはペプチド成分は、所望の標的との結合および結合しているコード化mRNA成分の配列決定によって決定されたタンパク質またはペプチドの同一性について選別され得る。このような方法は、本技術分野においてよく知られており、例えば、その内容全体がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,195,880号、6,951,725号、7,078,197号、7,022,479号、6,518,018号、7,125,669号、6,846,655号、6,281,344号、6,207,446号、6,214,553号、6,258,558号、6,261,804号、6,429,300号、6,489,116号、6,436,665号、6,537,749号、6,602,685号、6,623,926号、6,416,950号、6,660,473号、6,312,927号、5,922,545号および6,348,315号に記載されている。
【0037】
用語「単鎖抗体」または「scFv」は、VLおよびVH領域が組み合わされて一価分子を形成しそれらが単一のタンパク質鎖として生成されることを可能にする合成リンカーによる、組換え法を用いて接続されたL鎖可変領域の抗原結合部分とH鎖可変領域の抗原結合部分を意味する(単鎖Fv(scFv)として知られる。例えば、Birdら(1988)Science242:423−426およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A85:5879−5883を参照)。
【0038】
用語「機能性部分」は、それが結合した分子に追加的な機能性を付与する任意の生物学的または化学的物質を意味する。
【0039】
用語「選別」は、ある分子を集団内の他の分子から実質的に区分化することを意味する。本明細書において、「選別」ステップは、選別ステップの後に集団における望ましくない分子に対する所望の分子の、少なくとも2倍、好ましくは30倍、さらに好ましくは100倍、最も好ましくは1000倍濃縮を提供する。本明細書に示されているように、選別ステップは任意の回数繰り返すことができ、また異なる種類の選別ステップを特定のアプローチと組み合わせることもできる。
【0040】
用語「休止配列」は、リボソームの翻訳速度を減速または停止させる核酸配列を意味する。
【0041】
用語「固体支持体」は、アフィニティー複合体が直接的または間接的(例えば、他の抗体やプロテインA等、他の結合パートナーの介在によって)のいずれかで結合することのできる、またはアフィニティー複合体を包埋できる(例えば、レセプターまたはチャネルによって)、任意のカラム(またはカラム材料)、ビーズ、試験管、マイクロタイター皿、固体粒子(例えば、アガロースまたはセファロース)、マイクロチップ(例えば、シリコン、シリコンガラスまたはゴールドチップ)または膜(例えば、リポソームや小胞の膜)を意味するが、これらに限定されるものではない。
【0042】
用語「リンカー領域」は、scFv抗体遺伝子における抗体VHおよびVL領域をコード化する核酸配列を接続する核酸領域を意味する。リンカー領域は、VH、VLおよびリンカー領域を含む連続的なオープンリーディングフレームが形成されるように、抗体VHおよびVLをコード化する核酸配列とフレーム内に存在する。この用語はまた、scFvタンパク質においてVHとVLを接続する領域も意味する。
【0043】
用語「ペプチドアクセプター」は、リボソームのペプチジルトランスフェラーゼ機能の触媒活性によって、成長中のタンパク質鎖のC末端に付加され得る任意の分子を意味する。通常、このような分子は、(i)ヌクレオチドまたはヌクレオチド様部分(例えば、ピューロマイシンおよびそのアナログ)、(ii)アミノ酸またはアミノ酸様部分(例えば、20種類のD−もしくはL−アミノ酸の内のいずれかまたはその任意のアミノ酸アナログ(例えば、O−メチルチロシンまたはEllmanら、Meth.Enzymol.202:301、1991によって記載されたアナログの内のいずれか))および(iii)両者の間の結合(例えば、3’位置、より好ましくないが2’位置におけるエステル、アミドまたはケトン結合)を含むが、この結合は好ましくは天然のリボヌクレオチド構造由来の環状構造を顕著に乱さない。さらにこの用語は、タンパク質コード配列に(核酸配列に介在することによって直接的または間接的に)共有結合したペプチドアクセプター分子と共に、一部の非共有結合的手段、例えばタンパク質コード配列の3’末端に、またはその近傍に結合する第二の核酸配列を用いたハイブリダイゼーションによってタンパク質コード配列と接続した分子や、それ自身がペプチドアクセプター分子と結合する分子を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0044】
II.概観
本発明は、発現ライブラリーからscFv抗体分子の確実な発現および選別を可能にするインビトロRNAディスプレイの改良法を特徴とする。
【0045】
RNAディスプレイ法は、発現したタンパク質またはペプチドが共有結合または緊密な非共有結合的相互作用によってそのコード化mRNAと結合してRNA/タンパク質融合分子を形成する、タンパク質またはペプチドライブラリーの発現を一般に含む。RNA/タンパク質融合体におけるタンパク質またはペプチド成分は、所望の標的との結合および結合しているコード化mRNA成分の配列決定によって決定されるタンパク質またはペプチドの同一性に対して選別され得る。現在のRNAディスプレイ法は、scFv鎖内ジスルフィド結合の形成、従ってscFv抗体分子の正確なフォールディングを抑制する還元条件下でそのステップのいくつかが行われるため、scFv抗体発現に対して最適ではない。現在の方法は、追加的にVHまたはVL抗体断片のいずれかを選別プロセスにおいて利用する。
【0046】
本発明は、scFv鎖内ジスルフィド結合、従ってscFv抗体分子の正確なフォールディングに有利に働く、弱還元条件下でインビトロRNAディスプレイアッセイを行うことによって、この技術上の課題を解決する。単一の可変領域(例えば、単一のH鎖可変(VH)領域)ではなくむしろscFvフォーマットを用いることはまた、選別されたVH領域を完全IgG抗体に変換するのに必要な、適合するL鎖可変(VL)領域を同定する必要もなくす。従って、本発明の方法は、scFv抗体分子の発現および選別に特に適しているが、あらゆるクラスのタンパク質のインビトロRNAディスプレイにも都合が良い。
【0047】
本発明の方法はまた、RNAディスプレイ実施のためのより短く、より簡便なプロトコールも提供する。これは、標的で選別する前にRNA−タンパク質融合体におけるmRNAをcDNAに逆転写する、時間のかかるステップを避けることにより部分的に達成される。
【0048】
III.改良インビトロRNAディスプレイスクリーニング法
本発明はその一態様において、改良インビトロRNAディスプレイスクリーニング法を特徴とする。概要方法は、次の通りである。
【0049】
1)RNA/タンパク質融合体の形成
1種類以上のインビトロ抗体DNA発現ライブラリーが転写され、mRNAを生成する。どのようなインビトロ抗体発現ライブラリー(例えば、VH、VLまたはscFvライブラリー)も適切であるが、本発明の方法はscFvライブラリーに特によく適している。技術分野で認識されているどの転写方法も適切である。RNA転写後、DNAライブラリーテンプレートは除去される。この操作は、技術分野で認識されている任意の方法、例えばDNaseIによる消化を用いて行うことができる。
【0050】
DNA除去後、ペプチドアクセプターがライブラリーmRNAの3’末端に結合される。この操作は、技術分野で認識されている任意の方法を用いて行うことができる。一実施形態において、5’(ソラレンC6)2’OMe(UAGCGGAUGC)XXXXXXCC(ピューロマイシン)3’(配列番号20)、(式中、XはトリエチレングリコールまたはPEG−150であり、CCは標準的なDNA骨格である)を含むリンカーが用いられる。リンカーは先ず、相補的塩基対合によってライブラリーmRNAの3’末端に結合される。続いてリンカーは、ソラレンC6分子のUV活性化によってmRNAと架橋される。
【0051】
ペプチドアクセプターの付加後、続いてライブラリーmRNAはインビトロシステムにおいて翻訳される。技術分野で認識されている任意のインビトロ翻訳方法、例えばウサギ網状赤血球ライセート法が適切である。なお、scFv分子において適切な鎖内ジスルフィド結合を形成させるため、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)がインビトロ翻訳反応に添加されるおよび/または弱酸化条件下で反応が行われる。一実施形態において、弱い酸化剤(例えば、GSSG/GSH、例えば、100mM GSSG/10mM GSH)がインビトロ翻訳反応に添加される。別の一実施形態において、還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT))がインビトロ翻訳反応から取り除かれる。
【0052】
1種類以上の標識アミノ酸またはその誘導体が、標識アミノ酸がその結果生じる抗体に取り込まれるようにインビトロ翻訳システムに添加されてよい。技術分野で認識されている任意の標識アミノ酸、例えば放射性標識アミノ酸、例えば35S標識メチオニンまたはシステインが企図される。
【0053】
インビトロ翻訳反応において、mRNA分子は、3’末端に融合したペプチドアクセプター(例えば、ピューロマイシン)を介してそのタンパク質産物と共有結合するようになる。このRNA/タンパク質融合分子は、インビトロ翻訳反応混合液から精製される。反応混合液からRNA/タンパク質融合分子を分離する、技術分野で認識されている任意の方法が企図される。一実施形態において、RNA/タンパク質融合タンパク質は、ポリデオキシチミジン(ポリdT)レジンを用いたクロマトグラフィーによって分離される。別の一実施形態において、RNA−抗体融合タンパク質は、RNA/タンパク質融合タンパク質の抗体成分に存在するエピトープに特異的な抗体への結合によって分離される。エピトープは、アミノ酸配列タグ、例えばRNA−抗体融合タンパク質の抗体成分のアミノ酸配列の、例えばN末端、C末端または可変領域間リンカーに取り込まれたFLAGまたはHAタグとなることができる。
【0054】
本発明のRNA/タンパク質融合体は、裸のRNAの使用を含む。好ましい一実施形態において、RNA/タンパク質融合体と接触するあらゆる試薬は、RNaseインヒビター試薬、例えばRNaseOUT(商標)、酵母tRNA、SUPERaseIn(商標)、RNasin(登録商標)その他の本技術分野で公知のRNaseインヒビターで処理される。
【0055】
2)所望の標的に対する抗体のスクリーニング
RNA/タンパク質融合体のライブラリーは、所望の標的とのインビトロ結合に対してスクリーニングされる。一般に、標的分子は、固体支持体、例えばアガロースビーズに結合する。一実施形態において、標的分子は固体基質と直接結合する。別の一実施形態において、標的分子は先ず修飾、例えばビオチン化され、続いて修飾標的分子は修飾を介して固体基質、例えばストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースと結合する。他の実施形態において、固体支持体は、磁気ビーズ、例えばDynabeadsをさらに含む。このような磁気ビーズによって、固体支持体とそれに結合した任意のRNA/抗体融合体をアッセイ混合液から磁石を用いて分離できる。
【0056】
RNA/タンパク質融合体の結合の後、固体支持体は1回以上洗浄されて非結合RNA/タンパク質融合体を除去し、次にRNAが増幅される。一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAが増幅されてより多くのmRNAを産生する。技術分野で認識されている任意のRNA複製方法、例えばRNAレプリカーゼ酵素を用いた方法が企図される。別の一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAは、PCRで増幅される前にcDNAに転写されてもよい。PCR増幅プールは1ラウンド以上のスクリーニングに付されて、最も高い親和性の抗体を濃縮してもよい。
【0057】
さらに、またはあるいは、RNA/タンパク質融合体は、核酸成分の増幅前に固体支持体から溶出され得る。技術分野で認識されている任意の溶出方法が企図される。一実施形態において、RNA/タンパク質融合体は、アルカリ性条件を用いて、例えば約8.0−10.0のpHを用いて溶出される。別の一実施形態において、RNA/タンパク質融合体は、酸性条件を用いて、例えば約3.0−6.0のpHを用いて溶出される。一実施形態において、RNA/タンパク質融合体は、核酸成分の増幅前に溶出されず、むしろRNA/タンパク質融合体は増幅反応混合液に直接添加される。
【0058】
さらに、またはあるいは、核酸のPCR増幅プールは単分子配列決定法を用いて配列決定され、選別された全RNA/タンパク質分子の核酸配列を決定することができる。一実施形態において、PCR増幅は、高忠実度プルーフリーディングポリメラーゼ、例えばサーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakaraensis)由来のKOD1耐熱性DNAポリメラーゼまたはPlatinum Taq DNAポリメラーゼHigh Fidelity(Invitrogen)を用いて行われてよい。
【0059】
さらに、またはあるいは、核酸配列は増幅DNAに突然変異を導入させる条件下で増幅され、これにより選別された核酸配列にさらなる多様性を導入することができる。この突然変異したDNA分子のプールは、さらなるスクリーニングラウンドに付されてよい。
【0060】
IV.ライブラリー構築
本発明のライブラリーは、標的に結合できる任意の抗体断片から作製され得る。一実施形態において、抗体可変領域のライブラリーが作製される。これは、VHおよび/またはVL領域となることができる。別の一実施形態において、scFvライブラリーが作製される。
【0061】
本発明のライブラリーは、可変部の外側の領域、例えば定常部もしくはその断片またはヒンジ部をコード化する抗体核酸配列を含むこともできる。
【0062】
本発明の核酸ライブラリーは、RNA、DNAまたはRNAとDNAの両要素を含有するハイブリッドを含むことができる。
【0063】
核酸のペプチドアクセプターとの連結
抗体核酸ライブラリーは、ペプチドアクセプター部分を含むよう修飾され得る。この操作は、核酸発現ライブラリーの個々のメンバーとその同系タンパク質産物との共有結合を容易にする。例えばその内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,643,768号、米国特許第5,658,754号、米国特許第7,195,880号および米国特許第6,951,725号に記載されている手段等、技術分野で認識されているペプチドアクセプターを核酸に結合する任意の手段が企図される。
【0064】
本発明はその一態様において、ペプチドアクセプターを核酸ライブラリーへと結合するための新しい方法および組成物を特徴とする。一実施形態において、ソラレンC6分子およびペプチドアクセプター分子が核酸ライブラリーの3’末端配列と相補的な核酸配列と融合した、ソラレンC6分子およびペプチドアクセプター分子を含む連結分子が合成され得る。このような連結分子は、相補的塩基対合を介して核酸ライブラリークローンの3’末端と結合することができる。ソラレンC6は、紫外線(UV)光感受性であり、リンカーを核酸ライブラリークローンに架橋し、これによりペプチドアクセプターを核酸ライブラリークローンに共有結合させる。別の一実施形態において、リンカー分子の核酸部分は、修飾されたヌクレオチド、例えば2プライムメトキシ(2’OMe)リボヌクレオチドを含むことができる。別の一実施形態において、リンカー分子は、ソラレンC6分子とペプチドアクセプター分子を含む核酸領域を隔てるトリエチレングリコールまたはPEG−150リンカーをさらに含む。一実施形態において、リンカーは、5’から3’へと、ソラレンC6、配列UAGCGGAUGC(配列番号20)を含む2’OMeリボヌクレオチド、6個のトリエチレングリコールまたはPEG−150部分、2個のシチジン残基、およびピューロマイシンを含むことができる。このようなリンカーは、例えばTriLink BioTechnologies,Inc.によってオーダーメイド合成され得る。
【0065】
V.一般スクリーニング法
本発明はその一態様において、本発明の発現ライブラリーをスクリーニングして所望の抗原と結合できる抗体を同定する方法を特徴とする。抗体の標的分子への結合に基づいて発現ライブラリーから抗体の選別を可能にする任意のインビトロまたはインビボスクリーニング法が企図される。
【0066】
一実施形態において、本発明の発現ライブラリーは、技術分野で認識されているインビトロ無細胞表現型−遺伝子型連関ディスプレイを用いてスクリーニングされ得る。このような方法は、本技術分野でよく知られており、例えば米国特許第7,195,880号、6,951,725号、7,078,197号、7,022,479号、6,518,018号、7,125,669号、6,846,655号、6,281,344号、6,207,446号、6,214,553号、6,258,558号、6,261,804号,6,429,300号、6,489,116号、6,436,665号、6,537,749号、6,602,685号、6,623,926号、6,416,950号、6,660,473号、6,312,927号、5,922,545号および6,348,315号に記載されている。これらの方法は、タンパク質がその起源である核酸と物理的に関連または結合するような仕方で、核酸からインビトロでタンパク質を転写することを含む。発現したタンパク質を標的分子で選別することによって、タンパク質をコードする核酸もまた選別される。
【0067】
scFvタンパク質の発現を改善するため、上述において参照されたインビトロスクリーニングアッセイは特定の試薬の添加または除去を必要とし得る。一実施形態において、機能的scFv分子の産生を改善するために、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ酵素がインビトロ発現システムに添加されてよい。別の一実施形態において、弱い酸化剤(例えば、GSSG/GSH、例えば、100mM GSSG/10mM GSH)がscFvタンパク質のインビトロ翻訳反応混合液に添加されて、scFv分子のVHおよびVL領域における鎖内ジスルフィド結合を形成させることができる。別の一実施形態において、還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT))が、scFvのインビトロ翻訳反応混合物から除去されてよい。
【0068】
別の一実施形態において、1種類以上の標識アミノ酸またはその誘導体が、標識アミノ酸がその結果生じる抗体に取り込まれるように、インビトロ翻訳システムに添加されてよい。技術分野で認識されている任意の標識アミノ酸、例えば放射性標識アミノ酸、例えば35S標識メチオニンまたはシステインが企図される。
【0069】
一実施形態において、本発明のインビトロスクリーニングアッセイは、単数または複数の抗体のインビトロ選別後に、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAが逆転写されて前記単数または複数の抗体をコードするcDNAを生成できることを必要とする。任意の適切な逆転写方法、例えば、酵素を介した逆転写、例えばモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素が企図される。
【0070】
本発明で用いられているスクリーニング法は、所望の標的に特異的に結合する抗体をコードする核酸の増幅を必要とし得る。一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAは、増幅されてさらにmRNAを生成することができる。技術分野で認識されている任意のRNA複製方法、例えばRNAレプリカーゼ酵素を用いた方法が企図される。別の一実施形態において、単数または複数の抗体と物理的に関連したmRNAは、PCRで増幅される前に先ずcDNAに逆転写されてよい。一実施形態において、PCR増幅は、高忠実度プルーフリーディングポリメラーゼ、例えばサーモコッカス・コダカラエンシス由来のKOD1耐熱性DNAポリメラーゼまたはPlatinum Taq DNAポリメラーゼHigh Fidelity(Invitrogen)を用いて行われてよい。別の一実施形態において、PCR増幅は、増幅されたDNAに突然変異を導入する条件下、例えばエラープローンPCRを用いて行われてもよい。
【0071】
別の一実施形態において、本発明の発現ライブラリーは、細胞、ウイルスまたはバクテリオファージ表面における提示によってスクリーニングされ、固定化した標的分子を用いた選別に付されてよい。適切なスクリーニング方法は、米国特許第7,063,943号、6,699,658号、6,423,538号、6,696,251号、6,300,065号、6,399,763号、6,114,147号および5,866,344号に記載されている。
【0072】
本発明で用いられているスクリーニング法は、発現した抗体分子における1個以上のアミノ酸置換および/または欠失を生じ得る核酸置換および/または欠失を導入することによって、抗体ライブラリーへの多様性の導入を必要とし得る。技術分野で認識されている任意の突然変異誘発方法、例えばランダム突然変異誘発、「walk through」突然変異誘発および「look through」突然変異誘発が企図される。このような抗体の突然変異誘発は、例えばエラープローンPCR、酵母もしくは細菌の「ミューテーター」株または抗体の全体もしくは一部のアブイニシオ合成における、ランダムまたは確定的な核酸変化の取り込みを用いて達成され得る。一実施形態において、1個以上のアミノ酸がランダムに突然変異した抗体分子のライブラリーが作製され得る。別の一実施形態において、1個以上のアミノ酸が1個以上の所定のアミノ酸に突然変異した抗体分子のライブラリーが作製され得る。
【0073】
本発明で用いられているスクリーニング法は、改善された標的親和性を備える抗体の選別のため、標的結合スクリーニングアッセイのストリンジェンシーが強まることも必要とし得る。抗体−標的相互作用アッセイのストリンジェンシー増強するための、技術分野で認識されている任意の方法が考慮され得る。一実施形態において、1種類以上のアッセイ条件(例えば、アッセイバッファーの塩濃度)が変化され、抗体分子の所望の標的に対する親和性を低減させることができる。別の一実施形態において、抗体が所望の標的と結合できる時間の長さが短縮され得る。別の一実施形態において、抗体−標的相互作用アッセイに競合結合ステップが加えられてよい。例えば、抗体は所望の固定化標的と先ず結合できる。次に、抗原に対して最も低い親和性を有する抗体が固定化標的から溶出され、その結果、抗原結合親和性の向上した抗体が濃縮されるよう、固定化標的との結合と競合するよう作用する特定の濃度の非固定化標的が添加され得る。アッセイ条件のストリンジェンシーは、アッセイに添加される非固定化標的濃度を増加することによってさらに強くなることができる。
【0074】
本発明のスクリーニング法はまた、標的結合の向上した1種類以上の抗体を濃縮するために複数ラウンドの選別も必要とし得る。一実施形態において、選別の各ラウンドにおいて、技術分野で認識されている方法を用いてさらなるアミノ酸突然変異が抗体に導入され得る。別の一実施形態において、選別の各ラウンドにおける所望の標的に対する結合のストリンジェンシーは、所望の標的に対して向上した親和性を有する抗体を選別するために強くなることができる。
【0075】
本発明のスクリーニング法は、インビトロ翻訳システムの成分からRNA−抗体融合タンパク質の精製を必要とし得る。この操作は、技術分野で認識されている任意の分離方法を用いて行われてよい。一実施形態において、RNA−抗体融合タンパク質は、ポリデオキシチミジン(ポリdT)レジンを用いたクロマトグラフィーによって分離されてよい。別の一実施形態において、RNA−抗体融合タンパク質は、RNA−抗体融合タンパク質の抗体成分に存在するエピトープに特異的な抗体を用いたクロマトグラフィーによって分離されてよい。エピトープは、アミノ酸配列タグ、例えばRNA−抗体融合タンパク質の抗体成分のアミノ酸配列の、例えばN末端、C末端または可変領域間リンカーに取り込まれたFLAG、MycまたはHAタグとなることができる。
【0076】
本発明のライブラリーの抗体選別は、固定化標的分子の使用を必要とし得る。一実施形態において、標的分子は固体基質、例えばアガロースビーズに直接連結される。別の一実施形態において、標的分子は先ず修飾、例えばビオチン化され、続いて修飾された標的分子は修飾を介して固体支持体、例えばストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースと結合する。
【実施例】
【0077】
発明の具体例
他に記載がなければ、実施例を通じて次の材料と方法が用いられた。
【0078】
材料と方法
一般に、他に断りがなければ、本発明の実施において、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば免疫グロブリン技術)および畜産業における従来の技法が用いられる。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology)、510、Paul、S.、Humana Pr(1996);Antibody Engineering:A Practical Approach(Practical Approach Series、169)、McCafferty、Ed.、Irl Pr(1996);Antibodies:A Laboratory Manual、Harlowら、C.S.H.L.Press、Pub.(1999);Current Protocols in Molecular Biology、eds.Ausubelら、John Wiley&Sons(1992)を参照。
【0079】
scFv用のmRNAディスプレイプロトコール
mRNAディスプレイは、図2に示されている方法に従って行うことができる。この方法の特定の実施形態はより詳細に後述される。これら実施形態は、本発明の方法を説明することを目的としており、限定するものであると理解するべきでない。
【0080】
1.抗体ライブラリーテンプレートの設計
ライブラリーDNAコンストラクトは、本技術分野で公知の抗体ライブラリー作製方法に従って設計することができる。一実施形態において、ライブラリーコンストラクトは、抗体断片、すなわち抗体L鎖断片(VL)または抗体H鎖断片(VH)をコードすることができる。例示的な実施形態において、ライブラリーコンストラクトは、単鎖可変断片(scFv)をコードすることができる。
【0081】
2.標的抗原の調製
一般に、mRNAディスプレイ抗体ライブラリーは、ビオチン化抗原に対して選別することができる。各標的に対する最良の抗原は、ケースバイケースの原則に従って決定するべきであるが、次の記載は一般的ガイドラインとして用いることができる。標的抗原は、通常十分に特徴付けられ、多型(SNPおよびハプロタイプ)および/または薬理遺伝学的解析によって決定されるような、関連または優性遺伝アイソタイプである。標的抗原はさらに適切な生物活性(天然の抗原と同等の)、十分な溶解度ならびに化学的および物理的特性を有することができ、ライブラリー選別すなわちスクリーニングおよび下流のバイオアッセイに十分な量を調製することができる。
【0082】
3.ライブラリーDNAの調製
ライブラリーDNAおよびその選別アウトプットは、PCRによって増幅することができる。PCR増幅は、本技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。PCR反応液は通常、DNAテンプレート、反応バッファー、dNTP、増幅用プライマー、DNAポリメラーゼおよび水を含む。複数の反応チューブをマスターミックスから一度に調製し、増幅DNA収量を増加することができる。25サイクルのPCRによって通常十分な増幅がもたらされるが、より多くの産物を得るために35サイクルもの回数を用いてもよい。
【0083】
4.ライブラリーDNAの精製
産物が正確なサイズ(scFvは、ほぼ850bp、VHまたはVLライブラリーは、ほぼ500bp)であり、最小限の非特異的産物を含む場合、産物は転写反応に直接用いることができる。あるいは、産物は調製用アガロースゲルにおいて正確なサイズの特異的なバンドを切り出して精製することができる。DNA濃度は分光計で測定することができる。
【0084】
5.RNAの転写
ライブラリーDNAからRNAの転写は、本技術分野で公知の標準的な方法を用いて行うことができる。大量の反応容量を用いて、全ライブラリー多様性を標本抽出するのに十分なDNAテンプレートを転写することができる。例示的な一実施形態において、1×1013コピーのライブラリーテンプレートをRNA転写反応に用いることができる。RNA転写液は、通常5−10μgのPCR産物、反応バッファー、ATP、CTP、GTP、UTPおよびT7RNAポリメラーゼを含む。RNA転写反応は37℃で2時間から一晩の間行うことができる。選別の最初のラウンドの後、より短い時間を用いてもよいが、一晩の温置によって反応のRNA収量を最大化することができる。RNA転写の後、DNAテンプレートはDNaseI消化によって反応混合液から除去できる。
【0085】
6.NAPカラムクロマトグラフィーによるRNA精製
転写後、RNAはNAP−10カラムを用いて分画することができる。最大約1mLの転写反応液が、RNA精製のためNAP−10カラムに装填できる。カラムは、分画前にDEPC処理dH2Oを用いて平衡化することができる。RNAは、約1.5×反応容量のDEPC処理dH2O(例えば、500μLの転写反応液につき750μL)を用いてカラムから溶出できる。全溶出容量は、転写反応液の容量の約150%未満となることができる。さらに、またはあるいは、RNAはNAP−25カラムを用いて分画できる。
【0086】
7.RNAの品質管理と定量
RNAサンプルのサイズおよび収量は、ゲル電気泳動を用いて、あるいは収集した画分におけるRNA濃度の260nmのOD(OD260)を測定することによって分析できる。例えば、scFv RNAのモル濃度は、次の通り計算できる。
[RNA](μM)=[RNA](mg/mL)×106/(850×330)
=OD260×希釈係数×40(μg/mL)×1000/(850×330)
RNA収量(nmol)=[RNA](μM)×容量(μL)/1000
RNA収量は、通常500μLの転写反応液につき約20nmol/mLの最高値に達する。
【0087】
8.リンカーへのRNAライゲーション
ペプチドアクセプター分子をその3’末端に備えるDNAリンカーは、UV架橋によって各RNA分子の3’末端と共有結合的ライゲーションを行う。リボソームA部位に入り込んで未完成ポリペプチド鎖のカルボキシル末端に共有結合できるペプチドアクセプターは、mRNA(遺伝子型)の、該mRNAによってコード化されたタンパク質(表現型)との共有結合的関連を最終的に可能にできる。次式を有する例示的なPEG6/10リンカーを用いることができる。
5’(ソラレンC6)2’OMe(UAGCGGAUGC)XXXXXXCC(ピューロマイシン)3’(配列番号20)
【0088】
ソラレンC6の5’修飾は光感受性であり、UV架橋によってリンカーとmRNAとの間の共有結合を形成するよう機能する。2’OMe(UAGCGGAUGC)(配列番号20)骨格領域は、mRNAにおけるFLAG配列に対して3’のリンカーアニーリング部位とアニーリングする(図1参照)。上述の配列において、Xは「スペーサー9」、あるいはトリエチレングリコールまたはPEG−150として知られている物質を示す。このスペーサーは、ピューロマイシンの真核生物リボソームA部位への挿入に対する柔軟性を提供するよう最適化されている。CCは標準的なDNA骨格を含む。ピューロマイシンの3’修飾は、リボソームA部位に挿入してリンカーと未完成ポリペプチドとの間に安定的な結合を形成する。本明細書に記載されているリンカーの減衰係数は、約147.7OD260/μモルとなることができる。このリンカーは光感受性であるため、このリンカーを含む溶液は、光から保護しなくてはならない。
【0089】
推定約1012−1013の多様性を備える未処理の抗体ライブラリーの全多様性を標本抽出するため、ライブラリー選別の最初のラウンドのためにラージスケールのライゲーション反応(約5nmolまたは約3.1×1015転写RNA分子)が推奨され得る。このRNA量は、十分なテンプレートが翻訳反応に取り込まれて、ほぼ10pmolの機能的mRNAディスプレイ分子が産生されることを保証し得る。後期ラウンドでは、RNAインプットは選別当たり約0.5nmolへと減少できる。例示的な一実施形態において、RNAライゲーション反応液は、次の成分、すなわちRNA、水、化学ライゲーションバッファーおよびPEG6/ピューロマイシンリンカー(1mM)を含むことができる。例示的な一実施形態において、全反応容量は約100μLである。好ましい一実施形態において、リンカー/RNA分子比は、約1.5より大きくなることができる。一実施形態において、反応液における最終リンカー濃度は約15μMであり、反応液におけるRNA濃度は約3−10μM(=0.3−1nmolのRNAインプット)の範囲に及ぶ。参考までに、1mg/mLの850ntのscFv RNA=3.56μMであり、達成可能な最大ライゲーション濃度は、約3.16μM(約0.32nmol)である。
【0090】
アニーリング反応(リンカーと転写されたRNAとのアニールにおける)は、サーマルサイクラーにおいて行うことができる。好ましい一実施形態において、アニーリング反応は、サンプルを約85℃で約30秒間、続いて1秒当たり約0.3℃のランプ速度を用いて約4℃で温置することによって行うことができる。次に、反応液は約4℃で維持することができる。
【0091】
アニーリングしたリンカー/RNAのライゲーションは、UV架橋によって行うことができる。この操作は当業者に知られた任意の方法を用いて行うことができる。一実施形態において、反応チューブは凍結したフリーザーパックの上に置いて、手持ち式長波長(約365nm)UVランプの下に直接置き、暗所で約15分間架橋することができる。通常のライゲーション効率は約50−90%である。一般に精製は必要とされない。ライゲーション産物は−80℃で保存することができる。
【0092】
9.翻訳反応
例示的な一実施形態において、全反応および精製の後、ほぼ約0.1%のインプットRNAをmRNAディスプレイ分子へと作製することができる。インビトロ翻訳は、当業者に知られた方法と試薬を用いて行われる。一実施形態において、scFvライブラリーを用いた翻訳反応は、約15mLの反応容量における約5nmolのRNAテンプレートと約10mLの網状赤血球ライセートを用いる。
【0093】
翻訳反応液の調製において、GSSG/GSH(酸化型グルタチオン/還元型グルタチオン)溶液は、最終濃度約100mM GSSG/10mM GSHに調製できる。PDIは、PDI粉末をdH2Oに溶解して約1ユニット/μL濃度になるよう調製される。PDI溶液は−20℃で保存できる。
【0094】
【表1】
【0095】
翻訳反応液は、30℃のウォーターバスで1−2時間温置することができ、RNA/タンパク質融合体形成は遅滞なく行うべきである。翻訳容量が3mLを超える場合、RNA/タンパク質融合体収量の顕著な減少が観察できる。従って、反応容量が3mLより多い場合、翻訳反応液のマスターミックスを調製し、続いてより小さなアリコートに分注してよい。
【0096】
10.RNA/タンパク質融合体形成
翻訳反応後、300μLの翻訳反応混合液につき約100μLの2M KClおよび約20μLの1M MgCl2を添加し、約1時間室温または−20℃で一晩温置することができる。あるいは、1.5mlの翻訳反応混合液につき約500μLの2M KClおよび約100μLの1M MgCl2を添加し、約1時間室温または−20℃で一晩温置することができる。この操作は、mRNAテンプレート末端における休止リボソームを安定化し、DNAリンカー末端のピューロマイシンを休止リボソームのA部位に挿入し、これにより翻訳されたscFvタンパク質とそのmRNAテンプレートとを永続的に接続する。反応液が−20℃で一晩保存される場合、室温の温置は短縮できる。反応は、300μLまたは1.5mlの翻訳反応液につきそれぞれ約50μLまたは約250μLの0.5M EDTAを加えてリボソームを停止することによって終了できる。反応液は−20℃で保存できる。5−10μLアリコートを後のシンチレーション計数のため取り分けることができる。
【0097】
11.オリゴdTセルロースによるRNA/タンパク質融合体の精製
このステップは、mRNAディスプレイ分子および残存RNAテンプレートを翻訳/融合反応液から精製するために含まれる。オリゴdT結合のため、全RNAテンプレートを捕集するのに必要な、前洗浄したオリゴdTセルロース量を概算するべきである。十分量のオリゴdT結合バッファーは、約1×最終濃度となるよう融合反応液に加えることができる。次に、前洗浄したオリゴdTセルロースが加えられ、反応液は1時間、4℃で回転することができる。反応液は、場合によって約1500rpm、5分間、4℃でスピンダウンすることができ、上清は廃棄される。オリゴdTセルロースビーズを移し、スピンカラムを用いて1×オリゴdT結合バッファーで約6回洗浄することができ、バッファーは通常、カラムを約1000rpm、10秒間スピンすることによって除去される。貫流液は廃棄してよいが、最後の洗浄液はシンチレーション計数のため取っておくことができる。塩濃度を低下させて溶出を容易にするため、最初のスラリー容量の1/10のdH2Oを乾燥オリゴdTビーズに添加し、即座に10秒間遠心分離して貫流液を廃棄することができる。mRNAディスプレイ分子(および遊離RNAテンプレート)は、ビーズにdH2Oを加えて5分間室温で温置することによって溶出できる。溶出液は、約4000rpm(以上)で20秒間スピンすることによって収集できる。溶出は通常1回繰り返し、溶出液を合わせる。5μLの溶出液をシンチレーション計数のため取り分けることができる。場合によって、オリゴdT精製効率は、NanoDrop分光装置の260nmのOD(OD260)によって評価することもできる。理論的に、全残存RNAテンプレートおよびmRNAディスプレイ分子がオリゴdTビーズによって回収される。5×FLAG結合バッファーが、約1×最終濃度になるよう溶出液に加えられる。サンプルは、次のFLAG精製ステップに進まない場合、−80℃で保存することができる。
【0098】
オリゴdT回収は、次の通りに計算される。約5μLのインプット(融合反応液由来)、最後の洗浄液由来の約100μLおよび約5μLのアウトプット(オリゴdT精製由来の溶出液)。最後の洗浄液は、洗浄の程度を評価するために用いられ、他の2種の計数は、元来のRNAテンプレートインプットからRNA/タンパク質融合体回収を計算するために用いられる。RNA/タンパク質融合体収量(pmol)=(CPMアウトプット×容量アウトプット×5μM×容量ライセート)/[CPMインプット×容量インプット×(産物におけるメチオニンの#)]。この式は網状赤血球ライセートにおける5μMのメチオニン濃度を推測し、計算に用いられているあらゆる容量はμLで表されている。選別の初期のラウンドのmRNAディスプレイ分子収量は、通常0.5−2%であるが、後期ラウンドでは10%に増加する。例えば、PROfusionライブラリーにおける初期ラウンドのメチオニン数は次の通りとなることができる。
・VH−Vκ scFvは約3μM
・VH−Vλ scFvは約2−3μM
・VHは約2μM
・Vκは約2μM、および
・Vλは約1μM
これらの数値は平均であり、生殖細胞系列の配列に基づいており、当業者であれば、ライブラリーが特定の配列へと濃縮するに従って、これらが選別ラウンドにわたって変化し得ることを理解できる。
【0099】
12.抗FLAG M2アガロースによるRNA/タンパク質融合体精製
このステップは、残存RNAテンプレートからmRNAディスプレイ分子を精製するよう設計されている。ライブラリーが抗原オフレート競合によってまたは抗原発現細胞によって選別される場合、このステップに進む必要はない。全mRNAディスプレイ分子の捕集に必要とされる、前洗浄された抗FLAG M2アガロースビーズの量を概算することができる。一実施形態において、ビーズの結合能力は、50%スラリー1mL当たり約6nmol融合タンパク質となることができる。結合と洗浄における操作に十分なビーズ容量を有するために、少なくとも約200μLの前洗浄されたビーズを用いることが推奨される。後述の例は、最初の翻訳反応液300μLに対するものである。
【0100】
FLAG精製:大口径ピペットチップを用いて300μLの前洗浄した抗FLAG M2アガロースをオリゴdT精製されたアウトプットに移し、次に1時間4℃で回転することができる。抗FLAG M2アガロースとの温置は一晩続けてよい。抗FLAG M2アガロースは、場合によって遠心分離機で約1500rpm、約1分間4℃でスピンして、上清を捨てることができる。抗FLAGビーズは、スピンカラムを用いて(例えば、Invitrogen(商標)微量遠心スピンカラム)約500−700μLの1×FLAG結合バッファーで約5−6回洗浄し、各洗浄につき約1000rpmで10秒間遠心分離することができる(Invitrogen(商標)カラムは、より高速、例えば約10,000rpmでスピンできることに留意)。貫流液は廃棄することができる。ビーズは約1000rpmで10秒間遠心分離することによって、700μLの選別バッファー(後述を参照)で追加的に2回洗浄することができる。最後の洗浄は、シンチレーション計数のため取っておくことができる。mRNAディスプレイ分子は、約400μLの100μg/mL FLAGペプチド(選別バッファーに溶解)を添加して5分間室温で温置することによって溶出できる。溶出液は、約3000rpm(か、可能であればそれ以上)で20秒間スピンすることによって収集することができる。溶出ステップは、約400μLの100μg/mL FLAGペプチドを加えることによって、もう1回繰り返すことができる。両方の溶出液は合わされて、約5μLをシンチレーション計数のために取り分けることができる。この容量のFLAGペプチドは、最大約1mLの50%スラリーからの溶出に十分となることができ、より少量のスラリーが用いられているおよび/またはより高いRNA/タンパク質融合体濃度が望ましい場合、半量(200μL)に縮小することができる。保存や抗原選別におけるRNA分解を防ぐため、適量の本技術分野で公知のRNaseインヒビター(すなわち、1−2U/μL RNaseOUTおよび0.02μg/mL酵母tRNA)が、精製されたmRNAディスプレイライブラリーに添加されてよい。次の抗原選別ステップに進まない場合、サンプルを−80℃で保存する。
【0101】
FLAG回収を定量するため、約5μLの溶出アウトプットおよび最後の洗浄由来の約100μLをベータカウンターで計数する。10−30%以上の回収を予想でき、次式に従って計算することができる。
PROfusion分子回収%=(CPMアウトプット×容量アウトプット)/(CPMインプット×容量インプット)
【0102】
13.ビオチン化抗原によるライブラリー選別
選別は、ライブラリーの抗原への結合が平衡に達したときに目的の標的に特異的に結合する分子を濃縮するように設計される。ネガティブ選別(プレクリア)は、非特異的およびマトリックスバインダーを未処理scFvライブラリーから除去するのに必要となり得るが、単一のテンプレートから作製されたライブラリー、例えば単一scFvテンプレートに基づいて親和性成熟を行う、親和性成熟のために作製されたライブラリーが挙げられるがこれらに限定されない、を用いる場合省略することができる。標的フォーマットに依存して選別プロトコールは異なる。次に、ビオチン化標的を用いた使用のための例示的な選別プロトコールを記載する。このプロトコールは、他のフォーマットの標的抗原に適合するよう修正することができ、所望のアウトプットに応じてスケールアップまたはスケールダウンすることができる。
【0103】
A.選別前の調製
ストレプトアビジン(SA)磁気ビーズは、捕集のため用いることができ、通常使用前にプレブロッキングすることができる。SAビーズは、原瓶から1.5または2mLチューブに移して2mLの1×FLAG結合バッファーで2回洗浄することができる。ビーズは2mLの選別バッファーで(2時間から一晩)4℃で回転しながらブロッキングすることができる。プレクリアと選別捕集の両方に十分なビーズを調製することが重要である。プレブロッキングされたビーズは4℃で保存することができる。10pmolのビオチン化抗原につき約100μLのビーズが通常用いられるが、捕集ビーズ容量は、反応収量に対する遊離ビオチンの結合能力(例えば、ビーズ濃度が通常10mg/mlである場合、650−900pモル/mgビーズ)を考慮して計算するべきことを当業者であれば理解できる。
【0104】
1.5mLまたは2mL微量遠心チューブは、1×FLAG結合バッファーで約1時間から一晩、プレブロッキングすることができる。プレブロッキングされたチューブは、全プレクリアおよび選別ステップに用いることができる。通常、各サンプルにつき4本のチューブが必要とされる。2本はプレクリア用、1本はビーズ用、そして1本は選別用である。
【0105】
最適な結果は、ライブラリーをプレクリアすることによって得ることができる。FLAG精製したmRNAディスプレイライブラリーは、捕集容量の半量に相当するSAビーズ容量のビーズ(バッファーから分離)に加えることができる。ビーズは、30℃で約30分間回転することができる。プレクリアしたmRNAディスプレイライブラリーは、磁石を用いてビーズから分離することができ、プレクリアはもう一回繰り返すことができる。第二のプレクリアSAビーズは、上述の通りに洗浄、計数して、バックグラウンドが高いか判断することができる。これは、「抗原無し」ネガティブコントロールとすることもできる。
【0106】
B.ライブラリー選別:結合
選別の第一ラウンドのため、ビオチン化標的(100nM)をプレクリアしたライブラリー全体に添加して、30℃で1時間回転することができる。後期選別ラウンドのため、抗原結合分子の回収が1%を超えることが予想される場合、プレクリアしたライブラリーは、2個の等量アリコートに分注することができる。ビオチン化抗原は一方のアリコートに加えることができ、他方のアリコートは「抗原無し」ネガティブコントロールとなることができる。あるいは、上述の通り、洗浄した第二のプレクリアビーズは、より「プレクリア」でないことになるが、「抗原無し」コントロールであると考えることができる。後期ラウンドにおける抗原濃度は、抗原結合分子の回収が5%を超える場合減少させることができる。特に、抗原濃度は、抗原が「粘着性」であるように思われ、顕著な回収が初期ラウンドで観察される場合、減少させるべきである。抗原濃度は、抗原結合分子の回収がバックグラウンドより(例えば、抗原無しコントロールに対して)顕著に高くなる場合、後期ラウンドで減少させてよい。ライブラリーと抗原との間の化学量論に注意して、特に抗原濃度が低い場合、ライブラリーPROfusion分子より少なくとも5倍モル過剰の抗原が含まれていることを確実にすることが重要である。
【0107】
C.ライブラリー選別:捕集
ライブラリー捕集用SAビーズのブロッキングに用いられている選別バッファーは、遠心分離と磁気選別によって除去することができる。抗原と結合したライブラリーは、プレブロッキングされたSAビーズ(バッファーから分離)、次に結合反応液へと移され、30℃で5−10分間回転した。捕集用SAビーズ量は、結合能力および選別に用いられている標的の濃度(上述を参照)に基づいて計算するべきである。SAビーズ量は、SAビーズバインダーを抑制するため標的濃度を下げる場合少なくするべきであるが、通常50μL以上のビーズが用いられる。
【0108】
D.ライブラリー選別:洗浄
磁石を用いてSAビーズを捕集し、約1mLの選別バッファーで1分間洗浄することができる。このステップは、約5回繰り返すことができる(合計約6回)。洗浄回数を後期ラウンドで増やして、オフレート選別戦略を一部の標的に取り込むことができる。ビーズは、最後の1回は約1mLの逆転写に適切な1×バッファーで洗浄して磁石で捕集し、水(上で計算された捕集ビーズ容量の4分の1)に再懸濁することができる。
【0109】
別の一例として、Dynabeads(商標)(Invitrogen)を用いることができるが、当業者であれば、他のビーズも等しく適切であることを理解することができる。Dynabeads(商標)は、遠心分離と磁気選別によって非結合ライブラリーから分離することができる。上清は1mLチップで除去することができるが、相互汚染を避けるため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる。Dynabeads(商標)は、1mLの選別バッファーで洗浄し、穏やかにピペッティングまたはチューブを複数回反転することによって再懸濁することができる。チューブは、次のライブラリーを処理している間にビーズ分離用の磁気ホルダーに戻すことができる。全ライブラリーを洗浄した後、上清は1mLチップによって除去することができるが、相互汚染を避けるため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる。洗浄を5回繰り返す。Dynabeads(商標)は、上述の通り1mLの1×First Strandバッファー(SuperScript II、Invitrogen)で2回洗浄することができる。最後の洗浄において、必要に応じて、計数のためライブラリーの1/10を別個のチューブに取り分けて、ライブラリー回収を決定した。Dynabeads(商標)は、磁気選別によって捕集することができ、バックグラウンド計数のため約100μlの洗浄バッファーを取り分けることができる。Dynabeads(商標)は、上で計算された通り、捕集ビーズ容量の1/4の水に再懸濁することができる。
【0110】
E.ライブラリー選別:計数および回収計算
ラウンド3から始めて、最後の洗浄液およびビーズの約10−20%を計数する。計数を抑える可能性があるため、100μLより多いビーズを計数することは望ましくない。ライブラリー選別回収は次式に従って計算することができる。
選別回収%=100×CPM全ビーズ/CPM全インプット
【0111】
14.Fc融合タンパク質による平衡ライブラリー選別
別の一実施形態において、ライブラリー選別は、抗体Fc領域と結合した標的抗原(例えば、Fc融合タンパク質)に対して行うことができる。ネガティブ選別(プレクリア)は、未処理抗体ライブラリーから非特異的およびマトリックスバインダーを除去するために必要となり得るが、親和性成熟には省略してよい。選別特異性は、標的抗原をヒトIgG1とマウスIgG2aの両方と融合することによって改善することができる。ライブラリー選別においてFc融合タンパク質中に異なるFc領域を有することによって、Fc領域特異的なライブラリーバインダーを同定するリスクを最小限に抑えることができる。この操作はまた、ライブラリーバインダーを2種類の異なる磁気ビーズ(プロテインGおよび抗マウスIgG)によってプルダウンすることもでき、これによりさらに抗プロテインGまたは抗−抗マウスIgGバインダーを回収する可能性を低減させることができる。標的Fc融合タンパク質は、ビオチン化し、本明細書に記載されている方法か上述第13節の方法のいずれかによって選別することができる。抗体VH領域の特定部位(例えば、ヒトVH3ファミリー生殖細胞系列の配列に由来するVH)との交差反応のため、プロテインA磁気ビーズがFc融合タンパク質標的に対する選別に適さない可能性を留意するべきである。scFv−PROfusion分子と結合する抗原のプルダウンに適切な磁気ビーズは、DynabeadsプロテインG、Dynabeads全マウスIgGおよび他のヒトまたはマウスIgGに利用可能なDynabeads M−280を含むが、これらに限定されるものではない。一般に、プロテインGビーズの結合能力は、プロテインA/G磁気ビーズ100μLにつき約25μgのヒトIgG1(ほぼ167pmol)であると考えられる。
【0112】
A.選別前の調製
DynabeadsプロテインGまたはDynabeads全マウスIgG(標的抗原がマウスFc融合タンパク質である場合)は、捕集のため用いることができ、通常使用前にプレブロッキングされる。ライブラリーのプレクリアと選別に必要とされるDynabeadsの量は計算することができる。Dynabeadsは、原瓶から1.5または2mL微量遠心チューブへと移してバッファーを除去することができる。ビーズは1mLの選別バッファーで(2時間から一晩)4℃、または1時間室温でブロッキングすることができる。プレクリアと選別捕集の両方に十分なビーズを調製することが重要である。
【0113】
1.5mLまたは2mL微量遠心チューブは選別バッファーで1時間から一晩プレブロッキングすることができ、全プレクリアおよびライブラリー選別ステップにおいてプレブロッキングされたチューブを用いるべきである。
【0114】
FLAG精製したscFv PROfusionライブラリーは、プレブロッキングしたビーズ(バッファーから分離)に加えることができ、捕集容量(上述の通り計算された)の半量に相当するDynabead(プロテインGまたは全マウスIgG)容量を用いて、反応液を30℃で30分間回転することができる。プレクリアした融合ライブラリーは、磁石を用いてビーズから分離することができ、プレクリアはもう1回繰り返される。第二のプレクリアDynabeadsは、上述の通り洗浄、計数してバックグラウンドが高いか判断することができる。これは「抗原無し」ネガティブコントロールとなることもできる。
【0115】
B.ライブラリー選別:結合
選別の第一ラウンドのため、ビオチン化標的(100nM)をプレクリアしたライブラリー全体に添加して、30℃で1時間回転することができる。後期選別ラウンドのため、抗原結合分子の回収が1%を超えることが予想される場合、プレクリアしたライブラリーは、2個のアリコートに分注することができる(ライブラリーの計数に応じて、50/50から80/20)。ビオチン化抗原が一方のアリコート(全体の50−80%)に添加され、他方のアリコートは「抗原無し」ネガティブコントロールとなることができる。あるいは、上述の通り、洗浄された第二のプレクリアビーズも、より「プレクリア」でない場合を除き「抗原無し」コントロールであると考えることができる。抗原が「粘着性」であると思われ、初期ラウンドで顕著な回収が観察される場合、抗原濃度は低減させてよい。さらに、抗原結合分子の回収がバックグラウンド(抗原無しコントロール)よりも顕著に高くなる場合、抗原濃度は後期ラウンドで低減させてよい。ライブラリーと抗原との間の化学量論に注意して、特に抗原濃度が低い場合、ライブラリーPROfusion分子に対して少なくとも5倍モル過剰の抗原が含まれていることを確実にすることが重要である。
【0116】
C.ライブラリー選別:捕集
ライブラリー捕集用Dynabeadsのブロッキングに用いられている選別バッファーは、遠心分離と磁気選別によって除去することができる。抗原結合ライブラリーは、プレブロッキングされたDynabeads(バッファーから分離)へと移され、続いて結合反応液へと移されて30℃で20分間回転することができる。捕集に用いられているDynabeadsの量は、上述の通りビーズの結合能力と、選別に用いられている標的抗原濃度に基づいて計算することができる。ビーズバインダーのプルダウンを避けるため、標的抗原濃度が低い場合、Dynabeadsの量は低く抑えるべきである(なお、500μgまたは50μl以上であること)。
【0117】
D.ライブラリー選別:洗浄
Dynabeads(商標)は、非結合ライブラリーから遠心分離や磁気選別によって分離することができる。上清は1mLチップで除去することができるが、相互汚染をなくすため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いることができる。新しいピペットチップを用いて、Dynabeads(商標)を約1mLの選別バッファーで洗浄することができ、Dynabeads(商標)は、穏やかなピペッティングによってまたはチューブを複数回反転することによって再懸濁することができる。チューブは、次のライブラリーを処理している間にビーズの分離のために磁気ホルダーに戻すことができる。全ライブラリーを洗浄した後、上清は1mLチップ(相互汚染をなくすため、各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる)で除去することができる。このステップは、5回の洗浄を繰り返すことができる。Dynabeads(商標)は、上述の通り1mLの1×First Strandバッファー(SuperScript II、Invitrogen)で2回洗浄することができる。最後の洗浄において、ライブラリーの1/10は、必要に応じてライブラリー回収を決定する計数のため別個のチューブに取り分けることができる。Dynabeads(商標)は、磁気分離によって捕集することができ、約100μlの洗浄バッファーはバックグラウンド計数のため取り分けることができる。Dynabeads(商標)は、上で計算された捕集ビーズ容量の1/4の水に再懸濁することができる。
【0118】
E.ライブラリー選別:計数
上述の第13節(E)に記載されている通りに行うことができる。
【0119】
15.抗原競合によるオフレートライブラリー選別
オフレート選別と平衡選別との間の大きな差は、FLAG精製の前に先ずライブラリーが選別抗原と結合することである。FLAG精製後、オフレート競合においてPROfusion分子から非結合になった任意の前結合抗原が競合分子と置き換わるように、ライブラリーは過剰量の競合抗原または抗体(例えば、競合抗原が利用できない場合)と温置することができる。競合分子と結合したPROfusion分子が次の回収ステップで回収されないという点において、競合分子は前結合抗原と異なる。これらは、非修飾抗原または異なるフォーマットの抗原となることができる。抗体もまた競合分子となり得るが、通常抗体は抗原ほど効率的な競合分子ではなく、その効率はライブラリーの抗原に対する親和性が高くなるにつれ減少する。適切な競合期間を特定するため、選別のちょうど前にライブラリーのオフレートを決定することは都合が良い。この期間は、数時間から数週間の範囲に及ぶ。
【0120】
A:ビオチン化抗原または抗原−Fc融合タンパク質を用いたプレロードライブラリー
PROfusion分子を翻訳し、上述の通りオリゴdTによって精製することができる。オリゴdT精製ライブラリーは、5×FLAG結合バッファーを加えて1×最終濃度にする(単純に、ライブラリー容量の25%を加える)ことによって平衡化することができる。十分に高い濃度になるよう抗原(ビオチン化またはFc融合)が加えられ、30℃で30分間回転して抗原−抗体結合を飽和させることができる。PROfusion分子は、上述の通り抗FLAG M2アガロースによって精製することができる。FLAG精製したPROfusionライブラリーは氷上に維持するべきだが、凍結してはならないことに留意することが重要である。上述の通り、十分な量の捕集ビーズをプレブロッキングすることが重要である。
【0121】
B:競合分子の濃度およびライブラリーのベースライン回収の決定
前記ステップから回収されたライブラリー量を計算してそのモル濃度を決定することができる。これは、最大量のライブラリー結合抗原を表し、オフレート競合に必要とされる量(500×から1000×)の計算に用いることができる。
【0122】
10%のプレブロッキングしたビーズが、抗原結合PROfusionライブラリーの10%アリコートに加えられ、約20分間約4℃で回転することができる。ビーズは、上述の通り1mLの選別バッファーで5回洗浄することができる。オフレート選別前に抗原と結合したPROfusionライブラリーの割合は、ビーズを計数して次の通り決定することができる。
回収%=100×(CPMビーズ/CPMインプット)×10
【0123】
C:ライブラリー選別:競合
1000倍モル過剰の競合分子(例えば、非修飾抗原または抗体)が、FLAG精製PROfusionライブラリーに加えられ、より良いオフレートを備えるクローンを選別するための十分な淘汰圧をかけることのできる所定の期間約30℃で回転することができる。氷上でライブラリーを約1−2分間冷却して、ビーズ捕集前にオフレート減速する。
【0124】
D:ライブラリー選別:捕集
ライブラリー捕集用Dynabeadsのブロッキングに用いられている選別バッファーは、遠心分離および磁気選別によって除去することができる。抗原結合ライブラリーはプレブロッキングされたDynabeads(バッファーから分離)へと移し、4℃で約20分間回転することができる。
【0125】
E:ライブラリー選別:洗浄
Dynabeadsは、遠心分離および磁気選別によってライブラリーから収集することができる。上清は、1mLチップ(上述の通り、相互汚染を避けるため各ライブラリー選別チューブにつき1本の新しいフィルターチップを用いる)で除去することができる。
【0126】
上述の通り、ビーズは約1mLの1×First Strandバッファー(SuperScript II、Invitrogen)で2回洗浄することができる。最後の洗浄において、ライブラリーの10−20%は、必要に応じ計数してライブラリー回収を決定するため別個のチューブに移すことができる。Dynabeadsは、磁気選別によって捕集することができ、100μlの洗浄バッファーはバックグラウンド計数のため取っておくことができる。ビーズは、水(上で計算された捕集ビーズ容量の1/4)に再懸濁することができる。
【0127】
F:ライブラリー選別:計数および回収の計算
最後の洗浄液およびビーズの10−20%を計算することができる。100μLを超えるビーズの使用は計数を抑えるため、避けることが望ましい。ライブラリー選別回収は、次式を用いて計算することができる。
選別回収%=100×CPM全ビーズ/CPM全インプット
【0128】
16.ライブラリー選別アウトプットの逆転写
逆転写は、SuperScript II逆転写酵素(Invitrogen(商標))を用いて行うことができる。各反応液の容量は、選別後のビーズ容量に従ってスケールアップすることができる。アウトプットは、適切なプライマー対を用いた逆転写(RT)によって分析することができる。例えば、「Ckリバース」または「Ck5−FLAGA20Rev」プライマーはκライブラリーに対して用いることができ、「CJLリバース」または「CL5FLAGA20Rev」プライマーはλライブラリーに対して用いることができ、「Lib−GS−Rev」または「VH−GSFLAGA20−Rev」プライマーはヒトPBMC VHライブラリーに対して用いることができる。
【0129】
逆転写プライマーは、逆転写反応から取り残された残存プライマーが異なる3’末端配列を有する増幅産物を生成するのを避けるため、少なくとも続くPCRのリバースプライマーと同一の5’末端配列を有するべきである。これらプライマーはいかなる残存量であっても次のPCRに関与してポリAテールを欠く産物を生成し得るため、より短い「Ckリバース」、「CJLリバース」または「Lib−GS−Rev」プライマーがRTに用いられている場合特に、このことが重要である。
【0130】
【表2】
【0131】
例示的なRT反応条件
最終容量200μLの反応液に対し、RT反応は次の通り設定することができる。
ビーズ(水に懸濁) XμL
dH2O 108μLとする
10μMリバースプライマー 2μL
10mM dNTP 10μL
65℃、5分間温置し、氷上で冷却する。次の試薬を加える。
5×First Strandバッファー 40μL
0.1M DTT 20μL
RNaseOUT 10μL
【0132】
反応液は、10μLのSuperScript II逆転写酵素を加える前に42℃で2分間温置することができる。反応液は、100μLアリコートに分注し、時々攪拌しつつ42℃で50分間温置することができる。次に反応後、チューブを95℃で5分間温置することができる。ビーズを単離し、上清を新しいチューブに移すことができる。通常、同一の選別アウトプットに由来する場合、サンプルはプールすることができる。ビーズを水(RT容量の半量)に再懸濁する。反応後、チューブは95℃で5分間温置することができ、ビーズは磁石によって捕集することができ、上清は前に移した上清と共にプールすることができる。これは、選別アウトプットのPCR増幅のためのcDNAテンプレートを表す。
【0133】
17.細胞表面抗原に対するライブラリー選別
細胞表面抗原に対する場合と可溶性ビオチン化抗原に対する場合との間のPROfusionライブラリー選別の大きな差は、PROfusion分子のmRNA部分が、cDNAの相補性によって細胞性RNase分解から保護され、従ってライブラリー選別前にcDNAに逆転写される必要があることである。逆転写反応は、オリゴdT精製後のライブラリー容量に応じてFLAG精製の前または後に行うことができる。scFv分子の鎖内ジスルフィド結合を保存するため、還元剤DTTは逆転写またはライブラリー選別前のどのステップにも含まれるべきではないことに留意することが重要である。
【0134】
A:オリゴdT精製後のライブラリー調製
一実施形態において、選別の第一ラウンドに適切な最初の10mlの翻訳容量を用いることができるが、次の手順はより少量の翻訳反応に容易に適用できることに留意するべきである。
【0135】
PROfusion分子は、上述の通り翻訳およびオリゴdTによって精製することができる。精製されたライブラリーは、翻訳に用いられている網状赤血球ライセート容量と等量またはより少ないdH2O容量で回収するべきである。インプット、最後の洗浄バッファーおよび10μlのライブラリーは、上述の通り計数して収量および回収率を決定することができる。
【0136】
B:FLAG結合
オリゴdT精製したライブラリーは、ライブラリー容量の1/4の5×PBSを加えることによって最終濃度1×PBSに平衡化することができる。全PROfusion分子の捕集に必要な抗FLAG M2アガロースビーズ量を概算することができる(例えば、ビーズの結合能力を50%スラリー1mL当たり約6nmol融合タンパク質であると概算)。結合および洗浄における操作に十分なビーズ容量を有するために、200μL未満の前洗浄ビーズを用いることは勧められない。大口径ピペットチップを用いて抗FLAG M2アガロースを新しいチューブに移すことができる。ビーズをスピンダウン(1500rpm、1分間)してバッファーを除去することができる。保存バッファーに含まれているどれ程微量の界面活性剤も除去するため、ビーズを1mlのPBSで2−3回洗浄することができる。オリゴdT精製したライブラリーは、1×PBSにおいて洗浄した抗FLAG M2アガロースビーズに移して、4℃で1時間から一晩回転することができる。
【0137】
C:FLAG洗浄
場合によるステップとして、抗FLAG M2アガロースビーズは、1500rpm、1分間4℃でスピンダウンして上清を廃棄することができる。1×PBSを用いてビーズをBio−Rad(商標)ミニスピンカラムまたはInvitrogen(商標)微量遠心スピンカラムに移し、続いてバッファーは1000rpmで10秒間スピンすることによって除去できる。Invitrogen(商標)カラムは、より高速(例えば、10,000RPMが可能)でスピンすることができる。ビーズは、500−600μLの1×PBSによって4回洗浄することができ、PBSはカラムを通してスピンすることができる。ビーズは、500−600の1×RT First Strandバッファー(DTT無し)によって2回洗浄することができる。貫流液は廃棄することができるが、シンチレーション計数のため最後の洗浄液を取り分けることが望ましい。
【0138】
D:FLAG溶出
PROfusion分子は、100μg/mL FLAGペプチドの1:20希釈のRNaseOUTを含有するFirst Strandバッファー(DDT無し)中溶液を450μL(より少量のM2アガロース容量には230μLを用いてよいことに留意)加え、続いて混合液を10分間室温で温置することによって溶出することができる。溶出液は、3000rpm以上で20秒間スピンすることによって収集できる。このステップは、1回繰り返すことができ、次に両方の溶出液から得られたライブラリーをプールすることができる。
【0139】
E:FLAG回収の計算
5−10μLの溶出アウトプットおよび最後の洗浄液から得られた100μLをベータカウンターで計数する。PROfusion分子の回収%は、次の通りに計算することができる(10−30%以上の回収が予想されることに留意)。
=(CPMアウトプット×容量アウトプット)/(CPMインプット×容量インプット)
【0140】
F:逆転写
上述の第16節に記載されているプライマーを用いることができる。
【0141】
【表3】
反応液は、攪拌有りまたは無しで、37℃で1時間温置することができる。ライブラリーは、次の通り細胞表面抗原に対する選別のため平衡化することができる。逆転写反応が完了した後、5M NaClが反応混合液に添加されて、75mMとなることができる(15.3μLが1mL反応液に、7.6が500μLに)。容量を増やす必要がある場合、追加的な1×PBSをライブラリーに加えることができる。次のブロッキング試薬は、選別前にライブラリーに添加することができる。
【0142】
【表4】
【0143】
プレクリアステップは、未処理ライブラリー選別に必要となり得るが、単一のテンプレートから作製されたライブラリー、例えば親和性成熟のため作製されたライブラリーを用いる場合、省略することができる。
【0144】
ライブラリープレクリアに用いられている細胞(抗原未処理細胞)は、フローサイトメトリーまたはウエスタンブロット解析によって標的抗原を細胞表面に発現していないことを確認するべきである。例えば、この細胞は、抗原を発現する安定した細胞系の作製に用いた親細胞となることができ、このことは、プレクリアと選別に用いられている細胞の間の唯一知られている表面タンパク質の差異が、標的抗原そのものであるべき状況を提示する。
【0145】
ライブラリーのプレクリアに必要とされる細胞数を計算するべきである。これは、ライブラリーのプレクリアに必要とされる抗原未処理細胞の数であり、ライブラリー選別用と同数である。細胞数(X)は、いくつかの数値、すなわち抗原発現細胞表面上の抗原コピー数(C)、選別のためのライブラリーサイズ(S=モル数×6×1023)および標的抗原と結合するライブラリーの画分(F)から計算される。これは次式により概算して、10倍過剰の標的抗原またはプレクリア能力を可能にする。
X=10×S×F/C
【0146】
例えば、ある特定の抗原が1×104の推定細胞表面コピー数を有するとすると、抗原結合またはバックグラウンド固着によって、10pmol未処理抗体ライブラリーにおいて0.05%(5×10−4)未満のライブラリーが回収できる。プレクリアおよび選別に必要とされる細胞数は、次の通りである。
X=10×(10×10−12×6×1023)×(5×10−4)/(1×104)=3×106
【0147】
実際には、ペレット形成後に細胞ペレットを目視できることを確実にするため、細胞数は5×106以上とするべきである。
【0148】
G:ライブラリーのプレクリア
細胞密度は血球計算板またはコールターカウンターによって計数することができ、十分な細胞を遠心分離チューブに移すことができる。細胞は、1500rpm、4℃でスピンダウンし、1mLの氷冷PBSに非常に穏やかに再懸濁することができる。細胞懸濁液は1.7mLねじ蓋付き微量遠心チューブに移すことができる。細胞をピペッティングによって剪断しないよう注意する。細胞は、1500rpmでスピンダウンしてPBSを除去することができる。PBSによる洗浄ステップは、もう1回繰り返すことができる。ステップ13.3.3から得られたライブラリーは、穏やかに再懸濁した細胞に即座に添加するべきである。次にチューブは、氷水ウォーターバスに浸して約60分間攪拌することができる。細胞を1500rpmでスピンダウンし、第二のプレクリアまたは抗原選別のための細胞の新しいチューブにライブラリーを移すことができる。
【0149】
H:抗原発現細胞に対するライブラリー選別
抗原選別に必要な細胞数を計算する。これは、上で計算された通りのライブラリープレクリア用と同数である。細胞数(X)は、いくつかの数値、すなわち抗原発現細胞表面における抗原のコピー数(C)、選別のためのライブラリーサイズ(S=モル数×6×1023)および標的抗原と結合するライブラリーの画分(F)から計算される。これは、次式によって概算して、10倍過剰の標的抗原またはプレクリア能力を可能にする。
X=10×S×F/C
【0150】
I:ライブラリー選別
抗原発現細胞の密度は、血球計算板またはコールターカウンターによって計数することができ、十分な抗原発現細胞を遠心チューブに移すことができる。細胞は、1500rpm、4℃でスピンダウンし、細胞を非常に穏やかに1mLの氷冷PBSに再懸濁することができる。細胞懸濁液は、1.7mLねじ蓋付き微量遠心チューブに移すことができる。細胞をピペッティングによって剪断しないよう注意する。細胞を1500rpmでスピンダウンしてPBSを除去し、PBSでもう1回洗浄を繰り返す。精製および/またはプレクリアしたライブラリーを即座に用いて、細胞を穏やかに再懸濁することができる。チューブは氷水のウォーターバスに浸し、2時間回転することができる。1500rpmでスピンダウンし、上清を廃棄する。細胞は1mLのPBSで4回洗浄し、1500rpmでスピンダウンして上清を廃棄することができる。細胞は、500μLのPBSに再懸濁することができる。必要に応じて、細胞と最後の洗浄液の20%までを計数する。
【0151】
J:ライブラリーアウトプットの回収
5μLのRNaseH(2U/μL)を再懸濁した細胞に加え、37℃で20分間温置することができる。この操作はRNAを消化し、細胞表面からcDNAを遊離させる。細胞を1500rpmで30秒間スピンダウンし、上清を新しいチューブに移すことができる。ここに至って細胞を廃棄することができる。5μLのRNaseA(20mg/ml)を上清に加え、37℃で30分間温置することができる。この操作は、選別過程において破砕された細胞に由来する可能性のあるあらゆる細胞性RNAを分解する。分解されたRNAは後に透析によって除去することができ、これによってPCRによるライブラリー増幅への干渉を防ぐことができる。上清に等量のフェノール/CHCl3/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え、30秒間ボルテックスにかける。下層の有機相は、Phase Lock Gel Heavy2mlチューブ(Eppendorf)において、最高速度で5分間遠心分離することによって上層の水相から分離することができる。上層の水相を新しいチューブに移し、フェノール/CHCl3/イソアミルアルコール(25:24:1)で1回、CHCl3で1回抽出を繰り返すことができる。CHCl3抽出後の上層の水相は、Mini Dialysis Kit、8kDa cut−off、2mL(GE healthcare)へと移し、一晩4℃で4リットルのdH2Oに対して透析することができる。
【0152】
K:計数およびライブラリー選別回収の計算
ラウンド3から始めて、最後の洗浄液と細胞の10−20%を計数する。
選別回収%=100×CPM全細胞/CPM全インプット
【0153】
18.RT−PCRによるライブラリーDNAの再増幅
逆転写は、ライブラリーから捕集した材料を用いて行うことができる。本技術分野で公知の試薬およびプロトコールが、逆転写反応の実施に適切である。選別後のビーズ容量に応じて、反応液の容量はスケールアップまたはダウンすることができる。
【0154】
逆転写に用いられているプライマーは、抗体ライブラリーの3’末端非可変領域に位置する任意の適切なリバース相補配列となることができ、また続く増幅PCRに用いられるリバースプライマーと同一またはさらに3’となることができる。
【0155】
例示的な逆転写反応液は、ライブラリー選別由来のビーズ(水に懸濁)、リバースプライマーおよびdNTPを含む。反応液を65℃で約5分間温置し、氷上で冷却する。次に、通常First Strand合成バッファー、約0.1M DTTおよびRNaseインヒビターを反応液に添加する。逆転写酵素の添加前に、逆転写反応液を約42℃で2分間温置する。反応液は、時々攪拌しつつ約42℃で50分間温置する。次に反応液は95℃で5分間温置する。続いてビーズを磁石によって収集し、上清を新しいチューブに移し、同一の選別アウトプット由来であればプールする。ビーズを水(RT容量の半量)に再懸濁し、チューブにおいて95℃で5分間温置する。磁石を用いてビーズを再度収集し、上清を、前に移しておいた上清と共にプールする。これは選別アウトプットのPCR増幅のためのcDNAテンプレートを含む。PCR後、10−□LのPCR産物を2%アガロースゲル上にロードし、反応が成功したことを確認する。
【0156】
19.ライブラリーDNAテンプレート増幅のためのPCR
第一および第二ラウンドの選別アウトプットのため、cDNA(RT反応由来の上清)は8kDaカットオフを用いて水に対して透析することができ、cDNA全量をPCRテンプレートとして用いることができる。後期ラウンドの選別アウトプットのため、通常cDNAの10%をPCRテンプレートとして用いることができ、通常透析は必要とされない。ラウンド1および2のアウトプットのために(全RT産物を用いて)、反応は1mLのPCR容量において行うことができるが、一方後期ラウンド由来のアウトプットのために反応容量はスケールダウンすることができる。100μL反応溶液のためのアリコートはマスターミックスから作製するべきである。ライブラリーDNAテンプレート増幅のための例示的なPCR反応液を下の表7に示す。
【0157】
【表5】
【0158】
例示的な一実施形態において、ラウンド1および2のアウトプットには1mLのPCR反応液が用いられ、後期ラウンド由来のアウトプットには0.5mLの反応液が用いられる。100μL反応液のアリコートはマスターミックスから作製するべきである。ライブラリーDNAテンプレート増幅のための例示的なサーマルサイクル条件を下の表8に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
例示的な一実施形態において、ラウンド1および2のアウトプットには1mLのPCR反応液が用いられ、後期ラウンド由来のアウトプットには0.5mL反応液が用いられる。100−□L反応液のアリコートはマスターミックスから作製するべきである。ライブラリーDNAテンプレート増幅のための例示的なサーマルサイクル条件を下の表8に示す。
【0161】
【表7】
ライブラリーDNAテンプレート増幅のためのサーマルサイクル条件
95℃ 2分間
95℃ 20秒間
55℃ 10秒間 20サイクル*
70℃ 15秒間
70℃ 30秒間
4℃ 永続的に維持する
*注記:通常、KODホットスタートDNAポリメラーゼを用いて18−20サイクルの増幅を行うことができるが、十分量のライブラリーDNAの増幅には13サイクルもの回数でも良好に行うことができる。追加的な増幅サイクルによって様々なサイズの非特異的産物がより顕著となる可能性があり、産物はゲル精製が必要となり得る。可能であれば、増幅サイクル数よりもDNAテンプレートインプットの増加が有用となり得る。
【0162】
【表8】
【0163】
PCR後、PCR産物のサイズは例えばアガロースゲル電気泳動によって確認される。産物が正確なサイズ(scFvは、ほぼ850bp、VHまたはVLライブラリーは、ほぼ500bp)であり、最小限の非特異的産物が存在している場合、産物は一般に、直接次のラウンドの転写反応溶液において、またはスピンカラム(例えば、Qiagen(商標) QIAquick PCR精製キット)による精製の後に用いることができる。一部のケースにおいて、PCR産物はゲル精製を必要とし得る。ゲル精製がPCR産物に対して行われる場合、残りの全産物を調製的アガロースゲルで分離して、特異的バンドをゲル抽出のために切り出す。DNAにおける残存EtBrはUV吸光度に干渉する傾向があるため、ゲル精製したDNAは定量を誤らせる可能性がある。ゲル抽出におけるより広範な洗浄ステップはこの干渉を低減するのに有用となり得る。UV走査トレースは純粋なDNAサンプルと残存EtBrを有するDNAとの間で非常に異なるため、可能であればDNA濃度は分光計で測定するべきである。続いてこのプロトコールは繰り返され、複数ラウンドの選別を行う。
【0164】
A:VH CDR3スペクトラタイピングPCR
スペクトラタイピングPCRは、ライブラリーまたはその選別アウトプットにおけるVH CDRサイズ分布の解析に用いることができる。これは選別の進行と共にライブラリーの多様性を評価するのに有用なツールである。最初の数ラウンドのライブラリー選別アウトプットと選別前のライブラリーは十分に多様でなければならず、CDR3サイズ分布はガウス分布に近似する。
【0165】
【表9】
スペクトラタイピングPCRの設定
cDNAテンプレート 2.0μL
dH2O 18.1μL
5×GoTaq Flexi反応バッファー 6.0μL
25mM MgCl2 1.8μL
10mM dNTP 0.6μL
5’フォワードプライマー(10μM) 0.6μL
3’リバースプライマー(10μM) 0.6μL
GoTaq Flexi DNAポリメラーゼ 0.3μL
全容量 30.0μL
【0166】
Promega製GoTaq DNAポリメラーゼがこの設定に用いられているが、他のソース由来の耐熱性DNAポリメラーゼが代用してもよい。最終Mg2+濃度は1.5mMである。
サーマルサイクルのプログラム
94℃ 2分間
94℃ 20秒間
55℃ 20秒間 30サイクル
72℃ 30秒間
72℃ 5分間
4℃ 永続的に維持する
【0167】
B:スペクトラタイピング電気泳動と解析
PCR後、10μLの産物を2%アガロースゲルにロードし、反応が成功したことを確認することができ、残りの産物は、ROX標識DNAサイズマーカーと共にシーケンサーでスペクトラタイピング電気泳動のための配列決定コアファシリティーに付すことができるが、これは恐らく標識色素が異なるためDNA産物のサイズを通常3bp過小評価する。
【0168】
増幅DNA産物は、次の構成を備える。
5’−FR3(27bp)−VH CDR3−FR4(35bp)−3’
VH CDR3のサイズは、Rox色素サイズマーカーによって決定された見かけ上のDNA産物のサイズから、次の計算によって推定される。
サイズVH CDR3=(サイズ見かけ上のDNA産物サイズ−60)/3
式中、60=(62両末端のフレームワーク−13’突出+3DNAマーカー過小評価)
【0169】
16.例示的な試薬およびバッファーの組成
10×化学ライゲーションバッファー
Tris、pH7 250mM
NaCl 1M
【0170】
【表10】
【0171】
【表11】
【0172】
選別バッファー
リン酸塩ベースバッファー
PBS 1×
BSA 1mg/mL
サケ精子DNA 0.1mg/mL
TritonX−100 0.025%
酵母tRNA(場合による、使用前に添加) 20ng/mL
【0173】
代替的なHEPESベースバッファー
HEPES 50mM
NaCl 150mM
BSA 1mg/mL
サケ精子DNA 0.1mg/mL
TritonX−100 0.025%
酵母tRNA(場合による、使用前に添加) 20ng/mL
【0174】
First Strandバッファー
Tris−HCl、pH8.3 250mM
KCl 375mM
MgCl2 15mM
【0175】
50×FLAGストック溶液
FLAGペプチド 25mg
選別バッファー 5mL
1mLのアリコートを作製し、−20℃で保存する。
【0176】
FLAG溶出溶液
50×FLAGストック溶液 1mL
選別バッファー 49mL
1mLのアリコートを作製し、−20℃で保存する。
【0177】
オリゴdTセルロースの調製
2.5gのオリゴdTセルロースを50mLチューブ内で計量する。
25mLの0.1N NaOHを添加し、混合する。
1500rpmで3分間スピンダウンし、上清を捨てる。
オリゴdTセルロースを25mLの1×オリゴdT結合バッファーで洗浄する。
1500rpmで3分間スピンダウンし、上清を捨てる。
もう3回洗浄を繰り返し、上清のpHを測定する。
pHは洗浄バッファーと同じでなければならない(ほぼpH8.5)。
最終容量が25mLになるよう1×オリゴdT結合バッファーを加えることによってオリゴdTセルロースを再懸濁する。これは約50%スラリーとなることができる。
前洗浄したセルロースビーズを4℃で保存する。
最終濃度=100mg/mL=1nmol RNA結合能力。
【0178】
抗FLAG M2アガロースの調製
25mLのM2アガロースビーズを50mLチューブに移す。
Beckman遠心分離機において5分間1000rpmでビーズをスピンダウンし、アスピレーションによって上清を除去する。
ビーズを等量の10mMグリシン、pH3.5に再懸濁することによって洗浄する。
Beckman遠心分離機において5分間1000rpmでビーズをスピンダウンし、アスピレーションによって上清を除去する。
1カラム容量の1×FLAG結合バッファーに再懸濁する。
Beckman遠心分離機において5分間1000rpmでスラリーをスピンダウンし、アスピレーションによって上清を除去する。
洗浄を3回繰り返す。
1カラム容量の1×結合バッファー(1mg/mL BSAと100mg/mLサケ精子DNAを含む)に再懸濁する。
1時間または一晩、4℃で転倒混和する。
必要に応じて2mL画分のアリコートを作製し、4℃で維持する。
【0179】
(実施例1)
機能的mRNA−scFv分子の証明
4種の公知の抗体を用いて、機能的mRNA−scFv分子が提示され、それらそれぞれの抗原と結合できることを証明した。D2E7(ヒト抗hTNF)、Y61(ヒト抗hIL−12)、17/9(マウス抗−HA)およびMAK195(マウス抗hTNF)。下の表9に示されているプライマーを用いたプラスミドDNAのPCRによって、MAK−195scFvを作製した。
【0180】
【表12】
NCBIデータベースからダウンロードしたタンパク質配列A31790およびB31790に基づく次のプライマー(下の表10を参照)を用いたPCRによって、抗HA17/9scFv(Schulze−Gahmenら(1993)J.Mol.Biol.234(4):1098−118を参照)を作製した。
【0181】
【表13】
【0182】
これらscFvのDNAコンストラクトは、インビトロで転写され、次にウサギ網状赤血球ライセートによってmRNA−scFv(タンパク質はピューロマイシン修飾を有するリンカーを介してmRNAに結合している)として、または遊離scFv(タンパク質はmRNAに結合していない)として翻訳された。両方のタイプの分子を精製し、対応するビオチン化抗原によるプルダウンアッセイに付した(図4を参照)。
【0183】
図4のデータは、機能的mRNA−scFv(ビオチン化抗原と結合)は、遊離scFvよりも低い回収率であったがストレプトアビジン−磁気ビーズによってプルダウンできることを示す。さらに別の実験によって、この差が単にscFvに繋がった重いRNAによるものであることが示された。mRNA−scFv分子におけるRNA部分をRNaseによって分解することにより、scFvの抗原による回収を遊離scFvの回収と同一のレベルにまで回復させた(図5を参照)。
【0184】
(実施例2)
翻訳反応を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化
好ましい一実施形態において、ライブラリーサイズは1×1012である。ライブラリーサイズの12倍をカバーするため、約20pmolの融合タンパク質(例えば、1.2×1013)が選別に必要とされる。FLAG精製に続いて行われる回収は、通常約30%である。従って、FLAG精製にインプットするため、約60pmolの融合タンパク質がオリゴdT精製の後に必要とされる。一実施形態において、オリゴdT精製の後、100pmolのRNAにつき約1.2pmolの融合タンパク質が得られる。この実施形態において、60pmolの融合タンパク質を得るために約5nmolのRNA(ライブラリーサイズの3000倍に及ぶ)が必要とされる。この計算が、融合mRNAディスプレイ分子の約20−30%だけが機能的である(選別後に回収できる)との観察を考慮に入れていないことに留意。
【0185】
mRNAディスプレイ法の次のステップに必要とされる前記融合タンパク質量のため、タンパク質の回収を最大化するよう翻訳反応を最適化した。翻訳反応への最初のRNAインプット量の変化をFLAG精製の後に評価した。翻訳反応において取り込まれたS35メチオニンの比率を測定することによって、またタンパク質pmol数(アウトプット)のRNApmol数(インプット)に対する比率を計算することによってタンパク質回収を評価した。試験したインプットRNA出発量を、その結果得られたタンパク質回収と共に表12に示す。この解析で証明されたように、より少量のRNAインプットによって驚くほどさらに高いタンパク質回収率がもたらされる。
【0186】
【表14】
【0187】
様々な量の遊離アミノ酸混合物を用いた翻訳反応も行って、タンパク質回収における影響を決定した。試験したアミノ酸混合物の相対的な出発量を、その結果得られたタンパク質回収と共に表13に示す。各ケースにおけるRNAインプットは50pmolであった。この解析で証明されたように、アミノ酸プールの増加は翻訳効率を減少させる。
【0188】
【表15】
【0189】
様々な量の「非アイソトープ」(すなわち、非放射性)メチオニンの、その翻訳効率における効果も試験した。試験した様々な濃度の非アイソトープメチオニンを、その結果得られたタンパク質回収と共に表14に示す。各ケースのRNAインプットは50pmolである。この解析によって証明されたように、非アイソトープメチオニンのインプット増加は翻訳効率の増加を生じない。
【0190】
【表16】
【0191】
従って、mRNAディスプレイの翻訳反応を計画する場合、RNAインプットおよびアミノ酸濃度を考慮するべきである。各反応におけるRNAインプットの減少はタンパク質回収を改善できるが、これはライブラリーサイズにも影響を与える。本発明のmRNAディスプレイ法の実施に有用となり得る例示的なRNA翻訳反応液を表15に示す。
【0192】
【表17】
【0193】
(実施例3)
scFv選別のためのmRNAディスプレイ技術の最適化−スペーサー長
scFvタンパク質とmRNA末端の間の長いスペーサー長がscFvフォールディングおよび機能を改善させることは、以前から提案されていた(Hanesら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(10):4937−42を参照)。従って、mRNA−scFv分子の機能および収量におけるscFvとリンカーアニーリング部位との間のスペーサー長の影響を調査した(図6を参照)。短い、中程度のおよび長い3’スペーサーを備える3種類の異なるD2E7scFvコンストラクトと、Y61および17/9scFvのための2種類の短いおよび長いスペーサーコンストラクトを作製した(D2E7スペーサーコンストラクトは図8を参照)。図7に示されている結果は、より長いスペーサーは、抗原結合に評価されるようなmRNA−scFV分子の機能に測定可能な利点をもたらさないことを示す。さらに、より長いスペーサー長は、mRNA−scFvの収量を顕著に低減させた(図7参照)。より長いスペーサーはRNA収量も低かった。短いスペーサーは6nmol RNAを生じ、中程度のスペーサーは3.4nmol RNAを生じ、長いスペーサーは1.7nmolを生じた。従って、一実施形態において、より短いスペーサーがscFvライブラリー構築に好ましい。
【0194】
3種類の異なるY61コンストラクト(図23を参照)を用いて異なるスペーサーおよびリンカーの比較も行った。下の表16に示されている結果は、より長いスペーサーはRNA収量も低いことを示す。さらに、配列番号10と配列番号4それぞれに示されている通り、これら2種類のコンストラクトの間でscFvタンパク質は同一であるため、mRNAそのもの(Y61−scGene3pA)からmRNAとscFvタンパク質の間のDNAリンカー(Y61−scGene3)へとポリAテールを移動することによっても、mRNA分子の精製にも抗原結合に違いはなかった。
【0195】
【表18】
【0196】
下に示す通り、17/9は機能的となるために翻訳においてPDIを必要とし、選別前の逆転写反応においてDTTはその抗原結合に影響することが示された。これらの結果が示すように、ジスルフィド結合は17/9機能に必要であり、このことから17/9はスペーサー長要求を調べるのに適切な候補となる。図9は、より長いスペーサー長はmRNA−scFv分子の抗原への結合を改善せず、その収量を低減させることを示す。
【0197】
(実施例4)
scFvタンパク質のフォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−システイン残基における化学修飾の省略
本技術分野におけるメッセンジャーRNAディスプレイ技術は、シアニル化をもたらす2−ニトロ−5−チオシアナト安息香酸による、またはスルフヒドリル基と共有結合するN−エチルマレイミドによる、望ましくないシステインジスルフィド結合の形成を防ぐためのフリーのシステイン残基の化学キャッピング反応を含む。このキャッピング反応は、フリーのシステイン残基のランダム架橋に起因する潜在的なタンパク質誤フォールディングを取り除くが、本発明は、予見できない物理的または化学的特性に起因するその将来的な製造可能性を損なう可能性のある抗体内フリーシステインの人為的な保護を取り除く。ライブラリー選別においてscFvのIg領域フォールディングに必要とされる4個のシステインを超えるどの余分のフリーのシステインも活発に保護されないように、化学キャッピングのステップは削除される。
【0198】
(実施例5)
scFvタンパク質フォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−同時翻訳タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ活性要求
イソメラーゼかシャペロンのいずれかの活性またはその両方によって、PDIがより良いタンパク質機能および分泌に寄与することが示唆されてきた(Shustaら、Nat Biotechnol 16(8):773−7;Smithら、Biotechnol Bioeng 85(3):340−50を参照)。2個のIg領域内ジスルフィド結合は全scFv配列によってコード化されており、一方はVHに、他方はVL領域に存在する。同時翻訳タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)活性が、適切なジスルフィド結合のインビトロ形成に重要であることが示唆されてきた(Ryabovaら、Nat Biotechnol 15(1):79−84を参照)。本技術分野におけるmRNAディスプレイのプロトコールは、翻訳反応液に(PDI)を含むことを定める。
【0199】
D2E7、Y61および17/9scFvを用いて、これらのmRNAディスプレイシステムにおけるPDI活性要求を試験した。結果は、scFvの内の2種類(D2E7および17/9)が、その生成においてPDI無しではその同起源の抗原と結合しないのに対し、Y61は影響を受けない様子であることを示した(図10を参照)。広範なライブラリーレベルにおいて、高い多様性は、最大限のscFv機能を確実にするためPDI活性を必要とすることが結論される。
【0200】
追加的なPDI添加有りまたは無しで翻訳されたD2E7scFvの回収と機能性も試験した。翻訳反応液は、1チューブのライセート(200μl)、100pmol D2E7短スペーサーRNA、PDIおよびGSSG/GSHを含む。PDI無しの翻訳は、PDIとGSSG/GSHを含まない。翻訳されたタンパク質をFLAG精製によって回収し、回収量を定量した。続いて100000cpm当たり50mMビオチン化TNFαおよび等量のインプットを用いて抗原結合/回収を行った。結果を下の表17に示す。
【0201】
【表19】
【0202】
Y61が機能性のために翻訳においてPDIを必要としないことを示す結果を下の表18に示す。
【0203】
【表20】
【0204】
17/9が機能性のために翻訳においてPDIを必要とすることを示す結果を下の表19に示す。
【0205】
【表21】
【0206】
(実施例6)
scFvタンパク質フォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−反応からジチオスレイトールの除去
ジチオスレイトール(DTT)は、タンパク質凝集を最小限に抑え、タンパク質の酸化を抑制するよう酵素反応に一般に導入される還元剤である。これはまた、mRNAscFv分子のインビトロ翻訳ステップに続く逆転写(RT)反応に通常用いられる。これを含有することによって、PDI活性によって形成されたscFv分子における2個の鎖内ジスルフィド結合を抑制できるため、DTTのscFv抗原結合機能における潜在的な効果を調査した(図11参照)。DTTが存在することによって、RT後の17/9scFvの抗原結合活性が顕著に失われ、これは図11に示されている17/9機能のPDI活性依存と矛盾しない。RTからDTTが除かれると17/9の大部分の抗原結合活性が保存されたため、この抗原結合活性の損失はRT反応それ自身が原因ではない。さらに、結果から、17/9scFvのcDNAはDTT無しでmRNAから確かに逆転写されたことがPCRによって示され、これはDTTがRT反応に必須でないことを示唆する(データ無し)。
【0207】
選別前のRT反応におけるDTTが17/9機能性に影響を与えることを示す結果は、下の表20に示されている。しかし、図12に示されている通り、DTTはRT過程には影響を与えない。
【0208】
【表22】
【0209】
17/9scFvと対照的に、抗IL−12Y61scFvの機能は、DTTに影響されなかった(図11参照)。この結果は、上述のPDI活性に対して感受性がないことと矛盾なく、あらゆる抗体scFvがジスルフィド結合を機能のために必要とする訳ではないことを示唆する。様々なRT条件をY61−scCL−短のために検討し、対応する結果を下の表21に、また図13にも示す。
【0210】
【表23】
【0211】
一実施形態において、DTTはRTに含まれない、あるいはRTは抗原選別後まで延期してmRNA−scFvライブラリーから得られる機能的scFv収量の生産を最大化する。下の表22および23は、Y61−ScCL−長およびY61−ScCL−短それぞれにおける抗原選別ステップ後までRTステップを延期させた結果を示す。
【0212】
【表24】
【0213】
【表25】
【0214】
(実施例7)
scFvタンパク質フォールディングおよび機能を改善するためのmRNAディスプレイ技術の最適化−抗原選別におけるRNaseインヒビターの含有
RTによる二本鎖mRNA−cDNAの形成は、抗原結合のためのmRNA−scFv分子を準備し、RNA分解を防止してRNA二次構造を抑制すると考えられる。抗原による選別の後、cDNAはmRNAのアルカリ加水分解によって回収することができ、PCRの増幅テンプレートとなる。抗原選別前のRTにおけるDTTのscFv機能に対する潜在的な影響を避けるため、選別後の増幅のためのmRNAを保護するために代替法を用いることが必要とされる。
【0215】
従って、mRNA−VH分子におけるその保護的cDNA鎖を欠くmRNAが、十分に安定的で、抗原選別後のRT−PCRによる増幅に接近可能であるかどうか調査した。前に確認したIL−1α結合mRNA−VH分子をモデル分子として用いた。抗原選別前または後にRTが行われた場合のPhylos40VH配列の回収を比較した(図14参照)。本技術分野における方法(選別前RTおよびcDNAのアルカリ溶出、左レーン)と比較したところ、mRNA−IL−1α複合体をSA磁気ビーズに捕集して直接RTに用いた場合(右レーン)、抗原選別後のRT−PCRによるmRNAの回収は顕著に抑制されたと考えられる。これは抗原選別における部分的なRNA分解、またはビーズ上のmRNAへRTのために接近しづらいことに起因する可能性がある。IL−1α−Phylos40VH相互作用を阻害し、mRNA接近可能性をより良くするための酸溶出(pH3)によってSAビーズからmRNA−VH分子を解離する試みは、恐らくmRNA安定性の低下、またはSAビーズと複合体を除去する前にmRNA−VH分子がその抗原から溶出バッファーに解離しにくいため、その回収を悪化させると思われる。図14は、酸溶出を用いたオリゴDT後に続いてRT−PCRが行われる標準的なRT−PCR法と、捕集後のビーズから直接行ったRT−PCRを比較する、抗原選別後の逆転写の結果を示す。非結合ビーズで1:10、1:100および1:1000希釈することによって、1:1000希釈において強い再増幅が達成されたことが示された。
【0216】
抗原選別前のRTを省略し、その後RT−PCRによってmRNAを回収することが可能なため、コンタミネートしたRNase活性からRNAをRNaseインヒビターで保護することによって、減少したmRNAテンプレートの回収を回復または増強することができるか調査した。抗原選別ステップにおいてRNaseOUT(商標)(Invitrogen、cat.#10777−019)を1:20希釈で含有させ、続いてRT−PCRを行ってmRNA回収を比較した(図15参照)。抗原選別前のRTと比較すると、RTを抗原選別後にRNaseインヒビター無しで行った場合、mRNAテンプレートの再度の回収は減少する。興味深いことに、抗原選別におけるRNaseインヒビターの含有は、mRNA回収を回復させるだけでなく顕著に増強する。従って、この増強は少なくとも部分的により軽いほぼ280kDaのmRNA−scFv分子の、追加的なcDNAを有するより重いほぼ560kDamRNA−scFv分子より高い捕集効率に起因すると思われる。
【0217】
RNaseOUTの含有はまた、mRNA−scFv分子を用いても試験した。図16は、RNaseOUT有りまたは無しにおいてY61−CL−長とY61−CL−短を比較するよう行われた実験を表す。結果は図17と共に下の表24に見出すことができる。
【0218】
【表26】
【0219】
(実施例8)
17/9scFvのライブラリー選別
本明細書に記載されているmRNAディスプレイ法を用いた数ラウンドの選別によってmRNA−scFv分子を濃縮できることを証明するため、重複PCRによって25の多様性を有するscFvライブラリーを構築した。scFvライブラリーを作製するため、17/9、D2E7、2SD4、Y61およびMAK195の等量のVHおよびVL断片を混合し、25の最大多様性を有するscFvライブラリーに合わせ、上述の通りに用いた。次にこのライブラリーからビオチン化HAタグペプチドによって17/9scFvを選別した。選別後、クローニングおよびコロニーPCRによって17/9の濃縮を検査した。1ラウンドのmRNA−scFv選別の前と後で17/9scFvを定量した結果を、図18に示す。1ラウンドのHAペプチドに対する選別の後、選別アウトプットから回収された全scFv配列は、17/9scFvの配列であった。
【0220】
(実施例9)
mRNAディスプレイ技術は、異なる親和性を有するscFvバインダーを識別するために用いることができる
mRNAディスプレイ技術、すなわち上述の技術が、異なる親和性を有するscFvバインダーを識別するために用いることができるか決定するため、D2E7と2SD4のキメラを作製した。2SD4は、TNFαに対して低い親和性(遊離タンパク質としてKDほぼ200nM)を示す、D2E7scFvの前駆体である。図19はキメラを示す。
【0221】
遊離タンパク質に対して滴定を行った。図20aは異なるキメラの間の抗原結合後の回収率を示すが、一方図20bは抗原選別後の正規化回収率を表す。上述の結果から、本明細書に記載されているmRNAディスプレイ技術は、異なる親和性を有するバインダーを識別するために用いることができることが示される。
【0222】
(実施例10)
mRNA−scFv分子の耐熱性
mRNA−scFv分子の耐熱性を決定するため、本明細書に記載されているようにD2E7−scCkおよびY61−scCkを翻訳して、mRNA−scFvフォーマットに精製した。次に、mRNA−scFv分子を抗原選別前に様々な温度で30分間温置した。抗原選別後の正規化回収率を図21に示す。
【0223】
図22は、mRNA−scFv分子の高温処理後にRNAを回収できることを示す。そこで、回収されたY61−scClのmRNA−scFv分子を有するビーズにおいてRT−PCRを行った。
【0224】
参照による援用
本願を通じて引用されている可能性のあるあらゆる引用文献(参考文献、特許、特許出願およびウエブサイト)の内容は、そこに引用されている参考文献のように、いかなる目的においてもこれによりその内容全体が参照によって本明細書に特に組み込まれている。本発明の実施において、他に断りがない限り、本技術分野においてよく知られている従来の細胞培養と分子生物学の技法が用いられている。
【0225】
均等
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態に具体化することができる。従って上述の実施形態は、本明細書の記載に本発明を限定するものではなくむしろ説明のためのものであることをあらゆる点で考慮するべきである。従って本発明の範囲は、上述の説明によってではなくむしろ添付の特許請求の範囲によって示され、従って特許請求の範囲における均等の意義および範囲内のあらゆる変更を本明細書に包含することを目的とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ピューロマイシンまたはそのアナログを3’末端に、ソラレンC6を5’末端に有する一本鎖核酸リンカーと架橋し、5’scFvおよび3’スペーサー配列をコードするmRNAを含む、ピューロマイシンまたはそのアナログと架橋した単鎖Fv(scFv)mRNA分子を提供するステップ、
(b)標識の存在下、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が形成されるような条件下で、ピューロマイシン架橋scFv mRNAをインビトロ翻訳するステップ、
(c)標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を精製するステップ、
(d)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を少なくとも1種類の抗原を用いた抗原選別に付すステップおよび
(e)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を、親和性に基づいた磁気ビーズを用いて回収するステップ
を含む、scFv抗体RNAディスプレイライブラリーをスクリーニングする方法。
【請求項2】
(g)抗原選別の後、scFv mRNAを逆転写してcDNAを作製するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
(h)cDNAを増幅するステップをさらに含む、請求項2の方法。
【請求項4】
標識が放射性標識である、請求項1の方法。
【請求項5】
標識が35Sメチオニンまたはシステインである、請求項4の方法。
【請求項6】
3’スペーサー配列が約0から約200アミノ酸を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
3’スペーサー配列が約16アミノ酸を含む、請求項1の方法。
【請求項8】
3’スペーサー配列がアフィニティータグを含む、請求項1の方法。
【請求項9】
核酸リンカーが、5’から3’へと、
ソラレンC6、
配列UAGCGGAUGC(配列番号20)を含む2’OMeリボヌクレオチド、
6個のトリエチレングリコールまたはPEG−150部分、
2個のデオキシシチジン残基および
ピューロマイシン
を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
scFv mRNA分子がUVAによってDNAリンカーと光架橋される、請求項1の方法。
【請求項11】
scFv mRNA分子がT7、SP6およびT3からなる群から選択された5’プロモーターを含む、請求項1の方法。
【請求項12】
scFv mRNA分子がタバコモザイクウイルス5’非翻訳領域を含む、請求項1の方法。
【請求項13】
標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子がオリゴdTクロマトグラフィーによって精製される、請求項1の方法。
【請求項14】
標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズを用いて精製される、請求項1の方法。
【請求項15】
標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が、オリゴdTクロマトグラフィーおよび抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズによって精製される、請求項1の方法。
【請求項16】
抗原がビオチン化ペプチド、タンパク質またはハプテンである、請求項1の方法。
【請求項17】
抗原がヒト免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)との融合タンパク質である、請求項1の方法。
【請求項18】
抗原がマウス免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)との融合タンパク質である、請求項1の方法。
【請求項19】
抗原がビオチン化ペプチド、タンパク質またはハプテンである、請求項1の方法。
【請求項20】
抗原が細胞集団である、請求項1の方法。
【請求項21】
抗体が抗IL−12抗体である、請求項1の方法。
【請求項22】
抗体が抗HA抗体である、請求項1の方法。
【請求項23】
抗体がマウス抗体である、請求項1の方法。
【請求項24】
抗体がヒト抗体である、請求項1の方法。
【請求項25】
抗体がヒト化抗体である、請求項1の方法。
【請求項26】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳が、GSSH/GSHの存在下でさらに行われる、請求項1から24のいずれか一項の方法。
【請求項27】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳がタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の存在下でさらに行われる、請求項26の方法。
【請求項28】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳がジチオスレイトールの不在下でさらに行われる、請求項1から24のいずれか一項の方法。
【請求項29】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳がジチオスレイトールの不在下でさらに行われる、請求項27の方法。
【請求項30】
mRNAキャッピングステップを含まない、請求項1の方法。
【請求項31】
精製ステップの前にインビトロ逆転写ステップを含まない、請求項1の方法。
【請求項32】
ステップ(a)から(g)の内いずれかの前、間または後にRNaseインヒビターが添加される、請求項1の方法。
【請求項33】
前記精製ステップが、ジチオスレイトール不在下におけるcDNA作製のためのmRNAの逆転写を含む、請求項1の方法。
【請求項34】
cDNAが約pH=8.0−約pH=10.0のアルカリ加水分解によって溶出される、請求項2または33の方法。
【請求項35】
cDNAが熱によって溶出される、請求項2または33の方法。
【請求項36】
cDNAが約pH=3.0−約pH=6.0の酸によって溶出される、請求項2または33の方法。
【請求項37】
cDNAがポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される、請求項33の方法。
【請求項38】
ポリメラーゼ連鎖反応が耐熱性DNAポリメラーゼを用いる、請求項37の方法。
【請求項39】
ポリメラーゼ連鎖反応がPlatinum HiFiおよびKODからなる群から選択された増幅酵素を用いる、請求項37の方法。
【請求項40】
ビーズが、ストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項1】
(a)ピューロマイシンまたはそのアナログを3’末端に、ソラレンC6を5’末端に有する一本鎖核酸リンカーと架橋し、5’scFvおよび3’スペーサー配列をコードするmRNAを含む、ピューロマイシンまたはそのアナログと架橋した単鎖Fv(scFv)mRNA分子を提供するステップ、
(b)標識の存在下、標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が形成されるような条件下で、ピューロマイシン架橋scFv mRNAをインビトロ翻訳するステップ、
(c)標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を精製するステップ、
(d)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を少なくとも1種類の抗原を用いた抗原選別に付すステップおよび
(e)精製された標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子を、親和性に基づいた磁気ビーズを用いて回収するステップ
を含む、scFv抗体RNAディスプレイライブラリーをスクリーニングする方法。
【請求項2】
(g)抗原選別の後、scFv mRNAを逆転写してcDNAを作製するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
(h)cDNAを増幅するステップをさらに含む、請求項2の方法。
【請求項4】
標識が放射性標識である、請求項1の方法。
【請求項5】
標識が35Sメチオニンまたはシステインである、請求項4の方法。
【請求項6】
3’スペーサー配列が約0から約200アミノ酸を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
3’スペーサー配列が約16アミノ酸を含む、請求項1の方法。
【請求項8】
3’スペーサー配列がアフィニティータグを含む、請求項1の方法。
【請求項9】
核酸リンカーが、5’から3’へと、
ソラレンC6、
配列UAGCGGAUGC(配列番号20)を含む2’OMeリボヌクレオチド、
6個のトリエチレングリコールまたはPEG−150部分、
2個のデオキシシチジン残基および
ピューロマイシン
を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
scFv mRNA分子がUVAによってDNAリンカーと光架橋される、請求項1の方法。
【請求項11】
scFv mRNA分子がT7、SP6およびT3からなる群から選択された5’プロモーターを含む、請求項1の方法。
【請求項12】
scFv mRNA分子がタバコモザイクウイルス5’非翻訳領域を含む、請求項1の方法。
【請求項13】
標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子がオリゴdTクロマトグラフィーによって精製される、請求項1の方法。
【請求項14】
標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズを用いて精製される、請求項1の方法。
【請求項15】
標識ピューロマイシン架橋scFv mRNA/タンパク質分子が、オリゴdTクロマトグラフィーおよび抗FLAG M2モノクローナル抗体アガロースビーズによって精製される、請求項1の方法。
【請求項16】
抗原がビオチン化ペプチド、タンパク質またはハプテンである、請求項1の方法。
【請求項17】
抗原がヒト免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)との融合タンパク質である、請求項1の方法。
【請求項18】
抗原がマウス免疫グロブリン結晶化可能フラグメント(Fc)との融合タンパク質である、請求項1の方法。
【請求項19】
抗原がビオチン化ペプチド、タンパク質またはハプテンである、請求項1の方法。
【請求項20】
抗原が細胞集団である、請求項1の方法。
【請求項21】
抗体が抗IL−12抗体である、請求項1の方法。
【請求項22】
抗体が抗HA抗体である、請求項1の方法。
【請求項23】
抗体がマウス抗体である、請求項1の方法。
【請求項24】
抗体がヒト抗体である、請求項1の方法。
【請求項25】
抗体がヒト化抗体である、請求項1の方法。
【請求項26】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳が、GSSH/GSHの存在下でさらに行われる、請求項1から24のいずれか一項の方法。
【請求項27】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳がタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の存在下でさらに行われる、請求項26の方法。
【請求項28】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳がジチオスレイトールの不在下でさらに行われる、請求項1から24のいずれか一項の方法。
【請求項29】
ピューロマイシン架橋scFv mRNAのインビトロ翻訳がジチオスレイトールの不在下でさらに行われる、請求項27の方法。
【請求項30】
mRNAキャッピングステップを含まない、請求項1の方法。
【請求項31】
精製ステップの前にインビトロ逆転写ステップを含まない、請求項1の方法。
【請求項32】
ステップ(a)から(g)の内いずれかの前、間または後にRNaseインヒビターが添加される、請求項1の方法。
【請求項33】
前記精製ステップが、ジチオスレイトール不在下におけるcDNA作製のためのmRNAの逆転写を含む、請求項1の方法。
【請求項34】
cDNAが約pH=8.0−約pH=10.0のアルカリ加水分解によって溶出される、請求項2または33の方法。
【請求項35】
cDNAが熱によって溶出される、請求項2または33の方法。
【請求項36】
cDNAが約pH=3.0−約pH=6.0の酸によって溶出される、請求項2または33の方法。
【請求項37】
cDNAがポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される、請求項33の方法。
【請求項38】
ポリメラーゼ連鎖反応が耐熱性DNAポリメラーゼを用いる、請求項37の方法。
【請求項39】
ポリメラーゼ連鎖反応がPlatinum HiFiおよびKODからなる群から選択された増幅酵素を用いる、請求項37の方法。
【請求項40】
ビーズが、ストレプトアビジン−M280、ニュートラアビジン−M280、SA−M270、NA−M270、SA−MyOne、NA−MyOne、SA−アガロースおよびNA−アガロースからなる群から選択される、請求項1の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20a】
【図20b】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20a】
【図20b】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2012−504415(P2012−504415A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530178(P2011−530178)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059057
【国際公開番号】WO2010/039850
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059057
【国際公開番号】WO2010/039850
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]