説明

改質された植物バイオマスの製造方法及び製造装置、並びにエタノールの製造方法

【課題】安全且つ効率的な改質された植物バイオマスの製造方法及びその製造装置、並びに効率的なエタノールの製造方法を提供する。
【解決手段】第1の容器に粒子状の植物バイオマス原料を供給する第1の工程と、第1の容器中の空気を排出する第2の工程と、第1の容器にアンモニアを供給する第3の工程と、植物バイオマス原料を第2の容器に移送する第4の工程と、第1の容器に残留したアンモニアを排出する第5の工程と、植物バイオマス原料を第2の容器内において改質する第6の工程と、改質された植物バイオマスを第3の容器に移送する第7の工程と、アンモニアを第3の容器から排出する第8の工程と、改質された植物バイオマスを回収する第9の工程と、空気を第3の容器から排出する第10の工程と、排出されたアンモニアを回収し再使用する第11の工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応性が高められた植物バイオマスの製造方法及びその製造装置、並びに前記方法により製造された反応性が高められた植物バイオマスを用いたエタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全の観点から、再生可能なエネルギーとして、植物由来のバイオマスを原料として発酵法により得られるエタノールを自動車等の燃料として使用することが盛んになっている。従来、このようなエタノールの製造方法としては、主として、トウモロコシや麦などの穀物に由来するデンプンや、サトウキビなどに由来する糖を原料とするものであった。しかし、これらの原料にあっては、植物体の一部のみが利用され植物の栽培面積当りのエタノール生産量が小さいことや、食料や飼料としての用途との競合が起こるなどの問題が発生している。
【0003】
そこで近年、植物から穀物、糖液等を採取した残渣(例えば麦わら、稲わら、籾殻、バガス)、間伐材、廃材、古紙等の廃棄物、あるいは、食料や飼料とならない植物、特に食料となる植物の生産に適さない気候や土壌でも効率的に栽培することができる植物等を原料としてエタノールを生産する試みが行われている。
【0004】
これらの草本や木質植物に由来する原料はセルロースを含み、更にこれらの多くはセルロース、ヘミセルロース及びリグニンから構成される複合体であるリグノセルロースを主たる構造体とする。そして上記原料からエタノールを生産するためには、セルロース、ヘミセルロースを加水分解して単糖とし(糖化)、得られた糖液を酵母等による発酵に供する方法が採用される。
【0005】
上記糖化においては、硫酸等を使用した化学的に加水分解する方法を利用する場合は過分解が起こりやすく有効な糖の収率が低下する傾向にあること、また、硫酸等による環境負荷の問題も生じることから、酵素を利用する方法を採用することが好ましく行われる。しかし、セルロース自体、酵素による糖化速度は大きいものではない上に、リグノセルロース中のセルロースやヘミセルロースはリグニンと強固に結合しているため、酵素による糖化は更に進行し難い傾向にある。
【0006】
そこで、セルロースを含む植物由来の原料(以下、「植物バイオマス」ということもある。)を糖化に先立って前処理することにより、セルロースやヘミセルロース、特にリグノセルロース中のセルロースやヘミセルロースの化学的又は生化学的反応性、中でも酵素による糖化に対する反応性を高めることが行われている。前記前処理としては、熱水あるいは水蒸気による処理(水熱処理)、硫酸処理、加圧水蒸気に接触させた後脱圧する水蒸気爆砕処理、塩基性水溶液による処理等の他に、アンモニアによる処理が知られている。
【0007】
なお本願においては、以下、前記前処理により化学的又は生化学的反応性、中でも酵素による糖化に対する反応性を高めることを「改質」といい、前記前処理により前記反応性が高められた植物バイオマスを「改質された植物バイオマス」ということもある。また、前処理に用いるアンモニア等の物質を「改質剤」ということもある。
【0008】
アンモニアによる植物バイオマスの改質としては、植物バイオマスを加圧下に液体又は気体のアンモニアに接触させた後、短時間に圧力を大気圧まで低下させて植物バイオマスを爆砕する方法(アンモニア爆砕法、例えば特許文献1を参照)、超臨界状態のアンモニアで処理する方法(例えば特許文献2を参照)、アンモニア水で処理する方法(例えば特許文献3を参照)などが知られている。なお、アンモニアによる改質に伴うセルロースの反応性の向上は、リグノセルロースを構成するセルロースに強固に結合したリグニンが除去されることによる効果だけでなく、セルロースの結晶がI型からIII型に変態することによる効果も知られている(例えば特許文献4を参照)。
【0009】
上記特許文献においては、アンモニアを用いた改質は回分式の装置を用いて行われているが、該改質を工業的に実施するためには、連続式あるいは半連続式の装置を用いて効率を高めることが経済的観点から好ましい。原料として用いる植物バイオマスは一般的に裁断及び/又は粉砕された粒子状の形態で提供される。一方、アンモニアは常温で大気圧を超える蒸気圧を有し、毒性を有し、空気と爆発混合気を形成する取り扱いに注意を要する物質である。このようなアンモニアを漏洩させることなく、加圧下にあるアンモニアが収容された改質処理を行うための容器に、植物バイオマス原料の固体粒子を連続的あるいは半連続的に供給すること、及び前記改質処理を行うための容器から改質された植物バイオマスの粒子を連続的あるいは半連続的に取り出すことは高度な技術を必要とする。
【0010】
アンモニアを用いた改質を連続的に実施する方法としては、例えば特許文献5には、バレルと、バレル内に設置されバレルとの間がシールされるスクリューとからなる装置を用いる方法が開示される。また、特許文献6には、アンモニア水を改質剤として用いる連続的な改質のための装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,600,590号
【特許文献2】米国特許第4,644,060号
【特許文献3】特表2008−535664号公報
【特許文献4】特開2008−161125号公報
【特許文献5】特表2005−232453号公報
【特許文献6】特開2010−115162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献5に開示される連続的な改質方法においては、改質剤として液体アンモニアを使用している。一方、改質剤としてのアンモニアは液体アンモニアに限定されることなく、気体のアンモニアも使用できることが好ましい。しかし、前記方法においては、気体のアンモニアを用いた場合、液体アンモニアを用いる場合に比較してバレルとスクリューとの間の気密を保つことが困難となり、アンモニアの漏洩の可能性がある。
【0013】
また上記特許文献6に開示される連続的な改質のための装置はアンモニア水により改質を行うものであり、加圧された液体又は気体のアンモニアを収容する容器に植物バイオマスの粒子を供給する工程はない。一方、アンモニアを用いた改質においては、前述のように、リグノセルロースからのリグニンの除去による効果の他に、セルロースの結晶をI型からIII型に変態させることによる効果も付与される。しかし、アンモニア水を改質剤として用いる場合には、一旦生成したセルロースIII型の結晶が多量に共存する水の作用によりセルロースI型に戻ってしまい、前記結晶の変態による効果が減じられることとなる。また、アンモニア水からアンモニアを分離、回収するためには大きなエネルギーを必要とする。従って、セルロース結晶形態をIII型からI型に戻すだけの量の水を含まない、加圧された気体又は液体のアンモニアによる改質を連続的又は半連続的に行う方法の開発が望まれていた。
【0014】
また、アンモニアと空気との混合気は爆発限界(アンモニアが15〜28容量%)をもつことから、アンモニアを扱う装置内への空気の混入を防止する必要がある。しかし大気中に貯蔵された粒子状の植物バイオマス原料、特に含有水分量が少ない該原料は多くの空気を包含しており、これをそのままアンモニアを扱う装置に供給すると、空気が該装置に混入し、アンモニアと爆発限界内の混合気を形成してしまう可能性がある。したがって、植物バイオマス原料とアンモニアが接触する前の工程において、該原料に包含される空気を除去する必要がある。
【0015】
更に、アンモニアによる改質においては、経済的観点から一度用いたアンモニアを回収して再使用することが好ましい。
【0016】
従来は、上記の全ての課題、すなわち、改質剤として液体アンモニアだけでなく加圧された気体のアンモニアを用いること、アンモニアへの空気の混入を防止すること、一度使用したアンモニアを回収、再使用すること、を解決した上で、植物バイオマス原料を連続的又は半連続的に、且つ安全に改質する方法及びそのための装置は知られていなかった。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、加圧された気体及び液体のアンモニアを改質剤として用い、アンモニアと空気とを混合させることなく、一度使用したアンモニアを回収、再使用し、植物バイオマス原料を半連続的に改質することができる、安全且つ効率的な改質された植物バイオマスの製造方法及びその製造装置、並びに前記改質された植物バイオマスの製造方法により製造される改質された植物バイオマスを用いる、効率的なエタノールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる目的を達成するため、本発明に係る改質された植物バイオマスの製造方法は、第1の容器に粒子状の植物バイオマス原料を供給する第1の工程と、第1の工程の後、第1の容器中の空気を排出する第2の工程と、第2の工程の後、第1の容器の圧力が、植物バイオマス原料を改質する第2の容器の圧力以上となるように、第1の容器に気体又は液体のアンモニアを供給する第3の工程と、第3の工程の後、植物バイオマス原料を第1の容器から第2の容器に移送する第4の工程と、第4の工程の後、第1の容器に残留したアンモニアを気体として排出する第5の工程と、第4の工程により移送された植物バイオマス原料を第2の容器内において加圧された気体又は液体のアンモニアと接触させて改質する第6の工程と、第6の工程において改質された植物バイオマスの少なくとも一部を第2の容器から第3の容器に移送する第7の工程と、第7の工程の後、アンモニアを第3の容器から気体として排出する第8の工程と、第8の工程の後、第3の容器から改質された植物バイオマスを排出して回収する第9の工程と、空気を第3の容器から排出する第10の工程と、第5の工程及び/又は第8の工程において排出されたアンモニアを回収し、第1の容器に供給されるアンモニアとして再使用する第11の工程と、を備え、第1〜11の工程を繰り返し行うサイクルとし、一のサイクルにおける第5の工程の終了以後に次のサイクルを開始することを特徴とする。
【0019】
この方法によれば、第2の工程で第1の容器中の空気を排出した後で、植物バイオマス原料が存在する第1の容器にアンモニアを供給する第3の工程を備えているため、アンモニアと空気が混合することを防止できる。更に、第1の容器から植物バイオマス原料を移送した後に、第1の容器に残留したアンモニアを気体として排出する第5の工程を備えていると共に、次のサイクルは当該第5の工程以降に開始されるため、次のサイクルの第1の工程において第1の容器に空気が流入しても、アンモニアと空気が混合することを防止できる。すなわち、半連続的に改質を行うと同時に、第1の容器中で空気とアンモニアが混合することを確実に防止することができる。また、第8の工程で第3の容器からアンモニアを気体として排出した後で、第3の容器に空気が混入しうる第9の工程を行っているため、アンモニアと空気が混合することを防止できる。更に、第10の工程で空気を第3の容器から排出しておくことで、次のサイクルで第3の容器に改質された植物バイオマスが移送されても、空気とアンモニアが混合することを防止できる。このように、第3の容器中で空気とアンモニアが混合することを確実に防止することができる。また、改質を行う第2の容器の上流及び下流に、アンモニアの供給・排出及びそれぞれ植物バイオマス原料の供給又は改質された植物バイオマスの排出を行う第1の容器及び第3の容器を設けることによって、液体のみならず気体のアンモニアを改質剤として用いる場合であっても、第2の容器からのアンモニアの漏洩を防止することができる。また、第11の工程で、第1の容器及び/又は第3の容器から排出されたアンモニアを回収及び再使用することができる。以上によって、加圧された気体及び液体のアンモニアを改質剤として用い、アンモニアと空気とを混合させることなく、一度使用したアンモニアを回収、再使用し、植物バイオマス原料を半連続的に改質することができ、安全且つ効率的に改質された植物バイオマスを製造できる。
【0020】
また、本発明に係る製造方法では、第11の工程において、気体のアンモニアを液化して回収し、液化されない気体を液体アンモニアから分離、除去する第12の工程を更に備えることが好ましい。液化されない気体(不活性ガス)が混入したアンモニアを回収して継続して再利用していると、アンモニア中の不活性ガスの濃度が徐々に増加し、第2の容器内のアンモニアの分圧が低下し、植物バイオマス原料の改質が効率的に行われなくなるおそれがある。従って、第12の工程を備えることで、そのような事態を防止できる。
【0021】
また、本発明に係る製造方法では、第2の工程における第1の容器からの空気の排出、第4の工程における第1の容器からのアンモニアの排出、第8の工程における第3の容器からのアンモニアの排出、及び第10の工程における第3の容器からの空気の排出を、当該容器を減圧することにより行うことが好ましい。植物バイオマス原料粒子の内部に包含される空気を効率的に除去する、及び、アンモニア中に窒素ガス等の不活性ガスが混入し難いとの観点から、減圧による排出が好ましく採用される。
【0022】
また、本発明に係る製造方法では、第12の工程において、気体のアンモニアを冷却して液化することによりアンモニアの蒸気圧が低下することを利用して、第5の工程における第1の容器からの気体のアンモニアの排出及び/又は第8の工程における第3の容器からの気体のアンモニアの排出を行うことが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る製造方法では、第11の工程において、第12の工程で液化されたアンモニアを再度気化して、第3の工程において供給されるアンモニアとして再使用することが好ましい。これにより、不活性ガスの混入がない、高い分圧の気体のアンモニアを改質剤として使用することができる。
【0024】
本発明に係る改質された植物バイオマスの製造装置は、粒子状の植物バイオマス原料が供給される第1の容器と、第1の容器に植物バイオマス原料を供給する植物バイオマス原料供給部と、第1の容器から空気を排出する第1の空気排出部と、第1の容器からアンモニアを排出する第1のアンモニア排出部と、加圧された気体又は液体のアンモニアを第1の容器に供給するアンモニア供給部と、第1の容器から植物バイオマス原料が移送されると共に、当該植物バイオマス原料を加圧された気体又は液体のアンモニアと接触させ改質する第2の容器と、第2の容器に設けられた加熱手段と、第2の容器から改質された植物バイオマスが移送される第3の容器と、第3の容器から空気を排出する第2の空気排出部と、第3の容器からアンモニアを排出する第2のアンモニア排出部と、第3の容器から改質された植物バイオマスを排出させて回収する植物バイオマス回収部と、を備えることを特徴とする。
【0025】
このように構成された製造装置を用いることによって、上述で説明した改質された植物バイオマスの製造方法を好適に実現することが可能となり、当該製造方法の効果を得ることができる。
【0026】
また、本発明に係る製造装置において、植物バイオマス原料供給部は、植物バイオマス原料を貯留する植物バイオマス原料貯留部と、植物バイオマス原料貯留部と第1の容器とを接続すると共に、複数のバルブが直列に配設された第1の配管と、を備えることが好ましい。これによって、装置内のアンモニアが大気中に漏洩すること、及びバルブを閉止した状態で空気が装置内に流入してアンモニアと混合することを確実に防止することができる。
【0027】
また、本発明に係る製造装置において、第2の容器と第3の容器とを接続すると共に、複数のバルブが直列に配設された第2の配管を更に備えていることが好ましい。これによって、第2の容器内のアンモニアが漏洩すること、及びバルブを閉止した状態で空気が装置内に流入してアンモニアと混合することを確実に防止することができる。
【0028】
また、本発明に係る製造装置において、複数のバルブが少なくとも一つのボールバルブ、及び少なくとも一つのゲートバルブから構成されることが好ましい。
【0029】
また、本発明に係る製造装置において、第2の容器は、植物バイオマス原料を攪拌する攪拌手段を備えることが好ましい。これによって、第2の容器内の植物バイオマス原料及びアンモニアを均一な温度分布とすることができる。
【0030】
また、本発明に係る製造装置において、第2の容器は、内部にスクリューコンベアを備えることが好ましい。スクリューコンベアは植物バイオマス原料を攪拌する攪拌手段として機能すると同時に、第2の容器内において上流側から下流側へ向かう方向に植物バイオマス原料及び改質された植物バイオマスを移動させる手段としても機能する。
【0031】
また、本発明に係る製造装置において、第1の容器及び/又は第3の容器から気体として排出されたアンモニアを圧縮及び/又は冷却して液化するアンモニア液化部と、圧縮及び/又は冷却により液化されない気体を液体アンモニアから分離、除去するための第4の容器と、を更に備えることが好ましい。これによって、液化されない気体(不活性ガス)をアンモニアから確実に分離、除去することができる。
【0032】
また、本発明に係る製造装置において、第4の容器から移送された液体アンモニアを気化させるためのアンモニア加熱手段を更に備えることが好ましい。これにより、不活性ガスの混入がない、高い分圧の気体のアンモニアを改質剤として使用することができる。
【0033】
本発明に係るエタノールの製造方法は、上述の製造方法によって製造された改質された植物バイオマスを酵素により糖化する糖化工程と、糖化工程において得られた糖液をエタノール発酵させる発酵工程と、を備える。上述の製造方法によって製造された改質された植物バイオマスを用いることで、エタノールの製造を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、加圧された気体及び液体のアンモニアを改質剤として用い、アンモニアと空気とを混合させることなく、一度使用したアンモニアを回収、再使用し、植物バイオマス原料を半連続的に改質することができ、安全且つ効率的に改質された植物バイオマスを製造することができる。また、効率的にエタノールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る改質された植物バイオマスの製造方法を実行する製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る改質された植物バイオマスの製造方法を実行する製造装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る改質された植物バイオマスの製造装置100は、第1の容器110と、植物バイオマス原料供給部120と、第1の排出部(第1の空気排出部、第1のアンモニア排出部)130と、アンモニア供給部140と、第2の容器150と、加熱部(加熱手段)160と、第3の容器170と、第2の排出部(第2の空気排出部、第2のアンモニア排出部)180と、植物バイオマス回収部190と、第1のアンモニア液化部200と、第2のアンモニア液化部210と、第4の容器220と、アンモニア加熱部230と、を備えて構成されている。
【0037】
本実施形態において用いられる植物バイオマス原料は、植物由来であり、セルロースを含むものであれば特に限定されないが、例えば麦わら、稲わら、籾殻、バガス等の、植物から穀物、糖液等を採取した残渣、各種の針葉樹又は広葉樹からなる間伐材、廃材、古紙などの植物由来の廃棄物、パルプなどが使用される。古紙、パルプとしては、リグノセルロースからなるものであってもよいし、リグノセルロースからリグニンが除去されセルロースが主成分であるものであってもよい。また、食料や飼料とならない植物、特に食料となる植物の生産に適さない気候や土壌でも効率的に栽培することができる植物、例えばスィッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス等のエタノールの製造原料として目的栽培される植物であってもよい。
【0038】
これらの植物バイオマス原料は、必要により天日干し、温風乾燥等により乾燥され、粒子状に裁断及び/又は粉砕されて供給される。
【0039】
第1の容器110は、粒子状の植物バイオマス原料が供給されるものである。植物バイオマス原料供給部120は、第1の容器110に植物バイオマス原料を供給するものである。第1の排出部130は、第1の容器110から空気及びアンモニアを排出するものである。アンモニア供給部140は、加圧された気体又は液体のアンモニアを第1の容器110に供給するものである。第2の容器150は、第1の容器から植物バイオマス原料が移送されると共に、当該植物バイオマス原料を加圧された気体又は液体のアンモニアと接触させ改質するものである。加熱部160は、第2の容器150に設けられており当該第2の容器150中の植物バイオマス原料及び気体又は液体のアンモニアを加熱するものである。第3の容器170は、第2の容器150から改質された植物バイオマスが移送されるものである。第2の排出部180は、第3の容器170から空気及びアンモニアを排出するものである。植物バイオマス回収部190は、第3の容器170から改質された植物バイオマスを排出して回収するものである。第1のアンモニア液化部200は、第1の容器110から気体として排出されたアンモニアを圧縮及び/又は冷却して液化するものである。第2のアンモニア液化部210は、第3の容器170から気体として排出されたアンモニアを圧縮及び/又は冷却して液化するものである。第4の容器220は、アンモニアに混入した圧縮及び/又は冷却により液化されない気体を液体アンモニアから分離、除去するものである。アンモニア加熱部230は、第4の容器220から移送された液体アンモニアを気化させるためのものである。なお、各構成要素におけるより具体的な構成・機能は、以下に説明する、改質された植物バイオマスの製造方法の説明とあわせて行う。
【0040】
次に、本発明の実施形態に係る改質された植物バイオマスの製造方法、及びエタノールの製造方法を説明すると共に、製造装置100のより詳細な構成をあわせて説明する。
【0041】
本実施形態に係る改質された植物バイオマスの製造方法の第1の工程においては、植物バイオマス原料を第1の容器110に供給する。第1の容器110には植物バイオマス原料を供給するための植物バイオマス原料供給部120が接続されている。植物バイオマス原料供給部120は、例えば、開閉可能な蓋が配設された投入孔であってよく、その場合は植物バイオマス原料の貯留設備からベルトコンベア等の運搬手段で搬送された所定量の植物バイオマス原料が、投入孔から第1の容器110に投入され、蓋を閉止することにより第1の容器110は密閉される。図1及び図2に示す例では、第1の容器110は、投入槽5によって構成されている。この投入槽5の蓋を開閉可能な構造とし、植物バイオマス貯留設備及び搬送手段を配置することで、植物バイオマス原料供給部120を構成することができる。
【0042】
また、植物バイオマス原料供給部120は、図1及び図2に例示されるように、植物バイオマスを貯留する植物バイオマス原料貯留部1と、植物バイオマス原料貯留部1と投入槽5(第1の容器110)とを接続する、中途にバルブが配設された第1の配管2と、を備えて構成されていることが好ましい。この場合、バルブを開くことにより、重力あるいは空気等の気体により搬送された植物バイオマス原料を第1の容器110に所定量導入した後、バルブを閉止することにより、第1の容器110が密閉される。バルブは、第1の配管2の中途に複数が直列に配設されることが望ましい。また、複数のバルブを配設する場合は、少なくとも1個のボールバルブのような粉体の流れを閉止するために適したバルブと、少なくとも1個のゲートバルブのような空気や気体のアンモニア等の気体の流れを閉止するために適したバルブとを組み合わせて用いることが好ましい。このようにバルブを配設することにより、装置内のアンモニアが大気中に漏洩すること、及びバルブを閉止した状態で空気が装置内に流入してアンモニアと混合することを確実に防止することができる。
【0043】
第2の工程においては、第1の排出部130が、第1の工程において供給された植物バイオマス原料に同伴して第1の容器110に混入した空気を排出する。
【0044】
植物バイオマス原料は粒子状であり、大気中に貯留された該原料、特に乾燥状態又は少量の水分を含む状態の該原料は、粒子内及び粒子間に多量の空気を含んでいる。このため、該植物バイオマス原料を直接アンモニアと接触させた場合には、アンモニアと空気とが爆発限界内にある混合気を形成するおそれがある。そこで、第1の容器110においては、アンモニアを導入する前に、供給された植物バイオマス原料が包含する空気を除去する。第1の排出部130において採用される空気を除去する方法としては、植物バイオマス原料が供給された第1の容器110に、該容器110に接続する供給用及び排出用の配管により窒素ガス等の不活性ガスを流通させる方法(スィーピング)、第1の容器110に接続された窒素ガス等の不活性ガスにより第1の容器110を加圧するための配管及び脱圧のための配管を利用して、該容器110を加圧/脱圧を数回繰り返す方法(加圧パージ)、第1の容器110に接続された減圧のための設備を使用して該容器110を減圧する方法(脱気)等を用いることができる。植物バイオマス原料粒子の内部に包含される空気を効率的に除去する、及び、後述の第3の工程において供給されるアンモニア中に窒素ガス等の不活性ガスが混入し難いとの観点から、第1の容器110を減圧する方法が好ましく採用される。第1の容器110を一旦減圧した後に窒素ガス等の不活性ガスを導入し、再度減圧する等、減圧と不活性ガスの導入とを組み合わせることも好ましく行われ、確実に空気を除去することができる。脱気において第1の容器110を減圧するための設備としては、真空ポンプ、エジェクター、あるいは第1の容器110内の空気を吸引して排気側を加圧するコンプレッサー等が利用される。第2の工程において排出された空気は、配管により系外へ排出される。
【0045】
図1及び図2に示す例では、第1の排出部130は、少なくとも、バルブ7、コンプレッサー8、空気抜配管3(アンモニア排出では閉じられる)によって構成されている。バルブ7を開放すると共に、第1の容器110である投入槽5からコンプレッサー8を使って空気を抜き、空気抜配管3から外部に当該空気を放出する。その後、供給配管4から若干の窒素ガス等の不活性ガスを導入して投入槽5内の酸素濃度を所定量以下とする。このとき導入する不活性ガスはできるだけ少なくすることが、経済的観点及び第3の工程において導入するアンモニアに混入する不活性ガスの量を低減するとの観点から望ましい。また、不活性ガスを導入した後再度第1の容器110を減圧として不活性ガスを排出してもよい。
【0046】
第3の工程において、アンモニア供給部140は、第2の工程において空気が除去された第1の容器110に、第2の容器150と同等以上の圧力となるように気体又は液体のアンモニアを供給する。ここで、第1の容器110に収容された植物バイオマス原料が重力及び/又は第1の容器110と第2の容器150との差圧により、第1の容器110から第2の容器150に円滑に移送されるように、第1の容器110の圧力は第2の容器150の圧力と同等かやや高い圧力とすることが好ましい。供給されるアンモニアについては、第2の容器150に収容されるアンモニアが気体である場合には気体のアンモニアが好ましく、第2の容器150に収容されるアンモニアが液体の場合は気体又は液体のアンモニアが好ましい。図1及び図2に示す例では、アンモニア供給部140は、少なくともアンモニア導入配管6によって構成されている。このアンモニア導入配管6を用いて、第1の容器110を構成する投入槽5へ気体アンモニアを導入し、第2の容器150を構成する改質槽12A,12Bと同じ圧力、あるいは若干高い圧力まで昇圧している。
【0047】
第3の工程に続き、第4の工程においては、植物バイオマス原料が第1の容器110から第2の容器150に移送される。移送には、中途にバルブが配設され、第1の容器110と第2の容器150をつなぐ配管を利用することが好ましい。該バルブは植物バイオマス原料を第1の容器110から第2の容器150へ移送するとき以外は閉止して、第1の容器110及び第2の容器150を密閉する。当該移送は、重力及び/又は第1の容器110と第2の容器150の差圧を利用して行うことが好ましい。図1及び図2に示す例では、第1の容器110を構成する投入槽5と第2の容器150を構成する改質槽12A,12Bとが配管で接続されており、当該配管に改質槽導入バルブ10が設けられている。植物バイオマス原料の移送時においては、改質槽導入バルブ10が開かれることによって、投入槽5内の植物バイオマス原料が全て改質槽12A,12Bへ移送される。植物バイオマス原料の移送が完了したら、改質槽導入バルブ10が閉止される。
【0048】
第5の工程においては、第1の排出部130が、植物バイオマス原料が第2の容器150に移送された後の第1の容器110内に残存するアンモニアを排出する。第1の容器110からアンモニアを排出する方法は、第2の工程において第1の容器110内の空気を排出する場合と同様に、その際に使用した設備を使用して、窒素ガス等の不活性ガスによるスィーピング、不活性ガスによる加圧パージ、脱気等の方法を用いることができる(実施形態では、第1の空気排出部の機能と第1のアンモニア排出部の機能を一つの第1の排出部130で発揮できる構成としているが、各機能ごとに排出部を分けてもよい)。回収されるアンモニア中に窒素ガス等の不活性ガスが混入し難いとの観点から、第1の容器110を脱気(減圧)する方法が好ましく採用される。第1の容器110を一旦減圧にした後に窒素ガス等の不活性ガスを導入し、再度減圧にする等、減圧と不活性ガスの導入とを組み合わせることも好ましく行われ、確実にアンモニアを除去することができる。なお、窒素ガス等の不活性ガスを使用する際には、アンモニア中に混入する不活性ガスの量を極力少なくするとの観点から、その使用量を最小限にすることが好ましい。
【0049】
第5の工程における第1の容器110を減圧とする方法のひとつとして、第1の容器110に接続されるアンモニアの排出のための配管に接続される冷却器によりアンモニアを冷却・液化することによりアンモニアの蒸気圧が低下することを利用し、第1の容器110を減圧する方法を採用することができる。この場合、第1の容器110を減圧する設備である真空ポンプ、エジェクター、コンプレッサー等はバイパスされる。なお、冷却器を用いた方法により第1の容器110内のアンモニアを排出し、更に真空ポンプ、エジェクター、コンプレッサー等により減圧してアンモニアの排出を確実に行うことが好ましく行われる。
【0050】
図1及び図2に示す例では、第1の容器110を構成する投入槽5内のアンモニアを排出するためにバルブ7を開けると共にコンプレッサー8を起動することによって、投入槽5内のアンモニアが排出される。気体として排出されたアンモニアは、第1のアンモニア液化部200を構成する冷却器9(この冷却器9による冷却機能をアンモニア排出のための第1の排出部130の一部として機能させてもよい)によって冷却されて液体となり、液体アンモニア槽23へ回収される。
【0051】
第5の工程で第1の容器110内のアンモニアを排出しておくことにより、次のサイクルにおける第1の工程で、第1の容器110に植物バイオマス原料を供給するに際し、当該供給に伴って混入する空気が第1の容器110に残存したアンモニアと混合すること、及びアンモニアが第1の容器110から大気に漏洩することが防止される。これにより、第1の容器110は次のサイクルを開始するための準備が完了する。
【0052】
第6の工程においては、第2の容器150は、第4の工程で移送された植物バイオマス原料を、当該第2の容器150内において、加圧された気体又は液体のアンモニアと加熱下に接触させ、改質を行う。
【0053】
第2の容器150には気体又は液体のアンモニア及び植物バイオマスを加熱するための加熱部160が備えられており、植物バイオマス原料を所定の温度、圧力、滞留時間において気体又は液体のアンモニアに接触させることにより改質を行う。
【0054】
加熱部160は第2の容器150の外側、器壁内あるいは容器内部に設けられたジャケット、ヒーター等の通常の手段が利用される。ジャケットには蒸気、加熱油等を流通させることにより加熱を行う。図1及び図2に示す例では、第2の容器150を構成する改質槽12A,12Bは、加熱部160として、改質槽12A,12Bの外周部に配設されたジャケットを備えている。当該ジャケットの熱媒体配管14から加温された熱媒体が導入されることによって、改質槽12A,12Bは所定温度に加熱される。
【0055】
第2の容器150における改質処理の条件は限定されないが、効率的に植物バイオマスの改質を行うとの観点から、温度は40〜150℃、圧力は0.2〜12MPa、滞留時間は0.1〜24時間が好ましい。
【0056】
第2の容器150は、該容器内の植物バイオマス及びアンモニアが均一な温度分布となるように、攪拌手段を備えることが望ましい。該攪拌手段は攪拌手段の回転軸に対して円周方向の攪拌を主として行い、該円周方向に対して垂直な方向に対する攪拌は積極的に行わないものであることが好ましい。
【0057】
第2の容器150は、第1の容器110から配管を通じて植物バイオマス原料を受け入れ、第3の容器170へ、改質された植物バイオマスを排出する。そのためには、植物バイオマス原料を時間とともに第2の容器150内を上流側から下流側へ移動させる必要がある。すなわち、第2の容器150は、植物バイオマス原料を、第1の容器110との間を接続する配管の接続部分側から、第3の容器170との間を接続する配管の接続部側へ向かう方向に移動させる必要がある。第1の容器110から第2の容器150に供給される植物バイオマス原料の単位時間当たりの供給量と、第2の容器150から第3の容器に抜き出される単位時間当たりの(改質された植物バイオマスの)抜き出し量は略等しくする。
【0058】
図1は、ミキサー、すなわち攪拌翼(攪拌手段)13Aを備えた縦型の重力移動式の改質槽12Aを示している。第1の容器110を構成する投入槽5から供給された植物バイオマス原料は、攪拌翼13Aにより攪拌され、加熱部160による容器外部からの加熱に対して、円周方向の温度分布を均一に保つ。攪拌翼13Aは、改質槽12A外部の動力装置11によって駆動する。改質槽12Aの底部から間歇的に改質された植物バイオマス及びアンモニアが抜き出され、この抜き出し及び重力により改質槽12A内の植物バイオマス原料及び改質された植物バイオマスは時間とともに下方へ移動していく。また、改質槽12Aの上部に形成される空隙には、投入槽5から間歇的に植物バイオマス原料及びアンモニアが供給される。
【0059】
図2は、容器内部にスクリューコンベア13Bを備えた横型の改質槽12Bを示している。ここで、スクリューコンベア13Bは植物バイオマス原料を攪拌する攪拌手段として機能すると同時に、改質槽12B内において上流側から下流側へ向かう方向に植物バイオマス原料を移動させる手段としても機能する。ここで改質槽12B及びその内部に配設されるスクリューコンベア13Bは横型の例を示したが、縦型であっても構わない。
【0060】
第7の工程においては、第6の工程で得られた改質された植物バイオマスの一部が、第2の容器150から、第2の配管15を通じて第3の容器170に移送される。第2の配管15は、第2の容器150と第3の容器170とを接続すると共に、中途にバルブが配設されている。移送を行う間、間歇的にバルブを開け、移送が終了した後バルブを閉止する。
【0061】
アンモニアの漏洩を確実に防止するために、第2の配管15は、複数のバルブが直列に配設されることが望ましい。また、この場合、少なくとも1つのボールバルブのような粉体の流れの閉止に適したバルブと、少なくとも1つのゲートバルブのような空気や気体アンモニアの流れの閉止に適したバルブとを組み合わせることが好ましい。図1及び図2に示す例では、第2の配管15に設けられた排出バルブを所定時間毎に断続的に開閉する。排出バルブが開き、第2の容器150を構成する改質槽12A,12B内の一定量の植物バイオマスが第3の容器170を構成する排出槽17に流入したあと、排出バルブが閉止される。
【0062】
第7の工程では、第3の容器170への改質された植物バイオマスの移送に同伴してアンモニアが当該第3の容器170に混入するので、そのまま第3の容器170を大気に開放して改質された植物バイオマスを回収しようとする場合には、アンモニアと空気とが爆発限界内の混合気を形成する恐れがある。また、アンモニアが大気中に漏洩するおそれもある。そこで、第8の工程においては、第2の排出部180は、第2の容器150からの改質されたバイオマスの移送に伴うアンモニアを第3の容器170から排出する。
【0063】
第8の工程において、第2の排出部180が、第3の容器170内のアンモニアを排出するために採用する方法及びこれに用いる設備は、第1の排出部130と同様とすることができる。すなわち、不活性ガスによるスィーピング、不活性ガスによる加圧パージ、脱気等の方法を用いることができる。中でも、回収されるアンモニア中に窒素ガス等の不活性ガスが混入し難いとの観点から、第3の容器170を脱気(減圧に)する方法が好ましく採用される。第3の容器170を一旦減圧した後に窒素ガス等の不活性ガスを導入し、再度減圧にする等、減圧と不活性ガスの導入とを組み合わせることも好ましく行われ、確実にアンモニアを除去することができる。この場合も、使用する不活性ガスの量は最小限とすることが好ましい。
【0064】
また、第8の工程における第3の容器170内のアンモニアを排出する方法においても、第5の工程と同様に、アンモニアを冷却してアンモニアの蒸気圧を低下させる方法が好ましく使用される。
【0065】
図1及び図2に示す例では、第2の排出部180は、少なくとも、バルブ20、コンプレッサー21、空気抜配管27(アンモニア排出では閉じられる)によって構成されている。第3の容器170を構成する排出槽17内のアンモニアを排出するためにバルブ20を開けると共にコンプレッサー21を起動することによって、排出槽17内のアンモニアが排出される。気体として排出されたアンモニアは、第2のアンモニア液化部210を構成する冷却器22(この冷却器22による冷却機能をアンモニア排出のための第2の排出部180の一部として機能させてもよい)によって冷却されて液体となり、液体アンモニア槽23へ回収される。
【0066】
第9の工程においては、植物バイオマス回収部190は、第8の工程においてアンモニアが排出された第3の容器170から、改質された植物バイオマスを排出させて回収する。植物バイオマス回収部190を構成する設備としては、開閉可能な蓋が設置された排出孔、あるいはバルブが配設された配管等が挙げられる。開閉可能な蓋を開けることにより、あるいは配管に配設されたバルブを開けることにより、第3の容器170内の改質された植物バイオマスを回収することができる。なお、植物バイオマス回収部190が、バルブの配設された配管によって構成される場合、回収された改質されたバイオマスは貯留のための設備、あるいは該改質されたバイオマスを糖化工程に供するための設備に供給されることもできる。図1及び図2に示す例では、植物バイオマス回収部190を構成する配管に設けられた排出バルブ18を開けることによって、改質が完了した植物バイオマス19を取り出している。
【0067】
改質されたバイオマスが排出された第3の容器170内には空気が混入しているので、第10の工程において、第2の排出部180は、第3の容器170から空気を排出する。ここで、第2の排出部180が採用する空気の排出を行う方法及びこれに使用する設備は、第2の工程において使用するものと同様とすることができる。なお、実施形態では、第2の空気排出部の機能と第2のアンモニア排出部の機能を一つの第2の排出部180で発揮できる構成としているが、各機能ごとに排出部を分けてもよい。第10の工程により空気が排出された第3の容器170は、次のサイクルの第7の工程において、第2の容器150から改質されたバイオマスを受け入れることができる。なお、この第10の工程は、次のサイクルにおいて第7の工程を実行する前段階であればどの段階で実行してもよい。例えば、第9の工程で容器170内に空気が混入した直後で第10の工程を実行してもよく、あるいは、前回のサイクルで混入した空気を排出するため、第7の工程の直前(または、それよりも早い段階)で第10の工程を実行してもよい。図1及び図2に示す例では、バルブ20を開放すると共に、第3の容器170を構成する排出槽17からコンプレッサー21を使って空気を抜き、空気抜配管27から外部に当該空気を放出する。その後、供給配管16から若干の窒素ガス等の不活性ガスを導入して排出槽17内の酸素濃度を所定量以下とする。このとき導入する不活性ガスはできるだけ少なくすることが、経済的観点及び第3の工程において導入するアンモニアに混入する不活性ガスの量を低減するとの観点から望ましい。また、不活性ガスを導入した後再度第1の容器110を減圧として不活性ガスを排出してもよい。
【0068】
第11の工程においては、第5の工程及び/又は第8の工程において排出されたアンモニアが回収され、第1の容器110に供給されるアンモニアとして再使用される。アンモニアを改質剤とした改質された植物バイオマスの製造を経済合理性をもって実施するためには、第1の容器110及び/又は第3の容器170から排出したアンモニアを回収して再利用することが必要である。第1の容器110及び第3の容器170から排出されるアンモニアは、植物バイオマスとの分離の観点等から、気体の状態で排出されることが好ましい。本実施形態の改質されたバイオマスの製造方法において、改質剤として気体のアンモニアを用いる場合には、第1の容器及び/又は第3の容器から排出された気体のアンモニアをそのまま第11の工程において第1の容器に供給して再利用することもできる。なお、この第11の工程におけるアンモニアの回収は、第1の容器110及び第3の容器170でアンモニアが排出される所定のタイミングで実行され、再利用は、第1の容器110にアンモニアが供給される所定のタイミングで適宜実行される。
【0069】
一方、改質剤として液体アンモニアを用いる場合には、第1の容器110及び第3の容器170から排出される気体のアンモニアを圧縮及び/又は冷却することにより液体アンモニアに変換する必要がある。
【0070】
更に、改質剤として気体のアンモニアを使用する場合でも、排出された気体のアンモニアは、第1の容器110及び/又は第3の容器170からの排出に際して窒素ガス等の不活性ガスが混入し、そのまま再使用することが好ましくない場合がある。すなわち、不活性ガスが混入したアンモニアを回収して継続して再利用していると、アンモニア中の不活性ガスの濃度が徐々に増加し、第2の容器150内のアンモニアの分圧が低下し、植物バイオマス原料の改質が効率的に行われなくなるおそれがある。そこで、これらの場合には、第11の工程において、気体のアンモニアを回収する際に、これを圧縮及び/又は冷却により液化し、第4の容器220において液化されないガス成分(主として不活性ガス)を分離・除去する第12の工程を更に備えることが好ましい。
【0071】
改質剤として液体アンモニアを使用する場合には、第12の工程において得られた不活性ガスが除去された液体アンモニアを第1の容器110に供給して再利用する。
【0072】
一方、改質剤として気体のアンモニアを用いる場合には、第12の工程により得られた液体アンモニウムをアンモニア加熱部230により加熱して気化し、第1の容器110に供給する。これにより、不活性ガスの混入がない、高い分圧の気体のアンモニアを改質剤として使用することができる。
【0073】
図1及び図2に示す例では、投入槽5から回収されて冷却器9で液化されたアンモニア、及び排出槽17から回収されて冷却器22で液化されたアンモニアは、第4の容器220を構成する液体アンモニア槽23に貯留される。この液体アンモニア槽23では、凝縮しないガス(主に窒素等の不活性ガス)が分離され、非凝縮ガス排出配管24より排出される。そして、液体アンモニアはアンモニア蒸発槽26及び熱媒体25によって構成されるアンモニア加熱部(アンモニア加熱手段)230によって加熱され、気化する。気体のアンモニアは、アンモニア導入配管6を介して投入槽5へ供給される。
【0074】
第1〜11の工程、及び第12の工程を繰り返し行うサイクルとした場合、一のサイクルにおける第5の工程の終了以後に次のサイクルを開始するができる。これによって、植物バイオマスを半連続的に改質することが可能となる。なお、機能的に工程の前後関係が限定されていない限り(例えば、アンモニアと空気が混合しないように第3の工程は第2の工程以降で行われる)、一つのサイクル内における各工程の順序は適宜変更してもよい。
【0075】
このような改質された植物バイオマスの製造方法によれば、第2の工程で第1の容器110中の空気を排出した後で、植物バイオマス原料が存在する第1の容器110にアンモニアを供給する第3の工程を備えているため、アンモニアと空気が混合することを防止できる。更に、第1の容器110から植物バイオマス原料を移送した後に、第1の容器110に残留したアンモニアを気体として排出する第5工程を備えていると共に、次のサイクルは当該第5工程以降に開始されるため、次のサイクルにおいて第1の容器110に空気が流入しても、アンモニアと空気が混合することを防止できる。すなわち、半連続的に改質を行うことを可能とすると同時に、第1の容器110中で空気とアンモニアが混合することを確実に防止することができる。また、第8工程で第3の容器からアンモニアを気体として排出した後で、第3の容器170に空気が混入しうる第9の工程を行っているため、アンモニアと空気が混合することを防止できる。更に、第10の工程で空気を第3の容器170から排出しておくことで、次のサイクルで第3の容器170に改質された植物バイオマスが移送されても、空気とアンモニアが混合することを防止できる。このように、第3の容器170中で空気とアンモニアが混合することを確実に防止することができる。また、改質を行う第2の容器150の上流及び下流に、アンモニアの供給・排出及びそれぞれ植物バイオマス原料の供給又は改質された植物バイオマスの排出を行う第1の容器110及び第3の容器170を設けることによって、液体のみならず気体のアンモニアを改質剤として用いる場合であっても、第2の容器150からのアンモニアの漏洩を防止することができる。また、第11の工程で、第1の容器110及び/又は第3の容器170から排出されたアンモニアを回収及び再使用することができる。以上によって、加圧された気体及び液体のアンモニアを改質剤として用い、アンモニアと空気とを混合させることなく、一度使用したアンモニアを回収、再使用し、植物バイオマス原料を半連続的に改質することができ、安全且つ効率的に改質された植物バイオマスを製造できる。
【0076】
次に、上記の改質されたバイオマスを用いてエタノールを製造する方法について説明する。上記の方法により得られた改質された植物バイオマスは糖化工程により単糖へ加水分解され、更に糖化により得られる糖液は発酵工程によりエタノールに変換される。以下、好ましい実施形態に沿って詳細に説明する。
【0077】
(糖化工程)
まず、上記の方法により製造された改質された植物バイオマスを糖化工程において単糖に加水分解(糖化)する。糖化の方法は特に限定されず、公知の方法、すなわち濃硫酸等を触媒に用いる化学的な方法、酵素を用いた生化学的な方法などを用いることができる。このうち、化学的な方法を用いた場合には、過分解により単糖の収率が低下する傾向にあること、糖化に続く工程である発酵工程において阻害作用をもつ物質が生成し易い傾向にあること、及び硫酸等の環境負荷物質の排出が生じることなどの問題がある。よって、これらの問題が生じ難く、また温和な条件を選択することが可能であることから、酵素による糖化が好ましく採用される。この場合に使用する酵素としては限定されず、公知の酵素、すなわちセルラーゼ、セロビアーゼ(β−グルコシダーゼ)などを使用できる。また、これら酵素を適当な担体又はマトリックスに固定化した固定化酵素を使用することもできる。
【0078】
前記酵素による糖化における酵素の使用量としては特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、改質された植物バイオマス100質量部に対して、0.0001〜10質量部が好ましく、0.001〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.1質量部が特に好ましい。前記酵素の使用量が0.0001質量部未満であると糖化が不十分となることがあり、10質量部を超えると糖化に対する阻害が起こることがあるとともに、酵素に係るコストが上昇する。一方、前記酵素の使用量が前記好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる単糖の収量が多い点で有利である。
【0079】
前記酵素による糖化における温度としては特に制限はなく、一般的な条件を選択することができるが、例えば10〜70℃が好ましく、20〜60℃がより好ましく、30〜50℃が特に好ましい。前記温度が10℃よりも低い場合は糖化が進行しないことがあり、70℃を超えると酵素が失活することがある。一方、前記温度が前記好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる単糖の収量が多い点で有利である。
【0080】
前記酵素による糖化におけるpHとしては特に制限はなく、一般的な条件を選択することができるが、例えば、3.0〜8.0が好ましく、3.5〜7.0がより好ましく、4.0〜6.0が特に好ましい。前記pHが3.0未満、又は8.0を超えると酵素が失活することがある。一方、前記pHが前記好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる単糖の収量が多い点で有利である。
【0081】
前記酵素による糖化により、単糖としては、改質されたバイオマスに含まれるセルロースからはグルコースが得られる。また、改質されたバイオマスがヘミセルロースを含有している場合には、ヘミセルロース由来のグルコース、ガラクトース、マンノースといった六炭糖及びキシロース、アラビノースといった五炭糖が生成する。
【0082】
上記の糖化により得られる単糖を含む糖液は、そのまま発酵工程に供してもよいが、例えば糖液のpHを調整する工程、糖の濃度を調整する工程などにより、発酵により適した糖液としてもよい。
【0083】
(発酵工程)
次に、上記糖化工程において得られた糖液にエタノール発酵微生物を添加してエタノール発酵を行う。
【0084】
エタノール発酵微生物としては限定されないが、酵母又はザイモモナス・モビリス等のザイモモナス属の細菌等が好ましく使用され、酵母がより好ましい。
【0085】
酵母としては特に限定されないが、サッカロマイセス・セルビシエ等のサッカロマイセス属の酵母が好ましい。但し、原料となる植物バイオマスがリグノセルロースを含む場合は、リグノセルロースを構成するヘミセルロースから糖化によりキシロース、アラビノースといった五炭糖が生成するが、サッカロマイセス属の酵母は五炭糖を資化してエタノールを生成する能力をもたない。このため、六炭糖だけでなくヘミセルロース由来の五炭糖も有効に利用してエタノールに変換するためには、五炭糖を資化してエタノールを生成する能力を有する酵母(ペントース資化酵母)を使用することが好ましい。ペントース資化酵母としてはピキア・スティピティス又はカンジダ・シハタエ等が好ましく使用される。六炭糖及び五炭糖を効率的にエタノールに変換するためには、サッカロマイセス属の酵母と、前述のペントース資化酵母を組み合わせて使用する方法も好ましく採用される。この場合、サッカロマイセス属の酵母と、前述のペントース資化酵母を共存させて発酵を行なってもよいし、まずサッカロマイセス属の酵母により糖液中のグルコースを資化させ、その後前述のペントース資化酵母により五炭糖を資化させてもよい。
【0086】
発酵に用いる酵母は天然の酵母であってもよいし、遺伝子組み替え酵母であってもよい。特に、六炭糖と五炭糖の両方の資化能を有する遺伝子組み替え酵母を用いることにより、効率的にセルロース及びヘミセルロース由来の糖類をエタノールに変換することができる。
【0087】
発酵工程における酵母の使用量、糖以外の添加物、発酵温度、pH、発酵時間等の条件は特に限定されず、公知の条件を用いることができるが、pHは4〜7、発酵温度は20〜37℃程度の温度が好ましい。
【0088】
また、耐熱性の酵母を用いて、通常よりも高い温度で発酵を行なうことで、冷却のための設備を必要とせず、また雑菌の繁殖を抑制して効率的に発酵を行なうこともできる。耐熱性の酵母としては、例えばクロイベロマイセス・マルキシアナス等のクロイベロマイセス属に属する耐熱性酵母が挙げられる。これらの耐熱性酵母を使用する場合は、発酵の温度は37℃以上50℃以下程度とすることができる。
【0089】
(精製工程)
本発明のエタノールの製造方法においては、発酵工程において得られたエタノールを含む培地からエタノールを分離・生成する工程を備えることが好ましい。この工程により、エタノールは発酵培地中に含まれる種々の物質から分離・精製され、また濃縮される。前記分離・精製の方法としては特に制限はないが、例えば蒸留などが好ましく採用される。
【0090】
本実施形態に係るエタノールの製造方法によれば、上述のような製造方法による改質された植物バイオマスを用いることで、効率的にエタノールを製造することができる。
【0091】
以上、本発明の改質された植物バイオマスの製造方法及びその製造装置、並びに前記方法により製造された改質された植物バイオマスを用いたエタノールの製造方法について、好ましい実施形態に沿って説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態に限定されるものではない。
【0092】
なお、本発明の方法により得られる改質された植物バイオマスは、エタノールの製造に用いるだけでなく、その他の物質の製造の原料として用いることができる。例えば、本発明の方法により得られる改質された植物バイオマスを糖化して得られる糖液を、乳酸菌等による乳酸発酵に供することにより、乳酸を製造することができる。このようにして得られた乳酸は、例えばポリ乳酸等の生分解性高分子の原料として利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…植物バイオマス貯留部、2…第1の配管、3…空気抜配管、4…供給配管、5…投入槽、6…アンモニア導入配管、7…バルブ、8…コンプレッサー、9…冷却器、10…改質槽導入バルブ、11…動力装置、12A,12B…改質槽、13A…攪拌翼(攪拌手段)、13B…スクリューコンベア(攪拌手段)、14…熱媒体配管、15…第2の配管、16…供給配管、17…排出槽、18…排出バルブ、19…改質された植物バイオマス、20…バルブ、21…コンプレッサー、22…冷却器、23…液体アンモニア槽、24…非凝縮ガス排出配管、25…熱媒体、26…アンモニア蒸発槽、27…空気抜配管、100…改質された植物バイオマスの製造装置、110…第1の容器、120…植物バイオマス原料供給部、130…第1の排出部(第1の空気排出部、第1のアンモニア排出部)、140…アンモニア供給部、150…第2の容器、160…加熱部(加熱手段)、170…第3の容器、180…第2の排出部(第2の空気排出部、第2のアンモニア排出部)、190…植物バイオマス回収部、200…第1のアンモニア液化部、210…第2のアンモニア液化部、220…第4の容器、230…アンモニア加熱部(アンモニア加熱手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の容器に粒子状の植物バイオマス原料を供給する第1の工程と、
第1の工程の後、前記第1の容器中の空気を排出する第2の工程と、
第2の工程の後、前記第1の容器の圧力が、前記植物バイオマス原料を改質する第2の容器の圧力以上となるように、前記第1の容器に気体又は液体のアンモニアを供給する第3の工程と、
第3の工程の後、前記植物バイオマス原料を前記第1の容器から前記第2の容器に移送する第4の工程と、
第4の工程の後、前記第1の容器に残留したアンモニアを気体として排出する第5の工程と、
前記第4の工程により移送された前記植物バイオマス原料を前記第2の容器内において加圧された気体又は液体のアンモニアと接触させて改質する第6の工程と、
前記第6の工程において改質された植物バイオマスの少なくとも一部を前記第2の容器から第3の容器に移送する第7の工程と、
前記第7の工程の後、アンモニアを前記第3の容器から気体として排出する第8の工程と、
前記第8の工程の後、前記第3の容器から前記改質された植物バイオマスを排出して回収する第9の工程と、
空気を第3の容器から排出する第10の工程と、
前記第5の工程及び/又は前記第8の工程において排出されたアンモニアを回収し、前記第1の容器に供給されるアンモニアとして再使用する第11の工程と、を備え、
前記第1〜11の工程を繰り返し行うサイクルとし、一のサイクルにおける前記第5の工程の終了以後に次のサイクルを開始することを特徴とする、改質された植物バイオマスの製造方法。
【請求項2】
前記第11の工程において、気体のアンモニアを液化して回収し、液化されない気体を液体アンモニアから分離、除去する第12の工程を更に備えることを特徴とする請求項1記載の改質された植物バイオマスの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程における前記第1の容器からの空気の排出、前記第5の工程における前記第1の容器からのアンモニアの排出、前記第8の工程における前記第3の容器からのアンモニアの排出、及び前記第10の工程における前記第3の容器からの空気の排出を、当該容器を減圧することにより行うことを特徴とする請求項1又は2記載の改質された植物バイオマスの製造方法。
【請求項4】
前記第12の工程において、気体のアンモニアを冷却して液化することによりアンモニアの蒸気圧が低下することを利用して、前記第5の工程における前記第1の容器からの気体のアンモニアの排出及び/又は第8の工程における第3の容器からの気体のアンモニアの排出を行うことを特徴とする請求項2又は3記載の改質された植物バイオマスの製造方法。
【請求項5】
前記第11の工程において、前記第12の工程で液化されたアンモニアを再度気化して、前記第3の工程において供給されるアンモニアとして再使用することを特徴とする請求項2〜4にいずれか1項記載の改質された植物バイオマスの製造方法。
【請求項6】
粒子状の植物バイオマス原料が供給される第1の容器と、
前記第1の容器に前記植物バイオマス原料を供給する植物バイオマス原料供給部と、
前記第1の容器から空気を排出する第1の空気排出部と、
前記第1の容器からアンモニアを排出する第1のアンモニア排出部と、
加圧された気体又は液体のアンモニアを前記第1の容器に供給するアンモニア供給部と、
前記第1の容器から前記植物バイオマス原料が移送されると共に、当該植物バイオマス原料を加圧された気体又は液体のアンモニアと接触させ改質する第2の容器と、
前記第2の容器に設けられた加熱手段と、
前記第2の容器から改質された植物バイオマスが移送される第3の容器と、
前記第3の容器から空気を排出する第2の空気排出部と、
前記第3の容器からアンモニアを排出する第2のアンモニア排出部と、
前記第3の容器から前記改質された植物バイオマスを排出させて回収する植物バイオマス回収部と、を備えることを特徴とする、改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項7】
前記植物バイオマス原料供給部は、
前記植物バイオマス原料を貯留する植物バイオマス原料貯留部と、
前記植物バイオマス原料貯留部と前記第1の容器とを接続すると共に、複数のバルブが直列に配設された第1の配管と、を備えることを特徴とする請求項6記載の改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項8】
前記第2の容器と前記第3の容器とを接続すると共に、複数のバルブが直列に配設された第2の配管を更に備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項9】
前記複数のバルブが少なくとも一つのボールバルブ、及び少なくとも一つのゲートバルブから構成されることを特徴とする請求項7又は8記載の改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項10】
前記第2の容器は、前記植物バイオマス原料を攪拌する攪拌手段を備えることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項記載の改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項11】
前記第2の容器は、内部にスクリューコンベアを備えることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項記載の改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項12】
第1の容器及び/又は前記第3の容器から気体として排出されたアンモニアを圧縮及び/又は冷却して液化するアンモニア液化部と、
圧縮及び/又は冷却により液化されない気体を液体アンモニアから分離、除去するための第4の容器と、を更に備えることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項13】
前記第4の容器から移送された液体アンモニアを気化させるためのアンモニア加熱手段を更に備えることを特徴とする請求項12記載の改質された植物バイオマスの製造装置。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法によって製造された改質された植物バイオマスを酵素により糖化する糖化工程と、
前記糖化工程において得られた糖液をエタノール発酵させる発酵工程と、
を備えるエタノールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−205988(P2012−205988A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72510(P2011−72510)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】