説明

改質天然ゴムおよび改質天然ゴムラテックスの製造方法、改質天然ゴム、改質天然ゴムラテックスならびに改質天然ゴムを用いたタイヤ

【課題】反応時間を大幅に短縮し、反応制御にかかる手間をできるだけ少なくしながら、反応物の性状を一定にすることができる改質天然ゴムおよび改質天然ゴムラテックスの製造方法、上記製造方法により得られる改質天然ゴムおよび改質天然ゴムラテックス、ならびに、上記改質天然ゴムを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】(a)酢酸および/もしくは無水酢酸と過酸化水素から過酢酸を調製する工程、
(b)前記過酢酸と天然ゴムラテックスを連続的に供給しながら混合する工程、および、
(c)混合した液を連続的に輸送する工程
を含み、少なくとも(c)工程において前記天然ゴムラテックスをエポキシ化する改質天然ゴムラテックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質天然ゴムおよび改質天然ゴムラテックスの製造方法、改質天然ゴム、改質天然ゴムラテックスならびに改質天然ゴムを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化天然ゴムやエポキシ化天然ゴムラテックスはラテックス状の天然ゴムをエポキシ化して得られる。この天然ゴムの改質は、界面活性剤で安定化した天然ゴムラテックスに過酸化水素とギ酸もしくは酢酸を添加し、ラテックス中で過ギ酸もしくは過酢酸を生成させてこれと天然ゴムを反応させ、エポキシ化させる。その後固形ゴムが必要な場合はラテックスを凝固させ、必要に応じて中和、洗浄し、乾燥して製造する。一方、ラテックス状態であることを利用してエポキシ化天然ゴムに更なる化学改質を行うことも可能である。天然ゴムには溶剤に不溶なゲル分が多く含まれているため、溶剤を用いた化学改質は、困難である。また、溶剤を使用することは、環境に良くないため、水系で化学改質を行うことができる点から、ラテックスは好適に使用される。
エポキシ化に酢酸を用いた場合、過酢酸の生成速度が遅いので、触媒として硫酸やp−トルエンスルフォン酸のような強酸を添加する。ギ酸を用いた場合、エポキシ化反応が早いので、触媒は不要であるが、少なくとも反応に約2〜24時間程度かかる。特許文献1や非特許文献1〜2には、60℃で23〜24時間との記述があり、また非特許文献1〜2には、50℃で6〜14時間、室温で40〜120時間との記述があり、非常に反応に時間がかかる問題がある。反応に時間がかかれば、その製造に人件費や電気代(もしくは燃料費等)等の変動経費が多くかかる。
【0003】
またこのような反応は容器内に所定の重量のラテックスや薬品を仕込み、反応させる方式であり、いわゆるバッチ方式である。ギ酸を使用する場合には、上述のようにエポキシ化が一気に進行するわけではなく、反応に時間がかかるため、ラテックスが容器内に留まる時間が同じでない限り、エポキシ化度にばらつきが生じることとなる。そのため、ラテックスが容器内に留まる時間が一定でない場合に、エポキシ化度のばらつきが問題となる。また、反応終了後、凝固工程に移る場合には、酸や塩による凝固ができないために、界面活性剤の曇点を利用した昇温による凝固を利用することになる。その際、熱源として水蒸気を利用することが多く、その処理を施す間、ラテックスが容器内に留まる時間が一定にならない問題がある。そこで、ラテックスが容器内に留まる間、エポキシ化反応が進まないように余分の過酸化水素を仕込まないか、反応を止める薬剤を添加する必要がある。過不足のない量の過酸化水素を使用すると、その分発生する過ギ酸の量が減り、反応時間が長くなるのは当然である。
【0004】
またバッチ反応では反応が進むと温度が上昇するが、安定剤として添加している界面活性剤が不安定化し、ゴムがゲル化する可能性がある。そのため厳密な温度コントロールが必要であるが、容器のサイズが大きいと温度のむらもできやすく、また壁面温度をコントロールしても内部の温度は暴走しやすく、反応制御は非常に難しい。
【0005】
また、容器内で天然ゴムラテックスと過酢酸を混合し、エポキシ化させる方法も知られているが、この方法では反応熱が大きく、過酢酸を一気に投入すると、激しい発熱のためラテックス全体が固まり、均一な反応物を得ることができない。従って、過酢酸の添加速度を下げる必要があるが、添加に時間がかかるため、エポキシ化度の分布が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許出願公開第2113692号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】デビッド・R・バーフィールド、外2名(David R. Burfield et al.)、「ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(Journal of Applied Polymer Science)」、1984年、第29巻、第5号、p.1661−1673
【非特許文献2】ニュエン・ビエト・バク、外2名(Nguyen Viet Bac et al.)、「ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(Journal of Applied Polymer Science)」、1991年、第42巻、第11号、p.2965−2973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、反応時間を大幅に短縮し、反応制御にかかる手間をできるだけ少なくしながら、反応物の性状を一定にすることができる改質天然ゴムおよび改質天然ゴムラテックスの製造方法、上記製造方法により得られる改質天然ゴムおよび改質天然ゴムラテックス、ならびに、上記改質天然ゴムを用いたタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは鋭意検討の結果、(a)酢酸および/もしくは無水酢酸と過酸化水素から過酢酸を調製する工程、(b)上記過酢酸と天然ゴムラテックスを連続的に供給しながら混合する工程、および、(c)混合した液を連続的に輸送する工程、更に必要に応じて(d)エポキシ化天然ゴムラテックスを凝固させる工程を含み、少なくとも(c)工程において上記天然ゴムラテックスをエポキシ化する改質天然ゴムおよび改質天然ゴムラテックスの製造方法により、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、
(a)酢酸および/もしくは無水酢酸と過酸化水素から過酢酸を調製する工程、
(b)上記過酢酸と天然ゴムラテックスを連続的に供給しながら混合する工程、および、
(c)混合した液を連続的に輸送する工程
を含み、少なくとも(c)工程において上記天然ゴムラテックスをエポキシ化する改質天然ゴムラテックスの製造方法に関する。
【0011】
(b)工程において、上記過酢酸と上記天然ゴムラテックスを流路内で混合することが好ましい。
(b)工程において、上記過酢酸と上記天然ゴムラテックスを各々容器内に供給し、容器内で混合することが好ましい。
上記天然ゴムラテックス中の乾燥ゴム分が5〜67重量%であることが好ましい。
【0012】
また本発明は、上記の製造方法で作られた改質天然ゴムラテックスに関する。
【0013】
また本発明は、
(a)酢酸および/もしくは無水酢酸と過酸化水素から過酢酸を調製する工程、
(b)上記過酢酸と天然ゴムラテックスを連続的に供給しながら混合する工程、
(c)混合した液を連続的に(d)工程へ輸送する工程、および、
(d)エポキシ化天然ゴムラテックスを凝固させる工程
を含み、少なくとも(c)工程において上記天然ゴムラテックスをエポキシ化する改質天然ゴムの製造方法に関する。
【0014】
(b)工程において、上記過酢酸と上記天然ゴムラテックスを流路内で混合することが好ましい。
(b)工程において、上記過酢酸と上記天然ゴムラテックスを各々容器内に供給し、容器内で混合することが好ましい。
(d)工程において、凝固後のゴムに残存する酸を塩基性物質により中和することが好ましい。
(c)工程により輸送されてきたエポキシ化天然ゴムラテックスをタンクに貯めることなく、(d)工程を行うことが好ましい。
上記天然ゴムラテックス中の乾燥ゴム分が5〜67重量%であることが好ましい。
【0015】
また本発明は、上記の製造方法で作られた改質天然ゴムに関する。
【0016】
また本発明は、上記改質天然ゴムを用いたタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、天然ゴムラテックスと過酢酸を混合し、(c)工程(例えば配管中)で反応させることで、均一な混合かつ厳密な温度制御が可能となり、反応時間を短縮し、安定した品質のエポキシ化天然ゴムラテックスを製造することができる。
また、容器内での滞留時間と(c)工程(例えば配管中)の滞留時間を制御することで、エポキシ化度の分布を調節することが可能となる。これは他のゴムとのブレンド性(モルフォロジー)を制御する際、調整範囲を広めるのに非常に有効である。またラテックスと過酢酸の混合量を制御することで、多様なエポキシ化度を極めて容易に達成し、かつ安定して製造することが可能となる。
また、大きな反応装置では大規模な製造装置が必要であるのに対し、本発明では、安価で非常に簡単な装置を使いながら、そのユニット数を増減することで、自在に製造量をコントロールすることができ、規模拡大に伴う条件検討が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
(a)酢酸および/もしくは無水酢酸と過酸化水素から事前に過酢酸を調製する工程
反応物の性状を一定にするためには、従来数時間〜数十時間かけていたエポキシ化反応の時間を劇的に短縮することが望ましい。これを達成するために、本発明では、過ギ酸ではなく、過酢酸を用いる。過酢酸を用いる場合、上記のように、ラテックスに酢酸と過酸化水素を添加しても過酢酸の生成速度が遅いので、強酸を添加する必要があるが、その場合にも生成に非常に時間がかかる。この問題を解決するために、事前に過酢酸を調製する。
【0020】
過酢酸は、酢酸および/または無水酢酸と過酸化水素を混合して調製する。
過酸化水素は、濃度1〜60%の水溶液が使用できるが、安全性および効率を考慮すると、濃度5〜50%の過酸化水素が好ましい。過酸化水素の濃度が50%を超えると爆発の危険が高くなり、濃度が5%未満の場合は効率が悪くなるおそれがある。
また、酢酸は、濃度10〜99.9%の水溶液または100%のものを使用してよい。無水酢酸の純度は特に限定しないが、50〜100%が好ましく、80〜100%が最も好ましい。
過酸化水素は、酢酸および/または無水酢酸1モルに対し0.05〜5モル添加することが好ましい。安全性および効率を考慮すると、0.1〜2モルがさらに好ましい。添加量が0.05モル未満であると、酢酸の転化率が著しく低下するおそれがあり、経済的ではない。また、添加量が5モルを超えると、過酸化水素の転化率が著しく低下するおそれがあり、経済的ではない。
反応温度の下限は、好ましくは5℃、より好ましくは10℃であり、上限は、好ましくは60℃、より好ましくは45℃である。下限が5℃より低いと、平衡に達するまでの時間が長くなりすぎるおそれがあり、上限が60℃より高いと、過酸化水素および/または生成する過酢酸が分解するおそれがある。
この際、必要に応じて強酸(硫酸、塩酸、硝酸等)を微量(酢酸および/または無水酢酸の1〜7mol%、より好ましくは3〜5mol%)添加すると過酢酸の生成効率が上がる。特に硫酸は2価であるため生成効率が高く、またそのため安価に済む。
強酸のかわりに、イオン交換樹脂を使用しても高い生成効率を達成できる。強酸であれば、毎回添加の必要があるが、イオン交換樹脂であれば接触させるだけで反応を進めることができるので、環境面からも、トータルコスト面からもメリットがある。好ましいイオン交換樹脂として、強酸性陽イオン交換樹脂、または、弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。
【0021】
(b)過酢酸と天然ゴムラテックスを混合する工程
続いて、天然ゴムラテックスと(a)工程で調製した過酢酸とを連続的に供給しながら混合する。混合には、管型反応装置または攪拌釜を用いることができ、流路内または容器内で混合を行う。
なお、過酢酸と天然ゴムラテックスを混合すると、天然ゴムラテックスのエポキシ化反応が開始するが、必要に応じて温度調節等により反応を抑えることができる。
【0022】
管型反応装置を使用すると、流入原料の濃度分布を一定にしやすくなり、均一なエポキシ化度を有する製品を容易に得ることができる。
管型反応装置を用いる場合、例えばY字コネクターを用いて、過酢酸と天然ゴムラテックスを別々にポンプで連続的かつ定量的に流路に供給し、混合を行う。流路で混合を行うため、後述する輸送を同時に行うことができる。
流路の形状や材質については、均一な混合が行えるものであれば特に限定されない。
なお、完全に混合するには、特に限定しないが、スタティックミキサーやベンチュリノズル等を使用して管内で混合することが好ましい。また、ポンプは、チューブポンプ、マグネティックポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、ロータリーポンプ等を使用することができる。
【0023】
攪拌釜を使用すると、攪拌羽を用いることで容器内での原料の混合を容易かつ安価に行うことができる。
攪拌釜を使用する場合、過酢酸と天然ゴムラテックスを連続的かつ定量的に供給し、混合を行う。連続的な原料供給と連続的な混合液の輸送を実現するために、攪拌釜には原料の供給口と混合液の排出口を設けるが、その形状は特に限定しない。
攪拌釜の材質については特に限定しないが、金属、ガラス、樹脂のいずれも用いることができる。液と接触する部分は、ガラスライニング、エポキシコーティング、フッ素コーティング等の表面処理が施されていることが望ましい。
均一なエポキシ化度を有する製品を得るためには、攪拌釜内でおこる反応を最小限にとどめ、混合液を攪拌釜より排出した後に流路内で反応させる必要がある。原料は攪拌釜に連続的に供給されるので、もし混合物が攪拌釜に長時間滞留すると、先に供給された原料と後から供給された原料とが混在することになる。その結果、攪拌釜内で長時間混合された混合物と、短時間混合された混合物とが混在して排出されることになり、ゴムのエポキシ化度の分布が広がってしまう。従って、攪拌釜に供給された原料を短時間で混合し、速やかに流路へ排出することが好ましい。仮に攪拌釜内での混合が不十分であったとしても、流路内で混合を完了すればよい。
【0024】
天然ゴムラテックス中の乾燥ゴム分は、下限が好ましくは5重量%、より好ましくは20重量%、さらに好ましくは30重量%であり、上限が好ましくは67重量%、より好ましくは60重量%である。乾燥ゴム分が5重量%未満であると水分が多すぎて反応が進まない場合がある。また、限界濃度である67重量%を超えるとゴムが固まる。
天然ゴムラテックスには、アンモニア分の少ないローアンモニアラテックスおよびアンモニア分の多いハイアンモニアラテックスがあり、どちらを使用してもよい。アンモニア分は、下限が好ましくは0.1重量%、より好ましくは0.15重量%であり、上限が好ましくは1重量%、より好ましくは0.7重量%である。
【0025】
過酢酸の添加量については特に制限はなく、所望のエポキシ化度に応じて適宜決定する。
天然ゴムに対する過酢酸の混合比率を正確にコントロールすることで、望むエポキシ化度を容易にかつ正確に得ることが可能となる。このコントロールはポンプの流量制御だけにより、極めて容易に達成できる。従来のバッチ法でも理論上比率を調節することは可能であるが、実際には非常に難しい。
【0026】
上述したように、過酢酸の添加量に応じて、エポキシ化度を制御することが可能である。特に、以下の理由により、エポキシ化度が12%以下の場合により好ましい。
酢酸と過酸化水素から過酢酸を生成する反応は、平衡反応であり、エポキシ化度は35%程度まで達成することができる。所望のエポキシ化度が高い場合には、使用する酢酸、過酸化水素の量が多く、コストに非常に悪影響を与え、排水の中和、ゴム中の残存する酸の中和に要する塩基性物質の量も増えるなど、現状ではロスが大きい。一方、所望のエポキシ化度が低い場合には、使用する酢酸、過酸化水素の量が少ないため、これらの弊害が問題とならない量に収まる。本発明においては、エポキシ化度は特に限定されないが、このような観点から考えた場合の好適なエポキシ化度は、下限が好ましくは0.5であり、上限が好ましくは12.0、より好ましくは10.0である。
また、このようなエポキシ化度が低い場合であっても、反応に必要な過酢酸を添加することで、正確に所望のエポキシ化率を達成することが可能である。なお、過酢酸量でエポキシ化度が決まることから、過酢酸溶液中の過酢酸濃度を正確に知ることが重要となる。過酢酸濃度は、過酢酸濃度計(例えば、平沼産業(株)製の過酢酸カウンタPA−300)を使用することにより正確に知ることができる。
【0027】
天然ゴムラテックスには、凝固を防ぐために、あらかじめ界面活性剤を添加しておくことが望ましい。
界面活性剤として、アニオン系界面活性剤および/またはノニオン系界面活性剤を用いることができるが、従来特許や文献で述べられているように、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤の曇点は、下限が好ましくは60℃であり、上限が好ましくは100℃であるが、凝固に支障がなければ特に制限されない。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコール等を使用することができる。
なお、アニオン系界面活性剤を使用する場合、後に過酢酸を混合する際のラテックスの凝固を防ぐには、界面活性剤が多量に必要となり経済的ではない。従って、ノニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。
界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの凝固を防げれば十分であり、また反応時間が非常に短いことから、従来用いられている量の2/3〜半分もあれば十分である。界面活性剤を減らせることは、その後の洗浄においても大きなメリットとなる。界面活性剤の添加量は、下限が、乾燥天然ゴム100重量部に対して0.1重量部であることが好ましく、0.5重量部であることがより好ましい。また、上限が、乾燥天然ゴム100重量部に対して5重量部であることが好ましく、3重量部であることがより好ましい。0.1重量部より少ないとゴムが凝固してしまう場合があり、5重量部より多いと、高コストになることに加えて洗浄による除去が困難になる場合がある。
【0028】
(c)混合した液を輸送する工程
続いて、混合した液をチューブ等の配管を用いて、例えば(d)工程(凝固工程)へ連続的に輸送する。
前述のように、過酢酸と天然ゴムラテックスを混合すると、天然ゴムラテックスのエポキシ化反応が開始する。本発明の製造方法では、少なくとも(c)工程において天然ゴムラテックスのエポキシ化が行われるが、さらに(b)工程、(d)工程においてエポキシ化が行われてもよい。全工程で行われるエポキシ化反応の50%以上が(c)工程で行われることが好ましい。
【0029】
チューブは、構造上熱交換率が高いので、チューブを恒温水槽に浸けるだけで溶液の温度が厳密に管理でき、それによって理想的な反応温度を保つことが出来るという利点がある。
チューブの内径は、下限が好ましくは2mm、より好ましくは3mmであり、上限が好ましくは200mm、より好ましくは100mmである。2mmより小さいと生産効率が低くなるおそれがあり、200mmより大きいと厳密な温度管理が行われないおそれがある。
【0030】
混合液の送液速度は、下限が好ましくは線速2mm/分である。2mm/分未満であると、混合が不十分となり、熱伝導の効率も悪くなる傾向がある。なお、送液距離(配管の長さ)を考慮しなければ、送液速度は、特に限定されず、例えば、3000mm/分であってもよい。
【0031】
エポキシ化反応時の配管の温度は、下限が、好ましくは5℃、より好ましくは10℃であり、上限が、好ましくは70℃、より好ましくは55℃である。5℃より低いと、反応に時間がかかり過ぎるおそれがあり、70℃より高いと、天然ゴムラテックスが凝固又は部分分解するおそれがある。
エポキシ化反応時の混合物の温度は、下限が、好ましくは20℃、より好ましくは30℃、さらに好ましくは40℃であり、上限が、好ましくは65℃、より好ましくは60℃である。20℃より低いと、反応が十分に進まないおそれがあり、65℃より高いと、ゴムが凝固するおそれがある。
【0032】
また、この輸送工程において過酢酸と天然ゴムラテックスの均一な混合を行うことも可能である。混合と輸送を同時に行うことにより、混合液の滞留時間を短縮することができる。
【0033】
(b)の混合工程と(c)の輸送工程において、混合物の攪拌釜内での滞留時間t1は、好ましくは0〜12分であり、より好ましくは0〜5分である。前述のように攪拌釜内での滞留時間が長くなりすぎると、エポキシ化度の分布が広くなる。流路(チューブ)内での滞留時間t2は、好ましくは1〜35分であり、より好ましくは5〜10分である。ただし、反応速度は温度やチューブの内径等に依存するため、滞留時間は必ずしも限定されない。
なお、エポキシ化度の範囲は、製品品質という点では一般的に狭い方が良いが、異種ゴムとのブレンドを考慮すると、親和性向上にも有用であり、範囲が広いことは必ずしも悪いことではない。
【0034】
上述のように、本発明によれば、チューブで輸送を行う事で、均一な混合かつ厳密な温度制御が可能となり、バッチ反応で起こる温度の暴走も容易に防ぐ事が出来るため、ゴムの品質が一定に保たれる。また、大きな反応装置では大規模な製造装置が必要なのに対し、この方式では小さなポンプを2〜3台で一組として、安価で非常に簡単な装置を使いながら、そのユニット数を増減することで、自在に製造量をコントロールすることができる。大きな反応装置では、最適な仕込量の幅は小さく、融通がきかない。
【0035】
本願発明では、必要に応じて、エポキシ化天然ゴムラテックスを凝固させる前等において過剰なエポキシ化反応を停止させる。反応を停止するには、混合液に反応停止剤を投入して過酢酸を中和すればよい。反応停止剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基性物質を使用することができる。エポキシ化反応の停止は、過酢酸の滴定により確認することができる。
【0036】
本発明では、エポキシ化天然ゴムラテックスを凝固させる場合には、送られてきたエポキシ化天然ゴムラテックスをタンクに貯めることなく、凝固装置に投入することが好ましい。タンクに貯めると、先に供給されて長時間エポキシ化反応が進んだ混合物と、後から供給されてエポキシ化反応があまり進んでいない混合物とが混在することになり、ゴムのエポキシ化度の分布が広がるからである。タンクに貯めずに凝固工程に送ることで、原料の混合から凝固までの時間がほぼ一定になり、製品の品質を揃えやすくなる。
【0037】
(d)エポキシ化天然ゴムラテックスを凝固させる工程
凝固工程については、先行技術と同様に実施できる。すなわち筒の内部にラテックスを薄く流し込み、下からは水蒸気を吹き込み向流(カウンターフロー)でゴムを熱し、凝固させる。凝固したゴムは下部から取り出され、水分と分離される。ここでこの水分には、過酢酸にならなかった酢酸、過酸化水素、過酸化水素が熱分解して生じる水、および、ラテックスからゴムを除いた後の漿液が含まれる。水蒸気凝固は、装置をうまく設計すると、ゴムの97〜99%は回収でき、水分中にはほとんどゴムが残存しない。そのため簡単なメッシュを利用してゴムの濾過をしても、メッシュが目詰まりを起こすまで非常に長時間濾過が可能である。このゴムを濾過した後の液を濃縮すれば、酢酸を回収、再利用することが可能である。濃縮には加熱、逆浸透膜等、通常の操作を利用できる。
【0038】
また、凝固後のゴムに残存する酸(酢酸)を塩基性物質により中和することが好ましい。中和することで、加硫の遅れを防いだり、得られるゴムの特性を向上させたりすることができる。塩基性物質は特に限定されず、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム等を使用することができる。
【0039】
本発明の製造方法によれば、過酢酸と天然ゴムラテックスを混合してから、過剰なエポキシ化反応を停止するまで、又は、エポキシ化天然ゴムラテックスを凝固させるまでのどちらか早い方までの時間を、5分〜2時間以内とすることができる。従来の方法では数時間を必要としたが、本手法を用いれば、非常に短時間で済ませることができ、エポキシ化度の調節が可能であり、また、エネルギーや人件費の低減が可能である。
【0040】
また、本発明の改質天然ゴムは、特にタイヤの材料として有用である。
天然ゴムのエポキシ化により、天然ゴムのガラス転移点が上昇する。エポキシ化度が1%上昇すると、ガラス転移点も約1度上昇する。エポキシ化度が高い場合、ガラス転移点が大きく上昇するため、湿潤時の摩擦係数が上昇し、雨天時の制動距離が短くなる。その一方で、転がり抵抗が高くなり、燃費が悪くなる傾向があり、また、低温時には固くなって、例えば冬用タイヤには適さなくなる傾向がある。一方、エポキシ化度が低い場合には、低温での弾性率が小さくなり、冬用タイヤなどに好適に使用可能となる。
また、エポキシ化することによりゴムの極性が上昇し、充填剤として用いられるシリカとの親和性が高くなり、燃費が向上する。本発明では、エポキシ化度が上述したような小さい場合であっても、シリカとの親和性は充分であり、ガラス転移点を低くできるので、冬用タイヤなどに好適に使用可能となる。
タイヤの製造方法には特に制限はなく、従来の製造方法を用いて製造することができる。
【実施例】
【0041】
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0042】
まず、実施例および比較例で使用した各種薬品について説明する。
天然ゴムラテックス:アンモニアおよび微量の酸化亜鉛とテトラチウラムジスルフィドを添加して耐腐敗性・安定性を付与したローアンモニアラテックス(乾燥ゴム分60重量%、アンモニア分0.2重量%)
界面活性剤:ポリオキシエチレン脂肪酸アルコール(アルコールの炭素数C12〜C18、曇点70〜80℃)
酢酸:過酢酸a、bの調製には、有効成分98%試薬1級を使用した。過酢酸cの調製には、有効成分99%試薬1級を使用した。
ギ酸:有効成分88%試薬1級を使用した。
過酸化水素水:過酢酸a、bの調製には、有効成分50%のものを使用した。過酢酸cの調製には、有効成分30%のものを使用した。
硫酸:有効成分98%のものを使用した。
【0043】
製造例1
<過酢酸の調製>
(過酢酸aの調製)
酢酸102g、過酸化水素水113.3g、および、硫酸2gを混合し、40℃で1日放置した。滴定により過酢酸を定量したところ、24g生成していることがわかった。同じ処方で200倍の重量で過酢酸aを調製した。なお、過酢酸の定量は、平沼産業(株)製の過酢酸カウンタPA−300により行った。以下、過酢酸の定量は、同様に行った。
【0044】
(過酢酸bの調製)
酢酸102g、過酸化水素水56.6g、および、硫酸2gを混合し、40℃で2日放置した。滴定により過酢酸を定量したところ、21g生成していることがわかった。同じ処方で200倍の重量で過酢酸bを調製した。
【0045】
(過酢酸cの調製)
酢酸101g、過酸化水素水94.4g、および、硫酸2.45gを混合し、40℃で1日放置した。滴定により過酢酸を定量したところ、過酢酸は液全体重量の13.3重量%生成していることがわかった。同じ処方で200倍の重量で過酢酸cを調製した。
【0046】
製造例2
<過ギ酸の調製>
(過ギ酸aの調製)
ギ酸113.6g、過酸化水素水147.8g、および、硫酸2gを混合し、40℃で1日放置した。滴定により過ギ酸を定量したところ、7.9g生成していることがわかった。同じ処方で200倍の重量で過ギ酸aを調製した。
【0047】
(過ギ酸bの調製)
ギ酸113.6g、過酸化水素水123.2g、および、硫酸3.20gを混合し、40℃で1日放置した。滴定により過ギ酸を定量したところ、5.3g生成していることがわかった。同じ処方で200倍の重量で過ギ酸bを調製した。
【0048】
製造例3
<界面活性剤水溶液の調製>
ポリオキシエチレン脂肪酸アルコール(アルコールの炭素数C12〜C18、曇点75℃)150gをイオン交換水850gに溶かして15重量%の界面活性剤水溶液を調製した。
【0049】
実施例1
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸aを7.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が17.6g/分(850mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は55℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は15分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを10分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は25.1、25.3、25.1、25.4、25.4、25.7、25.3、25.5であり、非常に安定していることを確認した。
【0050】
実施例2
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸bを9.0g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が19.0g/分(913mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は60℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は20分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを10分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は35.2、35.8、35.1、35.3、35.4、35.6、35.0、35.6であり、非常に安定していることを確認した。
【0051】
実施例3
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸bを3.87g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が13.87g/分(666m/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は50℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は30分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを10分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は15.2、15.5、15.1、15.6、15.2、15.4、15.5であり、非常に安定していることを確認した。
【0052】
実施例4
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは100ccとした。
同時に前述の過酢酸aを7.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が17.6g/分(850mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は55℃であった。なお混合装置内には液がほとんど満杯になるように貯めた後、ポンプを稼働させたので、混合装置内で液が滞留する時間は平均すると約5分であった。一方チューブ内の滞留時間は6分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを10分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は23.8、24.2、26.0、25.1、26.2、24.6、25.8であり、実施例1よりは少しエポキシ化度の分布が広がっていることがわかった。
【0053】
実施例5
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは200ccとした。
同時に前述の過酢酸aを7.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が17.6g/分(850mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は55℃であった。なお混合装置内には液がほとんど満杯になるように貯めた後、ポンプを稼働させたので、混合装置内で液が滞留する時間は平均すると約11分であった。一方チューブ内の滞留時間は2分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを10分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は25.4、26.8、27.2、24.2、24.0、25.1、23.9であり、実施例1及び4よりエポキシ化度の分布が広がっていることがわかった。
【0054】
実施例6
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸aを7.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が17.6g/分(850mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置または保管容器に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は55℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は15分であった。チューブ出口から出てきたラテックスを10分毎にサンプリングし、メタノール中で凝固させ、これをロールで薄くした後、水で冷却し、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は25.7、25.6、25.2、25.9、25.5、25.3、25.6、25.7であり、非常に安定していることを確認した。
【0055】
実施例7
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸bを9.0g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が19.0g/分(913mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置または保管容器に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は60℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は20分であった。チューブ出口から出てきたラテックスを10分毎にサンプリングし、メタノール中で凝固させ、これをロールで薄くした後、水で冷却し、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は35.4、35.5、35.3、35.6、35.7、35.4、35.1、35.4であり、非常に安定していることを確認した。
【0056】
実施例8
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸bを3.87g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が13.87g/分(666mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置または保管容器に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は50℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は30分であった。チューブ出口から出てきたラテックスを10分毎にサンプリングし、メタノール中で凝固させ、これをロールで薄くした後、水で冷却し、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は15.1、15.3、15.3、15.7、15.6、15.5、15.3であり、非常に安定していることを確認した。
【0057】
実施例9
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは100ccとした。
同時に前述の過酢酸aを7.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が17.6g/分(850mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置または保管容器に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は55℃であった。なお混合装置内には液がほとんど満杯になるように貯めた後、ポンプを稼働させたので、混合装置内で液が滞留する時間は平均すると約5分であった。一方チューブ内の滞留時間は6分であった。チューブ出口から出てきたラテックスを10分毎にサンプリングし、メタノール中で凝固させ、これをロールで薄くした後、水で冷却し、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は23.1、24.6、25.7、25.5、26.0、24.8、25.5であり、実施例6よりは少しエポキシ化度の分布が広がっていることがわかった。
【0058】
実施例10
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは200ccとした。
同時に前述の過酢酸aを7.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が17.6g/分(850mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置または保管容器に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は55℃であった。なお混合装置内には液がほとんど満杯になるように貯めた後、ポンプを稼働させたので、混合装置内で液が滞留する時間は平均すると約11分であった。一方チューブ内の滞留時間は2分であった。チューブ出口から出てきたラテックスを10分毎にサンプリングし、メタノール中で凝固させ、これをロールで薄くした後、水で冷却し、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は25.5、27.0、23.7、24.7、24.2、26.1、25.9であり、実施例6及び9よりエポキシ化度の分布が広がっていることがわかった。
【0059】
実施例11
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)を用いて、このラテックスを60.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸cを1.71g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が61.7g/分(1753mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は55℃、送液時の混合液の温度は60℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は12分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを5分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は0.9、1.0、1.0であり、非常に安定していることを確認した。
【0060】
実施例12
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)を用いて、このラテックスを60.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸cを8.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が68.6g/分(2007mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は55℃、送液時の混合液の温度は60℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は12分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを5分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は5.1、5.0、5.1であり、非常に安定していることを確認した。
【0061】
実施例13
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)を用いて、このラテックスを60.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸cを17.1g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が77.1g/分(2192mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は55℃、送液時の混合液の温度は60℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は12分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを5分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は10.1、10.3、10.4であり、非常に安定していることを確認した。
【0062】
実施例14
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)を用いて、このラテックスを60.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸cを20.6g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が80.6g/分(2358mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は45℃、送液時の混合液の温度は60℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は15分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを5分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は12.1、12.3、12.4であり、非常に安定していることを確認した。
【0063】
実施例15
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)を用いて、このラテックスを30.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過酢酸cを21.4g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が51.4g/分(1461mm/分)となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は30℃、送液時の混合液の温度は42℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど無い。一方チューブ内の滞留時間は15分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。凝固装置から出てきたゴムを5分毎にサンプリングし、これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度は24.9、25.2、25.7であり、非常に安定していることを確認した。
【0064】
比較例1
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過ギ酸aを22.79g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が32.8g/分となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は25℃であった。なお混合装置内には液がほとんど貯まらないようにポンプを稼働させたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど0分であった。一方チューブ内の滞留時間は20分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。ゴムは凝固物から10箇所サンプリングした。
このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度はいずれもほとんど0であった。
【0065】
比較例2
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水440gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤60g(有効成分9g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
これを攪拌機で攪拌しながら、ギ酸(88%)52.3gをゆっくり添加し、さらに過酸化水素水(50%)93.5gを3時間かけてチューブポンプを用いて添加した。ラテックスの温度は40℃からスタートし、反応が進むと60℃を超えるため60〜65℃となるように周囲を冷却しながら反応させた。過酸化水素水の添加開始から4時間、8時間、24時間とサンプリングして、ゴムを水蒸気凝固させ、中和後乾燥して、NMRによりエポキシ化度を調べた。その結果、エポキシ化度は4時間で12.5、8時間で18.5、24時間で25.4であった。エポキシ化はできているが、非常に時間がかかることがわかる。
【0066】
比較例3
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水440gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤60g(有効成分9g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
これを攪拌機で攪拌しながら、酢酸(98%)61.2gをゆっくり添加し、さらに過酸化水素水(50%)93.5gを3時間かけてチューブポンプを用いて添加した。ラテックスの温度は40℃からスタートし、反応が進むと60℃を超えるため60〜65℃となるように周囲を冷却しながら反応させた。過酸化水素水の添加開始から4時間、8時間、24時間とサンプリングして、ゴムを水蒸気凝固させ、中和後乾燥して、NMRによりエポキシ化度を調べた。その結果、エポキシ化度は4時間で1、8時間で3、24時間で5であった。比較例2と同じ手法ではエポキシ化がほとんど進まないことがわかる。
【0067】
比較例4
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径4mm)を用いて、このラテックスを10.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過ギ酸aを22.79g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が32.8g/分となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は25℃であった。なお混合装置内には液がほとんど貯まらないようにポンプを稼働させたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど0分であった。一方チューブ内の滞留時間は20分であった。チューブ出口から出てきたラテックスを10回サンプリングし、メタノール中で凝固させ、これをロールで薄くした後、水で冷却し、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度はいずれもほとんど0であった。
【0068】
比較例5
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水440gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤60g(有効成分9g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
これを攪拌機で攪拌しながら、ギ酸(88%)52.3gをゆっくり添加し、さらに過酸化水素水(50%)93.5gを3時間かけてチューブポンプを用いて添加した。ラテックスの温度は40℃からスタートし、反応が進むと60℃を超えるため60〜65℃となるように周囲を冷却しながら反応させた。過酸化水素水の添加開始から4時間、8時間、24時間とサンプリングして、ゴムをメタノール中で凝固させ、中和後乾燥して、NMRによりエポキシ化度を調べた。その結果、エポキシ化度は4時間で12.0、8時間で17.8、24時間で24.9であった。エポキシ化はできているが、非常に時間がかかることがわかる。
【0069】
比較例6
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水440gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤60g(有効成分9g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
これを攪拌機で攪拌しながら、酢酸(98%)61.2gをゆっくり添加し、さらに過酸化水素水(50%)93.5gを3時間かけてチューブポンプを用いて添加した。ラテックスの温度は40℃からスタートし、反応が進むと60℃を超えるため60〜65℃となるように周囲を冷却しながら反応させた。過酸化水素水の添加開始から4時間、8時間、24時間とサンプリングして、ゴムをメタノール中で凝固させ、中和後乾燥して、NMRによりエポキシ化度を調べた。その結果、エポキシ化度は4時間でほぼ0、8時間で2、24時間で3であった。比較例5と同じ手法ではエポキシ化がほとんど進まないことがわかる。
【0070】
比較例7
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水460gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤40g(有効成分6.0g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
事前に送液量を調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)を用いて、このラテックスを60.0g/分の割合で混合装置に送り込んだ。混合装置のサイズは25ccとした。
同時に前述の過ギ酸bを42.1g/分となるように混合装置に送り込んだ。混合装置内で攪拌翼を用いてこれらを十分混合したあと、送液量が102.1g/分となるように調整したチューブポンプ(チューブの内径6.5mm)により凝固装置に送液した。混合時の混合液の温度は25℃、送液時の混合液の温度は25℃であった。なお混合装置内には液はほとんど貯まらないようにしたので、混合装置内で液が滞留する時間はほとんど0分であった。一方チューブ内の滞留時間は20分であった。凝固装置は下から水蒸気が一定量吹き出るようになっており、上からは混合液が壁に沿って降りるようになっている。ラテックスは下に落ちる間に水蒸気により凝固し、ゴムと漿液に分離した。これを水で冷却後、1〜3%の炭酸水素ナトリウム水溶液中で一昼夜浸せきし、その後再度水洗後、恒量になるまで乾燥した。ゴムは凝固物から5箇所サンプリングした。このゴムのエポキシ化度をNMRで調べた。その結果エポキシ化度はいずれもほとんど0であった。
【0071】
比較例8
乾燥ゴム分60重量%のローアンモニア天然ゴムラテックス500g(うち乾燥ゴム分300g)に蒸留水440gを添加し、さらに前述の15重量%界面活性剤60g(有効成分9g)を添加してへらでゆっくりと2分攪拌した。
これを攪拌機で攪拌しながら、ギ酸(88%)7.84gをゆっくり添加し、さらに過酸化水素水(30%)34gを3時間かけてチューブポンプを用いて添加した。ラテックスの温度は40℃からスタートし、反応が進むと60℃を超えるため60〜65℃となるように周囲を冷却しながら反応させた。過酸化水素水の添加開始から4時間、8時間、20時間、24時間、27時間とサンプリングして、ゴムを水蒸気凝固させ、中和後乾燥して、NMRによりエポキシ化度を調べた。その結果、エポキシ化度は4時間で1.5、8時間で3.2、20時間で4.6、24時間で4.9、27時間で5.1であった。エポキシ化は徐々に確実に進行するが、非常に時間がかかることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酢酸および/もしくは無水酢酸と過酸化水素から過酢酸を調製する工程、
(b)前記過酢酸と天然ゴムラテックスを連続的に供給しながら混合する工程、および、
(c)混合した液を連続的に輸送する工程
を含み、少なくとも(c)工程において前記天然ゴムラテックスをエポキシ化する改質天然ゴムラテックスの製造方法。
【請求項2】
(b)工程において、前記過酢酸と前記天然ゴムラテックスを流路内で混合することを特徴とする請求項1に記載の改質天然ゴムラテックスの製造方法。
【請求項3】
(b)工程において、前記過酢酸と前記天然ゴムラテックスを各々容器内に供給し、容器内で混合することを特徴とする請求項1または2に記載の改質天然ゴムラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記天然ゴムラテックス中の乾燥ゴム分が5〜67重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の改質天然ゴムラテックスの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で作られた改質天然ゴムラテックス。
【請求項6】
(a)酢酸および/もしくは無水酢酸と過酸化水素から過酢酸を調製する工程、
(b)前記過酢酸と天然ゴムラテックスを連続的に供給しながら混合する工程、
(c)混合した液を連続的に(d)工程へ輸送する工程、および、
(d)エポキシ化天然ゴムラテックスを凝固させる工程
を含み、少なくとも(c)工程において前記天然ゴムラテックスをエポキシ化する改質天然ゴムの製造方法。
【請求項7】
(b)工程において、前記過酢酸と前記天然ゴムラテックスを流路内で混合することを特徴とする請求項6に記載の改質天然ゴムの製造方法。
【請求項8】
(b)工程において、前記過酢酸と前記天然ゴムラテックスを各々容器内に供給し、容器内で混合することを特徴とする請求項6または7に記載の改質天然ゴムの製造方法。
【請求項9】
(d)工程において、凝固後のゴムに残存する酸を塩基性物質により中和することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の改質天然ゴムの製造方法。
【請求項10】
(c)工程により輸送されてきたエポキシ化天然ゴムラテックスをタンクに貯めることなく、(d)工程を行うことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の改質天然ゴムの製造方法。
【請求項11】
前記天然ゴムラテックス中の乾燥ゴム分が5〜67重量%であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の改質天然ゴムの製造方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の製造方法で作られた改質天然ゴム。
【請求項13】
請求項12の改質天然ゴムを用いたタイヤ。

【公開番号】特開2009−293011(P2009−293011A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56018(P2009−56018)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】