説明

改質用小粒触媒ボールおよびこれを用いた改質対象物用改質具

【課題】より優れた改質効果を奏することができる触媒ボールおよびこれを用いた改質対象物用改質具の提供。
【解決手段】酸化アルミニウムにより形成されたコア球体の表面に対し、酸化により触媒機能を発揮する金属被膜を設け、さらに上層にその金属の酸素欠乏傾斜構造を有する被膜を設け、最上層は酸化被膜を設けた触媒ボール1を形成した。また、該触媒ボール1と多孔質セラミックボール32とを改質対象物である液体または気体中への出入が自在なスズメッキメタル容器体12内に適量収納して強い還元力の生成が自在な改質対象物用改質具11を形成し、改質対象物を効果的に改質できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン自動車等に用いられる液体燃料および灯油などの化石燃料やエンジン等から燃焼後に00排出される排ガスを改質対象物とし、該改質対象物を効果的に改質する改質用小粒触媒ボールおよびこれを用いた改質対象物用改質具に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
近時、化石燃料であるガソリンなどの液体燃料は、枯渇する傾向にあるため燃料代が高騰し、これを大量に使用する自動車の燃費改善策や、環境汚染対策が世界的な規模で喫緊の重要課題となってきている。
【0003】
このための方策の一つには、自動車に簡単な装置を取り付けて燃焼効率を向上させようとするものもある。この従来手法は、一酸化炭素や炭化水素等の排出を抑制するために燃料タンク内にセラミック等の改質材を投入し、該改質材の作用により燃費の向上や排ガス浄化を図るようにしたものであるが、作業が煩雑で例えば整備士資格を有する熟練者によらなければ行えないなどの問題があった。
【0004】
一方、作業を簡素化する観点からは、下記特許文献1に開示されている燃料改質装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−314385号公報
【0005】
上記特許文献1に開示されている燃料改質装置は、ステンレス製の弾性線材をスパイラル状に巻いて中空の筒状体を形成し、該筒状体内に固形小片(円柱状の特殊セラミック)からなる複数個の燃料改質材を収容するとともに、前記筒状体に可撓性を付与することで形成されている。
【0006】
このため、上記燃料改質装置は、途中に屈曲したり彎曲している給油パイプがあっても乗用車等が備える燃料タンク内に容易に設置することができるとされている。
【0007】
また、特許文献1に開示されている燃料改質装置との関係では、その改良品ともいうべき下記特許文献2に開示されている燃料改質具も既に提案されている。
【特許文献2】実用新案登録第3115958号公報
【0008】
上記特許文献2に開示されている燃料改質具は、特許文献1の燃料改質装置に用いられているセラミックの有効成分の割合を他の強度成分とバインダーとの割合に対し50%以上とすることが難しいために、所望する改質効果が必ずしも得られないという問題に鑑みてなされたものである。
【0009】
すなわち、特許文献2の燃料改質具は、炭素、アルミナ、シリカを主成分とする黒鉛珪石の原石を砕いてなる原石粒と、原石の粉末は通さないが燃料は通す布や織物からなり、その中に前記原石粒を詰めた通液袋と、該通液袋を保護するために囲う金属製コイルバネを含む金属製保護部材とで形成されている。
【0010】
そして、特許文献2の燃料改質具を燃料タンクに投入した場合には、その投入量にもよるがこれを投入しない場合に比較して16%〜37%の燃費を向上させることができたとしている。
【0011】
一方、燃料用オイルを電磁波応答型光触媒である二酸化チタンの光反応を利用して酸化したオイルを還元し浄化することにより高い燃焼効率を得ることが提案されている。
【特許文献3】実用新案登録第3086082号公報
【0012】
また、上述した二酸化チタンの光触媒とは異なり、金属成品またはセラミックまたはこれらの混合体からなる表面に、チタンまたはチタン合金からなる粉体を噴射して、その表面にチタニア(二酸化チタン)被膜を形成した光触媒コーティング成形物が提案されている。
【特許文献4】特許第3496923号公報
【0013】
さらに、前記した二酸化チタンの光触媒とは異なる形成方法が種々提案されている。
【特許文献5】特開2002−85981号公報
【特許文献6】特開2005−00782号公報
【0014】
特許文献5には、チタニア被膜をバインダ法やショットピーニング法などで形成する種々の方法が開示されており、表面から内部に向かって結合する酸素量が欠乏する酸素欠乏傾斜構造を有する被膜となることが開示されている。また、可視光等の紫外線よりも長波長の電磁波に対して応答性を有する光触媒被膜が得られ、酸化還元電位の評価により水道水の還元力を示しているほか、ストーブの消臭・完全燃焼の実施例も示されている。
【0015】
特許文献6には、チタニアなどの酸素欠乏傾斜構造の被膜をブラスト法や遊星ボールミル法により形成する方法が開示されている。そのことにより室内等の紫外線の照射を受け難い場所でも長波長の電磁波にも応答するため良好な光触媒機能を発揮する金属粉体が得られるとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来の特許文献1などによる燃料改質用固形改質部材は、特殊セラミック製の円柱状のものが用いられていたが、特殊セラミックの詳細が開示されていない点で判然としないほか、円柱状では改質対象物との接触効率が悪いなどの点から改質効率があまりよくないという不都合があった。
【0017】
また、特許文献2に開示されている燃料改質具は、炭素、アルミナ、シリカを主成分とする黒鉛珪石の原石を砕いてなる原石粒を通液袋に詰めた上で、金属製保護部材で囲って形成されている。しかし、原石粒にのみ改質効果が期待できるだけであり、通液袋や金属製保護部材からの改質効果を期待できないばかりでなく、通液袋の耐久性にも問題を残す不具合があった。
【0018】
また、特許文献3に開示されている二酸化チタンによる燃焼用オイル反応装置は、紫外線ランプを光触媒である二酸化チタン製金網、二酸化チタン製小球に照射するものであるが、ランプが必要であるばかりでなく、約2mmメッシュの二酸化チタン製金網の製造が極めて困難であることや、小球の二酸化チタンとオイルとの接触が効率が良くないことや、反応装置が大型になってしまうなどの点で課題があった。
【0019】
なお、特許文献4に開示されている簡易なブラスト処理でチタニア被膜を形成した光触媒コーティング成形物は、脱臭、抗菌、防汚といった分解機能および親水機能には優れているものの、燃料や燃焼ガスに対しての改質には不満足さを残すものであった。
【0020】
また、特許文献5に開示されている酸化チタン被膜の場合、TiOxは、X=2.00から1.95となることが示されているが、酸素欠乏傾斜構造の傾斜不足のためか、種々の改質対象物に対しての改質効果は不満足なものであった。また、光照射が不十分な場合も効果が低いものであった。ストーブに用いた例の場合は、酸化スズの被膜を直径8mmの球体に形成した光触媒コーティング組成物を投入しているが、どのように投入するのが適当か、光照射はどうするのか、酸化スズ被膜の酸素欠乏傾斜構造はどの程度か不明であり、同様効果を達成することが困難であった。
【0021】
さらに、特許文献6に開示されている光触媒粉体の場合、特許文献5とは異なり、衝突対象に溶融付着させるものではなく、粉体自体を酸化させるものである。したがって、被処理成品よりも表面積を多くできる利点はあるものの、特殊な製造装置を用いる欠点と粉体である欠点とがあった。不燃布などへの付与が可能としているものの、特に粉体の取り扱いが困難であった。
【0022】
本発明は、上記特許文献に開示されたそれぞれの開示技術を含む従来技術の課題に鑑み、より優れた改質効果を奏することができる改質用小粒触媒ボールおよびこれを用いた改質対象物用改質具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたもので、そのうちの第1の発明(触媒ボール)は、チタン、ジルコニア、ステンレス、タングステン等、もしくは石英ガラス、カーボン、酸化ジルコニア、メノー、アルミナ、セラミック、トルマリン、黒鉛珪石、希土類鉱石等の硬質で高融点である一種以上の小粒のコア球体の表面に対し、第1層にチタン膜を溶着させ、続く上層にチタン、マンガン、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、銀、タングステン等のイオン化傾向の高い金属の一種もしくは二種以上合金から成る化学量論比的組成(ストイキオメトリー)が酸素不足にずれた酸化被膜層を形成し、さらに続く上層に、該酸化被膜層よりさらに酸化された酸化被膜層を形成し、前記コア球体の外表面から下層に向かって酸素欠乏傾斜構造を有する境界のなだらかな多層からなる被膜を設けたことを最も主要な特徴とする。
【0024】
第2の発明(改質対象物用改質具)は、多孔質である小粒のセラミックボールまたはアルミウイスカ、ポーラス銀、トルマリン、黒鉛珪石、燐酸チタニア担体コートトルマリン(電気石)のいずれか一種以上を、もしくは、該一種以上と請求項1に記載の小粒の触媒ボールとを単一もしくは混合で改質対象物である液体または気体中への出入が自在なメタル容器体内に適量収納して強い還元力の生成を自在としたことを最も主要な特徴とする。
【0025】
このうち、前記メタル容器体は、複数本の極細銅線もしくは複数本のステンレスの極細線を帯状に束ねた帯状線材を平編みして編成された袋状平編み線からなるメタルネットとして形成することができる。そして、該メタルネットを前記極細銅線で構成している場合には、スズメッキを施しておくのが好ましい。
【0026】
また、前記メタル容器体は、ニッケルメッキが施されたステンレスパンチングメタルにより形成されたメタル筒として形成することもできる。この場合、該メタル筒には、ニッケルメッキの上層にスズメッキを施しておくのが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る第1の発明によれば、触媒ボールは、改質対象物と接触する面に金属被膜と酸素欠乏傾斜構造と金属酸化被膜との境界のなだらかな被膜でイオン化傾向の高い多層構造を備えているので、とりわけ強力な触媒効果を発揮させてやることができる。
【0028】
請求項2に係る第2の発明によれば、小粒の多孔質セラミックボールなどと上記小粒の多層膜の触媒ボールとを単一もしくは混合で改質対象物である液体または気体中への出入が自在なメタル容器体内に収納してあるので、混合した場合、多孔質のセラミックボールなどが発する高周波の電磁波に反応して暗所でも触媒ボールに触媒効果を発揮させることができ、また、小粒としたため改質対象部材との接触面積を増大せしめて触媒効果を十分発揮させることができ、強い還元力を生成することができる。
【0029】
また、請求項3に係る第2の発明によれば、メタル容器体が複数本のステンレスなどの極細線を帯状に束ねた帯状線材を平編みして編成されたメタルネットで形成されているので、例えば自動車の燃料タンクに容易に投入することができ、燃料油をフリーラジカルが消去された小さな分子(クラスター分解)とすることで、酸素と結合しやすい小さな霧状にして完全燃焼させることができる。また、メタルネットは、極細銅線の場合スズメッキを施した帯状線材により編成されているので、該スズメッキが酸化スズとなることで酸化チタンと略同等の触媒効果および半導体特性を有することから、高い酸化分解、還元力を付与するとともに、セラミックボールと触媒ボールとの相乗効果もあってより優れた燃費の向上、有害な排気ガスの削減、および馬力・トルクアップを実現することができる。
【0030】
請求項4に係る第2の発明によれば、メタル容器体は、ニッケルメッキが施されたステンレスパンチングメタルにより形成されたメタル筒として形成されているので、例えば温風ヒータなどの燃料である灯油(液体)のための予備タンクとして用意される例えばポリタンク内に投入しておくことで、燃料が改質されて燃費の向上と有害な排気ガスの削減とを実現することができる。また、メタル筒には、下層のニッケルメッキの上層にスズメッキが施されているので、該スズメッキが酸化スズとなることで酸化チタンと略同等の触媒効果および半導体特性を有することから、高い酸化分解、還元力を付与するとともに、セラミックボールと触媒ボールとの相乗効果もあってより優れた燃費の向上と有害な排気ガスの削減とを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明のうちの第1発明の断面構造例を模式的に示す説明図であり、触媒ボール1の全体は、酸化アルミニウム(アルミナ)により形成されたコア球体2と、該コア球体2の表面に金属被膜と酸化とにより触媒機能を発揮する金属被膜とを酸素欠乏傾斜構造を有する被膜として溶着させた1μm程度の薄い多層被膜層3とで形成されている。
【0032】
このうち、コア球体2は、直径が2〜10mm程度の小粒の焼結球として形成されており、触媒担体としての機能を担っている。コア球体2は、チタン、ジルコニア、ステンレス、タングステン等、もしくは石英ガラス、カーボン、酸化ジルコニア、メノー、アルミナ、セラミック、トルマリン、黒鉛珪石、希土類鉱石等の硬質で高融点である一種以上の非多孔質の小粒とすることができる。また、コア球体2の表面に対し、第1層にチタン膜を溶着させ、続く上層にチタン、マンガン、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、銀、タングステン等のイオン化傾向の高い金属の一種もしくは二種以上合金から成る化学量論比的組成(ストイキオメトリー)が酸素不足にずれた酸化被膜層を形成し、さらに続く上層に、該酸化被膜層よりさらに酸化された酸化被膜層を形成し、コア球体2の外表面から下層に向かって酸素欠乏傾斜構造を有する境界のなだらかな多層からなる被膜層3を設ける。
【0033】
コア球体2の表面に形成される被膜層3は、例えばブラスト法と呼ばれる方法では、例えば、金属粉体としてチタン粉末が用いられ、25Gの重力を加えた際の衝撃・衝突で瞬間的に発生する摂氏1500度以上の熱で焼結させることで形成されている。
【0034】
しかも、被膜層3は、内層から外層に向かって例えばTi(内層3a)→TiO(中間層3b)→TiO(外層3c)という、内部に行くにつれて酸素欠乏状態となる傾斜構造を有する境界のなだらかな少なくとも3層の多層構造の被膜となっている。
【0035】
チタンの場合、内層3aは、イオンプレーティング法で被着することができるが、酸化性のない状態の例えばブラスト法でも形成でき、同一装置内で酸素導入量の制御のもと連続形成することができる。また、酸化チタンは、TiOxのX=2(二酸化チタン)が化学量論比的組成物(ストイキオメトリー)の酸化物であるが、被膜形成処理する際の雰囲気の酸素の導入量により酸素不足にずれたXが2以下のチタン酸化膜層を形成することができ、最上層を二酸化チタンに連続形成することができる。
【0036】
したがって、被膜層3は、その酸素欠乏傾斜構造により通常の酸化チタンの1000倍程度の触媒効果を発揮させることができるだけでなく、光のない暗所においても触媒効果を発揮させることができる特性を備えることになる。
【0037】
このような特性を備える触媒ボール1は、直径aの小さなコア球体2を多量に使用することで表面積の合算総量を大きくして触媒効果を高めることができる。しかし、コア球体2の直径aをあまりにも小さくする場合には、後述するメタル容器体12としてのメタルネット13の通常時におけるネット隙間が3〜4mmであることを考慮すると、こぼれ落ちないように5mm以上とする小粒が望ましい。なお、触媒ボールの酸化被膜としては、チタン以外にイオン化傾向の高い金属で還元力が特に優れて触媒力のある単体としてのマンガン、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、銀、タングステン、ジルコニア、白金、ゲルマニウム、ロジウム、インジウム等のほか、チタン1に対しマンガン1、もしくはモリブデン1に対しコバルト1の重量比配分で混合して形成された酸化合金被膜のものも所望に応じ用いることができる。また、触媒ボール1の被膜層3の形成方法は、前述のショットピーニング法と呼ばれるブラスト法やイオンプレーティング法ばかりでなく、他に回転バレル法、遊星ボールミル法なども取扱い方法の優劣と、処理能力と製造コストにも優劣があるものの、ともに採用することができる。
【0038】
図2は、本発明にあって第2発明を構成しているメタル容器体の一例についての説明図であり、そのうちの(a)は自動車の燃料タンクへの投入用として形成されたものについての全体図を、(b)はその部分拡大図をそれぞれ示す。
【0039】
同図によれば、メタル容器体12は、線径が0.12〜1mm程度の複数本の極細銅線14aを例えば10本前後帯状に束ねた帯状線材14を編成してなる袋状平編み銅線(例えば、田中伝染株式会社製:素線径0.12mm、素線数480本、計算表面積5.429mm、撚り線径7.00mm×1.0mmの商品名「TBC5.5SQ」)を用いたメタルネット13として形成されている。
【0040】
また、各極細銅線14aには、酸化を防止するためにスズメッキが施されており、該スズメッキが酸化スズとなることで酸化チタンと略同等の触媒効果および半導体特性を有することから、高い酸化分解、還元力を付与することができる。
【0041】
しかも、メタルネット13は、袋状平編み銅線を用いて形成されていることから、その表面積を大幅に増やすことができる結果、スズによる触媒効果もそれだけ増大させることができることになる。極細銅線以外では、複数本のステンレスの極細線を帯状に束ねた帯状線材を平編みして編成された袋状平編み線からなるメタルネットとして形成した場合も、メッキ無しで耐久性と同時に同様効果を得ることができる。
【0042】
メタルネット13は、横幅Wが10〜25mm程度で、図3に示すように奥行きD(確保される空間の奥行き)が8〜15mm程度で、全長Lが200〜700mm程度あり、その長さ方向での両端を開口させたネット本体16として形成されている。具体的には、乗用車が備える燃料タンクへの投入用であれば、横幅Wが25mm以下、全長Lが300mm以下、トラックが備える大型の燃料タンクであれば、横幅Wが25mm以下、全長Lが700mm以下とするのが望ましい。なお、メタルネット13の奥行きD(確保される空間の奥行き)は、燃料タンクのエア抜き弁が塞がれて燃料が逆流して給油口から噴出することがないように、15mm以内であることが望ましい。
【0043】
そして、メタルネット13は、ネット本体16の一方の開口側に一側封口金具16をかしめ止着することで封口しておき、他方の開口側から小粒の触媒ボール1と小粒の多孔質なセラミックボール32とを図3に示すように適量収納させた上で、これも他側封口金具17をかしめ止着することで封口して外部に漏れ出さないようにして収納しておくことができる。
【0044】
メタルネット13内に触媒ボール1とともに収納される小粒の多孔質セラミックボール32は、直径bが2〜10mm程度、好ましくは5mm前後でマイナスイオンを多量(1500〜15000ion)に発生する鉱石(電気石鉱石)の焼結球として形成するのが望ましい。さらに、セラミックボール32は、暗所においても触媒ボール1の触媒効果を高めることができるように、ガンマー線を発生させる希土類鉱石や、遠赤外線を発生させる鉱石などのような高周波の電磁波を多く発生させる焼結球として形成するのが望ましい。例えば、リン酸チタニア化合物に小粒の多孔質セラミックを漬け込み、窯内で摂氏300度で1時間焼成し、コーティングして得られる粒径が5〜10mmのものが好ましい。その他、アルミウイスカ、ポーラス銀、トルマリン、黒鉛珪石、燐酸チタニア担体コートトルマリン(電気石)なども同様な効果があり、多孔質である小粒のセラミックボールおよび燐酸チタニア化合物の被覆した小粒の多孔質セラミック、アルミウイスカ、ポーラス銀、トルマリン、黒鉛珪石、燐酸チタニア担体コートトルマリン(電気石)のいずれか一種以上を、もしくは、該一種以上と前述した小粒の触媒ボール1とを単一もしくは混合でメタルネット13内に収納することが好ましい。
【0045】
本発明にあって第2の発明を構成しているスズメッキ平編みネット(メタルネット13)と小粒の多孔質セラミック(セラミックボール32)と小粒の触媒ボール1との相乗効果は、改質効果を最大限に発揮する。小粒の触媒ボール1と小粒の多孔質セラミック(セラミックボール32)とは、このような関係にあることから、例えば前者を5とするときに後者が1となる比率のもとで混入するなど、用途に応じて前者の混入比率を後者よりも高くした適宜比率のもとで混入されることになる。
【0046】
触媒ボール1とセラミックボール32とが収納されて封口されたメタルネット13は、その他側封口金具17に設けられた透孔17aを利用して図4に示すように1m前後の長さのワイヤー18が連結されている。該ワイヤー18は、その開放端側に掛止リング19を備えており、改質対象物が液体である自動車用のガソリン燃料であれば、ガソリンタンクが備える給油口側に掛止リング19を掛止して安定的に配置することができる。
【0047】
図5は、温風ヒータなどの燃料である灯油(液体)のための予備タンクとして用いられる例えばポリタンク内に投入するメタル筒23としてメタル容器体12が形成されている場合の全体形状例を示す説明図である。
【0048】
同図によれば、メタル筒23は、ニッケルメッキが施されたステンレスパンチングメタルにより円筒状とし、さらにスズメッキを施すことでその全体が形成されている。メタル筒23は、口径が20mm前後で、長さが200mm前後のサイズが付与されて形成されている。
【0049】
この場合、メタル筒23は、その基端開口側を同じ材質で形成された蓋体25で施蓋した上で、図3に示す例と同様に小粒の触媒ボール1と小粒の多孔質セラミックボール32とを適量収納し、しかる後に頂端開口側も同様に同じ素材で形成された蓋体26を用いて施蓋することで形成されている。
【0050】
メタル筒23が備える多数の通孔24は、収納される小粒の触媒ボール1および小粒のセラミックボール32の直径a,bよりも小径でこぼれない適宜口径、例えば触媒ボール1とセラミックボール32との直径が2〜10mm程度であれば、1.5〜9mm程度の口径のもとで形成されることになる。
【0051】
次に、本発明の作用・効果を第1の発明について説明すれば、触媒ボール1における被膜層3は、例えば、Ti(内層3a)→TiO(中間層3b)→TiO(外層3c)という、内部に行くにつれて酸素欠乏状態となる傾斜構造を有する境界のなだらかな3層被膜として形成されていることから、その酸素欠乏傾斜構造により通常の酸化チタンの1000倍程度の触媒効果を発揮させることができることになる。また、スズメッキされたメタル筒23の酸化スズと、多孔質セラミックボール32との相乗効果により、高周波の電磁波の効果が強化されると考えられ、光のない暗所においても、被膜層3の触媒効果を高めて発揮させることができる。
【0052】
一般に酸化チタンには、鉱物としてルチル、アナターゼ、ブイルカットの3つが存在する。このうちルチルが安定形で、アナターゼ、ブイルカットは、およそ摂氏900度以上の温度でルチルに転移し、この転移は不可逆的である
【0053】
従来からある酸化チタンは、光触媒効果を得るためにアナターゼ型の粉末を20ナノレベルの微粒子にし、紫外線(388nm前後)を照射することが必要であった。また、酸化チタンと別の物質をドープし紫外線(388nm前後)以外の400〜800nmの可視光領域の光を照射し、それに応答する触媒技術も既に実用化されている。しかし、これまでの光触媒では、紫外線、可視光線の光を微量ではあっても必要とし、燃料タンクなどのような暗所で触媒効果を発揮させることは不可能であった。
【0054】
しかし、触媒ボール1は、既に説明したように紫外線および可視光線のような光がない場所でも触媒効果を発揮させることができる。触媒ボール1は、上記アナターゼ型の酸化チタンとは異なる結晶構造をもつ。酸化チタンのルチルの融点は、摂氏1855度であるが、摂氏1500度以上の温度では次第に酸素を失い、白色から黒色へと変化する。この黒色を帯びた焼結体は、酸素濃度に応じた半導体の性質を示す。
【0055】
触媒ボール1は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、トルマリン、希土類鉱石等から精製された非多孔質のセラミックボールや、鉄、チタン、ステンレススチール、アルミニウム等の金属ボールのいずれか1種、もしくは複数種類を混合させたコア球体2とチタン粉末とを、25Gの重力を加えると同時に生ずる衝撃、衝突により瞬間的に発生する摂氏1500度以上の熱により、例えばチタン等の金属を溶着させることで形成されている。その結果、コア球体2の表面には、黒色とシルバー色とが混じったチタン薄膜が被膜層3として溶着される。該チタン薄膜は、チタン酸化物であることから、上記半導体の性質を示すものと推測される。
【0056】
なお、被膜層3を形成するにあたっては、従来のように酸化チタンなどに貴金属を混入させると、触媒の効果が向上することは同様に期待できるものである。
【0057】
次に、第2の発明である改質対象物用改質具の作用・効果を、図2および図3に示す改質対象物用改質具11を例に説明すれば、該改質対象物用改質具11は、ガソリン燃料タンク内にその給油口から投入して使用される。
【0058】
しかも、改質対象物用改質具11は、掛止リング19付きのワイヤー18と連結されているので、掛止リング19を給油口側に掛止させることで、取り出し自在にガソリン燃料タンク内に投入しておくことができる。
【0059】
投入された改質対象物用改質具11は、メタルネット13内に触媒ボール1とセラミックボール32とを適量収納することで形成されているので、遠赤外線(1〜1000nm)、ガンマー線(10pm以下)などの可視光領域以外の波長にも応答する触媒ボール1が、混在させてあるセラミックボール32に含まれる希土類鉱石等から発する微弱なガンマー線および遠赤外線に応答する。その結果、触媒ボール1は、さらに高い触媒効果を発揮することになる。また、セラミックボール32から発せられる高周波の電磁波に対し、触媒ボール1とこれが収納されているメタルネット13のスズメッキ(酸化スズ)とが応答し、相乗的となって高い触媒効果を発揮するに至る。つまり、改質対象物用改質具11は、燃料タンクなどの暗所においても触媒ボール1とセラミックボール32とメタルネット13とが三位一体となって優れた燃料改質機能を発揮できることになる。
【0060】
また、セラミックボール32は、多孔質な焼結体であることから燃料をその中心部にまで侵入させることができるほか、体積が大きいほどガンマー線や遠赤外線のみならず、マイナスイオンをもより多く発生させることができる。
【0061】
さらに、メタルネット32自体は、酸化を防止するためにスズメッキが施された極細銅線14aを束ねた上で、袋状に平編みすることで編成されているので、その表面積を大幅に増やすことができる。その結果、メタルネット13は、スズによる触媒効果をそれだけ増大させてやることができるほか、酸化スズとなることで還元効果が高めることができる。
【0062】
表1は、図2および図3に示す第2の発明である改質対象物用改質具11と、比較例である単体としてのチタンコーティングセラミック、トルマリン、チタンボール、メタルネット13に用いたスズメッキ平編み銅線、アルミウイスカ、ポーラス銀とについての酸化還元電位についての常温暗所保管の実験結果を示すものである。
【0063】
【表1】

【0064】
上記表1によれば、実験前の各試料水の酸化還元電位は288mvであった。この試料水中に本発明に係る改質対象物用改質具(実施例)、チタンコーティングセラミック(比較例1)、マイナスイオンボールであるトルマリンボール(比較例2)、チタンボール(比較例3)、スズメッキ平編み銅線(比較例4)、アルミウイスカ(比較例5)およびポーラス銀(比較例6)を各別に投入して実験が行われた。1日経過後の試料水の酸化還元電位は、改質対象物用改質具(本発明品)が−118mvであったのに対し、チタンコーティングセラミックが197mv、トルマリンボールが197mv、チタンボールが125mv、スズメッキ平編み銅線が164mv、アルミウイスカが102mv、ポーラス銀が213mvであった。また、2日経過後は、改質対象物用改質具(本発明品)が−114mvであったのに対し、チタンコーティングセラミックが153mv、トルマリンボールが207mv、チタンボールが116mv、スズメッキ平編み銅線が132mv、アルミウイスカが85mv、ポーラス銀が135mvであった。
【0065】
一般に、酸化還元電位は、400mv以上が酸化領域であり、300mv以下が還元領域であり、400〜300mv前後がその境界領域であるとされている。
【0066】
このことからすれば、実施例である本発明に係る改質対象物用改質具11は、各比較例に比べても圧倒的に還元力の強いことが判明し、その効果を確認することができた。
【0067】
表2は、2000ccクラスの乗用車の燃料タンク内に単にレギュラーガソリンを入れた未改質ガソリンの例と、図2および図3に示す改質対象物用改質具11に用いられる表2に示した改質物質をレギュラーガソリン入りの燃料タンク内に投入した例とのそれぞれを場合分けして示す高速度走行燃費計測実験結果である。燃費計測時における乗用車は、一定の走行速度(80km前後)で走行させた。
【0068】
【表2】

【0069】
比較例1は、アルミナの小球にチタン、モリブデン、コバルトの小球を混合して1層の酸化金属被膜を形成した場合で、比較例2と比較例3とは、アルミナボールに1層目にチタン被膜を形成し、2層目にマンガンもしくは銀の被膜を形成し、3層目にそれぞれの酸化金属被膜を形成した場合である。温度差のためか効果にばらつきがあるものの、表2によれば、改質物質を投入したガソリンの燃費は、未改質ガソリンの燃費に比べいずれも向上していることが確認された。したがって、表1の単品の改質効果よりも表2で示す被膜付きが効果が高く、特に2層、3層となった場合が効果が高いことが確かめられた。
【0070】
一方、図5に示す改質対象物用改質具11を用いて、アルミナボールに1層目にチタン被膜を形成し、2層目にコバルトとモリブデンとを等量混合して被膜を形成し、3層目にその酸化被膜を形成した触媒ボール1を改質具11に入れて改質した灯油(実施例)を用いた場合と、これを用いない灯油(比較例)とについてのファンヒーターによる燃焼実験を行った。実験方法は、ファンヒーターの設定温度と燃焼運転時間などを表3に示すように変えて実験を行った。その際における実験環境は、部屋が木造6畳の洋室であり、エアコン設定温度が摂氏18度、エアコン風量が「強」と強制的に冷却状態とした。ファンヒーターは、ダイニチ社製の「ブルヒーター(FW−252E,7畳用2.5kw)」を用いた。
【0071】
実験結果は、表3で差として示されているが、改質した灯油を用いた場合の消費量が改質しない灯油を用いた場合の消費量よりもいずれも少なくなっており、第2回目の例での差は370cc、燃費削減率が48.5%という驚くべき結果を得ることができ、燃費を大幅に向上できることが確認された。
【0072】
表3は、上記実験結果の詳細を示す表であり、1回目から4回目まで実験条件を変えて行ったが、灯油タンクの入れ替え時の計測誤差を含んではいるものの、いずれの条件においても比較例よりも実施例の方が大幅に燃費を向上でき、特に2回目に行った3時間の効果が優れ、長時間にわたる使用の場合の効果が顕著であることが確認された。
【0073】
【表3】

【0074】
また、表4は、図5に示す改質対象物用改質具11を用いて、改質材を1日ポリタンクに投入して改質した灯油(実施例)を用いた場合と、これを用いない灯油(比較例)とを用いて上記ファンヒータの設定温度を摂氏24度にし、エアコンを用いない場合の試験結果を示す。
【0075】
【表4】

【0076】
表4によれば、スタート時の摂氏21.6度の室温は、改質後の灯油が30分経過後に摂氏25.7度となったのに対し、改質前の灯油が30分経過後に摂氏25.0度に止まったほか、前者の燃料使用量が42g/30分であったのに対し、後者の燃料使用量が52g/30分であり、燃料消費量が10g/30分節減でき、燃料消費削減効果が23.8%であることが確認された。
【0077】
以上は、本発明を主に自動車用の燃料タンクに投入される改質対象物用改質具を例に説明してきたが、その具体的構成はこれに限定されるものではない。例えば、改質対象物用改質具は、設置箇所により種々の利用ができ、例えば排ガス系に設置した場合、排ガスを改質するためにも用いることができる。灯油ファンヒータの灯油の改質実験結果によれば、非改質灯油の場合、排気ガス中のプラスイオンがマイナスイオンより多いのに対し、改質灯油を用いた場合の排気ガスはマイナスイオンが止まっており排気ガスの環境上の効果があることも確認しており、燃料の改質のみならず、積極的に排気ガスにさらした場合の効果も期待できる。この場合、メタル容器体12は、瞬時における排気ガスとの広い接触面積を確保する観点からハニカム構造などの収納体のもとで、改質ボールや多孔質セラミックスの小粒の粒径を適宜選択し、また、空間確保のため網目中空ボールを混入させて接触距離を選択するなど、排気コンダクタンスを落とさない構造を採用することなどで、NOxを還元すると同時にCO,HCとも安定な酸化物にできる、有害三成分を無害化できる三元触媒効果なども達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のうち、第1の発明の断面構造例を模式的に示す説明図。
【図2】第2発明を構成しているメタル容器体の一例を示す説明図であり、そのうちの(a)は全体図を、(b)は部分拡大図をそれぞれ示す。
【図3】第2発明の構造例を模式的に示す説明図であり、そのうちの(a)は長さ方向に沿わせた断面図を、(b)は(a)とは直交する方向での断面図をそれぞれ示す。
【図4】第2発明の全体構成例を模式的に示す説明図。
【図5】第2発明の他例をその一部を切り欠いて示す全体説明図。
【符号の説明】
【0079】
1 触媒ボール
2 コア球体
3 被膜層
3a 内層
3b 中間層
3c 外層
11 改質対象物用改質具
12 メタル容器体
13 メタルネット
14 帯状線材
14a 極細銅線
15 ネット本体
16 一側封口金具
17 他側封口金具
17a 透孔
18 ワイヤー
19 掛止リング
23 メタル筒
24 通孔
25,26蓋体
32 セラミックボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、ジルコニア、ステンレス、タングステン等、もしくは石英ガラス、カーボン、酸化ジルコニア、メノー、アルミナ、セラミック、トルマリン、黒鉛珪石、希土類鉱石等の硬質で高融点である一種以上の小粒のコア球体の表面に対し、第1層にチタン膜を溶着させ、続く上層にチタン、マンガン、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、コバルト、スズ、銀、タングステン等のイオン化傾向の高い金属の一種もしくは二種以上合金から成る化学量論比的組成(ストイキオメトリー)が酸素不足にずれた酸化被膜層を形成し、さらに続く上層に、該酸化被膜層よりさらに酸化された酸化被膜層を形成し、前記コア球体の外表面から下層に向かって酸素欠乏傾斜構造を有する境界のなだらかな多層からなる被膜を設けたことを特徴とする触媒ボール。
【請求項2】
多孔質である小粒のセラミックボールまたはアルミウイスカ、ポーラス銀、トルマリン、黒鉛珪石、燐酸チタニア担体コートトルマリン(電気石)のいずれか一種以上を、もしくは、該一種以上と請求項1に記載の小粒の触媒ボールとを単一もしくは混合で改質対象物である液体または気体中への出入が自在なメタル容器体内に適量収納して強い還元力の生成を自在としたことを特徴とする改質対象物用改質具。
【請求項3】
前記メタル容器体は、スズメッキが施された複数本の極細銅線もしくは複数本のステンレスの極細線を帯状に束ねた帯状線材を平編みして編成された袋状平編み線からなるメタルネットである請求項2に記載の改質対象物用改質具。
【請求項4】
前記メタル容器体は、下層にニッケルメッキが施され、上層にスズメッキが施されたステンレスパンチングメタルにより形成されたメタル筒である請求項2に記載の改質対象物用改質具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−201278(P2010−201278A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347178(P2006−347178)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(506325135)株式会社GOJO (1)
【Fターム(参考)】