説明

改質着色剤及び当該改質着色剤を含むインクジェットインク組成物

本発明は、少なくとも1つのポリマーが結合又は吸着した着色剤を含む改質着色剤に関する。当該ポリマーは少なくとも1つの官能基を含み、この官能基の種々の実施態様が開示される。これらの実施態様のそれぞれについて、好ましくはこの官能基は規定のカルシウム指数値を有する。これらの改質着色剤のための種々の用途、例えば、インクジェットインク組成物がさらに開示される。したがって、本発明はさらに、a)液体ビヒクルと、b)少なくとも1つの着色剤と、c)明細書に記載の少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのポリマーとを含むインクジェットインク組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の改質着色剤及びこれらの改質着色剤を含むインクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料の表面は種々の異なる官能基を含有し、存在する基の種類は顔料の特定のクラスに依存する。これらの顔料の表面に、物質、特にポリマーをグラフト(接ぎ木)するためにいくつかの方法が開発されている。例えば、フェノールやカルボキシル基のような表面基を含有するカーボンブラックに、ポリマーを付着できることが証明されている。しかし、必ずしもすべての顔料が同じ特定の官能基を有する訳ではないため、顔料の表面の固有の官能基に頼る方法は一般的に利用できない。
【0003】
顔料に種々の異なる結合官能基を提供する改質顔料製品の調製法も開発されている。例えば、米国特許第5,821,280号明細書は、顔料への有機官能基の結合法(例えば、有機基がジアゾニウム塩の一部であるジアゾニウム反応による結合を含む)を開示する。
【0004】
改質顔料を調製するための他の方法(結合ポリマー基を含む)も記載されている。例えば、国際公開第01/51566号パンフレットは、第1の化学基と第2の化学基とを反応させて第3の化学基が結合した顔料を生成することにより、改質顔料を作成する方法を開示する。これらの顔料を含有するインク組成物(インクジェットインクを含む)も記載されている。さらに米国特許第5,672,198号明細書、同第5,922,118号明細書、同第6,042,643号明細書、及び同第6,641,656号明細書は、種々の結合基(ホスホン酸基を含む)を有する改質顔料を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの方法は、結合基を有する改質顔料を提供するが、インクジェットインクのような組成物において改良された性能を有し、従って従来の改質顔料に対して有利な代替物となる改質顔料に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つのポリマー基が結合した着色剤を含む改質着色剤であって、該ポリマー基が少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む改質着色剤に関する。第1の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含み、好ましくは少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む。第2の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのヒドロキサム酸基又はその塩を含む。第3の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのOH基を有する少なくとも1つの複素環基又はその塩を含む。第4の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのホスホン酸基又はその塩、及び少なくとも1つの第2のイオン基、イオン化可能な基又は塩基性基を含む。第5の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基又はその塩を含む。第6の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのニトロソ基と少なくとも1つのOH基を有するアリール基又はその塩を含む。第7の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのOH基、少なくとも1つのNH2基、又は少なくとも1つのOH基と少なくとも1つのNH2基を有するアゾアレーン基を含み、かつ式Ar1−N=N−Ar2を有し、式中、Ar1及びAr2は同じであるか又は異なることができ、それらはアリーレン基又はアリール基であり、Ar1又はAr2の少なくとも一方はアリーレン基である。第8の実施態様では、官能基は、少なくとも2つのカルボン酸基、好ましくは少なくとも3つのカルボン酸基を含むアリール基又はアルキル多酸基を含む。有機基は、好ましくはフェニルホスホン酸のカルシウム指数値よりも大きなカルシウム指数値を有し、より好ましくは1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値よりも大きなカルシウム指数値を有する。
【0007】
本発明はさらに、ポリマー基とは異なる第2の有機基をさらに含む本明細書に記載の改質着色剤に関する。第2の有機基は、少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含むことができる。また、第2の有機基はポリマー基であることができる。
【0008】
本発明はさらに、a)液体ビヒクルと、b)少なくとも1つの着色剤と、c)本明細書に記載の少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのポリマーとを含むインクジェットインク組成物に関する。ポリマーは別個の添加物であることができるか又はそれは着色剤上に結合若しくは吸着することができ、例えば、コーティングであることができる。インクジェットインク組成物は、有機基とは異なる第2の有機基、例えば、少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方が結合した顔料を含む第2の改質顔料をさらに含むことができる。また、第2の有機基はポリマー基であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ポリマーが結合又は吸着した改質着色剤、並びに着色剤とこれらのポリマーを含むインクジェットインク組成物に関する。
【0010】
本発明の改質着色剤は着色剤とポリマーを含む。ポリマーは、着色剤上のコーティングであることができるか、又は着色剤に結合することができる。着色剤は、当業者に公知の任意の着色剤、例えば、(可溶性着色剤である)染料又は(不溶性着色剤である)顔料であることができる。好ましくは、着色剤は有機着色剤又は炭素質顔料であり、顔料又は分散染料(これは溶媒中で可溶性であるが水に不溶性である)である。顔料が最も好ましい。
【0011】
染料は当業者に公知の任意のものであることができ、特には少なくとも1つの有機基が結合したものであることができる。したがって、染料は、酸性染料、塩基性染料、直接染料、分散染料又は反応性染料から選択される。異なる色合を出すために染料の組み合わせも使用される。酸性染料の例には、特に限定されないが、アシッドレッド18(Acid Red 18)、アシッドレッド27(Acid Red 27)、アシッドレッド52(Acid Red 52)、アシッドレッド249(Acid Red 249)、アシッドレッド289(Acid Red 289)、アシッドブルー9(Acid Blue 9)、アシッドイエロー23(Acid Yellow 23)、アシッドイエロー17(Acid Yellow 17)、アシッドイエロー23(Acid Yellow 23)及びアシッドブラック52(Acid Black 52)がある。塩基性染料の例には、特に限定されないが、ベーシックレッド1(Basic Red 1)、ベーシックブルー3(Basic Blue 3)及びベーシックイエロー13(Basic Yellow 13)がある。直接染料の例には、特に限定されないが、ダイレクトレッド227(Direct Red 227)、ダイレクトブルー86(Direct Blue 86)、ダイレクトブルー199(Direct Blue 199)、ダイレクトイエロー86(Direct Yellow 86)、ダイレクトイエロー132(Direct Yellow 132)、ダイレクトイエロー4(Direct Yellow 4)、ダイレクトイエロー50(Direct Yellow 50)、ダイレクトイエロー132(Direct Yellow 132)、ダイレクトイエロー104(Direct Yellow 104)、ダイレクトブラック170(Direct Black 170)、ダイレクトブラック22(Direct Black 22)、ダイレクトブルー199(Direct Blue 199)、ダイレクトブラック19(Direct Black 19)及びダイレクトブラック168(Direct Black 168)がある。反応性染料の例には、特に限定されないが、リアクティブレッド180(Reactive Red 180)、リアクティブレッド31(Reactive Red 31)、リアクティブレッド29(Reactive Red 29)、リアクティブレッド23(Reactive Red 23)、リアクティブレッド120(Reactive Red 120)、リアクティブブルー49(Reactive Blue 49)、リアクティブブルー25(Reactive Blue 25)、リアクティブイエロー37(Reactive Yellow 37)、リアクティブブラック31(Reactive Black 31)、リアクティブブラック8(Reactive Black 8)、リアクティブグリーン19(Reactive Green 19)及びリアクティブオレンジ84(Reactive Orange 84)がある。他のタイプの染料、例えば、イエロー104(Yellow 104)及びマゼンタ377(Magenta 377)を使用することもできる。
【0012】
顔料は、当業者が通常使用する任意のタイプの顔料、例えば、黒色顔料及び他の着色顔料、例えば、青色顔料、黒色顔料、褐色顔料、青緑色顔料、緑色顔料、白色顔料、紫色顔料、赤紫色顔料、赤色顔料、橙色顔料又は黄色顔料であることができる。異なる顔料の混合物を使用することもできる。黒色顔料の代表例には、種々のカーボンブラック(ピグメントブラック7(Pigment Black 7))、例えば、チャネルブラック、ファーネスブラック、ガスグラック及びランプブラックがあり、例えば、Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)及びVulcan(登録商標)の商標でキャボット・コーポレイションから販売されているカーボンブラック(例えば、Black Pearls(登録商標)2000、Black Pearls(登録商標)1400、Black Pearls(登録商標)1300、Black Pearls(登録商標)1100、Black Pearls(登録商標)1000、Black Pearls(登録商標)900、Black Pearls(登録商標)880、Black Pearls(登録商標)800、Black Pearls(登録商標)700、Black Pearls(登録商標)570、Black Pearls(登録商標)L、Elftex(登録商標)8、Monarch(登録商標)1400、Monarch(登録商標)1300、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標)660、Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)400、Vulcan(登録商標)P)がある。適切なクラスの着色顔料には、例えば、アントラキノン類、フタロシアニンブルー類、フタロシアニングリーン類、ジアゾ類、モノアゾ類、ピラントロン類、ペリレン類、複素環イエロー類、キナクリドン類、キノロノキノロン類、及び(チオ)インジゴイド類がある。かかる顔料は、粉末型又はプレスケーキ型で多くの業者、例えば、BASF Corporation、Engelhard Corporation、Sun Chemical Corporation、Clariant及びDianippon Ink and Chemicals(DIC)から販売されている。他の適切な着色顔料の例は、Colour Index、第3版(The Society of Dyers and Colourists,1982)に記載されている。好ましくは、顔料は、青緑色顔料、例えば、ピグメントブルー15(Pigment Blue 15)又はピグメントブルー60(Pigment Blue 60)、赤紫色顔料、例えば、ピグメントレッド122(Pigment Red 122)、ピグメントレッド177(Pigment Red 177)、ピグメントレド185(Pigment Red 185)、ピグメントレッド202(Pigment Red 202)又はピグメントバイオレット19(Pigment Violet 19)、黄色顔料、例えば、ピグメントイエロー74(Pigment Yellow 74)、ピグメントイエロー128(Pigment Yellow 128)、ピグメントイエロー139(Pigment Yellow 139)、ピグメントイエロー155(Pigment Yellow 155)、ピグメントイエロー180(Pigment Yellow 180)、ピグメントイエロー185(Pigment Yellow 185)、ピグメントイエロー218(Pigment Yellow 218)、ピグメントイエロー220(Pigment Yellow 220)又はピグメントイエロー221(Pigment Yellow 221)、橙色顔料、例えば、ピグメントオレンジ168(Pigment Orange 168)、緑色顔料、例えば、ピグメントグリーン7(Pigment Green 7)又はピグメントグリーン36(Pigment Green 36)、又は黒色顔料、例えば、カーボンブラックである。
【0013】
窒素吸着により測定すると、顔料の所望の性質に依存して顔料は広範囲のBET表面積を有する。顔料の表面積は、好ましくは約10m2/g〜約1500m2/g、より好ましくは約20m2/g〜約600m2/gである。所望の表面積が所望の応用のためにすぐ利用できない場合、顔料をより小さい粒子サイズにするために、所望であれば顔料は通常のサイズ減少又は粉砕処理(例えば、ボールミル粉砕、又はジェット粉砕、又は超音波処理)を受けることが当業者には理解されるであろう。また顔料は、当技術分野で公知の多種類の一次粒子サイズを有する。例えば、顔料は、約5nm〜約100nm(約10nm〜約80nm及び15nm〜約50nmを含む)の一次粒子サイズを有する。さらに顔料はまた、広範囲のジブチルフタル酸塩吸収(DBP)値(これは、顔料の構造又は分岐の尺度である)を有することもできる。例えば、顔料は、DBP値が約25〜400mL/100g(約30〜200mL/100g、及び約50〜150mL/100gを含む)のカーボンブラックである。また、顔料は、油吸収値(ISO 787 T5に記載されている)が約5〜150mL/100g(約10〜100mL/100g、及び約20〜80mL/100gを含む)の有機着色顔料でもよい。
【0014】
顔料はまた、イオン基及び/又はイオン化可能な基を表面に取り込むために、酸化剤を使用して酸化した顔料でもよい。こうして調製される顔料は、表面上に硬度の酸素含有基を有することがわかった。酸化剤には、特に限定されないが、酸素ガス、オゾン、NO2(NO2と空気の混合物を含む)、過酸化物、例えば、過酸化水素、過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、又は過硫酸アンモニウムを含む)、次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸など)、岩塩、ハロゲン酸塩、又は過ハロゲン酸塩(例えば、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム)、酸化性酸(例えば、硝酸)、及び遷移金属含有酸化剤、例えば、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、又は硝酸セリウムアンモニウムがある。酸化剤の混合物も使用され、特にガス状酸化剤の混合物(例えば、酸素とオゾン)も使用される。加えて、顔料表面にイオン基又はイオン化可能な基を導入するために他の表面改質法、例えば、塩素化及びスルホニル化を使用して調製される顔料を使用することもできる。
【0015】
着色剤はまた、少なくとも1つのイオン基、イオン化可能な基、又はイオン基とイオン化可能な基の両方が結合した顔料を含む改質顔料でもよい。顔料は上記の任意のものでもよい。イオン基は陰イオン性又は陽イオン性であり、反対の電荷の対イオン[Na+、K+、Li+、NH4+、NR'4+、酢酸塩、NO3-、SO4-2、R'SO3-、OH-、及びCl-のような無機又は有機対イオンであり、ここでR'(これは同じか又は異なってよい)は、水素又は有機基、例えば、置換又は非置換のアリール及び/又はアルキル基である]に結合している。イオン化可能な基は、使用媒体中でイオン基を形成することができるものである。陰イオン化可能な基は陰イオンを生成し、陽イオン化可能な基は陽イオンを生成する。好ましくは結合基は有機基である。有機イオン基には、米国特許第5,698,016号明細書(これは参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されたものがある。
【0016】
陰イオン基は、陰イオン(陰イオン化可能な基)を形成できるイオン化置換基(例えば、酸性置換基)を有する基から作成される陰性荷電イオン基である。これらはまた、イオン化置換基の塩中の陰イオンである。陰イオン基の代表的例には、−COO-、−SO3-、−OSO3-、−HPO3-、−OPO3-2、及び−PO3-2を含む。陰イオン化可能な基の代表例には、−COOH、−SO3H、−PO32、−R'SH、−R'OH、及び−SO2NHCOR'(ここでR'は、水素又は有機基、例えば、置換又は非置換のアリール及び/又はアルキル基である)がある。好ましくは、結合基は、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基又はそれらの塩がある。例えば、結合基は、有機基、例えば、ベンゼンカルボン酸基(−C64−COOH基)、ベンゼンジカルボン酸基、ベンゼントリカルボン酸基、ベンゼンスルホン酸基(−C64−SO3H基)又はそれらの塩である。結合有機基はまた、これらの任意の置換誘導体でもよい。またイオン基又はイオン化可能な基は、ポリマーの官能基について以下に詳述される任意のものでもよい。
【0017】
陽イオン基は、プロトン化アミンのような陽イオンを形成できるイオン化可能置換基(陽イオン化可能な基)から生成される陽性荷電有機イオン基である。例えば、アルキル又はアリールアミンはプロトン化されて、アンモニウム基−NR'2+(ここでR'は有機基、例えば、置換又は非置換のアリール、アルキル、アラルキル又はアルカリル基である)を形成する。陽イオン基はまた、陽性荷電した有機イオン基である。例としては4級アンモニウム基(−NR'3+)及び4級ホスホニウム基(−PR'3+)がある。ここでR'は、水素又は有機基、例えば、置換又は非置換のアリール及び/又はアルキル基である。好ましくは、結合基は、アルキルアミン基又はその塩又はアルキルアンモニウム基を含む。
【0018】
上記したように、着色剤は顔料であることが好ましく、従って改質着色剤は好ましくは改質顔料である。改質顔料は顔料と少なくとも1つのポリマーとを含む。1つの実施態様では、改質顔料はポリマーに被覆された顔料を含む。別の実施態様では、改質顔料は少なくとも1つのポリマー基(ここでポリマー基はポリマーを含む)が結合した顔料を含む。すなわち改質顔料は結合したポリマーを有する顔料でもよい。好ましくは、この実施態様に関してポリマー基は直接結合している。
【0019】
結合しているか又は吸着したポリマーを含む本発明の改質顔料について、ポリマーは少なくとも1つの官能基を含む。本明細書においてポリマーに関する用語「官能基」は、ポリマーの骨格から離れたペンダント基を意味し、モノマーの2つ以上の繰り返し単位を含む分節又は基には関係しない。本発明の第1の実施態様では、ポリマーの官能基は、少なくとも1つのP−O又はP=O結合を有する少なくとも1つのリン含有基、例えば、少なくとも1つのホスホン酸基、少なくとも1つのホスフィン酸基、少なくとも1つの亜ホスフィン酸基、少なくとも1つの亜リン酸基、少なくとも1つのリン酸塩基、二リン酸塩基、三リン酸塩基、ピロソン酸塩基、これらの部分エステル又はそれらの塩を含む。例えば、官能基は、少なくとも1つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む。好ましくは、官能基は、少なくとも2つのこれらの基、例えば、少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む。「その部分エステル」とは、ホスホン酸基が、式−PO3RHを有する部分ホスホン酸エステル基又はその塩(ここでRは、アリール、アルカリル、アラルキル、又はアルキル基である)でもよいことを意味する。官能基が少なくとも2つのホスホン酸基をその塩を含む時、ホスホン酸基のいずれか又はその両方は部分ホスホン酸エステル基でもよい。またホスホン酸基の1つが式−PO32を有する部分ホスホン酸エステル基で、他のホスホン酸基が部分ホスホン酸エステル基、ホスホン酸基又はその塩でもよい。しかし、この実施態様において、少なくとも1つのホスホン酸基はホスホン酸、その部分エステル又はその塩であることが好ましい。「その塩」とは、ホスホン酸基が、陽イオン性対イオンを有する部分的又は完全にイオン化した型であることを示す。官能基が少なくとも2つのホスホン酸基を含む時、ホスホン酸基のいずれか又はその両方は部分的又は完全にイオン化型でもよい。すなわち好ましくは、官能基は少なくとも2つのホスホン酸基を含み、ここでいずれか又は両方が式−PO32、−PO3-+(一塩基性塩)、又は−PO3-2+2(二塩基性塩)(ここでM+は、Na+、K+、Li+、又はNR4+のような陽イオンであり、ここで同じか又は異なってよいRは、水素又は、置換又は非置換のアリール及び/又はアルキル基のような有機基である)を有してよい。
【0020】
この実施態様について、官能基は、少なくとも1つのジェミナル(geminal)ビスホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含むことができ、すなわち官能基は、同じ炭素原子に直接結合した少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含むことができる。かかる基はまた1,1−ジホスホン酸基、その部分エステル又はその塩と呼ばれる。すなわち、例えば、官能基は、式−CQ(PO322を有する基、その部分エステル又はその塩を含むことができる。Qはジェミナル位置で結合し、H、R、OR、SR、又はNR2でもよく、ここでR(これは同じか又は異なってよい)は、H、C1−C18の飽和又は非飽和の分岐又は非分岐のアルキル基、C1−C18の置換又は非置換の分岐又は非分岐のアシル基、アラルキル基、アルカリル基、又はアリール基である。例えば、Qは、H、R、OR、SR、又はNR2でもよく、ここでR(これは同じか又は異なってよい)は、H、C1−C6アルキル基、又はアリール基である。好ましくはQは、H、OH、又はNH2である。さらに官能基は、式−(CH2n−CQ(PO322、その部分エステル又はその塩(ここでQは上記したものであり、nは0〜9、例えば1〜9である)を有する基を含む。好ましくはnは0〜3、例えば1〜3であり、より好ましくはnは0又は1である。また官能基は、式−X−(CH2n−CQ(PO322、その部分エステル、その塩を有する基を含んでよく、ここでQとnは上記したものであり、Xは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、ビニリデン、アルカリーレン、アラルキレン、環状、又は複素環基である。例えば、Xはアリーレン基、例えば、フェニレン、ナフタレン又はビフェニレン基(これは、任意の基、例えば、1つ又はそれ以上のアルキル基又はアリール基で置換されてよい)でもよい。Xがアルキレン基である時、例は、特に限定されないが、置換又は非置換のアルキレン基があり、これは分岐又は非分岐であり、1つ又はそれ以上の基(例えば、芳香族基)で置換することができる。例には、特に限定されないが、C1−C12基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレン基がある。
【0021】
Xはさらに、1つ又はそれ以上の追加の官能基で置換してもよい。追加の官能基の例には、特に限定されないが、R'、OR'、COR'、COOR'、OCOR'、カルボキシレート、ハロゲン、CN、NR'2、SO3H、スルホン酸塩、硫酸塩、NR'(COR')、CONR'2、イミド、NO2、リン酸塩、ホスホン酸塩、N=NR'、SOR'、NR'SO2R'、及びSO2NR2’があり、ここでR'(これは同じか又は異なってよい)は、独立に水素、分岐又は非分岐C1−C20置換又は非置換、飽和又は不飽和の炭化水素、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、置換又は非置換のアルカリール、又は置換又は非置換のアラルキルである。
【0022】
さらに官能基は、式−Sp−(CH2n−CQ(PO322を有する基、その部分エステル又はその塩(ここでQとnは上記したものである)を含んでよい。Spはスペーサー基であり、これは本明細書において、2つの基の連結部分である。Spは結合又は化学基である。化学基の例には、特に限定されないが、−CO2−、−O2C−、−CO−、−OSO2−、−SO3−、−SO2−、−SO224O−、−SO224S−、−SO224NR”−、−O−、−S−、−NR”−、−NR”CO−、−CONR”−、−NR”CO2−、−O2CNR”−、−NR”CONR”−、−N(COR”)CO−、−CON(COR”)−、−NR”COCH(CH2CO2R”)−及びこの環状イミド、−NR”COCH2CH(CO2R”)−及びこの環状イミド、−CH(CH2CO2R”)CONR”−及びこの環状イミド、−CH(CO2R”)CH2CONR”−及びこの環状イミド(これらのフタルイミド及びマレイミドを含む)、スルホンアミド基(−SO2NR”−及び−NR”SO2−基を含む)、アリーレン基、アルキレン基などがある。R”(これは同じか又は異なってよい)は、水素又は有機基、例えば、置換又は非置換のアリール又はアルキル基である。好ましくは、Spは、−CO2−、−O2C−、−O−、−NR”−、−NR”CO−、又は−CONR”−、−SO2NR”−、−SO2CH2CH2NR”−、−SO2CH2CH2O−又は−SO2CH2CH2S−(ここでR”はH又はC1−C6アルキル基である)である。
【0023】
さらに官能基は、式−N−[(CH2)m(PO32)]2を有する少なくとも1つの基、その部分エステル又はその塩を含んでよく、ここでm(これは同じか又は異なってよい)は1〜9である。好ましくはmは1〜3であり、より好ましくは1又は2である。例えば、官能基は、式−(CH2n−N−[(CH2)m(PO32)]2を有する少なくとも1つの基、その部分エステル又はその塩を含んでよく、ここでnは0〜9、例えば1〜9、好ましくは0〜3、例えば1〜3であり、mは上記で定義したものである。また官能基は、式−X−(CH2n−N−[(CH2m(PO32)]2を有する少なくとも1つの基、その部分エステル又はその塩を含んでよく、ここでX、m、及びnは上記で定義したものである。また官能基は、式−Sp−(CH2n−N−[(CH2m(PO32)]2を有する少なくとも1つの基、その部分エステル又はその塩を含んでよく、ここでm、n、及びSpは上記で定義したものである。
【0024】
さらに官能基は、式−CR=C(PO322を有する少なくとも1つの基、その部分エステル又はその塩を含んでよい。RはH、C1−C18飽和又は不飽和、分岐又は非分岐アルキル基、C1−C18飽和又は不飽和、分岐又は非分岐アシル基、アラルキル基、アルカリル基、又はアリール基である。好ましくはRはH、C1−C6アルキル基、又はアリール基である。
【0025】
この実施態様について、官能基は3つ以上のホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含み、例えば、2つ以上の基(2つ又はそれ以上)(ここで、各タイプの基は少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む)を含んでよい。例えば、官能基は、式−X−[CQ(PO322pを有する基、その部分エステル又はその塩を含む。XとQは上記したものであり、好ましくは、Xはアリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリレン又はアラルキレン基である。この式においてpは1〜4であり、好ましくは2である。
【0026】
さらに官能基は、少なくとも1つのビシナルビスホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含んでよく、これらの基は互いに隣接していることを示す。すなわち、官能基は、隣接又は隣位の炭素原子に結合した2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む。かかる基はまた、1,2−ジホスホン酸基、その部分エステル又はその塩と呼ぶこともある。2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む基は、芳香族基又はアルキル基でもよく、従ってビシナルビスホスホン酸基は、ビシナルアルキル基又はビシナルアリールジホスホン酸基、その部分エステル又はその塩である。例えば、官能基は式−C63−(PO322を有する基、その部分エステル又はその塩でもよく、ここで酸、エステル又はその塩の基は互いにオルト位である。
【0027】
本発明の第2の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのヒドロキサム酸基又はその塩を含む。すなわち官能基は、式−N(OH)−CO−を有する少なくとも1つの基又はその塩を含んでよい。かかる基には、例えば、アミド又はイミド基(ここでアミド又はイミド窒素はOH基で置換される)及びその互変異性体がある。ヒドロキサム酸基は非環状(ここでN−C結合は非環状基である)、又は環状(ここでN−C結合は環状基の一部である)でもよい。好ましくは環状ヒドロキサム酸基は複素環基であり、より好ましくはヘテロアリール基、例えば、ヒドロキシピリドニル基(これはまた、ヒドロキシピリジニルN−オキシド基とも呼ばれる)又はヒドロキシキノロニル基(これはまた、ヒドロキシキノリニルN−オキシド基とも呼ばれる)である。具体例には、1−ヒドロキシ−2−ピリドニル基、1−ヒドロキシ−2−キノロニル基又はその塩がある。これらの異性体や互変異性体も使用できることを当業者は認識するであろう。さらに官能基は、追加の官能基(上記したもの、例えばXについてのものを含む)をさらに含んでよい。
【0028】
本発明の第3の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのOH基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基又はその塩を含む。好ましくはヘテロアリール基は窒素含有ヘテロアリール基(例えば、ピリジニル基又はキノリニル基)であり、官能基はヒドロキシピリジニル基又はヒドロキシキノリニル基である。ヒドロキシ基は好ましくは、ヘテロ原子に位置的に近くなるように(例えば、ヘテロ原子にオルト)ヘテロアリール基上の位置にある。かかる基は塩型でもよい。例えば、官能基は、2−ヒドロキシピリジニル基又は2−ヒドロキシ−キノリニル基、並びに8−ヒドロキシ−キノリニル基又はその塩を含んでよい。他の異性体又は互変異性体も当業者に公知であろう。好ましくは官能基は、8−ヒドロキシ−キノリニル基を含む。さらに官能基は、追加の官能基(例えば、Xについてのものを含む)を含んでよい。例えば、OH基のpKaを低下させるために電子吸引基(例えば、クロロ又はニトロ基)を含んでよい。
【0029】
この実施態様について、官能基はまた、少なくとも2つのOH基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基を含んでよい。2つのOH基がある時、好ましくはOH基はヘテロアリール基上で互いにオルトの位置にある。3つ以上のOH基がある時、OH基の少なくとも2つはヘテロアリール基上で互いにオルトの位置にあることが好ましい。例えば、官能基は、ジヒドロキシ−ピリジニル基、例えば、2,3−ジヒドロキシ−ピリジニル基(これはまた3−ヒドロキシ−2−ピリドニル基とも呼ばれる)、3,4−ジヒドロキシ−ピリジニル基(これはまた3−ヒドロキシ−4−ピリドニル基とも呼ばれる)、2,3−ジヒドロキシ−キノリニル基(これはまた3−ヒドロキシ−2−キノロニル基とも呼ばれる)、又は3,4−ジヒドロキシ−キノリニル基(これはまた3−ヒドロキシ−4−キノロニル基とも呼ばれる)でもよい。他の異性体又は互変異性体も当業者に公知であろう。
【0030】
本発明の第4の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩、及び少なくとも1つの第2のイオン基又はイオン化可能な基を含む。第2の基は、ホスホン酸基又はその塩ではない。好ましくは、第2のイオン基又はイオン化可能な基は、カルボン酸基、スルホン酸基又はそれらの塩である。好ましくは、塩基性基はルイス塩基であり、例えば、OH基(ヒドロキシル基)又はアミノ基である。好ましくはこれらの2つの基は互いにジェミナル(geminal)であり、これはこれらが同じ炭素原子に直接結合していることを示す。すなわち、例えば、第2のイオン基又はイオン化可能な基がカルボン酸基又はその塩である時、官能基は式−CQ(PO32)(CO2H)を有する基又はその塩を含んでよい。Q(ジェミナル位置に結合している)は上記の任意のものである。好ましくはQはHである。さらに官能基は、式−(CH2n−CQ(PO32)(CO2H)を有する基又はその塩(ここでnは0〜9、好ましくは0〜3である)を含む。さらに官能基は、式−X−(CH2n−CQ(PO32)(CO2H)を有する基又はその塩(ここでXは上記したものである)を含む。例えば、Xはアリーレン基でもよい。また官能基は、式−Sp−(CH2n−CQ(PO32)(CO2H)を有する基又はその塩(ここでSpは上記したものである)を含んでよい。
【0031】
この実施態様のさらなる例として、官能基は、少なくとも1つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩、及び少なくとも1つのヒドロキシ基又はその塩、例えば、式−X−(PO32)(OH)を有する基又はその塩(ここでXは上記したものである)を含んでよい。好ましくはXはアリーレン基であり、この好適な式についてホスホン酸基とヒドロキシ基は互いにオルトの位置にある。これらの基がジェミナルである時、有機基は式−CR(PO32)(OH)を有する基又はその塩(ここでRはH又はC1−C6アルキル基である)を含んでよい。好ましくはRはHである。また官能基は、式−(CH2n−CR(PO32)(OH)を有する基又はその塩(ここでnは0〜9、好ましくは0〜3である)を含んでよい。さらに官能基は、式−X−(CH2n−CR(PO32)(OH)を有する基又はその塩、又は式−Sp−(CH2n−CR(PO32)(OH)を有する基又はその塩(ここでSpは上記したものである)を含んでよい。
【0032】
本発明の第5の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのカルボン酸基を有するヘテロアリール基又はその塩を含む。ヘテロアリール基は当業者に公知の任意のものであり、好ましくは、ヘテロアリール基は、窒素含有ヘテロアリール基、例えば、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、キノリニル基又はピラジニル基である。好ましくは、官能基は2つのカルボン酸基又はその塩を含む。これらの酸基は、ヘテロアリール環の任意の位置上であるが、好ましくは互いにオルト又はメタである。さらにヘテロアリール基が少なくとも1つの窒素原子を含有する時、2つの酸基は両方とも窒素原子に隣接(すなわちオルトで)している。すなわち、例えば、ヘテロアリール基は2,6−ピリジニル−ジカルボン酸基でもよい。
【0033】
本発明の第6の実施態様では、官能基は、少なくとも1つのニトロソ基と少なくとも1つのOH基とを有するアリール基又はその塩を含む。2つの基はアリール基上の任意の位置でよい。好ましくはアリール基はフェニル基であり、ニトロソ及びOH基は互いにオルトの位置である。アリール基はさらに、他の置換基、例えば、アルキル基、ハロゲン基、エーテル基など(どの互変異性体型であるかにかかわらず、有機基のpKaを低下させることができるクロロ及びニトロ基のような電子吸引基を含む)を含有してもよい。例えば、官能基はニトロソフェノール基、例えば、式−C63(OH)(NO)を有する基、又は好ましくは式−C62Z(OH)(NO)を有する基(ここでZは電子吸引基、例えば、クロロ又はニトロである)である。
【0034】
本発明の第7の実施態様では、官能基は、アゾアレーン基を含む。例えば、官能基は、式Ar1−N=N−Ar2(ここでAr1とAr2は同じか又は異なり、アリーレン基、例えば、フェニレン又はナフチレン基、又はアリール基、例えば、フェニル基又はナフチル基であり、Ar1とAr2の少なくとも1つはアリーレン基である)を含有してもよい。この実施態様について、アゾアレーン基は少なくとも1つの好ましくは少なくとも2つのOH基、少なくとも1つの好ましくは少なくとも2つのNH2基、又は少なくとも1つのOH基と少なくとも1つのNH2基を有する。すなわち、例えば、アゾアレーン基は、式−(OH)Ar1−N=N−Ar2(OH)(ビスヒドロキシアゾアレーン基)、−(H2N)Ar1−N=N−Ar2(NH2)(ビスアミノヒドロキシアゾアレーン基)、−(OH)Ar1−N=N−Ar2(NH2)又は−(H2N)Ar1−N=N−Ar2(OH)(アミノヒドロキシアゾアレーン基)を有する。好ましくはOH及び/又はNH2基は、アゾ基(N=N基)に対してオルト位で存在する。例えば、官能基は、構造−(HO)C63−N=N−C64(OH)を有する基である。また電子吸引基(例えば、クロロ又はニトロ基)がアリール及び/又はアリーレン基に含まれてよい。すなわち、好ましくは、有機基は、構造−(HO)C63−N=N−C63Z(OH)(ここでZは、クロロ又はニトロのような電子吸引基である)を有する。
【0035】
本発明の第8の実施態様では、官能基は、少なくとも2つのカルボン酸基、好ましくは少なくとも3つのカルボン酸基を含むアリール又はアルキル多酸基を含む。例えば、官能基は、少なくとも2つの酸基、少なくとも3つ、4つ又はそれ以上の酸基、例えば、少なくとも2つのカルボン酸基、少なくとも3つ又は4つのカルボキシル基、並びに他のタイプの酸基を有するアルキル多酸基を追加的に又は代替的に有してもよい。例えば、官能基は2つのカルボン酸基と少なくとも1つのエーテル又はアミノ基を含む。官能基の具体例には、−CH(CO2H)CH2OC24CO2H、−CH(CH2CO2H)OC24CO2H、−CH(CH2OC24CO2H)(OC24CO2H)、及び−CH(CO2H)N(CH2CO2H)2がある。官能基はまた、アリール多酸基を含んでよい。この基は少なくとも2つのカルボン酸基を含む。好ましくは、カルボン酸基は互いにビシナルである。すなわちアリール多酸基は、少なくとも2つの隣接カルボン酸基(すなわち、隣接するか又は近くの炭素原子に結合したカルボン酸基)(ビシナルジカルボン酸又は1,2−ジカルボン酸と呼ぶこともある)を含む少なくとも1つの基で置換することができる。すなわちアリール多酸基は、3つ又はそれ以上のカルボン酸基を有する基を含んでよく、ここでカルボン酸基の少なくとも2つは互いに隣接して、ビシナルジカルボン酸基を形成する。芳香族アミンは、例えば、1,2,3−又は1,2,4−トリカルボン酸基、例えば、−C62(COOH)3基を含むか、又は1,2,3,4−又は1,2,4,5−テトラカルボン酸基、例えば、−C6H(COOH)4基を含む。他の置換パターンも可能であり、当業者に公知であろう。
【0036】
これらの実施態様のそれぞれについて、改質着色剤の所望の用途及び結合基のタイプにより、官能基の量は変化することができる。またポリマーを含むポリマー基の量も変化してもよい。例えば、ポリマー基の総量は、改質着色剤の約1〜80wt%、好ましくは5〜60wt%、より好ましくは10〜40wt%のポリマーである。結合ポリマーの量は、当技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。追加の結合有機基(これは、本発明の種々の実施態様について記載したものとは異なる)もまた存在してもよく、後に詳述される。
【0037】
改質着色剤、特に改質顔料は、固体型、例えば、粉末又はペースト、又は分散型でもよい。例えば、改質顔料は分散物の形で産生され、分散物から例えば噴霧乾燥により固体の形で単離される。あるいは改質顔料の固体型は直接製造される。好ましくは改質顔料は分散物の形である。改質顔料分散物は、洗浄、例えば、ろ過、遠心分離又は2つの方法の組み合わせにより精製されて、未反応原料、副産物の塩、及び他の反応不純物が除去される。生成物はまた溶媒を留去して単離されるか、又は当業者に公知の方法を使用してろ過や乾燥により回収される。
【0038】
改質顔料はまた液体媒体中に分散され、生じた分散物は分粒されて、製造工程の結果として分散物中に共存する不純物や他の不要な遊離の分子種が除去される。例えば、分散物を精製して、不要な遊離の分子種、例えば、未反応処理剤を、限外ろ過/透析ろ過、逆浸透圧、又はイオン交換のような公知の方法を使用して除去することができる。好ましくは分散物の大きな粒子の濃度は低下させて、全体の分散安定性を上昇させる。すなわち例えば、500nmよりも大きなサイズを有する粒子は、遠心分離のような方法を使用して除去することができる。
【0039】
ポリマーの官能基は高いカルシウム指数値を有する基であることが好ましい。本明細書において用語「カルシウム指数値(calcium index value)」は、溶液中のカルシウムイオンに配位するか又は結合する官能基の能力の尺度を意味する。カルシウム指数値が高いほど、その基はカルシウムイオンに強く又は有効に配位する。かかる値は当技術分野で公知の方法を使用して測定される。例えば、カルシウム指数値は、可溶性カルシウムイオンと色指示薬を含有する標準溶液中で、化合物により配位されるカルシウムの量をUV−Vis分光分析を使用して測定する方法を使用して決定される。さらに強い色を有する化合物については、カルシウム指数値はNMR法を使用して測定される。またある化合物では、公知の文献の方法を使用して測定された値を使用することができる。具体的な方法の詳細は後述される。
【0040】
本明細書において、カルシウム指数値が「高い」という用語は、この値が参照物質の値よりも大きいことを意味する。本発明の目的において参照物はフェニルホスホン酸である。アルキルホスホン酸、例えば、エチル又はイソプロピルホスホン酸は、フェニルホスホン酸より少し高いカルシウム指数値を有すると考えられる。従って好ましくは参照物質は、これらよりも大きなカルシウム指数値を有する。より好ましくは参照物質は1,2,3−ベンゼントリカルボン酸である。すなわち顔料に結合したポリマーの官能基はフェニルホスホン酸のカルシウム指数値よりも大きなカルシウム指数値を有し、より好ましくは1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する。好ましくは官能基は、UV−Vis分光分析(後に詳述される)を使用して測定すると2.8以上、より好ましくは3.0よりも大きく、最も好ましくは3.2よりも大きなカルシウム指数値を有する。驚くべきことに、改質着色剤、特に本明細書に記載の結合ポリマー基を有する顔料を含む改質顔料、特にフェニルホスホン酸より大きなカルシウム指数値、より好ましくは1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する官能基を含むものは改良された性質を有し、特にインクジェットインク組成物として使用する時、他の結合基と比較して、特にこれらの参照化合物より小さいカルシウム指数値を有するものより改良された性質を有することが発見された。ポリマーに被覆された改質顔料について、官能基は好ましくは、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する。
【0041】
上記官能基を有するポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及び/又は多くの異なる任意の数の繰り返し単位を有するポリマーでもよい。さらにポリマーは、ランダムポリマー、分岐ポリマー、交互ポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、星状ポリマー、及び/又は櫛状ポリマーでもよい。ポリマーの種類は目的の用途により変わる。例えば、ポリマー基は、酸価が200未満、例えば、150未満、100未満又は50未満の酸基を含むポリマーを含む。酸価は当技術分野で公知の方法(KOHのような強塩基を使用する滴定を含む)を使用して測定される。具体例には、酸価100〜200、50〜100、及び0〜50がある。またポリマーはTgが100未満、例えば、50〜100、好ましくは50未満でもよい。さらにポリマーは分子量(Mw)が約500〜100,000、例えば、約1,000〜50,000、約2,000〜25,000でもよい。ポリマー基のポリマーの多分散性は、一般に3未満、例えば2.5未満、及び2未満である。あるいは分子量分布は多峰性、例えば、二峰性でもよい。上記したように本発明の改質顔料に結合したポリマー基は、これらのポリマー又はポリマーの組み合わせの任意のものを含む。
【0042】
上記官能基を有するポリマーは、当技術分野で公知の方法を使用して調製される。例えば、ポリマーは、官能基を含む少なくとも1つのモノマーの使用を含む種々の異なる重合法を使用して調製することができる。好ましくは、ポリマーは、少なくとも1つの上記基を含むラジカル重合可能なモノマーの重合により調製される。例えば、モノマーは、ビニルホスホン酸、その部分エステル又はその塩、又はビニリデンホスホン酸、その部分エステル又はその塩である。好ましくは、塩は、モノマーが少なくとも部分的に有機溶媒に溶解することを可能にするものである。例えば、モノマーは、テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラエチル又はテトラブチルアンモニウム塩である。混合塩及び部分塩(例えば、酸型とナトリウム塩及び/又はアルキルアンモニウム塩との組み合わせ)も使用することができる。モノマーはまた、上記の少なくとも1つの基を含む、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、アクリレートエステルモノマー、メタクリレートエステルモノマー、ビニルエステルモノマー、ビニルエーテルモノマー又はスチレンモノマーでもよい。具体例には、塩化アクロイル又はアクリル酸又はそのエステルの反応により調製されるアクリルアミド(メタクリルアミド)、例えば、アクリル酸メチル(又は塩化メタクリロイル及びメタクリル酸又はそのエステル)、上記官能基を含むアミン化合物、例えば、少なくとも1つのビスフォスフォネート基を含むアルキルアミン、及びスチレン誘導体、例えば、[2−(4−ビニルフェニル)エタン−1,1−ジイル]ビスホスホン酸、[ヒドロキシ(4−ビニルフェニル)メチレン]ビスホスホン酸、及び{1−ヒドロキシ−4−[4−ビニルベンゾイル)アミノ]ブタン−1,1−ジイル}ビスホスホン酸がある。具体的なアクリルアミド及びメタクリルアミドには、4−メタクリルアミド−(1,2−ベンゼンジカルボン酸)、4−アクリルアミド−(1,2−ベンゼンジカルボン酸)、5−メタクリルアミド−(1,2,3−ベンゼンジカルボン酸)、5−アクリルアミド−(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸)、5−メタクリルアミド−(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)、5−アクリルアミド−(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)、5−メタクリルアミド−2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド、6−メタクリルアミド−2−ヒドロキシキノリン−N−オキシド、及び4−メタクリルアミド−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸がある。
【0043】
ポリマーはまた、上記の少なくとも1つのモノマーと、上記の基の1つを含まない1つ又はそれ以上の追加のモノマーとの重合により調製することもできる。かかるモノマーは、ポリマーに追加の好ましい性質、特にインクジェットインク組成物で有用な性質を提供する。例には、特に限定されないが、アクリル酸及びメタクリル酸、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリロニトリル、シアノアクリレートエステル、マレイン酸及びフマル酸ジエステル、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、酢酸ビニル、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、ビニルケトン、ビニルエーテル、及びスチレンがある。ビニルエーテルには、陽イオン重合により調製できるもの、例えば一般的構造CH2=CH(OR)(ここでRは、アルキル、アラルキル、アルカリル、又はアリール基であるか、又は1つ又はそれ以上のアルキレンオキシド基を含む基である)を有するものがある。ビニルケトンには、アルキル基のβ−炭素が水素原子を持たないもの、例えばビニルケトン(ここで両方のβ−炭素はC1−C4アルキル基、ハロゲンなどを有する)、ビニルフェニルケトン(ここでフェニル基は1〜5個のC1−C6アルキル基及び/又はハロゲン原子で置換される)がある。スチレンには、ビニル基が例えばα−炭素原子でC1−C6アルキル基で置換されたもの、及び/又はフェニル基が1〜5個の置換基{C1−C6アルキル、アルケニル(ビニルを含む)、又はアルキニル(アセチレニルを含む)基、フェニル基、ハロアルキル基、及び官能基[例えば、C1−C6アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシ、スルホネート、C1−C6アルコキシカルボニル、ヒドロキシ(C1−C6アシル基で保護されたものを含む)、及びシアノ基を含む]を含む}で置換されたものがある。具体例には、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸エチル(EMA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、スチレン、及びこれらの誘導体がある。
【0044】
ポリマーは、1つ又はそれ以上の重合性モノマーの陽イオン性又は陰イオン性重合により調製することができる。例えば、ポリビニルエーテルは、モノマー(例えば一般的構造CH2=CH(OR)を有するもの(ここでRは、アルキル、アラルキル、アルカリル、又はアリール基、又は1つ又はそれ以上のアルキレンオキシド基を含む基である))の陽イオン性重合により調製することができる。他の陽イオン性又は陰イオン性重合可能なモノマーも含まれる。
【0045】
ポリマーはまた、重縮合法により調製することもできる。例えば、ポリマーは、上記官能基を有するポリエステル又はポリウレタンでもよい。ポリウレタンについて適切な方法の例には溶液法があり、この方法ではイソシアネート末端プレポリマーをイソシアネート基と非反応性の低沸点溶媒(例えば、アセトン)中で調製し、ジアミン又はポリオールのような親水性基をそこに導入し、水で希釈して相変換を行い、溶媒を留去してポリウレタン分散物を得る。別の適切な方法では、親水性基を導入したイソシアネート基末端プレポリマーを調製し、水に分散させ、アミンを用いて鎖を延長する。
【0046】
特にポリウレタンは、プレポリマー法により調製され、この時低分子量を有するポリヒドロキシ化合物が使用される。低分子量を有するポリヒドロキシ化合物の例には、ポリエステルジオールの上記の出発物質、例えば、グリコール及びアルキレンオキシド−低分子量付加物、3価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン、そのアルキレンオキシド低分子量付加物などがある。
【0047】
水分散性ポリウレタンについては、有機溶媒相中で調製されるウレタンポリマーの相変換を行い、乳化して水相中で鎖をさらに延長する方法を使用することが一般に知られている。この時鎖延長剤としてジアミンのようなポリアミンを使用することが一般的である。例えば、ウレタンプレポリマーは、ジメチロールアルカン酸から得られる酸基の中和を行い、中和後又は中和中に水又はジ−若しくはトリアミンで鎖延長を受ける。アミン延長で鎖延長剤として使用されるポリアミンの例には、一般にジアミン又はトリアミンがある。これらの具体例には、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ピペラジンなどがある。
【0048】
上記官能基を含むポリマーはまた、所望の官能基を含む試薬とポリマーの反応性基とを反応させることにより調製される。例えば、試薬は、所望の官能基を含むアミン試薬であり、ポリマーは反応性基としてカルボン酸又はエステル基を含む。他の反応性基には、酸無水物、酸ハロゲン化物、活性エステル(例えば、ニトロフェニルエステル)又はカルボン酸とN−ヒドロキシスクシンイミド、イソシアネート、エポキシド、チオエポキシド、及びアジリジンとの反応生成物がある。この反応は、加熱又は熱脱水により駆動することができる。あるいは例えばカルボン酸とアミンとを反応させるために、カルボジイミドのようなカプリング剤が使用される。混合無水物も使用される。これらは反応して、所望の官能基を有するポリマーを生成する。さらに、官能基を有する試薬と、少なくとも1つの反応性基を有するポリマーと、少なくとも1つの結合試薬とを反応させてポリマーが調製される。結合試薬は、試薬と反応性基とを反応させることができるものである。例えば、試薬はアミン試薬で、反応性基はアミノ基を含む。この場合、結合剤はジカルボン酸化合物、無水物、ビスエポキシド、又は多官能性アジリジンでもよい。さらにポリマーは、カルボン酸又はその誘導体(例えば、ハロゲン化物、エステル、アミド、又はニトリル)の直接変換(例えば、ホスホニル化)により調製される。これらの方法で、特定の官能基をポリマー骨格に反応又は結合させることにより、種々のポリマーが本明細書に記載のポリマーに変換される。
【0049】
本発明の結合ポリマー基を有する改質顔料は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して調製される。好ましくはポリマー基は直接結合される。かかる改質顔料は、有機化学基が顔料に結合されるように、当技術分野で公知の任意の方法を使用して調製される。例えば、ポリマー改質顔料は、ポリマーの官能基を顔料の官能基と反応させて調製される(例えば、米国特許第6,723,783号明細書又は欧州特許第0272127号明細書に記載のように)(末端官能性ポリマーと顔料との反応を含む)。利用可能な官能基を有する顔料と官能基を含むポリマーとを反応させることにより改質顔料を調製する他の方法には、例えば、米国特許第6,723,783号明細書(これは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法がある。かかる官能性顔料は、米国特許第5,554,739号明細書、同第5,707,432号明細書、同第5,837,045号明細書、同第5,851,280号明細書、同第5,885,335号明細書、同第5,895,522号明細書、同第5,900,029号明細書、同第5,922,118号明細書、及び同第6,042,643号明細書、及び国際公開第99/23174号パンフレット(これらの記載は参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載された方法を使用して調製される。かかる方法は、分散剤型の方法(これは例えばポリマー及び/又は界面活性剤を使用する)と比較して、顔料上への基のより安定な結合を与える。あるいはこれらの改質顔料は、ポリマーのアミン含有官能基とジアゾ化剤との反応により、これをさらに顔料と(例えば、米国特許第6,478,863号明細書に記載のように)反応させて調製することができる。さらに、結合ポリマー基を含有する修飾カーボンブラックも、米国特許第6,831,194号明細書及び同第6,660,075号明細書、米国特許出願公開第2003−0101901号明細書及び同第2001−0036994号明細書、カナダ特許第2,351,162号明細書、欧州特許第1394221号明細書、及び国際公開第04/63289号パンフレット、並びにN. Tsubokawa, Polym. Sci., 17, 417, 1992(これらのそれぞれはまた参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法により調製される。
【0050】
さらにポリマー改質顔料もまた、顔料からモノマーの重合により調製される。例えば、ポリマー改質顔料は、ラジカル重合、制御重合法、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)、安定フリーラジカル(SFR)重合、及び可逆的付加−断片化鎖移動重合(RAFT)、イオン重合(陰イオン性又は陽イオン性)、例えば、基移動重合(GTP)及び縮重合により調製される。またポリマー改質顔料は、例えば、米国特許第6,372,820号明細書;同第6,350,519号明細書;同第6,551,393号明細書;又は同第6,368,239号明細書、又は国際公開第2006/086599号パンフレット及び同第2006/086660号パンフレット(これらは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法を使用して調製される。ポリマーに被覆された顔料を含む改質顔料について、これらの改質顔料は当技術分野で公知の任意の方法、例えば、米国特許第5,085,698号明細書、同第5,998,501号明細書、同第6,074,467号明細書、同第6,852,777号明細書、及び同第7,074,843号明細書、及び国際公開第2004/111140号パンフレット、同第2005/061087号パンフレット、及び同第2006/064193号パンフレット(これらは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法を使用して調製することができる。
【0051】
本発明の改質着色剤、特に少なくとも1つのポリマー基が結合した顔料を含む改質顔料は、上記ポリマー基とは異なる第2の有機基をさらに含んでよい。これらには、例えば、米国特許第5,630,868号明細書(これは参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の基がある。例えば、改質顔料はさらに、少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含むことができる第2の結合有機基を含んでよい。好ましくはイオン基又はイオン化可能な基は陰イオン基又は陰イオン化可能な基である。本発明の改質顔料の顔料に対して上記されたイオン基又はイオン化可能な基、特に陰イオン基又は陰イオン化可能な基は、第2の有機基でもよい。さらに第2の有機基は、ポリマーを含むポリマー基でもよい。上記ポリマー基の任意のものはまた、第2の結合有機基として使用することもできる。
【0052】
本発明の改質着色剤は種々の応用(例えば、プラスチック組成物、水性又は非水性インク、水性又は非水性コーティング、ゴム組成物、紙組成物、及び織物組成物を含む)で使用される。特にこれらの顔料は、例えば、自動車コーティングや工業コーティング、塗料、トナー、接着剤、ラテックス、及びインクを含む水性組成物で使用される。顔料は、インク組成物、特にインクジェットインクで最も有用であることがわかっている。
【0053】
すなわち本発明はさらに、ビヒクル、着色剤、及びポリマーを含むインクジェットインク組成物に関する。ポリマーは上記ポリマーの任意のものである。例えば、本発明のインクジェットインク組成物は、上記官能基の任意のものを有するポリマーを含み、組成物中の別の添加剤であるか、又は着色剤、例えばそこにポリマーが結合又は吸着している本発明の改質着色剤のような着色剤と結合してもよい。好ましくは着色剤は顔料である。ビヒクルは水性又は非水性液体ビヒクルでもよいが、好ましくは水を含有するビヒクルである。すなわちビヒクルは好ましくは水性ビヒクルであり、インクジェットインク組成物は水性インクジェットインク組成物である。より好ましくはビヒクルは50%を超える水を含有し、例えば、水又は水と水混和性溶媒(例えば、アルコール)との混合物を含む。
【0054】
着色剤は上記の任意の着色剤でよく、好ましくは上記の改質顔料である。着色剤はインクジェットインク組成物中に、インクジェットインクの性能に悪影響を与えることなく、所望の画像品質(例えば、光学密度)を与えるのに有効な量で存在する。典型的には着色剤は、インクの重量に基づき約0.1%〜約30%の範囲の量で存在する。多くの場合着色剤は種々の要因に依存して使用される。例えば、本発明の改質顔料を含むインクジェットインク組成物について、顔料の量は結合ポリマー基の量に依存して変化する。またポリマーの量は着色剤の種類により変化する。典型的にはポリマー対顔料の比は、約4:1〜1:100であり、約1:1〜約1:5を含む。
【0055】
また、例えば、本明細書に記載の種々の改質顔料の混合物、又はこれらの改質顔料と非改質顔料との混合物、例えば、過酸化物、オゾン、過硫酸塩、及び次亜ハロゲン酸塩(一部はRohm and Haas又はOrientから販売されている)を含む)を使用して調製される自己分散性酸化顔料を含む酸化顔料、他の改質顔料、又はこれらの両方を含む着色剤の混合物を使用することは、本発明の範囲内である。また1つの着色剤が染料を含み1つの着色剤が顔料を含む改質着色剤の混合物も使用される。
【0056】
例えば、本発明のインクジェットインク組成物は、液体ビヒクルと、第1の改質顔料(これは上記した本発明の改質顔料である)と、結合した少なくとも1つの第2の有機基(これは第2の改質顔料の有機基とは異なる)を有する第2の顔料を含む第2の改質顔料とを含んでよい。顔料と第2の顔料は、例えば、顔料の混合物が特定の目的の色を作り出すか又は顔料の混合物が異なる種類の改質顔料を使用して同じ色を与えるかどうかに依存して、同じか又は異なる。第2の有機基は、少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含む基でもよい。改質顔料の第2の結合有機基に関する上記の任意のイオン基又はイオン化可能な基をここで使用することができる。
【0057】
また本発明のインクジェットインク組成物は、液体ビヒクルと、第1の改質顔料(これは上記した本発明の改質顔料である)と、少なくとも1つの結合又は吸着したポリマーを有する第2の顔料を含む第2の改質顔料とを含んでよい。本発明の改質顔料に関する上記の任意のポリマーもここで使用される。例えば、第2の改質顔料はポリマー被覆顔料、例えば、ポリマー封入顔料(ポリマーと少なくとも1つの吸着ポリマーとを含む)でもよい。また第2の改質顔料は、少なくとも1つの結合ポリマー基を有する顔料を含んでよい(ここでポリマー基はポリマーを含む)。
【0058】
本発明のインクジェットインク組成物は、最小の追加の成分(添加物及び/又は共溶媒)と処理工程で作成することができる。しかし、組成物の安定性を維持しながら多くの所望の性質を付与するために、適切な添加物を使用してもよい。例えば、界面活性剤及び/又は分散剤、保湿剤、乾燥加速剤、浸透剤、殺生物剤、結合剤、pH調節剤、並びに他の当技術分野で公知の添加物が添加される。具体的な添加物の量は種々の要因により変動するが、一般的には0%〜40%の範囲である。
【0059】
組成物のコロイド安定性をさらに増強するために、又はインクと印刷基材(例えば、印刷紙又はインクプリントヘッド)との相互作用を変化させるために、分散物質(界面活性剤及び/又は分散剤)を加えてもよい。種々の陰イオン性、陽イオン性、及び非イオン性分散剤を本発明のインク組成物とともに使用することができ、これらは固体型又は水溶液でもよい。
【0060】
陰イオン性分散剤又は界面活性剤の代表例には、特に限定されないが、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキル−スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(Na、K、Li、Caなど)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホン酸塩、2級高級アルコールエトキシスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリシル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、及びアルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩、及びビスホスホン酸塩があり、ヒドロキシル化又はアミノ化誘導体を含む。例えば、スチレンスルホン酸塩、非置換及び置換ナフタレンスルホン酸塩(例えば、アルキル又はアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなどを含む非置換アルキルアルデヒド誘導体)、マレイン酸塩、及びこれらの混合物のポリマー及びコポリマーを、陰イオン性分散剤として使用してもよい。塩には、例えば、Na+、Li+、K+、Cs+、Rb+、及び置換及び非置換アンモニウム陽イオンがある。具体例には、特に限定されないが、市販品、例えば、Versa(登録商標)4、Versa(登録商標)7及びVersa(登録商標)77(National Starch and Chemical Co.);Lomar(登録商標)D(Diamond Shamrock Chemicals Co.);Daxad(登録商標)19及びDaxad(登録商標)K(W.R.Grace Co.);及びTamol(登録商標)SN(Rohm & Haas)がある。陽イオン性界面活性剤の代表例には、脂肪族アミン、4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などがある。
【0061】
本発明のインクジェットインクで使用できる非イオン性分散剤又は界面活性剤の代表例には、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、エトキシ化アセチレン性ジオール(例えば、Air Productsから入手できるSurfynol(登録商標)420、Surfynol(登録商標)440、Surfynol(登録商標)465))、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合型のエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、サトウキビ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、及びポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドがある。例えば、エトキシ化モノアルキル又はジアルキルフェノール、例えば、Igepal(登録商標)CAとCOシリーズ材料(Rhone−Poulenc Co.)、Brij(登録商標)Series材料(ICI Americas,Inc.)及びTriton(登録商標)シリーズ材料(Union Carbide Company)が使用される。非イオン性界面活性剤又は分散剤を単独で、又は上記陰イオン性及び陽イオン性分散剤とともに使用することができる。
【0062】
分散剤はまた天然のポリマー又は合成ポリマー分散剤でもよい。天然ポリマー分散剤の具体例には、タンパク質、例えば、にかわ、ゼラチン、カゼイン及びアルブミン;天然ゴム、例えば、アラビアゴム及びトラガカントゴム;グルコシド、例えば、サポニン;アルギン酸、及びアルギン酸誘導体、例えば、ポリエチレングリコールアルギン酸塩、トリエタノールアミンアルギン酸塩、及びアンモニウムアルギン酸塩;及びセルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースがある。合成ポリマー分散剤を含むポリマー分散剤の具体例には、ポリビニルアルコール、例えば、DuPontのElvanols、CelaneseのCelvoline、ポリビニルピロリドン、例えば、BASFのLuvatec、ISPのKollidon及びPlasdone、並びにPVP−K、Glide、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂(しばしば「(メタ)アクリル」と記載される)、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、LyondellのEthacryl製品、AlcoのAlcosperse、アクリル酸−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、カリウム(メタ)アクリレート−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、酢酸ビニル−(メタ)アクリレートエステルコポリマー、及び(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマー;スチレン−アクリリック又はメタクリリック樹脂、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、例えば、BASFのJoncryl、NoveonのCarbomers、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、例えば、BASFのJoncryl、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−コポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマー;スチレン−マレイン酸コポリマー;スチレン−無水マレイン酸コポリマー、例えば、SartomerのSMAポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸又はメタクリル酸コポリマー;ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー;及び酢酸ビニルコポリマー、例えば、酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、及び酢酸ビニル−アクリル酸コポリマー;及びこれらの塩がある。上記で列記したようなポリマー、インクジェットインクで分散剤及び添加物として使用できる変種及び関連材料、は、DegussaのTego製品、LyondellのEthacryl製品、BASFのJoncryl製品、CibaのEFKA分散剤、及びBYK ChemieのDisperbykとByk分散剤に含まれる。
【0063】
ノズルの詰まりを防ぎ、紙の通過を促進するために(透過剤)、改良された乾燥のために(乾燥加速剤)、及びアンチコッキング性のために、保湿剤と水溶性有機化合物とを本発明のインクジェットインク組成物に加えてもよい。使用される保湿剤と他の水溶性化合物の具体例には、低分子量グリコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びジプロピレングリコール;約2〜約40個の炭素原子を含有するジオール類、例えば、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコールなど、並びにアルキレンオキシド類(エチレンオキシド類、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを含む)とのこれらの反応生成物;約3〜約40個の炭素原子を含有するトリオール誘導体、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなど、並びにアルキレンオキシド類(エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを含む)とのこれらの反応生成物、及びこれらの混合物;ネオペンチルグリコール、(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)など、並びに広範囲の分子量を有する材料を生成するための、アルキレンオキシド類(エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを含む)との任意の好ましいモル比のこれらの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリトリトール及び低級アルキル、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、及びtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、及びシクロプロパノール;アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド;ケトン又はケトアルコール、例えば、アセトン及びジアセトンアルコール;エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン;セロソルブ類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルとエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル;カルビトール類、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテル;ラクタム類、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及びε−カプロラクタム;尿素及び尿素誘導体;内部塩、例えば、ベタインなど;上記物質のチオ(イオウ)誘導体、例えば、1−ブタンチオール;t−ブタンチオール1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール;2−メチル−2−プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオ又はジチオジエチレングリコールなど;ヒドロキシアミド誘導体、例えば、アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンなど;上記物質とアルキレンオキシド類との反応生成物;及びこれらの混合物がある。追加の例には、糖類、例えば、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、及びマルトース;多価アルコール類、例えば、トリメチロールプロパン及びトリメチロールエタン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体、例えば、ジアルキルスルフィド(対称及び非対称スルホキシド)、例えば、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシドなど;約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称及び非対称スルホン)、例えば、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン類、アルキルフェニルスルホン類、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランなどがある。かかる物質は単独又は組み合わせて使用される。
【0064】
殺生物剤及び/又は殺真菌剤を本発明のインクジェットインク組成物に加えてよい。細菌はしばしばインクノズルより大きく、詰まりと他の印刷に関する問題を引き起こすため、殺生物剤は細菌増殖を防ぐのに重要である。有用な殺生物剤の例には、特に限定されないが、ベンゾエート又はソルベート塩、及びイソチアゾリノン類がある。
【0065】
組成物の粘度を調整し他の好適な性質を与えるために、種々のポリマー結合剤を本発明のインクジェットインク組成物と組み合わせて使用することもできる。適当な結合剤には、特に限定されないが、水溶性ポリマー及びコポリマー、例えば、アラビアゴム、ポリアクリレート塩、ポリメタクリレート塩、ポリビニルアルコール類(DuPontのElvanols、CelaneseのCelvolin)、ヒドロキシプロピレンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(BASFのLuvatec、ISPのKollidonとPlasdone、及びPVP−K、Glide)、ポリビニルエーテル、デンプン、多糖、エチレンオキシドやプロピレンオキシドで誘導体化したポリエチレンイミン、例えば、Discole(登録商標)シリーズ(DKS International);Jeffamine(登録商標)シリーズ(Huntsman);などがある。水溶性ポリマー化合物のさらなる例には、上記の種々の分散剤又は界面活性剤、例えば、スチレン−アクリル酸コポリマー(例えば、BASFのJoncryl製品、NoveonのCarbomers)、スチレン−アクリル酸−アルキルアクリレートターポリマー、スチレン−メタアクリル酸コポリマー(例えば、BASFのJoncryl製品)、スチレン−マレイン酸コポリマー(SartomerのSMAポリマー)、スチレン−マレイン酸−アルキルアクリレートターポリマー、スチレン−マレイン酸半エステルコポリマー、ビニルナフタレン−アクリレートコポリマー、アルギン酸、ポリアクリレート又はこれらの塩及びこれらの誘導体がある。さらに結合剤が、分散物又はラテックス型に添加されるか又は存在してもよい。例えば、ポリマー結合剤は、アクリレート又はメタクリレートコポリマーのラテックス(例えば、NSM NeoresinsのNeoCryl材料、Alberdingk−BoleyのAC及びASポリマー)、又は水溶性ポリウレタン(Alberdingk−BoleyのABU)、又はポリエステル(Eastman ChemicalのAQポリマー)でもよい。インクジェットインクで結合剤に使用できる上記したようなポリマー、変種、及び関連物質には、LyondellのEthacryl製品、BASFのJoncrylポリマー、NSM NeoresinsのNeoCryl材料、Alberdingk−BoleyのAC及びASポリマーがある。
【0066】
本発明のインクジェットインク組成物のpHを調節又は制御するために種々の添加剤も使用される。適切なpH制御物質の例には、種々のアミン、例えば、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン、並びに種々の水酸化物試薬がある。水酸化物試薬は、OH-イオンを含む任意の試薬、例えば、水酸化対イオンを有する塩である。例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、及び水酸化テトラメチルアンモニウムがある。他の水酸化物塩並びに水酸化物試薬の混合物も使用できる。さらに水性媒体中でOH-イオンを生成する他のアルカリ性試薬も使用される。例には、炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウム、及びアルコキシド、例えば、ナトリウムメトキシド及びナトリウムエトキシドも使用される。緩衝液を加えてもよい。
【0067】
さらに本発明のインクジェットインク組成物は、色のバランスを変更し光学密度を調整するために従来の染料を取り込んでもよい。かかる染料には、食品染料、FD&C染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、フタロシアニンスルホン酸の誘導体、例えば、銅フタロシアニン誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩などがある。
【0068】
インクジェットインク組成物は、本発明の改質顔料について上記したような方法を使用して精製及び/又は分粒することができる。随時、対イオン交換工程を使用してもよい。すなわち不要な不純物又は好ましくない大きな粒子を除去して、良好な全体的性質を有するインクを作成することができる。
【0069】
驚くべきことに、上記官能基を有するポリマーを含むインクジェットインク組成物、特に改質着色剤、好ましくは本発明の改質顔料を含むインクジェットインク組成物は、既に記載されているインクジェットインク組成物と比較して改良された全体的性質を有することが発見された。理論に拘束はされないが、記載の官能基を有するポリマー、特に上記のカルシウム指数値を有するポリマーは、別の添加剤又は結合した(付着又は被覆)着色剤として上記インクジェットインク組成物に取り込まれると、安定な分散物を生成し、これは基材(例えば、紙)と接触すると急速に不安定化する。不安定化は、基材中に存在するか又は以後添加された時、例えば、金属塩を含有する固定液で印刷することにより、カルシウム塩又は他の2価金属塩との相互作用又は結合の結果である。あるいは、又はさらに、不安定化は、基材との接触によるpHの変化(これは、上記の結合ポリマー基を有する改質顔料について特に有利である)により生じてもよい。pHの変化、カルシウムとの相互作用、又はその両方により引き起こされる印刷後の急速な不安定化は、良好な全体的性質(例えば、光学密度、端の明瞭度、及び/又は色間のにじみ)を有する印刷画像を与えると考えられる。さらにポリマーは印刷画像の耐久性(汚れ(smear)に対する抵抗性、耐水性、及び/又はこすりに対する抵抗性、特にハイライトマーカーペンに対する抵抗性)を改良することがわかった。
【0070】
本発明はさらに、種々のインクジェットインク組成物と本発明のインクジェットインク組成物とを含むインクジェットインクセットに関する。このセットのインクジェットインク組成物は、当技術分野で公知のものとは異なる。例えば、このインクジェットインクセットは、着色剤の異なるタイプ及び/又は色を含む(例えば、青緑色顔料を含むインクジェットインク組成物、赤紫色顔料を含むインクジェットインク組成物、及び/又はブラック顔料を含むインクジェットインク組成物を含む)。他のタイプのインクジェットインク組成物もまた使用され、例えば、基材上へインクジェットインク組成物を固定するために設計された物質を含む組成物がある。他の組み合わせは当技術分野で公知である。
【0071】
本発明はさらに以下の例により例示されるが、これらは単に例示目的である。
【実施例】
【0072】
[例1]
以下の例は、液体ビヒクルと本発明の改質着色剤とを含むインクジェットインク組成物の調製を記載する。この例ではインクジェットインク組成物は少なくとも1つの着色剤と、ビスホスホン酸基又はその塩を含むモノマーの重合により調製された少なくとも1つのポリマーとを含む。
【0073】
[ビスホスホン酸塩モノマーの合成]
1リットルの三ツ首丸底フラスコに温度計と滴下ロートを取り付けた。フラスコに600gの水中の39gのNaOHと97.5gのアレンドロン酸ナトリウム(4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩(Zentiva,Prague,Czeck Republicから販売されている)の溶液を充填した。溶液を撹拌し、氷浴を使用して約5℃に冷却した。温度を10℃に維持しながら、塩化メタクリロイル(39.3g)を滴下ロートで滴下して加えた。反応物を20分撹拌した。pHが約3.4に低下するまで、ここに37%HCl(約44g)を加えた。次に溶液をジクロロメタン(3×300mL)で抽出した。水相を約3リットルのエタノールと混合すると、所望のビスホスホン酸塩モノマー生成物が白色の固体として沈殿し、これをろ過して集め、真空オーブンで60℃で乾燥した。
【0074】
[ポリマーの合成]
半連続供給法を使用してコポリマーを調製した。滴下ロート、熱電対、及びゴム隔膜を取り付けた500mLの三ツ首丸底フラスコに60mLのDMFを充填し、温度を上昇させ、100℃で維持した。滴下ロートに50mLのDMF中の2−ヒドロキシプロピルアクリルアミド(15g)とt−オクチルアクリルアミド(27.5g)の混合モノマー溶液を充填した。隔膜を介してシリンジから2つの他の供給流を送った。1つの供給流は30mLの水中の上記のビスホスホン酸塩モノマーの溶液を含有し、ここに溶解性を維持する必要に応じて重合の間中水を加えた。第2の供給流は25mLのDMF中の過酸化ベンゾイル(1.5g)の開始剤溶液である。10パーセントの各供給流を反応フラスコに加えた。30分後、1/12の開始剤溶液と混合モノマー溶液を加えた。さらに30分後、すべての3つの供給流の1/12を加え、温度を維持してさらに5時間これを続けた。反応の最後にビスホスホン酸塩モノマー溶液の最後の1/12を加えた。反応をさらに1時間維持した後、室温まで冷却した。生じたポリマーは反応中に沈殿し、上清を流し出して単離した。固形分をヘキサンで洗浄して高沸点DMFを除去し、真空下で14時間乾燥した。ビスホスホン酸塩基を有する繰り返し単位を含むポリマーを、インクジェットインク組成物の調製のためにそのまま使用した。
【0075】
[改質着色剤]
Eiger 1H実験室容器(直径5.5インチのステンレス鋼ビーカー)に9.5gのBlack Pearls(登録商標)700カーボンブラック(キャボット・コーポレイションから販売されている)、100mLのNMP中の11.4gの上記ポリマーの溶液、及び2000gのNorstone粉砕媒体(BSLZ−1、0.07〜0.125mm、Norstone,Wyncote,PAから販売されている)を加えて、少なくとも1つのポリマーを含む顔料を調製した。混合物を流体に維持するために必要に応じてNMPを添加して、混合物を5000rpmで20分粉砕した。ここに6.66gの10%水酸化ナトリウム水溶液を500mLの脱イオン水とともに加え、さらに15分粉砕を続けた。混合物(これはポリマーを含む顔料を含有した)をろ過して粉砕媒体を除去した。生じた分散物は総量が3リットルで、粉砕媒体を洗浄するために使用した水を含んだ。
【0076】
Spectrum Membrane(1050cm2)とペリスタポンプを使用して透析ろ過することにより、分散物を300mLに濃縮した。10倍量のナノピュア水で透析ろ過して分散物をさらに精製した。出力5.5のマイクロチップを使用してパルスサイクルを8秒ONで2秒休止を使用するMisonix3000ソニケーターを使用して、分散物を1時間超音波処理した。改質着色剤の生じた分散物(これは少なくとも1つのポリマー(16.07%の固形分)を含む顔料である)は、Microtrac(登録商標)Particle Size Analyzerを使用して測定すると平均容量粒子サイズ(mV)が160nmであることがわかった。
【0077】
顔料上に被覆されたポリマーの量を、顔料が吸収する波長を使用して、既知の濃度の分散物中のポリマー被覆顔料のUV/Vis吸光度を同じ濃度の出発顔料の分散物の吸光度と比較して測定した。この例で使用した改質着色剤について、UV/Vis分光光度計による吸光度測定のために波長550nmを選択した。ポリマー被覆顔料と出発顔料の吸光係数は同じであろう。両方の分散物とも同じ濃度であるため、観察される吸光度の低下は、ポリマー被覆顔料分散物中の顔料の実際の量の差によるはずである。この差は存在するポリマーの量であり、%ポリマーとして報告することができる。この例の着色剤組成物について、顔料上に被覆されたポリマーの量は、UV法により38.68%であることがわかった。この改質着色剤を使用して、本発明のインクジェットインク組成物を調製した。
【0078】
[インクジェットインク組成物]
本発明のインクジェットインク組成物を以下の表1に示した処方を使用して調製した。
【0079】
【表1】

【0080】
Epson互換性のカートリッジ(Inkjet Warehouseから入手できる、ブラックカートリッジ部品番号E−0601−K)にインクジェットインク組成物を充填し、Epson C88プリンターを使用して印刷設定「普通紙/ベストフォト/ICMオフ」で印刷した。
【0081】
得られた印刷画像について印刷品質を測定した。光学密度をSpectroEye分光光度密度計を使用して測定した。使用した設定は以下の通りである:D65で照射、2度の標準的オブザーバー、DIN密度基準、Absに白色ベース設定、フィルター無し。結果をページの2つの角と中間でとった3つの光学密度測定値の平均として報告する。よごれ抵抗性は、イエローAvery Fluorescent Hi−Lighter(商標)Chisel Point#111646とオレンジACCENT(商標)Highlighter Fluorescent Chisel Tip#25006を使用して、高光学密度ストライプで測定した。各ハイライターについて、紙の印刷していない部分で2つのスワイプ(swipes)を作成し、次に特定のインクジェットインク組成物を使用して2mm離して印刷した3つの2mm幅のストライプを横切って2つのスワイプ(swipes)を作成した。スワイプ(swipes)の間にハイライターペンをスクラップ紙で洗浄した。よごれ抵抗性を視覚的に評価して、ハイライタースワイプ(swipes)内の印刷ストライプからの汚れの視覚的証拠を査定した:「有り」=顕著なよごれが観察される、「微量」=わずかな汚れが見られる、そして「無し」=汚れが見られない。
【0082】
Hammermill Copy Plus紙に印刷された画像はODが1.4であり、よごれは観察されなかった。すなわち本発明のインクジェットインク組成物は、高ODと高よごれ抵抗性がバランスして良好な全体的性質を有する。
【0083】
[例2]
以下の例は、液体ビヒクルと本発明の改質着色剤とを含むインクジェットインク組成物の調製を記載する。この例ではインクジェットインク組成物は少なくとも1つの着色剤と、ベンゼントリカルボン酸基又はその塩を含むモノマーの重合により調製された少なくとも1つのポリマーとを含む。
【0084】
[ベンゼントリカルボン酸モノマーの合成]
磁気撹拌棒、温度計、及び250mLの滴下ロートを取り付けた2リットルの三ツ首丸底フラスコに、1リットルの水と71gの水酸化ナトリウムペレットと充填した。これが溶解した時、100gの1−アミノベンゼン−3,4,5−トリカルボン酸を加え、これも溶解させた。中和熱が消えてから、反応物を氷浴で10℃に冷却した。塩化メタクリロイル(40.23g)を滴下ロートに充填した。これを、温度を15℃未満に維持しながら、反応容器に15分かけてで滴下して加えた。別の容器で、40gの水酸化ナトリウムを150gの水に溶解した。これを、塩化メタクリロイルの添加が完了した20分後、反応混合物に加えた。反応物が10℃に冷却したら、さらに温度を15℃未満に維持しながら40gの塩化メタクリロイルを15分かけて滴下ロートから滴下して加えた。添加完了の20分後、反応混合物を濃塩酸でpH3に酸性化した。生じた固形分を真空ろ過により採取し、エタノールで洗浄し、真空オーブンで60℃で14時間乾燥した。
【0085】
[ポリマーの合成]
半連続供給法を使用してコポリマーを調製した。上記のアクリルアミド−ベンゼントリカルボン酸モノマーを、まずDMSOで洗浄して不純物を除去した酸性Amberlite樹脂とともに14時間撹拌してDMSOに溶解した(7%固形分)。この溶液にアクリル酸ブチルとニトロフェニルアクリルアミドを溶解し、モノマーの重量比を、28.7wt%のアクリルアミド−ベンゼントリカルボン酸モノマー、68.3wt%のアクリル酸ブチル、及び3wt%のニトロフェニルアクリルアミドとした。少量(全モノマー供給量に基づき3wt%)のメシチレンも加えて、NMR分析の内部標準物質とした。溶液の10分の1を、熱電対サーモスタット制御の加熱マントル、滴下ロート、及び隔膜キャップをしたすりガラスジョイントを取り付けた三ツ首丸底フラスコに充填した。残りの溶液を滴下ロートに充填した。3wt%の総モノマーの4,4’−アゾビスシアノ吉草酸(ACVA)(DMSO中10%の固形分で溶解した)を皮下シリンジに充填した。反応混合物を105℃に加熱し、ACVA溶液の10分の1を反応混合物に加えた。10分の1の残りのモノマー溶液と残りの開始剤溶液を30分毎に5時間加え、次に温度を105℃に1時間維持し、次に冷却した。生じたポリマー(ベンゼントリカルボン酸基を有する繰り返し単位を含む)を5wt%の酢酸水に沈殿させて採取し、固形分を蒸留水で2回洗浄した。ポリマーの固有粘度はTHF中0.066dL/gであり、酸価は131mg/KOHポリマーであった。
【0086】
ポリマーをTHF溶液(10%固形分)中でまず窒素で10分パージして水素化した。上記溶液に10%のパラジウム担持活性炭(2.5g)を加え、混合物をParr装置で45psiで3〜4時間水素化した。生じたポリマーをインクジェットインク組成物の調製のためにそのまま使用した。
【0087】
[改質着色剤]
500mLのステンレス鋼ビーカーに20gのBlack Pearls(登録商標)700カーボンブラックを加えた。上記ポリマー(20g)を132gのTHFに溶解し、生じた溶液を48gのTHFと20gの水とともに、ステンレス鋼ビーカー中のカーボンブラックに加えた。混合物をプロペラ羽根とローター固定子で撹拌し、55℃の温度まで加熱した。別の容器で0.25gの亜硝酸ナトリウムを16gの水に溶解した。メタンスルホン酸(0.35g)を撹拌混合物に加え、亜硝酸ナトリウム溶液を5分かけて滴下して加えた。混合物を55℃で2時間撹拌して維持した。次に、800mLのTHFを含有するポリエチレン容器に反応混合物を用手法で撹拌して加えた。生じた固形分を遠心分離して集め、THFで2回洗浄した。固形分をpH9の500mLの水に音波プローブを用いて30分間分散させた。生じた分散物を20ミクロンのふるいを通過させて、10倍量の水(約5リットル)で透析ろ過して分粒した。生じた改質着色剤の分散物(これは少なくとも1つのポリマーを含む顔料)は、Microtrac(登録商標)Particle Size Analyzerを使用して測定すると平均容量粒子サイズ(mV)が192nmであった。改質顔料はTGAにより測定すると12.1%の揮発性物質を有した。
【0088】
[比較改質着色剤]
Black Pearls(登録商標)700カーボンブラック(500g)、81gの1−アミノ−3,4,5−ベンゼントリカルボン酸、及び650gの水を、50℃に維持したProcessAll 4HV Mixer(4リットル)に充填した。ミキサーを密封し、撹拌を開始した(300rpm)。別の容器で17.28gの水酸化ナトリウムを200gの水に溶解した。撹拌中に、水酸化ナトリウム溶液をミキサーに加えた。第3の容器で24.84gの亜硝酸ナトリウムを75.16gの水に溶解した。ミキサーの内容物が50℃の時、亜硝酸ナトリウム溶液をポンプで15分間かけてミキサーに入れた。温度と撹拌を2時間維持した。2時間の最後に、ミキサーを開き、61gの4−アミノベンジルアミンを加えた。ミキサーを密封し、5分間撹拌し、次に容器を再度開いて、さらに61gの4−アミノベンジルアミンを加えた。密封した混合物をさらに10分間撹拌した。別の容器で180gの70%硝酸を180gの水と混合し、この溶液をポンプで5分間かけて撹拌容器に入れた。ポンプラインを50mLの水で洗浄し、撹拌を15分間続け、この間に温度を60℃に上げた。別の容器に69gの亜硝酸ナトリウムを276gの水に溶解し、この亜硝酸ナトリウム溶液をポンプで15分間かけてミキサーに入れた。温度と撹拌を2時間維持し、次に200gの水を加え、15分間混合した。生じたスラリーをミキサーから取り出し、ミキサーを1リットルの水で2回洗浄し、各洗浄液をスラリーに加え、4,645gのスラリーを得た。この半分(約2,323g)を水で3.5リットルに希釈し、パドル羽根で20分間撹拌した。このスラリーをブフナーロートとワットマン1ろ紙でろ過し、新鮮な水でスラリーにし、未洗浄のスラリーと一緒にし、ベンゼントリカルボン酸基が結合した改質顔料を含む11.88%の固形分である分散物を得た。
【0089】
[インクジェットインク組成物]
本発明の改質着色剤の分散物と比較改質着色剤を使用して、4%カーボンブラック(固形分が4.2〜4.6%)、7%グリセリン、7%トリメチロールプロパン、5%ジエチレングリコール、1%Surfynol(登録商標)465界面活性剤、残りは水を含有するインクジェットインク組成物を作成した。これらのインクをカートリッジに充填し、Canon I550プリンターで4つの異なる紙に印刷した[Hammermill Copy Plus(HCP)、Hammermill Premium Inkjet(HPI)、Xerox 4200及びHP Bright White(HPBW)]。生じた画像を光学密度(ImageXpert(商標)を使用して測定)とハイライター汚れに対する抵抗性(「良好」はほとんど又は全く汚れが無いこと、及び「不良」は多量の汚れが見えることを意味する)について評価し、結果を以下の表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
結果が示すように、顔料とアリールトリカルボン酸基を有するポリマーとを含む本発明のインクジェットインク組成物は、同様の有機基が結合しているがポリマー基を持たない顔料を含む改質顔料を含むインクジェットインク組成物から作成した印刷画像と匹敵するODを有する印刷画像を生成する。しかし本発明のインクジェットインク組成物の画像について、改良されたハイライター抵抗性が観察された。すなわちこれらのインクジェットインク組成物はODとハイライター抵抗性の良好なバランスを有する。
【0092】
[例3]
以下の例は、液体ビヒクル、改質顔料、及び少なくとも2つのホスホン酸基又はその塩を有するポリマーとを含むインクジェットインク組成物の調製を記載する。
【0093】
1リットルの三角フラスコに、600mLの無水THF中で100gのJoncryl683(BASFから入手できるスチレンアクリレートコポリマー、総酸は295mmol)、及び25.4gのN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSI、220mmol、ポリマーの0.75当量の利用可能な酸基)を加えた。溶液を周囲温度で撹拌し、100mLのTHF中の45gのN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、20mmol、0.75当量)をゆっくり加えた。室温で一晩撹拌後、混合物をろ過してジシクロヘキシル尿素(DCU)沈降物を取り出し、生じた活性化Joncrylポリマー溶液をさらに精製することなく使用した。
【0094】
4−アミノベンジルアミン(4−ABA、2mmol/g処理レベル)で改質したピグメントレッド122の11.67%固形分分散物の214.18gを1リットルのステンレス鋼ビーカーに加えた。ここに15.04gのアレンドロン酸ナトリウム(4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩、Zentiva,Prague,Czeck Republicから販売されている)を加えた。試料をSilverson L4RTミキサーで6000rpmで15分間混合した。
【0095】
次に87.53g(28.5%固形分)の活性化Joncrylポリマー溶液を混合物に加え、2MのNaOH溶液を用いてpHを約8.5〜9.0に調整した。この物質をSilversonミキサーを用いて7000〜7500rpmで50〜60℃で3時間混合した。2MのNaOH溶液の連続添加を使用して、3時間の間pHを8.5〜9.0に維持した。次に2MのNaOH溶液を用いて混合物のpHを10に調整し、pHを維持しながら60℃でさらに1時間混合した。また2−エチル−1−ヘキサノールを定期的に加えて発泡を制御することができた。
【0096】
Misonix音波プローブを最大設定で1時間使用して顔料混合物を超音波処理し、45μmふるいでろ過し、0.0001MのNaOHで400mL/容量で10倍量について透析ろ過した。次に分散物をDI H2Oで400mL/容量で10倍量について透析ろ過し、音波プローブを使用して設定10で2時間超音波処理した。次に試料を4500rpmで40分間遠心分離し、固形分レベルが12.33%、ナトリウムプローブにより測定したナトリウムレベルが13535ppm/固形分、実施例1に記載のように測定したポリマー結合レベルが改質顔料の総重量に基づいて50.53%であるレッド顔料分散物を得た。
【0097】
この分散物がインクジェットインク組成物に使用できることは予測されるであろう。さらにこの分散物は、ビスホスホン酸官能基を有するポリマー並びに少なくとも1つのポリマー基(ポリマー基はこのポリマーを含む)が結合したレッド顔料を含む改質レッド顔料の両方を含む。これは、出発改質レッド顔料(アミン基が結合している)とアレンドロン酸ナトリウム(これもアミン基を有する)の両方が、活性化Joncrylポリマーに対して競合すると予測されるためである。従って生じた改質レッド顔料分散物を使用することにより、液体ビヒクル、改質顔料、及びビスホスホン酸基を含む少なくとも1つの官能基又はその塩を有するポリマーとを含む本発明のインクジェットインク組成物が生成されることが予測される。
【0098】
[例4]
この例は、カルシウム指数値の測定方法を説明する。
【0099】
[方法A]
この方法のために、pH9で一連の溶液を調製し、これは0.087mMのコンゴーレッド指示薬、5mMの塩化セシウム、1wt%のMW350ポリエチレングリコールメチルエーテル、及び濃度が0〜7mM(0.2、0.5、1、2、3、4、4.5、5、6、及び7mM)の範囲の塩化カルシウムを含有した。これらの溶液のUV−VIsスペクトルを調製の1時間以内にUV−2501PCを使用して記録した。これらのスペクトルを使用して、520nmでの吸光度をカルシウム濃度に関連付ける較正曲線を作成した。
【0100】
次にポリマーに結合した特異的有機基に対応する化合物を選択した。例えば、3,4,5−トリカルボキシフェニル基又はその塩を有するポリマーを含む改質カーボンブラックについては、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸が選択されるであろう。次にpH9で0.087mMのコンゴーレッド指示薬、1wt%のMW350ポリエチレングリコールメチルエーテル、5mMの塩化カルシウム、及び目的の化合物のセシウム塩を含有する試験溶液を、pH9でのイオン濃度が5mMとなるように調製した。非錯体化カルシウム濃度を較正曲線との比較により決定した。次にこのカルシウム指数値を、log10((0.05−非錯体化カルシウム)/((非錯体化カルシウム)2))として計算した。測定は二重測定で行い平均化した。
【0101】
この方法を使用して、これらの結合した有機基を有する顔料を含む改質顔料の有機基に関連して、種々の化合物のカルシウム指数値を測定し、以下の表3Aに示す。
【0102】
【表3】

【0103】
すなわち表3Aに示すように、2−ヒドロキシピリジンN−オキシド(1−ヒドロキシピリドン)、8−ヒドロキシキノリン、及びメチレンジホスホン酸のような化合物は、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きなカルシウム指数値を有する。これらはまた、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びマロン酸と同様に、ベンゼンホスホン酸(フェニルホスホン酸)のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する。これらの又は同様の基(例えば、ビスホスホン酸塩又は少なくとも2つのホスホン酸基を有する基、その部分エステル又はその塩)を含む化合物もまた、同様に高いカルシウム指数値を有すると予測される。
【0104】
[方法B]
高レベルの色を出し、従って方法Aで使用することが困難な化合物について、第2の方法を開発した。この方法について、43CaCO3、HCl/D2O、NaOH/D2O、D2O及び水から、43CaCl2中0.01M、NaCl中0.01M、10%D2O、及びpH8又は9である水溶液を調製した。試験化合物をイオン化し化合物を溶解するようにpHを選択した。約0.65gである溶液の一部を5mmのNMRチューブに加え、0.001gに最も近くなるように秤量した。非結合43Caの化学シフトをBruker Avance II分光光度計を使用してプロトン共鳴周波数400.13MHzで測定した。試験化合物(リガンド)の0.2〜1.0M溶液を連続的に増加するように加えた。各添加後、43Ca化学シフトを測定し、δ(試料の化学シフトと非結合カルシウムの化学シフトとの差)を計算した。連続的増加は、L0/Ca0比が0.25、0.5、1、2、3、4、6、及び8になるように計画した(ここで、L0はリガンドからの錯体化、プロトン化及び遊離陰イオンの総濃度であり、Ca0は存在するすべての分子種中のカルシウムの総濃度である)。カルシウム結合指数(NMR)はlog10(X)として計算した。ここで、Xは、パラメータX及びmを以下の式
【数1】

に適合させ、データと式から予測される化学シフトとのRMS差が最小になるように決定した。なお、式中、
δは試料の43Ca化学シフトと遊離水性43Ca2+の化学シフトとの差であり、
δmは無限大L/Caにおける43Ca化学シフト対遊離43Ca2+の化学シフトの計算された差であり、
0はリガンドからの錯体化、プロトン化、及び遊離陰イオンの総濃度であり、
Ca0は存在するすべての分子種中のカルシウムの総濃度であり、
Xは適合パラメータであり、
aはリガンドLHのプロトン解離定数である。
【0105】
この方法を使用して、これらの結合した有機基を有する顔料を含む改質顔料の有機基に関連して、種々の化合物のカルシウム指数値を測定し、以下の表3Bに示す。
【0106】
【表4】

【0107】
方法Bによるカルシウム指数値は方法Aによるカルシウム指数値とは異なり、これらと直接比較することができない。
【0108】
[例5]
以下の例は、本発明の改質着色剤及び/又はインクジェットインク組成物を調製するために使用できるポリマーの調製方法を説明する。
【0109】
[開始剤の合成]
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(10g、35mmol)を塩化チオニル(20ml)に加えた。反応混合物を80℃で40分間、又は固形分が完全に溶解するまで還流した。熱溶液を氷浴に浸漬し、室温まで冷却した。溶液を冷ヘキサン(200ml)に注ぎ、5℃で4時間撹拌して生成物を沈殿させた。沈降物をろ過し、冷ヘキサン(200ml)で洗浄して4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸塩化物)を白色の固体として得た(11.2g、99%)。
【0110】
p−フェニレンジアミン(8.47g、78mmol)を無水THF(500ml)に溶解し、トリエチルアミン(7.92g、78mmol)を加えた。氷浴を使用して反応混合物を5℃に冷却した。100mlのTHF中の4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸塩化物)(11.2g、35mmol)の溶液を上記混合物に0.5時間かけて滴下して加えた。
【0111】
添加が完了後、反応混合物を0〜5℃でさらに2時間撹拌した。沈降物(トリエチルアミン塩酸塩)をろ過し、200mlのTHFで洗浄した。ろ液を部分的に濃縮(溶媒の約半分を蒸発させた)し、水(300mL)で希釈した。pHが2に低下するまで、37%HClを溶液に加えた。生じた溶液を酢酸エチル(2×200ml)で洗浄し、水層のpHを40%NaOHを使用して5に調整した。生じた溶液を酢酸エチル(2×300ml)で抽出し、一緒にした有機層を濃縮して4,4’−アゾビス(N−p−アミノフェニル−4−シアノバレルアミド)(4.0g、25%収率)を得た。
【0112】
[ビスホスホン酸塩モノマーの合成]
5倍モル過剰の水酸化テトラブチルアンモニウムを陽イオン交換樹脂とともに60℃で14時間撹拌して、テトラブチルアンモニウム陽イオン交換樹脂を調製する。抵抗性テトラブチルアンモニウム樹脂を、洗浄液のpHが7になるまで洗浄した。次に樹脂を実施例1のビスホスホン酸塩モノマー(水中10wt%、10倍モル過剰)とともに80℃で14時間撹拌した。10容量部の水で樹脂を洗浄し、水を蒸発させて、生じた塩トリス(テトラブチルアンモニウム)アロンドロンネートメタクリルアミドを回収した。
【0113】
[ポリマーの合成]
10gの上記トリス(テトラブチルアンモニウム)アロンドロネートメタクリルアミド、1.71gのイソプロピルアクリルアミド、8.29gのアクリル酸ブチル、1.0gのオクタノン(GCの内部標準物質)、及び0.08gのアミノチオフェノールを50mLのジメチルホルムアミドに溶解してコポリマーを調製し、総量75mLを得た。ジメチルホルムアミド(6mL)を、スピンバー、窒素入り口、滴下ロート、及び隔膜を取り付けた250mLの丸底フラスコに充填した。反応の間温度をサーモスタットで95〜96℃に維持した。モノマーのDMF溶液を滴下ロートに充填した。上記で調製した4,4’−アゾビス(N−p−アミノフェニル−4−シアノバレルアミド)(0.2g)を9.5mLのDMFに溶解し、皮下シリンジに充填し、これを反応容器の隔膜キャップした部分に挿入した。滴下ロートの総量の20パーセント(約15mL)を反応容器に加えた。同時に1mLの開始剤溶液を加えた。添加は以下の表4に示すスケジュールに従って行った。
【0114】
【表5】

【0115】
添加が完了後、反応混合物を室温まで冷却させた。反応混合物をロータリーエバポレーターに付して、未反応のアクリル酸ブチルを除去し、次に1mLの反応混合物を5mLの水で希釈し、透析バッグ(分子量カットオフ1000)に入れて50mM硝酸ナトリウム溶液に対して14時間透析し、次に蒸留水に対して24時間透析した。生じた溶液は0.56%の固形分であり、ポリマーは3wt%のリンであり、60meqイオン電荷/gポリマーに対応した。このポリマー溶液は、本発明の改質顔料のような改質着色剤並びに本発明のインクジェットインク組成物を調製するために、さらに精製することなく使用することができた。
【0116】
本発明の好ましい実施態様に関する上記の記載は、例示及び説明の目的で示されたものであって、本発明を網羅すること、又は開示した厳密な形態に本発明を限定することを意図していない。上述の教示に照らして変更及び変形することは可能であり、あるいは本発明の実施結果から変更及び変形することもできる。これらの実施態様は、想定した特定の用途に適したものとして、当業者が本発明を様々な実施態様で様々な変形を用いて利用可能とするために、本発明の原理及びその実際の応用を説明する目的で選択して記載した。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマー基が結合した着色剤を含む改質着色剤であって、該ポリマー基が、フェニルホスホン酸のカルシウム結合指数値よりも大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む、改質着色剤。
【請求項2】
前記着色剤が染料である、請求項1に記載の改質着色剤。
【請求項3】
前記着色剤が顔料である、請求項1に記載の改質着色剤。
【請求項4】
前記官能基が、少なくとも1つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項5】
前記官能基が、少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項6】
前記官能基が、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル又はその塩を含む、請求項5に記載の改質着色剤。
【請求項7】
前記官能基が、式−CQ(PO322を有する少なくとも1つの基又はその塩を含み、式中、QはH、R、OR、SR又はNR2であり、Rは同じであるか又は異なることができ、それはH、C1−C18アルキル基、C1−C18アシル基、アラルキル基、アルカリル基又はアリール基である、請求項6に記載の改質着色剤。
【請求項8】
前記官能基が、式−(CH2n−CQ(PO322を有する少なくとも1つの基又はその塩を含み、式中、nが1〜9である、請求項7に記載の改質着色剤。
【請求項9】
nが1〜3である、請求項8に記載の改質着色剤。
【請求項10】
前記官能基が、式−Sp−(CH2n−CQ(PO322を有する基又はその塩を含み、式中、Spがスペーサー基であり、nが0〜9である、請求項7に記載の改質着色剤。
【請求項11】
Spが−CO2−、−O2C−、−O−、−NR”−、−NR”CO−、−CONR”−、−SO2CH2CH2NR”−、−SO2CH2CH2O−又は−SO2CH2CH2S−であり、式中、R”がH又はC1−C6アルキル基である、請求項10に記載の改質着色剤。
【請求項12】
前記官能基が、式−N−[(CH2m(PO32)]2を有する少なくとも1つの基又はその塩を含み、式中、mは同じであるか又は異なることができ、それは1〜3である、請求項5に記載の改質着色剤。
【請求項13】
前記官能基が、式−(CH2n−N−[(CH2m(PO32)]2を有する少なくとも1つの基又はその塩を含み、式中、nが1〜9である、請求項12に記載の改質着色剤。
【請求項14】
前記官能基が、式−Sp−(CH2n−N−[(CH2m(PO32)]2を有する基又はその塩を含み、式中、Spがスペーサー基であり、nが0〜9である、請求項12に記載の改質着色剤。
【請求項15】
Spが−CO2−、−O2C−、−O−、−NR”−、−NR”CO−、−CONR”−、−SO2CH2CH2NR”−、−SO2CH2CH2O−又は−SO2CH2CH2S−であり、式中、R”がH又はC1−C6アルキル基である、請求項14に記載の改質着色剤。
【請求項16】
前記官能基が、式−CR=C(PO322を有する少なくとも1つの基又はその塩を含み、式中、RがH、C1−C6アルキル基、又はアリール基である、請求項5に記載の改質着色剤。
【請求項17】
前記官能基が少なくとも1つのヒドロキサム酸基又はその塩を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項18】
前記官能基が、少なくとも1つのヒドロキシピリドニル基又は少なくとも1つのヒドロキシキノロニル基を含む、請求項17に記載の改質着色剤。
【請求項19】
前記官能基が1−ヒドロキシ−2−ピリドニル基を含む、請求項18に記載の改質着色剤。
【請求項20】
前記官能基が1−ヒドロキシ−2−キノロニル基を含む、請求項18に記載の改質着色剤。
【請求項21】
前記官能基が、少なくとも1つのOH基を有する少なくとも1つの複素環基又はその塩を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項22】
前記官能基が、少なくとも1つのヒドロキシピリジニル基又は少なくとも1つのヒドロキシキノリニル基を含む、請求項21に記載の改質着色剤。
【請求項23】
前記官能基が、8−ヒドロキシ−キノリニル基又は2−ヒドロキシ−キノリニル基を含む、請求項22に記載の改質着色剤。
【請求項24】
前記複素環基が少なくとも2つのOH基を有する、請求項21に記載の改質着色剤。
【請求項25】
前記官能基が、2,3−ジヒドロキシ−ピリジニル基又は3,4−ジヒドロキシ−ピリジニル基である、請求項24に記載の改質着色剤。
【請求項26】
前記官能基が少なくとも3つのカルボン酸を有するアリール多酸基を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項27】
前記官能基が、少なくとも1つのホスホン酸基又はその塩、及び該ホスホン酸基又はその塩に対して隣位の又はそれと同一の原子上に結合した少なくとも1つの第2のイオン基、イオン化可能な基又は塩基性基を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項28】
前記第2のイオン基、イオン化可能な基又は塩基性基がカルボン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシル基又はそれらの塩である、請求項27に記載の改質着色剤。
【請求項29】
前記官能基が、式−CQ(PO32)(CO2H)を有する少なくとも1つの基又はその塩を含み、式中、QはH、R、OR、SR又はNR3であり、Rは同じであるか又は異なることができ、それはH、C1−C18アルキル基、C1−C18アシル基、アラルキル基、アルカリル基又はアリール基である、請求項27に記載の改質着色剤。
【請求項30】
前記官能基が、式−CR(PO32)(OH)を有する少なくとも1つの基又はその塩を含み、式中、RがH又はC1−C6アルキル基である、請求項27に記載の改質着色剤。
【請求項31】
前記官能基が、式−X−(PO32)(OH)を有する基又はその塩を含み、式中、Xがアリーレン基又はヘテロアリーレン基であり、PO32基及びOH基又はそれらの塩が互いにオルトである、請求項27に記載の改質着色剤。
【請求項32】
前記官能基が少なくとも1つのカルボン酸基を有するヘテロアリール基又はその塩を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項33】
前記ヘテロアリール基が少なくとも2つのカルボン酸基又はその塩を有する、請求項32に記載の改質着色剤。
【請求項34】
前記官能基が2,6−ピリジニル−ジカルボン酸基又はその塩である、請求項33に記載の改質着色剤。
【請求項35】
前記官能基が、少なくとも1つのニトロソ基と少なくとも1つのOH基を有するアリール基又はその塩を含む、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項36】
前記官能基がニトロソフェノール基又はその塩である、請求項35に記載の改質着色剤。
【請求項37】
前記官能基が、少なくとも1つのOH基、少なくとも1つのNH2基、又は少なくとも1つのOH基と少なくとも1つのNH2基を有するアゾアレーン基を含み、かつ式Ar1−N=N−Ar2を有し、式中、Ar1及びAr2は同じであるか又は異なることができ、それらはアリーレン基又はアリール基であり、Ar1又はAr2の少なくとも一方はアリーレン基である、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項38】
前記官能基が構造−(HO)C63−N=N−C63Z(OH)を有する基であり、式中、Zがクロロ基又はニトロ基である、請求項37に記載の改質着色剤。
【請求項39】
前記顔料に前記ポリマー基とは異なる少なくとも1つの第2の有機基がさらに結合している、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項40】
前記第2の有機基が、少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含む、請求項39に記載の改質着色剤。
【請求項41】
前記第2の有機基がフェニルホスホン酸のカルシウム指数値よりも大きなカルシウム指数値を有する、請求項39に記載の改質着色剤。
【請求項42】
前記第2の有機基が1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する、請求項41に記載の改質着色剤。
【請求項43】
前記第2の有機基がポリマー基である、請求項39に記載の改質着色剤。
【請求項44】
前記ポリマーが、前記官能基を含む少なくとも1つの試薬と少なくとも1つの反応性基を有するポリマーとを反応させることによって調製される、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項45】
前記試薬がアミン試薬であり、前記反応性基がカルボン酸基、カルボン酸エステル基又は無水物を含む、請求項44に記載の改質着色剤。
【請求項46】
前記ポリマーが、前記官能基を含む少なくとも1つの試薬と、少なくとも1つの反応性基を有するポリマーと、少なくとも1つの結合試薬とを反応させることによって調製される、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項47】
前記試薬がアミン試薬であり、前記反応性基がアミノ基であり、前記結合試薬がジカルボン酸試薬又はその無水物である、請求項46に記載の改質着色剤。
【請求項48】
前記ポリマーが前記官能基を含む少なくとも1つのモノマーの重合によって調製される、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項49】
前記モノマーが、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、スチレンモノマー、ビニルエステルモノマー又はビニルエーテルモノマーである、請求項48に記載の改質着色剤。
【請求項50】
前記モノマーが、少なくとも1つのビスホスホン酸基又はアリール多酸基を含むアクリルアミド又はメタクリルアミドである、請求項48に記載の改質着色剤。
【請求項51】
前記ポリマーが、フェニルホスホン酸のカルシウム指数値よりも大きなカルシウム指数値を有していない少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含む少なくとも1つの追加のモノマーの重合によって調製される、請求項48に記載の改質着色剤。
【請求項52】
前記追加のモノマーがアルキルアクリルアミド又はアルキルメタクリルアミドである、請求項51に記載の改質着色剤。
【請求項53】
前記ポリマーが200以下の酸価を有する、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項54】
前記ポリマーが100未満のTgを有する、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項55】
前記ポリマー基が前記着色剤の0.1〜50wt%の量で存在する、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項56】
前記顔料が、青色顔料、黒色顔料、褐色顔料、青緑色顔料、緑色顔料、白色顔料、紫色顔料、赤紫色顔料、赤色顔料、黄色顔料、橙色顔料又はそれらの混合物を含む有機着色顔料である、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項57】
前記顔料がカーボンブラックである、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項58】
前記官能基が1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する、請求項3に記載の改質着色剤。
【請求項59】
顔料と、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム結合指数値以上のカルシウム指数値を有する少なくとも1つの官能基を有するポリマーとを含む改質着色剤であって、該ポリマーが該顔料上のコーティングである、改質着色剤。
【請求項60】
前記顔料に少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方が結合している、請求項59に記載の改質着色剤。
【請求項61】
前記顔料に少なくとも1つの有機基が結合し、該有機基が少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含む、請求項59に記載の改質着色剤。
【請求項62】
少なくとも1つのポリマー基が結合した着色剤を含む改質着色剤であって、該ポリマー基が、
i)少なくとも1つのホスホン酸基又はその塩、
ii)少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩、
iii)少なくとも1つのヒドロキサム酸基又はその塩、
iv)少なくとも1つのホスホン酸基又はその塩と少なくとも1つの第2のイオン基、イオン化可能な基又は塩基性基、
v)少なくとも1つのニトロソ基と少なくとも1つのOH基を有するアリール基又はその塩、又は
vi)少なくとも3つのカルボン酸を有する少なくとも1つのアリール多酸基
を含む少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む、改質着色剤。
【請求項63】
少なくとも1つのポリマー基が結合した顔料を含む改質着色剤であって、該ポリマー基が、
i)少なくとも1つのOH基を有する少なくとも1つの複素環基又はその塩、
ii)少なくとも1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基又はその塩、又は
iii)少なくとも1つのOH基、少なくとも1つのNH2基、又は1つのOH基と1つのNH2基を有するアゾアレーン基であって、かつ式Ar1−N=N−Ar2を有し、式中、Ar1及びAr2は同じであるか又は異なることができ、それらはアリーレン基又はアリール基であり、Ar1又はAr2の少なくとも一方はアリーレン基であるアゾアレーン基
を含む少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む、改質着色剤。
【請求項64】
a)液体ビヒクルと、b)少なくとも1つの着色剤と、c)少なくとも1つのポリマーとを含むインクジェットインク組成物であって、該ポリマーが1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する少なくとも1つの官能基を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項65】
前記着色剤が染料である、請求項64に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項66】
前記着色剤が顔料である、請求項64に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項67】
前記顔料に少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方が結合している、請求項66に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項68】
前記顔料に少なくとも1つの有機基が結合し、該有機基が少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含む、請求項66に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項69】
前記ポリマーが前記顔料上のコーティングである、請求項66に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項70】
前記着色剤が、少なくとも1つのポリマー基が結合した顔料を含む改質顔料であり、該ポリマー基が前記ポリマーを含む、請求項64に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項71】
a)液体ビヒクルと、b)少なくとも1つのポリマー基が結合した着色剤を含む少なくとも1つの改質着色剤とを含むインクジェットインク組成物であって、該ポリマー基が、
i)少なくとも1つのホスホン酸基又はその塩、
ii)少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル又はその塩、
iii)少なくとも1つのヒドロキサム酸基又はその塩、
iv)少なくとも1つのホスホン酸基又はその塩と少なくとも1つの第2のイオン基又はイオン化可能な基、
v)少なくとも1つのニトロソ基と少なくとも1つのOH基を有するアリール基又はその塩、又は
vi)少なくとも3つのカルボン酸を有する少なくとも1つのアリール多酸基
を含む少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む、インクジェットインク組成物。
【請求項72】
a)液体ビヒクルと、b)少なくとも1つのポリマー基が結合した着色剤を含む少なくとも1つの改質着色剤とを含むインクジェットインク組成物であって、該ポリマー基が、
i)少なくとも1つのOH基を有する少なくとも1つの複素環基又はその塩、
ii)少なくとも1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基又はその塩、又は
iii)少なくとも1つのOH基、少なくとも1つのNH2基、又は1つのOH基と1つのNH2基を有するアゾアレーン基であって、かつ式Ar1−N=N−Ar2を有し、式中、Ar1及びAr2は同じであるか又は異なることができ、それらはアリーレン基又はアリール基であり、Ar1又はAr2の少なくとも一方はアリーレン基であるアゾアレーン基
を含む少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む、インクジェットインク組成物。
【請求項73】
a)液体ビヒクルと、b)少なくとも1つのポリマー基が結合した着色剤を含む少なくとも1つの改質着色剤とを含むインクジェットインク組成物であって、該ポリマー基が、フェニルホスホン酸のカルシウム結合指数値よりも大きなカルシウム指数値を有する少なくとも1つの官能基を有するポリマーを含む、インクジェットインク組成物。
【請求項74】
前記官能基が1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値以上のカルシウム指数値を有する、請求項73に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項75】
前記ポリマー基とは異なる少なくとも1つの第2の有機基が結合した顔料を含む第2の改質顔料をさらに含む、請求項73に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項76】
前記第2の有機基が、少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能な基又はそれらの両方を含む、請求項75に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項77】
前記第2の有機基がフェニルホスホン酸のカルシウム指数値よりも大きなカルシウム指数値を有する、請求項75に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項78】
少なくとも1つの第2のポリマーが結合又は吸着した第2の顔料を含む第2の改質顔料をさらに含む、請求項73に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項79】
前記第2のポリマーが前記第2の顔料上のコーティングである、請求項78に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項80】
前記第2の改質顔料が、少なくとも1つの第2のポリマー基が結合した第2の顔料であり、該第2のポリマー基が前記第2のポリマーを含む、請求項78に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項81】
前記ビヒクルが水性ビヒクルである、請求項73に記載のインクジェットインク組成物。

【公表番号】特表2009−513802(P2009−513802A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538087(P2008−538087)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042347
【国際公開番号】WO2007/053563
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】