説明

改質硫黄中間資材フレーク製造方法及びその製造システム

【課題】 非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬、取り扱いが容易な改質硫黄中間資材フレークを製造する。
【解決手段】 溶融硫黄タンク1からの溶融硫黄と硫黄改質剤タンク2からの硫黄改質剤を受けて混合し改質硫黄を製造し、収容物を所定温度以上に加温する改質硫黄製造タンク3と、このタンク3からの改質硫黄と細骨材ホットビン4からの細骨材を受けて混合し改質硫黄中間資材を製造し、収容物を所定温度以上に加温する改質硫黄中間資材タンク5と、このタンク5からの改質硫黄中間資材を収容する貯蔵槽6と、貯蔵槽6からの改質硫黄中間資材を収容して攪拌し上記所定温度未満に下げる固化促進槽7と、温度が下げられた改質硫黄中間資材が流下されるのを受ける金属製ベルト31を備え該金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を形成する装置8と、該形成された薄板状資材を破砕してフレーク状とする破砕機8aとを備えて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄改質剤で変性した改質硫黄と骨材とを混合して製造され、土木用又は建設用の資材として利用でき、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬、取り扱いが容易な改質硫黄中間資材フレークを製造する方法及びその製造システムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる資材として、常温では固体でありおよそ119℃を超えると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した硫黄資材は、セメントを使用する通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
硫黄資材は、コンクリートに比べて高強度で遮水性に優れ、かつ耐酸性の高い材料として知られているが、硫黄は着火性を有しており危険物扱いであるので、現場で溶融し打設することが困難である。ところが、大型海洋構造物(魚礁、藻礁、消波ブロック等)、護岸構造物のような場合は、硫黄資材を使用現場に近いところで製造する必要がある。そこで、このような状況を改善するために、溶融硫黄に添加剤として硫黄改質剤を混合して変性し改質硫黄を製造することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2005−82475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の硫黄や硫黄の改質に使用する添加剤(硫黄改質剤)は危険物であって運搬が困難であり、またその製造装置は防爆装置である必要がある。加えて、製造現場での硫黄の保管も専用の溶融硫黄タンクが必要である。したがって、硫黄資材を利用するには、運搬や製造のコストが高くなるものであった。
【0005】
また、特許文献2に記載されているように、改質硫黄と細骨材とを混合して溶融物状の改質硫黄中間資材を製造したり、この溶融物状の改質硫黄中間資材と粗骨材とを混合、固化して改質硫黄固化体を製造することが提案されている。この改質硫黄中間資材や改質硫黄固化体は非危険物扱いとされるが、製造時に硫黄を溶融した状態で取り扱う必要があるため、その製造システムは、溶融した硫黄資材が貯蔵される箇所、及び流動する配管系の全設備を、溶融硫黄の固化点である119℃以上に常時加温しなければならない。しかしながら、現在の改質硫黄固化体の製造においては、溶融した硫黄資材が貯蔵され及び流動する全設備を、所定温度以上に常時加温する製造システムは提供されていない。したがって、安全かつ容易に改質硫黄固化体を製造することができないものであった。
【0006】
さらに、上記溶融物状の改質硫黄中間資材では、貯蔵や運搬が容易でなく、取り扱いも不便であるが、その溶融物状の改質硫黄中間資材を、貯蔵や運搬、取り扱いが容易な薄板状又はフレーク状に形成する製造方法や製造システムは提供されていない。したがって、誰でも安全かつ容易に改質硫黄中間資材を利用できないことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬、取り扱いが容易な改質硫黄中間資材フレークを製造する方法及びその製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による改質硫黄中間資材フレーク製造方法は、溶融状態の硫黄と該溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを、第一の所定温度以上に加温した状態で混合して改質硫黄を製造する工程と、上記製造された改質硫黄と骨材とを、第二の所定温度以上に加温した状態で混合して改質硫黄中間資材を製造する工程と、上記製造された改質硫黄中間資材を貯蔵槽に収容して第二の所定温度より低い第三の所定温度に下げて貯蔵する工程と、上記貯蔵された改質硫黄中間資材を固化促進槽に収容して攪拌すると共に第三の所定温度より低い第四の所定温度に下げる工程と、上記温度が下げられた改質硫黄中間資材を、所定距離離れた2部位間で回転移動する無端帯状の金属製ベルト上に所定量を連続的に流下させる工程と、上記金属製ベルトの回転移動距離の前半部では裏面側から温水で該金属製ベルトを加温し、後半部では同じく裏面側から冷水で該金属製ベルトを冷却することにより金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を製造する工程と、上記製造された薄板状資材を破砕してフレーク状とする工程と、を行うものである。
【0009】
このような方法により、溶融状態の硫黄と該溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを、第一の所定温度以上に加温した状態で混合して改質硫黄を製造し、この製造された改質硫黄と骨材とを、第二の所定温度以上に加温した状態で混合して改質硫黄中間資材を製造し、この製造された改質硫黄中間資材を貯蔵槽に収容して第二の所定温度より低い第三の所定温度に下げて貯蔵し、この貯蔵された改質硫黄中間資材を固化促進槽に収容して攪拌すると共に第三の所定温度より低い第四の所定温度に下げ、この温度が下げられた改質硫黄中間資材を、所定距離離れた2部位間で回転移動する無端帯状の金属製ベルト上に所定量を連続的に流下させ、上記金属製ベルトの回転移動距離の前半部では裏面側から温水で該金属製ベルトを加温し、後半部では同じく裏面側から冷水で該金属製ベルトを冷却することにより金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を製造し、この製造された薄板状資材を破砕してフレーク状とする。
【0010】
また、上記金属製ベルトの回転移動距離の前半部において裏面側から温水で該金属製ベルトを加温する温度は、50〜70℃としたものである。これにより、金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化し易くする。
【0011】
そして、本発明による改質硫黄中間資材フレーク製造システムは、溶融状態の硫黄を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する溶融硫黄タンクと、上記溶融硫黄を変性する硫黄改質剤を内部に収容する硫黄改質剤タンクと、上記溶融硫黄タンクからの溶融硫黄と上記硫黄改質剤タンクからの硫黄改質剤とを受け入れて混合し改質硫黄を製造すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する改質硫黄製造タンクと、骨材を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する骨材ホットビンと、上記改質硫黄製造タンクからの改質硫黄と上記骨材ホットビンからの骨材とを受け入れて混合し改質硫黄中間資材を製造すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する改質硫黄中間資材タンクと、上記改質硫黄中間資材タンクからの改質硫黄中間資材を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度に維持する貯蔵槽と、上記貯蔵槽からの改質硫黄中間資材を収容して攪拌すると共に上記所定温度未満に下げる固化促進槽と、上記固化促進槽で温度が下げられた改質硫黄中間資材の所定量が連続的に流下されるのを受け、所定距離離れた2部位間で回転移動する無端帯状の金属製ベルトを備え、該金属製ベルトの回転移動距離の前半部では裏面側からの温水でその金属製ベルトが加温され、後半部では同じく裏面側からの冷水でその金属製ベルトが冷却されて上記金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を形成する薄板状資材形成装置と、上記形成された薄板状資材を破砕してフレーク状とする破砕機と、を備えて成り、上記溶融硫黄タンクから貯蔵槽に至るまでの各装置間を相互に連結する配管系には、内部の流動物を所定温度以上に加温する加熱手段を付加したものである。
【0012】
このような構成により、溶融硫黄タンクで溶融状態の硫黄を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温し、上記溶融硫黄を変性する硫黄改質剤を硫黄改質剤タンクの内部に収容しておき、改質硫黄製造タンクで上記溶融硫黄タンクからの溶融硫黄と上記硫黄改質剤タンクからの硫黄改質剤とを受け入れて混合し改質硫黄を製造すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温し、骨材ホットビンにより骨材を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温し、改質硫黄中間資材タンクで上記改質硫黄製造タンクからの改質硫黄と上記骨材ホットビンからの骨材とを受け入れて混合し改質硫黄中間資材を製造すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温し、貯蔵槽により上記改質硫黄中間資材タンクからの改質硫黄中間資材を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度に維持し、固化促進槽で上記貯蔵槽からの改質硫黄中間資材を収容して攪拌すると共に上記所定温度未満に下げ、上記固化促進槽で温度が下げられた改質硫黄中間資材の所定量が、薄板状資材形成装置にて所定距離離れた2部位間で回転移動するように設けられた無端帯状の金属製ベルトの上に連続的に流下されるのを受け、該金属製ベルトの回転移動距離の前半部では裏面側からの温水でその金属製ベルトが加温され、後半部では同じく裏面側からの冷水でその金属製ベルトが冷却されて上記金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を形成し、この形成された薄板状資材を破砕機で破砕してフレーク状とする。このとき、上記溶融硫黄タンクから貯蔵槽に至るまでの各装置間を相互に連結する配管系に付加された加熱手段により、配管系内部の流動物を所定温度以上に加温する。これにより、改質硫黄中間資材フレークの製造において、溶融した硫黄資材が貯蔵され及び流動する全設備を、所定温度以上に常時加温する。
【0013】
また、上記加温する所定温度は、119℃以上としたものである。これにより、改質硫黄中間資材フレークの製造において、全設備を溶融硫黄の固化点である119℃以上に常時加温する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、改質硫黄中間資材フレークの製造において、溶融した硫黄資材が貯蔵され及び流動する全設備を、所定温度以上に常時加温することができる。したがって、製造時に硫黄又は改質硫黄を溶融した状態で取り扱うことができる。また、貯蔵や運搬、取り扱いが容易な薄板状又はフレーク状に形成することができる。このことから、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬、取り扱いが容易な改質硫黄中間資材フレークを製造することができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、金属製ベルトの回転移動距離の前半部において裏面側から温水で該金属製ベルトを加温する温度を、50〜70℃とすることにより、金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化し易くすることができる。
【0016】
そして、請求項3に係る発明によれば、改質硫黄中間資材フレークの製造において、溶融した硫黄資材が貯蔵され及び流動する全設備を、所定温度以上に常時加温することができる。したがって、製造時に硫黄又は改質硫黄を溶融した状態で取り扱うことができる。また、貯蔵や運搬、取り扱いが容易な薄板状又はフレーク状に形成することができる。このことから、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬、取り扱いが容易な改質硫黄中間資材フレークを安全かつ容易に製造することができる。
【0017】
また、請求項4に係る発明によれば、改質硫黄中間資材フレークの製造において、全設備を溶融硫黄の固化点である119℃以上に常時加温することができる。したがって、改質硫黄中間資材フレークの製造時に硫黄又は改質硫黄を溶融した状態で取り扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による改質硫黄中間資材フレーク製造システムの実施形態を示す図である。この改質硫黄中間資材フレーク製造システムは、硫黄改質剤で変性した改質硫黄と骨材とを混合して製造され、土木用又は建設用の資材として利用でき、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬、取り扱いが容易な改質硫黄中間資材フレークを製造するもので、溶融硫黄タンク1と、硫黄改質剤タンク2と、改質硫黄製造タンク3と、骨材ホットビン4と、改質硫黄中間資材タンク5と、貯蔵槽6と、固化促進槽7と、薄板状資材形成装置8と、破砕機8aと、を備えて成る。
【0019】
溶融硫黄タンク1は、溶融状態の硫黄を内部に収容すると共に内部の収容物(溶融硫黄)を所定温度(例えば119℃)以上に加温するものである。硫黄は、通常の硫黄単体であり、例えば天然産、又は石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。溶融硫黄は、例えば150℃の温度で解けており、図示省略のタンクローリーから供給パイプ9を介して上記溶融硫黄タンク1内に供給される。そして、この溶融硫黄タンク1は、ジャケット式構造とされており、内部の溶融硫黄を加温する加熱手段が付加されている。すなわち、上記溶融硫黄タンク1の外部に、第1の熱媒加熱器10が設けられており、水その他の熱媒体を電気ヒーター等で加熱し、該加熱された熱媒体を供給ライン11及び還流ライン12で上記溶融硫黄タンク1のジャケット式構造部に供給するようになっている。
【0020】
硫黄改質剤タンク2は、上記溶融硫黄を変性する硫黄改質剤を内部に収容するものである。溶融硫黄を変性するとは、例えば硫黄改質剤によって硫黄を重合することである。上記硫黄改質剤としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、テトラハイドロインデン(THI)、若しくはシクロペンタジエンと、そのオリゴマー(2〜5量体混合物)、ジペンテン、ビニルトルエン、ジシクロペンテン等のオレフィン化合物類の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
改質硫黄製造タンク3は、上記溶融硫黄タンク1からの溶融硫黄と上記硫黄改質剤タンク2からの硫黄改質剤とを受け入れて混合し改質硫黄を製造すると共に内部の収容物(改質硫黄)を所定温度(例えば119℃)以上に加温するものである。上記改質硫黄製造タンク3の天井部には、溶融硫黄タンク1からの供給パイプ13が連結されると共に、硫黄改質剤タンク2からの供給パイプ14が連結されており、タンク内部には混合攪拌手段として例えば錨型回転羽15が設けられている。ここで製造される改質硫黄は、上記硫黄改質剤により硫黄を重合したものであって、硫黄と硫黄改質剤との反応物であることが好ましい。そして、この改質硫黄製造タンク3は、ジャケット式構造とされており、内部の改質硫黄を加温する加熱手段が付加されている。すなわち、前述の第1の熱媒加熱器10からの供給ライン11及び還流ライン12が改質硫黄製造タンク3に接続されており、上記第1の熱媒加熱器10で加熱された熱媒体が供給ライン11及び還流ライン12で改質硫黄製造タンク3のジャケット式構造部に供給されるようになっている。
【0022】
骨材ホットビン4は、骨材を内部に収容すると共に内部の収容物(骨材)を所定温度(例えば150℃)以上に加温するものである。骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されないが、一般にコンクリートで用いられる骨材、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属製造時に生成する副生物、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、石英質岩石、粘土鉱物、活性炭、ガラス粉末やこれらと同等の有害物質を含有しない無機系、有機系等の骨材も使用可能である。これらの骨材の中でも、粒経分布の調整が容易で均一なものを大量に入手しやすい点で、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、石英粉、砂、ガラス粉末及び電気集塵灰からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。なお、前記骨材は、通常、粒径5mm以下、好ましくは1mm以下の骨材からなる。前記骨材の粒径が5mmを超えると再溶融が速やかにできない。このような骨材の粒径調整は公知技術が利用でき、例えば、篩等で調整することができる。
【0023】
上記骨材として石炭灰を使用する場合は、図1において、石炭灰サイロ16内に収容された石炭灰をロータリーキルンなどの乾燥キルン17内に投入して例えば150℃で焼成して乾燥させ、局部的に電気ヒーター等で加熱されたベルトコンベアなどの搬送装置18で移送ポンプ19へ移し、この移送ポンプ19で圧送して上記骨材ホットビン4へ送る。そして、この骨材ホットビン4も例えば側壁部が電気ヒーター等で加熱されており、内部の骨材を例えば150℃程度に加温するようになっている。
【0024】
改質硫黄中間資材タンク5は、上記改質硫黄製造タンク3からの改質硫黄と上記骨材ホットビン4からの骨材とを受け入れて混合し改質硫黄中間資材を製造すると共に内部の収容物(改質硫黄中間資材)を所定温度(例えば119℃)以上に加温するものである。上記改質硫黄中間資材タンク5の天井部には、改質硫黄製造タンク3からの供給パイプ20が連結されると共に、骨材ホットビン4からの供給パイプ21が連結されており、タンク内部には混合攪拌手段として例えば錨型回転羽15が設けられている。また、タンク内部の上部には、高速で回転する2個の回転羽22も設けられている。これは、タンク上部よりタンク内部に落下してくる約150℃前後の乾燥した骨材を拡散し、先に供給された改質硫黄と混合し易くするためと、タンク内部で改質硫黄と骨材とが素早く均一に混合するようにするためである。
【0025】
そして、上記改質硫黄中間資材タンク5は、ジャケット式構造とされており、内部の改質硫黄中間資材を加温する加熱手段が付加されている。すなわち、前述の第1の熱媒加熱器10からの供給ライン11及び還流ライン12が改質硫黄中間資材タンク5に接続されており、上記第1の熱媒加熱器10で加熱された熱媒体が供給ライン11及び還流ライン12で改質硫黄中間資材タンク5のジャケット式構造部に供給されるようになっている。また、上記骨材ホットビン4からの骨材は、前述の搬送装置18と同様の搬送装置18′で加温されながら供給パイプ21で供給される。
【0026】
ここで製造される改質硫黄中間資材において、前記改質硫黄と骨材との混合割合は、例えば2:1又は1.5:1である。このように製造された改質硫黄中間資材の粘度は、概ね750mPa・cm前後となる。また、上記のように製造される改質硫黄中間資材において、小ガス炎着火試験によって検定される非危険物を充足させるには、例えば骨材の配合量を多くするほど達成させ易い。そして、上記改質硫黄中間資材タンク5の出口配管5a以降の配管設備は、非危険物扱いとして消防法の制約を回避できる。
【0027】
貯蔵槽6は、上記改質硫黄中間資材タンク5からの改質硫黄中間資材を内部に収容すると共に内部の収容物(改質硫黄中間資材)を所定温度(例えば120℃前後)に維持するものである。改質硫黄中間資材タンク5からの改質硫黄中間資材は、出口配管5aに連続して接続された供給パイプ23を介して約140℃前後の温度で圧送されてきて、一旦、上記貯蔵槽6へ注入貯蔵される。該貯蔵槽6の内部には、図2に示すように、攪拌手段として回転羽24が設けられており、内部の改質硫黄中間資材を攪拌するようになっている。
【0028】
そして、上記貯蔵槽6は、ジャケット式構造とされており、内部の改質硫黄中間資材を加温する加熱手段が付加されている。すなわち、図2に示すように、貯蔵槽6の外部に、第2の熱媒加熱器25が設けられており、水その他の熱媒体を電気ヒーター等で加熱し、該加熱された熱媒体を供給ライン26及び還流ライン27で上記貯蔵槽6のジャケット式構造部に供給するようになっている。この熱媒加熱器25からの熱媒体の供給により、貯蔵槽6の内部を任意の温度に設定できる。このとき、上記貯蔵槽6の内部に収容された改質硫黄中間資材の温度が概ね120℃前後となるように、常温の水による冷却装置を併せて設置してもよい。このようにするのは、上記改質硫黄中間資材を後述のように薄板状に固化させるための種晶を形成させるためである。
【0029】
固化促進槽7は、上記貯蔵槽6からの改質硫黄中間資材を収容して攪拌すると共に上記所定温度未満(例えば110℃前後)に下げるものである。上記貯蔵槽6内で120℃前後に調整された改質硫黄中間資材は、該貯蔵槽6の底部に接続された供給パイプ28及びポンプ29によって圧送されて、供給パイプ30を介して固化促進槽7へ注入される。該固化促進槽7の内部には、貯蔵槽6と同様に攪拌手段として回転羽24が設けられており、内部の改質硫黄中間資材を勢いよく攪拌するようになっている。これは、上記改質硫黄中間資材を後述のように薄板状に固化させるための種晶の形成を促すのと、該改質硫黄中間資材の温度を約110℃前後に冷却するためである。
【0030】
薄板状資材形成装置8は、上記固化促進槽7で温度が下げられた改質硫黄中間資材の所定量が連続的に流下されるのを受け、所定距離離れた2部位間で回転移動する無端帯状の金属製ベルト31(図2参照)を備え、該金属製ベルト31の回転移動距離の前半部では裏面側からの温水でその金属製ベルト31が加温され、後半部では同じく裏面側からの冷水(例えば常温の水)でその金属製ベルト31が冷却されて上記金属製ベルト31上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を形成するものである。ここで、上記金属製ベルト31の回転移動距離の前半部において裏面側から温水で該金属製ベルト31を加温する温度は、例えば50〜70℃とされる。
【0031】
具体的には、図2に示すように、所定距離(例えば7〜12m)離れた2部位に、第1のプーリ又はスプロケット32aと第2のプーリ又はスプロケット32bとが設けられ、この第1及び第2のプーリ又はスプロケット32a,32b間にスチールベルト等の金属製ベルト31が張られている。この金属製ベルト31は、つなぎ目が無くて高張力で張ってある。上記金属製ベルト31の回転移動距離の前半部(例えば3〜6m)の下方には、温水供給部33が設けられ、この温水供給部33からの配管33aが金属製ベルト31の上側裏面に延びており、その先端部の噴射パイプ33bから上記金属製ベルト31の上側裏面に温水を噴射するようになっている。また、上記金属製ベルト31の回転移動距離の後半部(例えば上記前半部より後方4〜6m)の下方には、冷水供給部34が設けられ、この冷水供給部34からの配管34aが金属製ベルト31の上側裏面に延びており、その先端部の噴射パイプ34bから上記金属製ベルト31の上側裏面に冷水を噴射するようになっている。このような構造の金属製ベルト31を利用した装置は、スチールベルトシステムと呼ばれている。
【0032】
上記第1のプーリ又はスプロケット32a側の金属製ベルト31の上面には、前記固化促進槽7で温度が下げられた改質硫黄中間資材が、開閉弁35を介して所定量が連続的に流下されるようになっており、これを上記金属製ベルト31で受ける。そして、上記開閉弁35が位置する金属製ベルト31の回転移動方向のすぐ後方には、例えばローラー状に形成された固化促進バー36が該金属製ベルト31の幅方向に設けられている。この固化促進バー36は、図示省略の昇降装置によって矢印のように上下動して高さ調節可能とされており、上記金属製ベルト31上で冷却固化して形成される薄板状資材の厚みを調節するようになっている。
【0033】
なお、上記固化促進バー36は、二重構造とされており、その表面温度を加温する加熱手段が付加されている。すなわち、前述の第2の熱媒加熱器25からの供給ライン37及び還流ライン38が固化促進バー36に接続されており、上記第2の熱媒加熱器25で加熱された熱媒体が供給ライン37及び還流ライン38で固化促進バー36の二重構造部に供給されるようになっており、該固化促進バー36を例えば130〜140℃程度に加温する。
【0034】
破砕機8aは、上記薄板状資材形成装置8で形成された薄板状資材を破砕してフレーク状とするもので、例えば回転軸の外周面に板状の刃が放射状に取り付けられた構造とされている。フレーク状に破砕された改質硫黄中間資材の一片は、例えば3〜5cm程度とされるが、破砕された改質硫黄中間資材の大きさは、上記破砕機8aの刃の形状を変更することで如何ようにも調節できる。
【0035】
このようなシステム全体の構造において、上記溶融硫黄タンク1から貯蔵槽6に至るまでの各装置間を相互に連結する配管系は全て二重構造とし、その配管系には内部の流動物を所定温度(例えば119℃)以上に加温する加熱手段が付加されている。すなわち、前記溶融硫黄タンク1の外部に、第3の熱媒加熱器42が設けられており、水その他の熱媒体を電気ヒーター等で加熱し、該加熱された熱媒体を供給ライン43及び還流ライン44によって、上記溶融硫黄タンク1への溶融硫黄の供給パイプ9、該溶融硫黄タンク1から改質硫黄製造タンク3への溶融硫黄の供給パイプ13、該改質硫黄製造タンク3から改質硫黄中間資材タンク5への改質硫黄の供給パイプ20、該改質硫黄中間資材タンク5から貯蔵槽6への改質硫黄中間資材の供給パイプ23などに供給するようになっている。これにより、改質硫黄中間資材フレークの製造システムにおいて、製造途中の硫黄資材が硫黄の固化点以上に常時加温され、安全かつ容易に改質硫黄中間資材フレークを製造することができる。
【0036】
なお、図1には示していないが、上述の改質硫黄中間資材フレーク製造システムにおいて、前記溶融硫黄、改質硫黄又は改質硫黄中間資材が収容されている部分に対して窒素ガスを供給する窒素ガス発生装置を付加してもよい。この場合は、不活性ガスである窒素ガスでシール又はパージすることで、硫黄の酸化を防止すると共に、硫化水素が発生しないようにすることができる。
【0037】
次に、このように構成された改質硫黄中間資材フレーク製造システムを使用して、改質硫黄中間資材フレークを製造する方法について説明する。図1において、まず、溶融硫黄タンク1で溶融状態の硫黄を内部に収容すると共に内部の溶融硫黄を所定温度(例えば119℃)以上に加温しておく。一方、硫黄改質剤タンク2の内部には、上記溶融硫黄を変性するための硫黄改質剤を収容しておく。
【0038】
この状態で、上記溶融硫黄タンク1から供給パイプ13で送り出される溶融硫黄と、上記硫黄改質剤タンク2から供給パイプ14で送り出される硫黄改質剤とを、改質硫黄製造タンク3で受け入れて混合し改質硫黄を製造すると共に、内部の改質硫黄を第一の所定温度(例えば119℃)以上に加温する。一方、骨材ホットビン4の内部には、骨材を収容すると共に内部の骨材を所定温度(例えば150℃)以上に加温しておく。
【0039】
次に、上記改質硫黄製造タンク3から供給パイプ20で送り出される改質硫黄と、上記骨材ホットビン4から供給パイプ21で送り出される骨材とを、改質硫黄中間資材タンク5で受け入れて混合し改質硫黄中間資材を製造すると共に、内部の改質硫黄中間資材を第二の所定温度(例えば140℃)以上に加温する。このようにして製造された改質硫黄中間資材は非危険物扱いとされ、上記改質硫黄中間資材タンク5の出口配管5a以降の配管設備は、消防法の制約を回避できる。
【0040】
次に、上記改質硫黄中間資材タンク5から出口配管5a及び供給パイプ23で送り出される改質硫黄中間資材を貯蔵槽6の内部に収容すると共に、内部の改質硫黄中間資材を上記第二の所定温度(例えば140℃)より低い第三の所定温度(例えば120℃前後)に下げて貯蔵しておく。これは、上記改質硫黄中間資材を後述のように薄板状に固化させるための種晶を形成させるためである。
【0041】
その後、上記貯蔵槽6から供給パイプ28及びポンプ29によって上記改質硫黄中間資材が圧送されて、供給パイプ30を介して固化促進槽7へ注入収容する。そして、該固化促進槽7内の回転羽24によって内部の改質硫黄中間資材を勢いよく攪拌する。これは、上記改質硫黄中間資材を後述のように薄板状に固化させるための種晶の形成を促すのと、該改質硫黄中間資材の温度を、第三の所定温度(例えば120℃前後)より低い第四の所定温度(例えば110℃前後)に下げるためである。
【0042】
この状態で、上記固化促進槽7の底部の開閉弁35を開いて、上記温度が下げられた改質硫黄中間資材を、金属製ベルト31上に所定量を連続的に流下する。このとき、金属製ベルト31上に流下された改質硫黄中間資材は、該金属製ベルト31の幅方向に広がっていくが、所定の高さに調節された固化促進バー36によって、上記金属製ベルト31上で冷却固化して形成される薄板状資材の厚みが調節される。その厚みは、例えば3〜5mm程度とされる。
【0043】
そして、図2において、薄板状資材形成装置8により、上記金属製ベルト31の回転移動距離の前半部では温水供給部33により裏面側から噴射される温水でその金属製ベルト31が加温され(例えば50〜70℃)、後半部では冷水供給部34により裏面側から噴射される冷水(例えば常温の水)でその金属製ベルト31が冷却されて上記金属製ベルト31上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を製造する。
【0044】
その後、上記製造された薄板状資材を破砕機8aで破砕してフレーク状とする。この改質硫黄中間資材フレークは、一片が例えば3〜5cm程度とされる。上記破砕機8aで破砕された改質硫黄中間資材フレークは、図1において、例えばベルトコンベア39により袋詰設備(図示省略)に搬送され、出荷形態に合わせて紙袋40又は箱、フレコンバック等に荷造りされる。
【0045】
以上のようにして改質硫黄中間資材フレークを製造することができるが、改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を製造する場合の好ましい製造条件を整理すると、次のようになる。
(1)貯蔵槽6の出口温度は、120℃前後であること。
(2)固化促進槽7内の改質硫黄中間資材の温度は、110℃前後であること。
(3)固化促進槽7内で改質硫黄中間資材を攪拌して、種晶を形成させること。
(4)金属製ベルト31を加温する前半部の範囲は、3〜6mであること。
(5)金属製ベルト31を冷却する後半部の範囲は、前半部より後方の4〜6mであること。
(6)金属製ベルト31の前半部において裏面側から温水で加温する温度は、50〜70℃であること。
(7)金属製ベルト31の回転移動速度は、0.8〜2.0m/secの範囲で製造量に合わせて調整すること。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による改質硫黄中間資材フレーク製造システムの実施形態を示す説明図である。
【図2】上記改質硫黄中間資材フレーク製造システムにおける貯蔵槽及び固化促進槽並びに薄板状資材形成装置、破砕機の組み合わせ構造を示す要部説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1…溶融硫黄タンク
2…硫黄改質剤タンク
3…改質硫黄製造タンク
4…骨材ホットビン
5…改質硫黄中間資材タンク
6…貯蔵槽
7…固化促進槽
8…薄板状資材形成装置
8a…破砕機
10…第1の熱媒加熱器
11…熱媒体の供給ライン
12…熱媒体の還流ライン
25…第2の熱媒加熱器
26,37…熱媒体の供給ライン
27,38…熱媒体の還流ライン
31…金属製ベルト
33…温水供給部
34…冷水供給部
36…固化促進バー
42…第3の熱媒加熱器
43…熱媒体の供給ライン
44…熱媒体の還流ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の硫黄と該溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを、第一の所定温度以上に加温した状態で混合して改質硫黄を製造する工程と、
上記製造された改質硫黄と骨材とを、第二の所定温度以上に加温した状態で混合して改質硫黄中間資材を製造する工程と、
上記製造された改質硫黄中間資材を貯蔵槽に収容して第二の所定温度より低い第三の所定温度に下げて貯蔵する工程と、
上記貯蔵された改質硫黄中間資材を固化促進槽に収容して攪拌すると共に第三の所定温度より低い第四の所定温度に下げる工程と、
上記温度が下げられた改質硫黄中間資材を、所定距離離れた2部位間で回転移動する無端帯状の金属製ベルト上に所定量を連続的に流下させる工程と、
上記金属製ベルトの回転移動距離の前半部では裏面側から温水で該金属製ベルトを加温し、後半部では同じく裏面側から冷水で該金属製ベルトを冷却することにより金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を製造する工程と、
上記製造された薄板状資材を破砕してフレーク状とする工程と、
を行うことを特徴とする改質硫黄中間資材フレーク製造方法。
【請求項2】
上記金属製ベルトの回転移動距離の前半部において裏面側から温水で該金属製ベルトを加温する温度は、50〜70℃であることを特徴とする請求項1記載の改質硫黄中間資材フレーク製造方法。
【請求項3】
溶融状態の硫黄を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する溶融硫黄タンクと、
上記溶融硫黄を変性する硫黄改質剤を内部に収容する硫黄改質剤タンクと、
上記溶融硫黄タンクからの溶融硫黄と上記硫黄改質剤タンクからの硫黄改質剤とを受け入れて混合し改質硫黄を製造すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する改質硫黄製造タンクと、
骨材を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する骨材ホットビンと、
上記改質硫黄製造タンクからの改質硫黄と上記骨材ホットビンからの骨材とを受け入れて混合し改質硫黄中間資材を製造すると共に内部の収容物を所定温度以上に加温する改質硫黄中間資材タンクと、
上記改質硫黄中間資材タンクからの改質硫黄中間資材を内部に収容すると共に内部の収容物を所定温度に維持する貯蔵槽と、
上記貯蔵槽からの改質硫黄中間資材を収容して攪拌すると共に上記所定温度未満に下げる固化促進槽と、
上記固化促進槽で温度が下げられた改質硫黄中間資材の所定量が連続的に流下されるのを受け、所定距離離れた2部位間で回転移動する無端帯状の金属製ベルトを備え、該金属製ベルトの回転移動距離の前半部では裏面側からの温水でその金属製ベルトが加温され、後半部では同じく裏面側からの冷水でその金属製ベルトが冷却されて上記金属製ベルト上の改質硫黄中間資材を冷却固化して薄板状資材を形成する薄板状資材形成装置と、
上記形成された薄板状資材を破砕してフレーク状とする破砕機と、を備えて成り、
上記溶融硫黄タンクから貯蔵槽に至るまでの各装置間を相互に連結する配管系には、内部の流動物を所定温度以上に加温する加熱手段を付加した、
ことを特徴とする改質硫黄中間資材フレーク製造システム。
【請求項4】
上記加温する所定温度は、119℃以上であることを特徴とする請求項3記載の改質硫黄中間資材フレーク製造システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−315924(P2006−315924A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141933(P2005−141933)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【Fターム(参考)】