説明

放出ピン部材、ミスト発生部材及びそれを用いた静電霧化装置

【課題】ミストを外部に放出する静電霧化装置において、高電圧を印加することなく多量のミストを外部に放出することが可能な放出ピン部材、ミスト発生部材及びそれを用いた静電霧化装置を提供する。
【解決手段】
ミスト17を外部に放出する静電霧化装置10に用いる部材であって、導電性薄板11dを渦巻き状に巻き回したことを特徴とする放出ピン部材11。
また、放出ピン部材41が導電性の金属管42を入れ子状態にした多重管であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性成分を含むミストを外部に放出する静電霧化装置において、必要以上の高電圧を印加することなく、多量のミストを外部に放出することが可能な放出ピン部材及びそれを用いた静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビタミンC・アミノ酸等の機能性成分が入った水、アロマオイル、消臭材等の不揮発性機能性成分を含む水を高電圧を印加することで霧化させ、ミストとして放出する静電霧化装置が知られている。一般的に静電霧化装置は、貯水タンクから水を放出ピン部材の先端部まで毛細管現象で搬送し、先端部が多孔質体から形成される放出ピン部材まで水が引き上げられ、該放出ピン部材に高電圧を印加することにより、先端部からミストを放出する。
しかしながら、従来の静電霧化装置においては、水タンクに補給する水が、水道水のようなCa、Mg等のミネラル成分を含む水であった場合には、このミネラル成分が空気中のCOと反応して吸水体の霧化部にCaCOやMgO等を析出付着させ、ミストの発生を妨げることがあった。
この問題点に対し、水搬送経路中にミネラル成分を除去するためのイオン交換部を設けることで、尖った霧化部において空気中のCOとの反応によりCaCOやMgO等の析出付着が防止され、定期的なメンテナンスを行わずとも継続的に使用することが可能な静電霧化装置が記載されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−255091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の高電圧を印加しミストを発生させる霧化部を有する静電霧化装置においては、その構成において、放出ピン部材を構成する導電性のカーボン粉末などの多孔質体が酸化反応を起こして酸化物が付着し、放出ピン部材を目詰まりさせるという別の問題があった。
このように放出ピン部材を構成する多孔質体が目詰まりすると、毛細管現象による水の搬送を阻害し、放出ピン部材からの静電霧化が起こりにくくなるという現象が起こるため、放出ピン部材に析出付着して目詰まりしている酸化物等を除去するメンテナンスを行ったり、ミスト放出のために必要以上に高電圧を印加する必要があった。
そこで、本発明は、ミスト放出のための放出ピン部材に着目し鋭意検討を行った結果、放出ピン部材に導電性のカーボン粉末などの多孔質体を用いることなく、多量のミストを放出することが可能な放出ピン部材、その放出ピン部材を用いたミスト発生部材、及びそのミスト発生部材を用いた静電霧化部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明に係る放出ピン部材は、ミストを外部に放出する静電霧化装置に用いる部材であって、導電性薄板を渦巻き状に巻き回したものであることを特徴とする。
[2]本発明に係る放出ピン部材は、ミストを外部に放出する静電霧化装置に用いる部材であって、複数本の導電性金属管を同芯軸状に多重管にしたものであることを特徴とする。
[3]本発明に係る放出ピン部材は、前記[1]又は[2]の放出ピン部材において、その先端部において、中心部の長さが周縁部よりも長く形成されていることを特徴とする。
[4]本発明に係るミスト発生部材は、前記[1]〜[3]のいずれかの放出ピン部材と、該放出ピン部材を上方に立設するための保水部材と、からなり、
該保水部材は、その上面において該放出ピン部材を嵌合するための凹部が設けられており、前記放出ピン部材を該凹部に嵌合させるようにしたことを特徴とする。
[5]本発明に係る静電霧化装置は、前記[4]のミスト発生部材を備え、該ミスト発生部材の保水部材に水溶液を供給する貯水タンクと、前記放出ピン部材に電圧を印加する印加電極と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の放出ピン部材は、導電性薄板を渦巻き状に巻き回したものや、複数本の導電性金属管を同芯軸状に多重管にしたものを用いることで、長期間の使用においても、放出ピン部材が目詰まりすることなく多量のミストを放出し続けることが可能となるという効果を奏する。
また、上記の放出ピン部材を用いたミスト発生部材や静電霧化装置は、保水部材に印加電極の給電端子を接合させて放出ピン部材を安定的にマイナスイオン化させて多量のミストを静電霧化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態の静電霧化装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1の放出ピン部材の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。
【図3】本発明の実施例2の放出ピン部材の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。
【図4】本発明の実施例3の放出ピン部材の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。
【図5】本発明の実施例4の放出ピン部材の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。
【図6】実施例1の放出ピン部材を保水部材に立設した状態を示すミスト発生装置の説明図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は保水部材の上面図である。
【図7】実施例1の放出ピン部材の複数個を保水部材に立設した状態を示すミスト発生装置の説明図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は保水部材の上面図であり、(c)は変形例の円形状の保水部材13に放出ピン部材の数に対応した凹部13bを形成した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態により、本発明を説明するが、以下の実施例は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施例を通じて説明される特徴が本発明を限定するものでもない。
【0009】
<放出ピン部材>
本発明に係る放出ピン材は、放出ピン部材は、保水部材に立設され、保水部部材に保持された水や機能性成分を含む水(本明細書において、「水」と併せて「水溶液」という)を吸い上げ、その先端部からミストを外部に放出する役割を果たすものであり、導電性薄板を渦巻き状に巻き回したものや、複数本の導電性金属管を同芯軸状に多重管にしたものとして構成される。
放出ピンを保水材に立設させた場合、巻き回した導電性薄板間、或いは同芯軸状に多重管の間に隙間が形成され、この放出ピンの長手方向に連通部が設けられるようになり、この連通部を通して保水材中の水溶液が放出ピン部材の先端部へ吸い上げられるようになる。したがって、放出ピン部材は目詰まりすることなく高い吸水力及び保水力を備えることが必要となる。
これは、水溶液を保水部材に留まらせることなく効率的に放出ピン部材に吸い上げ、その先端部から多量のミストを外部に放出させるためである。
【0010】
放出ピン部材の形状としては、横断面が渦巻き円状に形成したものが挙げられるが、これに限定されるものではなく、楕円形状、三角形状、角柱形状等でもよい。
また、放出ピン部材先端部は、平面状よりも中心部が周縁部よりも長い形状であることが好ましい。
平面状であると、放出ピン部材の先端部への電荷が分散してしまい、放電力を高めることが難しくなり、水溶液を十分にマイナスイオン化することができないためであり、このため放出ピン部材先端部の中心が周縁部よりも突出した長い形状とすることが望ましい。
【0011】
渦巻き状の放出ピン部材の製造は、次の手順により行う。
まず、アルミニウムなどの金属薄板を巻き回して円筒体を形成し、その先端部(上方部)において、その中心が周縁部よりも高く(最も長く)なるように、例えば中心を引っ張るなどして形成することができる。
また、中心を引っ張る代わりに、巻き回して形成した放出ピン部材の周縁部をカット(切除)することにより、同様の形状に形成することができる。
金属薄板は箔などで極薄であるある場合は、巻き回し作業を容易にするため、紙や網などの通水性のあるスペーサとともに巻き回すことができる。その場合は、焼成などでスペーサを除去することで金属薄板間に連通部を形成することができるが、スペーサが通水性を阻害しなければそのまま残置しておいてもよい。
【0012】
また、放出ピン部材は、金属薄板(例えばアルミニウム箔)の端面の先端が尖った状態にしたものを、その尖った端面が放出ピン部材の先端部になるようにして渦巻き状に巻き回して形成することもできる。
このような形状によっても、放出ピン部材の先端部に電荷を集中させることができ、その結果、放電力が高まり、先端部の水溶液を容易にマイナスイオン化することができる。
【0013】
また、多重管の製造は、アルミニウムなどの金属薄板からなる直径の異なる金属管を、入れ子状態で挿入することにより、多重管とすることができる。
なお、この多重管構造の場合においても、金属薄板の取り扱いを容易にするため、多重管の隙間に、紙や網などの通水性のあるスペーサを入れることもできる。その場合は、焼成などでスペーサを除去することで連通部を形成することができるが、スペーサが通水性を阻害しなければそのまま残置しておいてもよい。
【0014】
ここで、保水部材に立設された放出ピン部材の底面部からは毛細管現象により、保水部材に蓄積された水分の吸水が行われるようにするため、放出ピン部材の底面部において、保水部材と密着させないように空間を形成させることが好ましい。
このため、放出ピン部材の底面部にドーナツ状の導電性リングを設け、放出ピン部材の底面中央部を保水部材から離間させ空間を形成し、水溶液を留保する留保部とすることが好ましい。
【0015】
<材質>
放出ピン部材は、導電性薄板を渦巻き状に巻き回したものからなる。導電性薄板としては、アルミニウムや銅、チタン、鉄、ステンレス、金、銀、プラチナなどの金属薄板や金属箔等が挙げられる。また、金属薄板や金属箔にメッキなどの表面処理を施したものでもよい。
また、導電性を有するセラミック薄板や導電性樹脂材料なども挙げられる。
【0016】
<厚み>
導電性薄板の厚みとしては、特に制限を設けるものではないが、渦巻き状に巻き回したり、同芯軸状に多重管として配設したりする取り扱い性を考慮すると、0.1〜0.5mmとすることが好ましい。
また、薄板の隙間は、これらの薄板の隙間を通して水溶液を吸い上げる連通部を形成することを考慮すると0.1〜1.0mmとすることが好ましい。中でも、0.2〜0.4mmとすることがミスト放出量をより多くできて好ましい。このデータは、後述する表2において示す。
【0017】
<ミスト発生部材>
本発明に係るミスト発生部材は、前記放出ピン部材と、放出ピン部材を上部に立設するための保水部材と、からなり、保水部材は、その上面において放出ピン部材を嵌合するための凹部が設けられており、その下面において導電層を有しており、放出ピン部材を凹部に嵌合させて、放出ピン部材の底面部に設けたドーナツ状の導電性リングと該保水部材下面に設けられた導電層とが通電性を有するようにされている。
導電層は、保水材部材の下面に放出ピン部材と同様の導電性グラファイト配合材を形成したものでよい。また、別途のシートに導電性素材(例えば金属繊維、金属パウダーなど)を配合したものでもよい。
【0018】
<保水部材>
放出ピン部材を立設するための保水部材は、セラミック材料、金属材料、合成樹脂材料、天然樹脂材料の1種類または2種類以上を複合化して形成される多孔質体又は繊維成型体からなり、形状は特に限定されるものではないが、所定の厚みを有する矩形状とすることが静電霧化装置全体の構成からすると好ましい。
なお、保水部材は放出ピン部材と比較し低い吸水力及び保水力を有することで足り、保水材に吸水した水溶液を保水部材に留まらせることなく、放出ピン部材へと吸い上げさせ、外部にミストを放出させる。
また、凹部は、単数又は複数設けられており、その配列は、一列や円周状など、静電装置の設計上適宜決められる。
【0019】
<静電霧化装置>
また、本発明に係る静電霧化装置は水溶液をミストとして霧化させ放出するものである。静電霧化装置は、前記ミスト発生部材を備え、ミスト発生部材の保水部材に水溶液を供給する貯水タンクと、放出ピン部材に電圧を印加する印加電極と、を備える。
放出ピン部材に電圧を印加する印加電極は、例えば、4〜10kV程度のDCマイナス電圧を発生させる電源であり、その負極が導線を介して保水部材の下面の導電層に接続され、水溶液を保持する保水材部を負に帯電させている。したがって、保水部材と放出ピン部材とを通電性を持たせて接続することにより負の電流は放出ピン部材へと集まり、自然放電現象により放出ピン部材から外部へ負の電荷を有したミストを放出させることができる。
【0020】
静電霧化装置に備えられた貯水タンクは、水溶液を収容するとともに、常時、保水部材にこの水溶液を供給する。貯水タンクの容量や形状等は特に限定されるものではないが、ミスト放出量に従って適宜選択することができる。
【0021】
貯水タンクに収容される水溶液としては、水をはじめとして各種の機能性を有する水溶液が適用される。機能性水溶液の機能性成分としては、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、ビタミンCエステル((L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム、リン酸アスコルビンマグネシウム等)、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンDα−リボ酸、アミノ酸、茶菓抽出物(カテキン、タンニン、サポニン、テアニン、カフェイン等)、ヒアルロン酸、コラーゲン、アロマ精油(ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、ティートリー、セージ、クローブ、オレンジ、グレープフルーツ、シナモン、ジャスミン等)、コーヒー豆、茶菓、ワサビ、ヒノキチオール、キチン、キトサン、プロポリス等のような有機系可溶性成分が挙げられ、その他、無機物(無機系可溶性成分)では、銀または食塩が挙げられる。また、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、パラジウムナノ粒子等も使用することができる。
【0022】
ここで、「機能性」とは、生活環境を快適にして、健康に改善できる性質をいい、消臭性(脱臭、分解等)、抗微生物性(抗菌性、殺菌性、静菌性、抗カビ性、抗ウイルス性等)、リラクゼーション性、保湿性、抗酸化性、有害小生物忌避性、静電気抑制性、防塵性等のうち、少なくとも一種類の性質を有することを意味する。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
図1は、本発明に係る静電霧化装置10の実施の一形態を示す概略図である。図において、静電霧化装置10は、貯水タンク12と、貯水タンク12から吸水し水溶液を保持する保水部材13と、保水部材13の上面に立設されたミストを外部に放出する放出ピン部材11と、放出ピン部材11に高電圧を印加する印加電極15とを備えている。
また、放出ピン部材11は、保水部材13の上面に設けられた凹部13b(図6参照)に嵌合されて立設され、電源部14の印加電極15が保水部材13の下面に形成された導電層13aに接続されて放出ピン部材11の底面部11bの導電性リング12fと、
保水部材下面に設けられた導電層13aとが通電性を有するようになる。導電層13aは、不織布を、放出ピン部材の芯部の廻りに形成した導電性グラファイト配合材を浸漬して導電性グラファイトを浸透したものを用い、保水部材13の下面に積層した。
これにより、放出ピン部材11がマイナスに帯電するとともに、放出ピン部材11の底面部11bから連通部11c(図2参照)を通して水溶液16を吸い上げ、放出ピン部材11の先端部11aからマイナスに帯電したミスト17を外部に放出することができる。
【0024】
<実施例>
図2は、実施例1の放出ピン部材11の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。実施例1の放出ピン部材11は、厚み0.3mmの導電性薄板(アルミニウム箔11d)を、隙間が0.3mmになるように渦巻き状に巻き回し、その中心部の長さを周縁部11eよりも3mm高くした。なお、直径4.5mm、高さ約30mmとした。
これにより、放出ピン部材の先端部まで電荷を行き渡らせることができ、水溶液を十分にマイナスイオン化することができる。
【0025】
図3は、実施例2の放出ピン部材21の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。実施例2の放出ピン部材21は、アルミニウム箔11dを渦巻き状に巻き回すときに、通水性のあるスペーサ(ステンレス製の網)21fを巻き込むようにして、一緒に巻き回して製造した点で実施例1の放出ピン部材と異なる。
これにより、巻き回し作業が容易にでき、アルミニウム箔11d間の隙間の間隔を一定に保つことができ、放出ピン部材21の先端部21aから安定したミストの放出が可能となる。
【0026】
図4は、実施例3の放出ピン部材31の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。実施例3の放出ピン部材31は、アルミニウム箔の端面の先端32が尖った状態にし、その尖った端面が放出ピン部材31の先端部31aになるようにして渦巻き状に巻き回して形成したものである点で実施例1の放出ピン部材と異なる。
これにより、放出ピン部材の先端部に電荷を集中させることができ、その結果、放電力が高まり、先端部の水溶液を容易にマイナスイオン化することができる。
【0027】
図5は、実施例4の放出ピン部材41の構造を示す説明図であり、(a)は上面図であり、(b)は縦断面図である。ステンレス製の金属管42,42,・・・を、連通部41cとなる隙間を形成しつつ、入れ子状態で同芯軸状に多重管構造とした。
【0028】
図6は、実施例1の放出ピン部材を保水部材に立設した状態を示すミスト発生装置の説明図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は保水部材の上面図である。放出ピン部材11を1本、保水部材13上の中央に立設し、保水部材13の導電層13aを印加電極15に接続し、6kvの負電圧を印加した。
また、渦巻き状のアルミニウム箔11dの間には連通部11cとなる隙間を渦巻き状に形成した放出ピン部材11を、保水部材13の凹部13bに嵌合立設させた。
なお、放出ピン部材11の底面部11bには、導電性リング12fを取り付け、保水部材下面に設けられた導電層13aと通電性を有するようにした。
これにより、放出ピン部材11の底面部11bから、保水部材13の留保部13cに留保された水溶液を吸水し、放出ピン部材11の先端部11aからミストを放出するようにした。
【0029】
図7は、実施例1の放出ピン部材を保水部材に複数本立設した状態を示すミスト発生装置の説明図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は保水部材の上面図であり、(c)は変形例の円形状の保水部材13に放出ピン部材の数に対応した凹部13bを形成した状態を示す上面図である。
これにより、1台のミスト発生装置で多量のミストを外部に放出することができる。
【0030】
<評価>
実施例1の放出ピン部材を用いて、ミスト放出量を測定した。ミスト放出量は、時間当たりの貯水タンクの水溶液の減少量を測定することで、該放出ピン部材の放出性能を測定した。
なお、比較例として、従来型の多孔質体放出ピンを用いた。放出ピン部材におけるミスト放出量の測定は以下の条件で行った。
運転時間:連続6時間
ミスト発生装置は無風状態の恒温恒室槽中に設置した(温度:25℃、湿度:50%に維持)。
上記実験を5回繰り返し、再現性を評価した。表1に、その結果を示す。
【0031】
【表1】


表1の結果から、実施例1の放出ピン部材は、従来型の多孔質体放出ピンに比較してミスト放出量が向上したことが分かる。
【0032】
また、実施例1の放出ピン部材の連通部の間隔(隙間)を変更したときのミスト放出量を測定した結果を表2に示す。
【0033】
【表2】


表2の結果から、放出ピン部材における連通部の間隔(隙間)は、0.2〜0.4mmがよいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の放出ピン部材は、ミストを外部に放出する静電霧化装置において、高電圧を印加することなく、多量のミストを外部に放出することができ、産業上の利用可能性がきわめて高い。
【符号の説明】
【0035】
10 静電霧化装置
11,21,31,41 放出ピン部材
11a,21a,31a 放出ピン部材の先端部
11b,21b 底面部
11c,21c,41c 連通部
11d,21d 導電性薄板(アルミニウム箔)
11e 周縁部
12 貯水タンク
12f 導電性リング
13 保水部材
13a 導電層
13b 凹部
13c 留保部
14 電源部
15 印加電極
16 水溶液
17 ミスト
21f スペーサ
32 アルミニウム箔の端面の先端
42 金属管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストを外部に放出する静電霧化装置に用いる部材であって、
導電性薄板を渦巻き状に巻き回したことを特徴とする放出ピン部材。
【請求項2】
ミストを外部に放出する静電霧化装置に用いる部材であって、
導電性の金属管を入れ子状態にした多重管であることを特徴とする放出ピン部材。
【請求項3】
前記放出ピン部材の上方部において、
その中心が周縁部よりも高く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放出ピン部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの放出ピン部材と、該放出ピン部材を上部に立設するための保水部材と、からなり、
該保水部材は、その上面において該放出ピン部材を嵌合するための凹部が設けられており、前記放出ピン部材を該凹部に嵌合させるようにしたことを特徴とするミスト発生部材。
【請求項5】
請求項4のミスト発生部材を備え、該ミスト発生部材の保水部材に水溶液を供給する貯水タンクと、前記放出ピン部材に電圧を印加する印加電極と、を備えることを特徴とする静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39502(P2013−39502A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176314(P2011−176314)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(501021678)株式会社セラフト (17)
【Fターム(参考)】