説明

放射性ガスモニタ

【課題】耐ノイズ性を向上させた信頼性の高い放射性ガスモニタを提供する。
【解決手段】半導体センサ21及びプリアンプ22を、内側電磁シールド23と外側電磁シールド24からなる二重の電磁シールドで遮蔽し、内側入射膜232に通気孔233を設けることにより、外側入射膜242にたわみが生じた場合でも内側入射膜232と半導体センサ21の距離は変化せず、その距離間の浮遊容量の変動を抑制することができるため、試料ガスの脈動に起因する半導体センサ21へのノイズの流入を防止することができる。また、これらの二重の電磁シールドを、電源ユニット52の0V経由で複合ケーブル
300のアウターシールド33と共に測定部接地線56により1点接地し、試料容器1及び遮蔽体3は検出部接地線5により別に接地することにより、接地を介した外来ノイズの流入を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性ガスモニタに関し、特に原子炉施設の1次冷却材喪失等の事故発生時に環境に放出される排ガスの放射能濃度を測定するための事故時放射性ガスモニタに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉施設の1次冷却材喪失等の事故発生時には、環境に放出された排ガス中の放射性物質(放射性希ガス)の放射能濃度を、専用の放射性ガスモニタで測定する必要がある。この時使用される放射性ガスモニタを、通常の放射性ガスモニタに対して事故時放射性ガスモニタという。
【0003】
事故時放射性ガスモニタは、発電用軽水型原子炉施設における事故時の放射線計測に関する審査指針で、測定対象の放射性希ガスに対し、通常の放射性ガスモニタの測定レンジ上限と適度のオーバーラップを持たせながら、所定の高濃度領域まで測定することが求められている。このため、試料容器の試料ガスに含まれる放射性希ガスから放出される放射線を、コリメータで減少させて放射線検出器に入射させるように構成されている。
【0004】
ところで、従来実用化されている放射性ガスモニタでは、主にγ線を測定対象としていたが、放射性希ガスには、1崩壊当たり放出されるβ線の割合に対してγ線の放出割合が極端に低いものがある。例えば、Kr−85はβ線687keVが99.6%に対して、γ線514keVが0.43%である。また、Xe−133はβ線346keVが99%に対し
て、γ線81keVが38%である。
【0005】
このような核種毎の放射線放出の違いによる検出効率の差を小さくするために、近年では、放出割合の高いβ線を測定対象とした放射性ガスモニタが開発されている。例えば特許文献1では、セラミック基板に実装されたシリコン半導体素子と増幅回路を、厚さ数ミクロンのマイラシートにアルミを蒸着したβ線入射窓を設けた金属性のケースに収納したβ線検出器が示されている。シリコン半導体素子を用いた検出器は、β線の検出感度が高く、事故発生時の高温に耐えられるため、事故時放射性ガスモニタの放射線検出器としても適している。
【0006】
また、事故時放射性ガスモニタの放射線検出器と試料容器は、事故発生時に施設内の環境放射線レベルが大幅に上昇した場合でも測定に影響を与えないように、環境放射線を遮蔽する十分な厚みの遮蔽体に内包されている。さらに、散乱線が試料容器の入口配管及び出口配管あるいはケーブル導入孔から進入するのを抑制するため、配管及びケーブル導入孔は細く、且つ螺旋状に形成され、遮蔽体に埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−33660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように構成された事故時放射性ガスモニタでは、試料容器の入口配管及び出口配管の圧力損失が大きく、試料容器中の試料ガスが負圧になって放射線検出器のβ線入射膜であるアルミ蒸着膜にたわみが生じることがある。これが試料ガスの脈動で振動すると、シリコン半導体素子とアルミ蒸着膜の間の浮遊容量が変動し、ノイズが発生する。さらに
アルミ蒸着膜のたわみが大きくなり、アルミ蒸着膜がシリコン半導体素子に接触すると、大きなノイズが発生するという問題があった。
【0009】
また、プリアンプのゲインが高いため、放射線検出器を含む検出部の接地電位の微量な変動がプリアンプ入力に誘導され、あるいは放射線検出器と測定部の間の信号伝送箇所から電磁ノイズが進入し、プリアンプで増幅されて測定に影響を与えることがあった。このように、従来の事故時放射性ガスモニタでは、放射線検出器のβ線入射膜のたわみに起因して発生するノイズに対して、またはプリアンプのゲインが高いために影響を受け易い外来ノイズに対して、耐ノイズ性の強化を図る必要があった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、耐ノイズ性を強化した信頼性の高い放射性ガスモニタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る放射性ガスモニタは、試料ガスが導入される試料容器と、試料容器に導入された試料ガス中の放射性物質から放出される放射線を検出して電圧パルスを出力する放射線検出器と、試料容器及び放射線検出器を包囲し環境放射線から遮蔽する遮蔽体を有する検出部、放射線検出器が出力した電圧パルスを計数し工学値に変換する測定ユニットと、測定ユニット及び放射線検出器に直流電源を供給する電源ユニットを有する測定部、検出部から測定部に電圧パルスを伝送する芯線をシールドに内包した同軸ケーブルと、測定部から検出部に直流電流を供給する電源ケーブルと、同軸ケーブル及び電源ケーブルを内包した最外郭シールドを有する複合ケーブルを備えた放射性ガスモニタであって、放射線検出器は、β線を検出する半導体センサと、半導体センサから出力された電流パルスを電圧パルスに変換し増幅するプリアンプと、半導体センサとプリアンプを内包するセンサケース及びこのセンサケースの放射線入射開口面に設けられた内側入射膜からなる内側電磁シールドと、センサケースを内包する検出器ケース及び検出器ケースの放射線入射開口面に設けられ試料容器のバウンダリーを構成する外側入射膜からなる外側電磁シールドを含むとともに、内側電磁シールド内部と外側電磁シールド内部の圧力を等しくする通気構造を有しているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射線検出器の半導体センサ及びプリアンプを、内側電磁シールド及び外側電磁シールドの二重の電磁シールドで遮蔽するとともに、内側電磁シールド内部と外側電磁シールド内部の圧力を等しくすることにより、内側入射膜にたわみが生じないようにしたので、試料ガスの脈動に起因する半導体センサへのノイズの流入を防止することができる。また、プリアンプの信号伝送路である同軸ケーブルについても、芯線をシールドと最外郭シールドの二重の電磁シールドで保護したので、外来ノイズの流入を防止することができ、耐ノイズ性を向上させた信頼性の高い放射性ガスモニタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る放射性ガスモニタの検出部を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る放射性ガスモニタの内側電磁シールド及び外側電磁シールドの主要部を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る放射性ガスモニタの測定部を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る放射性ガスモニタの検出部を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る放射性ガスモニタの内側電磁シールド及び外側電磁シールドの主要部を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る放射性ガスモニタのバイパス配管を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1について図面に基づいて説明する。本実施の形態1に係る放射性ガスモニタの構成を図1〜図3に示す。図1は検出部、図2は検出部の内側電磁シールド及び外側電磁シールドの主要部、図3は測定部をそれぞれ示している。なお、図中、同一、相当部分には同一符号を付している。本実施の形態1に係る放射性ガスモニタは、原子炉施設の1次冷却材喪失等の事故発生時に、環境に放出された排ガス中の放射性希ガスから放出される放射能濃度を測定する事故時放射性ガスモニタである。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態1に係る放射性ガスモニタの検出部100は、主に、試料ガス(排ガス)をサンプリングする試料容器1、試料ガス中の放射性希ガスから放出される放射線を検出して電圧パルスを出力する放射線検出器2、及びこれらを包囲し環境放射線から遮蔽する遮蔽体3から構成されている。なお、検出部100は、複合ケーブル300により、図3に示す測定部500と接続されている。それらの接続構造については後述する。
【0016】
試料容器1は、試料ガス中の放射性希ガスから放出される放射線を、放射線検出器2の外側入射膜242に入射させるように、放射線検出器2に取り付けられている。試料ガスは、入口配管1aから試料容器1に導入され、出口配管1bから排出される。これらの入口配管1a、出口配管1b、及び複合ケーブル300を導入するためのケーブル導入孔3aは、遮蔽体3に埋め込まれている。
【0017】
遮蔽体3は、測定時(事故時)の環境放射線が測定に影響しないように十分な厚みに形成されている。さらに、環境放射線の散乱線が遮蔽体3の内部へ進入するのを抑制するために、入口配管1a、出口配管1b、及びケーブル導入孔3aは、細く、且つ螺旋状に形成されている。Oリング4は、試料容器1の放射線検出器2への取り付け箇所に配され、
試料容器1の気密性を確保している。
【0018】
放射線検出器2において、半導体センサ21は、試料ガス中の放射性希ガスから放出される主にβ線を検出する。本実施の形態1では、半導体センサ21として、熱及び放射線による経年変化が小さく安定した温度特性を有する化合物半導体CdTeZnを用いている。なお、CdTeZnは、容易に入手することができ、80℃程度まで安定してβ線を検出することができる。
【0019】
プリアンプ22は、半導体センサ21から出力された電流パルスを入力し、電圧パルスに変換すると共に増幅して出力する。プリアンプ22は、信号出力端子22a、プラス電源端子22b、マイナス電源端子22c、及び0(ゼロ)V端子22dを有している。
【0020】
半導体センサ21及びプリアンプ22は、内側電磁シールド23及び外側電磁シールド24の二重の電磁シールドにより保護されている。内側電磁シールド23と外側電磁シールド24は、相互に絶縁されている。図2に示すように、内側電磁シールド23は、金属製のセンサケース231と内側入射膜232から構成されている。内側入射膜232は、プラスチックシートであるマイラシート232aの両面にアルミ蒸着層232bを設けたものである。センサケース231と内側入射膜232は、相互に電気的に導通した状態であり、内包する半導体センサ21及びプリアンプ22とは電気的に絶縁されている。
【0021】
また、内側電磁シールド23を内包する外側電磁シールド24は、金属製の検出器ケース241と外側入射膜242から構成されている。外側入射膜242は、マイラシート242aの両面にアルミ蒸着層242bを設けたものである。検出器ケース241と外側入射膜242は、相互に電気的に導通した状態である。なお、外側電磁シールド24は、遮蔽体3により外部から電気的に遮蔽されている。
【0022】
外側電磁シールド24の外側入射膜242は、試料容器1の内部空間に接するように配置され、試料容器1のバウンダリーを構成している。また、内側入射膜232には、外側電磁シールド24内部と内側電磁シールド23内部の圧力を等しくする通気構造として、通気孔233が設けられている。なお、本実施の形態1では、通気孔233を内側入射膜232に設けたが、通気孔はセンサケース231のヘッド部に設けてもよい。
【0023】
また、測定部500は、複合ケーブル300により検出部100と接続されている。複合ケーブル300は、同軸ケーブル31及び電源ケーブル32が最外郭シールドであるアウターシールド33に内包されたものである。図1及び図3では、複合ケーブル300の両端が、コネクタ27、53を介してそれぞれ検出部100及び測定部500に接続されている。
【0024】
図3に示すように、測定部500において、測定ユニット51は、放射線検出器2のプリアンプ22から出力された電圧パルスを計数し、計数率を求めて工学値に変換する。また、電源ユニット52は、測定ユニット51及び放射線検出器2に直流電源を供給する。測定部500では、図3に示すように、複合ケーブル300の同軸ケーブル31は、コネクタ53を介して測定ユニット51の同軸ケーブル54に接続され、複合ケーブル300の電源ケーブル32は、コネクタを53介して電源ユニット52の電源ケーブル55に接続される。
【0025】
一方、検出部100では、図1に示すように、複合ケーブル300の同軸ケーブル31の芯線311は、コネクタ27を介して放射線検出器2の同軸ケーブル25の芯線251に接続され、さらにプリアンプ22の信号出力端子22aに接続される。これにより、放射線検出器2から測定ユニット51に電圧パルスが伝送される。また、複合ケーブル300の同軸ケーブル31のシールド312は、放射線検出器2の同軸ケーブル25のシールド252に接続され、さらにプリアンプ22の0V端子22dに接続される。
【0026】
また、複合ケーブル300の電源ケーブル32は、コネクタ27を介して放射線検出器2の電源ケーブル26に接続され、さらに電源ケーブル26の各芯線は、それぞれプリアンプ22のプラス電源端子22b、マイナス電源端子22c及び0V端子22dに接続さ
れる。これにより、測定部500の電源ユニット52から検出部100の放射線検出器2に直流電源が供給される。
【0027】
次に、本実施の形態1に係る放射性ガスモニタの耐ノイズ性を向上させる接地構造について説明する。検出部100の放射線検出器2において、相互に絶縁された内側電磁シールド23と外側電磁シールド24は、図1中実線A、Bで示すように、プリアンプ22の出力において0V端子22dに接続され、同軸ケーブル25のシールド252及び複合ケ
ーブル300の同軸ケーブル31のシールド312経由で、測定部500において測定ユニット52のコモン(図示せず)に接続され、電源ユニット52の0V経由で複合ケーブ
ル300のアウターシールド33と共に測定部接地線56により1点接地される。
【0028】
また、検出部100の試料容器1及び遮蔽体3は、放射線検出器2と電気的に絶縁されており、試料容器1と遮蔽体3は電気的に同電位の状態にあり、遮蔽体3は検出部接地線5により接地される。
【0029】
以上のように、本実施の形態1では、微小電流(信号)を取り扱う半導体センサ21及びプリアンプ22を、内側電磁シールド23と外側電磁シールド24からなる二重の電磁シールドで電気的に遮蔽するとともに、内側電磁シールド23の内側入射膜232に通気
孔233を設け、内側電磁シールド23内部と外側電磁シールド24内部の圧力を等しくした。これにより、外側入射膜242にたわみが生じた場合でも、内側入射膜232と半導体センサ21の距離は変化せず、その距離間の浮遊容量の変動を抑制することができるため、試料ガスの脈動に起因する半導体センサ21へのノイズの流入を防止することができる。
【0030】
また、内側電磁シールド23と外側電磁シールド24からなる二重の電磁シールドを、電源ユニット52の0V経由で複合ケーブル300のアウターシールド33と共に測定部
接地線56により1点接地し、試料容器1及び遮蔽体3は検出部接地線5により別に接地することにより、接地を介した外来ノイズの流入を防止することができる。さらに、プリアンプ22の信号伝送路である同軸ケーブル31についても、芯線311をシールド312とアウターシールド33の二重の電磁シールドで保護しているので、外来ノイズの流入を防止することができる。
【0031】
また、半導体センサ21として、熱及び放射線による経年変化が小さく安定した温度特性を有する化合物半導体CdTeZnを用いているので、1次冷却材喪失事故で試料ガスの温度が一時的に80℃程度に上昇した場合でも、安定に動作し且つ長寿命である。これらのことから、本実施の形態1によれば、耐ノイズ性を向上させた信頼性の高い放射性ガスモニタが得られる。
【0032】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2に係る放射性ガスモニタの検出部の構成を示す図である。なお、図4中、図1と同一、相当部分には同一符号を付している。上記実施の形態1では、放射線検出器2の内側電磁シールド23及び外側電磁シールド24は、プリアンプ22の出力において0V端子22dに接続され、複合ケーブル300の同軸ケーブル31のシールド312経由で、測定部500の測定部接地線56により接地されていた。
【0033】
本実施の形態2では、図4中、実線B、Cで示すように、内側電磁シールド23はプリアンプ22の出力において0V端子22dに接続され、複合ケーブル300の同軸ケーブ
ル31のシールド312経由で、測定部500の測定部接地線56により接地される。また、外側電磁シールド24は、複合ケーブル300のアウターシールド33経由で測定部500の測定部接地線56により接地されるようにした。なお、本実施の形態2に係る放射性ガスモニタのその他の構成については、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0034】
本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、外側電磁シールド24を、複合ケーブル300のアウターシールド33経由で測定部500の測定部接地線56により接地するようにしたので、特に検出部100の放射線検出器2と試料容器1及び遮蔽体3に形成される浮遊容量を経由してアースから進入するノイズに対し、耐ノイズ性の向上が図られる。
【0035】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る放射性ガスモニタの内側電磁シールド及び外側電磁シールドの主要部を示している。なお、本実施の形態3に係る放射性ガスモニタのその他の構成については、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。また、図5中、図2と同一、相当部分には同一符号を付している。
【0036】
上記実施の形態1では、図2に示すように、放射線検出器2の内側入射膜232において、マイラシート232aの両面に金属蒸着層であるアルミ蒸着層232bを設けるとともに、外側入射膜242においても、マイラシート242aの両面にアルミ蒸着層242
bを設けた。しかしながら、放射線入射膜の両面に金属蒸着層を設けることにより、測定対象であるβ線のエネルギーが減衰するという欠点がある。
【0037】
そこで、本実施の形態3では、図5に示すように、内側入射膜232において、マイラシート232aの放射線入射側の面にのみアルミ蒸着層232bを設け、また、外側入射膜242においても、マイラシート242aの放射線入射側の面にのみアルミ蒸着層242bを設けた。このように、金属蒸着層を片面のみに設けた場合、両面に設けた場合に比べてβ線のエネルギーの減衰が小さく、エネルギーによる検出効率の差を抑制できるので、良好なβエネルギー特性が得られる。さらに、本実施の形態3では、外側入射膜242にたわみが生じ内側入射膜232に接触した場合でも、電気的導通を防止することができる。
【0038】
本実施の形態3によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、内側入射膜232及び外側入射膜242の放射線入射側の面にのみアルミ蒸着層232b、242bを設けることにより、さらに検出効率の高い放射性ガスモニタが得られる。
【0039】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、検出部100において、サンプリングされた試料ガスは、全て試料容器1を流れるように構成されていたが、本発明の実施の形態4では、図6に示すように、遮蔽体3の外部に試料容器1をバイパスするバイパス配管6を設け、試料ガスを分流するようにした。なお、本実施の形態4に係る放射性ガスモニタのその他の構成については、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0040】
バイパス配管6は、試料容器1を流れる試料ガスの量を相対的に小さくし、試料容器1で発生する圧力損失を軽減するものである。これにより、試料ガスの圧力を大気圧に近づけることができ、放射線検出器2の外側入射膜242にたわみが生じるのを抑制することができる。なお、バイパス配管6により試料ガスの量は相対的に小さくなるが、試料ガス中の放射性希ガスの濃度を薄めるものではないため、検出感度が低下することはない。
【0041】
また、原子炉冷却材喪失事故により一時的に高温の試料ガスが流入した場合でも、バイパス配管6により分流しているため、放射線検出器2に伝達する熱量が相対的に小さくなり、放射線検出器2の温度上昇を抑制することができる。さらに、分流することにより試料ガスが流れやすくなり、検出部100より上流の試料ガスの入れ替えが早くなるため、指示応答が速くなる効果を奏する。
【0042】
本実施の形態4によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、遮蔽体3の外部に試料容器1をバイパスするバイパス配管6を設けることにより、外側入射膜242にたわみが生じるのを抑制し、また、放射線検出器2の温度上昇を抑制することができるので、さらに信頼性の高い放射性ガスモニタが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る放射性ガスモニタは、原子炉施設の1次冷却材喪失等の事故発生時に、環境に放出された排ガスの放射能濃度を測定する事故時放射性ガスモニタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 試料容器、1a 入口配管、1b 出口配管、2 放射線検出器、3 遮蔽体、
3a ケーブル導入孔、4 Oリング、5 検出部接地線、6 バイパス配管、
21 半導体センサ、22 プリアンプ、22a 信号出力端子、
22b プラス電源端子、22c マイナス電源端子、22d 0V端子、
23 内側電磁シールド、24 外側電磁シールド、25 同軸ケーブル、
26 電源ケーブル、27 コネクタ、
31 同軸ケーブル、32 電源ケーブル、33 アウターシールド、
51 測定ユニット、52 電源ユニット、53 コネクタ、54 同軸ケーブル、
55 電源ケーブル、56 測定部接地線、
100 検出部、
231 センサケース、232 内側入射膜、232a マイラシート、
232b アルミ蒸着層、233 通気孔、
241 検出器ケース、242 外側入射膜、242a マイラシート、
242b アルミ蒸着層、
251 芯線、252 シールド、
300 複合ケーブル、311 芯線、312 シールド、
500 測定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスが導入される試料容器と、前記試料容器に導入された試料ガス中の放射性物質から放出される放射線を検出して電圧パルスを出力する放射線検出器と、前記試料容器及び前記放射線検出器を包囲し環境放射線から遮蔽する遮蔽体を有する検出部、
前記放射線検出器が出力した電圧パルスを計数し工学値に変換する測定ユニットと、前記測定ユニット及び前記放射線検出器に直流電源を供給する電源ユニットを有する測定部、前記検出部から前記測定部に電圧パルスを伝送する芯線をシールドに内包した同軸ケーブルと、前記測定部から前記検出部に直流電流を供給する電源ケーブルと、前記同軸ケーブル及び前記電源ケーブルを内包した最外郭シールドを有する複合ケーブルを備えた放射性ガスモニタであって、
前記放射線検出器は、β線を検出する半導体センサと、前記半導体センサから出力された電流パルスを電圧パルスに変換し増幅するプリアンプと、前記半導体センサと前記プリアンプを内包するセンサケース及びこのセンサケースの放射線入射開口面に設けられた内側入射膜からなる内側電磁シールドと、前記センサケースを内包する検出器ケース及び前記検出器ケースの放射線入射開口面に設けられ前記試料容器のバウンダリーを構成する外側入射膜からなる外側電磁シールドを含むとともに、前記内側電磁シールド内部と前記外側電磁シールド内部の圧力を等しくする通気構造を有していることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項2】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記検出部において、前記試料容器と前記遮蔽体は電気的に導通され、前記検出部の接地線により接地されており、前記放射線検出器は前記試料容器及び前記遮蔽体と電気的に絶縁され、前記測定部の接地線により接地されることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項3】
請求項2に記載の放射性ガスモニタであって、前記放射線検出器の前記内側電磁シールドと前記外側電磁シールドは、前記プリアンプの0V端子及び前記同軸ケーブルの前記シールド経由で、前記複合ケーブルの前記最外郭シールドとともに前記測定部の接地線により接地されることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項4】
請求項2に記載の放射性ガスモニタであって、前記放射線検出器の前記内側電磁シールドは、前記プリアンプの0V端子及び前記同軸ケーブルの前記シールド経由で前記測定部の接地線により接地され、前記外側電磁シールドは、前記複合ケーブルの前記最外郭シールド経由で前記測定部の接地線により接地されることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項5】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記通気構造として、前記内側入射膜に通気孔を設けたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項6】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記半導体センサとして、化合物半導体CdTeZnを用いたことを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項7】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記内側入射膜及び前記外側入射膜は、それぞれの放射線入射側の面に金属膜を蒸着したプラスチックシートからなることを特徴とする放射性ガスモニタ。
【請求項8】
請求項1に記載の放射性ガスモニタであって、前記検出部は、前記試料容器に導入する試料ガスを分流するバイパス配管を備えたことを特徴とする放射性ガスモニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−128052(P2011−128052A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287606(P2009−287606)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】