説明

放射性同位体生成装置

【課題】 装置が小型化されるとともに、放射性同位体を効率良く生成させることが可能な放射性同位体生成装置を提供する。
【解決手段】 レーザ光を出力するレーザ光源10と、レーザ光を集光照射して発生した重陽子Dを放出する重陽子放出ターゲット20と、同位体生成ターゲット30と、同位体回収装置40とを備えて放射性同位体生成装置1Aを構成する。また、重陽子Dを入射してD+He→He+P反応によって高速陽子Pを発生させるHeと、11B,16O,15N,及び18Oの少なくとも1つを含む原料物質とを含む同位体生成ターゲット30を用い、高速陽子Pと原料物質とが反応することによって11C,13N,15O,及び18Fの少なくとも1つを含む放射性同位体を生成させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位体を生成するための放射性同位体生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体は、放射線源やトレーサーなどとして多様な分野で利用されている。その一例として、PET(Positron Emission Tomography)装置による診断における放射性同位体の利用がある。PET診断では、陽電子を放出する11C,13N,15O,18Fなどの短寿命の放射性同位体を含む薬剤が用いられている。
【0003】
PET用の放射性同位体は、通常、サイクロトロン加速器から供給される陽子、重陽子等の荷電粒子を用い、加速された高速の荷電粒子を気体または液体などのターゲットに照射して核反応を発生させることによって製造される。また、11C,13N,15O,18Fなどの放射性同位体を生成するための高速陽子Pを用いた核反応は反応しきい値がある。医療用のサイクロトロン加速器では、核反応の断面積を考慮して、その加速エネルギーは例えば10〜20MeVに設定されている。
【特許文献1】特開2001−56394号公報
【特許文献2】特開2004−212181号公報
【非特許文献1】John M. Dawson, "NonenergyApplications for Fusion", FUSION TECHNOLOGY Vol.22, pp.98-102 (1992)
【非特許文献2】I. Spencer et al., "Lasergeneration of proton beams for the production of short-lived positron emittingradioisotopes", Nucl. Instr. and Meth. in Phys. Res. B 183, pp.449-458(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PETによるガン診断等において、サイクロトロン加速器によって放射性同位体を生成する上記方法を用いた場合、病院内に設置することが必要な装置が大型化する。また、サイクロトロン加速器からはγ線等の放射線が発生するため、例えば厚さ1m以上のコンクリートで遮蔽を行うなど、大掛かりな放射線遮蔽設備が必要となるという問題がある。
【0005】
また、トカマク型などの核融合炉を用い、以下の反応式
D+He→He+P(14.67MeV)
で表される核反応を用いて高速陽子Pを発生させ、得られた陽子Pを用いてPET用の放射性同位体を生成する方法が Dawson によって提案されている(非特許文献1参照)。この反応は、核融合反応による直接発電の方法として知られているものである。
【0006】
上記反応式は、重陽子DとHeとを衝突させることにより、Heと陽子Pとが発生し、そのときの陽子Pのエネルギーが14.67MeVになることを示している。このような核反応で生成されるエネルギー14.67MeVの高速陽子Pを利用すれば、短寿命放射性同位体を生成することが可能である。しかしながら、核融合炉を用いるこのような方法では、核融合炉自体がまだ研究段階にあり、実用化には時間がかかる。
【0007】
一方、高強度のレーザ光を真空中でターゲットに照射することにより、電子、陽子、重陽子などの粒子がターゲットから高速で放出されることが知られている。また、高強度のレーザ光、またはレーザ光によって得られた高速の荷電粒子を利用して、PET用の短寿命放射性同位体を生成する試みがなされている(例えば、特許文献1、2、非特許文献2参照)。
【0008】
このように、同位体生成用の高速粒子を供給するサイクロトロン加速器を、レーザ光を利用した高速粒子発生装置へと置き換えることにより、ターゲット周辺等のみを遮蔽すれば良いこととなり、放射線遮蔽設備を含めた装置の小型化が可能となる。しかしながら、レーザ光の照射によってターゲットから放出される荷電粒子のエネルギー分布では、低エネルギー成分が多い(非特許文献2参照)。したがって、このような荷電粒子を放射性同位体生成に用いることを考えると、その核反応にしきい値がある場合には不利である。
【0009】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、装置が小型化されるとともに、放射性同位体を効率良く生成させることが可能な放射性同位体生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明による放射性同位体生成装置は、(1)所定強度のレーザ光を出力するレーザ光源と、(2)レーザ光を集光しつつ照射することによって発生した重陽子Dを放出する重陽子放出ターゲットと、(3)重陽子放出ターゲットからの重陽子Dを入射し、反応
D+He→He+P
によって高速陽子Pを発生させるためのHeと、11B,16O,15N,及び18Oの少なくとも1つを含む原料物質と、を含む同位体生成ターゲットと、(4)同位体生成ターゲットにおいて高速陽子Pと原料物質とが反応することによって生成された11C,13N,15O,及び18Fの少なくとも1つを含む放射性同位体を回収するための同位体回収手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記した放射性同位体生成装置においては、レーザ光の照射によってターゲットから放出される同位体生成用の荷電粒子として重陽子Dを利用するとともに、Heと原料物質との両者を含む同位体生成ターゲットを用いている。そして、同位体生成ターゲット内において重陽子DとHeとを反応させて高速陽子Pを発生させ、この高速陽子Pと原料物質との間での核反応によって放射性同位体を生成している。
【0012】
このような構成では、レーザ光を照射して得られる重陽子Dを利用することにより、装置を小型化することができる。また、重陽子放出ターゲットから放出される重陽子Dについては、その低エネルギー成分も含めて上記反応による高速陽子Pの発生に利用することが可能である。したがって、放射性同位体を効率良く生成させることが可能な放射性同位体生成装置が実現される。
【0013】
ここで、重陽子放出ターゲットとしては、例えば、重水素を含む物質を内包または吸着させた薄膜ターゲットを用いることができる。
【0014】
また、同位体生成ターゲットとしては、例えば、Heガス及び原料物質のガスを含む原料ガスが内部に導入される同位体生成用チャンバを有する構成を用いることができる。この場合、同位体生成用チャンバの内部は、Heガスが導入される第1の空間、及び原料物質のガスが導入される第2の空間に分けられている構成としても良い。あるいは、同位体生成ターゲットとしては、Heを吸着させた薄膜ターゲットを有する構成を用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザ光の照射によってターゲットから放出される重陽子Dを利用するとともに、Heと原料物質との両者を含む同位体生成ターゲットを用い、同位体生成ターゲット内において重陽子DとHeとを反応させて高速陽子Pを発生させ、この高速陽子Pと原料物質との間での核反応によって放射性同位体を生成することにより、装置が小型化されるとともに、放射性同位体を効率良く生成させることが可能な放射性同位体生成装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面とともに本発明による放射性同位体生成装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
図1は、本発明による放射性同位体生成装置の一実施形態の構成を概略的に示すブロック図である。本実施形態による放射性同位体生成装置1Aは、レーザ光の照射によって発生する荷電粒子を利用して放射性同位体を生成させるものであり、レーザ光源10と、重陽子放出ターゲット20と、同位体生成ターゲット30と、同位体回収装置40とを備えている。
【0018】
レーザ光源10は、荷電粒子の発生に用いられる所定波長、所定強度のレーザ光を出力する光源装置である。このレーザ光としては、荷電粒子を発生させることが可能な高強度のレーザ光が用いられ、好ましくは、高ピークパワーの超短パルスレーザ光などのパルスレーザ光が用いられる。
【0019】
このレーザ光源10に対し、重陽子放出ターゲット20及び同位体生成ターゲット30は、所定の真空度が保持された真空チャンバ50内に設置されている。レーザ光源10から供給されたレーザ光は、集光しつつ重陽子放出ターゲット20へと照射される。重陽子放出ターゲット20は、レーザ光の照射によって重水素の原子核である重陽子Dを発生、放出させることが可能な材料によって形成されている。
【0020】
重陽子放出ターゲット20から放出された重陽子Dは、同位体生成ターゲット30へと入射される。同位体生成ターゲット30は、Heと、同位体生成の原料物質とを含んで形成されている。また、本生成装置1Aにおいては、同位体生成ターゲット30に対して原料供給装置35が設置されている。原料供給装置35は、同位体生成ターゲット30に対して、必要に応じて同位体生成に用いられるHe及び原料物質を供給する。
【0021】
上記したターゲット30に含まれる物質のうち、Heは、レーザ光源10からのレーザ光の照射によって重陽子放出ターゲット20から放出された重陽子Dを入射し、反応
D+He→He+P
によって高速陽子Pを発生させるためのものである。この反応では、上述したように、エネルギー14.67MeVの高速陽子Pが生成される。本生成装置1Aにおいては、この高速陽子Pが、放射性同位体を生成するための高速の荷電粒子として用いられる。
【0022】
また、Heとともにターゲット30を構成している同位体生成の原料物質は、11B,16O,15N,及び18Oの少なくとも1つを含んでいる。このような同位体生成ターゲット30内において、Heからの高速陽子Pと、原料物質の原子核との間で核反応が起こることにより、11C,13N,15O,及び18Fの少なくとも1つを含む放射性同位体が生成される。
【0023】
具体的には、原料物質が11Bを含む場合、反応
11B(p,n)11
により同位体11Cが生成される。また、原料物質が16Oを含む場合、反応
16O(p,α)13
により同位体13Nが生成される。また、原料物質が15Nを含む場合、反応
15N(p,n)15
により同位体15Oが生成される。また、原料物質が18Oを含む場合、反応
18O(p,n)18
により同位体18Fが生成される。なお、同位体生成用の荷電粒子として陽子Pを用いた場合の核反応、生成される放射性同位体の寿命、反応のしきい値、及び天然存在度を図2の表に示す。また、この表においては、参考のため、重陽子Dを用いた場合の核反応についても示している。
【0024】
この同位体生成ターゲット30に対し、同位体回収装置40が、真空チャンバ50内、または真空チャンバ50内から外部にわたって設置されている。この同位体回収装置40は、同位体生成ターゲット30において上記のように生成された11C,13N,15O,及び18Fの少なくとも1つを含む放射性同位体を回収するための回収手段である。なお、重陽子放出ターゲット20、同位体生成ターゲット30、原料供給装置35、及び同位体回収装置40の構成については、具体的には後述する。
【0025】
上記実施形態による放射性同位体生成装置1Aの効果について説明する。
【0026】
図1に示した放射性同位体生成装置1Aにおいては、レーザ光源10からのレーザ光の照射によって発生する同位体生成用の荷電粒子として、重陽子放出ターゲット20から放出される重陽子Dを利用するとともに、Heと原料物質との両者を含む同位体生成ターゲット30を用いている。そして、重陽子Dをそのまま同位体生成に用いるのではなく、同位体生成ターゲット30内において、重陽子放出ターゲット20から入射された重陽子Dと、ターゲット30に含まれるHeとを反応させて高速陽子Pを発生させ、この高速陽子Pと原料物質の原子核との間での核反応によって放射性同位体を生成している。
【0027】
このような構成では、レーザ光を照射して得られる重陽子Dを利用して同位体生成を行うことにより、サイクロトロン加速器を利用する場合等に比べて装置を小型化することができる。また、重陽子Dを直接に同位体生成に用いるのではなく、さらに重陽子Dを利用して高速陽子Pを発生させている。これにより、重陽子放出ターゲット20から放出される重陽子Dについては、その低エネルギー成分も含めて、上記反応
D+He→He+P
による高速陽子Pの発生に利用することが可能である。したがって、放射性同位体を効率良く生成させることが可能な放射性同位体生成装置1Aが実現される。
【0028】
ここで、重陽子放出ターゲット20としては、例えば、重水素を含む物質を内包または吸着させた薄膜ターゲットを用いることができる。
【0029】
また、同位体生成ターゲット30としては、例えば、Heガス及び原料物質のガスを含む原料ガスが内部に導入される同位体生成用チャンバを有する構成を用いることができる。この場合、同位体生成用チャンバの内部は、Heガスが導入される第1の空間、及び原料物質のガスが導入される第2の空間に分けられている構成としても良い。
【0030】
あるいは、同位体生成ターゲット30としては、Heを吸着させた薄膜ターゲットを有する構成を用いることができる。また、重陽子放出ターゲット20及び同位体生成ターゲット30としては、これら以外にも様々な構成のものを用いて良い。
【0031】
上記した生成装置1Aにおける放射性同位体の生成過程について、さらに説明する。図3は、重陽子放出ターゲット20にレーザ光を照射することによる重陽子Dの発生過程を示す模式図である。なお、ここでは、重陽子放出ターゲット20を薄膜ターゲットとして図示している。
【0032】
図3に示すように、レーザ光源10から供給される高強度のレーザ光を集光しつつターゲット20に照射すると、光電場電離により瞬時のうちにイオン化が起こり、プラズマが発生する。このとき、電子はレーザ電場から1周期の間に加速され、高エネルギー電子となってターゲット20から放出される。そして、レーザ光の進行方向に放出された電子によってターゲット20の近傍に高電界が発生し、この高電界によってターゲット20からイオン(荷電粒子、この場合は重陽子D)が加速されて引き出される。また、ターゲット20のレーザ光入射面側においても、レーザ光の入射方向に電子が放出され、レーザ光の進行方向と同様にイオンが加速、放出される。
【0033】
このような過程によってターゲットから放出される荷電粒子のエネルギー分布では、低エネルギー成分が比較的多い。図4は、レーザ光の照射によってターゲットから放出される荷電粒子のエネルギー分布を示すグラフである。図4において、グラフGD1(黒丸)は、重水素化ポリスチレン(d−PSt:C)を内包させた厚さ75μmのポーラス構造PolyTetraFluoroEthylene(PTFE:C)薄膜ターゲットを用いた場合の重陽子Dのエネルギー分布を示している。また、グラフGD2(白丸)は、d−PStをコートした厚さ6μmのMylar(C10)ターゲットを用いた場合の重陽子Dのエネルギー分布を示している。また、グラフGP1(黒四角)、グラフGP2(白四角)は、それぞれ同様のターゲットを用いた場合の陽子Pのエネルギー分布を示している。
【0034】
また、これらの重陽子D及び陽子Pのエネルギー分布では、上記した重陽子放出ターゲットに対して、ピーク出力2.4TW、パルス幅50fs、繰返し周波数10HzのテーブルトップTWレーザ光源からのレーザ光を集光照射し、発生した高エネルギーイオンをトムソンパラボラ型イオン分析器で計測した。これらのグラフより、重陽子D及び陽子Pのいずれの場合も、レーザ光の照射によって発生する荷電粒子のエネルギー分布では低エネルギー成分が多いことがわかる。なお、PTFEターゲットのグラフGD1と、MylarターゲットのグラフGD2とを比較すると、PTFEターゲットでは、得られる重陽子Dの最大エネルギーを0.9MeVから1.6MeVまで増大させることができ、その発生量も多くなる。
【0035】
図5は、D+He→He+P反応の衝突断面積の入射エネルギー依存性を示すグラフである(CSISRS/ENDFdata より引用)。このグラフより、高速陽子Pを発生させるための上記核反応では、重陽子Dの入射エネルギーが500keV程度と比較的低いエネルギーで衝突断面積が大きくなっている。
【0036】
このことから、図1に示した生成装置1Aにおいて、Heは高速陽子P発生用の物質として同位体生成ターゲット30に存在しているだけで良く、また、重陽子放出ターゲット20からの重陽子Dは高々数100keVのエネルギーを持てば良いことがわかる。すなわち、重陽子放出ターゲット20から放出される重陽子Dでは、図4に関して上述したように低エネルギー成分が多くなるが、D+He→He+P反応を利用する本生成装置1Aでは、この核反応が低いエネルギーで大きい衝突断面積を有するため、重陽子Dの低エネルギー成分を有効に利用して高速陽子Pを発生させ、さらに、その高速陽子Pと原料物質とを反応させて、放射性同位体を効率良く生成させることが可能である。
【0037】
なお、同位体生成ターゲット30に用いられるHeは、天然には1.37×10−4しか存在しないが、例えば99.95%まで濃縮されたものを購入することが可能である。
【0038】
図1に示した放射性同位体生成装置の具体的な構成例について説明する。図6は、図1に示した放射性同位体生成装置の一実施例を示す構成図である。なお、以下の実施例においては、主として、同位体生成ターゲットに含まれる原料物質を15Nとし、生成される放射性同位体を15Oとした例について説明する。
【0039】
図6に示す生成装置1Bにおいては、レーザ光源10としてチタンサファイアレーザ光源11を用い、レーザ光源11から出力される波長800nm、パルス幅50fs、ピーク出力10TWのパルスレーザ光を重陽子D発生用の高強度レーザ光として用いている。また、このような高強度レーザ光を空気中で集光すると、空気がプラズマ化されてしまうために高い集光密度を得ることができない。このため、レーザ光源11から供給されたレーザ光は、重陽子放出ターゲット及び同位体生成ターゲットが収容された真空チャンバ50の内部へと導かれる。
【0040】
真空チャンバ50内には、重陽子Dを発生させるための重陽子放出ターゲット20として、所定のターゲット材料からなるターゲットフィルム21が設置されている。ターゲットフィルム21としては、例えば、重陽子化したポリスチレン等をフィルムに染み込ませたものや、重水等をフィルム表面に吸着させたものがある。具体的には、例えば、上記したd−PStを内包させたPTFE薄膜ターゲット、あるいはd−PStをコートしたMylarターゲット等を用いることができる。また、このターゲットフィルム21は、ターゲットホルダ22によって保持されている。
【0041】
また、真空チャンバ50内の所定位置には、レーザ光源11からのレーザ光をターゲットフィルム21へと集光しつつ照射するための集光光学系15が設置されている。図6においては、具体的には、集光光学系15の一例として軸外し放物面鏡16を示している。このように軸外し放物面鏡16を用いることにより、レーザ光をターゲットフィルム21上の所定位置へと好適に集光することができる。また、レーザ光源11と軸外し放物面鏡16との間にある真空チャンバ50の外壁部分は、レーザ光を透過させるためのガラス窓51となっている。
【0042】
また、ターゲットフィルム21からみて軸外し放物面鏡16とは反対側には、同位体生成ターゲット30となる同位体生成ターゲット装置31が設置されている。図6においては、ターゲット装置31は、同位体生成用チャンバ32、及びチャンバ32の内部に導入されておりHeガスと原料物質のガスである15ガスとを含む原料ガス33によって構成されている。
【0043】
同位体生成用チャンバ32には、原料ガス33を供給するための原料供給装置35として、He供給用ボンベ36と15供給用ボンベ37とが原料供給用配管38を介して接続されている。He供給用ボンベ36は、高速陽子Pを発生させるためのHeをチャンバ32内に供給する。また、15供給用ボンベ37は、同位体生成の原料物質となる15をチャンバ32内に供給する。
【0044】
また、同位体生成用チャンバ32には、さらに、生成された放射性同位体を回収するための同位体回収装置40として、同位体回収用配管41及び15回収用タンク42が接続されている。15回収用タンク42には、高速陽子Pと原料物質の15Nとが反応することによって生成された放射性同位体15Oを含む15が、同位体回収用配管41を介してチャンバ32内から回収される。
【0045】
以上の構成において、レーザ光源11から出力されたレーザ光は、ガラス窓51を透過して真空チャンバ50内へと入射し、軸外し放物面鏡16によって反射される。そして、軸外し放物面鏡16で反射されたレーザ光が集光されつつ重陽子放出ターゲット20のターゲットフィルム21へと照射されることにより、重陽子Dが発生して外部へと放出される。
【0046】
ターゲットフィルム21から放出される重陽子Dのうち、レーザ光の進行方向に沿って放出される重陽子Dは、同位体生成用チャンバ32内の原料ガス33へと入射し、重陽子Dと、原料ガス33に含まれるHeとが反応することによって高速陽子Pが発生する。さらに、この高速陽子Pと、原料ガス33に含まれる15Nとが反応することにより、放射性同位体である15Oが生成される。生成された15Oは、配管41を介して15回収用タンク42に回収、保存される。
【0047】
図7は、図6に示した放射性同位体生成装置1Bに用いられる重陽子放出ターゲット20の具体的な構成例を示す斜視図である。本構成例においては、ターゲットフィルム21及びターゲットホルダ22は、支持部23を介してXYZステージ26上に固定されている。また、ターゲットホルダ22は中空ベアリングを有し、ベルト29及び回転リング28によって回転可能となっている。
【0048】
XYZステージ26は、そのX方向、Y方向(水平方向)、及びZ方向(垂直方向)の位置を制御することによって、集光光学系15からのレーザ光に対するターゲットフィルム21の位置の設定および変更を制御する。また、本構成では、回転軸27によって駆動モータに接続された回転リング28を回転させることにより、ベルト29を介してターゲットホルダ22及びターゲットフィルム21を回転させることが可能となっている。
【0049】
図8は、図6に示した放射性同位体生成装置1Bに用いられる同位体生成ターゲット装置31の具体的な構成例を示す斜視図である。本構成例においては、同位体生成ターゲット装置31は、上述したように、原料ガス33が内部に導入される同位体生成用チャンバ32を有して構成されている。
【0050】
同位体生成用チャンバ32の重陽子放出ターゲット20側の面には、重陽子Dをチャンバ32内の原料ガス33へと入射させるための重陽子入射窓34が設けられている。この重陽子入射窓34としては、好ましくは金属薄膜等が用いられる。さらに、チャンバ32の一方の側壁には原料供給用配管38が、また、他方の側壁には同位体回収用配管41がそれぞれ接続されている。
【0051】
図1及び図6に示した放射性同位体生成装置におけるレーザ光の導光及び集光について説明する。同位体生成に用いられるレーザ光を供給するレーザ光源として出力がTWクラスのチタンサファイアレーザ光源を用いる場合、通常、チャープパルスアンプ(CPA)方式を採用している。図9は、チャープパルス増幅の原理を示す模式図である。
【0052】
図9において、励起用CWレーザ光源62からの励起レーザ光によって励起されたフェムト秒レーザ発振器61は、モード同期法により、例えばパルス幅100fs、エネルギー1nJのフェムト秒パルスレーザ光を発生させる。このパルスレーザ光は、パルス伸長器63により、例えば100ps程度のパルス幅まで伸長される。このとき、伸長されたパルスレーザ光のピーク出力は、3桁程度減少する。
【0053】
さらに、励起用パルスレーザ光源65からの励起レーザ光によって励起された再生増幅器またはマルチパス増幅器などの複数のレーザ増幅器64により、パルスレーザ光のエネルギーが例えば2×10倍に増幅される。これにより、エネルギー2Jのパルスレーザ光が得られる。最後に、増幅されたパルスレーザ光をパルス圧縮器66によって再びパルス幅100fsへと戻す。このとき、パルス圧縮器66の効率を50%であると仮定すると、最終的に得られるフェムト秒パルスレーザ光のエネルギーは1Jとなる。また、パルス幅100fsとあわせて考えると、そのピーク出力は10TWとなる。
【0054】
このような方法では、パルス圧縮器66以前ではパルスレーザ光のピーク出力が低く抑えられている。このため、レーザ増幅器64を構成する光学部品の損傷を防ぐことができる。なお、最終的なパルスレーザ光のピーク出力が1TWを越えるような場合、図6に示した構成において、パルス圧縮器66を真空チャンバ50内に設置することが好ましい。この場合、パルスレーザ光は、伸長された状態でガラス窓51を介して真空チャンバ50内に入射した後、パルス圧縮器66によって圧縮されて最終的なフェムト秒パルスレーザ光となる。
【0055】
また、図6に示した生成装置1Bにおいては、レーザ光源11からのパルスレーザ光を重陽子放出ターゲット20へと集光する集光光学系15として、軸外し放物面鏡16を用いている。図10は、軸外し放物面鏡16の外観の一例を示す斜視図である。図10に示す軸外し放物面鏡16では、その略円筒状の本体16aの側面上に、放物面鏡として機能する鏡面16bが設けられている。
【0056】
このような軸外し放物面鏡16を用いたレーザ光の集光条件の一例について説明する。ここでは、軸外し放物面鏡16を口径D=76.2mm、焦点距離f=114.2mm、軸外し角度θ=45°とする。また、このとき、F=f/D=1.50である。また、この軸外し放物面鏡へと入射させるガウシアン分布を持つレーザ光は、波長λ=0.8μm、ビーム直径2W=25mmであった。
【0057】
以上の条件において、理論的な回折限界の集光ビーム直径は2w=2λf/(πW)=4.7μmで与えられる。また、実際に実験で得られたビーム直径は、理論値の約1.8倍の約8.3μmであった。
【0058】
次に、上記軸外し放物面鏡でTWレーザ光を集光したときのピークパワー(TW)と、集光ビーム径(μm)とから、レーザ光の集光密度(W/cm)を計算する。ガウシアンのTEM00ビームの放射強度分布は、どの距離においても断面は同じであり、式
【数1】


で与えられる。したがって、その最大強度は、
【数2】


となる。ここで、Pはレーザ光ビームの全パワー、Iは放射強度の最大値、wはウエスト半径(中心の1/eの強度の半径)である。
【0059】
例えば、MPA出力エネルギーが200mJ、コンプレッサの効率60%、パルス半値全幅50fsのレーザを用いた場合、そのピーク出力は200×0.6/50=2.4TWである。実際に得られた集光ビーム直径は上記のように8.3μmであるから、最大集光強度I=2×200×0.6/50/{π×(8.3/2×10−4}=8.9×1018W/cmが得られる。また、ビームの全エネルギーが集光スポットに入っている訳ではなく、波面歪みによってスポット以外の領域にもエネルギーが広がることを考慮すると、実際には3×1018W/cm程度の集光エネルギーが得られると考えられる。
【0060】
次に、放射性同位体生成装置に用いられる同位体生成ターゲットの構成についてさらに説明する。
【0061】
図11は、同位体生成ターゲットの具体的な構成の他の例を示す側面断面図である。本構成例においては、同位体生成ターゲット30である同位体生成ターゲット装置70は、原料ガスが内部に導入される同位体生成用チャンバ71を有して構成されている。また、同位体生成用チャンバ71の重陽子放出ターゲット側の面には、低エネルギーの重陽子Dをチャンバ71内へと通過させる膜からなる重陽子入射窓72aが設けられるとともに、チャンバ71の内部には、前方側の第1の空間71aと後方側の第2の空間71bとを分ける膜72bが設けられている。また、チャンバ71内の空間71a、71bには、それぞれ原料供給用配管73a、73b、及び排出用配管74a、74bが接続されている。このうち、排出用配管74bは、同位体回収用配管となっている。
【0062】
このような構成において、重陽子入射窓72aを介して重陽子Dが入射される第1の空間71aには、Heガスが低圧で供給されている。一方、第2の空間71bには、同位体生成の原料物質である15ガスが数気圧で供給されている。また、空間71a、71bを隔てる膜72bは、空間71a、71b間の圧力差を保持可能であり、かつ、空間71a内においてD+He→He+P反応で発生した高速陽子Pを空間71b内の原料物質へと通過させる陽子通過膜となっている。
【0063】
ここで、図8に示した同位体生成ターゲット装置31では、Heガスと15ガスとがチャンバ32内で混合される構成となっていたが、この図11に示したターゲット装置70のように、同位体生成ターゲットに含まれるHeと原料物質とは、別々に存在する構成であっても良い。例えば、上記したターゲット装置70では、空間71aにおいて重陽子Dを効率良くHeと反応させて高速陽子Pを発生させ、さらに、この高速陽子Pを空間71bにおいて数気圧で多数の15を含むガスと反応させて、放射性同位体である15を効率的に生成することができる。
【0064】
図12は、同位体生成ターゲットの具体的な構成のさらに他の例を示す側面断面図である。本構成例においては、同位体生成ターゲット30である同位体生成ターゲット装置75は、原料ガスが内部に導入される同位体生成用チャンバ76を有して構成されている。また、同位体生成用チャンバ76の重陽子放出ターゲット側の面には、Heを吸着させた薄膜ターゲット77が設けられている。また、チャンバ76内の空間には、原料供給用配管78、及び同位体回収用配管79が接続され、同位体生成の原料物質である15ガスが供給されている。
【0065】
このような構成において、薄膜ターゲット77では、重陽子放出ターゲットからの重陽子DによってD+He→He+P反応で高速陽子Pが発生する。そして、この高速陽子Pがチャンバ76内の空間において15を含むガスと反応することにより、放射性同位体である15が生成される。このように、同位体生成ターゲットとしては、Heを含む薄膜ターゲットと、原料物質を含むガスとを組み合わせる構成を用いることも可能である。Heを含む薄膜ターゲットとしては、例えば、Heをイオン打ち込み等で内部に侵入させた薄膜を用いることができる。
【0066】
図11に示した同位体生成ターゲットの構成について、さらに具体的に説明する。図13は、図11に示した同位体生成ターゲット装置70の構成について説明するための模式図である。このターゲット装置70では、上述したように、チャンバ71内の第1の空間71aにはHeガスが導入されている。また、第2の空間71bには原料物質のガスである15ガスが導入されている。また、ここでは、空間71aでのHeガスの圧力を0.1気圧、空間71bでの15ガスの圧力を10気圧とする。
【0067】
重陽子放出ターゲットにレーザ光を集光照射して発生させた重陽子Dは、例えば1MeV以上のエネルギーを持つ。これに対し、重陽子入射窓72aを厚さ1μmのFe(鉄)薄膜とすると、重陽子DはFe薄膜72aを通過して空間71a内のHeガスへと入射する。ここで、厚さ1μmのFe薄膜72aでは、エネルギー0.2MeVの重陽子の飛程が1μmであるために0.2MeVの重陽子は止められてしまうが、それ以上のエネルギーを持つ重陽子はFe薄膜72aを通過する。
【0068】
また、空間71a内のHeガスの圧力を0.1気圧とした場合、エネルギー0.2MeVの重陽子の飛程は約2cmである。一方、D+He→He+P反応の衝突断面積は、上記したように0.5MeV付近で最も大きくなる。したがって、空間71aの厚さ(Heガスの厚さ)を2cmとすると、重陽子Dを用いた上記反応により、エネルギー14.67MeVの高速陽子Pを効率良く発生させることができる。なお、同位体生成用チャンバ71は真空チャンバ内に配置されるため(図6参照)、チャンバ71の周囲は例えば1×10−3Paの真空状態である。しかしながら、上記した例では空間71a内でのガス圧を0.1気圧と低圧に設定しているので、厚さ1μmのFe薄膜72aが破れることはない。
【0069】
さらに、チャンバ71内において空間71a、71bを分ける陽子通過膜72bを厚さ100μmのFe薄膜とする。ここで、厚さ100μmのFe薄膜72bでは、エネルギー7MeVの陽子の飛程は100μmであり、また、14.67MeVの陽子Pのエネルギーは、Fe薄膜72bを通過後11MeV程度まで減衰する。ここで、放射性同位体を生成するための15N(p,n)15O反応の衝突断面積は充分大きな値を持つので、このような陽子Pによって核反応を発生させて、原料物質15Nから放射性同位体15Oを効率的に生成することができる。
【0070】
なお、空間71b内の15ガスの圧力を10気圧とした場合、エネルギー10MeVの陽子の飛程は約8cmである。したがって、空間71bの厚さ(15ガスの厚さ)については、例えば10cmとすれば良い。
【0071】
図14は、図11及び図13に示した同位体生成ターゲット装置の具体的な構成の一例を示す斜視図である。図14に示す放射性同位体生成装置は、軸外し放物面鏡などの集光光学系及び重陽子放出ターゲットが収容されているレーザ光照射用真空チャンバ52と、チャンバ52に接続されたレーザ光導光管53とを備えており、真空チャンバ52の一側面に連結部80を介して接続された第1のチャンバ81及び第2のチャンバ82によって、同位体生成ターゲット装置が構成されている。なお、別途設置されているレーザ光源については、図14においては図示を省略している。
【0072】
ここで、第1のチャンバ81が、図13に示したチャンバ71の前段部及び第1の空間71aに対応している。また、第2のチャンバ82が、チャンバ71の後段部及び第2の空間71bに対応している。また、連結部80と第1のチャンバ81との間、及び第1のチャンバ81と第2のチャンバ82との間は、それぞれ真空フランジを介して接続されるとともに、それらの内部は、それぞれ重陽子入射窓、及び陽子通過膜によって分けられている。
【0073】
チャンバ81、82に対し、それぞれHe供給用ボンベ81a、及び15供給用ボンベ82aが接続されている。また、チャンバ82には、さらに同位体回収用配管83が接続されている。また、連結部80と第1のチャンバ81との間、及び連結部80と第2のチャンバ82との間には、それぞれバイパスバルブが設けられたバイパス81b、及びバイパス82bが接続されている。このような構成で同位体生成を行う場合、まず、同位体生成ターゲット装置内を真空排気する必要があり、バイパス81b、82bに設けられたバイパスバルブを開けてチャンバ81、82内を真空排気する。
【0074】
第1のチャンバ81内のHeガスについては、上述したように0.1気圧と低圧に設定しているため、真空ポンプで排気しながらHeガスを導入する。一方、第2のチャンバ82内の15ガスについては、例えば10気圧に増圧しているため、ボンベ82aの圧力調整バルブを操作しながら15ガスを導入する。また、生成された放射性同位体である15ガスは、本体から取り出され、回収用配管83を介してPET診断のための薬剤合成装置などの外部装置へと送られる。
【0075】
本発明による放射性同位体生成装置は、上記実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、重陽子放出ターゲット、同位体生成ターゲット、及び同位体回収手段については、上記構成以外にも様々なものを用いて良い。例えば、重陽子放出ターゲットとしては、図6に示した構成以外にも、例えば、オーディオテープのように細長いテープ状のフィルムを複数回巻いたものなど、様々な構成のものを用いることができる。また、同位体回収手段については、回収用配管のみを備える構成であっても良い。また、レーザ光源についても、チタンサファイアレーザ光源に限らず他のレーザ光源を用いても良い。
【0076】
また、生成対象となる放射性同位体については、上記した構成例では、主として15Nを原料物質として15Oを生成する場合について説明しているが、これに限られるものではない。一般には、同位体生成ターゲットの原料物質を11B,16O,15N,及び18Oの少なくとも1つを含む物質とし、11C,13N,15O,及び18Fの少なくとも1つを含む放射性同位体を生成するように構成すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、装置が小型化されるとともに、放射性同位体を効率良く生成させることが可能な放射性同位体生成装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】放射性同位体生成装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】陽子P、または重陽子Dを用いて放射性同位体を生成する場合の核反応について示す表である。
【図3】重陽子放出ターゲットにレーザ光を照射することによる重陽子Dの発生過程を示す模式図である。
【図4】レーザ光の照射によってターゲットから放出される荷電粒子のエネルギー分布を示すグラフである。
【図5】D+He→He+P反応の衝突断面積の入射エネルギー依存性を示すグラフである。
【図6】図1に示した放射性同位体生成装置の一実施例を示す構成図である。
【図7】重陽子放出ターゲットの具体的な構成例を示す斜視図である。
【図8】同位体生成ターゲット装置の具体的な構成例を示す斜視図である。
【図9】チャープパルス増幅の原理を示す模式図である。
【図10】軸外し放物面鏡の外観の一例を示す斜視図である。
【図11】同位体生成ターゲットの構成の他の例を示す側面断面図である。
【図12】同位体生成ターゲットの構成の他の例を示す側面断面図である。
【図13】図11に示した同位体生成ターゲット装置の構成について説明するための模式図である。
【図14】図11に示した同位体生成ターゲット装置の具体的な構成の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
1A、1B…放射性同位体生成装置、10…レーザ光源、11…チタンサファイアレーザ光源、15…集光光学系、16…軸外し放物面鏡、20…重陽子放出ターゲット、21…ターゲットフィルム、22…ターゲットホルダ、23…支持部、26…XYZステージ、27…回転軸、28…回転リング、29…ベルト、30…同位体生成ターゲット、31…同位体生成ターゲット装置、32…同位体生成用チャンバ、33…原料ガス、34…重陽子入射窓、35…原料供給装置、36…He供給用ボンベ、37…15(原料物質)供給用ボンベ、38…原料供給用配管、
40…同位体回収装置、41…同位体回収用配管、42…15(放射性同位体)回収用タンク、50…真空チャンバ、51…ガラス窓、70…同位体生成ターゲット装置、71…同位体生成用チャンバ、71a…第1の空間、71b…第2の空間、72a…重陽子入射窓、72b…陽子通過膜、73a、73b…原料供給用配管、74a、74b…排出用配管、75…同位体生成ターゲット装置、76…同位体生成用チャンバ、77…薄膜ターゲット、78…原料供給用配管、79…同位体回収用配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定強度のレーザ光を出力するレーザ光源と、
前記レーザ光を集光しつつ照射することによって発生した重陽子Dを放出する重陽子放出ターゲットと、
前記重陽子放出ターゲットからの前記重陽子Dを入射し、反応
D+He→He+P
によって高速陽子Pを発生させるためのHeと、11B,16O,15N,及び18Oの少なくとも1つを含む原料物質と、を含む同位体生成ターゲットと、
前記同位体生成ターゲットにおいて前記高速陽子Pと前記原料物質とが反応することによって生成された11C,13N,15O,及び18Fの少なくとも1つを含む放射性同位体を回収するための同位体回収手段と
を備えることを特徴とする放射性同位体生成装置。
【請求項2】
前記重陽子放出ターゲットは、重水素を含む物質を内包または吸着させた薄膜ターゲットであることを特徴とする請求項1記載の放射性同位体生成装置。
【請求項3】
前記同位体生成ターゲットは、Heガス及び前記原料物質のガスを含む原料ガスが内部に導入される同位体生成用チャンバを有することを特徴とする請求項1または2記載の放射性同位体生成装置。
【請求項4】
前記同位体生成用チャンバの内部は、Heガスが導入される第1の空間、及び前記原料物質のガスが導入される第2の空間に分けられていることを特徴とする請求項3記載の放射性同位体生成装置。
【請求項5】
前記同位体生成ターゲットは、Heを吸着させた薄膜ターゲットを有することを特徴とする請求項1または2記載の放射性同位体生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−226790(P2006−226790A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39685(P2005−39685)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人 科学技術振興機構、地域結集型共同研究事業、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503304577)財団法人光科学技術研究振興財団 (11)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】