説明

放射性廃液を閉じ込めるためのアルミノ‐ホウケイ酸ガラス、及び放射性廃液の処理方法

本発明は、中レベル放射性廃液を閉じ込めるアルミノ‐ホウケイ酸ガラスに関する。本発明はまた、ガラス固化添加剤及び、該廃液の焼成、ガラス固化添加剤を該焼成物に添加すること、その焼成物とガラス固化添加剤を、ガラス溶解を生じるように冷却坩堝の中で溶解すること、そして溶解したガラスをアルミノ‐ホウケイ酸ガラスを生じるように冷却することを含む、中レベル放射性廃液の処理方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中程度の放射能を有する放射性廃液(以下、中レベル放射性廃液)、特に燃料サイクルプラントの 最終的な運転停止工程(フランス語ではMADと表す)によって生じる廃液の閉じ込め、格納、隔離のためのアルミノ‐ホウケイ酸ガラスに関する。
【0002】
本発明はまた、特に、ガラスフリット状又は、化学品とりわけ酸化物の粉末状混合物であるガラス固化補助剤に関する。
【0003】
本発明は更に、焼成物(カルサイン)を得る目的でこれらの廃液を焼成すること、特にガラスフリット状又は化学品の粉末状混合物であるガラス固化補助剤を該焼成物へ加えること、また、アルミノ‐ホウケイ酸ガラスを得るために、冷却坩堝中で焼成物とガラス固化補助剤とを溶解させることによる中レベル放射性廃液の処理方法に関する。
【0004】
本発明の技術分野は、通常、放射性元素、更に具体的には中レベル放射性元素の、閉じ込め、格納、隔離、被覆、又は固定化による処理の分野と定義されてもよい。
【0005】
これらの中レベル放射性元素は、特に、核燃料再処理施設の最終的な運転停止工程(《MAD》)時の洗浄によって生じる除染廃液である。
【0006】
これら除染廃液の化学的組成物は、主に使用された試薬の違いによって決まる。
【0007】
これらの試薬は硝酸又はソーダを主成分にしていてもよく、あるいは場合によっては、これらは炭酸ナトリウム又は硝酸セリウムを主成分にする特定の廃液であってもよい。
【背景技術】
【0008】
現在、上述された除染廃液のような中レベル放射性廃液は、基本的に瀝青固化又はセメント固化により処理されている。
【0009】
瀝青固化による被覆方法は、廃棄物を瀝青と共に泥(塩)状に加熱混合することから成る。
【0010】
得られた混合物は脱水され、冷却された容器に流し込まれる。
【0011】
瀝青被覆は、従って、塩の均質な分散及び放射性核種の母材内部への固定化(遮断)を確実にする。
【0012】
瀝青固化法は、廃液の処理で生じる沈殿スラッジを調整するために、フランスでは早くも1960年代には開発されており、工業的に応用されていた。
【0013】
それは、経験の広範囲なフィードバックによって利得された十分実績のある方法である。
【0014】
瀝青は、その高い凝集力、高い化学慣性、不浸透性、低い水溶性、低い適用温度、そしてその安価さから、低‐中レベル放射性廃棄物を被覆する材料として選択された。
【0015】
一方で、瀝青固化にはいくつかの重要な欠点がある。
‐ 瀝青は放射線に対する安定性が低く、特に、放射線分解による水素の発生のために、徐々に、被覆された物質の膨張をもたらす。
‐ 火災のいかなるリスクも回避するために、被覆された物質の生産段階において、瀝青固化装置の動作範囲はきわめて制限される。実際、瀝青で被覆された物質の生産時には発熱反応が起こり得るので、それら発熱反応はできる限り最善のコントロールがなされなければならない。
‐ 瀝青の機械的強度は、それらの強いクリープのためにきわめて低い。
‐ 《MAD》廃液の活性を考慮に入れると、この母材によって生じる廃棄物の体積は著しく大きい。
【0016】
セメント、又は殆どの場合水硬性の結合剤が、原子力産業では広く使用されている。それらは低‐中レベルの固形廃棄物を容器中に固定するのに使用され、あるいは、中レベル廃棄物を被覆する調整母材として使用される。
【0017】
セメント固化はまた、溶液状又は粉末状の、蒸発濃縮物、化学処理によるスラッジ、イオン交換樹脂などのような廃棄物を被覆するのに使用される。
【0018】
セメントは、このタイプの廃棄物を処理するのに実に多くの有益な性質、すなわち、安価さ、応用の容易さ、良好な機械的強度、かつ概して長期間の安定性を兼ね備えている。
【0019】
液体排出物のセメント固化の場合、その方法は連続的であることが多い。つまり、例えば、セメントと廃棄物は別々に配合され、ニーダー(練り機)に導かれ、次いで得られた混合物は容器に流し込まれる。
【0020】
しかしながら、セメント固化は2つの重大な欠点を有している。
‐ 被覆後、廃棄物の体積は2倍になる。
‐ セメントは変化する素材であり、廃棄物とセメントの構成物質が相互に影響し合う恐れがあることは明白である。これは、母材の水和作用を乱す恐れがあり、従って得られた材料の寿命に影響を与える。
‐ 後のセメントとの相互作用を制限するために、廃棄物は、前処理を施されなければならない。
【0021】
水硬性結合剤の様々な化学的組成物が、現在、前述の欠点の改善策を見つけるために研究中であるとはいえ、未だどれも全く十分ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】《 Les Techniques de l’Ingenieur》BN 3660-1 〜 BN 3660-31
【0023】
更に、高レベル廃液中の全ての成分だけでなく溶解微粒子も、適切な構成でガラスに組み入れることから成るガラス固化法が知られている(非特許文献1)。
【0024】
ガラスの主な利点は、それらが非結晶質であるという事実に発しており、傑出して優れた性質を与えるが、同時に欠点も有している。すなわち;
‐ ガラスがもたらす異質な要素の許容可能な比率は限定され、また、廃液及び微粒子の焼成による焼成物である、ガラス中の装填物は、通常は極めて小さいままである。
‐ ガラスは準安定物質である。
【0025】
しかし、ガラス母材の主要な欠点は、化学攻撃に対する過敏性と、浸出によるガラス母材の著しい変化に関する問題である。
【0026】
浸出に対するガラスの過敏性は、ナトリウムのようなアルカリ元素の存在に直接に関係しており、それらの拡散による離脱はガラス格子の弱体化をもたらす。
【0027】
ナトリウムの有害な役割を部分的に相殺するための、いわゆる《ホウケイ酸ガラス》を提供するために、石英ガラスにホウ素が添加される。
【0028】
従って、UOX(ウラン酸化物)1燃料に起因する(高レベル)核分裂生成物のガラス固化によく使用されるガラスは、ホウケイ酸ガラスであるいわゆるR7T7ガラスであり、その組成物は、SiO 45%,B2O 14%,Na2O 10%,Al2O3 5%,核分裂生成物の酸化物,Zr,U,プラチノイド(RuO2,Rh,Pd)を含む金属粒子13%と、他のFe,Ni,Cr,Ca,Zn,Pの酸化物の残りである。
【0029】
非特許文献1で説明されているように、工業的に継続されているガラス固化工程は、中波電磁誘導炉により加熱される溶融ポット又は坩堝に、核分裂生成物(FP)の溶液の焼成物とガラスフリットとを供給することから成る。
【0030】
蒸解は1000から1200℃で数時間行われ、0.2立方メートルの円筒形の容器は、熱式バルブから放出された2つのキャストで満たされる。焼成物は、蒸発、乾燥、及び、例えば適切に構成を調整され、回転式炉に継続的に供給された核分裂生成物溶液を500℃で焼成することによって下処理され、抵抗によって加熱される。
【0031】
その結果、高レベル廃棄物(《HA》)のパッケージが生産される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
特に《MAD》工程によって生じる中レベル放射性廃液の閉じ込め、格納、隔離用のガラスは、従来技術では説明されたことがない。
【0033】
従って上記に関しては、中レベル放射性廃液、また特に核燃料再処理施設の最終的な運転停止工程によって生じる廃液を閉じ込めることができ、前述した瀝青や水硬性結合材の欠点を持たない材料について、ニーズがある。
【0034】
本発明の目的はすなわち、このニーズに合致し、特に放射線に対する優れた安定性、優れた機械的強度、化学攻撃に対する優れた抵抗を有し、応用が容易で、廃液の閉じ込め、格納、隔離の後に低減量が増加しない材料を提供することである。
【0035】
本発明の目的は更に、放射性廃液を閉じ込めるための従来技術による材料の欠点、制限、欠陥、そして不利点のない、また、これらの材料による問題を克服できるような、放射性廃液を閉じ込めるための材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の目的と、更にもう1つの目的は、中レベル放射性廃液の閉じ込め、格納、隔離のための、アルミノ‐ホウケイ酸ガラスによって達成され、それは、下記の、ガラスの全質量における質量%で表された組成物を有することを特徴とする。
【表1】

また、そのガラスの組成物は更に、下記の不等式に適合する。
【表2】

【0037】
ガラスの全質量における質量%で表されたSiO2,Al2O3,B2O3,Na2O,ETR,及びAUTの含有量は、これらの不等式に算入される。
【0038】
ETR,TRA ,及びAUTのうち少なくとも1つは、0より大きいことが有利である。望ましくは、ETRは0より大きい。
【0039】
ETR,TRA ,及び AUTのすべては、0より大きいことが有利である。
【0040】
更に、ガラスは同時にFe2O3,Cr2O3,MnO2,TcO2,RuO2,Rh,Pd,La2O3,Nd2O3,Gd2O3,Pr2O3,CeO2,UO2,ThO2,Am2O3,PuO2 CmO2,NpO2,SO3,P2O5,MoO3,任意で BaO ,また任意で ZrO2を包含することが望ましい。すなわち、これらすべての化合物の含有量は0より大きい。
【0041】
ETRが0より大きいとき、ガラスは、例えば1〜5質量%、望ましくは2〜4質量%のFe2O3を含むことが有利である。
【0042】
特に《MAD》工程によって生じる中レベル放射性廃液の閉じ込め、格納、隔離に適したガラスは、従来技術では一度も説明も示唆もされたことがない。
【0043】
本発明によるガラスは、B型廃棄物用の標準的な容器の生産へとつながる。それらの容器は、それらの化学的組成だけでなく、それらの活性レベル(R7T7ガラスと比較すると、通常は50から100倍も低い)、及び、それら固有の、R7T7ガラスで作られたCSD-Vパッケージに対して通常は約2.5kWである熱出力によっても、上述したR7T7 ガラスを用いたガラスパッケージCSD-Vから完全に区別される。
【0044】
R7T7ガラス母材は高レベル廃液の閉じ込め、格納、隔離をしてきたが、これらの母材は正確には特に高レベル廃液の閉じ込めに適合し、核燃料再処理施設の最終的な運転停止工程(《MAD》)によって生じるような中レベル放射性廃液の閉じ込めには適合しないことが判明した。
【0045】
実際、中レベル放射性廃液の閉じ込めについては具体的な問題が提起されており、中レベル放射性廃液の特異性を考慮すれば、中レベル放射性廃液に使用されてもよい、高レベル廃液を閉じ込めるのに良好に応用される放射性廃棄物のガラス固化は一向に明らかでなかった。
【0046】
高レベル廃液のガラス固化についての教示は、中レベル廃液のガラス固化に直接置き換えることは決してできない。
【発明の効果】
【0047】
実際に本発明に係るガラスについては、その非常に特殊な組成と、この組成に影響を与える独特な条件のために、中レベル放射性廃液、特に《MAD》工程によって生じる放射性廃液を閉じ込めることが初めて可能になったことが判明した。
【0048】
従って、中レベル廃棄物をガラス中に閉じ込めさせたことにより、本発明は瀝青固化又はセメント固化に係る欠点を克服し、ガラス固化に固有のすべての利点を伴った、廃棄物、中レベル放射性廃液の閉じ込めを提供する。
【0049】
更に、本発明によるガラスは、すでに上述されたように、ガラス化型冷却坩堝の焼成工程で、思いのほか容易に生産することができる。
【0050】
本発明によるガラスには、実際、冷却坩堝での生産のために要求されるすべての性質がもたらされ、この組成範囲すべてにおける浸出に対する良好な抵抗により、耐久性のある閉じ込め、格納、隔離を確実にする、特定の組成範囲を有する。
【0051】
つまり、本発明によるガラスは、予期されるガラス固化工程の制約及びその組成範囲すべてにわたる制約だけでなく、浸出に関する制約にも適合する。
【0052】
更に具体的には、本発明によるガラスは、冷却坩堝によるガラス固化に完全に適した1200℃から1300℃の温度範囲で生産されてもよく、更に、例えば1250℃の生産温度で、20dPa.s〜100dPa.s(20〜100 ポアズ)に含まれる粘性を有し、また、例えば1250℃の生産温度で、2〜10 Ω.cmに含まれ、ガラス固化工程の制約に適合する電気抵抗を有する。
【0053】
浸出に対するガラスの抵抗という観点からすれば、本発明によるガラスは、先に定義されたすべての組成範囲において、十分に長期的作用を確保するという要件に合致する。従って、当初の変化量(風化速度)V0は、100℃で10g.m-2.d-1より小さく、望ましくは100℃で5g.m-2.d-1より小さい。また、その静止試験での平衡ペーハー(pH)は、90℃で10より小さく、望ましくは9.5より小さい。
【0054】
通常、廃液を構成する他の要素(《AUT》)は、モリブデン酸塩,リン酸塩,硫酸アニオン,酸化バリウムBaOの中から選択される。つまり、他の要素は通常は次の酸化物:SO3,P2O5,MoO3,BaOの中から選択される。
【0055】
本発明によるガラスは、次の特定の酸化物:SiO2,B2O3,Na2O,Al2O3,ZrO2,CaO,Li2O,Fe2O3,NiO及びCoOを特定の割合で含有するガラス固化補助剤で生産される。このガラス固化補助剤は、その組成範囲で決められたガラス組成を持つように、処理される中レベル廃液の焼成によって生産された焼成物(カルサイン)に添加される。《希釈補助剤》とも呼ばれる焼成補助剤は、溶液または焼成中の廃液にあらかじめ添加されてもよい。
【0056】
従って、本発明は更に、下記の質量%によって表される組成物を有することを特徴とするガラス固化補助剤に関する。
【表3】

【0057】
この補助剤の、典型的な組成物は下記の通りであり、これも質量%で表される。
【表4】

【0058】
ガラス固化補助剤は、前述した特定の酸化物から成るガラスフリット形状、又は、化学品、特に粉末状酸化物の混合物であってもよい。
【0059】
ガラス固化補助剤はガラスフリットの形状をしていることが望ましい。
【0060】
この特定のガラスフリットは、特に、いかなる放射性廃液によっても、本発明に係る組成範囲のガラスを得ることが可能な組成を有し、そのガラスの組成の平均値、最小および最大の組成は、更に限定される範囲に見出される。
【0061】
しかし、ガラス固化補助剤の化学的組成は、処理する廃液の化学的成分の含有量の変化に基づいて変更されてもよい。
【0062】
本発明はまた、中レベル放射性廃液の処理方法に関する。そこで、焼成物を得るために、焼成補助剤が任意で添加された該廃液の焼成が行われ、次に該焼成物にガラス固化補助剤が添加され、ガラス溶解が起きるように、該焼成物及び該ガラス固化補助剤を冷却坩堝内で溶融することが行われ、該ガラス溶解は次に冷却され、それによって先に定義されたアルミノ‐ホウケイ酸ガラスが得られる。
【0063】
本発明による方法は、下記の元素を下記の含有量で含む、中レベル放射性廃液の処理に、特に適している。
【表5】

元素の含有量の合計は、30g/Lから154.7g/Lである。上で明記された含有量は、実際の元素含有量であると規定する。
【0064】
上記の廃液は、それぞれの元素の最小及び最大の含有量、並びに最小及び最大の含有量の総量で表される組成範囲によって定義される。
【0065】
上に列記した有利な性質のすべてを有するガラスを提供するために、これらの範囲内でいわゆる標準含有量が定められ、その結果、本発明に係る方法で処理することができる中レベル型放射性廃液である標準廃液に相当する標準構成を規定することが可能である。
【0066】
このいわゆる《標準》放射性廃液は、下記の元素を、下記のいわゆる《平均》又は《標準》含有量で含有する。
【表6】

元素の含有量の合計は93.35g/Lである。
【0067】
本発明によるホウケイ酸ガラス状母材の組成範囲は、上記で言及された放射性廃液に特に適している。本発明によるガラス母材の組成の範囲内で、これら母材の物理化学的性質は、高温においても焼成ガラス固化型の方法で生産することが可能である。
【0068】
ガラス固化補助剤は上述されたものが有利である。
【0069】
通常、廃液の焼成及び任意の焼成、希釈補助剤、及び、ガラス固化補助剤に起因する焼成物の溶融は、1200℃から1300℃、望ましくは1250℃の温度で行われる。
【0070】
本発明はここで、以下の記述により、更に具体的には、中レベル放射性廃液の処理方法に関して詳細に亘って説明されるが、この記述は説明として示されるものであり制限するものではない。
【0071】
本発明による方法によって処理されてもよい中レベル放射性廃液は、特に、金属又は半金属の硝酸塩を含む、硝酸廃液であってもよい。
【0072】
本発明による方法で処理される廃液は、通常は上記で既に明記した構成を有する。
【0073】
本発明による方法は、2つの主なステップを有する。
【0074】
1つ目のステップは、廃液の焼成ステップであり、その間に蒸発、乾燥、そして次に焼成、廃液が生じた硝酸塩を含んでいる場合は硝酸塩の一部の脱硝が生じる。
【0075】
焼成炉中で分解された硝酸塩又は水酸化物の極めて大部分に通常存在する廃液の塩は注目されてよい。
【0076】
2つ目のステップは、ガラス固化ステップであり、焼成ステップで生産される焼成物を、閉じ込めガラス中で溶解することによる。
【0077】
焼成ステップは通常、例えば電気炉で約400℃の温度に熱せられた回転チューブ内で行われる。固形焼成物は、所望の温度に熱せられた回転チューブ内に設けられた、遊離した棒状部材によって粉砕される。
【0078】
特定の溶液、特に硝酸ナトリウムに富む溶液、すなわち窒素を含む媒体中に高いナトリウム含有量を有する溶液の焼成中に、回転チューブの壁への焼成物の付着が見られる場合があり、これが、焼成炉のチューブ全体の閉塞をもたらす可能性がある。
【0079】
その解決策は、焼成炉の目詰まりを回避しながら焼成させるために、硝酸アルミニウム,硝酸鉄,硝酸ジルコニウム,硝酸レアアース,又はそれらの混合物のような、希釈補助剤又は焼成補助剤と呼ばれる、非粘着性化合物の少なくとも1つを、廃液に添加することから成る。
【0080】
本発明によれば、硝酸アルミニウムの混合物及び硝酸鉄の混合物から成り、望ましくは、0.66<Al2O3/(Al2O3+Fe2O3)<1の比率であって、式中の含有量は酸化物質量含有量である補助剤が、焼成補助剤として使用されることが望ましい。
【0081】
更に、焼成物中の酸化物の合計に対するNa2Oの比率は通常は0.3以下である。
【0082】
本発明による処理方法は、焼成ステップの後に焼成物のガラス固化ステップを含む。このガラス固化ステップは、閉じ込めガラス中での焼成物の溶解から成る。
【0083】
この目的のために、次の酸化物:SiO2,B2O3,Na2O,Al2O3,ZrO2,CaO,Li2O,Fe2O3,NiO 及びCoOを含んだガラス固化補助剤が、廃液の焼成に起因し、希釈補助剤が任意で添加された焼成物に添加される。このガラス固化補助剤は、廃液の構成によって異なる本発明の組成範囲のガラスを得るために、通常は前述の酸化物を特定の比率で含む。
【0084】
このガラス固化補助剤は、通常は上記のように定義される。
【0085】
ガラス固化補助剤は、粉末の混合物の形状をしていてもよく、あるいは、酸化物を含んだガラスフリットの形状をしていてもよい。
【0086】
通常は、要する溶解エネルギーが粉末の混合物に比べて小さい、ガラスフリットを使用することが有利である。
【0087】
ガラス固化補助剤は、上記で定義された組成範囲を順守するように規定の量の焼成物に添加され、それは全体の溶融をしながら進められる。本発明によれば、得られたガラス溶融は、物理化学的性質、つまり冷却坩堝によるガラス固化に完全に適したものにする、粘性及び抵抗性を有する。
【0088】
ガラスは、誘導により熱せられた冷却坩堝で、通常は1200℃から1300℃、例えば1250℃の温度で生産される。ガラスは、坩堝内で機械的撹拌、及び/又は、バブリングにより均質化され、炉の上位に達したとき、容器へのガラスの鋳込みが行われる。このとき、鋳造ガラスの量は例えば200kg程度である。
【0089】
次に、高い化学的耐久性を持ち、上記で言及された有利な性質を有し、また上記で定義された基準に合致するアルミノ‐ホウケイ酸ガラスである、本発明によるガラスを得るために、溶解ガラスの冷却が開始される。
【0090】
本発明はここで、下記の実施例を参照しながら説明されるが、実施例は説明として示されるのであって制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0091】
《MAD》工程に起因する中レベル放射性廃液の3つの構成は、下記のように処理される。
‐前述の標準溶液は、規定の名目上の廃棄物組み込みレベル12%を求めて、標準ガラスフリットと共にガラス固化される(実施例1)。
‐ナトリウムに富む溶液は、フリットの形状をしたガラス固化補助剤と共に処理される(実施例2)。
‐ナトリウムの少ない溶液は、粉末状のガラス固化補助剤と共に処理される(実施例3)。
【0092】
フリットか補助剤かの選択は、廃棄物組み込みレベルの最適化によって決まる。
【0093】
すべてのガラスは、上記の組成範囲に含まれなければならない。
〔実施例1〕
【0094】
【表7】

【0095】
この溶液は、この状態では、焼成するには酸化ナトリウム過多であり、焼成基準、すなわち0.3に等しいNa2O/(焼成物中の酸化物の和) 比に合致させるために、ガラス固化補助剤を加えることが必要である。
【0096】
焼成物中のナトリウム量を減少させるために、硝酸アルミニウム及び硝酸鉄を加えることが必要である。
【0097】
この場合は、焼成可能な溶液を得るために、100gの焼成物に88.07gに相当するアルミナ及び酸化鉄を加えることが必要である。
【0098】
一方で、ガラス固化可能な範囲は、12%の廃棄物レベルに、焼成補助剤が、0.91以上のAl2O3/(Al2O3+Fe2O3) 比をもたらすよう制約を課す。
【0099】
該焼成物は、400℃近くの温度にされる。
【0100】
焼成物の構成の質量%は以下の通りである。
【表8】

最終的なガラスを得るために、12%の組み込みレベルに、標準のフリットで77.43%のフリット及び32.57%の焼成物を添加することが必要である。
その生産温度は1220℃である。
【表9】

〔実施例2〕
【0101】
この例では、ナトリウムに富む溶液は、フリットを用いた焼成‐ガラス固化により処理される。
【表10】

【0102】
この溶液は、この状態では、焼成するには酸化ナトリウム過多であり、焼成基準、すなわち0.3に等しいNa2O/(焼成物中の酸化物の和) 比に合致させるために、ガラス固化補助剤を加えることが必要である。
【0103】
焼成物中のナトリウム量を減少させるために、硝酸アルミニウム及び硝酸鉄を加えることが必要である。
【0104】
この場合は、焼成可能な溶液を得るために、100gの焼成物に117.71gに相当するアルミナ及び酸化鉄 を加えることが必要である。
【0105】
一方で、ガラス固化可能な範囲は、12%の廃棄物レベルに、焼成補助剤が、0.85以上のAl2O3/(Al2O3+Fe2O3) 比をもたらすよう制約を課す。
【0106】
該焼成物は、400℃近くの温度にされる。
【0107】
焼成物の構成の質量%は以下の通りである。
【表11】

【0108】
この場合、廃棄物装填レベルは、ガラス中の受け入れ可能なアルミナ含有量、すなわち13%で制限される。
【0109】
最終的なガラスを得るために、基準フリットで72.65%のフリット及び27.35%の焼成物を添加することによって得られる最大装填レベルは12.56%である。その生産温度は1250℃である。そのガラスの構成は下記の通りである。
【表12】

[実施例3]
【0110】
この例では、ナトリウムの少ない溶液は、フリットを用いた焼成‐ガラス固化によって処理される。
【表13】

【0111】
この溶液は、この状態では、焼成するには 酸化ナトリウム過多であり、焼成基準、すなわち0.3に等しいNa2O/(焼成物中の酸化物の和) 比に合致させるために、ガラス固化補助剤を加えることが必要である。
【0112】
焼成物中のナトリウム量を減少させるために、硝酸アルミニウム及び硝酸鉄を加えることが必要である。
【0113】
この場合は、焼成可能な溶液を得るために、100gの焼成物に61.64gに相当するアルミナ及び酸化鉄を加えることが必要である。
【0114】
一方で、ガラス固化可能な範囲は、焼成補助剤が、0.85以上のAl2O3/(Al2O3+Fe2O3) 比をもたらすよう制約を課す。
【0115】
該焼成物は、400℃近くの温度にされる。
【0116】
実施例3の装填レベルは、ガラスフリットから生じるシリカの量によって制限される。
【0117】
最大の廃棄物組み込みレベルを得るために、粉末混合物の構成は最適化されてもよい。
【0118】
組成範囲の基準に適合する補助剤の構成は下記の通りである。
【表14】

【0119】
該最大組み込みレベルは、シリカ限界が達成されたとき、すなわち33.33%の焼成物に対して粉末が66.67%であるときに達成され、これは廃棄物装填レベルの20.62%に相当する。
【0120】
その生産温度は1200℃である。
【0121】
異なる補助剤の化学形態は実施例として提供されており、他の製品と交換可能である。
【0122】
該ガラスの構成は下記の通りである。
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中レベル放射性廃液を閉じ込めるためのアルミノ‐ホウケイ酸ガラスであって、ガラスの全質量に基づく質量%で表された次の組成物を有することを特徴とし、
【表16】

更に前記ガラスの組成物は、以下の不等式を満たし、
【表17】

式中のSiO2,Al2O3,B2O3,Na2O,ETR,AUTはガラスの質量合計に基づく質量%で表されることを特徴とする、アルミノ‐ホウケイ酸ガラス。
【請求項2】
廃液を構成するその他の元素(AUT)は次の酸化物: SO3,P2O5,MoO3,BaOから選択されることを特徴とする請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
質量%で表される以下の組成を有することを特徴とする、ガラス固化補助剤。
【表18】

【請求項4】
ガラスフリットの形状をしていることを特徴とする請求項3に記載のガラス固化補助剤。
【請求項5】
化学品、特に粉末状の酸化物の混合物の形態であることを特徴とする、請求項3に記載のガラス固化補助剤。
【請求項6】
中レベル放射性廃液を処理するための方法であって、
焼成物を得るために、焼成補助剤が任意で添加された前記廃液の焼成が行われ、次に前記焼成物にガラス固化補助剤が添加され、ガラス溶解を行うために、前記焼成物及び前記ガラス固化補助剤を冷却坩堝内で溶融し、次いで前記溶解されたガラスが冷却され、それによって請求項1に記載されたアルミノ‐ホウケイ酸ガラスが得られることを特徴とする中レベル放射性廃液を処理するための方法。
【請求項7】
前記中レベル放射性廃液は以下の元素を以下の含有量で含み、前記元素の含有量の合計は 30g/Lから154.7g/Lである、請求項6に記載の方法。
【表19】

【請求項8】
前記放射性廃液は下記の元素を下記の含有量で含み、前記元素の含有量の合計は93.35g/Lである、請求項7に記載の方法。
【表20】

【請求項9】
焼成補助剤は硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸ジルコニウム、硝酸レアアース、またはその混合物から選択されることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
焼成補助剤は、望ましくは内容に関して次の比率:0.66<Al2O3/(Al2O3+Fe2O3)<1が順守される、硝酸アルミニウムと硝酸鉄との混合物であり、その含有量は質量における 酸化物含有量であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Na2O/(焼成物中の酸化物の和) 比率は0.3以下であることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ガラス固化補助剤は請求項3から5のうちいずれか1項に記載されたものであることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
焼成物及びガラス固化補助剤の溶融は、1200℃から1300℃、望ましくは1250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−513949(P2012−513949A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544034(P2011−544034)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067901
【国際公開番号】WO2010/076288
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508313895)アレヴァ・エヌセー (32)
【氏名又は名称原語表記】AREVA NC
【住所又は居所原語表記】33, rue La Fayette, 75009 Paris, France
【Fターム(参考)】