説明

放射線位置決め装置

【課題】被検体上に患部の範囲及び位置を視認できるマークを体表面上に鮮明に投影させる技術を提供する。
【解決手段】被検体へ放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイアと、複数のワイヤを有し、前記放射線源と前記イメージ・インテンシファイアとの間に介在して前記被検体内画像に前記ワイヤの線影を投影するワイヤコリメータと、放射線源と前記各ワイヤとの位置関係に基づき照射方向を変更し、前記ワイヤコリメータの形状を模したレーザ光を照射するレーザマーカ手段と、を備え、前記レーザマーカによるレーザ光により、前記寝台に載置された被検体表面に前記ワイヤコリメータの形状を投影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療に先立って放射線の曝射方向や照射野をシミュレーションして決定するX線位置決め装置に関し、特に被検体の体表面に患部の位置及び範囲をマーキングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌や腫瘍等の患部に放射線を曝射することにより、当該患部の組織細胞を破壊、又は分裂阻止等することで、その治療を目指す放射線治療が広く行われるようになっている。この放射線治療は、患部周辺の正常組織の障害を最小限度に抑えるため、又患部への効果的な放射線曝射のため、患部に放射線を正確に曝射することが重要である。
【0003】
そこで、放射線治療に先立って、放射線の曝射方向や照射野をシミュレーションして決定する。このシミュレーション及び決定には、X線位置決め装置が利用される。X線位置決め装置は、X線を照射するX線源と、被検体を透過したX線から被検体内の可視光線画像を形成するイメージ・インテンシファイアを備える。可視光線画像は、X線が透過した範囲の構造が投影された透視画像である。このX線位置決め装置は、放射線治療装置よりも弱い放射線を放射し、透視画像に基づき被検体内を観察して患部を特定し、放射線の曝射方向や照射野を決定する。決定された曝射方向や照射野は、放射線治療装置の制御に利用される。
【0004】
また、X線位置決め装置は、X線源と被検体との間に介在するようにワイヤコリメータを備えている。ワイヤコリメータは、井桁状に組まれて配置され、患部を囲うように開度が調整される。X線によりワイヤコリメータの線影は、被検体内の透視画像上に投影される。投影されたワイヤコリメータの線影により、透視画像上で患部のおおよその位置や範囲を視認することができる。
【0005】
さらにワイヤコリメータよりもX線源側には、X線源を模した可視光線を照射する光源が配置されている。この光源から照射される可視光線は、放射線源から照射される放射線の放射方向を模している。光源から可視光線を照射することで、被検体の体表面上にワイヤコリメータの線影が投影される。この体表面上のワイヤコリメータの線影により、被検体の体表面上で患部のおおよその位置や範囲を視認することができる(例えば、「特許文献1」参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平07−116153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、光源に照らされて体表面上に形成されたワイヤコリメータの線影は、医師又は技師により、マジック等でなぞられてマーキングされる。しかし、線影は、ワイヤコリメータを照らす可視光線の回折や散乱、又は外光により、その輪郭にぼやけが生じ、ある程度の幅を有してしまう。そのため、医師又は技師は、幅を持った線影のうち実際にはどこをなぞればよいかの迷いを生じてしまうことがある。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検体上に患部の範囲及び位置を視認できるマークを体表面上に鮮明に投影させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、被検体へX線を放射するX線源と、前記被検体を透過したX線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイアと、複数のワイヤを有し、前記X線源と前記イメージ・インテンシファイアとの間に介在して前記被検体内画像に前記ワイヤの線影を投影するワイヤコリメータと、X線源と前記各ワイヤとの位置関係に基づき照射方向を変更し、前記ワイヤコリメータの形状を模したレーザ光を照射するレーザマーカ手段と、を備え、前記レーザマーカ手段によるレーザ光により、前記寝台に載置された被検体表面に前記ワイヤコリメータの形状が投影されること、を特徴とする。
【0010】
前記レーザマーカ手段は、レーザ光を照射するレーザマーカと、前記X線源と前記各ワイヤとの位置関係に基づき、向き角度を変更してレーザ光の照射方向を変更する反射板と、を含むようにしてもよい(請求項2記載の発明に相当)。
【0011】
前記レーザマーカ手段は、レーザ光の照射軸線がX線の焦点を通るようにレーザ光を照射するようにしてもよい(請求項3記載の発明に相当)。
【0012】
前記レーザマーカ手段は、レーザ光を照射するレーザマーカと、レーザ光の照射方向を変更する反射板と、前記X線源と前記ワイヤコリメータとの位置関係に基づき、向き角度を変更すると共に所定方向へ所定距離移動して、レーザ光の照射方向を変更する反射板と、を含むようにしてもよい(請求項4記載の発明に相当)。
【0013】
前記X線源と前記ワイヤコリメータとの間に介在して被検体を載置する寝台をさらに備えるようにしてもよい(請求項5記載の発明に相当)。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、体表面にレーザを照射するレーザマーカを備えるようにし、ワイヤコリメータの方向へレーザを照射させることで、体表面上にワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像をマーキングさせるようにした。従って、体表面上には、投影像がくっきりと描写され、医師や技師により、容易かつ精度よくマーキングを行うことができる。また、これによってさらに患部の形状及び位置を示すマークに信用性を付与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係るX線位置決め装置の構成例を示す概要図である。X線位置決め装置1は、放射線治療に先立ってX線の曝射方向や照射野をシミュレーションして決定する。
【0016】
このX線位置決め装置1は、X線を放射するX線源装置2と、このX線源装置2と対向して配設されるイメージ・インテンシファイア3と、被検体Pを載置する天板8を備える。
【0017】
このX線位置決め装置1は、固定架台4を装置設置面に固定し、回転架台5を固定架台4に支持させて中空に配置し、アーム6,7を回転架台5に設置した構造を有する。この構造体にX線源装置2とイメージ・インテンシファイア3が配置される。
【0018】
X線源装置2は、アーム6の先端に配置され、イメージ・インテンシファイア3は、アーム7の先端に配置されている。天板8は、X線源装置2とイメージ・インテンシファイア3との間に介在して配置されており、被検体Pの体軸方向に移動可能である。
【0019】
回転架台5は、固定架台4に回動軸10を介して支持されており、回動軸10の軸回り(図1中矢印Aの方向)に回転が可能となっている。回転架台5の回転により、X線源装置2及びイメージ・インテンシファイア3は、回動軸10の軸回りに回転し、異なる角度でX線の照射を可能にしている。
【0020】
アーム6,7は、回転架台5に沿って設置されているレールを根元部分で把持して位置を保持しており、回転架台5に沿って(図中矢印B、Cの方向)摺動可能となっている。放射ヘッド2、イメージ・インテンシファイア3は、各アーム6,7の摺動により、天板8に載置された被検体Pに対して接近又は離反することが可能となっている。
【0021】
尚、アーム6,7には、ポテンショメータ等の位置検出手段が設置されており、放射ヘッド2やイメージ・インテンシファイア3の位置を特定する。X線源装置2の位置特定によって、後述するX線源21やX線の焦点位置が特定される。イメージ・インテンシファイア3の位置特定によって、後述するワイヤコリメータ24の設置面位置が特定される。
【0022】
図2は、X線位置決め装置1による透視画像形成の基本構造を示す図である。図2に示すように、X線源装置2には、X線源21が内設され、このX線源21の下方に、レーザマーカ22とミラー23が内設されている。イメージ・インテンシファイア3の上方には、イメージ・インテンシファイア3と天板8との間に介在してワイヤコリメータ24が設置されている。
【0023】
X線源21は、電子加速器や対電子線ターゲット等で構成されており、前記電子加速器で電子を加速させ、前記対電子線ターゲットに衝突させることでX線を発生させる。
【0024】
イメージ・インテンシファイア3は、透過した放射線を可視光に変換する光学系で構成されている。イメージ・インテンシファイア3には、X線源21で発生した放射線が、被検体Pを透過して到達する。イメージ・インテンシファイア3は、被検体Pを透過した放射線を可視光線画像に変換して被検体内の透視画像を形成する。尚、イメージ・インテンシファイア3の下方には、CCDイメージセンサが配され、さらに可視光線画像を光電変換することにモニタ等に表示可能な透視画像が作成される。
【0025】
図3は、ワイヤコリメータ24の構造を示す斜視図である。ワイヤコリメータ24は、患部のおおよその位置及び範囲を透視画像上で視認させる。このワイヤコリメータ24は、ワイヤ25X1,25X2,25Y1,25Y2(以下、特に所定のワイヤを特定せず任意のワイヤを指す場合は、単に「ワイヤ25」という)を井桁状に組んで配設している。ワイヤコリメータ24は、患部を囲むように開度を調整し、透視画像上に患部を囲んだワイヤ25の線影が投影されることで、患部のおおよその位置及び範囲が透視画像上で視認できる。
【0026】
ワイヤコリメータ24は、開度調整のため、ベルト26とプーリ27と駆動モータ28からなる駆動機構を有する。ベルト26は、井桁状のワイヤコリメータ24を囲って長方形又は正方形状に延設され、一辺につき各2本が並設される。プーリ27は、計8本のベルト26の両端にそれぞれ配され、各ベルト26を無限軌道状に巻き架けている。駆動モータ28は、各ワイヤ25に対応して計4機が配置されている。
【0027】
各ワイヤ25は、配設方向と直交する二辺に延設されたベルト26に架設されている。配設方向を同じくする2本のワイヤ25X1,25X2、又はワイヤ25Y1,25Y2は、それぞれ異なるベルト26に架設されている。
【0028】
各駆動モータ28は、各プーリ27を回転させて、対応するワイヤ25を並行搬送する。各駆動モータ28は、対応するワイヤ25を架設する2本のベルト26を巻き架けた各プーリ27を同一角度回転させる。プーリ27の回転によりワイヤ25がベルト26に沿って平行に搬送される。4機の駆動モータは、独立して駆動可能であり、各ワイヤ25は、それぞれ独立して平行搬送される。
【0029】
駆動モータ28のシャフトには、ギアが圧入固定されており、このギアを介してポテンショメータ29が設置されている。ポテンショメータ29は、内部に可変抵抗を有する。可変抵抗は、駆動モータ28の回転方向及び回転量に伴って累積的に抵抗値を可変する。この抵抗値により、各ワイヤ25のX線軸からの距離が検出可能となる。尚、各ワイヤ25のX線軸からの距離検出手段としては、エンコーダを使用しても良い。エンコーダには、相対位置エンコーダと絶対位置エンコーダがある。エンコーダは、内部に光学センサを有し、回転角度に応じてパルス信号を生成する。このパルスによって、距離を検出する。
【0030】
レーザマーカ22は、レーザを照射し、体表面上に井桁状に組まれたワイヤ25の投影像を描き出す。ミラー23は、レーザマーカ22の照射したレーザが投影像の形状及び位置を示すように、向き角度を可変してレーザを体表面方向へ反射する。
【0031】
図4の(a)は、レーザマーカ22及びミラー23の配置関係を示す斜視図である。図4の(b)は、ミラー23付近の拡大図である。
【0032】
図4に示すように、X線源装置2には、4つのレーザマーカ22が配置されている。各レーザマーカ22は、線状に拡散するレーザ光を照射する。このレーザマーカ22は、各ワイヤ25に対応し、対応するワイヤ25と平行に延設されている。
【0033】
ミラー23は、X線源装置2内に、各レーザマーカ22に対応して4つ配置されている。配置位置は、対応するレーザマーカ22のレーザ光照射方向にある。このミラー23は、レーザマーカ22が照射したレーザ光を反射し、各ワイヤ25の方向に反射させる。ミラー23は、位置調整機構23aに接続されている。位置調整機構23aは、ミラー23の向き角度と移動位置を変更する。この位置調整機構23aは、駆動モータとポテンショメータを備え、ミラー23の向き角度を所定角度に変更し、ミラー23を対応するレーザマーカ22の方向へ移動させ、ミラー23を放射線の焦点とワイヤ25とを結ぶ線分上で停止させる。
【0034】
図5は、放射線位置決め装置1の曝射方向や照射野を決定する概略動作を示すフローチャートである。放射線位置決め装置1は、回転架台5を回転させ、寝台8を被検体Pの体軸方向に移動させ、放射ヘッド2及びイメージ・インテンシファイア3を被検体P方向に接近又は離反させて、アイソセンタを被検体Pの患部位置に合わせる(S01)。
【0035】
放射線源21に放射線を発生させ(S02)、イメージ・インテンシファイア3に被検体Pを透過した放射線から透視画像を形成させる(S03)。透視画像から患部が特定されると、患部を囲むようにワイヤコリメータ24を移動させ(S04)、透視画像上に患部を囲むワイヤ25の線影を投影する(S05)。
【0036】
次にポテンショメータ29の検出結果を解析して、各ワイヤ25の放射線軸からの距離を算出する(S06)。さらに放射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3の摺動量の解析をして、放射線の焦点とワイヤコリメータ24の設置面との距離を算出する(S07)。S6及びS7の算出結果から、放射線の焦点と各ワイヤ25とを結ぶ線分と放射線軸とのなす角度αを算出する(S08)。
【0037】
算出された角度αに基づき、放射線の焦点方向から各ワイヤ25の方向へレーザを反射させるようにミラー23の向き角度を変更させて(S09)、レーザマーカ22からレーザを照射する(S10)。
【0038】
このレーザ照射により、被検体Pの体表面上に井桁状に組まれたワイヤ25が体表面に投影された場合の投影像がレーザによって描かれる。この後、医師又は技師により、レーザで描かれている投影像をマジック等でなぞることで、体表面上に患部のおおよその位置及び範囲が確定する。
【0039】
被検体Pの体表面に対するレーザ照射の制御機構について詳細に説明する。図6に示すように、放射線位置決め装置1は、レーザの照射方向を制御する制御機構11を備える。
【0040】
この制御機構11は、演算処理部や主記憶部及び外部記憶部等で構成される演算装置12とワイヤコリメータ制御装置13とレーザ制御装置14を備える外部記憶部には、制御プログラムが格納されており、制御プログラムを主記憶部に展開し、演算処理部が制御プログラムに従った演算処理及び制御処理を行い、放射ヘッド2、イメージ・インテンシファイア3、及びレーザマーカ22とミラー23を制御する。
【0041】
演算装置12は、照射野画成時には、各ワイヤコリメータ24に対する変位指示情報を作成してワイヤコリメータ制御装置13に出力する。また、マーキング時には、レーザマーカ22とミラー23の駆動指示情報を作成してレーザ制御装置14へ出力する。
【0042】
ワイヤコリメータ24に対する変位指示情報は、各ワイヤ25の変位量を反映する情報である。
【0043】
レーザマーカ22とミラー23に対する駆動指示情報は、レーザマーカ22の駆動を指示する情報と、ミラー23の移動方向と移動量と向き角度を反映する情報である。ミラー23に関する情報は、ワイヤ25と放射線焦点との位置関係により作成される。放射線焦点は、放射線源21の位置により一意に定まる。
【0044】
ワイヤ25と放射線焦点との位置関係は、放射線焦点とワイヤ25とを結ぶ線分と、放射線軸とのなす角度αにより表される。この角度αは、放射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3の摺動量に基づく放射線焦点とワイヤコリメータ24の設置面との距離と、各ワイヤ25と放射線軸との距離により算出される。
【0045】
ワイヤコリメータ制御装置13は、演算装置12から出力された変位指示情報に従って、ワイヤコリメータ24が備える駆動モータ28を制御し、各ワイヤ25をそれぞれ変位させる。レーザ制御装置14は、ミラー23を駆動する駆動モータを制御して、ミラー23を所定方向に所定量移動させ、かつ所定角度回転させ、さらにレーザマーカ22にレーザを照射させる。移動方向、移動量、回転角度は、演算装置12が作成した駆動指示情報に含まれる。
【0046】
各ワイヤ25と放射線焦点との位置関係を算出する処理を図7に示す。まず、放射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3がアーム6,7に伴って摺動すると、照射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3の位置をポテンショメータが検出する(S21)。
【0047】
放射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3のポテンショメータが検出した放射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3の位置から、伴って移動する放射線焦点とワイヤコリメータ24の設置面の位置が得られる。この位置情報から、放射線焦点とワイヤコリメータ24の設置面との距離情報Hwを得る(S22)。
【0048】
次に、駆動モータ28の駆動により、各ワイヤ25の放射線軸からの距離を変位させ、ポテンショメータ29から駆動モータ28の累積的な回転方向及び回転量を示す電気信号が入力される(S23)。演算装置12は、入力された信号を各ワイヤ25の放射線軸からの距離情報Dwに変換する(S24)。
【0049】
次に距離情報Hwと距離情報Dwとから、放射線の焦点と各ワイヤ25とを結ぶ線分と放射線軸とがなす角度αを算出する(S25)。
【0050】
図8は、ミラー23の移動方向及び量と、向き角度の算出を説明する概念図である。
【0051】
X線の焦点とワイヤ25とを結ぶ線分と放射線軸とのなす角度をαとし、ミラー23の向き角度をβとする。尚、向き角度βは、ワイヤコリメータ24の設置面方向とミラー23のなす角度を示し、ミラー23の反時計回りと比例して増加する。この場合、ミラー23の向き角度βは、角度αとレーザの照射傾きでも求めることができる。
【0052】
例えば、レーザの照射傾きを180°とすると、ミラー23の向き角度βは、β=(180-α)/2となる。従って、なす角度αがΔα増加すると、ミラー23は、Δα/2回転させることで、ワイヤ25方向へレーザ光が反射される。
【0053】
また、X線の焦点とレーザ照射管距離をXとすると、ミラー23の移動距離εは、レーザマーカ22の方向へ、ε=Xtanαとなる。従って、なす角度αがΔα増加すると、ミラー23を、ε=X(tan(α+Δα)−tanα)移動させることで、ミラー23が反射する反射光は、放射線の焦点から照射されたものを模した光となる。
【0054】
図9は、ミラー23の制御動作を示すフローチャート図である。まず、放射ヘッド2、イメージ・インテンシファイア3、及びワイヤ25が変位すると(S31)、距離情報Hw、距離情報Dwを取得し(S32)、放射線の焦点と各ワイヤ25とを結ぶ線分と放射線軸とがなす角度αを算出する(S33)。
【0055】
なす角度αが算出されると、演算装置12は、β=(180-α)/2に基づき各ミラー23の向き角度βを算出し(S34)、ε=Xtanαに基づき各ミラー23の移動距離εを算出する(S35)。
【0056】
次に、向き角度βと移動距離εを含む駆動指示情報をレーザ制御装置14に出力する(S36)。レーザ制御装置14は、駆動指示情報が入力されると、駆動モータを駆動させ、ポテンショメータで各ミラー23の位置を検出しながら、各ミラー23をレーザマーカ22の方向へ移動距離ε分移動させ、放射線の焦点と各ワイヤ25とを結ぶ線分とレーザマーカ22が照射するレーザ光の照射方向との交点に位置させる(S37)。
【0057】
さらにレーザ制御装置14は、駆動指示情報が入力されると、駆動モータを駆動させ、ポテンショメータで各ミラー23の向き角度を検出しながら、各ミラー23を回転させ、各ミラー23を向き角度βに変更する(S38)。
【0058】
ミラー23の移動及び角度変更が終了すると、レーザ制御装置14は、レーザマーカ22を駆動させ、レーザ光を照射する(S39)。
【0059】
これにより、レーザマーカ22から照射されたレーザ光は、ミラー23で反射され、その反射光は、放射線の焦点から各ワイヤ25の方向へ向き、体表面のワイヤコリメータ24の形状を模した投影像を描く。医師又は技師が、この投影像に沿ってマジックでマーキングする。
【0060】
このように、本実施形態の放射線位置決め装置1は、体表面にレーザを照射するレーザマーカを備えるようにし、各ワイヤ25の方向へレーザを照射させることで、体表面上にワイヤコリメータ24の線影が投影された場合の投影像をマーキングさせるようにした。
【0061】
従って、体表面上には、投影像がくっきりと描写され、医師や技師により、容易かつ精度よくマーキングを行うことができる。また、これによってさらに患部の形状及び位置を示すマークに信用性を付与する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態に係る放射線位置決め装置の構成例を示す概要図である。
【図2】本実施形態に係る放射線位置決め装置の放射線照射軸線上の基本構造を示す図である。
【図3】本実施形態に係る放射線位置決め装置が備えるワイヤコリメータの構造を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る放射線位置決め装置が備えるレーザマーカを詳細に示す図である。
【図5】本実施形態に係る放射線位置決め装置の照射方向や照射野を決定する概略動作を示すフローチャート図である。
【図6】本実施形態に係る放射線位置決め装置の制御機構を示すブロック図である。
【図7】本実施形態に係る放射線位置決め装置のワイヤコリメータ位置算出処理を示すフローチャート図である。
【図8】本実施形態に係る放射線位置決め装置によるミラーの移動方向と移動量及び向き角度の算出を説明する概念図である。
【図9】本実施形態に係る放射線位置決め装置によるレーザの制御動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0063】
1 放射線位置決め装置
2 照射ヘッド
21 放射線源
22 レーザマーカ
23 ミラー
24 ワイヤコリメータ
25,25X1,25X2,25Y1,25Y2 ワイヤ
26 ベルト
27 プーリ
28 駆動モータ
29 ポテンショメータ
3 イメージ・インテンシファイア
4 固定架台
5 回転架台
6 アーム
7 アーム
8 寝台
10 回動軸
11 制御機構
12 演算装置
13 ワイヤコリメータ制御装置
14 レーザ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体へ放射線を放射する放射線源と、
前記被検体を透過した放射線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイアと、
複数のワイヤを有し、前記放射線源と前記イメージ・インテンシファイアとの間に介在して前記被検体内画像に前記ワイヤの線影を投影するワイヤコリメータと、
放射線源と前記各ワイヤとの位置関係に基づき照射方向を変更し、前記ワイヤコリメータの形状を模したレーザ光を照射するレーザマーカ手段と、
を備え、
前記レーザマーカ手段によるレーザ光により、前記寝台に載置された被検体表面に前記ワイヤコリメータの形状が投影されること、
を特徴とする放射線位置決め装置。
【請求項2】
前記レーザマーカ手段は、
レーザ光を照射するレーザマーカと、
前記放射線源と前記各ワイヤとの位置関係に基づき、向き角度を変更してレーザ光の照射方向を変更する反射板と、
を含むこと、
を特徴とする請求項1記載の放射線位置決め装置。
【請求項3】
前記レーザマーカ手段は、レーザ光の照射軸線が放射線の焦点を通るようにレーザ光を照射すること、
を特徴とする請求項1記載の放射線位置決め装置。
【請求項4】
前記レーザマーカ手段は、
レーザ光を照射するレーザマーカと、
レーザ光の照射方向を変更する反射板と、
前記放射線源と前記ワイヤコリメータとの位置関係に基づき、向き角度を変更すると共に所定方向へ所定距離移動して、レーザ光の照射方向を変更する反射板と、
を含むこと、
を特徴とする請求項3記載の放射線位置決め装置。
【請求項5】
前記放射線源と前記ワイヤコリメータとの間に介在して被検体を載置する寝台をさらに備えること、
を特徴とする放射線位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−23015(P2008−23015A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197666(P2006−197666)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】