説明

放射線撮像装置及び画像処理方法

【課題】低カウント数の画像を適切に処理することで放射性同位元素の集積部位の発見を容易にすることができる放射線撮像装置を提供する。
【解決手段】放射線撮像装置の画像処理装置は、ガンマ線の入射数をカウントすることによって得られた画像に対し、重みつきフィルタを用いて平滑化処理を行う(処理S102)。そして、画像処理装置は、平滑化後の画像に対して、閾値以下の画素値を抑制する(処理S103)。さらに、画像処理装置は、閾値処理が行われた画像に対し再度、重みつき平滑化フィルタを適用することで集積部分の画素を膨張させ(処理S104)、放射性同位元素の集積部位の発見を容易にする画像を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質の放出する放射線を撮像し、入射放射線分布を画像化する放射線撮像装置及び画像処理方法に関するものであり、特に放射性薬剤の集積位置を特定する放射線撮像装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガンマカメラやSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置などの放射線撮像装置では、体内に投与された放射性薬剤の集積分布を非侵襲で画像情報として知ることができる。この特徴を利用し、RI(放射性同位元素)法を用いた乳癌手術におけるセンチネルリンパ節生検のように、小型ガンマカメラ(例えば、特許文献1)を用いて、簡易的に体内のRI集積位置を把握し、切除部位を特定するような試みも行われている。小型ガンマカメラを用いることで切開前に摘出すべきセンチネルリンパ節の位置を特定することが可能になり、手術時間の短縮などのメリットが得られる。
【0003】
ガンマカメラで撮像された画像には通常多くのノイズが乗っており、ノイズを低減するためにガウスフィルタやメディアンフィルタ、もしくは特許文献2に記載するような閾値フィルタを使用し、ノイズを低減することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−324569号公報
【特許文献2】特開2002−183709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センチネルリンパ節の特定などにRIを使用する場合、RIの注射直後であれば十分なRI強度があり画素当りのカウントレートが高いため、短時間でも鮮明な画像を取得することが可能である。しかしながら、センチネルリンパ節の特定などでは誤検出を避けるため、RIの投与後、時間をおいてから撮像する手法が使われるため、RIの濃度は減衰してしまい撮像装置で検出できるカウントレートが低くなる。このため、長時間の撮像を行わなければRIの分布を鮮明に捉えることができない。
【0006】
一方で、センチネルリンパ節の位置は患者の体勢が変わるとずれるため、患者を手術台に乗せた後で撮像を行う方が望ましく、手術の直前、もしくは術中においての撮像になるため、十分な時間をとることが困難である。RI強度が低く、撮像時間が短いため、撮像された画像のカウント数は非常に少なくなりRI集積部位の特定が困難になる。
【0007】
実際のセンチネルリンパ節の特定では、ガンマカメラの位置を変えながらセンチネルリンパ節を探すため一回の撮像時間は数秒から数十秒程度である。このため、RIからの信号は画素当り、ガンマ線の1、2カウントしか取れない場合がある。一方で、宇宙線や、患者体内のセンチネルリンパ節以外の部位に分布するRIからのバックグランド放射線の影響により、集積部位以外でもガンマ線がノイズとして観測され、RIからの信号と同程度となる画素が多数存在するため、画素当りのカウント数の大小で蓄積部位を特定することは困難である。
【0008】
ノイズを低減する手法として、得られた画像に対しガウスフィルタを代表とする重み付けフィルタやメディアンフィルタなどの非線形フィルタが用いられているが、重み付けフィルタは画像をぼかすことによってノイズを抑制するものであり、低カウントの際のバックグランド放射線の除去はできない。また、メディアンフィルタに関しては本来の信号のカウント数が非常に少ない場合、バックグランドだけでなく、本来の信号までも抑制してしまう。
【0009】
他にも特許文献2に示すように、前記閾値以下のカウント数のデータを抑止する手法もあるが、数カウントのカウント数しかない画像に対し適用すると、本来の信号まで抑制され、効果を発揮しない。
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するための発明であって、低カウント数の画像を適切に処理することで放射性同位元素の集積部位の発見を容易にすることができる放射線撮像装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の放射線撮像装置は、撮像された画像に対し、重み付けフィルタを用いた低域通過フィルタを適用したのち、閾値以下のカウント数の画素の値を抑制し、閾値処理後の画像に対し再度低域通過フィルタを適用することで閾値以上の値を持つ画素を強調し、集積位置を特定しやすい画像を提供することを特徴とする。
【0012】
画像の閾値についてはノイズによるカウント数に依存する。ノイズによるカウント数を推定する方法として、撮像時間における値をあらかじめ想定しておく手法の他、実際の撮像時間と想定されるノイズのカウントレートから計算する方法、別途設けたエネルギー窓で作成した画像から推定する方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低カウント数の画像を適切に処理することで放射性同位元素の集積部位の発見を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線撮像装置の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る収集・表示コンソールの処理ブロックを示す図である。
【図3】放射線撮像装置におけるエネルギーの分布を示す図である。
【図4】放射線撮像装置におけるフィルタ処理の流れを示す図である。
【図5】放射線撮像装置における画像の例を示す図である。
【図6】N×Nの重み付きフィルタの原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る放射線撮像装置100の概要を示す図である。図1を参照して本発明の実施形態に係る核医学診断装置である小型のガンマカメラ1について説明する。
【0016】
放射線撮像装置100は、ガンマカメラ1と収集・表示コンソール2(画像処理装置)から構成される。収集・表示コンソール2では、ユーザの操作に基づき画像収集の開始や停止、また画像表示やフィルタ処理などを行う。収集・表示コンソール2の機能は後記する。
【0017】
ガンマカメラ1は、コリメータ3と検出パネル4を含む。コリメータ3は、鉛やタングステンなどガンマ線阻止能力に優れた材料に多数の穴をあけたものであり、特定方向からのガンマ線のみを透過させる。コリメータ3を透過したガンマ線は検出パネル4に到達する。検出パネル4は複数の検出画素5を含んでおり、ガンマ線は検出画素5で検出される。
【0018】
検出画素5として、例えば半導体検出器であるCZT(Cadmium Zinc Telluride)やCdTe(Cadmium Telluride)などを用い、画素1つに対し、1つの検出器を対応させる構造が考えられる。他にも、Anger型ガンマカメラ(米国特許第3011057号参照)の様な大型の検出器からの信号を信号処理により位置検出し、位置信号をデジタル化することで画素に分割することも可能である。検出画素5ではガンマ線を検出するとそのガンマ線のエネルギーを測定し出力する。検出パネル4は、ガンマ線を検出した検出画素5の位置とエネルギーを収集・表示コンソール2へ送信する。収集・表示コンソール2ではガンマカメラ1から送られてきたデータを元に画像の作成を行う。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る収集・表示コンソール2の処理ブロックを示す図である。収集・表示コンソール2は、エネルギー弁別部10、分布画像作成部11(分布画像作成手段)、第1低域フィルタ部12(第1のフィルタ処理手段)、閾値処理部13(第2のフィルタ処理手段)、第2低域フィルタ部14(第3のフィルタ処理手段)、画像表示部15、分布画像作成部11に接続された閾値設定部16、ユーザ入力部17からなる。
【0020】
収集・表示コンソール2では、初めに、エネルギー弁別部10において、ガンマ線のエネルギーに基づき、送られてきたデータが集積したRI由来であるか否かの判断を行う。検出されたエネルギーのヒストグラムは図3の様になっており、RIからの信号の他に様々なノイズが重畳している。ノイズの要因としては宇宙線などや体内での散乱ガンマ線などがあり、宇宙線などの環境放射線の影響は、エネルギーとしては、ほぼ一様に存在する。
【0021】
また、散乱ガンマ線はRIから放出されたガンマ線が患者の体内で散乱することで生じるが、散乱時にエネルギーを失っているため、本来のエネルギーよりも低い場所に分布する。散乱線に関しては、RIからの真の信号によって発生するものであるが、散乱した際に、ガンマ線の方向が曲げられるため、RIの集積部位の情報を失っている場合があり、画像としてはノイズとして扱われる。このため、エネルギー弁別部10ではRI用のエネルギー窓20(図3参照)に含まれるエネルギーをもったデータのみを弁別したカウントすることで、ノイズを減少させる。
【0022】
また、散乱線用のエネルギー窓21や宇宙線用のエネルギー窓22のデータのみを使用すると、ノイズによって生じる画像が取得でき、画像の補正に使用することが可能である。
【0023】
次に、分布画像作成部11は、RIの分布を示す画像を作成する。ガンマカメラ1から送られてきたデータにはガンマ線が検出された位置が記録されているため、場所ごとにデータの数を数えることにより、RIの分布画像を取得することが可能である。
【0024】
第1低域フィルタ部12は、分布画像作成部11において作成された画像に対し、低域通過フィルタを適用する。低域通過フィルタを用いることで、位置分解能は劣化するものの、画像のざらつきを抑えることが可能である。この低域通過フィルタについては後で詳細に説明する。
【0025】
閾値処理部13は、閾値設定部16から指示された閾値を元に、第1低域フィルタ部12で生成された画像に対し閾値フィルタをほどこす。画像中の個々の画素の画素値が、閾値より大きければそのままにし、閾値以下であれば画素値を抑制する。
【0026】
第2低域フィルタ部14は、閾値処理部13で処理された画像に対し、再度低域フィルタを適用する。フィルタ処理は領域の拡幅を行うことを目的とし、例えば3×3で全画素が1であるような重み付けフィルタを用いる。
【0027】
画像表示部15は、第2低域フィルタ部14で生成された画像を表示する。
【0028】
閾値設定部16は、分布画像作成部11において作成された画像及びユーザ入力部17から指示されたパラメータに基づき閾値を設定する。閾値設定部16で設定される閾値は大きすぎるとRIからの信号を検出することができず、また小さすぎるとノイズによるカウントにより誤判定が生じる。このため、適切な閾値を設定することが重要であり、誤ってRIの集積を判定しないよう、ノイズによる誤検出を視野全体で1画素より十分に小さくするよう閾値を設定することが望ましい。
【0029】
閾値を決定するためにはノイズによるカウント数を知る必要がある。小型のガンマカメラ1を用いたRIの集積判定では、RIの投与量は検査によりほぼ決まった量を投与するため、RIの強度は各検査において、ほぼ同一である。また、撮像時間も判定に使用できる時間は限られており、数十秒から数分程度とある範囲に収まる。このため、ガンマカメラ1で計測されるノイズ及びRIからの信号のカウント数は推定可能である。
【0030】
具体的には、閾値設定部16(閾値設定手段)は、画素値に対する閾値を、画像の撮像時間に応じて想定されるノイズのカウントレートと該撮像時間との乗算により求めたノイズのカウント数に基づいて決定することができる。
【0031】
直接的にノイズのカウント数を測定する方法として、ガンマカメラ1の視野サイズが十分に大きく、RIの集積部位が小さい場合はRIからの信号(ガンマ線)によるカウント数はノイズによるカウント数にくらべ十分小さいとみなすことができ、ガンマカメラ1の全検出画素5(全検出器)での総カウント数をノイズによるカウント数とみなすことが可能である。
【0032】
他にも、エネルギー弁別の際、散乱線用のエネルギー窓21(図3参照)や宇宙線用のエネルギー窓22(図3参照)を用いて、RIからの信号による画像とは別の画像を作成し、そこからノイズによるカウント数を求めることもできる。すなわち、分布画像作成部11(分布画像作成手段)は、撮影時におけるエネルギー窓とは異なるエネルギー窓を用いて放射線の分布の閾値算出用の画像を作成し、閾値設定部16(閾値設定手段)は、画素値に対する閾値を、該閾値算出用の画像のカウント数に基づいて決定することができる。
【0033】
ガンマカメラ1全体のノイズのカウント数から画素当りのノイズによるカウント数の期待値は容易に求めることが可能であり、カウント数の期待値が分かれば個々の画素で、ある値がカウントされる確率はポアソン分布から計算することが可能である。第1低域フィルタをかけた際の画素のカウント数に対する確率分布は、フィルタの係数が決まればフィルタ前の画素に対する確率分布から計算することが可能であり、閾値処理において、ある閾値が与えられたときにノイズによって閾値を超える確率を求めることが可能であり、逆にノイズによって閾値を超えない確率をある値以下にするために必要な閾値を決めることができる。
【0034】
このように、第1低域フィルタ後におけるのノイズのカウント数の確率分布を求め、閾値を超える確率が十分に低くなるように閾値を決めることで、ノイズによる誤検出を避けることが可能である。
【0035】
ユーザは、ユーザ入力部17にノイズによる誤検出の確率を入力するか、閾値を直接入力することで閾値を決定する。
【0036】
次に、収集・表示コンソール2のハードウェア構成について説明する。
収集・表示コンソール2は、図示していないが、プロセッサ(処理部)、メモリ(記憶部)、ユーザ入力部17に相当する入力装置、画像表示部15に相当する出力装置を有し、ディスクインタフェースを介して外部記憶装置と接続される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成され、メモリ上に読み込まれた各部(例えば、エネルギー弁別部10)の処理プログラムを実行することで、各手段の処理を実行する。
【0037】
各部の処理プログラムはプロセッサで実行することにより実現するが、各部の処理部として集積回路化するなどしてハードウェアで実現することもできる。
【0038】
メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの記憶媒体で構成される。入力装置は、例えばキーボードやマウスなどの装置で構成され、出力装置は例えば液晶モニタなどの装置で構成される。前記で説明した各部の処理データ(例えば、画像データ)は、常時は、外部記憶装置に記憶されており、必要に応じてメモリに記憶される。
【0039】
次に、画像の例を示しながら各部の処理について具体的に説明する。
図4は、放射線撮像装置100におけるフィルタ処理の流れを示す図である。図5は、放射線撮像装置100における画像の例を示す図である。処理S101において、分布画像作成部11は、個々の画素ごとに選別されたデータの数をカウントし画像を作成する。画像作成は、ユーザが収集・表示コンソール2を操作することで収集を開始した時点からカウント数を積算する。
【0040】
処理S101において図5に示す画像201を得る。左側はピクセル毎(検出画素5毎)にカウント数を示したもので、右側はカウント数を濃淡で示した画像の例である。本実施形態では8×8画素の例を示しているが、実際には画素ピッチ1mmから2mm程度で視野サイズは30×30画素から100×100画素程度のカメラを用いる。収集時間にもよるが、ノイズによるカウント数は画素当り平均0.01カウント程度であり、RIからの信号(ガンマ線)は平均1カウント程度である。RIの集積を1カウント以上で判断しようとしても、例えば100×100の画素数をもつカメラの場合、ノイズにより1カウント以上を記録する画素はカメラ全体で100画素、また約半分の確率で2カウント以上の画素も発生するため、カウント数による閾値によって判断することができない。
【0041】
処理S102において、第1低域フィルタ部12は、得られた画像に対し低域通過フィルタを適用する。低域通過フィルタは3×3の重み付きフィルタであり、中心と隣接ピクセルが重み2、斜め方向が重み1で画素の平滑化を行う。
【0042】
図6は、N×Nの重み付きフィルタの原理を示す図である。ここでは、N=3として3×3の重み付きフィルタについて説明する。図6(a)は、画像に対し、3×3フィルタ(ハッチング部分)を適用した様子を示し、フィルタ中心が計算対象の出力ピクセルである。図6(b)は、計算の際の入力ピクセル群であり、図6(c)は、フィルタの重みを示す。図6(b)に示すフィルタ中心に対応する出力ピクセル(Z5)は、次式に従ってZ値が算出される。
Z=(Z1×F1)+(Z2×F2)+(Z3×F3)+…+(Z9×F9)
【0043】
例えば、図6(b)の中心のピクセルであるZ5が1で他のピクセルが0の場合、図6(c)において、中心と隣接ピクセルが重み2、斜め方向が重み1の3×3フィルタを適用すると、F1=F3=F7=F9=1、F2=F4=F5=F6=F8=2であり、Z=2と算出される。
【0044】
本実施形態では3×3フィルタを用いたが5×5フィルタやさらに広い範囲の重み付けフィルタを用いることも可能である。また、重みとしてガウス関数や、その他数学的に規定された値をもつフィルタを用いることも可能である。
【0045】
処理S102により図5に示す画像202が得られる。低域通過フィルタを用いるだけでは画像がぼけているだけであり、RI集積による信号とノイズを分離することができない。
【0046】
処理S103において、閾値処理部13は、処理S102の結果得られた画像に対し閾値処理を行い、閾値以下の画素の値を0にする。これにより図5に示す画像203が取得できる。フィルタ処理と閾値処理を組み合わせることで初めて、集積部位を特定することが可能になる。
【0047】
ノイズによる誤カウントを排除するための閾値は、測定時のノイズの平均カウントによって決定される。例えばノイズによる平均カウント数0.01を仮定すると、処理S102における低域フィルタをかけた後で閾値を超える確率は計算によって求めることができ、画素値が4を超える確率は約2.5×10−3、5を超える確率は約2.2×10−4、6を超える確率は約1.2×10−4となる。100×100画素で構成されるカメラを考えると、ノイズにより閾値を超える画素の数はそれぞれ平均25画素、2.2画素、1.2画素であり、閾値を5以下とすれば、ノイズによる誤検出は1画素程度に抑えることができる。
【0048】
RIの集積は通常数mmの大きさを持っているため、集積したRIからの信号では画素間のカウント数に相関関係がある。一方でノイズによるカウントでは画素間の相関が小さい。このため、低域フィルタを適用した後で閾値処理を行うことで、画素間に相関があるRIからの信号のみを取り出すことが可能である。
【0049】
また、収集時間は容易に測定可能であるので、想定されるノイズの平均レートからノイズの平均カウントを算出する手法や、信号が含まれないエネルギー窓で画像を別途生成し、そのカウント数を元にノイズの平均カウントを算出し、閾値を決定することも可能である。また、ユーザからの入力により閾値を決定することも考えられる。
【0050】
閾値処理は画素の値が閾値を超えるか否かを判断するものであり、計算機で処理する場合、処理が遅くなる。画像表示はリアルタイムで行う必要があるため、処理を軽くするもっとも簡単な手法として、処理S102で行われる重みづけフィルタの係数を1以下の小数点を含んだ値とし、閾値処理では小数点以下を切り捨てる処理を行うことが考えられる。小数点切り捨ての場合、カウント数が低いと入力と出力のカウント数の直線性が無いが集積の有無の確認には十分であり、閾値処理を高速に実現することができる。
【0051】
処理S104において、第2低域フィルタ部14は、処理S103の結果得られた画像に対し、再度、低域通過フィルタを適用する。本実施形態では全画素とも重み1の3×3のフィルタを適用することで画素を膨張させ、集積部位を強調する。これにより画像上で集積部位を大きく表示することが可能であり、RIからの信号の集積を発見することが容易になる。なお、フィルタの係数はこれに限定されるものではない。処理の結果、図5に示す画像204が得られる。このように低域フィルタと適切な閾値を用いることでRIの集積箇所を特定することが可能になる。
【0052】
本実施形態によれば、放射線撮像装置100の収集・表示コンソール2(画像処理装置)は、ガンマ線の入射数をカウントすることによって得られた画像に対し、重みつきフィルタを用いて平滑化処理を行う(処理S102)。そして、画像処理装置は、平滑化後の画像に対して、閾値以下の画素値を抑制する(処理S103)。さらに、画像処理装置は、閾値処理が行われた画像に対し再度、重みつき平滑化フィルタを適用することで集積部分の画素を膨張させ(処理S104)、放射性同位元素の集積部位の発見を容易にする画像を提供することができる。
【0053】
本実施形態によれば、低カウント数の放射線画像の放射性薬剤の集積位置のみを強調して表示し、短時間で薬剤の集積位置を特定可能とすることができる。これにより手術や診断に要する時間を短縮することができ、患者の負担を軽減することが可能である。
【0054】
本実施形態では主に医療用の放射線撮像装置に関して説明したが、カウント数が少ない画像で判断を行う核セキュリティなどの分野にも応用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 ガンマカメラ
2 収集・表示コンソール(画像処理装置)
3 コリメータ
4 検出パネル
5 検出画素
10 エネルギー弁別部
11 分布画像作成部(分布画像作成手段)
12 第1低域フィルタ部(第1のフィルタ処理手段)
13 閾値処理部(第2のフィルタ処理手段)
14 第2低域フィルタ部(第3のフィルタ処理手段)
15 画像表示部
16 閾値設定部
17 ユーザ入力部
20 RI用のエネルギー窓
21 散乱線用のエネルギー窓
22 宇宙線用のエネルギー窓
100 放射線撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出した放射線の分布の画像を作成する分布画像作成手段と、
前記作成された画像に対して低域通過フィルタ処理を行う第1のフィルタ処理手段と、
前記第1のフィルタ処理手段による処理の結果得られた画像の個々の画素の画素値が閾値以下であれば画素値を抑制する第2のフィルタ処理手段とを有する
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記放射線撮像装置は、さらに、
前記第2のフィルタ処理手段による処理によって得られた画像に対し、再度低域通過フィルタ処理を行う第3のフィルタ処理手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記放射線撮像装置は、さらに、閾値設定手段を有し、
前記閾値設定手段は、前記画素値に対する閾値を、前記画像の撮像時間に応じて想定されるノイズのカウントレートと該撮像時間との乗算により求めたノイズのカウント数に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記放射線撮像装置は、さらに、閾値設定手段を有し、
前記分布画像作成手段は、撮影時におけるエネルギー窓とは異なるエネルギー窓を用いて放射線の分布の閾値算出用の画像を作成し、
前記閾値設定手段は、前記画素値に対する閾値を、該閾値算出用の画像のカウント数に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
検出パネルで検出された放射線の分布の画像を処理する画像処理装置の画像処理方法であって、
前記画像処理装置は、
検出した放射線の分布の画像を作成し、
前記作成された画像に対して低域通過フィルタ処理を行う第1のフィルタ処理をし、
前記第1の通過フィルタ処理の結果得られた画像の個々の画素の画素値が閾値以下であれば画素値を抑制する第2のフィルタ処理をする
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
前記画像処理装置は、さらに、
前記第2のフィルタ処理によって得られた画像に対し、再度低域通過フィルタ処理を行う第3のフィルタ処理をする
ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記画像処理装置は、
前記画素値に対する閾値を、前記画像の撮像時間に応じて想定されるノイズのカウントレートと該撮像時間との乗算により求めたノイズのカウント数に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記画像処理装置は、
撮影時におけるエネルギー窓とは異なるエネルギー窓を用いて放射線の分布の閾値算出用の画像を作成し、
前記画素値に対する閾値を、該閾値算出用の画像のカウント数に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137460(P2012−137460A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291596(P2010−291596)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】