説明

放射線撮影装置

【課題】モニタの大型化を抑制しつつ、操作性に優れた放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る放射線撮影装置は、表示部21と、放射線源に対しての指示を入力させる指示入力手段とを備え、指示入力手段に指示が入力されたとき、表示部21は、放射線源の設定を画面上の撮影像表示領域R1に重ねて表示する構成となっている。このようにすることで、画面が小さかったとしても、放射線撮影において重要な情報である放射線源の設定は、画面上の撮影像表示領域R1に重ねられて目立って表示されることになる。したがって、術者は、放射線撮影において重要な情報を確実に認識しながら放射線撮影を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の透視画像を取得できる放射線撮影装置に関し、特に、放射線撮影画像と放射線撮影の諸条件を単一のモニタに表示する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、被検体の撮影像を取得する放射線撮影装置が配備されている。この様な放射線撮影装置における従来の構成について説明する。従来の放射線撮影装置は、被検体を載置する天板と、天板の上部に設けられた放射線源と、天板の下部に設けられた放射線検出手段(FPD)と、撮影された放射線撮影画像を表示する表示部(モニタ)を備えている。このような構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
従来のモニタの構成について説明する。従来の放射線撮影装置には、図7に示すように、2つのモニタ51,52が設けられている。第1モニタ51は、被検体の撮影画像を表示するもので、高解像度のものが用いられる。第2モニタ52は、画面上には、放射線強度などの撮影条件、患者IDなどの放射線撮影画像における付加情報、および、装置の制御に関する操作アイコン等が配列されている。一般に、第2モニタ52は、第1モニタ51よりも小さい。
【0004】
放射線撮影装置には、2つのコンソール(制御装置)が設けられており、第1コンソールは第1モニタ51に接続されており、放射線撮影装置本体から放射線検出データを受け取って、それを放射線撮影画像に組み立てる演算を担当している。第2コンソールは、第2モニタ52に接続されており、放射線撮影における各種パラメータの管理、ファイルの保存、および術者が放射線撮影装置に対して行う操作の受付を担当している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−328932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来構成の放射線撮影装置には、次のような問題点がある。すなわち、従来の放射線撮影装置は、装置の小型化を目指すにあたり、不利な構成となっている。小型化を達成するには、2つのコンソールを有するよりも、単一なコンソールを備えるものとする方式が採用したほうがよい。これに伴って、モニタも単一なものとする構成が望まれる。そうすれば、モニターも1つにまとめられるので、モニター1つ分が占有に必要なスペースを開放することができる。
【0007】
この様な設定の変更は、一見、容易に達成できるように思われるが、実はそうではない。モニタを単一とすると、第1モニタ51に表示していた放射線撮影画像をモニタの中央に大きく表示し、第2モニタ52に表示していた各種条件をモニタの端部に表示することになる。すると、第2モニタ52に表示されていた各種条件は、モニタにおける帯状の領域に小さく並べて表示しなければならなくなり、術者にとって見づらいものとなる。
【0008】
検査時における術者は、被検体に対して指示を行ったり、放射線撮影装置本体を操作したりして、被検体の周りを動き回り、モニタの前に座り続けるのではない。術者がモニタを凝視しなければ、操作ができない構成となっているのでは、術者の機動性を妨げることになり、検査が非効率となってしまう。この様な問題があるので、コンソールを単一としても、モニタを単一にできない事情が生じる。
【0009】
なお、単一で巨大なモニタを用意すれば、上述の課題が解決するかのように思われる。しかし、このようなモニタは、検査室の限られたスペースを占有してしまう。検査室が狭い場合、巨大なモニタを有する放射線撮影装置を設置することは困難となる。かくして、モニタの表示方法を工夫することにより、小さなモニタでも優れた操作性を実現する必要性があるのである。
【0010】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、モニタの大型化を抑制しつつ、操作性に優れた放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に係る発明は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段と、検出手段から送出された検出データを基に被検体の投影像が写りこんだ放射線撮影画像を生成する撮影像生成手段と、放射線撮影画像を表示させる撮影像表示領域を有する画面を備えた表示手段と、放射線源に対しての指示を入力させる指示入力手段とを備え、(A1)指示入力手段に指示が入力されたとき、表示手段は、放射線源の設定を画面上の撮影像表示領域に重ねて表示することを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明によれば、操作性の優れた放射線撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線源に対しての指示を入力させる指示入力手段を備え、指示入力手段に指示が入力されたとき、表示手段は、放射線源の設定を画面上の撮影像表示領域に重ねて表示する構成となっている。すなわち、画面上の撮影像表示領域には、被検体の投影画像が写し出されており、放射線源の設定は、それに重ねて表示される。このようにすることで、画面が小さかったとしても、放射線撮影において重要な情報である放射線源の設定は、画面上の撮影像表示領域に重ねられて目立って表示されることになる。したがって、術者は、放射線撮影において重要な情報を確実に認識しながら放射線撮影を行うことができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放射線撮影装置において、表示手段の画面において、撮影像表示領域以外の領域を撮影像非表示領域としたとき、(A2)指示入力手段に指示が入力されたとき、表示手段は、撮影像表示領域と撮影像非表示領域とを跨ぐ領域に放射線源の設定を重ねて表示させることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]この様な構成とすることで、画面上において、放射線源の設定は、更に目立って表示されることになる。すなわち、放射線源の設定は、撮影像表示領域から撮影像非表示領域に向けてはみ出して表示される、更に大きく表示される。したがって、術者は、放射線撮影において重要な情報をより確実に認識しながら放射線撮影を行うことができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、指示入力手段は、放射線を照射する旨の指示を入力させる具体的構成として、放射線源に対し放射線の照射が実行される旨を事前に通知する事前指示を入力させる事前指示入力手段と、放射線源に対し放射線を実際に照射するよう指示を行う実際指示を入力させる実際指示入力手段とを備え、(A3)事前指示が入力されたとき、表示手段は、放射線源の設定を画面上に表示することを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、指示入力手段の詳細な構成を示したものである。すなわち、指示入力手段は、事前指示入力手段と、実際指示入力手段とを備えている。この様に放射線照射の指示を2段階に分けることにより、放射線撮影装置は、放射線源に対して放射線を照射させる事前準備を行うことができるので、より円滑な撮影が可能となるのである。しかも、放射線源の設定が画面上に表示されるのは、事前指示が入力された時点である。したがって術者は、放射線が実際に照射されるのに先立って放射線源の設定を確認することができるのである。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の放射線撮影装置において、実際指示を放射線源に伝達させるかどうかを判断する判断手段と、確認入力を入力させる確認入力手段とを備え、表示手段が放射線源の設定を画面上に表示した後、判断手段は、確認入力が入力されるまで待機し、判断手段は、確認入力が行われる前に実際指示が行われた場合、この実際指示を無効とし、放射線源による放射線の照射を行わせないことを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]上述の構成によれば、判断手段を備えている。判断手段は、指示入力手段と、放射線源との間の情報の伝達を介在しており、実際指示を無効化することができる。この判断手段は、術者による確認入力の後、実際指示が行われた場合に限って放射線の照射を行わせる。これにより、実際指示が行われる前に、術者に対し、放射線源の設定を視認させる期間を与えることができる。
【0019】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の放射線撮影装置において、確認入力手段は、画面上に表示される操作アイコンであり、操作アイコンは、画面における放射線源の設定が表示される領域である設定値表示領域の内部または近傍に表示されることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]上述の構成によれば、確認入力手段は、画面上に表示される操作アイコンである。しかもこの操作アイコンは、設定値表示領域の内部または近傍に表示される。したがって、操作アイコンを操作するとき、術者の視界に、設定値表示領域が収まることになる。こうして、放射線源の設定の視認性をより向上させることができる。
【0021】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の放射線撮影装置において、操作アイコンは、画面上における放射線源の設定の出現に合わせて画面上に出現することを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]上述の構成によれば、より操作性に優れた放射線撮影装置が提供できる。操作アイコンは、放射線源の設定を術者に確認させるための構成である。したがって、操作アイコンは、画面上における放射線源の設定の出現に合わせて画面上に出現させるほうがより望ましいのである。
【0023】
また、請求項7に係る発明は、請求項3に記載の放射線撮影装置において、実際指示を放射線源に伝達させるかどうかを判断する判断手段と、待機時間の間隔を記憶する時間記憶手段とを備え、判断手段は、事前指示が入力された時点を起点とした待機時間以内に実際指示の指示がなされた場合、この実際指示を無効とし、放射線源による放射線の照射を行わせないことを特徴とするものである。
【0024】
[作用・効果]上述の構成によれば、判断手段を備えている。判断手段は、指示入力手段と、放射線源との間の情報の伝達を介在しており、実際指示を無効化することができる。この判断手段は、待機時間の経過後、実際指示が行われた場合に限って放射線の照射を行わせる。これにより、実際指示が行われる前に、術者に対し、放射線源の設定を視認させる期間を与えることができる。
【0025】
また、請求項8に係る発明は、請求項7に記載の放射線撮影装置において、待機時間以内の間、表示手段の画面上には、実際指示が有効となるまでの残り時間を示すカウントダウンが表示されることを特徴とするものである。
【0026】
[作用・効果]上述の構成によれば、術者は、待機時間の経過を明確に知ることができる。したがって、より操作性の優れた放射線撮影装置が提供できる。
【0027】
また、請求項9に係る発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の放射線撮影装置において、表示手段が有する画面の対角寸法は、21インチ以下となっていることを特徴とするものである。
【0028】
[作用・効果]上述の構成は、表示手段の具体的な態様を表したものである。すなわち、表示手段が有する画面の対角寸法は、21インチ以下となっている。表示手段がこの程度の大きさであれば、放射線撮影装置を設置する検査室が例え狭小であったとしても、表示手段を容易に設置することができる。
【0029】
また、請求項10に係る発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の放射線撮影装置において、表示手段に表示されている放射線源の設定は、放射線が照射され、生成された放射線撮影画像が画面の撮影像表示領域に表示される前に、画面上から消去されることを特徴とするものである。
【0030】
[作用・効果]上述の構成によれば、より操作性に優れた放射線撮影装置が提供できる。放射線撮影画像を新たに取得した場合、術者にとって関心のある情報は、放射線源の設定ではなく、放射線撮影画像である。上述の構成によれば、放射線源の設定は、新しい放射線撮影画像が画面に表示される前に画面から消去されている。この様に放射線撮影装置は、検査の段階に応じて術者に認識させるべき情報を画面上に表示する構成となっているのである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、操作性の優れた放射線撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線源に対しての指示を入力させる指示入力手段とを備え、指示入力手段に指示が入力されたとき、表示手段は、放射線源の設定を画面上の撮影像表示領域に重ねて表示する構成となっている。このようにすることで、画面が小さかったとしても、放射線撮影において重要な情報である放射線源の設定は、画面上の撮影像表示領域に重ねられて目立って表示されることになる。したがって、術者は、放射線撮影において重要な情報を確実に認識しながら放射線撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る表示部の構成を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係る指示入力スイッチの構成を説明する斜視図である。
【図4】実施例1に係る表示部の構成を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る表示部の構成を説明する模式図である。
【図6】本発明の1変形例の構成を示す模式図である。
【図7】従来構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0033】
以下、本発明に係る放射線撮影装置の実施例について説明する。実施例1におけるX線は、本発明の放射線の一例である。
【0034】
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。図1は、実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。図1に示すように、実施例1に係るX線撮影装置1は、被検体Mを載置する天板2と、天板2の下部に設けられたFPD4と、天板2の上部に設けられたコーン状のX線ビームをFPD4に向けて照射するX線管3と、FPD4とX線管3との介在する位置に設けられるとともに、FPD4のX線検出面を覆うように設けられ散乱X線を除去するX線グリッド5と、X線管3の管電圧を制御するX線管制御部6とを備えている。X線管は、本発明の放射線源に相当し、FPDは、本発明の検出手段に相当する。
【0035】
X線グリッド5は、FPD4におけるX線を検出する検出面を覆うように設けられている。このX線グリッド5は、縦方向に細長状の吸収箔が横方向に配列された板状の部材である。被検体Mの中で散乱して進行方向が乱されたX線は、この吸収箔に入射して吸収され、FPD4に届くことがない。この様に、被検体の投影像の取得の邪魔となる散乱X線の影響が除去され、より鮮明なX線撮影画像が取得できるようになっている。
【0036】
また、実施例1に係るX線撮影装置1は、FPD4から出力された検出信号を組み立てて、X線撮影画像を生成する撮影像生成部11と、X線管制御部6にX線照射の指示を通過させるか判断する判断部13と、時間を記憶する時間記憶部15と、術者がX線照射の指示を行う指示入力スイッチ22とを備えている。撮影像生成部は、本発明の撮影像生成手段に相当し、判断部は、本発明の判断手段に相当する。時間記憶部は、本発明の時間記憶手段に相当し、指示入力スイッチは、本発明の指示入力手段に相当する。この指示入力スイッチは、X線管3に対しX線の照射が実行される旨を事前に通知する事前指示を入力させることもできれば、X線管3に対しX線を実際に照射するよう指示を行う実際指示を入力させることもできる。したがって、指示入力スイッチは、本発明の事前指示入力手段、および実際指示入力手段の機能を兼ね備えている。
【0037】
露出補正部12は、撮影像生成部11から出力される元画像の画素値を補正して、画像のコントラストや輝度を変更するものである。パラメータ記憶部16は、X線管3の管電流、管電圧、X線照射の時間的な幅などを記憶する記憶部である。パラメータ記憶部16は、上述のようなパラメータを関連付けた複数のデータセットを記憶している。
【0038】
そして、X線撮影装置1は、X線撮影画像を表示する表示部21を備えている。この表示部21の構成について具体的に説明する。表示部21は、図2に示すように、単一の画面(ディスプレー)Dを有しており、X線撮影装置1における種々のデータやパラメータを表示する構成となっている。画面Dの対角寸法は、21インチ以下となっており、X線撮影装置1を設置する検査室のスペースが限られたものであったとしても、容易に設置ができる程度となっている。表示部21は、本発明の表示手段に相当する。
【0039】
表示部21における画面D上には、種々の領域が設けられている。まず、画面Dには、被検体の撮影画像を表示する撮影像表示領域R1が設けられている。この領域は、画面Dに設けられた種々の領域の中で、最大の面積が割り当てられている。被検体の撮影画像は、被検体の微細な構造まで写し込んでおり、これを術者に視認させようとすれば、撮影像表示領域R1は、大きなほうがよい。なお、画面Dのうち、撮影像表示領域R1以外の部分を撮影像非表示領域と呼ぶことにする。
【0040】
撮影像非表示領域には、被検体のID,X線撮影画像のシリアルナンバー、撮影日時などの各種パラメータを表示するパラメータ表示領域R2が設けられている。そして、撮影像非表示領域には、X線撮影画像の取得に係る各種の操作アイコンがアイコン表示領域R3に配列されている。このパラメータ表示領域R2およびアイコン表示領域R3は、撮影像表示領域R1以外の部分に配置されており、具体的には、画面DにおけるL型の側辺部に位置している。
【0041】
次に、指示入力スイッチ22について説明する。図3に示すように、指示入力スイッチ22は、コードの末端に設けられたハンドスイッチであり、術者は、検査中、これを握ることができる。この指示入力スイッチ22は、2つの接点を有する2段階スイッチとなっている。指示入力スイッチ22のボタン22aを押すと、まず、ボタン22aは、第1の深さまで陥没する。この時点で接点の1つはONされ、他方の接点はOFFのままである。この状態からボタン22aに更に力を加えると、ボタン22aは、第2の深さまで陥没する。この時点で、OFF状態であった他方の接点がONされる。
【0042】
また、X線撮影装置1は、X線管制御部6,撮影像生成部11,露出補正部12および判断部13を統括的に制御する主制御部25をも備えている。この主制御部25は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各部6,11,12および13を実現している。
【0043】
この様な構成となっているX線撮影装置1の動作について説明する。まず、被検体Mは天板2に載置されている。術者は、アイコン表示領域R3に配列された検査手法の選択に係るアイコンをクリックし、ただ今から実行される撮影の様式をX線撮影装置1に伝達する。このとき、たとえば術者が胸部撮影のアイコンをクリックしたとすれば、胸部撮影に適したX線撮影条件に関するパラメータのデータセットがパラメータ記憶部16から読み出される。こうして、胸部撮影のアイコンをクリックするだけで、X線撮影装置1は、X線撮影に必要なパラメータを一括的に知ることができる。なお、このパラメータは、術者の指示により、手動で変更が可能となっている。これにより、実施例1に係るX線撮影装置1は、被検体の体格に合わせた撮影が可能となっている。この様にアイコン表示領域R3に配列されたアイコンは、X線管3の設定値を変更する設定変更手段として機能する。
【0044】
なお、この時点で、画面Dは、図2に示す如くとなっている。すなわち、術者は、被検体Mの撮影画像を複数枚に亘って取得しているものとし、図2における撮影像表示領域R1には、先程撮影されたX線撮影画像が写りこんでいるものとする。
【0045】
術者は、被検体Mの体動が収まったことを確認して、指示入力スイッチ22のボタン22aを1段目まで押下する。すると、術者は、X線撮影装置1に対して事前指示を入力したことになる。事前指示とは、X線管3に対してX線の照射が実行される旨を予め通知するもので、事前指示を受けたX線管制御部6は、X線管3に対し、X線照射の準備を開始させる。
【0046】
このとき、表示部21には、図4に示すように、X線管3の管電流、管電圧、X線管3における焦点の状況、露出補正部12が行う露出補正の有無が設定値表示領域R4に表示される。術者は、この時点で、これから行われるX線撮影の詳細を明確に知ることができる。
【0047】
図4に示す「120kv」とは、X線管3の管電圧を意味し、「200mA」は、X線管3の管電流を意味する。また、図4に示す「40msec」とは、X線の照射時間を意味している。そして、図4の「小焦点」とは、X線管3における焦点の状況を意味する。X線管3は、複数のフィラメントを有し、そこから飛び出した電子がターゲットに当たる事でX線を出力する構成となっている。使用するフィラメントの個数を増減させると、X線管3の出力を調整することができる。小焦点モードは、小出力の撮影に適しており、例えば、単一のフィラメントを用いたX線照射を意味している。「120kv」、「200mA」「40msec」、および「小焦点」は、本発明に係る放射線源の設定の一例である。
【0048】
設定値表示領域R4は、撮影像表示領域R1に重ねられているとともに、撮影像非表示領域にも重ねられている。この様に、設定値表示領域R4は、両領域に跨って表示されるのである。このように設定値表示領域R4は、画面Dに表示されている各領域R1〜R3の境界を跨いで、画面Dに大きくポップアップ表示される。したがって、術者は、これを容易に視認することができるのである。
【0049】
OKアイコン領域R5には、術者がクリックすることのできるOKアイコン26が表示されている。OKアイコン領域R5は、設定値表示領域R4の内部に設けられている。しかしながら、これを設定値表示領域R4の近傍に設ける構成としてもよい。いずれかのようにすることで、術者は、画面上の視線を大きく動かすことなく、OKアイコン26をクリックすることができる。なお、図4におけるcancelアイコン27(キャンセル入力手段)をクリックすると、X線撮影装置1は、術者が事前指示を入力する前の段階に戻る。OKアイコンは、本発明の確認入力手段に相当する。
【0050】
術者は、OKアイコン26をクリックしたあと、指示入力スイッチ22のボタン22aを2段目まで押下する。この術者の指示は、実際にX線を照射せよという実際指示を意味している。X線撮影装置1は、これをもってX線の照射を開始する。ちなみに、術者がOKアイコン26をクリックせずに実際指示を行った場合、判断部13は、この実際指示を無効とし、X線管3によるXの照射を行わせない。すなわち、OKアイコン26が表示された後、判断部13は、OKアイコン26がクリックされるまで待機していることになる。つまり、術者は、X線照射の前に必ずOKアイコン26をクリックせねばならなくなり、その際、設定値表示領域R4が視認されることになる。こうして、X線撮影装置1は、術者に照射条件を確実に通知させることができる。
【0051】
被検体Mを透過したX線は、FPD4に入射する。FPD4は、検出データを撮影像生成部11に送出する。この様にして取得されたX線撮影画像は、表示部21における撮影像表示領域R1に表示される。すなわち、撮影像表示領域R1には、図4において表示されていたX線撮影画像に代わって、図5において示す新たなX線撮影画像が表示されるのである。このとき、図5に示すように、図4で表示されていた設定値表示領域R4とOKアイコン領域R5は画面Dから消去されている。この様に、両領域R4,R5は、新たなX線撮影画像の表示の邪魔とならない構成となっている。この様にして、実施例1に係るX線撮影装置の動作は終了となる。
【0052】
また、画面D上におけるOKアイコン領域R5の出没のタイミングは、設定値表示領域R4のそれに付随している。すなわち、OKアイコン領域R5は、画面D上に設定値表示領域R4が出現した時点で画面Dにポップアップ表示として現れ、画面D上から設定値表示領域R4が消去された時点で画面Dから消去される。cancelアイコン27もOKアイコン26と同様である。
【0053】
以上のように、実施例1によれば、操作性の優れたX線撮影装置1が提供できる。すなわち、実施例1に係るX線撮影装置1は、X線管3に対しての指示を入力させる指示入力スイッチ22を備え、指示入力スイッチ22に指示が入力されたとき、表示部21は、管電流、管電圧などのX線管3の設定を画面上の撮影像表示領域R1に重ねて表示する構成となっている。すなわち、画面上の撮影像表示領域R1には、被検体Mの撮影像が写し出されており、X線管3の設定は、それに重ねて表示される。このようにすることで、画面の対角寸法が21インチ以下であったとしても、X線撮影において重要な情報であるX線管3の設定は、画面上の撮影像表示領域R1に重ねられて目立って表示されることになる。したがって、術者は、X線撮影において重要な情報を確実に認識しながらX線撮影を行うことができる。
【0054】
また、実施例1におけるX線管3の設定は、撮影像表示領域R1から撮影像非表示領域に向けてはみ出して表示されることで、更に大きく表示される。したがって、術者は、X線撮影において重要な情報をより確実に認識しながらX線撮影を行うことができる。
【0055】
そして、実施例1の指示入力スイッチ22は、事前指示入力スイッチ22と、実際指示入力スイッチ22とを備えている。この様にX線照射の指示を2段階に分けることにより、X線撮影装置1は、X線管3に対してX線を照射させる事前準備を行うことができるので、より円滑な撮影が可能となるのである。しかも、X線管3の設定が画面上に表示されるのは、事前指示が入力された時点である。したがって術者は、X線が実際に照射されるのに先立ってX線管3の設定を確認することができるのである。
【0056】
また、実施例1の構成によれば、判断部13を備えている。判断部13は、指示入力スイッチ22と、X線管3との間の情報の伝達を介在しており、実際指示を無効化することができる。この判断部13は、術者による確認入力の後、実際指示が行われた場合に限ってX線の照射を行わせる。これにより、実際指示が行われる前に、術者に対し、X線管3の設定を視認させる期間を与えることができる。
【0057】
また、OKアイコン26は、画面上に表示される操作アイコンである。しかもこのOKアイコン26は、設定値表示領域R4の内部または近傍に表示される。したがって、OKアイコン26を操作するとき、術者の視界に、設定値表示領域R4が収まることになる。こうして、X線管3の設定の視認性をより向上させることができる。
【0058】
さらに、そのOKアイコン26は、X線管3の設定を術者に確認させるための構成である。したがって、OKアイコン26は、画面上におけるX線管3の設定の出現に合わせて画面上に出現させるようになっているのである。
【0059】
また、表示部21が有する画面の対角寸法は、21インチ以下となっている。表示部21がこの程度の大きさであれば、X線撮影装置1を設置する検査室が例え狭小であったとしても、表示部21を容易に設置することができる。
【0060】
また、本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施が可能である。
【0061】
(1)上述の構成は、OKアイコン26を画面D上に表示する構成となっていたが、本発明はこれに限られない。すなわち、判断部13は、事前指示が入力された時点を起点とした待機時間以内に実際指示の指示がなされた場合、この実際指示を無効とし、X線管3によるX線の照射を行わせない構成としてもよい。これにより、待機時間の期間中は画面Dには、設定値が表示されることになる。なお、待機時間は、図1における時間記憶部15に記憶される。本変形例の構成によれば、判断部13は、待機時間の経過後、実際指示が行われた場合に限ってX線の照射を行わせる。これにより、実際指示が行われる前に、術者に対し、X線管3の設定を視認させる期間を与えることができる。
【0062】
(2)上記変形例を採用する場合において、図6に示すように、待機時間の期間中、画像Dに、実際指示が有効となるまでの残り時間を示すカウントダウンが表示される構成としてもよい。これにより、術者は、待機時間の経過をカウントダウンにより明確に知ることができ、より操作性の優れたX線撮影装置1が提供できる。なお、図6においては、カウントダウンが表示される領域は、設定値表示領域R4の内部に設けられている。しかしながら、これを設定値表示領域R4の近傍に設ける構成としてもよい。
【0063】
(3)上述した各実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0064】
(4)上述した各実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【符号の説明】
【0065】
R1 撮影像表示領域
1 X線撮影装置(放射線撮影装置)
3 X線管(放射線源)
4 FPD(検出手段)
11 撮影像生成部(撮影像生成手段)
13 判断部(判断手段)
15 時間記憶部(時間記憶手段)
21 表示部(表示手段)
22 指示入力スイッチ(指示入力手段)
26 OKアイコン(確認入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線を検出する検出手段と、
前記検出手段から送出された検出データを基に被検体の投影像が写りこんだ放射線撮影画像を生成する撮影像生成手段と、
前記放射線撮影画像を表示させる撮影像表示領域を有する画面を備えた表示手段と、
前記放射線源に対しての指示を入力させる指示入力手段とを備え、
(A1)前記指示入力手段に指示が入力されたとき、前記表示手段は、前記放射線源の設定を前記画面上の前記撮影像表示領域に重ねて表示することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記表示手段の画面において、前記撮影像表示領域以外の領域を撮影像非表示領域としたとき、
(A2)前記指示入力手段に指示が入力されたとき、前記表示手段は、前記撮影像表示領域と前記撮影像非表示領域とを跨ぐ領域に前記放射線源の設定を重ねて表示させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記指示入力手段は、放射線を照射する旨の指示を入力させる具体的構成として、前記放射線源に対し放射線の照射が実行される旨を事前に通知する事前指示を入力させる事前指示入力手段と、前記放射線源に対し放射線を実際に照射するよう指示を行う実際指示を入力させる実際指示入力手段とを備え、
(A3)前記事前指示が入力されたとき、前記表示手段は、前記放射線源の設定を前記画面上に表示することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記実際指示を前記放射線源に伝達させるかどうかを判断する判断手段と、
確認入力を入力させる確認入力手段とを備え、
前記表示手段が前記放射線源の設定を前記画面上に表示した後、前記判断手段は、前記確認入力が入力されるまで待機し、
前記判断手段は、前記確認入力が行われる前に前記実際指示が行われた場合、この実際指示を無効とし、前記放射線源による放射線の照射を行わせないことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線撮影装置において、
前記確認入力手段は、前記画面上に表示される操作アイコンであり、
前記操作アイコンは、前記画面における前記放射線源の設定が表示される領域である設定値表示領域の内部または近傍に表示されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線撮影装置において、
前記操作アイコンは、前記画面上における前記放射線源の設定の出現に合わせて前記画面上に出現することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記実際指示を前記放射線源に伝達させるかどうかを判断する判断手段と、
待機時間の間隔を記憶する時間記憶手段とを備え、
前記判断手段は、前記事前指示が入力された時点を起点とした前記待機時間以内に実際指示の指示がなされた場合、この実際指示を無効とし、前記放射線源による放射線の照射を行わせないことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線撮影装置において、
前記待機時間以内の間、前記表示手段の画面上には、前記実際指示が有効となるまでの残り時間を示すカウントダウンが表示されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記表示手段が有する画面の対角寸法は、21インチ以下となっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記表示手段に表示されている前記放射線源の設定は、放射線が照射され、生成された放射線撮影画像が画面の撮影像表示領域に表示される前に、前記画面上から消去されることを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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