説明

放射線検出パネル及び放射線撮像装置

【課題】シンチレータ及び光検出基板の少なくとも一方の修理又は交換が可能となるように、シンチレータ及び光検出基板を封止する。
【解決手段】放射線検出パネル(28)において、封止保護膜(48)には、該封止保護膜(48)を開封して前記封止保護膜(48)から前記シンチレータ(46)及び前記光検出基板(44)を取り出すための切込部(74)が設けられ、前記封止保護膜(48)は、前記シンチレータ(46)及び前記光検出基板(44)を避けるように、少なくとも前記シンチレータ(46)及び前記光検出基板(44)を熱溶着により密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を電気信号に変換する光検出基板とを有する放射線検出パネル、及び、該放射線検出パネルを備えた放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線源から被写体に放射線を照射し、該被写体を透過した前記放射線を放射線撮像装置で検出することにより、前記被写体の放射線画像を取得することが広汎に行われている。この場合、前記放射線撮像装置は、前記被写体を透過した前記放射線を可視光に変換するシンチレータと、該可視光を電気信号に変換する光検出基板とを有する放射線検出パネルを備える。
【0003】
ところで、シンチレータをCsI(ヨウ化セシウム)から構成した場合、該CsIは、湿度に弱く潮解性を有する。従って、CsIからなるシンチレータを用いた放射線検出パネルでは、該シンチレータを確実に封止することが必要である。そこで、特許文献1には、基板に配置されたシンチレータを保護層で被覆した後に封止することが提案されている。また、特許文献2には、シンチレータ及び光検出基板の積層体を樹脂で全体的に被覆して封止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−78472号公報
【特許文献2】特開2010−85266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線検出パネルの製造時又は使用時に、該放射線検出パネルを構成するシンチレータ及び光検出基板のうち、少なくとも一方に不具合が発生した場合、不具合が発生した部品を修理又は交換する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、使用時におけるシンチレータの防湿性の確保に重点が置かれているので、シンチレータ又は光検出基板の修理又は交換を何ら想定せずにシンチレータを封止している。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、シンチレータ及び光検出基板の少なくとも一方の修理又は交換が可能となるように、シンチレータ及び光検出基板を封止することができる放射線検出パネルと、該放射線検出パネルを備えた放射線撮像装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、放射線検出パネルが、
放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を電気信号に変換する光検出基板と、前記放射線を透過させる材料からなり且つ少なくとも前記シンチレータ及び前記光検出基板を封止する封止保護膜とを有し、
前記封止保護膜には、該封止保護膜を開封して前記封止保護膜から前記シンチレータ及び前記光検出基板を取り出すための切込部が設けられ、
前記封止保護膜は、前記シンチレータ及び前記光検出基板を避けるように、少なくとも前記シンチレータ及び前記光検出基板を熱溶着により密封することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、前記シンチレータ及び前記光検出基板を避けるように前記シンチレータ及び前記光検出基板が熱溶着により密封されている。これにより、前記放射線検出パネルの使用中は、前記シンチレータ及び前記光検出基板が確実に密封されるので、前記シンチレータの防湿性が十分に確保される。
【0010】
また、前記シンチレータ及び前記光検出基板の少なくとも一方の修理又は交換が必要となった場合には、前記切込部を介して前記封止保護膜を開封するだけで、前記封止保護膜から前記シンチレータ及び前記光検出基板を容易に取り出すことができる。
【0011】
従って、本発明によれば、前記シンチレータ及び前記光検出基板の少なくとも一方の修理又は交換が可能となるように、前記シンチレータ及び前記光検出基板を封止することができる。
【0012】
また、本発明では、支持基板上に前記シンチレータ及び前記光検出基板を積層してもよい。その際、前記封止保護膜は、下記(1)又は(2)のように、前記シンチレータ及び前記光検出基板を密封すればよい。
【0013】
(1)前記封止保護膜は、前記シンチレータ、前記光検出基板及び前記支持基板を出し入れ可能な開口部が形成された袋状に構成され、前記シンチレータ、前記光検出基板及び前記支持基板を前記開口部を介して袋状の前記封止保護膜内に収容した状態で、前記封止保護膜の内部を前記開口部を介して排気した後に、該開口部を熱溶着により密封する。
【0014】
(2)前記封止保護膜は、前記支持基板に積層された前記シンチレータ及び前記光検出基板を被覆可能なシート状に構成され、前記シンチレータ及び前記光検出基板が前記支持基板に積層された状態で、シート状の前記封止保護膜で前記シンチレータ及び前記光検出基板を被覆した後に、前記封止保護膜の周縁部を熱溶着により密封する。
【0015】
(1)のように、袋状の前記封止保護膜を用いて、前記シンチレータ、前記光検出基板及び前記支持基板を密封する場合でも、あるいは、(2)のように、シート状の前記封止保護膜を用いて、前記支持基板に積層された前記シンチレータ及び前記光検出基板のみ密封する場合でも、前記シンチレータの防湿性を確保することができる。
【0016】
この場合、平面視で、前記封止保護膜における前記シンチレータ及び前記光検出基板の外周部近傍、又は、前記シンチレータ及び前記光検出基板と前記封止保護膜の熱溶着部分との間に前記切込部を設けることが望ましい。これにより、前記切込部を介して前記封止保護膜を開封すれば、開封された前記切込部の箇所から前記シンチレータ及び前記光検出基板を速やかに取り出すことができる。
【0017】
また、前記支持基板における前記切込部と対向する箇所に、外部から前記切込部に刃物を押し当てたときに該支持基板を保護する保護部材を配設すれば、前記支持基板等を傷つけることなく、前記封止保護膜を開封することができる。
【0018】
ここで、前記放射線検出パネルは、前記光検出基板と電気的に接続され且つ前記封止保護膜の熱溶着部分から外部に引き出されるように設けられた接続部をさらに有する。また、前記放射線検出パネルは、前記接続部と電気的に接続され、前記光検出基板を駆動させることにより前記電気信号を前記接続部を介して外部に出力する電子部品をさらに有する。
【0019】
その際、前記電子部品は、前記シンチレータ及び前記光検出基板と共に前記封止保護膜により密封されているか、又は、前記接続部に設けられている。
【0020】
また、前記接続部は、前記熱溶着部分から外部に引き出されたフラットケーブルであるか、外部のケーブルに対して着脱可能なコネクタであるか、あるいは、前記フラットケーブル及び該フラットケーブルの先端部分に設けられた前記コネクタである。
【0021】
特に、前記コネクタを設けると、前記外部のケーブルに対して前記コネクタが着脱自在となり、前記放射線検出パネルの修理又は交換が必要となったときに、前記外部のケーブルから前記コネクタを取り外した後に、前記放射線撮像装置から前記放射線検出パネルを速やかに取り出すことが可能となる。
【0022】
また、前記接続部にシート部材を設けて、該接続部の剛性の確保と前記接続部の保護とを図ってもよい。
【0023】
さらに、前記電子部品が前記封止保護膜により密封されている場合に、前記支持基板上に前記電子部品を配置し、前記支持基板における前記電子部品の近傍にシート部材を設けてもよい。これにより、前記電子部品の剛性が確保され、前記電子部品を曲げ等から保護することができる。
【0024】
この場合、導電性を有するシート部材であれば、該シート部材が前記電子部品や前記コネクタの電磁シールドとして機能するので、電磁ノイズの低減を図ることができる。
【0025】
なお、上述したシート部材は、前記電子部品から発生した熱を放熱する放熱部材として機能させてもよい。
【0026】
また、前記接続部に前記電子部品を設ける場合に、前記接続部に対して前記電子部品と前記放熱部材とを装着するか、又は、前記接続部に対して前記電子部品と前記放熱部材とを積層することが望ましい。これにより、前記電子部品の熱を効率よく外部に放熱することができる。
【0027】
さらに、前記シンチレータ及び前記光検出基板が互いに分離可能な状態で前記支持基板に積層されていれば、前記シンチレータ及び前記光検出基板の少なくとも一方を修理又は交換する際に、前記シンチレータと前記光検出基板とを容易に分離することができ、修理又は交換の作業が容易になる。
【0028】
なお、前記シンチレータと前記光検出基板とを、非接着又は非粘着の状態で積層させるか、弱粘着剤を用いて粘着させるか、あるいは、光可塑性又は熱可塑性の接着剤を用いて接着させれば、修理時又は交換時における分離が容易になる。
【0029】
さらに、前記封止保護膜が導電性の部材を含み構成されていれば、防湿性の向上と、電磁ノイズの低減とを共に実現することができる。なお、前記導電性の部材は、例えば、アルミ箔等の金属膜や、金属フィラーが混練された樹脂膜であればよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、シンチレータ及び光検出基板の少なくとも一方の修理又は交換が可能となるように、前記シンチレータ及び前記光検出基板を封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る電子カセッテ(放射線撮像装置)を用いた放射線撮像システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る放射線検出パネルの斜視図である。
【図3】放射線検出パネル内部の平面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5Aは、密封前の放射線検出パネル(放射線検出器)の状態を示す断面図であり、図5Bは、袋状の封止保護膜(袋体)に放射線検出器を収容した状態を示す断面図である。
【図6】図6Aは、袋体を開口部を介して排気する状態を示す断面図であり、図6Bは、開口部を熱溶着して封止した状態を示す断面図である。
【図7】図7Aは、カッターによる開封前の放射線検出パネルの状態を示す断面図であり、図7Bは、カッターの刃先を切込部に押し当てた状態を示す断面図である。
【図8】図8Aは、カッターの刃先で切込部を切り裂いた状態を示す断面図であり、図8Bは、切込部近傍が開封された状態を示す断面図である。
【図9】加熱により熱溶着部を剥離させる状態を示す断面図である。
【図10】図1の電子カセッテの電気的な概略構成図である。
【図11】図11Aは、封止保護膜の一部がアルミ箔等の金属膜である場合を示す要部断面図であり、図11Bは、熱溶着部を支持基板の周縁部に形成した場合を示す要部断面図である。
【図12】図12A及び図12Bは、光検出基板と熱溶着部との間に複数の切込部及びシート部材をそれぞれ設けた場合を示す要部断面図である。
【図13】図13Aは、電子部品とシート部材とを導電性部材で接続した場合を示す要部断面図であり、図13Bは、フラットケーブルに電子部品及びシート部材を配設した場合を示す要部断面図である。
【図14】図14Aは、連結されたコネクタに電子部品を装着した場合を示す要部断面図であり、図14Bは、連結されたコネクタ及び電子部品が封止保護膜により封止された場合を示す要部断面図である。
【図15】図15A及び図15Bは、接続部に対して電子部品及びシート部材を積層配置した場合を示す要部断面図である。
【図16】支持基板と光検出基板との間、及び、光検出基板とシンチレータとの間を接着層又は粘着層を用いてそれぞれ密着させた場合を示す断面図である。
【図17】シンチレータ及び光検出基板が積層された支持基板の上面のみを封止した場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る放射線検出パネル及び放射線撮像装置の好適な実施形態について、図1〜図17を参照しながら、詳細に説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る電子カセッテ(放射線撮像装置)18を有する放射線撮像システム10の構成図である。
【0034】
放射線撮像システム10は、所定の撮影条件に従った線量からなる放射線12を患者等の被写体14に照射するための放射線源16と、本実施形態に係る電子カセッテ18と、該電子カセッテ18によって検出された放射線12に基づく放射線画像情報を表示する表示装置20と、放射線源16、電子カセッテ18及び表示装置20を制御するコンソール22とを備える。コンソール22と、放射線源16、電子カセッテ18及び表示装置20との間は、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.11.a/g/n等の無線LAN(Local Area Network)、又は、ミリ波を用いた無線通信による信号の送受信が行われる。なお、コンソール22には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像情報やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)24が接続され、また、RIS24には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)26が接続される。
【0035】
電子カセッテ18は、被写体14を透過した放射線12を検出して放射線画像情報に変換する放射線検出パネル28と、放射線検出パネル28の電源であるバッテリ34と、該バッテリ34から供給される電力により放射線検出パネル28を駆動制御する制御部30と、放射線検出パネル28によって検出した放射線12の情報を含む信号をコンソール22との間で送受信する送受信機32とを収容する。バッテリ34は、放射線検出パネル28、制御部30及び送受信機32に電力を供給する。
【0036】
制御部30は、アドレス信号発生部36、画像メモリ38及びIDメモリ40を備える。アドレス信号発生部36は、放射線検出パネル28にアドレス信号を供給して、該放射線検出パネル28から放射線画像情報を示す画像信号(電気信号)を出力させる。画像メモリ38は、出力された画像信号の示す放射線画像情報を記憶する。IDメモリ40は、電子カセッテ18を特定するためのID情報を記憶する。なお、送受信機32は、IDメモリ40に記憶されたID情報及び画像メモリ38に記憶された放射線画像情報を無線通信によりコンソール22に送信する。
【0037】
放射線検出パネル28は、図2〜図4に示すように、被写体14(図1参照)を透過した放射線12を可視光に一旦変換するシンチレータ46と、可視光を電気信号に変換する光検出基板44と、光検出基板44及びシンチレータ46が配置されるガラス基板等の支持基板42とを有し、支持基板42、光検出基板44及びシンチレータ46は、封止保護膜48によって封止(密封)されている。この場合、図4に示すように、放射線12の照射方向に沿って、シンチレータ46、光検出基板44及び支持基板42が順に配置されている。すなわち、支持基板42上に光検出基板44及びシンチレータ46が順に積層されている。
【0038】
なお、支持基板42、光検出基板44及びシンチレータ46は、封止保護膜48により封止されていない状態では、互いに分離可能である。従って、図2〜図4の構成では、支持基板42上に光検出基板44が載置され、該光検出基板44にシンチレータ46が載置されている。また、図3の平面視で、シンチレータ46は、光検出基板44よりも小さなサイズとなっているが、シンチレータ46と光検出基板44とを略同じサイズとしてもよいことは勿論である。
【0039】
シンチレータ46は、CsI:Tl(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)又はGOS(GdS)等の蛍光体から構成される。なお、図4では、CsI:Tlを真空蒸着法で短冊状の柱状結晶構造に形成したシンチレータ46を図示している。
【0040】
光検出基板44は、アモルファスシリコン(a−Si)等の物質からなる複数の固体検出素子(以下、画素100(図10参照)ともいう。)が形成された光電変換層50と、薄膜トランジスタ(以下、TFT102(図10参照)という。)のアレイが形成されたTFT層52とを積層することにより構成される。すなわち、光検出基板44は、各画素100が形成された光電変換層50を、行列状のTFT102のアレイであるTFT層52の上に配置した構造を有する。各画素100は、シンチレータ46で発生した可視光を電気信号に変換した後に電荷として蓄積し、各TFT102は、各行毎に順次オンにすることにより前記電荷を画像信号として読み出す。
【0041】
封止保護膜48は、少なくともシンチレータ46及び光検出基板44を被覆すると共に、放射線12を透過させ、且つ、少なくとも画素100の感度波長(可視光の波長)に対して遮光性を有する材料からなる。ここで、「封止」とは、放射線検出パネル28の防水性、防湿性及び耐衝撃性を向上させるために、放射線検出パネル28の一部を被覆する場合や、放射線検出パネル28全体を封止する場合を含むが、本実施形態においては、少なくともシンチレータ46及び光検出基板44を「密封」できればよい。なお、放射線検出パネル28は、封止保護膜48が存在しない状態でも、放射線検出器としての構成を具備しているので、以下の説明では、放射線検出パネル28から封止保護膜48を除いた部分の総称を放射線検出器68という。
【0042】
支持基板42には、光検出基板44を制御すると共に、光電変換層50からTFT層52を介して電気信号を読み出すASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の電子部品54もCOG(Chip on glass)技術により配置されている。従って、電子部品54も封止保護膜48により密封されている。
【0043】
支持基板42における電子部品54近傍の箇所には、該電子部品54と電気的に接続されるフラットケーブル56の基端部が固定されている。この場合、フラットケーブル56は、封止保護膜48から引き出され、その先端部は、制御部30及びバッテリ34と電気的に接続されている。従って、フラットケーブル56は、放射線検出パネル28と制御部30及びバッテリ34(図1参照)との間を接続する接続部59として機能する。
【0044】
この結果、バッテリ34は、フラットケーブル56を介して放射線検出パネル28に電力を供給することが可能になる。また、制御部30のアドレス信号発生部36は、フラットケーブル56を介して電子部品54にアドレス信号を供給することができる。さらに、電子部品54は、前記アドレス信号に従って、光検出基板44から画像信号を読み出し、読み出した画像信号をフラットケーブル56を介して制御部30に出力することができる。
【0045】
なお、フラットケーブル56の基端部を支持基板42から剥離させるか、先端部における制御部30及びバッテリ34との接続を解除することで、制御部30と放射線検出パネル28との間の信号の送受信やバッテリ34から放射線検出パネル28への電力供給が停止すると共に、電子カセッテ18に対する放射線検出パネル28の出し入れが容易となる。
【0046】
前述したように、支持基板42、光検出基板44、シンチレータ46及び電子部品54が封止保護膜48により被覆された状態で密封されているので、図2及び図4に示すように、封止保護膜48における光検出基板44の箇所は、外方に向かって膨出する膨出部71とされ、シンチレータ46の箇所は、膨出部71から外方に向かってさらに膨出し、且つ、放射線12が照射される膨出部72とされている。また、電子部品54は、図3に示すように、支持基板42に複数設けられているので、封止保護膜48における各電子部品54の箇所は、外方に向かって膨出した複数の膨出部76とされている。
【0047】
そして、封止保護膜48には、各膨出部71、72、76を避けるように溝状の切込部74が形成されている。図2〜図4には、膨出部71、72を囲繞するように直線状の4つの切込部74が封止保護膜48に形成されている場合を図示している。一方、支持基板42における各切込部74と対向する箇所には、アルミニウム等の金属のシート体からなる保護部材70が配設されている。なお、保護部材70は、図3の平面視で示すように、切込部74よりも幅広で且つ長尺である。また、シンチレータ46及び光検出基板44と各電子部品54との間に配設された保護部材70は、各電子部品54の近傍に配置されているので、各電子部品54に対する電磁シールド部材及び放熱部材としても機能する。なお、切込部74は、図4に示すように、保護部材70にまで到達しない程度の深さに形成されている。
【0048】
ここで、封止保護膜48による支持基板42、光検出基板44、シンチレータ46及び電子部品54の密封(封止)について、図5A〜図6Bを参照しながら説明する。
【0049】
封止保護膜48は、図5Bに示すように、元々は、開口部78を有する袋体90からなる。そのため、支持基板42、光検出基板44、シンチレータ46及び電子部品54を密封する場合には、先ず、図5Aに示す密封前の放射線検出器68を開口部78を介して袋体90の内部に挿入する(図5B参照)。この場合、フラットケーブル56は、開口部78から外部に引き出しておく。
【0050】
次に、放射線検出器68が挿入された袋体90を図示しない真空容器内に配置し、その後、前記真空容器内を負圧状態とすることにより(前記真空容器の真空引きを行うことにより)、図6Aに示すように、袋体90の内部を開口部78を介して排気する。これにより、支持基板42、光検出基板44、シンチレータ46及び電子部品54と袋体90の内側とが空気層を介さずに接触(密着)する。
【0051】
次に、図6Bに示すように、封止保護膜48における開口部78の箇所を熱溶着することにより、支持基板42、光検出基板44、シンチレータ46及び電子部品54を密封する。これにより、封止保護膜48の開口部78側は、熱溶着により互いに接合して他の箇所よりも薄肉となった熱溶着部80、82として形成される。この場合、フラットケーブル56は、開口部78を介して外部に引き出されているので、熱溶着部80、82に狭持された状態で該熱溶着部80、82と接合される。
【0052】
なお、切込部74は、放射線検出器68を袋体90に収容する前に該袋体90の外表面に予め設けてもよいし、あるいは、熱溶着部80、82による密封後、図示しない工具等を用いて封止保護膜48の外表面の一部を切除又は変形することにより設けてもよい。
【0053】
上述した封止保護膜48の具体的な材質や厚みについては、特許文献2に開示されているので、その詳細な説明については省略する。また、特許文献2では、封止保護膜を用いて放射線検出器全体に対して熱溶着を行っている。これに対して、本実施形態では、開口部78にのみ熱溶着部80、82が形成されるので、特許文献2の熱溶着の技術を適用する場合には、該開口部78に対してのみ熱溶着を施せばよい。
【0054】
以上のように構成される放射線検出パネル28において、該放射線検出パネル28の製造時又は使用時に不具合が発生した場合、具体的には、放射線検出パネル28を構成する支持基板42、光検出基板44、シンチレータ46、電子部品54及び接続部59の不具合(例えば、シンチレータ46を構成するCsI:Tlの柱状結晶構造の割れ、光検出基板44を構成する画素100やTFT102の故障、電子部品54の故障、あるいは、接続部59を構成するフラットケーブル56の断線)が発生した場合に、不具合が発生した部品を修理又は交換する必要がある。
【0055】
そこで、本実施形態では、図7A〜図9に示す順序で封止保護膜48を開封することにより、修理又は交換の対象となる部品を速やかに取り出すことが可能である。
【0056】
先ず、図7Aに示すように、放射線検出パネル28の製造業者又は修理業者は、各切込部74のうち、いずれか1つの切込部74の上方にカッターナイフ等の刃物92を位置決めし、次に、該刃物92を下降させて、図7Bに示すように、刃物92の刃先を該1つの切込部74を介して保護部材70に押し当てる。これにより、前記刃先が押し当てられた、封止保護膜48における切込部74と保護部材70との間の箇所が切り裂かれることになる。
【0057】
次に、前記業者は、刃物92の刃先を保護部材70に押し当てながら切込部74の長手方向(図2及び図3に示す切込部74及び保護部材70の長手方向)に沿って該刃物92を移動させる。この結果、図8Aに示すように、切り裂かれた封止保護膜48の箇所は、外部から空気が侵入して僅かに浮き上がる。
【0058】
なお、上述のように、刃物92の刃先と支持基板42との間に保護部材70が介挿され、該保護部材70は、切込部74よりも幅広であるため、刃物92の刃先を保護部材70に押し当てたり、あるいは、該刃先を保護部材70に押し当てながら切込部74の長手方向に沿って刃物92を移動させても、前記刃先が支持基板42に到達したり、あるいは、放射線検出器68の他の部品に接触することはない。従って、保護部材70以外の他の部品が傷つくことを回避することができる。
【0059】
そして、刃物92による切込部74への切り込みが完了し、前記業者が封止保護膜48及び保護部材70から刃物92を離間させれば、封止保護膜48は、侵入した空気により切込部74及び保護部材70を中心として図8Bの左右方向に浮き上がり、開封状態となる。最後に、図9に示すように、熱溶着部80、82を加熱して該熱溶着部80、82を互いに離間(剥離)させる。これにより、放射線検出器68から封止保護膜48を剥離することができ、修理又は交換の対象となる部品を取り出すことが可能となる。
【0060】
なお、封止保護膜48自体は、放射線検出器68を構成する各部品と比較して安価であるため、開封後の封止保護膜48(袋体90)は使い捨てとし、修理後又は交換後の放射線検出器68に対して、新たな袋体90を用いて、図5A〜図6Bに示す順で再度密封し、放射線検出パネル28を構成すればよい。従って、安価な防湿構造の放射線検出パネル28を製造することができる。
【0061】
また、切込部74は、封止保護膜48の外表面のどの箇所に設けられても良い訳ではなく、シンチレータ46、光検出基板44及び電子部品54(によって形成される膨出部71、72、76)や、支持基板42上に形成された図示しない配線や、フラットケーブル56を避けるように設ける必要がある。すなわち、これらの箇所と対向するように封止保護膜48に切込部74を設けると、該切込部74に刃物92の刃先を押し当てて封止保護膜48を開封した場合に、上述した部品が傷付いて、故障や断線等の原因になるおそれがあるからである。
【0062】
従って、保護部材70と対向するように切込部74を設ければ、該切込部74に刃物92の刃先を押し当てたときに、保護部材70が前記刃先を受け止めるので、上記の不具合の発生を回避することができる。換言すれば、封止保護膜48における任意の箇所に切込部74を設けたい場合には、該切込部74と対向するように、放射線検出器68の所定の箇所に保護部材70を設ければよい。例えば、前記配線を保護するために、該配線上に保護部材70を設け、該保護部材70と対向するように、封止保護膜48の所定の箇所に切込部74を設けることも可能である。
【0063】
図10は、図1の電子カセッテ18の電気的な概略構成図である。
【0064】
電子カセッテ18は、ライン走査駆動部108、増幅器112、サンプルホールド回路114、マルチプレクサ116及びA/D変換器120をさらに有し、これらの構成要素は、電子部品54(図3及び図4参照)に内蔵可能である。なお、支持基板42には、複数の電子部品54が配置されているので(図3参照)、これらの電子部品54を、ライン走査駆動部108用の電子部品54と、増幅器112、サンプルホールド回路114、マルチプレクサ116及びA/D変換器120用の電子部品54とに分けてもよい。
【0065】
前述したように、光検出基板44は、各画素100が形成された光電変換層50(図3及び図4参照)を、行列状のTFT102のアレイ(TFT層52)の上に配置した構造を有する。そのため、図10に示すように、各画素100に接続されるTFT102には、行方向と平行に延びるゲート線104と、列方向と平行に延びる信号線106とが接続される。各ゲート線104は、ライン走査駆動部108に接続され、各信号線106は、マルチプレクサ116に接続される。ゲート線104には、行方向に配列されたTFT102をオンオフ制御する制御信号Von、Voffがライン走査駆動部108から供給される。この場合、ライン走査駆動部108は、ゲート線104を切り替える複数のスイッチSW1と、スイッチSW1の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ110とを備える。アドレスデコーダ110には、制御部30のアドレス信号発生部36(図1参照)から接続部59(図2〜図4参照)を介してアドレス信号が供給される。
【0066】
また、信号線106には、列方向に配列されたTFT102を介して各画素100に保持されている電荷が流出する。この電荷は、増幅器112によって増幅される。増幅器112には、サンプルホールド回路114を介してマルチプレクサ116が接続される。マルチプレクサ116は、信号線106を切り替える複数のスイッチSW2と、スイッチSW2の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ118とを備える。アドレスデコーダ118には、制御部30からアドレス信号が供給される。マルチプレクサ116には、A/D変換器120が接続され、A/D変換器120によってデジタル信号に変換された放射線画像情報が接続部59を介して制御部30に供給される。
【0067】
本実施形態に係る放射線検出パネル28を備える電子カセッテ18は、基本的には以上のように構成される。なお、該電子カセッテ18を含めた放射線撮像システム10の動作、すなわち、被写体14に対する放射線撮像方法については、特許文献2に開示されている撮像方法と同様であるため、具体的な説明については省略する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る放射線検出パネル28及び電子カセッテ18によれば、シンチレータ46及び光検出基板44を避けるように、少なくともシンチレータ46及び光検出基板44が熱溶着により密封されている。これにより、放射線検出パネル28の使用中は、シンチレータ46及び光検出基板44が確実に密封されるので、シンチレータ46の防湿性が十分に確保される。
【0069】
また、シンチレータ46及び光検出基板44の少なくとも一方の修理又は交換が必要となった場合には、切込部74を介して封止保護膜48を開封するだけで、封止保護膜48からシンチレータ46及び光検出基板44を容易に取り出すことができる。
【0070】
従って、本実施形態によれば、シンチレータ46及び光検出基板44の少なくとも一方の修理又は交換が可能となるように、シンチレータ46及び光検出基板44を封止することができる。このように放射線検出パネル28を構成することで、該放射線検出パネル28をユニット化することができ、製造管理の容易化や組立て適正の向上も図ることができる。
【0071】
また、封止保護膜48が少なくともシンチレータ46及び光検出基板44を熱溶着により密封しているので、シンチレータ46及び光検出基板44を確実に密封することができる。
【0072】
具体的に、本実施形態では、シンチレータ46、光検出基板44及び支持基板42を開口部78を介して袋体90の内部に収容した状態で、袋体90の内部を開口部78を介して排気した後に、該開口部78を熱溶着により密封して、封止保護膜48を形成するので、シンチレータ46等の防湿性を容易に確保することができる。
【0073】
さらに、平面視で、封止保護膜48におけるシンチレータ46及び光検出基板44の外周部近傍、又は、シンチレータ46及び光検出基板44と熱溶着部80、82との間に切込部74を設けているので、切込部74を介して封止保護膜48を開封すれば、開封された切込部74の箇所からシンチレータ46及び光検出基板44を速やかに取り出すことができる。
【0074】
さらにまた、支持基板42における切込部74と対向する箇所に、外部から切込部74に刃物92を押し当てたときに該支持基板42を保護する保護部材70が配設されているので、支持基板42等を傷つけることなく、封止保護膜48を開封することができる。なお、電子部品54の近傍に金属のシート体からなる保護部材70を配設することにより、該保護部材70が電子部品54の電磁シールド部材及び放熱部材として機能するので、電磁ノイズの低減と電子部品54から発生する熱の放熱とを実現することができる。
【0075】
また、電子部品54も封止保護膜48により密封されているので、該電子部品54の防湿性も確保することができる。
【0076】
さらに、シンチレータ46及び光検出基板44が互いに分離可能な状態で支持基板42に積層されているので、シンチレータ46及び光検出基板44の少なくとも一方を修理又は交換する際に、シンチレータ46と光検出基板44とを容易に分離することができ、修理又は交換の作業が容易になる。
【0077】
次に、放射線検出パネル28の変形例について、図11A〜図17を参照しながら説明する。
【0078】
図11Aは、封止保護膜48がシンチレータ保護層122cと、反射層(金属膜)122bと、反射保護層122aとを積層して構成される場合を図示したものである。
【0079】
シンチレータ保護層122cは、防水性及び防湿性と、電子部品54及びフラットケーブル56と反射層122bとの間の電気絶縁とを確保するために用いられる樹脂膜である。反射層122bは、アルミ箔等の金属膜からなり、防水性及び防湿性の確保と共に、電磁ノイズの低減や、シンチレータ46で変換された可視光の光検出基板44側への反射や、外光に対する遮光や、電子部品54から発生する熱を外部に放熱させるために用いられる。反射保護層122aは、シンチレータ保護層122c及び反射層122bを保護するために用いられる樹脂膜である。
【0080】
このように封止保護膜48を構成することにより、シンチレータ46等の防湿性の向上と、反射層122bで反射した可視光の光検出基板44への入射による各画素100の感度の向上と、電子部品54に対する電磁ノイズの低減と、電子部品54から発生する熱の外部への放熱とを一挙に実現することができる。
【0081】
なお、図11Aでは、封止保護膜48の一部がアルミ箔等の金属膜からなる反射層122bとなっているが、反射層122bに代替して金属フィラーが混練された樹脂膜を用いてもよいし、あるいは、金属フィラーを混練した樹脂膜から封止保護膜48を構成してもよい。この場合でも、上記の各効果が得られる。
【0082】
図11Bは、支持基板42の周縁部において、封止保護膜48を上下方向から熱溶着することにより熱溶着部80、82を形成した場合を図示している。この場合でも、シンチレータ46等の防湿性を確保することができる。
【0083】
図12Aは、電子部品54と熱溶着部80との間にも切込部74及び保護部材70を設けた場合を図示したものである。この場合でも、上述した本実施形態の各効果が得られる。また、図12Aの構成では、電子部品54の左右両側に保護部材70が配置されているので、電磁ノイズのさらなる低減と、電子部品54からの熱の放熱の促進とを実現することができる。
【0084】
図12Bは、支持基板42の裏面(電子部品54の載置面とは反対側の面)に切込部74と対向するようにアルミニウム等の金属のシート体からなるシート部材124を配置した点で、図12Aの構成とは異なる。
【0085】
この場合、刃物92の刃先が切込部74を介して支持基板42を押し当たることにより、該支持基板42の表面が傷つく可能性はあるが、支持基板42の裏面にシート部材124を配設したことにより、該シート部材124が裏打ち部材として機能し、この結果、刃物92を押し当てたときの電子部品54、接続部59及び支持基板42の剛性が向上して、電子部品54及び接続部59(フラットケーブル56)を曲げ等から適切に保護することができる。また、シート部材124が金属のシート体からなるので、電子部品54に対する電磁ノイズの低減や、電子部品54からの熱の放熱も実現することができる。
【0086】
図13Aは、上述したシート部材124と同じ材質のシート部材126が2つの切込部74及び電子部品54と対向するように、支持基板42の裏面に配設された点で、図12Bの構成とは異なる。
【0087】
この場合、シート部材126には、支持基板42を貫通して電子部品54に接触する導電性部材128が接続されている。これにより、上述した図12Bと同様の効果が得られる。特に、シート部材126は、シート部材124よりも幅広で且つ電子部品54と対向するように配設され、しかも、導電性部材128を介して電子部品54と接触しているので、電子部品54に対する電磁ノイズをさらに低減すると共に、電子部品54からの熱も一層効率よく放熱することができる。また、シート部材126は、シート部材124よりも幅広の裏打ち部材であるため、刃物92を押し当てたときの電子部品54、接続部59及び支持基板42の剛性をさらに向上させて、電子部品54及びフラットケーブル56を曲げ等から確実に保護することが可能となる。
【0088】
図13Bは、フラットケーブル56の上面に電子部品54がCOF(Chip on film、Chip on flexible)技術により配設されると共に、該フラットケーブル56の底面に電子部品54と対向するようにアルミニウム等の金属のシート体からなるシート部材136が配設されている点で、図1〜図13Aの構成とは異なる。
【0089】
これにより、電子部品54からの熱をフラットケーブル56及びシート部材136を介して効率よく外部に放熱することができる。また、電子部品54に対する電磁ノイズも低減することができる。さらに、シート部材136も電子部品54及びフラットケーブル56に対する裏打ち部材として機能するので、電子部品54及びフラットケーブル56の剛性が向上して曲げ等から適切に保護することができる。
【0090】
図14Aの構成では、フラットケーブル56の先端部にコネクタ58が設けられ、フラットケーブル56とコネクタ58とによって接続部59が構成されている。
【0091】
この場合、電子カセッテ18は、制御部30及びバッテリ34(図1参照)と電気的に接続されるフラットケーブル60をさらに有し、該フラットケーブル60の先端部にはコネクタ62が設けられている。従って、例えば、制御部30及びバッテリ34側のコネクタ62がオス型端子であると共に、放射線検出パネル28側のコネクタ58がメス型端子であれば、コネクタ58、62を嵌合させることによりフラットケーブル56、60が電気的に接続される。
【0092】
また、コネクタ58の上面には電子部品54がCOF技術により配設されると共に、該コネクタ58の底面にはアルミニウム等の金属のシート体からなるシート部材130が配設されている。一方、コネクタ62の底面にもシート部材130と同じ材質のシート部材132が配設されている。
【0093】
ここで、コネクタ58、62が嵌合することにより、バッテリ34は、フラットケーブル60、コネクタ62、58及びフラットケーブル56を介して放射線検出パネル28に電力を供給することが可能になる。また、制御部30のアドレス信号発生部36は、フラットケーブル60、コネクタ62、58及びフラットケーブル56を介して電子部品54にアドレス信号を供給することができる。さらに、電子部品54は、前記アドレス信号に従って、光検出基板44から画像信号を読み出し、読み出した画像信号をコネクタ58、62及びフラットケーブル60を介して制御部30に出力することができる。
【0094】
また、図14Aの構成では、コネクタ58、62が嵌合することにより、電子部品54からの熱をコネクタ58、62及びシート部材130、132を介して効率よく外部に放熱することができる。さらに、電子部品54に対する電磁ノイズも低減することができる。さらに、シート部材130、132も電子部品54、コネクタ58、62及びフラットケーブル56、60に対する裏打ち部材として機能するので、電子部品54、コネクタ58、62及びフラットケーブル56、60の剛性が向上して曲げ等から適切に保護することができる。
【0095】
図14Bは、コネクタ58、62が嵌合された状態で、コネクタ58、62及びフラットケーブル60の一部が共に封止保護膜48により密封されている点で、図14Aの構成とは異なる。
【0096】
この場合、コネクタ58と支持基板42との間には、該コネクタ58及び切込部74と対向するように、アルミニウム等の金属のシート体からなり、且つ、上述した保護部材としても機能するシート部材134が介挿されている。従って、電子部品54からの熱は、コネクタ58、62及びシート部材132、134を介して放熱される。また、支持基板42における周縁部から切込部74の箇所にかけてシート部材132、134が配置されているので、刃物92の刃先を切込部74を介してシート部材134に押し当てたときの電子部品54及びコネクタ58、62の剛性を高めることができ、電子部品54及びコネクタ58、62を曲げ等から適切に保護することができる。
【0097】
図15Aでは、フラットケーブル56に対して電子部品54及びシート部材136を積層して配置した点で、図13Bの構成とは異なり、一方で、図15Bでは、フラットケーブル56に対してコネクタ58、電子部品54及びシート部材130を積層して配置すると共に、フラットケーブル60に対してコネクタ62及びシート部材132を積層して配置した点で、図14Aの構成とは異なる。図15A及び図15Bのような積層構造であっても、図13B及び図14Aの構成と同様の効果がそれぞれ得られる。
【0098】
図16は、支持基板42と光検出基板44とを弱粘着層140a、あるいは、光可塑性若しくは熱可塑性の接着層140bを介して密着させると共に、光検出基板44とシンチレータ46とを弱粘着層142a、あるいは、光可塑性若しくは熱可塑性の接着層142bを介して密着させた点で、図1〜図15Bの構成とは異なる。
【0099】
この場合、弱粘着層140a、142a又は接着層140b、142bを介して密着させることにより、放射線検出パネル28の修理又は交換の作業時に、支持基板42と、光検出基板44と、シンチレータ46とを容易に分離させることができ、修理又は交換の作業を効率よく進めることができる。
【0100】
図17は、支持基板42の上面(シンチレータ46及び光検出基板44が配置されている表面)をシート状の封止保護膜48で被覆し、該封止保護膜48の周縁部(支持基板42の周縁部)を熱溶着により封止して、熱溶着部150を形成した場合を図示したものである。従って、放射線検出器68の各構成要素が配置された支持基板42における片面側(上面側)のみ封止保護膜48により密封されている。この場合、上方から支持基板42の上面を封止保護膜48で覆い、該封止保護膜48と放射線検出器68の各構成要素とを密着させた状態で支持基板42の周縁部を熱溶着することにより熱溶着部150を形成する。
【0101】
図17の構成においても、上述した本実施形態の効果を容易に得ることができる。また、シート状の封止保護膜48を用いているので、放射線検出器68全体を袋体90で被覆する封止保護膜48(図1〜図16参照)と比較して、封止保護膜48に使用されるシートの量が少なくなり、該封止保護膜48をより安価に製造することができる。
【0102】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
10…放射線撮像システム
12…放射線
14…被写体
18…電子カセッテ
28…放射線検出パネル
42…支持基板
44…光検出基板
46…シンチレータ
48…封止保護膜
50…光電変換層
52…TFT層
54…電子部品
56、60…フラットケーブル
58、62…コネクタ
59…接続部
68…放射線検出器
70…保護部材
74…切込部
78…開口部
80、82、150…熱溶着部
90…袋体
92…刃物
122b…反射層
124、126、130、132、134、136…シート部材
128…導電性部材
140a、142a…弱粘着層
140b、142b…接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を可視光に変換するシンチレータと、
前記可視光を電気信号に変換する光検出基板と、
前記放射線を透過させる材料からなり、少なくとも前記シンチレータ及び前記光検出基板を封止する封止保護膜と、
を有し、
前記封止保護膜には、該封止保護膜を開封して前記封止保護膜から前記シンチレータ及び前記光検出基板を取り出すための切込部が設けられ、
前記封止保護膜は、前記シンチレータ及び前記光検出基板を避けるように、少なくとも前記シンチレータ及び前記光検出基板を熱溶着により密封することを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項2】
請求項1記載のパネルにおいて、
前記シンチレータ及び前記光検出基板が積層される支持基板をさらに有し、
前記封止保護膜は、前記シンチレータ、前記光検出基板及び前記支持基板を出し入れ可能な開口部が形成された袋状に構成され、
前記シンチレータ、前記光検出基板及び前記支持基板を前記開口部を介して袋状の前記封止保護膜内に収容した状態で、前記封止保護膜の内部を前記開口部を介して排気した後に、該開口部を熱溶着により密封することを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項3】
請求項1記載のパネルにおいて、
前記シンチレータ及び前記光検出基板が積層される支持基板をさらに有し、
前記封止保護膜は、前記支持基板に積層された前記シンチレータ及び前記光検出基板を被覆可能なシート状に構成され、
前記シンチレータ及び前記光検出基板が前記支持基板に積層された状態で、シート状の前記封止保護膜で前記シンチレータ及び前記光検出基板を被覆した後に、前記封止保護膜の周縁部を熱溶着により密封することを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項4】
請求項2又は3記載のパネルにおいて、
前記切込部は、平面視で、前記封止保護膜における前記シンチレータ及び前記光検出基板の外周部近傍、又は、前記シンチレータ及び前記光検出基板と前記封止保護膜の熱溶着部分との間に設けられていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項5】
請求項4記載のパネルにおいて、
前記支持基板における前記切込部と対向する箇所には、外部から前記切込部に刃物を押し当てたときに該支持基板を保護する保護部材が配設されていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のパネルにおいて、
前記光検出基板と電気的に接続され、且つ、前記封止保護膜の熱溶着部分から外部に引き出されるように設けられた接続部をさらに有することを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項7】
請求項6記載のパネルにおいて、
前記接続部と電気的に接続され、前記光検出基板を駆動させることにより前記電気信号を前記接続部を介して外部に出力する電子部品をさらに有することを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項8】
請求項7記載のパネルにおいて、
前記電子部品は、前記シンチレータ及び前記光検出基板と共に前記封止保護膜により密封されているか、又は、前記接続部に設けられていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項9】
請求項8記載のパネルにおいて、
前記接続部は、前記熱溶着部分から外部に引き出されたフラットケーブルであるか、外部のケーブルに対して着脱可能なコネクタであるか、あるいは、前記フラットケーブル及び該フラットケーブルの先端部分に設けられた前記コネクタであることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項10】
請求項9記載のパネルにおいて、
前記接続部には、該接続部の剛性を確保して前記接続部を保護するシート部材が設けられていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項11】
請求項8記載のパネルにおいて、
前記電子部品が前記封止保護膜により密封されている場合に、前記電子部品は、前記支持基板上に配置され、
前記支持基板における前記電子部品の近傍には、前記電子部品の剛性を確保して該電子部品を保護するシート部材が設けられていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項12】
請求項10又は11記載のパネルにおいて、
前記シート部材は、導電性を有することを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のパネルにおいて、
前記シート部材は、前記電子部品から発生した熱を放熱する放熱部材として機能することを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項14】
請求項13記載のパネルにおいて、
前記接続部に前記電子部品が設けられる場合に、前記接続部に対して前記電子部品と前記放熱部材とが装着されているか、又は、前記接続部に対して前記電子部品と前記放熱部材とが積層されていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項15】
請求項2〜14のいずれか1項に記載のパネルにおいて、
前記シンチレータ及び前記光検出基板は、互いに分離可能な状態で前記支持基板に積層されていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のパネルにおいて、
前記封止保護膜は、導電性の部材を含み構成されていることを特徴とする放射線検出パネル。
【請求項17】
放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を電気信号に変換する光検出基板と、前記放射線を透過させる材料からなり且つ少なくとも前記シンチレータ及び前記光検出基板を封止する封止保護膜とを有する放射線検出パネルを備え、
前記封止保護膜には、該封止保護膜を開封して前記封止保護膜から前記シンチレータ及び前記光検出基板を取り出すための切込部が設けられ、
前記封止保護膜は、前記シンチレータ及び前記光検出基板を避けるように、少なくとも前記シンチレータ及び前記光検出基板を熱溶着により密封することを特徴とする放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−112699(P2012−112699A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260029(P2010−260029)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】