説明

放射線検出器

【課題】検出感度を向上させること及び簡単に放射能の検出位置を特定することができることである。
【解決手段】円盤状又は概略円盤状のシンチレータ2と、前記シンチレータ2の側周面に均等に配設された複数の光検出部3とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータを用いた放射線検出器に関し、特にシンチレータへの放射線の入射位置を特定することができる放射線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の放射能検出器としては、例えば特許文献1に示すように、矩形状のシンチレータの側面に光電子増倍管を直接、或いは、光ファイバ等のライドガイドを介在させて配設してシンチレーション光を検出し、放射線の入射位置を特定等するものがある。
【0003】
しかしながら、従来の放射線検出器は、光電子増倍管などの光検出器がシンチレータに対して対称に設けられていないため、放射線の入射位置を特定するためには、光検出器毎に、放射線の入射位置とその光強度との検量線を予め求めておく必要あるという問題がある。
【0004】
また、シンチレータが矩形状のものであると、その隅部において、発生したシンチレーション光は、側面で複数回反射してしまい、入射領域近傍が一様に発光してぼやけてしまい入射位置を特定することが困難であるという問題がある。さらに、これにより、隅部の感度が低下してしまい、感度補正が必要となるという問題もある。
【特許文献1】特開2005−91035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、シンチレータの形状に起因した感度補正を不要として検出感度を向上させること、及び簡単に放射能の検出位置を特定することができることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る放射線検出器は、円盤状又は概略円盤状のシンチレータと、前記シンチレータの側周面に均等に配設された複数の光検出部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、円盤状又は概略円盤状のシンチレータを用い、光検出部をその側周面に均等に配設しているので、従来必要であった隅部の補正処理を不要としつつ、検出感度を向上させることができ位置分解能を向上させることができる。また、上記構成により、複数の光検出部の平均値と各光検出部の出力信号との比較から、簡単に放射能の入射位置を特定することができるようになる。
【0008】
光検出部の具体的な実施の形態としては、前記光検出部が、光入射面が前記シンチレータの側周面に接触して設けられた光検出器であり、前記複数の光検出器が、前記シンチレータの側周面に均等に配設されていることが望ましい。また、前記光検出部が、先端面が前記シンチレータの側周面に接触して設けられた導波管と、前記導波管の他端部に接続された光検出器と、を備え、前記複数の光検出部の導波管が、前記シンチレータの側周面に均等に配設されていることが望ましい。
【0009】
本発明の効果を一層顕著にするためには、前記導波管の先端面が、前記シンチレータの側周面に隙間無く配設されていることが望ましい。
【0010】
放射線の入射位置を特定する具体的な実施の態様としては、検出信号が最大光強度を示す光検出部から放射線の入射位置の角度方向を特定し、前記最大光強度と前記複数の光検出部からの検出信号が示す光強度の平均に関する値とに基づいて、前記放射線の入射位置の径方向の位置を特定する入射位置特定部を備えていることが望ましい。ここで、「平均に関する値」とは、光強度の平均値、又はその平均値に関係する値、例えば光強度の総和等をいう。
【発明の効果】
【0011】
このように構成した本発明によれば、シンチレータの形状に起因した感度補正を不要として検出感度を向上させること、及び簡単に放射能の検出位置を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図1は、本実施形態に係る放射線検出器1の概略構成図であり、図2は、放射線検出器1の模式的断面図であり、図3は、放射線検出器1の情報処理装置4の機器構成図であり、図4は、その情報処理装置4の機能構成図である。
【0013】
<装置構成>
本実施形態に係る放射線検出器1は、図1及び図2に示すように、円盤状のシンチレータ2と、そのシンチレータ2の側周面に均等に配設された複数の光検出部3と、当該光検出器32からの電気信号を受信して、所定演算を行う演算装置4と、当該演算装置4での演算結果を基に、放射線の二次元画像を表示する画像表示装置5とを備えている。なお、シンチレータ2及び光検出部3は、外部からの光が侵入しないように、図示しない遮光膜で覆われている。
【0014】
以下に各部について説明する。
【0015】
シンチレータ2は、放射線が入射するとシンチレーション光(蛍光)を発するものであり、本実施形態においては、γ線が入射するとシンチレーション光を発するNaI(Tl)シンチレータやCsI(Tl)シンチレータ等である。そして、シンチレータ2は、その一方の面にγ線などの放射線が入射する放射線入射面21を有し、その側周面がそのシンチレーション光を射出する光射出面22である。当該シンチレータ21は厚さが0.5mm程度の薄型のものである。なお、シンチレータ2の放射線入射面21の反対側には、必要に応じてシンチレータ2の機械的強度を補強する補強板(図示しない)が設けられている。
【0016】
各光検出部3は、導波管としての波長変換ファイバ31と、波長変換ファイバ31に連続して設けられた光検出器32とを備えている。
【0017】
波長変換ファイバ31は、シンチレータ2で生じたシンチレーション光が入射すると異なる波長の蛍光を発生し、そのシンチレーション光を軸方向に伝達するものである。その先端面は、シンチレータ2の側周面に接触して設けられ、その後端部には、光検出器32が設けられている。また、図2に示すように、波長変換ファイバ31の径は、シンチレータ2の厚さとほぼ同じか若干小さくしている。
【0018】
そして、複数の光検出部3の波長変換ファイバ31が、前記シンチレータ2の側周面に均等に配設されている。より詳細には、波長変換ファイバ31の先端面が、シンチレータ2の側周面に周方向に隙間無く配設されている。
【0019】
光検出器32は、波長変換ファイバ31からの光を検出して、電気信号に変換するものであり、例えば光電子増倍管である。なお、本実施形態では、光検出器32から出力された電気信号は、前置増幅器や主増幅器等の増幅器(アンプ)7によりさらに増幅されるようにしている。
【0020】
情報処理装置4は、光検出器32からの電気信号を受信して、放射線の入射位置を演算等するものであり、その機器構成は、図3に示すように、CPU401、内部メモリ402、入出力インタフェース403、AD変換器404等からなる汎用又は専用のコンピュータであり、前記内部メモリ402の所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPU401やその周辺機器等が作動することにより、図4に示すように、検出信号受付部41、入射位置特定部42等として機能する。
【0021】
検出信号受付部41は、光検出器32からの検出信号を受信して、その検出信号を入射位置特定部42に出力するものである。
【0022】
入射位置特定部42は、光検出器32からの検出信号に基づいて、シンチレータ2への放射線の入射位置を特定して、その位置特定信号を画像表示装置5に出力するものである。なお、画像表示装置5は、その位置特定信号に基づいてディスプレイ上に放射線の二次元画像を表示する。
【0023】
具体的に入射位置特定部42は、検出信号が最大光強度を示す光検出部から放射線の入射位置の角度方向を特定し、最大光強度と複数の光検出部からの検出信号が示す光強度の平均値とを比較して、放射線の入射位置の径方向の位置を特定する。
【0024】
まず、放射線の入射位置の角度方向(方位)の特定について説明する。図5に示すように、シンチレータ2の領域Pに放射線が入射したとすると、図6に示すように、領域Pから最短距離にある光検出器32を光検出器Bが、全ての光検出器32の中で、最大の光強度を示す検出信号を出力することになる。このことから、入射位置特定部42は、最大強度を示す光検出器32(光検出器B)を特定して、その光検出器32が入射位置から最も近い光検出器32であると判断し、基準となる光検出器32(光検出器A)から前記光検出器32(光検出器B)が配設されている角度方向を特定する。
【0025】
次に、放射線の入射位置の径方向の位置(シンチレータ2の中心からの距離)の特定について説明する。入射位置特定部42は、前記光検出器Bの示す最大光強度と、全光検出器が示す光強度の平均値との比により放射線の入射位置の径方向の位置を特定する。
【0026】
具体的には、以下のようにして入射位置の径方向の位置を特定する。
【0027】
シンチレータ2の中央部分(中心O)に放射線が入射した際に発生したシンチレーション光の光強度をIとしたとき、光検出器A及び光検出器Bで検出される光強度は同じである。その光強度をIとすると、光の減衰の関係から以下の式が成り立つ。但し、シンチレータ2の半径をrとする。
【0028】
=I×exp(−λ×r)・・・(式1)
【0029】
次に、シンチレータ2のある部分(領域P)に放射能が入射した際に発生したシンチレーション光は、放射線が上記(式1)の場合と同じエネルギーであれば、Iである。そのとき、光検出器Bで検出される光強度をIとすると、光の減衰の関係から以下の式が成り立つ。但し、放射能の入射位置と光検出器Bとの最短距離をxとする。
【0030】
=I×exp(−λ×x)・・・(式2)
【0031】
この(式2)を変形して、
=I/exp(−λ×x)・・・(式3)
【0032】
そして、(式3)を(式1)に代入すると、
=I×exp(−λ×x)/exp(−λ×r)
=I×exp{λ(r−x)}
ln(I/I)=λr−λx
λx=λr−ln(I/I
x=r−ln(I/I)/λ
【0033】
したがって、I、I、λ、rから放射線の径方向の位置(光検出器Bからの最短距離x)が求められる。
【0034】
ところで、(式1)の状態でも(式2)の状態でも、全ての光検出器32の出力Iallは、同じであることから、光検出器32の数をn個とすると、
【0035】
=Iall/n
とおける。このことから、(式1)を求めなくても、(式2)から、
【0036】
x=r−ln{Iall/(n×I)}/λ
とすることにより、放射線の径方向の位置(光検出器Bからの最短距離x)が求められる。
【0037】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る放射線検出器1によれば、円盤状のシンチレータ2を用い、光検出部3をその側周面に隙間無く配設しているので、従来の矩形シンチレータ2で必要であった隅部の補正処理を不要としつつ、検出感度を向上させることができる。
【0038】
また、最大光強度を示す光検出器32の出力と、全光検出器32の平均出力とを比較することにより放射線の入射位置を特定することができる。このことから、各光検出器32において、放射線の入射位置と、その光強度との検量線を求める必要が無く、簡単に放射能の検出位置を特定することができる。
【0039】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0040】
例えば、前記実施形態では、シンチレータ2は円盤状のものであったが、その他、前記実施形態の効果を奏する程度の概略円盤状のものであっても良い。
【0041】
また、前記実施形態の放射線検出器1は、γ線を検出するものであったが、その他、β線やX線等を検出するものであって良い。このとき、NaI(Tl)シンチレータやCsI(Tl)シンチレータの他に各種のシンチレータを用いることができる。
【0042】
さらに、前記実施形態の波長変換ファイバ31は、シンチレータ2の側周面の周方向に隙間無く配設されているが、その他、隙間を設けて配設するようにしても良い。この場合、各波長変換ファイバ31を均等に配置する。つまり、波長変換ファイバ31の先端面が、シンチレータ2の側周面に周方向に一定間隔で接触するように設ける。
【0043】
また、波長変換ファイバ31に代えて、光ファイバを導波管として用いても良い。
【0044】
あるいは、光検出部3が、導波管を用いず、光検出器32のみからなるものであっても良い。この場合、光検出器32の光入射面を、前記シンチレータ2の側周面に接触して設ける。そして、各光検出器32をシンチレータ2の側周面に均等に配設する。
【0045】
その上、前記実施形態では、放射線検出器1が、単一層のシンチレータ2から構成されているが、シンチレータ2を複数用いて多層構造としても良い。この場合、各層のシンチレータ2の側周面に複数の光検出部3を均等に配設する。このようなものであれば、放射線の照射方向や放射線のエネルギー量などを検出することができるようになる。
【0046】
加えて、光検出器32に同時計数回路を接続して、放射線計数を行えるようにしても良い。
【0047】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る放射線検出器の側面図。
【図2】同実施形態における放射線検出器の模式端面図。
【図3】同実施形態における情報処理装置の機器構成図。
【図4】同実施形態における情報処理装置の機能構成図。
【図5】同実施形態における放射線入射位置の特定に関する図。
【図6】同実施形態における各光検出器の光強度を示す図。
【符号の説明】
【0049】
1・・・・・放射能検出器
2・・・・・シンチレータ
21・・・・放射線入射面
3・・・・・光検出部
31・・・・導波管
32・・・・光電子増倍管(光検出器)
4・・・・・情報処理装置
41・・・・入射位置特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状又は概略円盤状のシンチレータと、前記シンチレータの側周面に均等に配設された複数の光検出部と、を具備する放射能検出器。
【請求項2】
前記光検出部が、光入射面が前記シンチレータの側周面に接触して設けられた光検出器であり、
前記複数の光検出器が、前記シンチレータの側周面に均等に配設されている請求項1記載の放射能検出器。
【請求項3】
前記光検出部が、
先端面が前記シンチレータの側周面に接触して設けられた導波管と、
前記導波管の他端部に接続された光検出器と、を備え、
前記複数の光検出部の導波管が、前記シンチレータの側周面に均等に配設されている請求項1記載の放射能検出器。
【請求項4】
前記導波管の先端面が、前記シンチレータの側周面に隙間無く配設されている請求項3記載の放射能検出器。
【請求項5】
検出信号が最大光強度を示す光検出部から放射線の入射位置の角度方向を特定し、前記最大光強度と前記複数の光検出部からの検出信号が示す光強度の平均に関する値とに基づいて、前記放射線の入射位置の径方向の位置を特定する入射位置特定部を備えている請求項1、2、3又は4記載に放射能検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−157846(P2008−157846A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349136(P2006−349136)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】