説明

放射線検出器

【課題】絶縁性を確保し、検出信号のノイズを低減できる放射線検出器を提供する。
【解決手段】放射線検出器としての位置敏感型検出器10は、陰極となる筒状の外囲器15、外囲器15内の中心に沿って設置された陽極16、および外囲器15の両端に設けられ陽極16の両端と接続された一対の端子17,18を有する複数の検出部11を備える。複数の検出部11の一端の端子17を裸ワイヤ20で直列に接続する。ケース12の収容空間25に複数の検出部11の一端の端子18および裸ワイヤ20を一体に収容する。複数の検出部11の一端の端子17および裸ワイヤ20を一体に絶縁する絶縁材27を、ケース12の収容空間25に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線を検出する放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速器を用いて物質構造や原子配列の研究を行う施設では、中性子を検出する放射線検出器として位置敏感型検出器が用いられる。この位置敏感型検出器は、分析資料を覆うように多くの位置敏感型検出器が配置され、分析資料から放射状に発生する中性子を検出している。
【0003】
位置敏感型検出器の検出部は、筒状の外囲器内にこの外囲器の中心に沿って高抵抗の陽極が設置されているとともに中性子との反応断面積が大きい希ガスが高圧力で封入され、外囲器の両端には陽極の両端に接続された端子が設けられている。そして、2本の検出部を並列に配置するとともに直列に接続して用いる場合、2本の検出部の一端の端子を裸ワイヤで電気的に接続している。このように、裸ワイヤを用いる理由は、接続する2つの端子の距離が短いために、被覆を備えたケーブルではケーブルの被覆処理が行えないためである。高電圧が印加される端子や裸ワイヤが露出したままでは耐電圧上の問題があるため、ケースで覆って保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−198439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位置敏感型検出器の2本の検出部の端子を接続する裸ワイヤをケースで覆って保護しているため、通常の使用においては耐電圧上の問題になることはないが、例えば夏場で空調設備が十分でない環境など、位置敏感型検出器を設置する周囲環境によってはケース内の湿度が高くなり、絶縁性が劣化してしまう。このように、絶縁性が劣化してしまうと、位置敏感型検出器からの検出信号のノイズが増大し、計測上問題になる可能性がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、絶縁性を確保し、検出信号のノイズを低減できる放射線検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の放射線検出器は、陰極となる筒状の外囲器、この外囲器内の中心に沿って設置された陽極、および外囲器の両端に設けられ陽極の両端と接続された一対の端子を有する複数の検出部を備える。複数の検出部の一端の端子を導電線で直列に接続する。ケースの収容空間に複数の検出部の一端の端子および導電線を一体に収容する。複数の検出部の一端の端子および導電線を一体に絶縁する絶縁材を、ケースの収容空間に充填する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態を示す放射線検出器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を、図1を参照して説明する。
【0010】
放射線検出器としての位置敏感型検出器10は、複数であって本実施形態では2本の検出部11を有している。これら2本の検出部11が径方向に並列に配置され、2本の検出部11の一端および他端がそれぞれケース12,13に差し込み装着されて一体に保持されている。
【0011】
検出部11は、例えばステンレス鋼などを用いて円筒状で密閉構造に形成された陰極としての外囲器15を有している。この外囲器15内には、放射線としての中性子との反応断面積が大きい希ガスが高圧力で封入されている。外囲器15内の中心に沿って、数kΩ以上の高抵抗の陽極16が配設されている。この陽極16の両端が一対の端子17,18に電気的に接続されて支持されている。一対の端子17,18は外囲器15の両端部に設けられた絶縁部材19を貫通して外囲器15に保持されている。
【0012】
2本の検出部11の一端の端子17は例えばニッケルまたは銅などの導電線としての裸ワイヤ20で電気的に接続され、2本の検出部11の陽極16が直列に接続されている。
【0013】
2本の検出部11の他端の端子18には絶縁被覆を備えた被覆ケーブルである信号ケーブル21がはんだや溶接によって接続され、その接続部分を含む一帯が収縮チューブ22で覆われて絶縁されている。
【0014】
また、2本の検出部11の一端を保持する一端側のケース12は、例えば絶縁性を有する樹脂材料によって形成され、2本の検出部11の一端を嵌合する嵌合口24、および2本の検出部11の一端の端子17および裸ワイヤ20を一体に収容する収容空間25を有し、収容空間25の一端側は開口形成されている。ケース12には、収容空間25の一端側の開口を閉塞する蓋体26が取り付けられている。
【0015】
ケース12の収容空間25には、蓋体26を閉じる前に、2本の検出部11の一端の端子17および裸ワイヤ20を一体に絶縁する絶縁材27が充填されている。この絶縁材27は、例えばシリコン樹脂系などの絶縁性樹脂が使用され、充填前に十分な真空脱泡処理が施される。この真空脱泡処理が施されることにより、樹脂材料内の空気が取り除かれ、さらに耐電圧が向上される。また、絶縁材27は、放射線場に長期間さらされるため、耐放射線性にも優れている必要性がある。構造上何度も樹脂の入れ替えをすることができないため、例えば宇宙事業などで使用されている耐放射線性に優れたシリコン系樹脂を使用することが好ましい。
【0016】
また、2本の検出部11の他端を保持する他端側のケース13は、例えば絶縁性を有する樹脂材料によって形成され、2本の検出部11の他端を嵌合する嵌合口29が形成されているとともに、2本の検出部11の他端の端子18に接続された信号ケーブル21を引き出すための挿通孔30が形成されている。
【0017】
そして、位置敏感型検出器10は、信号ケーブル21を通じて検出部11の陽極16に数千ボルトの高電圧を印加する。検出部11に入射した中性子が外囲器15内の希ガスと反応して電子が生成されると、この電子が陰極である外囲器15と陽極16との間の電位差によって陽極16に引かれ、陽極16の両端から検出信号が出力される。陽極16の両端から出力された検出信号を前置処理部で増幅および波形整形し、演算器で陽極16の両端に出力された検出信号の割合を求めることにより、中性子を検出した位置を測定している。
【0018】
また、2本の検出部11の一端の端子17および裸ワイヤ20をケース12の収容空間25に収容して覆うとともにこのケース12の収容空間25内に充填された絶縁材27で一体に絶縁しているため、位置敏感型検出器10を設置する周囲環境に関係なく、絶縁性を維持できる。2本の検出部11の一端の端子17および裸ワイヤ20の部分の絶縁性を確保できることにより、検出信号のノイズを低減でき、計測を正確に行うことができる。
【0019】
このように、位置敏感型検出器10によれば、2本の検出部11の一端の端子17および裸ワイヤ20の部分の絶縁性を確保し、検出信号のノイズを低減できる。
【0020】
また、絶縁材27には、真空脱泡処理が施された絶縁性樹脂を用いることにより、2本の検出部11の一端の端子17および裸ワイヤ20の部分の絶縁性を確実に確保でき、耐電圧の向上を図れる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
10 放射線検出器としての位置敏感型検出器
11 検出部
12 ケース
15 外囲器
16 陽極
17,18 端子
20 導電線としての裸ワイヤ
25 収容空間
27 絶縁材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極となる筒状の外囲器、この外囲器内の中心に沿って設置された陽極、および前記外囲器の両端に設けられ前記陽極の両端と接続された一対の端子を有する複数の検出部と、
前記複数の検出部の一端の端子を直列に接続する導電線と、
前記複数の検出部の一端の端子および前記導電線を一体に収容する収容空間を有するケースと、
このケースの収容空間に充填され、前記複数の検出部の一端の端子および前記導電線を一体に絶縁する絶縁材と
を具備していることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記絶縁材は、真空脱泡処理が施された絶縁性樹脂である
ことを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。

【図1】
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【公開番号】特開2013−40779(P2013−40779A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175966(P2011−175966)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】